バッハ: 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ

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全集(237)
演奏者 レーベル 収録年 収録曲 演奏 録音 補足
アッカルド Philips 1976 全集
アッカルド fonè2007 全集
アントネッロ MJA Productions2011,12全集
アルゼウスキ Bridge 2011 全集
アーヨ Philips 1974-5 全集
アジジャン Classico 1996-2002 全集 分売
バラティ Saphir 2002 全集 ライヴ
バラティ Berlin Classics2009全集
バートン・パインAVIE2015 全集
ベンヴェヌーティLudwig Classica1997 全集 分売
ベリンスカヤClassica Viva不明全集
ベルンシュタインa-b.violin不明全集
ベイエ Zig-Zag Territories2010,11全集 バロックVn
ベズノシウク Linn Records2007 全集 バロックVn
ビスムート STIL 1991 全集 バロックVn
ブルックス ARTS 1999 全集 バロックVn
ブルシロフスキーSuoni e Colori1990全集
C. ブッシュ PHI 2011,12 全集 バロックVn
バスウェル Centaur 1989 全集
カンタグリル Art & Musique不明 全集
チェピツキー Multisonic2001,02 全集
チュマチェンコEdelweiss1988,89 全集 分売
チョン・キョンファWarner Classics2016全集
コリャール EMEC 2003 全集 バロックVn
クラフト Tononi 1998 全集
ダール Naxos 1996 全集 バロックVn,分売
ドラッカー Parnassus1988,89 全集
デュモン Columbia 不明 全集
エディンガー Naxos/Amadis1991 全集 分売
エッゲブレヒト TROUBADISC2011 全集
エーネス ANALEKTA 1999,2000 全集
エネスコ La Voce,IDIS1948,49 全集
エプスタイン Agora 1995 全集
エルリー ACCORD 1969 全集
ファンフォーニ DYNAMIC 2011 全集
ファウスト harmonia mundi2009,11全集
フェイェシュ Discovery M&V2014,15全集
フェルナンデス Flora 2002 全集 バロックVn,分売
フェラス Ages Records1977 全集
フェオドロフ ORF 2006 全集 バロックVn
フィッシュバッハ自主製作?2002-04 全集
フィッシャー PentaTone2004 全集
フォンタナローザPolymnie不明全集
フリードLyrinx 1997 全集
フリードNimbus Alliance2016全集
ファルカーソン Bridge 1995 全集
ゲーラー Arte Nova1998 全集 バッハ弓
ガンデルスマンIn A Circle Records2015,17全集
ギドーニ OnClassical2012 全集 音楽配信
ギンペル Cambria 不明 全集 MP3販売
グローヴァー GLOBE 1990? 全集 バロックVn
ゲッケル NoMadMusic2017 全集
ゴルツ Cascade 不明 全曲 iTunes DL販売
ゴトコフスキー RCA 1978,79,80全集
グラッドウォール 自主制作 2006 全集 ライヴ
グリマル Transart 1999 全集 ライヴ
グリマル Ambroisie2008 全集
デ・グルート自主制作?不明 全集
グリュミオー Philips 1960,61 全集
ヘンデル Testament1995 全集
ハーン Sony,DECCA1996,97, 2012,17全集
ハイフェッツ RCA 1952 全集
ヘンケル the spot records2004全集
ホイトリング gutingi 1999,2000 全集 分売
ヒンク CAMERATA 2000,02,04全集
ホロウェイ ECM 2004 全集 バロックVn
ホムバーガー Maya Recordings2002,07,10全集バロックVn
ワンチ・ホワンCentaur 2013 全集
ハジェット Virgin 1995 全集 バロックVn
イブラギモヴァ hyperion 2008,09 全集
ジュリッツ Nimbus Alliance2008,09全集
ヤコヴィッツMTJ 不明 全集
カーキネン=ピルクONDINE2012,13全集 バロックVn
カーラー NAXOS 2006,07 全集
カガン Erato 1989 全集 ライヴ
カントロフ Denon 1979 全集
キャプラン MMM 1991,92 全集
キャプラン Bridge 2011 全集
ハチャトゥリアンnaïve2008,09全集
コヴァーチュ Hungaroton1981? 全集
キム・スーヤンDG 2010,11 全集
キム・ヒョンギ Universal Music2012全集
クレーメル Philips 1980 全集
クレーメル ECM 2001,02 全集
キュッヒル Platz 2003 全集
クイケン DHM 1981 全集 バロックVn
クイケン DHM 1999,00 全集 バロックVn
コットマン Melisma 1997? 全集
ラロック Sonogramme2000 全集
ラウテンバッハーBayer 1964 全集
ラウテンバッハーVox Unique1973,74全集
ランズデール Cyberphunx1999,2000全集
イ・ボギョン LEEVÉ ART2014全集
イ・ソンイル Arcade 9 不明(2016?)全集
レツボール Pan Classics2011 全集 バロックVn
レーフ Apex 2001 全集 分売
J. リン fine NF 2005,07,09全集 分売
ルボツキー Brilliant1987 全集
ルカ Nonesuch 1977 全集 バロックVn
ルプー Electrecord不明 全集
マドヤン 自主制作?不明 全集
マドロシュキェヴィッチュGramola2000-02全集
マリキアン Warner 不明 全集
マヌージアン UW-Madison不明 全集
マルツィ EMI 1954,55 全集
マシューズ Centaur 1997 全集 バロックVn
メニューイン EMI 1934,35,36全集
メニューイン EMI/HMV 1956,57 全集
メニューイン EMI 1973,74,75全集 分売
ミケルッチ Fone 不明 全集
ミレンコヴィッチDynamic1996 全集
ミルシテインEMI1954,55,56全集
ミルシテインDG1973 全集
ミンツ DG 1983,84 全集
モンタナーリParagon2011 全集 バロックVn
モルトコヴィッチChandos1987 全集
モッツォ Inviolata2005 全集 バロックVn
ムローヴァ onyx 2007,08 全集 バロックVn?
ニコラ Alphee 不明 全集
ニコリック Syrius 1997 全集
ノヴォトニー Supraphon1969 全集
オドリオゾラAmethyst Records2004-6全集
V. オイストラフMUSICOM 不明 全集
オレフスキー Doremi 1953 全集
オロフ Vanguard 1979 全集
パパヴラミ PPL 2000 全集 ライヴ
パパヴラミ aeon 2004 全集
パラシェフコフTelos 1996 全集
パスキエ harmonia mundi1981 全集 LP
パウル Tacet 1989,95 全集 分売
ペラシー BNL 1990 全集 分売
パールマン EMI 1986,87 全集
ペトレ 自主製作 不明 全集
ピーチ ES DUR 2011 全集 バロックVn
ピカイゼン Melodiya 1971 全集
ポッジャー CCS 1997,98,99全集 バロックVn,分売
ポゴシアンNew Focus Recordings2015,16全集
プーレ Arion 1994,95 全集
リッチ MCA 1965 全集
リッチ Unicorn 1981 全集
リッチー Musica Omnia2007 全集 ()
リッツィ Amadeus 不明 全集 配信
ローザンド Vox 1997 全集
ロス Gaudeamus2006 全集 バロックVn,分売
ミシェル・ロスAlbany Records2013,14全集
シェアー 自主制作 2013 全集
シル auris subtilis2007 全集
シュミット Arte Nova1999 全集
H. シュミット Alpha 2004 全集 バロックVn,分売
シュニーベルガーJecklin1987 全集
シュナイダー MERCURY 1949 全集 LP
G. シュナイダーOEHMS 2011 全集
シュレーダー ADDA/NAXOS1984,85 全集 バロックVn
ザイラー Berlin Classics2009全集 バロックVn
シュムスキーASV/Nimbus1975 全集
シャハム Canary Classics2014全集
スィグリョンスドーティルMSR Classics2000-07全集
シルヴァーシュタインIR 2001 全集
シトコヴェツキーOrfeo 1984 全集
シトコヴェツキーHanssler1997 全集
スクラール MSM 1999 全集
スミルノヴァ Croatia Records不明全集 配信
シュポルツル Supraphone2015 全集
ステップナー Centaur 1989-2012 全集 バロックVn
J. スターン Albany Records2013 全集
セント・ジョン ANCALAGON2006,07 全集
スーク Warner(EMI)1970 全集
ズスケ Deutsche SchallPlatten1983,5,7,8全集
セントヘイ Hungaroton2001 全集
シェリング Sony 1955 全集
シェリングDG 1967 全集
シゲティ Vanguard 1955,56 全集
チャケリアン DECCA 2012 全集
テルマーニ Testament1953,54 全集 バッハボウ
テネンバウム ESS.A.Y 1994 全集
テツラフ Virgin 1993 全集
テツラフ hänssler2005 全集
トドロフ GEGA NEW 2012,13 全集
トニェッティ ABC Classics2004 全集 バロックVn
トーテンベルク MCS 不明 全集 分売
ウーギ BMG 1991 全集
ヴァイドマン 自主制作 1999 全集 ライヴ
ヴァイマン DUX 2006 全集
ヴァレンズエラ Con Brio 1997,2002 全集 分売
ヴェーグ Auvidis 1971 全集
ヴィンニコフ IM Lab 2004 全集
ウォルフィッシュHyperion 不明 全集 バロックVn
ウォーターマン Meridian 2000-03 全集
ヴァイトハースAvi Music2012,15全集
ヤロン ACCORD 1989 全集 分売
ツェートマイヤーTeldec 1982 全集
セッテルクヴィストKulturhuset不明全集 配信
ジーグモンディJuneau Bach Society1995全集
ツィンマーマンBIS Records2020-22全集分売
ツィヴォーニ Meridian 1990?,94? 全集 分売
ズーコフスキー Vanguard/CP21971,72全集
ズヴォリステアヌDinemec不明 全集
荒井英治 HERB Classics2007 全集
潮田益子 EMI 1971,72 全集
潮田益子 Fontec 1996 全集
浦川宜也 Fontec 1979-82 全集
浦川宜也 HIBIKI MUSIC2015-16全集
漆原啓子 NAR 2010,11 全集
江藤俊哉 BMG/RCA 1976 全集
奥村智洋 Aurora Classical2011全集
加藤知子 Denon 1999,2000 全集
川田知子 Meister Music2017 全集
川原千真 CRÉATION2007全集 バロックVn
河村典子 opus55 2011,12 全集
木野雅之 Exton 2003 全集 分売
桐山建志 ALM Records2002-06 全集 バロックVn,分売
久保陽子 自主制作 2004 全集
久保田巧 Exton 2002,04 全集 分売
五嶋みどり ONIX 2013 全集
五嶋みどり Accentus Music2016 全集 NHK BS放送
桜井大士 Laplace Records2018全集
塩川悠子 Camerata 1989 全集
島根恵 ALM 2000 全集
清水高師 Platz 1994 全集
杉江洋子 LeavesHMO2016 全集
諏訪根自子 King 1978,79,80全集
千住真理子 Victor 1994 全集
千住真理子 Universal Classics2014全集
高橋満保子 Victor 2001 全集
寺神戸亮 Denon 1999 全集 バロックVn
天満敦子 King 2004 全集
豊田耕兒 Victor 1971 全集
辻井淳 Isoda 2000 全集
戸田弥生 音楽之友社2001,02 全集
藤原浜雄 Toshiba EMI/SONARE1985全集 ライヴ
堀米ゆず子EXTON 2015,16 全集
前田朋子 Gramola/onepoint.fm2010,12全集/
前橋汀子 Sony 1988 全集
横山奈加子EXTON 2014,15 全集
若松夏美Arte dell'arco2014,15全集 バロックVn
和波孝禧 Artunion 1993 全集
和波孝禧 LiveNotes2011 全集
 
選集(2曲以上)
演奏者 レーベル 収録年 収録曲 演奏 録音 補足
アベル PODIUM 1979,84,85s1,3,p2
アドメイトOehms 2011 p2,3
バートン・パイン Cedille 2004 s1,p2 バロックVn
ブラッハー Phil. harmonie2009 p2,3 詩の朗読付き
ビュヒナー Calig 不明 p2,3 湾曲弓
チャン Cavalli 不明 partita集
シシュ Intrada 2006 s1,p2
チョン・キョンファ Decca 1974 p2,s3
フェラス Meloclassics1956,60s2,s3
フェルシュトマンChallenge Classics2009,13s1,p2,3
フィヒテンホルツGreat Hall不明 p1,2 ライヴ
フランチェスカッティBiddulph/Doremi1950,52p2,3
フロシャウアー DS 2004 s1,3,p3
ゴールドベルグ 自主製作?不明 s1,p2 ライヴ
ゴルトシュタインMITRA 不明 partita集
グリンゴルツ DG 2002 s2,p1,3
ハンセン Bergin Digital Studio2005s1,p1,2バロックVn
ハイフェッツ EMI 1935 s1,3,p2
フアン Philarmonia2000 s3,p2
ジョンソン (Private)2002 partita集
カガン LC 1979 p1,2 ライヴ
カヴァコス ECM 2002 s1,p1
コチシュ Hungaroton1963? s1,p2 配信
コウ Cedille Records2011,12,14p1,2,3,s1
A. コヴァーチュTON 4 RECORDS不明p2,3 配信
クレーメル Victor/Venezia1975 partita集
クレーメル Euro Arts2001 partita集DVD
クリスティンスドティル自主制作不明partita集配信
クリサ EXTON 2016 s1,p2
Z. レヴィン MSR Classics不明 partita集
ロッター OEHMS Classics2010,11s1,2,p2バロックVn
マフチン Lontano 2007 s1,2,p1
マルツィ Coup d'Archet1962,55s1,p3
メルクス Particleboard Productions1975s2,p2,3
メニューイン Biddulph 1951 s1,p3
ミルシテイン Orfeo 1957 s1,3,p2 ライヴ
ムローヴァ Philips 1993 partita集
オノフリ Anchor Records2014 s1,p2,3
オリヴェイラ ELAN 1988 s1,p2
ペレーニ Hungaroton1971? s1,3
レナルディ Testament1950,51 s1,3
リッチ Decca 1957 s1,p2
リッチ MCA 1965 s2,3,p3
リッチ One Eleven1988 s2,p2 ライヴ
ロザンド Audiofon 不明 s1,p2
シャルギナ Alberich Music不明 s1,2,p1
スタドレル Art & Elec.不明 partita集
シュタインハートTownHall1966 s1,p2
セント・ジョン WTP 1996 s3,p2
シェリング DOREMI 1961 s3,p2 ライヴ
シェリング TDK 1976 s1,p2 ライヴ
シゲティ Opus Kura1931,33 s1,2 SP復刻
シゲティ Music & Arts1946,49s1,2,p3 ライヴ
トレイバー PODIUM 1993?,97 s1,2,p2
ウーギ Fone 2004 s1,p2 ライヴ
ヴァルチノフ OVH(自主制作)不明 s2,p2
ヴィジャヤ OEHMS 2012,13 s2,3
ウィウコミルスカConnoisseur Society1960'ss1,p2
漆原朝子 Fun House1996 partita集
緒方愛子 NGE(自主制作)2005 s1,p2
久保田巧 JOD 1992 p2,3
郷古廉 EXTON 2013 s1,p1
小林美恵 N.Columbia2001 s1,p2,3
島田真千子Altus 2014 p2,3,s3
庄司紗矢香 MIRARE 2010 s1,p1,2
斎藤アンジュ玉藻 Art Union2006 partita集
土田越子 EXTON 2017 s1,p2,3
能宗さち SC企画 2004,05 s1,p2,3
堀米ゆず子 CBS/Sony 1986,87 sonata集
渡辺玲子 Teldec 2000,01 s1,3 p2
 
カップリング収録盤(1曲)
演奏者 レーベル 収録年 収録曲 演奏 録音 補足
アジジャン CLASSICO 1994 p3
バティアシュヴィリEMI 2000 p1
バティアシュヴィリDG 2014 s2
ペク・ジュヤン EXTON 2010 p2
ベントレイ Neptunus 2001 p2
ブラウン MSR Classics不明 p3
ブッシュ EMI 1929 p2
ブッシュ Biddulph 1942 s3
シェムラ Quantum 2001 p2
チョン・キョンファLucky Ball1983 p2 CD-R, ライヴ
チョン・キョンファBadinage 1998 p2 CD-R, ライヴ
チョン・キョンファKing International1998p2 ライヴ
コール Bacchanale Records2006s1
コンツェン Arte Nova2004 p3
ダスカラキス TUDOR 1999 p2
デ・ヴィート IDIS 1947,50 p2
ドゥガン Intrada 2002 p2 バロックVn
デルモーニ John Marks1988 p2
デニソヴァ Etcetra 2000 p1
フェイン Image Recordings不明p2
フォスター Delano Music不明 s1
フランチェスカッティBiddulph1958p1 ライヴ
フランチェスカッティOrfeo1958 p1 ライヴ
ギャレット DG 1993 p2
グッリ Trio 不明 s1
ヘンデル Doremi 1968 s1 ライヴ
ハーグナー altara 2005 p2
ハルトマン FARAO classics2006 p2
ヘンケル The Spot Records2000p3
フーベルマン Arbiter 1942 p2 ライヴ
イーヴォネン Yarlung Records不明p2
インゴルフソン Catalpa 2000 s3
ヤンセン Decca 2007 p2
カガン LC 1979 p3 ライヴ
コーガン Triton 1953 p1 ライヴ
コーガン Meloclassics1964 s3 ライヴ
コウ Cedille 2001 p2
クレーメル Yedang 1974,76 p3,ch ライヴ
クルス DUX 不明 p2
クスマウル SIMPK 1995 p2 ライヴ
クルマン Estonian Record2006p2
クーシスト Ondine 1997 p3
レシャー ORF 2004 p1
リュッケ Cavalli 1992 s3
リューネブルク Coviello 2010 p2
メイ Angel 1996 p3
マカルスキー ECM 1995 p1
マルトー Caprice 1912,13 p3 SP復刻
マルツィ Doremi 1960 s1 ライヴ
メニューイン Biddulph 1929 s3
メニューイン Tahra 1968 p2 ライヴ
メニューイン Meloclassics1952 p3 ライヴ
ミルシテイン Biddulph 1935 p2
ミルシテイン Bridge 1946 s1 ライヴ
ミルシテイン Bridge 1953 p2 ライヴ
ミルシテイン Orfeo 1956 p1 ライヴ
ムローヴァ Philips 1987 p1
ノアリー Aparté2013 p2 バロックVn
オドノポソフ Bayer 1974 p3 ライヴ
オイストラフ Doremi 1947 s1
パルマー NIMBUS 2008 p2
ポゴストキン PODIUM 不明 s2
ポッペン ECM 2000 p2
レビン EMI 1955 s3
ラドゥロヴィチ Transart 2005 p2 ライヴ
レーピン A&E 1990 s2
リッチ Prompt 不明 s3 ライヴ
リッチ One-Eleven1993 p1 ライヴ
リッチ One-Eleven不明 p2 アナログ復刻
リッチ One-Eleven不明 p2 ライヴ?
シュナイダーハンDG 1955 p2
Y. シトコヴェツキーSYD1954 p2
シュムスキー DOREMI 1982 p2 ライヴ
スクリッド Sony 2004? p2
スターキアン Gallo 不明 p2
スターン INA 1953 s1 ライヴ
セント・ジョン Ancalagon2001 s1
サライ BMC 不明 p2
シェリング Aura 1975 p2 ライヴ
シェリング Palexa 1979 p3 ライヴ
ヴェンゲーロフ WIGMORE HALL2012 p2 ライヴ
ヴォディチカ Supraphon2014 p3
ウェーバー Primavera2001,02 s1
ツァック AVIE 不明 p2
伊藤亜美 TC Records2015 p2
今井信子 BIS 2001 p3
大谷康子 自主製作?2006 p2 ライヴ
川畠成道 Victor 2003 p2
桐山建志 Caille 2000 p2 バロックVn
ヒロ・クロサキ ORF 2005 p2 バロックVn,ライヴ
日下紗矢子 HERB Classics2008 s3
五嶋みどり Sony Classical2005 s2
小林倫子MPS Classics2006 p2 ライヴ
鷲見恵理子 Musicamici2006 p2 ライヴ
高田あずみ Euros 1994 p2
高橋未希 MA Recordings2011 s2 バロックVn
高橋和歌 vivid 2009 s1,ch
高橋和歌 N.A.T 不明 p3
舘市正克 ALM 1999 s1 ライヴ
戸田弥生 OCD 2000 p2
豊嶋泰嗣 Canion 1992 p2
二村英仁 Sony 2001 s3
藤原浜雄 Fontec 2007 s1
藤原浜雄 Sonare 2012 p2 ライヴ
堀米ゆず子 Sony 1985 p3
米谷彩子 Venus Classics2000 p1,ch
渡辺玲子 fontec 2010,11 p3
 
番外編
演奏者 レーベル 収録年 収録曲 演奏 録音 補足
シャボー Ligia Digital2002 s1,2,p2 ピアノ伴奏付き
カントロフ National Trusut1995,96全集 ピアノ伴奏付き
シュミット MDG 1994,95 全集 ピアノ伴奏付き
Deych 不明 1999? 全集 ヴィオラ
フランク Pierr Verany1997 partita集 ヴィオラ
ナギー Cadenza 2000 (sonata集)ヴィオラ
ングウェニャーマEDI 録音不明 p1,2 ヴィオラ
Slapin SSRS 1998 全集 ヴィオラ
アニシモワ Cellestial2000,01 全集 チェロ
ビルスマ DHM 1988 s2,p3 チェロ
ヒルガー querstand不明 全集 チェロ
ルオラヤン・ミッコラLinn2013,14全集チェロ
パテルノステルMS Records1995 全集 チェロ
バルエコ EMI 1995 sonata集 ギター
ブンガルテン MDG 1987,2000 全集 ギター
フィスク MHS 不明 全集 ギター
ガルブレイス Delos 1997,98 全集 ギター
ゴルセス Naxos 1994 sonata集 ギター
ハラツ BIS 1997 sonata集 ギター
ロメロ Delos 1985,86 全集 ギター
ラッセル Telarc 2001,02 p2,3 ギター
テオピーニBrilliant Classics2014,15全集ギター
福田進一 Denon 2000 p3,ch ギター
山下和仁 Crown 1989 全集 ギター
J. キング NALU Music1996-98 全集 ウクレレ
エグエス MA 2000 s1,p3 リュート
ノース Linn 1993 全集 リュート
スミス DHM 1987 p2 リュート
スミス Astree 1999 全集 リュート
エルバス 自主製作?2003 s1,p1,2 マンドリン
クリス・シーリNonesuch 2013 s1,2,p1 フラット・マンドリン
アスペレン Aeolus 2000 s2,3,p3 チェンバロ
エヴァンス Celestial Harmonies2006全集 チェンバロ
レオンハルト DHM 1984 s1,s3 チェンバロ
シュタイアー Teldec 1997 s2,3 チェンバロ
ローレンスキングDHM 1999 p2 バロックハープ
ジョフリー Skarbo 不明 partita集マリンバ
フランコ Quindecim2003 選曲集 リコーダー
グランテ Music&Arts不明 s1,2,p1 ピアノ(Godowsky編)
ナナサコフ Nanasawa 2000 s1,2,p1 ピアノ(Godowsky編)
フェイスアイコンについては「フェイスアイコン」を,評価点については「演奏・録音 評価基準表」をご参照下さい。
「収録曲」は所有しているCDの内容を示しています。"s"はソナタ,"p"はパルティータを示しています。

