PORSCHE BOXSTERをご紹介します
  コードナンバー=「986」
  RRの911とは違い、ボクサーエンジンをミッドシップにレイアウトしたロードスター
  「ボクスター」をご紹介します。
  ボクスターとの出会いから、卓越したパッケージとインプレッションを混じえて・・・
  私見だらけなので、「話半分」でご笑覧下さい。

Prologue Introduction Impressions SpecData Topics

はじめに・・・
PORSCHE BOXSTERをご紹介する前に、選択までの経緯をご説明しましょう。
前車VolkswagenPassatで、ドイツ車の魅力に感化されたわけですが、実用車のイメージが強いパサートでは、やはりパワーやスポーツ性に不満が沸いてきます。V6エンジンを縦置、193ps・280Nmのフルタイム4WD車ですが、車両重量が1610kg(ワゴン)もあり、8.34kg/psというレシオからモアパワーを欲望しておりました。縦置エンジンとは言え、もともとはFF車であり、エンジンという重量物が前輪車軸よりも前・・・フロントオーバーハングに搭載されていて、足回りを交換したりインチアップしたタイヤを装着しても、タイトコーナーでは、アンダーステアとなってしまいます。ドレスアップカーになってもスポーツカーには、なれません。

M3・・・
やはりパワーのある車に乗りたいッ!わけです。ドイツを含めたヨーロッパ車で、ハイパワーなエンジンを搭載している。できればマニュアルで乗りたい・・・一番最初にリストアップしたのは、BMWでした。市販車の中で最もボディ剛性が優れていると言われる3シリーズのクーペボディに343psの直列6気筒エンジンを搭載したE46-M3というモデルです。1560kgのボディなので、4.55kg/psというレシオを6速MTを介して、まさにカッ飛ぶように加速していきます。エンジンマネージメントをスイッチひとつで切り替える「スポーツ」モードでは、一触即発のようなレーシングエンジンを体験する事も出来るほどで、FRの素直なハンドリングや50:50の前後荷重配分によるステア特性等、魅力いっぱいの車です。クーペボディをベースにしていますが、前後のフェンダーやボンネット、前後バンパー等は、専用パーツでマッスルに仕上げてあり、前後サブフレームにも補強が入っています。ブレーキもフローティングのドリルドローターとなり、専用のLSDも装着されています。しかしなんと言ってもエンジンに尽きるッ!カタログにある真っ赤に焼けたタコ足・・・これだけでも市販車エンジンとは思えないものです。タコメーターには9000という文字があり、4気筒エンジンのように吹け上がる様は、驚愕以外の言葉が見つかりませんでした。市街地での試乗では、そのパフォーマンスを出し切る事もできませんが、高速道路(本当は、ダメですが・・・)では、片鱗をうかがう事ができます。大きな排気量からくるトルクフルなエンジンは、市街地の渋滞でも扱いやすく、高速道路では、あっという間に○00km/hに達する加速を体感できます。18インチの扁平タイヤでも乗り心地が良くて、垂涎の車でした。

ただ・・・
魅力的な車ではありましたが、当時(MY2001)は、リモコンロックが赤外線式であったり(笑)、サイドミラーが異様に見辛かったり・・・。それにドライビングポジションがベース車の3シリーズと同じなんです。長いシフトストロークやヒールアンドトーのやり辛いペダルレイアウト。それにやはり箱型のボディでは、1○0km/hでボディが浮くんですよ。常用域ではありませんが、ちょっと気になる点でした。

3.2・・・
E46-M3は、3,246ccで一応「3.2L」エンジンと言う事になります。品定めをしていく内にヨーロッパでは、この3.2Lに各社がホットモデルをリリースしている事を知ります。AMGからは、C32・・・V63.2Lエンジンにスーパーチャージャーを組み合わせて353ps、450Nmというスペックです。1610kgのボディなので、4.56kg/psというレシオになります。アルファからは、GTAというネーミングで147と156に3.2Lモデルがあります。FFですが、横置V6エンジンからは、250ps、300Nmを出しています。147では1390kgのボディで5.56kg/ps。156では、1420kgのボディで5.68kg/psというレシオを誇ります。156GTAのインプレでは、「200万安いM3」と評価されており、官能的なサウンドに憧れます。AUDIからは、A3とTTに3.2Slineというモデルがあります。V6エンジンは、250ps、320Nmとなり、A3で1600kgのボディ、6.4kg/ps。TTでは、1550kgのボディ、6.2kg/psというレシオになります。これをハルデックスカップリングを搭載したクアトロシステムで駆動。おまけにDSGというクラッチレスのギアボックスを採用しています。PDK(ポルシェデュアルカップリング)をベースとしたミッションで、M3に選択可能なSMG2と同等かそれ以上の操作性を誇るとか・・・そしてVWからは、限定車ではありますが、GOLFR32がリリースされました。V6エンジンで241ps、320Nmというスペック。ローダウンされたスポーツサスペンションに18インチホイール、ケーニッヒシートやレムスマフラーを装備したスパルタンなモデルです。左ハンドルで2ドアボディ、6MTを介して1460kgのボディを6.06kg/psのレシオで引っ張ります。後に右ハンドルの4ドアモデルがリリースされ、少し運転しましたが、ロングストロークのトルクフルなエンジンでした。

