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1997年8月15日号 228

血液製剤の記録の保管・管理
当該部署でのご協力をお願いします。

   本年9月1日より、各医療機関及び薬局で、血液製剤管理簿を作成することが、義務づけられました

 血液製剤の製品名、製造番号、当該製剤の使用日または処方日、患者の氏名、住所等の記録を同管理簿に記載するとともに、当面10年間、同管理簿を適切に保管・管理するととなりましたので、周知徹底をお願いします。


厚生省薬務局企画課長・厚生省薬務局安全課長

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 血液製剤(輸血用血液製剤及び血漿分画製剤)は、人体の一部である血液を原料とする点で他の医薬品とはその性格が異なっており、特にその安全性については、従来採血時の問診や採取された血液に対する検査、ウイルスの不活化・除去工程の充実等により、その確保・向上を図ってきましたが、今日においても将来における血液製剤による未知のウイルス等の混入の可能性を否定できません。

 従って、将来、血液製剤の与薬による患者へのウイルス等の感染の恐れが生じた場合、当該製剤の与薬に関し患者への連絡が必要となる可能性があることから、記録簿の作成が必要となります。

*対象となる血液製剤の範囲〜下記参照

 血液製剤は輸血用製剤及び血漿分画製剤(日本標準商品分類の634血液製剤)、及び血漿を原 料として各種の血漿蛋白を分画精製した製剤。

*血液製剤管理簿の保管管理期間

 当面10年間としているが、期間については、10年以内に見直す予定であること。

*血液製剤管理簿に記載すべき事項

(1)血液製剤の製品名、製造番号、当該製剤の投与日または調剤日(注)、患者の氏名住所

(注)患者に実際にその製剤を投与した投与日(外来患者に自己注射用 の血液凝固因子を調剤した場合等には調剤日)、薬局では調剤日

(2)記載の方法は、コンピュータに入力し電子ファイルで保存することも差し支えないものとする。
(3)なお、当該医療機関で使用しているID番号等を血液製剤管理簿に記載することにより住所情報を確認できるようにした場合には、同管理簿に住所を記載することは要しないものであること。

*記録すべき部署

 それぞれの医療機関、薬局の実態に鑑み、輸血部、薬剤部で責任者を決め保管管理する  こと。この場合、輸血部専門の部署で一元的に管理することが望ましいが、輸血用血液製  剤は輸血部、血漿分画製剤は薬剤部というように分掌することも可とするものであること。

 <対象となる血液製剤>
 アルブミン25、アンスロビンP、ノイアート、ベニロンI、グロベニンI、ヴェノグロブリンIH
 グロブリンミドリ、テタノブリンI、HBグロブリンI、ハプトグロビン、ヘブスブリン
 コンファクトF 、ノバクトM、フィブロガミンP、ベリナートP、抗D人免疫グロブリン
 ベリプラスト、ボルヒール、トロンビン、ヒスタグロビン


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生物由来製品の規制に関するお知らせ

2003年6月15日号   No.362

 本年7月30日より生物由来製品・特定生物由来製品に関する改正薬事法が施行されます。

 特定生物由来製品の使用に際して、患者への「感染リスクの説明」、「使用患者の住所、氏名等の記録の保管(20年間)」が義務付けられるようになりました。

<生物由来製品とは>

 改正薬事法第2条第5項

 人その他生物(植物を除く。)に由来するものを原料または材料として製造(小分けを含む。)される医薬品、医薬品部外品、化粧品又は医療用具のうち、保健衛生上特別の注意を要するものとして、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するもの。

 ワクチン、抗毒素、遺伝子組換え蛋白、培養細  胞由来の蛋白、ヘパリン等の動物抽出成分 等

<特定生物由来薬品とは>

 改正薬事法第2条第5項

 生物由来製品のうち、販売し、賃貸し、又は授与した後において当該生物由来製品による保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するために措置を講ずることが必要なものであって、厚生労働大臣が薬事食品衛生審議会の意見を聴いて指定するもの。

 輸血用血液製剤、人血漿分画製剤、人臓器抽出医薬品 等

[表示]生物由来製品は「生物」の文字

   特定生物由来製品は「特生物」の文字
    白地、黒枠、黒字で記載

 ※ 特定生物由来製品ではヒト血液成分を使用している場合は原料となる血液の採血国、献血、非献血の区別を記載 

 特定生物由来製品(血漿分画製剤等)