CD感想

■ フランク・ペーター・ツィンマーマン Frank Peter Zimmermann

収録曲ソナタ第2番,パルティータ第2番,第3番
録音8th-12th June 2020 at the Evangelische Kirche Honrath, Germany (BWV 1002, 1003), 27th-28th March 2021 at Konserthuset Stockholm, Sweden (BWV 1006)
LabelBIS Records
所有盤BIS-2577 (C)(P)2021 Deutschlandradio / BIS Records AB, Sweden (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様(Antonio Stradivarius, Cremona 1711, 'Lady Inchiquin')
収録曲ソナタ第1番,第3番,パルティータ第1番
録音17th-19th August 2021 at the Kammermusiksaal, Deutschlandfunk Köln, Germany, 17th-18th March 2022 and 14th-15th November 2022 at the Immanuelskirche, Wuppertal, Germany
LabelBIS Records
所有盤BIS-2587 (C)(P)2023 Deutschlandradio / BIS Records AB, Sweden (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様(Antonio Stradivarius, Cremona 1711, 'Lady Inchiquin')

フランク・ペーター・ツィンマーマンはご存じの通り,ドイツを代表するモダン楽器の正統派ヴァイオリニスト。 このバッハもモダンなスタイルで演奏されるのかと思っていましたが, かなりピリオド寄りのアプローチで,ヴィブラートを控えめに抑え,装飾をふんだんに大胆に取り入れています(ちょっとやり過ぎ感が...)。 技術的にも安定していて全く不安なく聴けるのはさすがです。

ただ,攻める方向がピリオドに向かっていて,その方向での挑戦とその完成度はもちろん高いと思うのですが, 音楽的な表現においては少し無難に大人しくまとめているかなという気がします。 モダン楽器での現代的で力強く洗練された演奏をイメージしていたので,少し肩すかしを食らった気分は正直あります。 もちろんこれは私が勝手にそう思ってしまったのが悪いのですが。

録音ですが,少し残響が多めで楽器音へのまとわりつきは気になりますが, 響きが空間性を伴ってスッと綺麗に消えてくれるので,音色の濁りも少なく,それほど悪い印象ではありません。 ただやっぱり音色に影響はしているので,もう少し直接音を主体に透明感のある音色で録って欲しかったところです。 録音は多年にわたり会場も4カ所で録られていますが,統一感はあり,この点は良いと思います。

(記2023/10/01)

■ ヒラリー・ハーン Hilary Hahn

[1]
収録曲パルティータ第2番,第3番,ソナタ第3番
録音Recorded at the Troy Savings Bank Music Hall, Troy, New York, June 17-18, December 23, March 23-24, 1997.
LabelSony Classical
所有盤SK 62793 (C)(P)1997 Sony Music Entertainment Inc. (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様
[2]
収録曲ソナタ第1番,第2番,パルティータ第1番
録音February and June 2012, June 2017, The Fisher Center for the Performing Arts, Sosnoff Theater, Bard Collage
LabelDECCA
所有盤00289 483 3954 (C)(P)2018 Decca Music Group (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様

[1]はヒラリー・ハーン17歳で録音されたデビューCDで,[2]はそのおよそ15,20年後に録音・発売されたCD。 これらを合わせて「全集」と呼ぶには少しためらいもありますが,[2]の選曲は全集化を意識してのことと思われるので「全集」として扱いたいと思います。

[1]について,パルティータ第3番は若々しく溌剌と躍動感があり, パルティータ第2番は一転してゆったりしたテンポでじっくり弾いています(シャコンヌは17:47かけています)。 ソナタ第3番は静と動が絶妙にバランスしています。

特筆すべきはやはり不自然なほどに完璧で圧倒的な技術の完成度。 淀みなく滑らかに連なる旋律,そして完璧に溶け合う和音の美しさ。 特にシャコンヌの長調になる中間部の和音の天上的な神々しい響きは本当に素晴らしいです。 若いからこその純粋無垢さ,そして個性とか感情とかそういったことを超越した孤高の演奏だと思いました。

[2]について,突出した技術力に支えられた完璧な演奏である点は[1]と同様ですが, [1]と比べるとずいぶんエモーショナルで人間的,長い年月を経て音楽的成長を遂げた一方で, 失われていったものも大きいと感じざるを得ません。 これはこれで非常に完成度の高い演奏であることは間違いないのですが。 [1]の時期に全集録音されていなかったのが残念でなりません。

録音ですが,[1]は少し残響感があり楽器音にまとわりついて音色に影響しているものの, 明瞭感は十分にあり楽器の質感も伝わってきます。 高域の伸び感もそこそこあります。 不満はあるものの良好と言えます。

一方[2]の録音ですが,残響感は少なめですが会場の響きの影響とやや遠めの距離感のためか, 少し雑味があり音色の透明感が少し良くありませんし,楽器の質感も弱めです。 これでも十分良い録音だとは思うものの少し不満が残ります。 惜しいです。

余談ですが,[1]はこのCD試聴記で一番最初に取り上げたCDであり, この聴き比べのページを作るきっかけにもなった思い出深いCDです。 ということもあり強い思い入れがあることをご了承いただきたく存じます。

(記2023/09/03) DECCA盤追加 ※3回目
(記2012/10/27) ※2回目
(記2002/03/13-10/21) ※1回目

■ 桜井大士 Taishi Sakurai

レーベルLaplace Records
収録曲全集
録音J2018年1月30日,31日,2月1日 岩舟文化会館コスモスホール
所有盤LPDCD101-102 (C)2018 Laplace Records (国内盤)
備考演奏 録音 モダン仕様

一つ一つの音に思いを込めて丁寧に紡いでいく, 起伏を付けず一定の緊張感で弾き進めていく, 日本語が聴こえてくる気がします(多分に先入観が入っていますが(^^;)。 技術的にもキレがあります。 バッハの音楽に対する真摯で謙虚な姿勢が伝わってきます。 今どきの演奏ではない古めかしさも感じますが,これはなかなか聴かせますね。

録音ですが,残響はやや多めで,音色の曇り,明瞭度への影響は少ないものの, 透明感,美しさは失われています。 残響の音楽性への寄与もあまり感じられません。 まあこの録音なら問題ないと思う方も多いとは思いますが, やはり得るものよりも失うものの方が大きいと思います。

(記2018/06/09)

■ ジョニー・ガンデルスマン Johnny Gandelsman

レーベルIn A Circle Records
収録曲全集
録音MSR Studios, NYC (January 4th-6th, 2015), Oktaven Studio, Mount Vernon (September 15th, 2017)
所有盤ICR010 (C)2017 In A Circle Records (輸入盤)
備考演奏 録音 Violin: Giovanni Tononi 1690 モダン仕様

う~ん,技術的には結構巧いのですが,弾き方がぶっきらぼうというか愛想がないというか, 細かく表情付けしたりしようという気がないようです。 演奏者がどのような思いでこの曲を演奏しているのか,私には全く伝わってきませんでした。 これがこの演奏者のスタイルであり個性なのだとは思うのですが,ちょっと損していると思います。

録音ですが,スタジオでの録音のようなので残響はあまりありませんが, スタジオ内の反響の影響か,スタジオの響きの癖が音色に被っていて今ひとつ冴えない音になってしまっています。 基本的には好きな録音なのですが,このすっきりしない音色は惜しいところです。

(記2018/04/15)

■ 土田越子 Etsuko Tsuchida

レーベルEXTON
収録曲ソナタ第1番,パルティータ第2番,第3番
録音2017年9月5-7日 神奈川・相模湖交流センター
所有盤OVCL-00656 (P)(C)2018 Octavia Records Inc. (国内盤)
備考演奏 録音 Antonio Stradivarius モダン仕様

どちらかといえば旧世代の演奏スタイルを継承したような古風な佇まいの演奏です。 全体に手堅くまとめているので強い印象は残さないものの,地味ながら隅々まで細やかに配慮され, 緩急や強弱が丁寧に織り込まれ,伸びやかに表現されているのが好感が持てます。 音に張りと伸びがあるのも良いと思います。

録音ですが,残響が少し多めでしかも間接音比率の方が高いため,せっかくの音色が濁りがちで, ヴァイオリン本来の美しい音色を聴かせてくれる録音ではありません。 明瞭感も今ひとつ,音のヌケも良くなく,もどかしさを感じます。 これは本当に残念に思います。 また,それほど気になるものではないものの,ホール?でのセッション録音にしては低域のノイズが少し大きめに感じられます。 もう少し配慮して欲しいところです。

(記2018/03/21)

■ アナ・ゲッケル Anna Göckel

レーベルNoMadMusic
収録曲全集
録音Église du Bon Secours, Paris, in May 2017
所有盤FF003 (P)(C)2018 NoMadMusic (輸入盤)
備考演奏 録音 Violin: Giovanni Tononi 1690 モダン仕様

端正で美しい好演奏。 音色も伸びやかで透明感があり,爽やかな響きをもたらしていて印象的です。 表現自体はオーソドックスで強く主張する演奏ではありませんが, 気持ちよく聴ける良い演奏でした。 技術的にも全く問題ありません。

録音ですが,少し残響を伴っていて音色に影響しているものの, 音の抜けや伸びは保たれていますし,楽器の質感やニュアンスも感じ取れるので, 十分良好と言える録音です。

アナ・ゲッケルは1992年生まれ,フランスのヴァイオリニスト。 名前の日本語表記を当初「アンナ・ゴッケル」としていましたが,通販サイト等を参考に「アナ・ゲッケル」に変更しました。

(記2018/02/17)
(修2018/04/15)

■ 川田知子 Tomoko Kawada

レーベルMEISTER MUSIC
収録曲ソナタ第1番,第2番,パルティータ第1番
録音Nanso Bunka Hall, Chiba, 30th & 31th March 2017
所有盤MM-4013 (P)(C)2017 MEISTER MUSIC (国内盤)
備考演奏 録音 モダン仕様
レーベルMEISTER MUSIC
収録曲ソナタ第3番,パルティータ第2番,第3番
録音Nanso Bunka Hall, Chiba, 27th & 28th June 2017
所有盤MM-4026 (P)(C)2018 MEISTER MUSIC (国内盤)
備考演奏 録音 モダン仕様

日本人の謙虚でストイックな真面目さ,技術力の高さを象徴するかのような演奏。 感情移入することなく厳しく作品と向き合っています。 恣意的な「ため」や頭拍に過剰に重きを置くこともなく淡々としたリズムで進行していくのも好感が持てます。 声部の描き出しも丁寧で音楽の構造が良く浮かび上がってきます。 この品格のある古風な佇まいが良いですね。

録音ですが,残響感はあまりなく直接音が主体のため基本的には好感が持てるのですが, 録音会場の反射音が強めで音色の濁りが気になります。 好ましい響きの取り入れ方ではなく,これならない方がずっとマシです。 演奏が良いだけにこの録音は本当に惜しいと思います。

2017年秋に1枚目が,そして2018年初めに2枚目が発売となり全集となりました。 録音時期は3ヶ月空いていますが全体として演奏・録音とも統一されています。

(記2018/02/12) 2枚目を追記
(記2017/10/14)

■ 若松夏美 Natsumi Wakamatsu

レーベルArte dell'arco
収録曲全集
録音2014年3月18-20日,2015年8月12-14日,10月9-11日 コピスみよし,埼玉
所有盤ADJ 055 (P)(C)2017 Arte dell'arco (国内盤)
備考演奏 録音 violin: Carlo Tononi, Bologna 1700, bow: Anonymous (probably French, late 18th century) バロック仕様

一音一音丁寧に確かめるように弾かれていて少々地味で渋く内省的です。 気負いや力みのない自然体の音楽はとても懐が深く味わいがあります。 技術も確かで安心して聴くことが出来ます。

録音ですが,残響というか会場の響きが楽器の音色を少し曇らせているのが少し残念なところですが, 音の伸びやニュアンス,質感はそれなりに感じられるのでまあ悪くはないです。 響きが心地よさよりも音色を損なう負の効果の方が大きく,これならない方がマシで, もっと透明感のあるクリアな音で録ってくれていたらもっと楽しめたのにと思います。

あと,ホールでの録音としてはバックグラウンドノイズが大きめで, それほど邪魔にはならないものの,もう少し録音環境に気を遣って欲しいと思いました。 まあ低域までフラットに捉えていてリアルさに一役買っている面はありますが。

(記2018/01/27)

■ 高橋和歌 Waka Takahashi

レーベルN.A.T
収録曲パルティータ第3番
録音記載なし
所有盤NAT17181 (P)(C)2017 N.A.T co., Ltd. (国内盤)
備考演奏 録音 モダン仕様

淡々とキッチリと,そして美しく整ったいかにも日本人らしい生真面目な演奏。 この控え目で清廉な感じにとても惹かれます。 技術力も全く問題ありません。

しかし,録音が今ひとつ良くありません。 残響が多く直接音よりも間接音が主として聴こえるため,明瞭感が落ち音色がくすみがちです。 せっかくの美しい音色を損なっているのが残念でなりません。 残響が多い割にはマシな方なので許せる方は多いと思いますが,私としては残念です。

高橋氏は2009年にソナタ第1番とシャコンヌを収録したディスクを発売されていました(→こちら)。

[併録曲]
ピゼンデル:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ イ短調
ダウランド(高橋和歌編):憂鬱なガイヤルド
ロージャヴェルジ:望郷 - ハンガリーの夢
パガニーニ:無伴奏ヴァイオリンソナタ イ長調 MS. 83
青森県民謡(藤本幸男編):津軽じょんがら節
アイルランド民謡(高橋和歌編):サリー・ガーデン

(記2018/01/07)

■ ミリアム・フリード Miriam Fried

レーベルNimbus Alliance
収録曲全集
録音Jerusalem Music Center, December 2016
所有盤NI 6351 (P)(C)2017 Wyastone Estate Limited (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様

同氏20年ぶり2回目,70歳での録音。 速めのテンポで淡々と淀みなく演奏される点は1回目と同様ですが, ニュアンスが多彩な円熟した味わい深い音楽に仕上がっています。 技術的にも衰えはほとんど感じさせず,正確で安定しています。 インパクトはありませんが,聴く度に感銘を受ける好演奏です。 音楽的な深化と技術の衰えが交差するベストタイミングを狙って録音されたのでしょうね。

録音ですが,残響の影響でわずかながら音色にくすみが感じられるものの, 直接音が主体で細部も聴き取れますし,楽器の質感も感じられます。 もう少し透明感,ヌケの良さがあると良かったのですが,これでもまずまず良好です。

なお,本ディスクはレーベル公式のCD-R盤です。

(記2018/01/01)

■ ミリアム・フリード Miriam Fried

レーベルLYRINX
収録曲全集
録音du 8 au 13 décembre 1997 à la SALLE BLACHIÈRE
所有盤LYR 187/188 (P)(C)1999 LYRINX (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様

速めのテンポで淡々と,しかし淀みなく,そして生き生きと生気に溢れているのが良いですね(特にソナタ第3番,パルティータ第3番が秀逸)。 技術的にも万全で隙がありません。 50歳くらいでの録音ですが,フレッシュな印象を受けます。

録音ですが,少し残響が多めであり,楽器音に癖のある金属的な響きが重畳されて音色を損なっています。 この程度であれば問題ない方も多いとは思いますが,私としてはあまり良い印象ではありませんでした。 もっと楽器本来の透明感のある美しい音色を大切にした録音を望みたいところです。

ミリアム・フリードは1946年ルーマニア生まれ,イスラエル出身で, 1968年のパガニーニ国際コンクール優勝,1971年のエリザベート王妃国際コンクール優勝といったコンクール歴を持っています。

本ディスクは廃盤になってから久しく,少々入手がしづらい状況です。

(記2018/01/01) 2回目
(記2002/07/15) 1回目

■ 五嶋みどり MIDORI

レーベルAccentus Music
収録曲全集
録音2016年8月8日-11日 ドイツ,ケーテン城
所有盤KKC-9261 (ACC10403) (C)2017 Accentus Music (国内盤)
備考演奏 録音 モダン仕様

2017年5月5日にNHK BSプレミアムで放送された番組の感想を記事にし,ディスクメディアでの発売を期待する, と記載していましたが,この12月にようやくBlu-ray DiscとDVDで発売されました。