モデル エンジン 駆動 車両重量 PWレシオ ミッション
BMW E46-M3 直列6気筒3246cc FR 1560kg 4.55kg/ps 6MT、SMG2
AMG C32 V6+SC3199cc FR 1610kg 4.56kg/ps 5AT
ALFAROMEO 156GTA V型6気筒3179cc FF 1420kg 5.68kg/ps 6MT
ALFAROMEO 147GTA V型6気筒3179cc FF 1390kg 5.56kg/ps 6MT
AUDI A3 3.2QuattroSline V型6気筒3188cc 4WD 1600kg 6.4kg/ps DSG
AUDI TT 3.2QuattroSline V型6気筒3188cc 4WD 1550kg 6.2kg/ps DSG
VW GOLF R32 V型6気筒3188cc 4WD 1460kg 6.06kg/ps 6MT
BOXSTER S 水平対抗6気筒3179cc MR 1370kg 5.27kg/ps 6MT

はてさて・・・
ここまでくると、どうしたものか・・・状態です。いずれも垂涎の車ばかりですが、決定打に欠けると言うか・・・熱い走りが期待できるM3。誰でも気軽にハイパワーのC32。官能のアルファ。ハイパワーとクアトロシステム、DSGが魅力のAUDI。史上最強のゴルフ、R32。これは、とてつもなく贅沢な選択です。じっくりと腰を据えて考える事にしました。冒頭にもあるようにハイパワーをマニュアルで乗りたいという漠然としたイメージでは、選択できるものではありません。もう少し具体的な方向性を決めておく必要があります。二兎追うものは・・・あれもこれも欲張っては、良い物には巡り合えません。やはり・・・スポーツカー・・・に乗りたい。

モデル ボア・ストローク ホイールベース トレッドF/R WB/トレッド比
BMW E46-M3 87.0×91.0 2730mm 1510/1525 1.799
AMG C32 89.9×84.0 2715mm 1495/1475 1.828
ALFAROMEO 156GTA 93.0×78.0 2595mm 1520/1510 1.713
ALFAROMEO 147GTA 93.0×78.0 2545mm 1520/1505 1.683
AUDI A3 3.2QuattroSline 84.0×95.9 2575mm 1525/1495 1.705
AUDI TT 3.2QuattroSline 84.0×95.9 2430mm 1530/1500 1.604
VW GOLF R32 84.0×95.9 2520mm 1515/1480 1.683
BOXSTER S 93.0×78.0 2415mm 1455/1510 1.629

分析・・・
各車のデータを眺めていると、おぼろげながらそれぞれのベクトルが見えてきます。エンジンの性格でも、ショートストロークのアルファは、回して愉しいでしょう。逆にロングストロークのAUDI・VWのエンジンは、最大トルクを2800回転から発生している事からも、トルクフルである事がわかります。C32は、意外にもショートストロークです。M3は、最大出力を7900回転で発生するにも関わらずロングストロークなんですね。F1並みのピストンスピードと言う事も頷けます。動力性能を比較する上で、パワーウェイト(PW)レシオを計算してみると、M3の4.55kg/psを筆頭に、A3の6.4kg/psまで・・・エンジン出力と車両重量とのバランスなので、4WDを採用しているAUDI・VW系には不利な結果となりました。シャシー性能は、ホイールベーストレッド比を計算してみます。これは、ホイールベースを前後のトレッド値の平均で割ったもので、数値が小さいほどコーナリング性能が高い。逆に数値が大きいほど直進安定性に優れ、コンフォートな性格の車と言えます。ここではTTの1.604に驚きますが、2シーターモデルなのでホイールベースを短く設定する事ができ、ワイドトレッドで安定感のあるスタイリングをしている事からこのような数値が出てきます。ベースとなる車があるので、スポーツカーの基準と言える1.65を下回るのは、難しい事です。FRもあればFFもあり、4WDもあります。アルファやAUDI、VWは、横置きにしたエンジンをフロント車軸の前に載せており、タイトコーナーでは、かなりアンダーとなるでしょう。FRといえどC32では、なかなか曲がらない・・・と思われます。