<患者への説明>

 当該製剤の使用にあたっては、疾病の治療における本剤の必要性とともに、本剤の製造に際し感染症の伝播を防止するための安全対策が講じられていますが、血液を原料としていることに由来する感染症伝播のリスクを完全に排除することが出来ないことを患者に対して説明し、理解を得るように努めなければなりません。

 現在までに、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)等が伝播したとの報告はありません。しかし製造工程で異常プリオンを低減し得るとの報告があるものの、理論的なvCJD等の伝播のリスクを完全には排除できないので、使用の際には、患者への説明を十分に行い、治療上の必要性を十分検討の上用いることとされています。

<副作用の報告>

 薬事法第68条の9項及び第77条の4の2第2項

 改正薬事法では、薬事関係者は、医薬又は医療用具の使用による副作用・不具合又は感染症の発生について、保健衛生上の危害の発生、拡大防止のため必要があると認められるときは厚生労働大臣に報告しなければならない旨、法政化されました。

 また、「特定生物由来製品」の使用による保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するために必要と認められ、かつ、使用患者の利益になるときに限り、使用記録を製造承認者に提供することになりました。(守秘義務も課せられています。)

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トレーサビリティー

traceability 〜 trace(追跡) とability(可能性)

追跡可能性

 測定器の信頼性を保証する技術系用語としては、古くから使われており、「記録物によって、その履歴、転用または所在を追求できる能力」と定義されています。

 この言葉が注目されたのは、牛肉のBSE(牛海綿状脳症)問題の対策として、農林水産省が「食品の履歴遡及システム」を提唱してからです。

 産地の偽装、賞味期限の書き換え、無許可添加物の使用など「食の信頼」を裏切る時柄kんが相次ぎ、食品の流通、販売という「食品の安全性」がクローズアップされました。

 医薬品の分野でも、ICチップを使ったICタグ(荷札)や二次元バーコードを応用したシステムの早急な導入が必要と思われます。

    出典:日本病院薬剤師会雑誌 2003.10


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生物学的製剤の基礎知識

2012年5月15日号 No.567


生物学的製剤は、薬事法での定義はなく、「生物由来製品」が相当し,動物,細胞,微生物など生物由来の物質の総称です。

{参考文献}治療 2012.2

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 生物学的製剤基準では、医薬品としてはワクチン、トキソイド、抗毒素など微生物由来の製品約50、血液製剤約40品目が収載され、感染症の治療、予防接種、診断などに用いられる製剤が本来の「生物学的製剤」です。

 医薬品の薬効分類からは、炎症性疾患に用いる抗体製剤、融合蛋白質、インターフェロンなどの遺伝子組み換え製剤は、「その他の生物学的製剤」に分類されます。

 モノクローナル抗体などの生物学的製剤は、特定の標的分子制御を目的として、自然界に存在する蛋白質から遺伝子組み換え技術などにより生成されたバイオ医薬品で、次のような特徴があります。

1、自然界に存在する蛋白質で、適切に使用すれば安全
2、標的(抗原)が明確で、高い特異性と親和性を持つため、高い効果が期待できる。
3、多様な抗原に対して多彩な作用機転を応用すれば、広い標的分子に対応できる。
4、遺伝子工学的手法によるため、工業生産や構造の改良、改変が容易

<生物学的製剤の作用機序>

 抗体医薬などの生物学的製剤の作用機序は多彩で、抗体、標的分子や細胞などにより異なり、未知な部分も多々あります。

 リツキシマブによるB細胞除去療法では、ADCCやCDCの活性を介して細胞を除去します。

 癌細胞に対する抗体の一部は細胞表面分子を介して細胞死をシグナル活性化して細胞を殺傷します。TNFやIL-6阻害薬のように特定のサイトカインや受容体に拮抗的に結合して、シグナル伝達を阻害する作用もあります。

 一般的に拮抗作用、作動作用ともに、シグナル受容体に直接作用、受容体とリガンドとの相互作用を修飾、抗原が酵素や酵素の基質であり抗体が結合することにより作用が誘導、補体やFcを介してほかの細胞の活性化を誘導するなどの作用が考えられています。