演奏も録音も素晴らしいこの人類の至宝とも言うべき映像作品がディスクメディアとして発売されたことを本当にうれしく思います。

(記2017/12/30)

~~~ 以下 2017年5月5日の記事 ~~~

レーベルAccentus Music
収録曲全集
録音2016年8月8日-11日 ドイツ,ケーテン城
所有盤※NHK BSプレミアムでの放送
備考演奏 録音 モダン仕様

これは2017年の3月にNHK BSプレミアムで放送された番組の感想です。 本CD試聴記では放送番組は基本的には取り上げていないのですが,これは特別に感銘を受けたので取り上げることにしました。 ちょっとタイミングを逸した感はあるのですが...ご了承願います。

演奏自体は2013年の全集とほぼ変わらぬブレない一貫した素晴らしい演奏です。 この演奏を映像で鑑賞出来るのはまさに至福と言うほかありません。

そしてさらに特筆すべきはその録音です。 この曲集はバッハがケーテン宮廷楽長だった頃の作品ということで, 五嶋みどりさんがゆかりの地であるケーテン城を訪れ,城内の幾つかのフロアで録音をされています。 吹き抜けのやや容積のあるフロアでの録音もありますが,小さめの部屋での録音もあります。 コンサートホールやや教会の録音のような豊かな響きは全くありません。 これが好録音につながっています。

ソナタ第2番,第3番,パルティータ第2番はやや広めのフロアで録音されているためか,また, 少しマイクポイントが遠めなのか,部屋の響きが少し感じられますが, ソナタ第1番,パルティータ第1番,第3番はほとんど響きがなく,適正な距離感で極めて明瞭に録られています。 弓が弦に触れるときの微妙な音や左手の運指に伴う演奏雑音を含め,演奏者の発するあらゆる音が克明に聴こえてきます。 質感,音色,ヌケの良さ,どれも申し分ありません。

特に後者は私が理想とする好録音にかなり近いです(→「好録音について考える」をご参照ください)。 残響がないから鑑賞に向かない,音楽的に劣る,といったことは全くありません。 残響の有無と音楽性とは基本的に無関係であるということを,この録音は見事に証明してくれています。

ソナタ第3番とパルティータ第2番がARTE concertというサイトで公開されていました。 録音がベストの楽曲の方ではないので上記の感想が伝わらないかもしれませんが。

この人類の宝のような映像作品,ぜひディスクで発売して欲しいものです。

(記2017/05/05)

■ パトリス・フォンタナローザ Patrice Fontanarosa

レーベルPolymnie
収録曲全集
録音記載なし(2016年5月 フランス,クルトンピエル)
所有盤POL 118 130 (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様

年齢によると思われる技術の衰えでわずかにキレが悪いのは否めませんが, 終始速めのテンポで前向きで勢いがあり,音楽に淀みがありません。 そしてかつ得も言われぬ味わい深さがあります。 しかし,やはりもう10年早く録音してくれてたらなぁと思わざるを得ません。

録音ですが,残響はやや多めですが,比較的近い距離で録音されているためか,直接音もそれなりに感じられ, 楽器の質感もそれなりに保たれているため,悪い印象ではありません。 もちろんもう少しクリアに録って欲しかったとは思いますが,十分許容範囲です。

フォンタナローザ氏はフランスのヴァイオリニストで,1942年生まれで現在75歳とのことです。 いつ録音されたのか明記されていないのですが,もしここ数年で録音されたのなら, かなり健闘されていると思います。

蛇足ですが,デジパックの裏面に, 「偉大なバイオリニスト パトリス・フォンタナローサが世界中で演奏を重ねてきたバッハ無伴奏ソナタとパルティータの待望の録音である。」 と日本語だけで記載されているのがなんとも不思議な感じです。

(記2017/12/09)

HMV Onlineiconに録音データが記載されていましたので, それを信じて記事を修正させていただきました(HMV Onlineに感謝)。

(記2018/02/12)

■ アンティエ・ヴァイトハース Antje Weithaas

(1)BACH & YSAŸE 1
レーベルAvi Music
収録曲ソナタ第1番,パルティータ第2番
録音X 2012, Köln, Deutschlandfunk Kammermusiksaal
所有盤8553320 (P)(C)2014 Deutschlandradio/Avi-Service (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様 Peter Greiner 2001年製
(2)BACH & YSAŸE 2
レーベルAvi Music
収録曲ソナタ第2番,パルティータ第3番
録音III 2015, Köln, Deutschlandfunk Kammermusiksaal
所有盤8553346 (P)(C)2016 Deutschlandradio/Avi-Service (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様 Peter Greiner 2001年製
(3)BACH & YSAŸE 3
レーベルAvi Music
収録曲ソナタ第3番,パルティータ第1番
録音III 2015, Köln, Deutschlandfunk Kammermusiksaal
所有盤8553381 (P)(C)2017 Deutschlandradio/Avi-Service (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様 Peter Greiner 2001年製

モダン楽器による演奏。 抑制の効いた演奏ながら,力強くキレがあり,速めのテンポを基調に緩急強弱を巧みに活かした表情豊かな演奏です。 透明感の高い音色の美しさ,和音の溶け合った響きの美しさ,隅々まで神経の行き届いた完成度の高さは本当に素晴らしいです。 これぞモダン楽器の表現力をフルに活用した,現代的に洗練された演奏と言えるのではないかと思います。

録音ですが,わずかに残響を伴いながらも楽器音を邪魔するほどではなく, 明瞭さ,音色の自然さ,透明感などどれをとっても満足できるレベルで仕上げられています。 もう少し質感を強調しても良いかとは思いますが,これでも十分良いと思います。 なお(1)はやや残響が多めで(2)(3)に比べると少し落ちます。

ヴァイトハース氏は,アルカント四重奏団の第1ヴァイオリン奏者。 (3)でバッハとイザイの無伴奏曲を収める三部作が完結しましたので,以前の感想と併せて再編しました。

(記2017/10/14) ※(3)追記
(記2016/08/07) ※(2)追記
(記2014/12/23) ※(1)

■ ヨゼフ・スーク Josef Suk

(1)
レーベルEMI
収録曲全集
録音Recorded: 1970, Abbey Road Studios, London.
所有盤5 73644 2 (P)1971 EMI Records Ltd. Compilation and digital remastering (P)&(C)1999 EMI Records Ltd. (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様
(2)2017年リマスター盤
レーベルWarner Classics
収録曲全集
録音18-25. IX. 1970. Abbey Road Studios, London
所有盤WPCS-28097/8 (P)(C)1971 Remasterd (P)2017 Parlophone Records Limited. (国内盤)
備考演奏 録音 モダン仕様

往年の正統派の演奏で,力強く張りのある芯の太い音色が印象的です。 折り目正しく丁寧であり,細部まで落ち着きを持って弾き込んでいます。 真摯で格調高く,そして個性を前面に出すことなく,この曲の本来の素晴らしさを見事に描き出していると思います。

録音ですが,残響はそれほど多くはないのですが,スタジオの響きが被ってやや曇っていると同時に, 変にキンキンした癖のある音色になっています。 EMIらしいといえばEMIらしいのですが,やっぱりすっきりしない録音です。 1970年の録音としてはクオリティはあまりよくないように思います。

このディスクは長い間廃盤で手に入りにくい状況でしたが,2014年にタワーレコードが復刻をされていました(現在は廃盤のようです)。 2017年になってリマスター盤として再び現役盤復帰しました。

リマスター盤の音質ですが,基本的な音質について大きく改善されたわけではありませんが, 特に低域のレンジ感が広がり,リアリティが増しています。 マスターテープに起因すると思われる音質の悪さは変わりがなく,この点が改善されなかった(出来なかった?)のは少々残念です。

(記2017/10/09) ※2017年リマスター盤追記
(記2014/10/11) ※タワーレコード復刻情報追記
(記2012/10/27) ※2回目 加筆
(記2002/05/09)(記2002/10/07)

■ リカルド・オドリオゾラ Ricardo Odriozola

レーベルAmethyst Records
収録曲全集
録音Herdla Church Askøy, Norway, March 27th 2004 - September 30th 2006
所有盤品番なし Amethyst Records (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様

意欲がよく伝わってくる,勢いのある演奏。 技術的にものすごく上手いというわけではありませんが, 自己の技術の限界を見極めて破綻寸前まで攻めてぎりぎりで踏みとどまっているという感じで, その結果なかなか聴き応えのある音楽に仕上がっています。 パルティータ第3番は弾き込み不足なのか少し粗が目立つのが残念ですが,それ以外の曲は良いと思います。

録音ですが,残響のまとわりつきがやや気になるものの, オンマイク気味で直接音が支配的なためニュアンスもしっかりと聴き取れるまずまずの好録音です。 ただしオーディオ的な品質は「並」です。

リカルド・オドリオゾラ氏の詳細はよくわかりませんが現在ノルウェーにお住まいのようです。 自主制作盤のようで,Amethyst Recordsから注文して入手しました(支払いはPayPalのみ)。 ノルウェーからご本人の名前(サイン入りの送り状も同封)で送ってきました。

(記2017/08/15)

■ ステファノ・モンタナーリ Stefano Montanari

レーベルParagon(雑誌)
収録曲全集
録音13-16 agosto 2011, Auditorium Modernissimo, Nembro
所有盤AMS 108-2/109-2 (P)(C)2012 PARAGON (輸入盤)
備考演奏 録音 バロック仕様

バロック・ヴァイオリンによる演奏。 かなり好き勝手にやっています。 意欲的に攻める演奏で,即興的にいろいろな表現を試しているのは良いのですが,正直ちょっとやり過ぎと思うところもあります。 面白いとは思うのですが,あまり好きになれる演奏ではありませんでした。 技術的にはかなり上手いと思います。

録音ですが,楽器音に残響がやや多めに被って音色を損なっており,中域の癖が強く, 高域に伸びない割に妙にキンキンしているなど,あまり好ましく思えませんでした。 まあそんなに悪くはないのですが,私の好きな録音ではありません。 もう少しすっきりと透明感のある音色で録音して欲しいものです。

Élite Amadeusというイタリアの雑誌の付属CD。 いつも参考にさせていただいているFeFeFe's Bar(シャコンヌ狂時代)で知ったディスク(有り難うございました)。 海外のアマゾンで買えるとのことでしたので,早速Amazon.itに注文し,無事に入手しました。 現時点で品切れになっているのでぎりぎり間に合ったようです。 ラッキーでした。

(記2017/08/05)

■ ヘンリク・シェリング Henryk Szeryng

(1)CD初期盤
レーベルDeutsche Grammophon
収録曲全集
録音1967年7月 スイス
所有盤F66G 20001/2 (419 307-2) (P)Polydor K.K., JAPAN (国内盤)
備考演奏 録音 モダン仕様
(2)OIBPリマスター盤
レーベルDeutsche Grammophon
収録曲全集
録音1967年7月 スイス
所有盤UCCG-9719/20 (453 0052) (P)1968 Deutsche Grammophon (C)2007 Universal Classics & Jazz (国内盤)
備考演奏 録音 モダン仕様

思わず居住まいを正して聴きたくなるオーソドックスで格調の高い演奏。 技術的な完璧さはもとより,重音や複数の声部が絡み合う表現など,考え抜かれ,磨き抜かれていて,聴くほどにこの演奏の凄さに感心してしまいます。 しかし,いまだに輝きを失うことのない名演奏だと思う一方で,どっしりと構えた動感の乏しい演奏はさすがに時代を感じさせる古いスタイルだなぁと思うのも正直なところです。

録音ですが,残響感が少なく細やかなニュアンスまで聴き取ることのできる好ましい録音ではあるのですが, やや録音会場の響きがのって音色に癖があり,透明感や音の伸び,ヌケが阻害され,古臭い音色になってしまっているのが残念に思います。

この演奏はシェリング2回目の全集録音で,LPの時代に最初に購入して聴き込んだ思い出深いものです。 当時から高評価を得ていた名盤で,現代でもその高評価が続いているのも頷けます。 メジャーレーベルということもあって,何度も再発売され続けていますね。

現在現役で流通しているのはOIBPリマスタリングされたものだと思います。 CD化当初の盤と聴き比べてみると,それなりに鮮明さが改善されていました。 買い直した価値はあったかなと思います。

(記2017/07/17) 2回目
(記2002/06/05) 1回目

■ フランチェスコ・テオピーニ Francesco Teopini

レーベルBrilliant Classics
収録曲全集
録音28 December 2014 - 14 January 2015, Palazzo di Assisi, Perugia, Italy
所有盤95424 (P)(C)2016 Brilliant Classics (輸入盤)
備考演奏 録音 クラシック・ギターによる演奏

クラシック・ギターによる演奏。 実に生真面目に丁寧に仕上げています。 教科書的で遊びがなく,またギターを活かすような独自編曲もあまりされていません。 あまりワクワクする演奏ではないのですが,じっくり聴くには良いと思います。 技術的にもそつがなく全く問題ありません。

録音ですが,少し残響はあるものの,ギターそのものの響きを素直に捉えた好録音です。 これも特に優れているとは思いませんが,欠点が少なく,音楽の鑑賞を阻害する要素がほとんどないのが良い点です。

(記2017/07/17)

■ イェルーン・デ・グルート Jeroen De Groot

レーベルJDG-RECORDS(自主制作?)
収録曲全集
録音不明(2016年と思われます)
所有盤ISBN 978-90-389-2557-8 (P)2016 Jeroen De Groot (輸入盤)
Apple Musicで試聴 →ディスクを入手しました
備考演奏 録音 モダン仕様

力強く勢いがあり,音楽に緩みが全くありません。 演奏はちょっと荒っぽく雑とも思えるところはあるのですが, 上手下手ということではなく,粗くなることを厭わず自分の目指す表現を貫き通しているように思います。 この潔さが良いと思います。

録音ですが,残響感はあまりないのですが,録音環境の響きで音色に濁りが感じられます。 比較的近くで録音しているのか,ニュアンスや質感は伝わってくるので悪くはないのですが, この濁りだけが残念でなりません。

Apple Musicで試聴しました。 デ・グルートはオランダのヴァイオリニスト。 2枚のCDと1枚のDVDが付属したハードカバーの本のようです。 Amazon.co.jpでは注文出来なかったので, 公式Webサイトからbol.comという通販サイトに飛び, オランダ語と格闘して何とか注文し,到着を待っているところです。 送料込みで約€29でした。 到着したらまたレポートします。

(記2017/05/16)

注文してから約2ヶ月,運送途中で行方不明になったのではないかと諦めかけていた頃にやっと届きました。 立派な装丁のハードカバーの本で,全集を収めたCD 2枚とドキュメンタリーのDVD 1枚が付属していました。 ドキュメンタリーは2016年3月21日に行われた教会でのコンサートの一部とインタビューが収録されています。 CDはこのコンサートのライヴではなく,おそらく同時期にセッションで収録されたものと思われます。

本自体は結構分厚いのですが,オランダ語,英語,ドイツ語,フランス語,イタリア語,スペイン語,中国語の7カ国語で記載されていて, 分量的には一般的なCDに付属している解説書程度でした。

これはDVDのメニュー画面です。なんちゅう行儀の悪い格好で弾いてるんでしょうか!(^^;

コンサート会場の教会です。

楽器のボティにマイクを付けて演奏していますね。

(記2017/07/16)

■ 杉江洋子 Yoko Sugie

レーベルLeavesHMO
収録曲全集
録音13-16 December 2016
所有盤HMOC 17839/40 (P)2017 ヒビキミュージック (国内盤)
備考演奏 録音 モダン仕様

バッハだからといって何か特別なことをされているという感じではありません。 今まで長い年月をかけて積み重ねてこられた手法, すなわちベストパフォーマンスを発揮できるご自身のやり方でこの曲に向き合われたのではないかと思います。 その結果,ごく自然に語りかけてくるような,陰影に富む味わい深い演奏に仕上がっています。 ピリオド奏法を取り入れる演奏が多い昨今, モダン楽器の伝統的なスタイルの延長線上でこのような優れた演奏が生み出されたことを大変うれしく思います。

そして録音ですが,少し残響があり,やや距離感があるために残響の影響を受けているのですが, それでも直接音が主体であり,ニュアンスも伝わってきますし楽器の質感も感じ取ることが出来ます。 もう少し音色に透明感と伸びが欲しいところですが,それでもソロ楽器の録音としてかなり良好な部類に入ると思います。

ということで,演奏も録音も良い,長く聴き続けたいと思える良盤でした。

杉江洋子さんは京都出身,幼少の頃からコンクールで優秀な成績を収められ, 京都堀川音楽高等学校,東京藝術大学・大学院を卒業,神戸室内合奏団,大阪センチュリー交響楽団を経て, 現在は京都市交響楽団の第二ヴァイオリン副首席奏者を務められているとのことです。

(記2017/06/18)

■ ニコライ・マドヤン Nikolay Madoyan

レーベル自主制作?
収録曲全集
録音不明
所有盤不明 (P)2014 Nikolay Madoyan (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様

オーソドックスで力強くまた整然とした立派な演奏です。 技術的にもかなり巧いです。 演奏上の傷はいくらか散見されるものの,全体のできの良さのほうが勝っているのでほとんど気になりません。特にパルティータ第2番,ソナタ第3番あたりの充実ぶりはなかなかのものです。

録音ですが,残響はやや多く残響時間もかなり長いのですが, 楽器音の直接音成分が支配的で残響はその後方にふわっと広がるように取り入れられているため, 印象は悪くありません。 音色は残響のまとわりつきの影響を受けてやや変化していますが,ニュアンスや質感は十分に伝わってきます。 もう少し直接音に透明感があれば良かったのですが。 でもこれは残響量の割に良いと思います。 私の好みではありませんが,上手く録っていると思います。

この録音,YouTubeでは全曲が公開されており, ディスクでの発売もありそうに見えるのですが, 本当にあるかどうかはわかりませんでした。 Amazon.co.jpApple Musicでは前半の3曲のみ公開されているという中途半端な状態です。

これを全曲扱いにするか迷いましたが,演奏も録音もそこそこ良かったので, ちゃんと全曲公開されることを期待して全曲扱いとしました。

演奏者のマドヤンはWikipediaによると, 1973年生まれアルメニア出身のヴァイオリニストとのことです。

(記2017/05/25)

■ デネス・ジーグモンディ Denes Zsigmondy

レーベルJuneau Bach Society
収録曲全集
録音1995年5月
所有盤CD JBS 1001/2 Juneau Bach Society (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様

気力の漲る意欲的な演奏。 年齢からくる技術的な衰えか,キレが良くないところが散見されますが,ほとんど気になりません。 むしろ勢いのある演奏で味わい深く感じさせるところなど長年の積み重ねを感じさせます。

録音ですが,少し残響が多めなのですが,直接音が主であるため明瞭感の低下や音色への影響は少なく,印象は悪くありません。 もちろん残響を抑えてもっとクリアーに録って欲しかったところですが,これでも十分許容範囲です。」

ジーグモンディ氏は1922年生まれ,ハンガリー出身,2014年に亡くなられたとのことです。 これは73歳くらいでの録音になります。

(記2017/05/13)

■ イルジー・ヴォディチカ Jiří Vodička

レーベルSupraphon
収録曲パルティータ第3番
録音2014年2月10,11日,3月12,13日,4月1-3日 プラハ,マルティーネク・スタジオ
所有盤SU 4175-2 (P)(C)2014 Supraphon (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様
併録曲 パガニーニ:『うつろな心』による序奏と変奏曲作品38
クライスラー:レスタチーヴォとスケルツォ・カプリス
エルンスト:シューベルトの『魔王』による大奇想曲作品26
イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ ニ短調作品27
パガニーニ:24のカプリース作品1より 第5番,第15番,第24番
ハース:パガニーニの主題による小変奏曲

一聴しただけで技術力の高さがわかるほどキレのある,そして音色の透明さ,美しさのある演奏です。 ヴィブラートを少し強めにかけた演奏は少し古風な雰囲気もあるのですが, 軽やかで若者らしい爽やかさを感じる好演奏です。

録音ですが,やや残響のまとわりつきが気になるものの,直接音が主体であり, 明瞭感,音色の自然さ,ヌケの良さもそこそこ確保されていてまずまず良好と言える録音です。 一般的にも良い録音の部類に入るのではないかと思います。 私としてはもう少し残響を抑えてすっきり録って欲しかったと思いますが,十分許容範囲です。

ヴォディチカ氏は1988年生まれ,チェコ出身のヴァイオリニスト。 本ディスクは26歳頃の録音になると思います。 今後の活躍に期待。

(記2017/05/03)

■ オレグ・クリサ Oleh Krysa

レーベルEXTON
収録曲ソナタ第1番,パルティータ第2番
録音2016年8月29日,11月28日 神奈川・相模湖交流センター
所有盤OVCL-00615 (P)(C)2017 Octavia Records Inc. (国内盤)
備考演奏 録音 モダン仕様 Boris Sverdlik, Cremona 2013, バロック・ボウ使用
併録曲 バッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲ニ短調 BWV 1043

往年の巨匠のごとく,古風なスタイルで格調高く奏でられた真面目で立派な演奏です。 年齢からくる技術の若干の衰えは感じるものの,極めて安定しており,含蓄のある演奏を聴かせてくれます。 モダン楽器ですが,バロック・ボウを使っているためか,厳しさの中にも柔らかな表情が見られるのも良いと思います。

録音ですが,やや距離感があり,残響が主で直接音がほとんど感じられず,音色は濁りバランスは崩れ, 本来もっているであろうニュアンスもかなり失われているように思います。 オーディオ品質は良いのかもしれませんが,楽器本来の音色がこんなに失われてしまっては意味がありません。 残念な録音です。

クリサ氏は1942年生まれ,ウクライナ出身で,ダヴィド・オイストラフの高弟とのことです。 1963年のパガニーニ国際コンクール優勝,1966年のチャイコフスキー国際コンクール第3位などの実績のある実力者で, ベートーヴェン弦楽四重奏団の第1ヴァイオリンも務めたとのこと。 これは75歳くらいでの録音になりますが,20年くらい前に録音していてくれたらなぁと思ってしまいます。

(記2017/04/30)

■ アレクサンドラ・クルス Aleksandra Kuls

レーベルDUX Recording Producers
収録曲パルティータ第2番
録音The Concert Hall of the Krzysztof Penderecki European Centre for Music in Lusławice, Poland.
所有盤DUX 1145 (P)(C)2016 DUX (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様 Pietro Guarneri(?) (1750)
併録曲 ペンデレツキ:ラ・フォリア
プロコフィエフ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ作品115
イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第5番

オーソドックスで教科書的に整った演奏。 時折装飾が入るものの,どちらかといえば旧世代の様式を引き継いでいるように思います。 技術的にも優れ,隅々までコントロールが行き届いています。 まだまだ個性を発揮するまでにはなっていませんが,これを起点に伸ばしていけばよいと思います。 今後の成長と活躍に期待。

録音ですが,少し残響感があり音色に影響しているものの,音自体に伸びがあり,印象は悪くありません。 楽器の質感やニュアンスも感じられます。 ソロ・ヴァイオリンの録音としては標準的で,客観的にも良好な部類に入るように思います。

アレクサンドラ・クルスは1991年生まれ,ポーランド出身の若手ヴァイオリニスト。 ヨーゼフ・シゲティ国際コンクール等で優秀な成績を収めたようです。

(記2017/04/16)

■ ナタン・ミルシテイン Nathan Milstein

(1)(CD化初期の頃の盤)
レーベルDeutsche Grammophon
収録曲全集
録音London, Conway Hall (Wembley, Brent Town Hall), 2, 4, 9/1973
所有盤POCG-3305/6(423 294-2) (P)1975 Polydor International GmbH (国内盤)
備考演奏 録音 モダン仕様
(2)Deutsche Grammophon THE ORIGINALS (OIBPリマスター盤)
レーベルDeutsche Grammophon
収録曲全集
録音London, Conway Hall (Wembley, Brent Town Hall), 2, 4, 9/1973