ブレーキ・・・
車の性能を考える上で、走る事、曲がる事に並んで重要なのが止まる事でしょう。もちろんスタイリングや使い勝手などもありますが・・・各車のブレーキを検証するといずれもハイパワーに見合うグレードアップが行われています。大径のローターであったり、ドリルホールを開けたものであったり、軽量化を行う為に2ピースのフローティングであったり・・・キャリパーにもモノブロックの対抗ピストンを使ったりしています。ブレーキとは、そもそも熱交換器。走るというエネルギーを熱に交換する事によって制動力としているわけです。乗用車で主流となっているディスクブレーキは、放熱性を高める事によって安定した制動力を確保する為のもので、ドラムブレーキの方が制動力だけなら勝っているようです。大径ローターは、より大きな制動力を得る為に使われます。ハブ中心からの距離(半径)が長いほど大きな制動力が発生します。ドリルドローターやベンチレーテッドローターは、放熱性をより高める為に採用され、アルミ製のキャリパーを使用するのも素材の熱伝導性を利用した放熱性向上となり、同時にバネ下重量の軽量化にも貢献しています。ピストンを多くしたり対抗させたりするのは、より高い制動力を確保する為ですが、リアにこれを使用するのは、サイドブレーキを別に設計する必要があり、コスト高になってしまいます。

PORSCHE・・・
ブレーキの事を考えているうちに、はじめて「PORSCHE」という単語が浮かんできました。ブレーキパーツのアップグレードでは、「ポルシェキャリパーの流用」がよく行われます。「世界一のブレーキ」とか「沈むように停車する」と言われるポルシェのブレーキシステムを勉強してみました。ブレンボ社が製作するポルシェ車のブレーキは、対抗ピストンのアルミ製モノブロックキャリパー、らせん状に空気が抜けるスパイラルベンチレーテッドディスク。これらのハードをベースに「エンジン出力の3倍の制動力」を、6Pのキャリパーにしたり、ディスク径を大きくしたりして車種に合ったスペックとしています。そしてブレーキ本体だけではなく、より放熱性を高める為に導風板を設けたり、剛性感を確保する為にキャリパーの取付方法にも工夫をしていました。もちろんリアのキャリパーも対抗ピストンのモノブロックなので、サイドブレーキ用のドラムブレーキを内臓していたり、カレラGTでは、サイドブレーキ用のキャリパーを別に装着しています。こうした事以外に憧れの「沈むブレーキ」は、独特のRRというパッケージデザインが大きな要因であると気付きました。リアに重心高の低い水平対抗エンジンを搭載している事が、ブレーキダイブを最小限にしているわけです。

そして・・・
「沈むブレーキ」を考えているうちに、車の持つ物理的なデザインに興味が沸いてきました。自動車雑誌等でよく言われる「Z軸上の慣性モーメント」やX軸モーメントとも言えるロールセンターと重心高の関係等々。こうして「世界一重心高の低い車」と言われるBOXSTERと出会う事になったわけです。「どうしてオープンカーなの」や「二人しか乗れない」等は、全然考えず・・・911の代替としてでもなく・・・あくまでもコーナリング特性に優れたミッドシップである事、重心高を低くする為に水平対抗エンジンを低い位置にマウントしている事、ギアボックスを含めてエンジンを縦置するので左右バランスが良い事やリアサスペンションのアーム類を長くできる事・・・ボクスターの持つ優れたパッケージデザインと潜在能力にすっかり魅了されたわけです。同じ3.2Lエンジンがある事も決断した理由のひとつだったかも知れません。左ハンドルで6MTであり後輪駆動であり・・・ブレーキはモノブロック4ピストンでドリルドローターだし・・・乗り降りが辛いけど、ドライビングポジションも良い。そしてシャッターのついた車庫がある。雨や雪の時は、他の車がある・・・(笑)・・・そして何より肉体的な順応性と経済的な許容を考えると、今しか乗れない・・・5年後では左ハンドル、6MTに順応できないかも知れません。子供にもお金が掛かるようになってきます・・・今しか買えない・・・自分の中での問題は、「新車は、高い(大笑)」くらいでした。