<生物学的製剤の問題点>

 生物学的製剤は、特定の標的分子・細胞を制御除去する場合があり、それに伴う副作用に注意が必要です。

 たとえば、抗TNF抗体は、生体内でのTNF蛋白質レベル、TFN発現細胞はほぼ完全に制御されるために、免疫抑制に陥る可能性があります。

 インフリキシマブの5,000例市販後使用調査では副作用は1,401例、重篤な副作用308例に発症しました。重篤な副作用としては感染症が多く、細菌性肺炎108例、間質性肺炎25例、ニューモシスチス肺炎22例、結核14例でした。

 肺炎の危険因子としては、高齢、呼吸器疾患の既往、ステロイド薬併用があります。また、生物学的製剤の使用時の、肝炎ウイルスなどのウイルス再活性化の問題点に慎重に取り組む必要があります。

 生物学的製剤の使用に際しては、結核などの日和見感染症の重篤な副作用などの内科的な管理や治療が要求されるようになってきています。

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* 生物学的製剤を用いた関節リウマチ(RA)の治療

・レミケード(インフリキシマブ)  点滴静注 キメラ抗体 標的:TNF  MTX併用必須
・ヒュミラ(アダリムマブ)  皮下注 ヒト型抗体 標的: TNF  単独(MTX推奨)

 TNF阻害薬の最大の利点は、関節破壊抑制効果にあることが明確になりました。

 MTXとTFN阻害薬の併用により臨床的寛解を導入し、寛解を一定期間維持すれば、次の目標はバイオフリー寛解です。バイオフリー寛解とはIFNを使用しなくてもよくなる状態のことで、長期安全性、経済性などからも重要な課題です。

 疾患活動性の高いRA患者でも、インフリキシマブとMTXを用いて低疾患活動性を半年以上維持すれば、インフリキシマブを休薬しても半数以上は1年間にわたって関節破壊や機能障害の進行無く低疾患活動性を維持できる可能性が示されました。


医学・薬学用語解説(フ)

    フィルター(輸液フィルター)はこちらです。


雑学薬理学 1997年8月15日号 228

   胃・十二指腸潰瘍になりやすい患者 ←クリック



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MAP(濃厚赤血球)

1992年10月15日号 No.117

 現在、日本で使用されている濃厚赤血球(CRC)の有効期限は21日ですが、欧米では既に10年前から保存液にSAGMを使用しており、有効期限は42日となっています。
今回、新たに供給される赤血球MAPは、SAGMにCPD(血液凝固阻止剤:下記参照)を添加したもの変更されました。

<MAPとは>           <CPDとは>

M:D−マンニトール         C:クエン酸Na
A:アデニン             P:リン酸二水素Na
P:リン酸二水素Na         D:デキストロース(ブドウ糖)


<MAPの特徴>

1.有効期限が42日と従来品の2倍
(その後21日に変更:下記参照)
2.リンパ球、血小板、血漿の90%、また、白血球の60%が除去されています。
3.ヘマトクリット値が約60%に調整されていますので、粘度が低く輸血しやすくなっています。
4.品質的に従来の濃厚赤血球選り優れています。(薬価は従来品と同じです。)

<注意>

 マクロアグリゲート(白血球、血小板の残骸にフィブリンがからみついたもの)が発生する可能性がありますが、輸液セットフィルターで補足され、現在まで事故の報告はありません。肉眼で確認されたり、フィルターが目詰まりを起こした等の場合は、使用しないで下さい。

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MAPの有効期限変更

1995年4月1日号 No.173 に掲載

 平成7年4月1日製造分より濃厚赤血球の有効期限が42日から21日(3週間)に変更されました。

 これは、外国でエルシニア菌が混入した血液製剤が、冷蔵であっても長期保存中にこの菌が増殖して副作用を起こすことが、極めて希ですが報告されているためです。(今までのところ、日本ではこの菌による副作用例は報告されていません。)

{添付文書より}

 本剤の使用により,エルシニア・エンテロコリチカ等の細菌によるエンドトキシンショック等があらわれることがあるので,観察を十分に行い,症状があらわれた場合には輸血を中止し,適切な処置を行うこと。


<<医学用語辞典>>

クリオ製剤

過去に血液センターで国内献血の血液から製造された血友病患者に必要な血液凝固第VIII因子とフィブリノーゲンを大量に含む血液製剤のこと。

本剤は単一供血者の血液から製造され、感染のリスクはクリスマシン等の製剤に比べ低いのですが、第VIII因子含有量が少ない欠点もあります。

 

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