所有盤457 701-2 (P)1975 Polydor International GmbH (C)1998 Deutsche Grammophon GmbH (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様
(3)TOWER RECORDS VINTAGE SA-CD COLLECTION Vol. 3
レーベルDeutsche Grammophon
収録曲全集
録音1973年2月,4月,9月 ロンドン,コンウェイ・ホール
所有盤PROC-2010/1 (P)1975 Deutsche Grammophon GmbH, Berlin (国内盤)
備考演奏 録音 モダン仕様

ミルシテインが70歳になる頃に録音された2回目の全集。 もしかしたら技術的な衰えがあるのかもしれませんが,そんなことは全く感じさせません。 紛れもなくヴァイオリンによって奏でられている音楽なのに,ヴァイオリンが意識からふっと消え,純粋に音楽だけが鳴り響く感じがするのです。 ヴァイオリンという楽器の持つ制約から音楽を解き放っているとでも言いましょうか。 数多の演奏とは明らかに違う次元・高み・深みに達していると思います。 私が言うまでもありませんが,本当に素晴らしい演奏ですね。

録音ですが,やや多めに残響が取り込まれており,楽器音に被って音色を濁しており, 鮮度やニュアンスを損なう要因になっていますが,それでも楽器音をしっかりと捉えているので許容範囲です。 この程度であればむしろ好む方がいらっしゃるとは思いますが,私としては1回目の全集のようなストレートで生々しい録音でないのが本当に残念でなりません。

なお,(1)の初期の頃のCDに比べ,(2)のOIBPリマスター盤は鮮度が改善され,良い状態になりました。 タワーレコードの企画盤として2017年にSACDハイブリッドで発売された(3)は,さらに付帯音的な雑味が軽減われ,わずかですがさらに改善がみられました。 まあ(2)のOIBPリマスターがそこそこ良い品質でしたので,欲を言わなければ(2)でも十分かもしれません。 とはいえ,最良の状態で復刻されたことは喜びたいと思います。 タワーレコードに感謝!

(記2017/04/16) 3回目
(記2012/11/07) 2回目
(記2002/05/20) 1回目

■ ナタン・ミルシテイン Nathan Milstein

レーベルEMI
収録曲全集
録音26 & 31 March 1954(Sonata No.1), 6 February 1956(Partita No.1), 27 December 1956(Sonata No.2), 23-24 March 1954(Partita No.2), 5, 16, 17 March 1956(Sonata No.3), 28 December 1955(Partita No.3), Studio A, 46th Street Studio, NY.
所有盤ZDMB 64793 2 3 (P)1955-66 (C)(P)1993 Angel Records(compilation and digital remastering) (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様

恐ろしいほどにキレが良く,その潔さが痛快極まりなし! 変な言い方ですが,過剰なまでにコントロールが効きいたオーバーシュートする音楽表現が何とも言えません。 最も覇気のある充実した時期の巨匠の強烈な個性に圧倒される,ものすごく尖った演奏です。 リピートの省略が多いのが残念ですが,時代を思えば仕方なしですかね。

これは1回目の全集録音で,一般的には1973年の2回目の全集の方が評価が高いと思いますが, この1回目の録音も捨てがたいです。 私はむしろ1回目よりこちらの方が好きかもしれません。 ミルシテインの全盛期の魅力がこの全集に凝縮されていると思うのです。

録音はスタジオでのモノラル録音で,わずかに残響が感じられる曲もありますが,その影響はほとんどありません。 少し距離感があって,そのためにわずかに明瞭感,鮮明さが落ちているのが残念ですが, それでもこの時期のモノラル録音としてはかなり良好な状態と言えると思います。 演奏をストレートに生々しく伝えてくれる点を大きく評価しました。 好録音です。

もちろん1950年代半ばの録音なのでクオリティは良いとは言えませんし, マスターテープの問題と思われる音の曇りが感じられるところもあります。 古い録音なのでこれは仕方ありません。

この演奏は時々復刻はされているようですが,もしかしたら今は現役盤がないかもしれません。 入手困難ではないと思いますが...

(記2017/04/16) 4回目
(記2012/11/04) 3回目
(記2008/08/01) 2回目
(記2002/09/05) 1回目

■ ヨーゼフ・シゲティ Joseph Szigeti

(1)旧盤
レーベルVanguard Classics
収録曲全集
録音1959年6月~1960年4月※1
所有盤KICC 8585/6 (P)1960 King Record Co., Ltd. Recorded by Omega Record Group, USA (国内盤)
備考演奏 録音 モダン仕様
(2) xrcd24復刻盤
レーベルVanguard Classics
収録曲全集
録音1955年10月17-18(ソナタ),1955年7月(パルティータ第1番),1955年10月18,20日(パルティータ第2番),1956年3月2日(パルティータ第3番) ニューヨーク CBS 30丁目レコーディング・スタジオ
所有盤GCAC-1002-3 (P)1955,56 (C)2017 Global Cultures Agency, Inc. (国内盤)
備考演奏 録音 モダン仕様

シゲティの演奏は孤高の演奏であると高く評価される一方で, 技術的に難があるとか,技術の衰えが否めないとか,たどたどしいとか, いろいろと欠点も指摘され,評価が分かれていると思います。

私も2002年に初めて聴き,最初の感想を書いたときには, 技術的な不安定さが気になってどちらかといえば否定的な感想を持ったため, それ以来手にとって聴き返すことはありませんでした。

高音質盤で復刻されたのを機に,ほぼ15年ぶりに聴き直してみました。 不思議なことに,技術的に難があるとか,衰えが感じられるとか, そういった技術面に課題を残す演奏には全く聴こえませんでした。 彼にとっては演奏を隅々まで完璧に仕上げることよりも, 音楽に全身全霊で魂を込めることの方が優先事項であり, この演奏は彼が進んで選んだ表現様式による完璧に完成された作品そのものなのであろう, と思えてきました(→という自分に一番驚いています(^^;)。

この演奏が好きかどうかはまた別問題なのですが,少なくとも楽しめるようにはなりましたし, いろいろと発見があったのは大きな収穫です。

録音はモノラルで,スタジオで録音されたようです。 曲により多少のばらつきはありますが,残響は少なめで楽器音を明瞭に捉えていて, また,古い録音ですが音の曇りは最小限で聴きやすい録音です。 1955, 56年の録音としてはまずまず良好と言えると思います。

xrcd24の新しい復刻は,わずかながら雑味が減少し,ぼやけたところすっきりとがシャキッとした印象があります。 ただ,旧盤もそれほど悪かったわけでもなく,また,マスターに起因する音の傷は同様にあるため, 驚くほどの改善にまではいかなかったようです。 とはいえ,最良の状態で復刻されたことを喜びたいと思います。

※1: このディスクの解説では録音年が1959~60年になっていました。 正しい録音年は1955~56年で,最近のものは訂正されているようです。 2002年にこの件について調べた記事を書いていました(→こちらこちら)。

(記2017/04/08) 2回目
(記2002/07/25) 1回目

■ ミシェル・ロス Michelle Ross

レーベルAlbany Records
収録曲全集
録音December 4 and 5, 2013; January 31 - February 2, 2014; March 19-21, 2014 at the American Academy of Arts and Letters, New York
所有盤TROY1662/63 (P)(C)2017 Albany Records (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様

モダン楽器による演奏。 しなやかで伸びのあるフレージングが素晴らしい好演奏。 滑らかな音の移り変わり,音色の美しさも特筆できます。 技術的にも優れ,コントロールが隅々まで行き届いています。 これは出色の出来映えで,思わず聴き惚れてしまいます。

録音ですが,若干の響きのまとわりつきはあるものの,楽器音を適度な距離感でニュアンス豊かに捉えています。 弓が弦に触れる微妙な感触まで聴き取ることができます。 好録音です。

(記2017/04/01)

■ モブセス・ポゴシアン Movses Pogossian

レーベルNEW FOCUS RECORDINGS
収録曲全集
録音December 21-23, 2015 and May 28-30, 2016, at the Recording Studio of the UCLA Herb Alpert School of Music
所有盤FCR178 (P)(C)2017 Movses Pogossian (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様

全体に遅めのテンポで音楽が進行していきます(なのでCD 3枚組になっています)。 ところどころ大見得を切るようなところはありますが,どちらかといえば正統派の演奏であり, 技術的にもそこそこの安定感があり,ハーモニーも美しく,充実感があります。 正直言うと中にはテンポが遅すぎてちょっと退屈してくる楽章ないことはないのですが, 全体としては好印象でした。

録音ですが,スタジオでの録音のためか,残響は控え目であり,適切な距離感で, 弦の上を滑る弓の微妙なニュアンスも聴き取ることが出来る好録音です。 オーディオ的にはあまり魅力がない録音かもしれませんが, 地味でもこういう楽器の質感を大事にした録音が良いのです。

ポゴシアン氏はソ連出身のヴァイオリニストで,1986年第8回チャイコフスキー国際コンクール ヴァイオリン部門第7位の入賞歴があります。 現在はアメリカのUCLA Herb Alpert School of Musicのヴァイオリンの教授とのことです。

(記2017/03/19)

■ エンリコ・オノフリ Enrico Onofri

レーベルAnchor Records
収録曲ソナタ第1番,パルティータ第2番,第3番
録音2014年12月16日-22日 イタリア,クレマ "Cascina Giardino music hall"
所有盤UZCL-1030 (P)(C)2016 Anchor Records (国内盤)
備考演奏 録音 バロック仕様 a=390Hz

バロック楽器による演奏。 旧来からの演奏とはかなりアプローチの異なる表現が随所に見られるという点でかなり面白い演奏です。 ある意味バロック楽器による演奏に対する期待を裏切らないと言えます。 ただ,これが好きかと言われると話は別で, 個人的にはバロック楽器の演奏のこういうところが苦手でどうしてもこれが好きにはなれません。 すみません。

録音ですが,録音会場の響きを活かした,そして過剰になることなく高いクオリティで収録しているという点で優秀録音と言えるかもしれない録音なのですが, やはり響きを重視した録音のトレードオフとして楽器音がくすんでおり, 楽器の質感が失われているのが私としては好ましく思えません。 もっと楽器そのものの音色を大事にした録音をして欲しいものです。

(記2017/03/12)

■ タマーシュ・フェイェシュ Tamás Fejes

レーベルDiscovery Music & Vision
収録曲全集
録音4-7, November 2014 and 28-31, October 2015
所有盤DMV120 (P)2016 Tamás Fejes (C)2016 Discovery Music & Vision (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様

オーソドックスで,丁寧に演奏しています。 技術的にも安定感があり,音色も綺麗です。 特徴のある演奏ではありませんが,耳に馴染みやすく安心して聴くことが出来ます。

録音ですが,少し残響が多めで楽器音に被り,まとわりつきが少々鬱陶しく感じられます。 また音色も影響を受けて癖がついており,明瞭感も落ちています。 そんなに悪くはないとはいえ,もう少しすっきりとヌケ良く明瞭に録って欲しいところです。 ちょっともったいないと思います。

タマーシュ・フェイェシュはハンガリー出身のヴァイオリニストで, フィルハーモニア管弦楽団に所属していたことがあり, 最近はロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団のアシスタント・リーダー,および, 英国王立スコットランド音楽院の非常勤講師とのことです。

(記2017/02/05)

■ 浦川宜也 Takaya Urakawa

レーベルヒビキミュージック
収録曲全集
録音2015/12/16, 2016/1/30, 2/26, 3/28, 4/14-15
所有盤HMOC 17836/8 (P)(C)2016 HIBIKI MUSIC (国内盤)
備考演奏 録音 モダン仕様

浦川氏34年ぶり2回目の録音で,75歳くらいの録音になります。 年齢からくる技術の衰えはいかんともし難く,相当キレはなくなり音程を含めて不安定です。 しかし,年齢の積み重ねから来る得も言われぬ味わいがあるのも確か。

録音ですが,少し残響が取り入れられていて音色に影響を与えているものの, 楽器の質感もそれなりに感じられて,まずまず良好です。 ソロヴァイオリンの録音として標準的で悪くありません。 もちろん個人的にはもっと残響を抑えてすっきりした音で録って欲しいと思っています。

でもやはりこれは浦川氏とご縁がある方に向けたアイテムなのでしょうね。

(記2017/01/07)

■ 浦川宜也 Takaya Urakawa

レーベルFontec
収録曲全集
録音1979年-1982年
所有盤FOCD 2505/6 FONTEC RECORDS (国内盤)
備考演奏 録音 モダン仕様

旧世代の古めかしい演奏スタイルを頑なに守り続ける職人気質の頑固オヤジ的演奏(^^;。 遅めのテンポで一音一音力を込め,ヴィブラートをしっかりかけて弾いています。 弓の圧力が強くひたすらハイテンションで音が少々ギスギスしています。 技術的なキレが良いとは言えませんが,地に足の付いた音楽を聴かせてくれます。 渾身のシャコンヌは一聴の価値ありです。 リピートの省略があるのが少々残念です。

録音ですが,比較的オンマイクで残響を抑え気味にしていますが,響きの質があまり良くなく楽器音が少し濁っています。 惜しいと思います。 ソナタ第3番,パルティータ第3番は少し良い状態です。

浦川氏1回目の録音で,40歳頃の録音と思われます。 15年ほど前に1回目のレビューを載せていましたが,久しぶりに聴いてみてだいぶ印象が異なりました。 再レビューです。

(記2017/01/07) 2回目
(記2002/07/10)

■ イ・ソンイル Sungil Lee

レーベルArcade 9
収録曲全集
録音不明(2016?)
所有盤WMED 0520 (P)(C)2016 Arcade 9 (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様

モダン楽器の伝統的なスタイルによるオーソドックスな演奏。 技術的にものすごくキレるわけではありませんが,安定感はあって安心して聴けます。 特徴のある演奏ではありませんが,真摯に音楽に向き合う姿勢が伝わってくる良い演奏だと思います。

録音ですが,やや残響が多めで楽器音へのまとわりつきが少し気になりますが, その影響は少なめで許容範囲です。 ソロ・ヴァイオリンの録音としては標準的だと思います。 もちろん私としては残響をもっと抑えてすっきりと伸びのある音で録って欲しかったとは思います。

(記2017/01/02)

■ チョン・キョンファ Kyung Wha Chung

レーベルWarner Classics
収録曲全集
録音19-21.II, 24-26.III, 3-5.IV & 30.V-1.VI.2016, St George's Brisol
所有盤0190295944162 (P)(C)2016 Parlophone Records (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様

人間的な魅力に溢れる快演! 力を抜くことで音楽的な表現の幅が格段に広がっています。 陰影に富み情緒豊かであり,彼女自身の言葉でバッハに対する思いが語りかけられているようで大変魅力的です。 かつてのあらん限りの情熱を注ぎ込んだ演奏とは目指す方向性が明らかに変わった,まさに新境地の演奏と言えると思います。

録音ですが,やや残響が多めであり,その影響で少し音色がくすみ,まとわりつきですっきりしません。 旧EMI的音づくりが少々不満ですが,それでも楽器の音はしっかりと捉えられている方なので,許容範囲ではあります。

満を持しての全集録音が素晴らしい出来でホッとする気持ちがある一方で, やはり全盛の時期に全曲録音がされなかったことを残念に思う気持ちが余計に強くなります。 ファンとしては満を持すことなくその時々の姿を残していってくれたらそれが一番うれしいと思うのです。

(記2016/12/24)

■ エドゥアルド・メルクス Eduard Melkus

レーベルParticleboard Productions
収録曲ソナタ第2番,パルティータ第2番,第3番
録音Karlskirche, Vienna, August 1975
所有盤(C)2015 Particleboard Productions (輸入盤)
備考演奏 録音 バロック仕様 Aegidius Klotz in original mensur

バロック楽器による演奏。 1975年のライヴ録音。 あと,ソナタ第3番から第3楽章 Largoも収録されています。

ライヴらしい勢いのある演奏であり,その勢いに身を委ねているというか, 赴くままに即興的に表現を展開していっているような演奏です。 一方で,細部にこだわらない粗削りな演奏なので,つきつめたような完成度はありません。 これもライヴならではの1回限りの演奏を楽しむ,というところでしょう。 シャコンヌの演奏時間が10:26というところからもその勢いが想像できると思います。

録音ですが,残響が多い上に,まるでラジカセで録ったような音であり, 環境ノイズもかなり多く,全く録音状態は良くありません。 中低域が薄く帯域バランスも大きく崩れています。 高域がまずまず出ているので曇りは少なく,この点だけは救いと言えますが, 商用の音源としては全くもって不足と言わざるを得ません。 同氏の貴重な演奏の記録として捉えるべき録音なのでしょうね。

あと,カップリングとして,フーガの技法からCONTRAPUNCTIS XIV (Completion - Eduard Melkus)も収録されています。 このディスクはMARAIS MUSIC STUDIOというサイトで販売されているのを見つけました。 ほとんど自主制作のような感じです。

(記2016/07/24)

■ キャロライン・アドメイト Caroline Adomeit

(1) BACH to TANGO
レーベル自主制作
収録曲パルティータ第2番
録音不明
所有盤(P)2011 Caroline Adomeit (輸入盤) *Apple Music
備考演奏 録音 モダン仕様
(2) BACH to JAZZ
レーベルOEHMS Classics
収録曲パルティータ第3番
録音October 2 & 3, 2011, at Großer Konzertsaal, Hochschule für Musik und Theater, München
所有盤(P)2011 (C)2012 OehmsClassics (輸入盤) *Apple Music
備考演奏 録音 モダン仕様

モダン楽器による演奏。 淀みのない軽快なテンポで進行する気持ちのよい演奏。 技術的にもキレがあり安定しています。 表現自体は高いレベルでバランスが取れており,ノーマルで癖がなく聴きやすいのですが, ごく標準的な感じなので少し印象には残りにくいかなと思います。

録音ですが,少し残響が多めですが,直接音もしっかりと捉えられているので明瞭感はあり,印象は悪くありません。 もう少し残響を抑えて透明感のある音で録ってくれていれば良かったのですが,これでも十分許容範囲でしょう。 屋外の車の往来のノイズが少し気になります。 鑑賞の邪魔になるほどではありませんが,外来ノイズにはもう少し気を遣って欲しいところです。

公式Webサイトがあります。 キャロライン・アドメイトはドイツ系の英国人で,ハンブルクとミュンヘンに留学,オランダでは名手ヘルマン・クレバースから教えを受けたとのことです。

(記2016/07/03)

■ 伊藤亜美 Ami Ito

レーベルTC Records
収録曲パルティータ第2番
録音2015年10月26-27日 聖ヨハネ ネポムク教会(ウィーン)
所有盤TCR2016A (C)2016 TC Records (国内盤)
備考演奏 録音 モダン仕様

モダン楽器による演奏。 端正で大変美しい。 自然体であり,伸び伸びとした表現が気持ちの良い好演奏です。 技術的にも上手く,隅々まで気配りが行き届き,高いレベルで仕上げているのはさすが日本人演奏家と言いたいです。 今後のご活躍にも期待します。 是非全曲録音を。

さて録音ですが,教会で録音されているということもあり,ものすごく残響時間が長いです。 ここまで残響時間が長いのも滅多にないと思います。 しかし,直接音が比較的きちんと捉えられているので, これだけの残響がありながら残響の被りによる音色への影響は少なめで,私の感覚でもぎりぎり許容範囲です。

しかしながら,やはり楽器音へのまとわりつきが鬱陶しく,本来の音色の伸びやかさが阻害されていると思いますし, あまりに残響時間が長いため,過去の響きが混じり合って混沌とし,これは音楽的にどうなんだ?という気もします。 実際にその会場で聴くには良いにしても,録音にした場合には「過ぎたるは及ばざるがごとし」ではないかと。 確かに雰囲気はありますし,残響の取り入れ方としては良くできている方だと思いますが, 私は楽器から放出される音をもっとストレートに聴きたい!と強く思います。

アルバムのタイトルは「A」(バッハ バルトーク ヴァイオリン無伴奏作品集)。 併録曲として,バルトークの無伴奏ヴァイオリン・ソナタSz.117と, バッハの無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番から第3楽章ラルゴが収録されています。

なお,このラルゴだけは東京の紀尾井町スタジオで録音されたものですが,教会で録音されたようなものすごい残響が付加されています。 他の収録曲と印象を揃えるために人工的に残響を付加したものと想像します。 実際,ちょっと聴いた印象ではかなり似た音響になっています。 しかし,この響きは教会の響きとは全く異なり,ものすごく演出色が強く,また中高域の成分が不自然に多めで極めて不快です。 この演出はこのアルバムの品位,価値を著しく貶めています。 こういうのは本当にやめていただきたい。 (もしこれが自然な響きだというのであれば申し訳ありません。でも不快には違いありません。)

伊藤亜美さんの公式Webサイトがあります。 昨年ご結婚され,2016年よりアーティスト名を「尾池亜美」から「伊藤亜美」に変更して活動されているとのことです。

(記2016/06/05)

■ マーク・キャプラン Mark Kaplan

レーベルBridge Records
収録曲全集
録音The American Academy of Arts and Letters, December 10-12 and 16-18, 2011
所有盤BRIDGE 9460A/B (P)(C)2016 Bridge Records (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様 Antonio Stradivari in 1685 "The Marquis"

キャプラン氏のほぼ10年ぶりとなる2回目の全集録音。 演奏の基本的な解釈は1回目からあまり変わっていないように思います。 そして,技術力の高さ,キレの良さはそのままに,細やかな緩急強弱によって, 柔らかくそして深みのある陰影に富んだ音楽に進化しています。 1回目のストレートな演奏も大変魅力的でしたが, この演奏も大変素晴らしいです。

録音ですが,わずかに残響感があるものの,楽器音をしっかりと捉えているので印象は悪くありません。 ただ少し高域の伸びが不足してモゴモゴしているのが惜しいです。 1回目の録音と今回の録音の中間くらいの録音が良かったのですが。

キャプラン氏は2005年からインディアナ大学ジェイコブズ音楽院の教授とのことです。

(記2016/05/29)

■ マーク・キャプラン Mark Kaplan

レーベルMitch Miller Music
収録曲全集
録音Recorded at Concordia College: 1/1991, 6/1991, 1/1992
所有盤MMM 14630-2 (C)1995 Mitch Miller Music (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様 Antonio Stradivari in 1685 "The Marquis"

一聴しただけで情感溢れる表現に魅了されてしまいました。 技術力の高さ,抜群の切れ味にも脱帽! 奇を衒わないストレートな表現と相俟って,この曲の造形的美しさをくっきりと浮き彫りにしています。 気持ち良いくらいにシャープなのに,緊張感よりもむしろ暖かさを感じる, そんな豊かな表現力が本当に素晴らしい。 細身で透明感ある音色もとても美しいです。 感動しました!

録音ですが,残響感はあるものの,直接音が主であり,残響の被りの影響は少ないです。 明瞭感,解像感が高く,演奏の細部までしっかりと聴こえてきて好印象です。 帯域バランスが高域に偏っていて音色のバランスがやや崩れているのは惜しいところですが, 残響による音色への影響は最小限で,全体として良いとは言えませんが,これならまあ納得できます。

キャプラン氏は2004年の1回目のレビュー当時はUCLAの教授とのことでした。

(改訂2016/05/29)
(記2004/06/22)

■ アニコ・コヴァーチュ Anikó Kovács

レーベルTON 4 RECORDS
収録曲パルティータ第2番,第3番
録音不明
所有盤(C)2008 TON 4 RECORDS (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様

モダン楽器による演奏。 無骨で不器用なくらい生真面目な印象を受ける演奏で,少し一本調子な気がします。 決して技術的に下手ではないのですが,ちょっとキレに欠けるかな思うところが散見されます。 カップリングのイザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタが意欲的な演奏で, それに比べるとバッハは少しかしこまり過ぎのように思います。

録音ですが,残響感がほとんどなく,演出感もほとんどない生録的な録音で, 目の前で(しかし適切な距離感で)弾いているような生々しい感じがすごく良いです。 細かいニュアンスまで聴き取れる,私の好きな録音です。 ただ,オーディオ的なクオリティが良くなく,特にパルティータ第2番ではブツブツといったノイズが乗ることがあったり, 編集の痕ではないかと思われるような不自然な音のつながりがあったりします。 これはとても残念です。

“Masterpieces for Solo Violin”と題されたアルバムで,イザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番,第3番がカップリングされています。 今回はApple Musicでの試聴であり,ディスクの発売があるかどうかは確認できませんでした。

(記2016/05/03)

■ エルファ・ルーン・クリスティンスドティル Elfa Rún Kristinsdóttir

レーベル自主制作
収録曲パルティータ集
録音不明 (2016/03/20発売)
所有盤(C)2016 Elfa Rún Kristinsdóttir (輸入盤)
備考演奏 録音 バロック仕様

バロック楽器による演奏。 すっきりとしたスムーズな表現が良いと思います。 技術的にも上手いですし,細やかで神経が行き届いた整った演奏です。 音色も透明感があり美しいです。 インパクトの強い演奏ではありませんので印象が残りにくいですが, そつなく上手くまとめた佳演だと思います。

録音ですが,やや残響が多めで残響時間も長め,まとわりつきが気になり, 音色も少しくすんでしまっていますが,ヌケが悪いところまでは行かず,ぎりぎり許容範囲というところです。 残響が許せる方なら問題ないと思います。 もちろん私としてはもっと残響を抑えてすっきりと録って欲しかったと思いますが。

公式Webサイトがあります。 今のところ配信のみでディスクでの販売はないようです。 私はAmazon.co.jpで入手しました。 MP3 256kbps(VBR)でした。 なお,CD BabyというサイトからはMP3 320kbpsまたはFLACでダウンロード購入できるようです。

(記2016/05/03)

■ ミドリ・ザイラー Midori Seiler

レーベルBerlin Classics
収録曲ソナタ集
録音Johann-Sebastian-Bach-Saal from September 26-28, 2015
所有盤Berlin Classics 0300721BC (P)(C)2016 Edel Germany GmbH (輸入盤)
備考演奏 録音 バロック仕様 Andrea Guarneri

緩徐楽章はじっくりと,フーガと終楽章は快活に,緩急強弱を駆使して彫りの深い音楽に仕上げています。 これはパルティータ集と同じなのですが, ソナタ第3番だけはフーガも終楽章もリズム感というかビート感が希薄で, なんでこの表現を選択されたのか疑問符が付きます。 ここだけが少し残念なところです。

録音ですが,残響が多めでかつ直接音よりも残響音の方がやや勝っているため, 明瞭感が落ち,音色がくすんでしまっています。 パルティータ集よりも少し悪いように思います。

ミドリ・ザイラーは,ベルリン古楽アカデミーやアニマ・エテルナでソリストやコンサート・ミストレスとして活躍するヴァイオリニスト。 母が日本人,父がドイツ人で,生まれが大阪,ザルツブルグ育ち,とのこと。

パルティータ集から6年を経てのソナタ集の録音で全集となりました。 以下に,パルティータ集のレビューを併記しておきます。

(記2016/04/23)
レーベルBerlin Classics
収録曲パルティータ集
録音09-12.11.2009, Johann-Sebastian-Bach-Saal im Schloss Kothen
所有盤Berlin Classics 0016722BC (P)(C)2011 Edel Germany GmbH (輸入盤)
備考演奏 録音 バロック仕様

バロックヴァイオリンでの演奏。 緩急強弱が激しく非常にダイナミックで意欲的です。 しかしそれが自然な呼吸感の中で行われているため,不自然さも嫌みも感じることなくすんなりと受け入れられます。 この人の音楽性の高さ,センスの良さを示していると思います。

録音ですが,残響は多めに取り入れられていますが,直接音主体で明瞭感と音の伸びがあって好印象です。 やや高域がきつめですが,近めで録っているためであって自然さを失うものではなくまったく問題ありません。 もちろん私としてはもっと残響を抑えてすっきりと録って欲しかったとは思いますが,十分良好と言えます。

(記2011/06/16)

■ レイチェル・バートン・パイン Rachel Barton Pine

レーベルAVIE
収録曲全集
録音16-18 April, 28-30 May, 29 & 31 August 2015, St. Pauls United church of Christ, Chicago
所有盤AV2360 (P)(C)2016 RBP Music, LLC (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様 Guarneri 'del Gesù', Cremona, 1742, the ex-Bazzini, ex-Soldat

モダン楽器による演奏。 淡々としていますが,現代的,クールで洗練された美しさを感じます。 曲によっては装飾も積極的かつ大胆に取り入れ,変化に富んでいます。 技術的にも大変上手く,隅々まで神経が行き届いており,ニュアンスの豊かで爽やかな音楽に仕上がっています。 素晴らしい出来です。

録音ですが,背景にふわっと広がる残響が取り入れられていますが, 直接音主体に明瞭感と透明感ある自然な音色で捉えられています。 残響のまとわりつきがわずかに気になるものの,楽器の質感も良く感じられる好録音です。

レイチェル・バートン・パインは米国のヴァイオリニスト。 公式Webサイトがあります。 2004年にソナタ第1番とパルティータ第2番のディスクをリリースしています。 この録音の時にはバロック仕様のヴァイオリンを使用されていました。

(記2016/04/17)

■ 堀米ゆず子 Yuzuko Horigome

レーベルEXTON
収録曲全集
録音2015年3月9日,7月21-22日,2016年1月5-6日 神奈川・相模湖交流センター
所有盤OVCL-00587(P)(C)2016 Octavia Records Inc. (国内盤)
備考演奏 録音 モダン仕様

モダン楽器による演奏。 1986-87年にソナタ集のリリースはありましたが,全集はこれが初めて。 まさに満を持しての全曲録音というところでしょう。 情熱ほとばしる渾身の演奏が素晴らしいですね。 特にシャコンヌの高揚感に胸が熱くなります。 技術が優れているのはもちろんですが,綺麗にまとめようとせず, ぎりぎりまで挑戦する意欲的演奏に感動!

ただ一点惜しいのは,パルティータの二部形式の楽章で,後半のリピートが省略されていることです。 私にとっては心底からこのバッハ演奏を楽しむための基本条件が欠けています。 素晴らしい演奏だけにこれは残念でなりません。

そして録音なのですが...残響が直接音よりも支配的で, 心地よい響きを演出するよりも楽器音を濁し,明瞭度と質感を低下させる効果しか感じられません。 残響の取り入れ方,残響の質とも良くないと思います。 楽曲によって録音の質に若干のばらつきがあり統一感がないのも全集としてあまり良い印象ではありません。

まあここまでは録音のポリシー,好みの問題なのである意味諦めざるを得ない面はあるのですが, この録音には私にとっては許容し難い欠陥があります。 少なくとも数カ所,クリップによる「ジャ」という異音が発生するところがあります。 たとえば,ソナタ第2番フーガの4:57,ソナタ第3番フーガの6:45のところです。 一瞬なのと元々録音があまり綺麗ではないので気がつきにくいのですが, 気になり出すと安心して音楽に身を委ねることが出来ません。

これは録音の善し悪し以前の製品の基本品質の問題です。 一瞬のことだからええやんと思われるかもしれませんが,私にとっては傷のあるダイヤモンドと同じです。

そもそもこのレベルのクリップに編集段階で気がつかないということはあり得ないと思います。 それをこのまま何の断りもなく知らん顔してリリースするというのはあまりに音楽愛好家に対して不誠実ですし, 演奏家にも失礼だと思います。 もし気づかずにリリースしているとしたら,品質に対する意識が低すぎてそれはそれで問題だと思いますが...

と,いろいろと文句を垂れてしまいましたが,素晴らしい演奏であったが故に, 落胆も大きかったということで...失礼しました。 世界標準の使い方から外れるこの変なパッケージにも文句を付けたかったのですが,そんなことはどうでも良くなってしまいました。

(記2016/03/31)

■ アンネグレット・ベルンシュタイン Annegret Bernstein

レーベルa-b.violin
収録曲ソナタ第1番,第2番,パルティータ第1番
録音不明
所有盤(P)2013 a-b.violin (輸入盤) (Apple Musicより)
備考演奏 録音 モダン仕様
レーベルa-b.violin
収録曲ソナタ第2番,パルティータ第2番,第3番
録音不明
所有盤(P)2013 a-b.violin (輸入盤) (Apple Musicより)
備考演奏 録音 モダン仕様

モダン楽器による演奏。 落ち着いたテンポで一つ一つのフレーズを丁寧に,丹念に表現をされているところが好印象です。 技術的にものすごく上手いというわけではありませんが,全く破綻をきたすことなくしっかりと仕上げています。 心に染み渡るような柔らかく優しい表現が良いと思います。 押しが弱くいささか印象には残りにくいのですが。

録音ですが,残響自体はそれほど多くはないのですが,全体に残響が被り気味で明瞭感が良くなく,音色も今ひとつ冴えません。 音像も遠めで楽器の質感も感じ取りにくいです。 少々残念な録音です。

音源はまだApple Musicが始まる前のiTunes Storeで購入したのですが, パルティータ第3番のPreludioの音声がブツブツと途切れます。 現在のApple Musicでもそれは変わらず,Amazon.co.jpで公開されている試聴音源でも同様の途切れが見られますので, 元々の音源に問題があるものと思います。 こんな欠陥がある状態で放置されているとはちょっと信じられません。 品質に対する意識が低すぎると思います。

公式Webサイトがあります。 ディスクでの発売があるかどうかは不明です。

(記2016/03/21)

■ ユリア・ベリンスカヤ Yulia Bberinskaya

レーベルClassica Viva
収録曲全集
録音不明
所有盤GTVS1302 (P)2013 Classica Viva (輸入盤) (Apple Musicより)
備考演奏 録音 モダン仕様

モダン楽器による演奏。 オーソドックスですが,程よいテンポで淀みなく音楽が流れていくのがとても気持ちの良い演奏です。 技術のキレが素晴らしく,そして,控えめながらも気遣いの行き届いた情緒豊かな表現が良いと思います。 一部の楽章(パルティータ第1番のDoubleなど)でリピートが省略されているのが惜しいです。

録音ですが,残響が少し多めで,残響の被りによる音色のくすみがわずかにあるものの, 直接音成分とのバランスはぎりぎり取れているので,印象は悪くありません。 楽器の質感も感じ取ることが出来ます。 もう少しクリアでヌケ良く録って欲しいとは思いますが。

公式Webサイトがあります。 ディスクで発売されているようにも見えるのですが,見つけることが出来ず,以前にiTunes Storeで購入しました。 現在はApple Musicで聴くことができます。

(記2016/03/21)

■ クシシュトフ・ヤコヴィッツ Krzysztof Jakowicz

レーベルMTJ
収録曲全集
録音不明
所有盤(P) MTJ (輸入盤) (Apple Musicより)
備考演奏 録音 モダン仕様

モダン楽器による演奏。 どちらかといえば旧世代の伝統的なスタイルですが, 長い間弾き込んで年輪を重ねてきたような味わい深い演奏。 しかも,とても意欲的,前向きで推進力があるのが素晴らしいです。

録音ですが,残響の量が多く,また残響時間がものすごく長い環境下で録音されているのですが, 直接音の比率が高いので,楽器音の音色への影響は少なく,明瞭感もそこそこあって印象は悪くありません。 残響時間が長いので響きの混濁がものすごいのですが,意外に残響の質も悪く感じません。 残響のまとわりつきはやはり気になり,これが最良とは思いませんし,肯定するつもりもありませんが, こういう残響ならまだ許せる範囲です。

クシシュトフ・ヤコヴィッツは1939年生まれのポーランドのヴァイオリニスト。 この全集,ディスクでの発売があるのかどうかわかりませんでした。

(記2016/03/13)

■ マリア・シャルギナ Maria Shalgina

レーベルAlberich Music Production
収録曲ソナタ第1番,第2番,パルティータ第1番
録音不明
所有盤(P)2013 mariashalgina.com (輸入盤) (Apple Musicより)
備考演奏 録音 モダン仕様

モダン楽器による演奏。 力強く,また,速めのテンポで上品に淡々と弾き進める様が気持ちの良い好演奏。 印象の強い演奏ではありませんが,こういうサラッとした癖のない演奏も良いものです。 技術的にも安定感があります。

録音ですが,残響時間が長めで量もやや多めですが,直接音との比率が適切に取られているので, 比較的聴きやすくまとめられています。 ただやはり響きの影響で音色に癖が出て透明感を失っています。 惜しいと思います。

マリア・シャルギナはロシア出身のヴァイオリニスト。 公式Webサイトがあります。 本ディスクのタイトルは“Bach, Volume I”となっており, 公式WebサイトのShopではVolume IIが coming soon... となっているのですが... (Webサイトの別のページでは2015年1月のリリースとも書いてあるのですが...) どうなっているのでしょう???

(記2016/02/28)

■ マルック・ルオラヤン=ミッコラ Markku Luolajan-Mikkola

レーベルLinn Records
収録曲全集
録音Church of St Catherine, Karjaa, Finland, 9-12 September 2013 and 5-8 May & 16-19 June 2014
所有盤CKD 548 (P)(C)2015 Linn Records (輸入盤)
備考演奏 録音 バロック・チェロによる演奏 a'=415Hz

バロック・チェロによる演奏。 原曲より五度低い調に下げて弾いています。 チェロで低い音にシフトしている上に五度低い音程で弾いているので,ものすごく重心が低く沈み込んだ音楽に聴こえます。 かなり健闘されてはいるのですが,早いパッセージでのキレの悪さ,不安定さがあるのは楽器のハンデでしょうか。 パッセージによってはモゴモゴとしてよくわからなくなるところもあります。 バロック・チェロの発音の立ち上がりの遅さにも起因しているのかもしれません。 聴き慣れてくるとだんだんおもしろさがわかってくるのですが...それでもやっぱりちょっと苦しいですね。

録音ですが,残響がかなり多く,楽器音に被って音色を大きく損なっていますし,明瞭感もかなり落ちています。 モゴモゴして混沌としてしまう原因はこの録音にもあると思います。 そして少し歪みっぽいようにも感じます。 Linn Recordsらしい雰囲気があるのはわかるのですが,こういう演奏ほどくっきりと録って楽器のハンデをカバーすべきと思うのですが。

(記2016/02/13)

■ ジェームズ・スターン James Stern

レーベルAlbany Records
収録曲全集
録音Recorded in Deklboum Concert Hall, Clarice Smith Performing Arts Center, University of Maryland, August 2013
所有盤TROY 1605/06 (C)2015 ALBANY RECORDS (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様 使用楽器 Vincenzo Panormo (1781)

モダン楽器によるオーソドックスな演奏。 生真面目で手堅く,真摯な演奏であり,アクセントを効かせた引き締まった演奏ながら,あまり遊びや挑戦的なところはありませんが, たとえばソナタ第2番の終楽章では独特のアクセントでシンコペーションのような効果を出したり, ちょっとした仕掛けがみられる曲もあります。 技術的にも安定感があり安心して聴くことが出来ます。 しかしやっぱりちょっとお堅いかな,とは思います。

録音ですが,残響が多めで付帯音としてやや音色に影響を与えているものの, 直接音を主体に捉えているために,楽器の質感もニュアンスも感じられ, 十分我慢の範囲であり,良好な録音と言えると思います。

ジェームズ・スターン氏はメリーランド大学音楽学部の教授とのこと。

(記2016/01/19)

■ フリフ・スィグリョンスドーティル Hlíf Sigurjónsdóttir

レーベルMSR Classics
収録曲全集
録音Recorded in the Church of Reykholt, Borgarfjörður, Iceland, in December 2000 [BWV1006], June 2001 [BWV1004], September 2002 [BWV1002], and October 2007 [BWV1001, 1003, 1005]
所有盤MSR 1605 (P)(C)2015 Hlíf Sigurjónsdóttir (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様 使用楽器 Christophe Landon (Sonatas), G. Sgarabotto (Partitas)
レーベル自主制作
所有盤HSB03 (輸入盤)
備考上記と同じ内容のディスク

正直なところ,技術的には相当苦しいと言わざるを得ません。 特にソナタ。 フーガなど止まってしまいそうですごくスリリングです(^^;。 一方,パルティータ第2番だけは他の曲に比べるとかなり出来が良いです。 この出来を考えると他の曲は明らかに弾き込み不足ではないかと思ってしまいます。 ただ全体を通して奏者の技量の範囲で丁寧に演奏をしておられるとは思いますので, 大きな破綻はなく持ちこたえているという印象で,それはそれで楽しめました。

録音ですが...すごい残響です。 しかし,楽器音の輪郭はそれなりに感じられ,質感もそこそこ伝わってくるので, 残響量の割にはマシかなと思います。 もちろん私の好みではありませんが。

フリフ・スィグリョンスドーティルはアイスランドのヴァイオリニスト。 名前の日本語表記は自信なしです。 公式Webサイトがあります。 2010年頃に自主制作のディスクを公式Webサイトから購入し,レビューしていました。 2015年にMSR Classicsより再発売されたようです。 内容は同じでした。

(追2015/12/21)
(記2010/11/19)

■ ワンチ・ホワン Wanchi Huang

レーベルCentaur
収録曲全集
録音June 4, 5, and July 15, 2013 at WFMT Studios, Chicago
所有盤CRC 3419/3420 (P)(C)2015 Centaur Records (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様

モダン楽器による演奏。 こんな書き方をして本当に申し訳ないのですが,お世辞にも上手いとは言えません。 破綻こそしていないものの,フーガなどの難しい楽章ではたどたどしさが拭えません。 安全運転に徹して楽譜を正確になぞり,その中で精一杯の表現を試みる, 誠実さの感じられる,微笑ましい演奏なので好感は持てるのですが, やはり技術面での不満は大きく残ってしまいます。 音程はそんなに悪くないので,それでかなり救われているとは思います。

録音ですが,残響は背景にふわっと広がる程度であり,直接音を主体に録られています。 距離感も適度で,音色も自然,高域の伸びもあります。 生々しさもあり,楽器の質感もニュアンスもしっかりと聴き取れます。 まずまずの好録音と言えます。 時々音像がフラフラと移動したり,質が若干落ちるように感じるところがありますが,気になるほどではありません。 オーディオ的なクオリティもまずまず良好です。

演奏に若干の難はあるものの,結構楽しく聴くことができました。 録音が良好だからだと思います。 鑑賞する上で「良い録音」であることはとても大切ですね。

(記2015/11/29)

■ パヴェル・シュポルツル Pavel Šporcl

レーベルSupraphon
収録曲全集
録音2015年4月16-18日,5月20-22日,6月15-17日 プラハ,チェコ兄弟団福音教会
所有盤SU 4186-2 (P)2015 Supraphon (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様

モダン楽器による演奏。 ブルーに塗装されたヴァイオリンでどんな演奏を聴かせてくれるのかと興味津々で聴きましたが, 至極真っ当,正統派の立派な演奏でした。 技術レベルも高く,整然と隅々までコントロールが行き届いていますし, 和音の響きの透明な美しさなども特筆できます。 大きな特徴はありませんが,秀演だと思います。

録音ですが,残響が多めでしかも楽器音に被って音色をくすませています。 楽器の質感はそれなりに感じられるのでぎりぎり許容範囲というところです。 残響が気にならない方には問題ないかもしれませんが, 私としてはあまり良い印象ではありません。 スプラフォンは比較的好みの録音が多いレーベルなので期待していたのですが,この録音は少し残念に思います。

シュポルツル氏は「チェコが誇る奇才ヴァイオリニスト」とのこと。 クラシックのみならず民族音楽なども演奏するそうです。 個人的にはその多様な音楽性を生かしたバッハが聴きたかったかなと...

(記2015/11/29)

■ 五嶋みどり MIDORI

レーベルONYX
収録曲全集
録音2013年8月13日-17日 WDRフンクハウス,クラウス・フォン・ビスマルク・ザール(ケルン,ドイツ)
所有盤ONYX 4123 (P)2015 WDR (C)2015 PM Classics Ltd. (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様

この達観した演奏,いきなりその境地に行ってしまわれましたか... 人間的な温かさ,謙虚で優しさに溢れた音楽。 真摯でありながら,何事にもとらわれず自由に音楽と戯れる,そんな喜びが滲み出ています。 技術的にはもちろん完璧ながらそれが前面に出てこない柔らかなタッチがこの演奏を印象づけています。

ヴァイオリンという楽器は本当に難しいと思います。 どんな手練れであってもその難しさからどうしても音楽に「歪み」が生じます。 名手はそれを完璧な技巧で,研ぎ澄まされた演奏で乗り越え消し去ろうとします。 しかし彼女はそれを遙かに通り越し,さらにその上のステージでの音楽表現を試みようとしているように思えます。 ヴァイオリンという楽器の制約から解放されたこのような音楽は滅多に聴けるものではないと感じます。

彼女は2005年にソナタ第2番を録音していますが,それは静寂の中に静かに鳴り響く内向的な演奏でした。 どちらかといえば寒色系。 しかし,今回の演奏は暖色系に思います。 2005年の録音の延長線上で突き詰められた演奏を想像していたので, 最初聴いたときは「あれっ?,あれっ?」と戸惑い,肩すかしを食らった感があったのですが, 何度も聴くうちにこの演奏にどんどん惹きつけられました。 2005年にあの路線で全集を残してくれていたら,という思いは残るものの, 今ここにこの素晴らしい演奏に巡り会えたことを本当にうれしく思います。

録音ですが,やや残響は多めで楽器音への被りが気になるものの, 素直に捉えていてニュアンスも聴き取ることができるので,良好とまでは言わないまでもまずまずというところです。 空調なのか,低域の雑音レベルがかなり高く,聴く装置や環境によってはかなり気になります。 もう少し配慮が欲しかったところです。

解説書には“Artist's note”として五嶋みどりさん自身による文章が3カ国語で載せられています。 全くの蛇足ですが,日本人ヴァイオリニストなのですから,オリジナルの解説書に日本語も載せて欲しかった...

(記2015/11/28)

マリー・カンタグリル(Marie Cantagrill)

レーベル Art & Musique
収録曲 全集
録音データ (a)Saint-Serge Church, Angers, France
(b)Combelongue Abbey, Rimont, France
(c)Malliac Castle, Montreal du Gers, France
使用楽器 Riccardo Antoniazzi (モダン仕様)
所有盤 (a) Ref. AB1/1 (P)(C)2009 ABP Musique Classique Productions (輸入盤)
(b) Ref. AB1/2 (P)(C)2011 ABP Musique Classique Productions (輸入盤)
(c) Ref. AB1/3 (P)(C)2014 ABP Musique Classique Productions (輸入盤)
備考 参考url: 公式Webサイト

(a)(b)については比較的遅めのテンポでじっくりと演奏されています。 特にパルティータ第二番。 シャコンヌだけでほぼ18分,パルティータ第二番全体で約37分あります。 一方(c)は全体にもう少し速めのテンポで前向きです。

いずれにしても丁寧で真摯なところが良いと思いますが, 音色は若干固めで無機的な感じもあるので,もう少し色が欲しいかなと思います。 技術的には安定感がありまったく不安はありません。

録音:

3枚のディスクは全て違う場所で録音されたようですが,いずれも教会のようです。 (a)(b)は残響が少し多めです。 (c)は響きはあるもののドライな感じがします。 いずれも残響や響きによって音色はくすみがちですっきりせずあまり良いとは言えません。 中では(a)がややマシかなと思いますが, 全体通してやはり少々残念な録音です。

(追2015/09/13) ※ディスク(c)追加,全集に格上げ(ソナタ第2番,第3番を収録)
(追2012/01/04) ※ディスク(b)追加(ソナタ第1番,パルティータ第1番を収録)
(記2010/02/17) ※ディスク(a)(パルティータ第2番,第3番を収録)


ジェニファー・コウ(Jennifer Koh)

レーベル Cedille Records
収録曲 (1)パルティータ第2番,第3番
(2)ソナタ第1番,パルティータ第1番
録音データ (1)November 13 & 16, 2011(No.2), January 4 & 5, 2012(No.3) at the American Academy of Arts and Letters, New York City
(2)June 4-5, 10-12, 2014 at The Perfoming Arts Center, Purchase College/SUNY
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 (1)CDR 90000 134 (P)(C)2012 Cedille Records (輸入盤)
(2)CDR 90000 154 (P)(C)2015 Cedille Records (輸入盤)
備考 公式Webサイト
ディスクタイトル:(1)Bach & Beyond Part 1, (2)Bach & Beyond Part 2
カップリング曲:(1)Ysaye/Sonata No.2, Op.27; Kaija Saariaho/Nocturne; Missy Mazzoli/Dissolve, O My Heart, (2)Bartok/Sonata for solo violin Sz. 117; Kaija Saariaho/Frises

小気味よいのですが,一方で,美しく,優しく柔らかい印象を残す演奏でもあります。 線がやや細く弱々しい面が感じられなくもないですが,技術的にも優れキレと安定感がありますし, 音色や和音の取り方も美しく,欠点になっていません。 強い個性の主張がなく大人しい演奏ですが,自然体であり,そこが美点と言えるかもしれません。

録音:

少し残響を伴っているものの,直接音を主体に楽器音を透明感ある音で捉えていて好ましいです。 音色も自然で美しいです。 もう一歩寄って質感を強めに出してくれるとなお良かったと思いますが,これでも十分に良好です。 中ではパルティータ第1番の録音状態が最も良いと思います。

(記2015/08/23) Part 2を追加
(記2013/06/15)


ティボー・ノアリ Thibault Noally

レーベル Aparté
収録曲 パルティータ第2番
録音データ2013年6月 サン・レミ教会(ベルギー)
使用楽器 1719年製ジェンナロ・ヴィナッチャ(バロック仕様)
所有盤 AP068 (P)2013 Aparté (輸入盤)
併録曲:ヴィルスマイヤー/パルティータ第5番ト短調,テレマン/幻想曲ニ長調TWV40:23,TWV40:25,TWV40:15,TWV40:17,ヴェストホーフ/組曲第5番ニ長調,バルツァー/前奏曲ハ短調 アルマンド ト短調,ビーバー/ローゼンクランツ・ソナタ~パッサカリア

バロック楽器による演奏。 粘りのある弓遣いがいかにもバロック楽器ですが, 淡々と整然として揺るがないテンポ感で淀みなく流れる音楽が気持ちよく, この点ではあまりバロック的ではないかもしれません。 音色も透明感があり美しく,技術的にも隙がなく大変優れています。 これは素晴らしい出来だと思います。 いずれ全集を出してくれることを大いに期待したいです。

録音:

残響がものすごく多く,しかも残響時間がかなり長いです。 しかし,直接音比率が結構高く,残響成分は広がり感があって楽器音とある程度分離して聴こえるため, 「豊かな残響」として何とかぎりぎり鑑賞に堪えうるというところです。 残響の質は良い方で,残響が許せる方なら優秀録音かもしれませんし,雰囲気に浸りたい方には好適と言えそうです。 残響のまとわりつきが気になるので私としてはもちろん好きな録音ではありませんが。

P.S.

ティボー・ノアリは,指揮者のマルク・ミンコフスキ率いるルーヴル宮音楽隊(レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル・グルノーブル)のコンサートマスターで, 「マンゼやオノフリの後世代で最も期待できるバロック・ヴァイオリンの若手」とのことです。

(記2015/08/14)


パオロ・ギドーニ Paolo Ghidoni

レーベル OnClassical
収録曲 全集
録音データPieve dei Campi Bonelli, Mariana Mantovana, 2012(2015年発売)
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 OC125BrM (P)2015 OnClassical (e-onkyo音楽配信)

モダン楽器による演奏。 乱暴とも思える思い切りの良い意志の強さを感じる強い弓遣いで大胆に攻める演奏です。 緩急はそれほどでもありませんが,時折強烈なアクセントがあったり聴こえないくらい弱音で弾いたり,起伏に富んでいます。 音色は全体にキツめで刺激的であり美しくはありません。 技術的にはかなりしっかりとしていると思います。 受け入れがたい部分も多々ありますが,聴き慣れると芯のしっかりした,筋の通った演奏に思えるようになってきました。 これはこれでアリだと思います。

録音:

残響は多めで,残響時間はそれほど長くありませんが,音色の濁りがかなりあります。 残響の広がりも感じられず楽器音にまとわりついて音を濁すだけです。 そしてその割にキンキンと刺激的な音色が残っています。 少し遠めの音像で明瞭感も不足しています。 残念ですが全く良くありません。

P.S.

パオロ・ギドーニは1964年生まれのイタリアのヴァイオリニスト。 この全集は音楽配信のみでディスクでの販売はないのではないかと思います。

(記2015/08/14)


横山奈加子 Nakako Yokoyama

レーベル EXTON
収録曲 全集
録音データ2014年10月15-16日,12月9-10日,2015年2月3-4日 横浜・かながわアートホール
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 OVCL-00561 (P)(C)2015 EXTON (国内盤)

モダン楽器による演奏。 甘さのない引き締まった演奏です。 癖がなくオーソドックス,良い意味で教科書的, 緊張感と躍動感のバランスの良さが心地よさを生んでいます。 技術のキレも素晴らしく,一音たりとも気を抜かず隅々まで気が配られている点も良いと思います。

録音:

残響がかなり多く,残響時間も長め,直接音比率が低く,残響の被りによる音色の濁りがかなりあります。 残響の質も悪く,ワンワンと洞窟のように響くだけで,録音空間の広がりも感じさせず,音楽的な寄与も感じません。 明瞭感も良くなく,ニュアンスも失われてしまっています。 音色のバランスも崩れ,変にキンキンうるさいです。 全く良くありません。 ソナタ第3番,パルティータ第3番はさらに一段悪くなります。 残念です。

P.S.

横山奈加子さんは,第60回日本音楽コンクール第2位,第10回チャイコフスキーコンクール第5位などのコンクール入賞歴を持つ実力者。

(記2015/08/08)


島田真千子 Machiko Shimada

レーベル Altus
収録曲 パルティータ第2番,第3番,ソナタ第3番
録音データ2014年5月1日,7月2日,12月2日 所沢市民文化センター キューブホール
使用楽器 Goffredo Cappa(1685年)(モダン仕様)
所有盤 ALT318 (C)2015 Altus Music (国内盤)

モダン楽器による演奏。 緊張感が高く,淀みのないテンポで突き進む潔い音楽が実に気持ちが良く, また彫りが深く起伏に富んだ思い切りの良い表情が印象的です。 そしてヴィブラートがコブシのように利く「泣きのヴァイオリン」というイメージが強く残る演奏です(それはちょっと違うだろ!と突っ込まれるかもしれませんが...(^^;)。

大変細かい話で恐縮ですが,パルティータ第3番 Gavotte en Rondeauの最初のリピートが省略されています。 そういう版もあるのでしょうか?

録音:

残響がかなり多く,残響時間も長めのため,楽器音に大きく被り音色が混濁しています。 高域の伸び,輝きも今ひとつでモゴモゴしているほか,強く演奏される部分での音の潰れが気になります。 やや歪みっぽく,オーディオ品質もあまり良いように思えません。

また録音会場の「ドーン」とか「ゴワーン」とかいう低いノイズが結構入っていて気になります。 少々配慮が足りない気がします。

さらに編集されているのではないかと思わせるような不自然な音のつながりもあるような気がして, 今ひとつ落ち着いて聴けないのが残念です。

(記2015/08/01)


イ・ボギョン Bokyung Lee

レーベル LEEVÉ ART
収録曲 全集
録音データLEEVÉ ART HALL, June & December 2014
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 LVAP-15K1404 (P)(C)2015 LEEVÉ Production (輸入盤)

モダン楽器による演奏。 丁寧ですっきりと整った演奏で,緩急や強弱は控えめですが,速い楽章での淀みのない軽快なテンポ感, 自然な呼吸感に沿った細やかな表情付けが好印象です。 強い印象を残す演奏ではありませんが,技術的にも安定感があり, 無難に上手くまとめていると思います。

録音:

残響は控えめですが,音に伸び,精彩がなく,くすんでややモゴモゴした音色です。 高域のヌケ,輝きが感じられないのが残念です。 そんなに悪くはないとはいえ,どっちつかずの半端な音作りで損をしていると思います。

(記2015/07/24)


タマラ・スミルノヴァ Tamara Smirnova

レーベル Croatia Records
収録曲 全集
録音データ記載なし (1995/5/23リリース)
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 iTunes Store ダウンロード販売(AAC 256kbps)

モダン楽器による演奏。 力強く自信に満ち推進力があります。 弓遣いに迷いなく鋭く切り込んでいくところが良いと思います。 技術的にも優れています。

しかし,この全集には重大な欠陥があります。 パルティータ第1番のSarabandeのDoubleのところで,こともあろうかCouranteのDoubleがもう一度入っているのです。 つまり,SarabandeのDoubleが抜けているのです。 これは完全な編集ミス。 いつ公開されたのか知りませんが,こんな状態で放置されていることが信じられません。

録音:

とても残響が多く,しかも楽器音に被って音色が大きく損なわれています。 明瞭感も悪く,ニュアンスや楽器の質感も失われています。 残響を入れれば良いというものではありません。 全く良くありません。

P.S.

ヴァイオリニストについては詳細がよくわかりません。 クロアチアのレーベルのようですので,そのあたりの出身のヴァイオリニストだとは思います。

iTunes Storeのダウンロード販売で購入(AAC 256kbps)。 ディスクでも販売されていたようですが,現在は入手困難のようです。 上記のような欠陥があり,また録音も良くありませんので,演奏は良いと思うのですが,お薦めできません。

(記2015/06/07)


マルコ・リッツィ Marco Rizzi

レーベル Amadeus
収録曲 全集
録音データ記載なし (2012/9/19リリース)
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 iTunes Store ダウンロード販売(AAC 256kbps)

オーソドックスながら,卓越した技術と高い集中力で,緊張感の持続する隙のない音楽を築いています。 速めのテンポで淡々としていますが,力強く引き締まっていて,かつ隅々にまで神経が行き届いているのが素晴らしいです。 これは思いがけないところで優れた演奏に出会いました。

録音:

やや残響が多くまとわりつきがやや鬱陶しく感じられます。 音色のバランスはあまり崩れていないものの,ヌケの悪さにつながり,楽器の質感も弱めています。 それでも直接音が感じられるのでまだ聴ける方ですが,もう少し直接音比率を上げて明瞭でクリアに録って欲しいところです。

P.S.

マルコ・リッツィ氏はイタリア出身のヴァイオリニスト。 エリザベート王妃国際音楽コンクール(1993年)第8位,チャイコフスキー国際コンクール第10回(1994年)第3位,などのコンクール受賞歴があるようです。

iTunes Storeのダウンロード販売で購入(AAC 256kbps)。 日本のAmazonでは扱っていないようですが,海外のAmazonではダウンロード販売していました。 ディスクメディアが販売されているのかどうかは確認できませんでした。

ところでこのダウンロード販売には重大なエラーがあります。 といいますのも,ソナタ第3番の終楽章の曲がパルティータ第3番の前奏曲に入れ替わり, その後の曲が全て前に1曲ずつずれて収録されており, パルティータ第3番の終楽章にソナタ第3番の終楽章が入っているのです。 こんなエラーが見過ごされて放置されているとは,管理がずさんというのにもほどがあります。 海外のAmazonもエラーは同じでした。

(記2015/05/30)


マッツ・セッテルクヴィスト Mats Zetterqvist

レーベル Kulturhuset
収録曲 全集
録音データ記載なし (2015/1/9リリース)
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 Amazon.co.jp ダウンロード販売(MP3 256kbps)

隅々までコントロールが行き届いた技術のキレが抜群に良い演奏です。 速めのテンポで颯爽としていますが,ニュアンスも豊かです。 音色は固めですが雑味のない美しい輝きを放っています。 モダン楽器らしい好演奏で,水準も高いと思います。

録音:

残響は少しあり楽器音へのまとわりつきと音色への影響がわずかにありますが,直接音が主体であり, 明瞭感も高く,楽器の質感もよく感じられる良好な録音です。 曲によって少しチリチリという付帯音が聞こえます。 録音時に入ったものか圧縮時のエラーかはわかりませんが,これは少し残念に思います。

P.S.

公式Webサイトがあります。 セッテルクヴィスト氏はスウェーデン出身のヴァイオリニスト。 2009年よりヨーロッパ室内管弦楽団の第2ヴァイオリン首席奏者。

AmazonでのMP3(256kbps)ダウンロード販売の他にディスクメディアの販売もあるようですが, 気軽に買えそうなサイトではなかったため諦めてダウンロード購入しました。

(記2015/05/23)


クリスティアン・フェラス Christian Ferras

レーベル Meloclassics
収録曲 ソナタ第2番,第3番
録音データ29 Feb. 1956 (No.2), 3 Feb. 1960 (No.3), Hessischer Rundfunk, Radio Studio Recording
使用楽器 不明(モダン仕様)
所有盤 MC 2001 (C)2013 Meloclassic (輸入盤)
併録曲:タルティーニ:ヴァイオリン・ソナタ ト短調「悪魔のトリル」, モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタK.526

アクセントを付けながらキチッと弾く折り目正しさが印象に残ります。 重音を正確に半拍前からリズムに合わせて弾くスタイルもその印象を強くします。 特にソナタ第3番のフーガは過剰なくらいで,ここまで徹底しているともう立派としか言いようがありません。 この楽章がこのディスクの白眉です。 ソナタ第3番が優れていると思います。

録音:

1956年と1960年の録音(いずれもモノラル)。 スタジオで放送用音源として録音されているため,残響がなく極めて明瞭で,この点では間違いなく好録音です。 古い録音なのでクオリティは年代相応で,緻密さに欠けるのは仕方ありません。

P.S.

放送用音源から復刻されたもの。

(記2015/05/16)


レオニード・コーガン Leonid Kogan

レーベル Meloclassics
収録曲 ソナタ第3番
録音データ25 May 1964, Bardeaux, Grand theatre, Radiodiffusion-Television Francaise
使用楽器 不明(モダン仕様)
所有盤 MC 2012 (C)2013 Meloclassic (輸入盤)
併録曲:ヘンデル:ヴァイオリン・ソナタHWV370, ブラームス:スケルツォ, ファリャ:スペイン民謡組曲, ラヴェル:ツィガーヌ, ドビュッシー:美しい夕暮れ, サラサーテ:サパテアード

力強くキレの良い演奏ですが,(意外にも)冷静で落ち着いています。 オーソドックスで,どちらかといえば綺麗にまとめることに重きを置いた守りの演奏のように思えます。 正直なところもう少し推進力が欲しかったなと思います。

録音:

1964年の録音(モノラル)なのでそこそこ良いクオリティがありますが,中低域は薄めでやや軽い音質です。 また,高域側も帯域が不足しているということはありませんが,やや伸びが足りないかなと思います。 放送用ということでスタジオで録音されていて,残響がほとんどないためとてもクリアで明瞭です。 この点ではまさに好録音と言えます。 私の好きな録音ではありますが,客観的にみてオーディオ的には年代相応というところだと思います。

P.S.

放送用音源から復刻されたもの。 最初に曲の説明のナレーションも入っています。

(記2015/05/14)


ユーディ・メニューイン Yehudi Menuhin

レーベル Meloclassics
収録曲 パルティータ第3番
録音データ25 August 1952, Ascona Palestre delle Schuola, Radio Svizzera di Lingua Italiana
使用楽器 不明(モダン仕様)
所有盤 MC 2003 (C)2013 Meloclassic (輸入盤)
併録曲:タルティーニ:ヴァイオリン・ソナタ ト短調「悪魔のトリル」, フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調, サン=サーンス:ハバネラ,序奏とロンド・カプリチオーソ

ものすごい勢いに圧倒される演奏ですが,一方でかなりせっかちに聴こえます。 そして昨今の演奏と比べると相当荒っぽいです。 そういった点で大いに時代を感じさせる演奏ですが,それがまた良いのだとも思います。 かつては音楽はもっと自由で大らかだったんだなと。

録音:

1952年の録音なのでさすがに古くクオリティは良くありませんが, 放送用の音源のためか,残響は全くなく楽器音が極めてクリアに録られているため, 1952年の録音とは思えないほど鮮明です。 音色のバランスは大きく崩れているのですが,高域が比較的きちんと出ているため,あまり不満に感じません。 ある意味好録音と言えるかもしれません。

P.S.

放送用音源から復刻されたもの。 最初に曲の説明のナレーションも入っています。

(記2015/05/13)


ドミトリー・マフチン Dmitri Makhtin

レーベル Lontano (Warner Classics)
収録曲 ソナタ第1番,第2番,パルティータ第1番
録音データL'Arsenal (Metz) salle de L'Esplanade 19-21 fevrier 2007
使用楽器 不明(モダン仕様)
所有盤 2564 69813-3 (P)(C)Lontano (輸入盤)

伝統的なスタイルの引き締まった演奏。 オーソドックスで大きな特徴はないものの,インテンポで淀みなく淡々と弾き去る技量は大したもの。 技術的には隙がなく相当上手いです。 今風の演奏ではありませんが,充実度の高い好演奏です。

録音:

残響はそれほど多くありませんが,響きが結構あるため楽器音がやや濁り気味です。 楽器音自体はしっかりと録っているのですが,この響きのために高域の伸びが損なわれ,ニュアンスも失われています。 また,背景にブーンというノイズがかすかながら入っているのも気になります。 惜しい録音です。

P.S.

ドミトリー・マフチンは,ロシア,サンクトペテルブルク出身のヴァイオリニスト。 本ディスクはVolume 1と記載されていますが,Volume 2が一向に発売される気配がありません...

(記2015/05/09)


アルベルト・コチシュ Albert Kocsis

レーベル Hungaroton
収録曲 ソナタ第1番,パルティータ第2番
録音データ不明(リリース 1963年)
使用楽器 不明(モダン仕様)
所有盤 Hungarotonのサイトよりダウンロード購入
併録曲:イザイ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ作品27-4

恐ろしく気合いの入った力強く実直な演奏。 およそ50年前の演奏で,当時としてはこのようなアプローチが主流だったのではないかと思います。 技術的にもかなり上手く,この点はほぼ不満がありません。 リピートの省略が多いのが残念です。

録音:

残響はほとんどない極めて明瞭な録音で,この点で不満はありません。 古い録音のため高域の伸びが今ひとつであり,音色が古臭いです。 これは仕方ないところです。 明らかに編集されたとわかるところが何カ所かあり,これも残念なところです。 また,FLAC配信にもかかわらず,時折低ビットレートのMP3でエンコードしたときに発生するような音の歪みが感じられます。 配信のクオリティはあまり良いとは言えません。

P.S.

デネス・コヴァーチュの全集と同様,ブログ読者様から教えていただいたフンガロトンのサイトでこれを見つけた演奏です。 やはり同じくMP3とFLACで販売されており,FLACは44.1kHz/24bitのデータでした。 価格は2015年5月現在2,899フォリント,日本円換算で1,300円ほどです。

(記2015/05/09)


コンラッド・フォン・デア・ゴルツ Conrad von der Goltz

レーベル Cascade
収録曲 全集
録音データ記載なし
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 品番なし iTunes Music Storeにてダウンロード販売
“よくばりクラシック 100min.×100 vol.96” より

至極オーソドックスなアプローチです。 奇を衒うことなくじっくりと真摯に取り組りくんでいる様が伝わってきます。 この点に関しては好印象です。 しかし,残念ながら技術が伴っていません。 音程が悪くしかも不安定,緩急も曲想で変化するというよりは左手の難易度で発生しているように聴こえます。 ただ,それに対して右手の技術はしっかりしているので,技術に不安を覚えながらも結構聴けます。 また,パルティータ第二番の出来が図抜けて良く,上記の弱点はほとんど気になりませんでした。

録音:

まるで銭湯の中で録音したような音です。 楽器音が響きに埋もれてニュアンスや質感がよく伝わってきませんし,当然音色もかなり影響を受けています。 特にソナタ第一番がひどいです。 他の曲は幾分マシで,息づかいが聞こえてくるような距離感をもった録音ですが,それでもやっぱり響きが多すぎます。

P.S.

下記の「クアドロマニア」シリーズに含まれていたものの全曲セット。 クラシック入門用のシリーズだと思われます。 演奏,録音とも以前レビューしたときと変わらない印象でしたので,その記事をほぼそのまま引き継いでいます。 2015年5月時点のダウンロード販売価格が900円と安いのは有り難いのですが... 入門用としては(入門用だからこそ)演奏,録音とも,もう少しクオリティの高いものを選んで欲しいものです。

ゆったりした演奏とは思えないのですが,全曲でCD 2枚に入りきらない演奏時間でした。 このためクアドロマニアでは曲数が少なかったものと思われます。

(記2015/05/06)

コンラッド・フォン・デア・ゴルツ Conrad von der Goltz

レーベル Cascade
収録曲 ソナタ第1番,第3番,パルティータ第2番,第3番
録音データ記載なし
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 222104-444 (P)Cascade Medien (C)2004 Membran International (輸入盤)
「クアドロマニア」シリーズ4枚組
併録曲:無伴奏チェロ組曲(No.1,2,3,5,6)(演奏:ヴィクトール・ヨーラン)

「クアドロマニア」は4枚組廉価盤のシリーズで,無伴奏ヴァイオリンは4枚中の2枚に収録されています。 演奏時間が長いため,全曲を収録することが出来なかったようです。 レビューはiTunes Music Storeでダウンロード販売されている全曲セットの欄をご参照ください。

(記2004/05/25)(修正2015/05/06)


ギル・シャハム Gil Shaham

レーベル Canary Classics
収録曲 全集
録音データStudio 2, Bayerischer Rundfunk, Munich, Germany in June and July, 2014
使用楽器 Antonio Stradivarius "Countess Polignac" 1699(モダン仕様)
所有盤 CC14 (P)(C)2015 Canary Classics LLC (輸入盤)

上手い! 本当に上手いです。 技術のキレは抜群で,技術的制約からくるもたつきは皆無です。 優れた技術による演奏でしか得られない快感がこの演奏にはあります。

そしてとても個性的。 どの曲にも彼流の仕掛けが仕組んであります。 曲を完全に支配し,変幻自在に操る。 彼の世界に強引に引きずり込まれてしまいます。 それがまた楽しいのです。

録音:

残響は少し多めですが,直接音もしっかりと明瞭に質感豊に捉えられています。 音の伸びもあり,ヌケも悪くありません。 高域が少し刺激的なところはありますが,私にとっては問題ありません。 残響が多くてもこの録音ならまずまず納得出来ます。

(記2015/04/01)


藤原浜雄 Hamao Fujiwara

レーベル Sonare
収録曲 パルティータ第2番
録音データ2012年10月11日 東京 紀尾井ホール(ライヴ)
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 SONARE1016-7 (P)(C)2013 Sonare Art Office (国内盤)
備考 “藤原浜雄:ヴァイオリン・リサイタル2012”より
併録曲:ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第4番,バルトーク/ヴァイオリン・ソナタ第1番Sz.75, ラヴェル/ツィガーヌ,ラヴェル/ハバネラ形式の小品,パガニーニ~リリアン・フックス編/カプリス第24番

渾身のバッハ。 熱く濃い,人間味あふれる,演奏者の個性が色濃く反映された,そして巨匠的風格を備えた堂々とした演奏です。 実直でブレのない音楽が素晴らしく思います。

録音:

ホールの残響をかなり多く取り入れていますので,そのまとわりつきがかなり鬱陶しく, 本来の音色や質感,ニュアンスが感じ取りにくいです。 ピアノとのデュオの他の曲では少し残響が抑えられていて聴きやすいのですが, このソロだけこのような録音の仕方をされていて,余計に残念に思います。 録音レベルも若干低めです。

(記2015/03/06)


オスカー・シュムスキー Oscar Shumsky

レーベル DOREMI
収録曲 パルティータ第2番
録音データ1982年10月24日 バーゼル(ライヴ)
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 DHR-8031-3 (C)2015 DOREMI (輸入盤)

シュムスキーらしい力強く引き締まった集中度の高い演奏でこれは期待通りなのですが, その一方でミスも散見されます。 もちろんそんなに気になるものではありませんが。 ライヴ録音なので仕方ないかもしれません。 本質的なところではありませんが,シャコンヌでは一部の分散和音をあまり聴かない音型で弾いたりとちょっと変わったところがあります。

録音:

明らかに高域側の帯域が不足して音の伸びがなくヌケが良くありません。 ライヴとはいえ状態は良くなく,1982年の録音としては少々寂しいと言わざるを得ません。

P.S.

“Oscar Shumsky Legendary Treasures - Broadcasts & Live Performances 1940-1982”と題された, 1940年から1982年のシュムスキーの様々な音源を集めた3枚組のセットから。 シュムスキーファンにとっては貴重な音源かもしれませんが,雑多な音源をとにかくかき集めてセットにしたという感じがします(ごめんなさい)。 録音も全体に良くなく冴えません。

(記2015/03/04)


千住真理子 Mariko Senju

レーベル Universal Classics
収録曲 全集
録音データ2014年9月1日-4日 草津国際音楽の森コンサートホール
使用楽器 ストラディヴァリウス「デュランティ」(モダン仕様)
所有盤 UCCY-1049/50 (P)(C)2015 Universal Classics (国内盤)

モダン楽器による伝統的なスタイルの延長線上にある演奏で,緩急強弱は控えめですが, 一つ一つの音に勢いがあり力強く自信に満ちています。 演奏者の込めた思いがひしひしと伝わってくる芯の強い音楽です。 技術的な不満はゼロではありませんが,全くと言って良いほど気になりません。 もう少し技のキレが欲しいところもありますが,音程やリズムが崩れないため安心して聴くことが出来ます。 この録音に向けて鍛錬を重ねてこられたことが感じられます。

正直に言いますと,聴く前はあまり期待をしていませんでしたが(本当にごめんなさい...), その予想を大きく覆す立派で充実した演奏にちょっと感動してしまいました(^^;。

録音:

残響感が少しあってまとわりつきが気になるものの,明瞭さは失われておらず,楽器の質感も良く感じられます。 音色もそれほど損なわれておらず,音の伸びもありますし,ヌケも悪くありません。 もちろん私としては残響をもっと抑えてすっきりと録って欲しかったと思いますが, これでも十分良好な録音と言えると思います。

P.S.

20年ぶり2回目の全集録音。 2015年はデビュー40周年とのことです。 これだけ長い間第一線で活躍を続けられて来たこと,本当に立派だと思います。

(記2015/02/28)


リュディガー・ロッター Rüdiger Lotter

レーベル OEHMS Classics
収録曲 ソナタ第1番,第2番,パルティータ第2番
録音データ2010年4月, 2011年7月 ミュンヘン,ゼントリンク,昇天教会
使用楽器 記載なし(バロック仕様)
所有盤 OC 838 (P)2010,2011 (C)2012 OehmsClassics (輸入盤)

バロック・ヴァイオリンによる演奏。 丁寧で美しくとても上品に仕上げています。 強い主張はなくどちらかといえば控えめですが, 技術的にも上手く,ニュアンスが豊で味わいの深い秀演だと思います。

Vol.1ということですので,Vol.2で全集として完結するのが楽しみです。

録音:

やや長めの残響を伴っていますが,直接音の裏でふわっと広がるように響くので, 楽器音をあまり損なっていません。 まとわりつきはあるのでもちろん残響はもう少し控えて欲しいところですが, 音の伸びもまずまず,楽器の質感も残っていますのでこれなら許せる範囲かと思います。 残響を入れるならせめてこのような取り入れ方にして欲しいですね。

(記2015/02/01)


エステル・ペレーニ Eszter Perényi

レーベル Hungaroton
収録曲 ソナタ第1番,第3番
録音データ不明(リリース 1971年)
使用楽器 不明(モダン仕様)
所有盤 Hungarotonのサイトよりダウンロード購入

オーソドックスな演奏で,遊びや飾りがほとんどなく淡々と音楽が進行していきますが, それがかえってこの曲自体がもつ美しさを引き立てているようにも思います。 もう40年以上前の録音ですが,全く古さを感じさせない,時代を超えて通じうる様式の演奏だと思います。 技術的にもしっかりしています。

録音の良さも併せて,これは私にとっては素晴らしい掘り出し物でした。 全集でないのが本当に残念です。

録音:

かすかに残響が感じられるのですが,楽器音にはほとんど影響を与えないレベルです。 直接音を主体に,極めて明瞭に,自然に,伸びのある音で録られています。 オーディオ的な品質は現代の録音には及びませんが, 楽器音を何者にも邪魔されることなく気持ちよく聴くことが出来る好録音です。

P.S.

デネス・コヴァーチュの全集と同様,ブログ読者様から教えていただいたフンガロトンのサイトでこれを見つけた演奏です。 やはり同じくMP3とFLACで販売されており,FLACは44.1kHz/24bitのデータでした。 価格は2014年11月現在2,899フォリント,日本円換算で1,400円ほどです。

(記2014/11/29)


デネス・コヴァーチュ Dénes Kovács

レーベル Hungaroton
収録曲 全集
録音データ不明(リリース 1981年)
使用楽器 不明(モダン仕様)
所有盤 Hungarotonのサイトよりダウンロード購入

ヴィブラートをたっぷりかけて力強く歌う,旧世代の伝統的な演奏と言えるのではないかと思います。 今となってはやや古めかしく聴こえますが,技術的にも安定していて充実感のある良い演奏だと思います。

録音:

残響は控えめでまとわりつく響きがわずかに気になる程度,明瞭感もある良好な録音です。 ただ1981年の録音としてはレンジ感があまりなく,音質がやや古く感じられます。

P.S.

CD化はされておらず,入手を諦めていたのですが, ミクローシュ・ペレーニのバッハ無伴奏チェロ組曲1981年録音がダウンロード販売されていることをブログ読者様から教えていただいたフンガロトンのサイトでこれを見つけた次第です。 MP3とFLACで販売されており,FLACは44.1kHz/24bitのデータでした。 価格は2014年11月現在2,899フォリント,日本円換算で1,340円ほどとリーズナブルな価格で手に入るのは本当に有り難いです。

(記2014/11/09)


グナール・レツボール Gunar Letzbor

レーベル Pan Classics
収録曲 全集
録音データRecorded at Letzbor privat, Pisa (Italy), in January 2011
使用楽器 Sebastian Klotz, 18th c.(バロック仕様)
所有盤 PC 10286 (P)(C)2013 note 1 music (輸入盤)
PC 10298 (P)(C)2014 note 1 music (輸入盤)

重音を弾くときに完全に拍を分けるように弾くので,そこで一拍増えるような感じになって, 音楽のリズムがそこで崩れてしまっているのが聴き苦しく感じます(フーガは例外なくこんな感じです...)。 またパルティータ第2番のAllemandaなどではリズム感が希薄で止まりそうになるような揺らし方をするので, 音楽を身体で感じようとすると呼吸が合わせられず息苦しくなり胸が痛くなります。 これはちょっと身体が受け付けません。

丁寧に演奏される曲もあれば,荒っぽく演奏される曲もあり, また,音の出だしのタッチの柔らかさ,美しさの感じられる曲もあり,テンポ良く快活に演奏される曲もあり,変化には富んでいるのですが...

技術的には少し物足りなさも感じます。

録音:

プライベート録音なのでしょうか,自宅のスタジオで生録的に録音されたような感じで,全く残響がありません。 あまりの残響のなさに違和感を覚えられるかもしれませんが,私としてはかなり好きな録音です。 マイクの性能なのか,マイク位置が少し離れすぎているのか,少し音色に色が感じられるのと, ほんのわずかなヌケの悪さがあって,少々残念なところはあります。惜しいと思います。

(記2014/10/11) ※パルティータ集を追加して全集扱い
(記2013/09/08)


ベルンド・グラッドウォール Bernd Gradwohl

レーベル 自主制作
収録曲 全集 Complete
録音データ Livekonzert, 25. August 2006, Kirche Liding
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 (C)2006 Bernd Gradwohl (輸入盤)

ちょっと乱暴な演奏だなぁと思っていたら,ソナタ第1番のPrestoで... 「なんじゃこりゃぁぁぁあ! これはいくらなんでもこれは暴走しすぎだろ!」。 そして,パルティータ第1番のCorrenteとDoubleで,また,「うぅぅ,これは現代音楽か? ひっひっヒドい!」。 思わず失笑...(^^;

ソナタの終楽章はどれも暴走していて全然呂律が回っていません。 明らかに技量が追いつく速度を越しています。 パルティータ第1番のCorerenteは弓を弦にぶつける弾き方でびっくりしますし, そのDoubleはやっぱり暴走しています(終わった瞬間に観客の失笑が聞こえる曲も...)。 それ以外の曲は上記の曲に比べると聴けるのですが,上記の曲の印象があまりにも強すぎます。 まあ表現は演奏者の自由ですから... でも私はこれを肯定的に受け取ることは出来ませんでした。 なお,技術的に下手ということではありません。 念のため。

録音:

ライヴ録音で,録音会場の残響時間の長い響きを多めに取り入れていますが,直接音成分がしっかりとあるために,印象は悪くありません。 素直で自然な録音であり,高域の伸びもまずまずあるので残響が多い割には良好と言えます。 会場の外から時々大きな騒音が入ることがあり,これが少し残念です。

(記20014/10/05)


リサ・バティアシュヴィリ Lisa Batiashvili

レーベル Deutsche Grammophon
収録曲 ソナタ第2番
録音データ Himmelfahrtskirche, Munich-Sendling, 1/2014
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 00289 479 2479 (P)(C)2014 Deutsche Grammophon (輸入盤)
カップリング曲: バッハ/オーボエとヴァイオリンのための協奏曲ハ短調 BWV.1060a,カンタータ第156番『わが片足は墓穴にありて』ヘ長調 BWV.156~シンフォニア,ヴァイオリン協奏曲第2番ホ長調BWV.1042,マタイ受難曲BWV.244から『憐れみ給え,わが神よ』,C.P.E.バッハ/ヴァイオリン,フルートと通奏低音のためのトリオ・ソナタ 変ロ短調Wq.143

これはモダン楽器の持つ能力をフルに引き出したのではないだろうかと思ってしまいます。 張りのある密度の高い魅力的な音色,まるで楽器自体が呼吸するかのような自然で幅広い表現力, 隅々にまで神経が行き渡った緻密な音楽は本当に圧巻です。 いささか曲をいじりすぎの感はありますが,ここまで完璧に魅力的に決められると納得せざるを得ないです。 この演奏で全曲を聴いてみたいものです。

録音:

残響が多めで直接音よりも比率が高いためまとわりつきが鬱陶しく感じられ,やや演出感が鼻につきます。 高域が伸びているようで伸びきらず,もどかしさも感じます。 客観的にはそれほど悪くはないかもしれないと思うのですが,私はあまり好きではありません。

(記20014/09/28)


高橋未希 Miki Takahashi

レーベル MA Recordings
収録曲 ソナタ第2番
録音データ 2011年8月 ドイツ,ベルリン,ヴァンシー村のアンドレアッシュキルッヒ
使用楽器 ニコラ・ガリアーノ 1674年製 (バロック仕様)
所有盤 MAJ509 (P)(C)2014 MA Recordings (国内盤)
カップリング曲:トマス・バルツァー/プレリュード ト長調,ジョバンニ・バサーノ/リチェルカーレ第2番ト長調,ビーバー/ロザリオのソナタよりパッサカリア ト短調,テレマン/無伴奏ヴァイオリンのためのファンタジー第7番,バブコット/ディンスレー/詳細な覚え書きを基にトマス・ディンスレーによって復元されたジョージ・バブコットの間違いの多い哀悼曲

バロック・ヴァイオリンによる演奏。 静寂の中でそっと祈りを捧げるように始まるソナタの第1楽章が印象的。 そして終始その静かで穏やかな雰囲気のまま終楽章のAllegroまでも終わります。 アクセントを巧みに抑え,バロック・ヴァイオリン特有の響きを上手く出していますし, その良さを活かしつつごく自然な音楽に仕上げているところに好感を持ちます。

もっとも私としてはもう少し快活な演奏の方が好みなので, 後ろに引っ張られるような演奏に少々もどかしさも感じます。 演奏者の意図が違うところにあるのでしょうから,仕方ありませんが。

解説書で使用した弓について,『製作者が「バッハ・ボウ」と呼んでいたこの弓は,・・・』とあるのですが, 演奏を聴く限りは張力を手元で調整できる湾曲弓ではない,通常のバロック弓のように思います。

録音:

教会での録音で,ワンポイント録音されたとのことです。 直接音と残響音のバランスが取れていて,豊かな残響を感じさせつつ,明瞭度の低下,音色の曇りが最小限に抑えられていて, 印象は悪くありません。 私としては,もう一歩寄って,楽器から発せられる雑味も含んだニュアンス豊かな音色をしっかりと録って欲しかったと思いますが。 ちょっと美しく録りすぎてバロック楽器の良さが失われている気がします。

(記20014/09/28)


郷古廉 Sunao Goko

レーベル EXTON
収録曲 ソナタ第1番,パルティータ第1番
録音データ 2013年10月22-24日 プラハ,ストジェシュヴィッカー・エヴァンゲリカル教会
使用楽器 1682年製ストラディヴァリウス(Banat) (モダン仕様)
所有盤 OVCL-00523 (P)(C)2014 Octavia Records Inc. (国内盤)
カップリング曲:バルトーク/無伴奏ヴァイオリン・ソナタSz.117

まずは教科書通りというところでしょうか。 しかし,キレがあり,真摯で緊張感のあるまっすぐな演奏は聴き応えがあります。 技術的にもまだまだ余裕があり完璧に隅々までコントロールしています。 立派な演奏に感心しました。 今後がとても楽しみです。

録音:

残響が多く,また,かなりオフマイクの録音なので残響が優勢で明瞭感がなく,細部やニュアンスが聴き取りづらく, 楽器の質感も感じ取りにくいです。 高域の伸びはないものの曇った感じが少ないのが救いですが,私としてはとても残念な録音です。

P.S. 郷古廉氏は1993年生まれ。2004年第58回全日本学生音楽コンクール第1位,2013年ティボール・ヴァルガ・シオン国際ヴァイオリン・コンクール優勝など,国内外の数々のコンクールで優勝の経歴を持っておられます。現在はウィーン私立音楽大学において研鑽中。これまでに勅使河原真実,ゲルハルト・ボッセ,辰巳明子,パヴェル・ヴェルニコフの各氏に師事されたとのことです。

(記20014/09/23)


クラウディア・シェアー Claudia Schaer

レーベル 自主制作
収録曲 全集 Complete
録音データ The Banff Centre, Banff, Alberta, 2013 February 2-3, 9-10
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 品番なし 2014 CLAUDIA SCHAER (輸入盤)

モダン楽器による軽いタッチの流麗で繊細な演奏。 雑味のない透明感ある音色も魅力的です。 時折入れられるバロック的でない装飾もこの演奏に独特の色を添えています。 技術的にも安定感のある好演奏です。

録音:

わずかに残響が被っていますが,透明感ある音色はぎりぎり保たれており,楽器の質感,微妙な弓遣いのニュアンスも感じ取れます。 もう少し残響の被りが抑えられ,鮮明さがあると良かったのですが,残響の許せる方なら問題ない録音でしょう。

P.S. Official web siteがあります。 クラウディア・シェアー氏はカナダのヴァイオリニスト。 Amazon.comのマーケットプレイスから購入したところ, 本人から直接ディスクが送られてきました。 日本からの初めてのオーダーだったそうです(^^)v。

(記20014/08/31)

いつもお世話になっている友人が,ご本人に日本語表記を確認してくださいました(有り難うございます!)。 スイス系の名前だそうで,発音記号で記載すると「ʃæɾ」,共有するという意味のshareに近い発音ということで, 「スカエル」ではなく「シェアー」と表記するのが適切のようです。 ということで,記載を修正しました。

(記20014/09/03)


河村典子(Noriko Kawamura)

レーベル opus55
収録曲 全集
録音データ 2011-2012 at opus55 studio
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 OPFF-10018/1-2 (P)2013 opus55 LLC (国内盤)

モダン楽器による演奏。 どちらかといえば旧世代の実直な演奏スタイルを引き継いだ演奏と言えると思います。 正直なところソリストのような切れ味の良さはありませんが, 丁寧で温かみがあり,長年弾き込んで熟成させたような味わい深さがこの演奏の良さだと思います。

しかし! この演奏には私にとって大きな問題が... 二部形式のほとんどの楽章で,後半のリピートが省略されているのです(ソナタ第2番のAndanteとAllegroはリピートされていましたが)。 これでは気持ちよく聴き通すことが出来ません。 残念!

録音:

スタジオでの録音のようですが,残響感はないものの,マイク位置が遠いのか,室内の反響が多く, 音色をかなり曇らせていていますし,明瞭感も大きく損なっていますし,ニュアンスも楽器の質感も失われてしまっています。 反射音の取り入れ方としては最も音を濁らせる良くないパターンです。 せっかくスタジオで録音しているのに,その絶好の環境を全く生かせていません。 これは本当にもったいない! これも本当に惜しいです。

P.S. 河村典子さんは,元チューリッヒ歌劇場管弦楽団の第二ヴァイオリン首席奏者。 2005年秋からバッハ無伴奏プログラム「ヴァイオリンひとり」で日本各地での演奏行脚を始め,2012年元旦にスイスにて100回目を達成したとのこと。 このディスクはその集大成として録音されたようです。

(記20014/08/23)


ヴォルフガング・シュナイダーハン(Wolfgang Schneiderhan)

レーベル Deutsche Grammophon
収録曲 パルティータ第2番
録音データ 1955年1月12-15日 ウィーン,コンツェルトハウス・モーツァルトザール
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 PROC-1444 (P)1955,1959 Deutsche Grammophon (輸入盤)
Tower Records Vintage Collection +plus Vol.18 タワーレコード企画盤
カップリング曲:ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲(1959年録音)

オーソドックスながら,切れのある重音奏法,まったく淀みのないテンポ感など,力強くキリッと引き締まった表現が好印象です。 緩急強弱も必要最小限,小細工が全くなくストレートそのもので,かえって清々しく感じます。 前半の4楽章は速めのテンポが気持ちよく,シャコンヌは前半と比較するとやや腰を据えてじっくり取り組んでいるという印象を受けます。

録音:

モノラル録音。 ほんの少し残響を伴っていますが,気になるほどのことはなく,十分な明瞭感があります。 古い録音のためもあって,やや歪み感が多く,また,音色も古臭さがありますが, この時期の録音と思えば十分に鑑賞に耐えうると思います。

P.S. シュナイダーハン氏は,1915年ウィーン生まれ,2002年死去。 1938年~1949年ウィーンフィルのコンサートマスターを務めたとのこと。

(記2004/03/12)

およそ10年前にLPで聴いてレビューしていましたが,タワーレコードから復刻盤がリリースされましたので, ディスクの情報を入れ替えました。 レビュー内容は変わりません。 ジャケット写真(上)はこの復刻盤CDのものですが,写真(下)がオリジナルのジャケットだと思われます。

(記2014/08/14)


イスカンダル・ヴィジャヤ(Iskandar Widjaja)

レーベル OEHMS Classics
収録曲 ソナタ第2番,第3番
録音データ November 2012 and June 2013, Jesus-Christus-Kirche, Berlin-Dahlem
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 OC 896 (P)2012,13 (C)2014 OehmsClassics (輸入盤)
カップリング曲:バッハ/コンチェルトト短調BWV1056R(チェンバロ協奏曲第5番ヘ短調BWV1056からの再構築),ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調BWV1041

一聴しただけでその表現力の幅の広さに驚かされます。 技術力も高く素晴らしいです。 積極果敢で現代的な演奏です。 ただ,曲によってはあまりにも緩急に富みすぎて音楽が前に流れず頻繁に止まりそうになるのはどうしても馴染めません。 呼吸が合わず息苦しくなってしまうのです。 才能ある若者の意欲的な演奏だけに合わないのが残念です。

録音:

息づかいが感じられるような録音で,残響もあまり感じられないのですが,ややくすんでヌケが良くありません。 わずかな響きがマイナスに働いているように感じられます。それでも楽器の質感やニュアンスは良く感じられるので何とか許容範囲です。

(記2014/06/15)


リザ・フェルシュトマン(Liza Ferschtman)

レーベル Challenge Classics
収録曲 ソナタ第一番,パルティータ第三番
録音データ Galaxy Studios, Mol, Belgium, July 2009
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 CC72351 (P)(C)2010 Challenge Classics (輸入盤)
カップリング曲:イザイ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第一番,第二番
備考 参考url: 公式Webサイト

レーベル Challenge Classics (Northstar Recording)
収録曲 パルティータ第2番
録音データ Galaxy Studios, Mol, Belgium, July 2013
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 CC72635 (P)(C)2014 Challenge Classics (輸入盤)
カップリング曲:Biber: Passagalia "Guardian angel" C.105, Bartok: Sonata for solo violin Sz.117, Berio: Sequenza VIII for violin

この奏者は恐ろしくキレます(「ブチ切れる」という意味ではありません(^^; 念のため)。 演奏はいたってスマートでクール,表現力が豊かでかつ透明感ある音色が魅力的です。 しかし,どこか孤独で憂いがあり,またどことなく冷たい肌触りも感じられます。 旧来のモダン流儀でもなく,ピリオドに傾くこともなく(少なくとも私はそう感じました), 洗練性を追求したこれぞモダンらしい演奏! うれしくなりました。 全集のリリースを期待します!

録音:

わずかに響きはありますが,直接音が主体で明瞭感が高くクリアでヌケも良いので,ほぼ文句ないレベルの仕上がりと言えます。 暗騒音,その他のノイズもほとんど感じられず,静寂の中で演奏されているような,ある意味現実感の希薄な不思議な感じのする録音ですが, もちろん悪い印象ではありません。

(記2010/05/25)

パルティータ第2番を収録したディスクを追記しました。 演奏の素晴らしさ,録音のクオリティは1枚目のディスクと変わりません。 次作も楽しみです。

(記2014/06/08)


ヤッセン・トドロフ(Jassen Todorov)

レーベル GEGA NEW
収録曲 全集
録音データRecorded December 2012, July 2013, Bulgarian National Radio - Studio 1
使用楽器 1914 Leandro Bisiach(ソナタ集),1778 Tomaso Eberle(パルティータ集)(モダン仕様)
所有盤 GR 16, GR 19 (C)ALAN group (輸入盤)

良い意味で教科書的,模範的で,土台のしっかりした安定感のある演奏です。 生真面目で遊びがない直球勝負のようであって,実は隅々にまで神経が行き届いた細やかさも持ち合わせています。 右手の弓使いの確かさ,和音の響きの美しさなど,地味ながらも特筆できるところが多くあります。 こういう演奏は好きですね。

録音:

ソナタ集は,少し癖のある響きを伴いながらも楽器音を正面からしっかりと捉えた好録音と言えます。 細かいニュアンス,楽器の質感もそこそこ感じ取ることが出来ます。

一方パルティータ集は,背景にふわっと広がる響きがあるものの,直接音が主体で明瞭感があり,鮮度も高い好録音です。 解像感も高く,細かいニュアンスまでしっかりと聴き取ることが出来ます。 音色も不自然さがなく良好です。 ソナタ集よりもワンランク良くなっていると思います。

(記2014/05/02) パルティータ集追加して全集扱いに
(記2013/10/26)


トーマス・ピーチ(Thomas Pietsch)

レーベル ES DUR
収録曲 全集
録音データ13-18.5.2011 Klosterkirche zu Bordesholm
使用楽器 Hannß Khögl, Vinna, 1672(バロック仕様)
所有盤 ES 2043 (P)(C)2013 C2 Hamburg (輸入盤)

バロック・ヴァイオリンによる演奏。 弓の使い方はバロックらしく起伏に富んでいてなかなか良いのですが, 全体に技術のキレが良くなく,その弱さからリズムがギクシャクして聴き苦しいのが残念です。 下手というほどは悪くはないのですが...

録音:

曲により多少差はありますが,ものすごい残響量で,残響時間もすごく長いため,響きがかなり混濁します。 ただ,直接音も比較的明瞭に捉えられているため,この残響の多さの割に聴き苦しさはあまりありません。 残響の許せる方なら楽しめるかもしれませんが,とはいえやはりこの残響は過剰でまとわりつきが鬱陶しいです。 演奏者が出すノイズもボコッボコッという感じでやや不快です。

(記2014/03/30)


レナーテ・エッゲブレヒト(Renate Eggebrecht)

レーベル Troubadisc
収録曲 全集
録音データJuly 25-31. 2011, Clara-Wieck-Auditorium Sandhausen
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 TRO-CD 01444 (P)(C)2014 Troubadisc (輸入盤)

正直なところ,技術的には相当苦しいと言わざるをえません。 キレがなくリズムも音程も不安定です。 聴き所のある曲もあるのですが(ソナタ第二番のAllegroなど),ほとんどの曲は聴いていてつらくなります。

Troubadiscはご自身とチェリストの方とで立ち上げられたレーベルのようで, ソロ・ヴァイオリンのディスクなどを含め多数のレコーディングをされているようです(このディスクもVol.7)。 この熱意と努力は認めるのですが...

録音:

残響感が少しあり音色に影響はあるのですが,楽器音をはっきりと明瞭にとらえているのでまずまずというところです。 オーティオ的には少しきめが粗い感じがしますが,これは演奏のせいかもしれません。 トータルとしてはそんなに悪くありません。

(記2014/03/12)


スタンレー・リッチー(Stanley Ritchie)

レーベル Musica Omnia
収録曲 全集
録音データJuly 2007, Church of Casteldare / Ehrenburg (Bolzano) - Italy
使用楽器 Jacob Stainer, 1670(モダン仕様)
所有盤 mo0503 (P)(C)2013 Musica Omnia & Stanley Ritchie (輸入盤)

この味わい深さは何だろう... 長年引き続けて到達した境地,という趣があります。 技術的にはやや弱い面もありますが,力の抜けたがんばらない演奏が功を奏して破綻をきたすことなく弾ききっています。 音程がほとんど崩れないので余計にそう思うのかもしれません。

録音:

残響が多くまた残響時間も長くてまとわりつきが鬱陶しく感じますが,直接音の比率も比較的高いため, 残響量の割にはまだ聴ける方です。 時折録音会場の外からのノイズが大きめに入るのが少し気になります。

しかし,この録音には編集上の重大な欠陥があります。 パルティータ第3番のGavotte en Rondeauに編集ミスと思われる一瞬のミュートが二度も入ります。 音飛びではなく明らかに編集上の欠陥です。 これをこのままリリースするとは信じ難い(許し難い!)です。 これはもう欠陥商品と言っても良いでしょう。 返品されても文句は言えないレベルです。 せっかくの全集がこの一瞬のために全て台無しです(怒)。

(記2014/03/03)


ルカ・ファンフォーニ(Luca Fanfoni)

レーベル DYNAMIC
収録曲 全集
録音データChiesa di Sant' Andrea, San Paolo di Torrile, Italy, May 2011
使用楽器 Goffredo Cappa 1960(モダン仕様)
所有盤 CDS 758/1-2 (C)2013 DYNAMIC (輸入盤)

弓運びが鋭く思い切りのよい弾きっぷりが見事で痛快です。 やや荒っぽく聴こえるところもありますが,雑に弾いているわけではなく, そういう表現なんだと思うと気になりません。 最近バッハの無伴奏をこういう風に弾く人が少なくなりました。

録音:

残響が多めで直接音よりも残響の方がやや勝っていて音色を汚しています。 音が曇っている訳ではないのでそれほど悪くはないと思いますが, 残響があまり功を奏しておらずすっきりとしません。 オーディオ的にも可もなく不可もなしといったところです。

(記2013/12/21)


シルッカ=リーサ・カーキネン=ピルク(Sirkka-Liisa Kaakinen-Pilch)

レーベル ONDINE
収録曲 全集
録音データKarjaa Church, Finland, October & November 2012, January & March 2013
使用楽器 Anonymus, 1600-1700(バロック仕様)
所有盤 ODE 1241-2D (P)(C)2013 Ondine Oy, Helsinki (輸入盤)

バロック・ヴァイオリンによる演奏。 アタックを抑え気味にしあと押しするように音をふくらませ響かせる独特の弾き方や, 緩急を細やかに付けてリズムを微妙に崩しながら表情を付けていくところなど,バロック・ヴァイオリンらしさを感じさせます。 重音でもこのような弾き方をするためブレーキがかかってリズムが大きく崩れるのが少し引っかかるのですが, 音符に逆らわず自然な流れの中で行われているので慣れれば心地よさに変わってきます。 音色も美しく技術的にも優れています。

録音:

残響は多めで残響時間も長いのですが,直接音と残響の分離が比較的に良く, 音の曇りも少ないため,印象は悪くありません。 楽器の質感もまずまず感じられます。 しかし,高域成分は豊富なものの,やはり残響の影響はあってスカッと伸びているという感じではないのが少し残念に思います。 オーディオ品質は良好です。

(記2013/12/14)


アッティーリオ・モッツォ(Attilio Motzo)

レーベル Inviolata
収録曲 全集
録音データ2005年8月 カリアリ(イタリア サルデーニャ州),聖マリア・デル・モンテ教会
使用楽器 1775年 エギディウス・クロッツ製(バロック仕様)
所有盤 0701ab (C)2007 Inviolata (輸入盤)

バロック・ヴァイオリンによる演奏。 ですが,あまり楽器の特質を活かした演奏には感じられません。 また,速いパッセージでの安定感に欠けるなど,腕前の方はやや疑問符が付きますが, 精一杯の表現を尽くそうとしている意欲はひしひしと感じられます。 不満も多いですが,まずまず楽しめる演奏ではあります。

録音:

残響は多くありませんが,録音場所の響きの被りで少し癖のある音になってしまっています。 こもった音色になっているわけではありませんし,楽器の質感もそれなりに感じられるのでそれほど悪い印象ではないのですが, どうもすっきりしません。 惜しいと思います。

(記2013/11/23)


ダニエル・ステップナー(Daniel Stepner)

レーベル Centaur
収録曲 全集
録音データ本文参照
使用楽器 本文参照(バロック仕様)
所有盤 CRC 3283/3284 (P)(C)2013 Centaur Records, Inc. (輸入盤)

この録音では三種類の楽器が使われています。
1) Sebastian Kloz, ca. 1740, Mittenwald, Germany (in Sonata I and Partita I)
2) Andrea Amati, 1641, Cremona, Italy (in Sonata II and Partita III)
3) Antonio Stradivari, 1693, Cremona, Italy (in Sonata III* and Partita II) (*)録音テープのダメージのためPrestoのみAmatiで再録音されている

録音は1989年から2012年という長い年月にわたっています。録音場所は次の通りです。
1) the French Gallery of the Museum of Fine Arts (Sonata III and Partita II)
2) Slosberg Auditorium of Brandeis University (Sonata II and Partita III)
3) the Fraser Studio of WGBH, Boston (Sonata I)
4) Studio 941, Newton MA (Partita I)

あともう一つ特徴的なこととして,パルティータ第1番のCorrente, Sarabande, Tempo di Boreaについて, それぞれのDoubleも含め全て二部形式になっていますが,たとえばAABB, Doubleをaabbとすると, CorrenteはAaBb,SarabandeはAABaabAB,Tempo di BoreaはAabBと演奏したりと,普通の順番で演奏されていません。 なぜこのようにまぜこぜで演奏しているのか,理由は記載がなく不明です。

バロック・ヴァイオリンによる演奏ですが,奏法は極めてモダン的で力強く歯切れが良いのが特徴です。 なぜバロック仕様の楽器で弾いているのか,楽器の特性を活かしているとはあまり思えない演奏です。 ただ,そういった点と上述したパルティータ第1番の演奏順を除けば,中庸で無難な演奏と言えると思います。 パルティータ第2番とソナタ第3番は充実感がありますが,それ以外の曲はやや弾き込み不足という印象を受けます。

録音:

1989年から2012年という長い期間の間に録音されているためか,音質にはばらつきがありますし, 楽章毎に少しずつ印象が変わる曲もあります。 残響は少し多めで,総じて間接音が支配的であり,全体にくすんだ感じがします(そういう点においては統一感がある)。

せっかく三種類の名器?が使われているのですから,それらの楽器の音を堪能できるように, もっと直接音主体にクリアに録って欲しかったところです。

Daniel Stepner  The Violins
Daniel Stepner and The Violins.

(記2013/09/11)


バルバラ・リューネブルク(Barbara Lüneburg)

レーベル Coviello
収録曲 パルティータ第2番
録音データ16-19. 6. 2010, Deutschlandfunk Kammermusiksaal, Köln
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 COV61302 (P)(C)2013 Coviello Classics/Deutschlandradio (輸入盤)
備考 併録曲:シェルシ:L'ame d'ailee/l'ame ouverte,Xnoybis

フレーズの終わりやリピートの直前でいちいち呼吸を入れて終止するような感じで演奏されるため, 音楽が沈滞・分断されてしまい,聴き苦しいです(呼吸を合わせることが出来ず,本当に息苦しくなる)。 技術的には上手いと思いますし,表現力もあるとは思うのですが,残念ながらこの演奏は私には合いません。

録音:

残響が多く,また残響時間も長いため,少なからず音色に影響を与えています。 ただ,楽器音自体は比較的近くで直接音比率も比較的高いため, 質感はそれなりに感じられて,残響量の割にはまだ良好な方です。 もちろん私としてはもう少し残響を抑えてすっきりと録音して欲しいと思っています。

(記2013/09/07)


クリス・シーリ(Chris Thile)

レーベル Nonesuch
収録曲 ソナタ第1番,第2番,パルティータ第1番
録音データJanuary 12-17, 2013, at The Barn, Lenox, MA
使用楽器 フラット・マンドリン
所有盤 7559-79586-4 (P)(C)2013 Nonesuch Records Inc. (輸入盤)

ブルーグラスのマンドリン奏者,クリス・シーリによる演奏。 これが本当にポピュラー音楽のプレーヤの演奏なのか? と心底驚きます。 練りに練られた運指やピッキングで,隅々にまで神経が行き届き,一分の隙もなく完璧に弾ききっています。 パルティータ第1番のCorrenteのDouble(Presto)など,もうこれ以上速く弾けないだろうというくらい速いのに, リズムも全く乱れないし完璧に粒も揃っているし,それでいて表情が豊かなのです。 フラット・マンドリンでこんな素晴らしい演奏が聴けるとは! 最高です!

録音:

スタジオでの録音で,残響はありません。楽器音を極めて明瞭に,そして自然に捉えています。 マンドリンの録音でこれ以上を望むのは難しいんじゃないかと思ってしまうほどです。 まあポピュラー音楽の録音ではそれほど特別な録音でもないとは思いますが。

P.S.

クリス・シーリはヨーヨー・マやエドガー・メイヤーと共演するなど,その実力を活かして幅広く活躍していますね。 Vol.2がとても楽しみです。

Chris Thile

(記2013/09/07)


チョン・キョンファ(Kyung-Wha Chung 鄭京和)

レーベル KING INTERNATIONAL
収録曲 パルティータ第2番
録音データ1998年4月28日 サントリーホール (ライヴ録音)
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 KKC-4011/2 (P)2013 (C)1998 King International Inc. (国内盤)
備考 「チョン・キョンファ 衝撃の東京ライヴ第2夜(1998年4月28日)」~当日演奏会に足を運んでいたポリーニも激賞したと言われている衝撃のリサイタルのCD化
収録曲: バッハ:G線上のアリア,ストラヴィンスキー:協奏的二重奏曲, バルトーク:ヴァイオリン・ソナタ第2番,ラヴェル:ツィガーヌ,ラフマニノフ:ヴォカリーズ, クライスラー:美しきロスマリン,クライスラー:中国の太鼓,ドビュッシー:美しい夕暮れ

ライヴなので傷はいろいろとありますが,そんなことは些細なことであって, この神懸かり的な次元の違うこの演奏は彼女だからこそ出来るのでしょう。 やはりこの人の魂そのものが怒濤のごとく楽器から溢れ出ていると思うのです。 長い間,この人は凄いと思いつつも何となく近づき難かったのはこういうところにあったのかもしれません。

録音:

少しオフマイク気味で響きが多めに楽器音に被り,明瞭感と音色を損なっていますが, 演奏会の雰囲気はそれなりによく録れていると思います。 「この演奏会の感動を再び」というのであれば,こういう捉え方もあるかもしれませんが, やはりストレートに,ダイレクトに録ってもっとニュアンスや質感を伝えて欲しいと思います。

P.S.

実は前に一度,この演奏会の海賊盤(?)のレビューをしていました。 そのときはこの演奏の真価がわかっていなかったようです。 (まあ今でも本当にわかっているのかと言われると...)

(記2013/06/15)


ヨハンナ・マルツィ(Johanna Martzy)

レーベル EMI
収録曲 全集
録音データ1954, 55年
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 4 89179 2 (P)(C)1996 EMI Music France (輸入盤)
EMIフランスの廉価版ボックスセット(5枚組,\3000弱),無伴奏チェロ組曲(Janos Starker),その他とのセット。

正統派の真摯な演奏で,優美で上品な印象を受けるその外見とは異なり, ひたすら力強くテンション高く歌い上げています。 1950年代半ばの演奏なので昨今のアプローチとはやっぱり違うのですが, 個性を打ち出すような演奏ではなく,バッハの音楽の普遍性を追求するかのような演奏であるため, 古びた感じは全くなく今でも十分に鑑賞に堪えうる内容を持っていると思います。 いいものは時代を超えて訴えかけてくる力を持っています。

録音:

モノラル録音。 残響はあまりありませんが,帯域が狭く高域に伸びがないため音に伸びがなく生彩が感じられません。 音の捉え方としてはそんなに悪くないため,オーディオクオリティの悪さの割には聴けますが, 1955年ならもう少し良い状態で残っていて欲しかったところです。 残念です。

(記2002/09/13)(追2002/09/26)
(改2011/05/14) ※2回目


チョン・キョンファ(Kyung-Wha Chung 鄭京和)

レーベル LONDON(Decca)
収録曲 パルティータ第2番,ソナタ第3番
録音データALL SAINTS' CHRUCH, Petersham, November 1974
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 POCL-4510 (P)1975 The Decca Record (国内盤)

奔放で感性の赴くまま乱暴に弾ききっているようにも聴こえる演奏ですが... ものすごい集中力,気迫,張りつめた音に託された思いの強さ, もう全く次元が違うというか,「個性」などという言葉が空虚に思えるほど違う世界に到達している気がします。 音楽とは演奏家の魂そのものということが改めて思い知らされます。 この演奏を20歳代で成し遂げたということに本当に驚きます。 この時期に全曲録音されなかったのが本当に残念でなりません。

録音:

やや古くきめの粗さも感じられますが,比較的近い距離で残響も適度に抑えられ, 楽器音がダイレクトに録音された好ましい録音といえます。 バックグラウンドのノイズ(ゴーッという音)が若干気になりますが,鑑賞の妨げになるほどではありません。

(記2013/06/09) ※2回目
(記2002/05/20)


前田朋子(Tomoko Mayeda)

レーベル (a)Gramola, (b)onepoint.fm
収録曲 全集
録音データRecorded (a)November 2010, (b)September 2012, at Studio Glanzing, Vienna
使用楽器 Andread Hellinge, Genova 2009 (モダン仕様)
所有盤 (a)Gramola 98883 (P)(C)2011 Gramola (輸入盤) (写真上)
(b)OP10 (P)(C)2012 onepoint.fm (輸入盤) (写真下)
備考 (a)ソナタ第2番,ソナタ第3番,パルティータ第2番を収録
(b)ソナタ第1番,パルティータ第1番,パルティータ第3番を収録
公式Webサイト公式ブログ

非常にキレの良い,現代的でクールな演奏。 技術的な冴え,正確さ,安定感は特筆できます。 キレの良さに加え伸びと粘りのある弓運びで音のつながりが絶妙, 隅々まで神経が行き届いた細やかな表現も素晴らしいです。

2年後に録音された(b)は,(a)に比べ厳しさが和らぎ,さらに奥行きと深みを感じさせる出来です。 後述する録音の良さもあって,今回,再度全集として仕切り直してくれていたらどんなに良かっただろうと少し残念に思います。

録音:

(a)は残響が多めです。 楽器音がそれなりにしっかりと捉えられているものの,残響が被って鮮明さと音色が損なわれています。 残響がプラスに働かない典型例と言えるかもしれません。

一方(b)は残響が抑えられて直接音が主体で明瞭で鮮度があり,音色も自然,質感もうまく捉えられ,ニュアンスも聴き取れます。 (a)と同じ場所での同じプロデューサー,エンジニアでの録音ですが,こちらの方が断然良くなっています。

(記2013/06/09) (b)を追記して全集扱いに
(記2011/08/10)


戸田弥生(Yayoi Toda)

レーベル 音楽之友社
収録曲 全集
録音データ2001, 2002年録音
使用楽器 1694年製ストラディヴァリ《スギチェリ》(モダン仕様)
所有盤 OCD 0090 (P)(C)2002 音楽之友社 (国内盤)

核心に鋭く迫るかのような極めて真摯で硬派な演奏。 拍の頭で全く「ため」ず,力強く鋭いアクセントで淀みなくグイグイと曲を牽引していく推進力が素晴らしいですし, 熱い演奏ながら一糸乱れず高い精度で構築していく技術力の高さにも感心します。 日本人演奏家のレベルの高さを如実に示す演奏だと思います。

録音:

楽器音を濁すだけの反響音が多く,全く冴えない録音です。 響きが空間イメージの形成に全く寄与せず,単に音色を汚し,明瞭感,質感を失わせているだけです。 狭く無機的な空間に押し込められているような息苦しさを感じます。 さらにキンキンと変に響いて辛いです。 何か勘違いをしているとしか思えません。

P.S.

久しぶりに聴き直して改めてこの演奏の素晴らしさに感動しました。 しかし一方でこの反響音にまみれた録音は本当に残念でなりません。 このディスクはすでに廃盤で手に入れにくい状況のようですが,この録音からすでに10年以上経っていますので, 再録音を期待したいところです(もちろん好録音で!)。

(記2013/06/02) ※2回目
(記2002/05/23)


キム・ヒョンギ(Hyungi Kim)

レーベル Universal Music Group International
収録曲 全集
録音データKorea 2012
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 DU42045 (P)(C)2012 innoCSR (輸入盤)

ゆっくりと丁寧に曲を仕上げています。 音色に透明感がありとても美しく,一つ一つの音をくっきりとさせつつ綺麗にニュアンス豊かにフレーズを構成していきます。 柔らかく優しい雰囲気が魅力的だと思います。 唯一の欠点は,二部形式の楽章で後半のリピートを省略していることで,これは本当に残念でなりません。

録音:

残響が多く(残響時間も長い)取り込まれていますが,直接音が主体であるためにそれほど悪影響を受けず, 楽器の質感も感じ取れますし,音が消えていくときの微妙な弓の動きも感じられます。 私としては残響のまとわりつきがやや鬱陶しく感じられますが, 残響を取り入れるならこんな風にしてくれればまだ許容できると思います。 一般的には良好な録音として広く受け入れられるのではないかと思います。

(記2013/05/19)


ソニグ・チャケリアン(Sonig Tchakerian)

レーベル DECCA
収録曲 全集
録音データSanta Croce degli Armeni, Venezia, July 2012
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 481 0087 (P)(C)2013 Universal Music Italia srl (輸入盤)

男性的といいますか,硬派なイメージの演奏で,強靱で力強く音楽を推進する攻め姿勢(ちょっと強引か)が印象に残ります。 全体に速く曲運びに淀みがないのも良いです。 音色はザラザラしていて美しくないのが少し残念です(録音のせいかもしれませんが)。 技術力はあり,和音の響きの溶け合い方も絶妙(ただし音色で損してると思います)。

録音:

残響が多く直接音よりも間接音が主体で楽器音に大きく被り,明瞭感が悪く,音色も曇って全く良くありません。 こういう演奏だからこそ直接音主体にビシッと録ってほしいものです。 全くDECCAらしくありません。 残念です。

(記2013/05/19)


ゴットフリート・シュナイダー(Gottfried Schneider)

レーベル OEHMS Classics
収録曲 全集
録音データ2011年8月 ミュンヘン 音楽演劇学校大ホール
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 OC 868 (P)2011 (C)2012 Oehms Classics (輸入盤)

ベテランらしい味わい深さがあります。 技術面ではややキレが良くなく(衰えてきている?), 音符の不均一さなど気になるところはありますが, 長年弾き込んで会得されたのでしょう, 温かさというか,真摯でありながら人間味に溢れる魅力があります。

録音:

残響が多く中音域が盛り上がったような癖のある音色になってしまっているものの, マイク位置が比較的近いのか,ニュアンスや質感はそれなりに感じられて, この点では悪くありません。 もう少しすっきりと録って欲しかったところです。

(記2013/05/12)


マイケル・アントネッロ(Michael Antonello)

レーベル MJA Productions
収録曲 全集
録音データJuly 2011 to June 2012, St. Paul's Church in Chicago; The Hemingway Museum in Ork Park Heights, Chicago; Unitarian Church of Mahtomedi, MN.
使用楽器 Guarneri del Gesu? (モダン仕様)
所有盤 品番なし (C)2012 MJA Productions (輸入盤)
備考 CD Baby

お世辞にも上手いとは言い難いです。 破綻するところまではいっていませんが,ぎりぎりのところで踏みとどまっている感じで, 音楽を思うようにコントロールする余裕が全く感じられず,スムーズに流れていきません。 残念ながら技術的に大いに不満の残る演奏です。 気持ちは良く伝わってくるのですが...

録音:

残響が少し多めに取り入れられています。 残響過多まではいきませんが,マイクポイントが少し遠いのか,明瞭感に乏しく質感も感じ取りにくいです。 録音レベルも少し低めです。 そんなに悪くはないと思うのですが,もどかしさを感じてしまいます。

(記2013/03/20)


キム・スーヤン(Suyoen Kim 김수연)

レーベル Deutsche Grammophon
収録曲 全集
録音データEvangelische Kirche Honrath, Gerrmany, 2-5 June 2010 & 23-26 March 2011
使用楽器 Stradivarius? (モダン仕様)
所有盤 DG7742 (P)(C)2011 UNIVERSAL MUSIC KOREA (輸入盤)
備考 Universal Music Store (KOREA)購入先:ソウルライフレコード(楽天)

モダン楽器による演奏としてはオーソドックスのように思います。 技術的にも安定感が抜群で,隅々まで神経が行き届き,表情付けも細やかで豊かです。 突出したところはないかもしれませんが,真摯で正統的な優れた演奏として好感が持てます。

録音:

残響がかなり多く,まとわりつきが鬱陶しく感じられます。 明瞭感・音色が損なわれ,細部のニュアンス,質感が感じ取りにくいです。 まあもやもやしたりモゴモゴしたりまではいっていないので,客観的にはそんなに悪くはないかもしれませんが, 演奏が良いだけに,私としてはこの残響過多の録音は残念でなりません。

(記2013/03/17)


マキシム・ヴェンゲーロフ(Maxim Vengerov)

レーベル WIGMORE HALL
収録曲 パルティータ第2番
録音データRecorded live at Wigmore Hall, London, on 5 April 2012
使用楽器 ex-Kreutzer Stradivari (1727) (モダン仕様)
所有盤 WHLive0056 (P)(C)2013 The Wigmore Hall Trust (輸入盤)

この人にしては少し控えめというか慎重というか,部分的には熱気がこもることもありますが,かなり抑えた演奏に聴こえます。 しかし,この曲の精神性を追求するかのような演奏かというとちょっと違うように思います。 こういう演奏でありながらじんわりと情感に訴えかけてくる,この力量はさすがだと思います。 こういうふうにバッハを弾く人が最近少なくなったと思うのは私だけでしょうか。

一方で,カップリングのベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」は, 人が変わったように覇気に満ちた吹っ切れた快演です。 私としてはバッハをこういう風に挑戦的に演奏して欲しかったと少し残念に思っています。

録音:

残響はあまり取り入れられておらず,楽器音が主体なのですが,少し距離感があるためか, 明瞭感,質感,鮮度に欠けるきらいがあります。 もう一歩寄って録って欲しかったところです。 惜しいです。

(記2013/03/16)


クリスティーネ・ブッシュ(Christine Busch)

レーベル PHI
収録曲 全集
録音データRecorded 18-21 December 2011; 8-10 February 2012, Neumarkt in der Oberpfalz, Reitstadel
使用楽器 18世紀南ドイツまたはチロル製 (バロック仕様)
所有盤 LPH 008 (P)(C)2012 Outhere (輸入盤)

バロック・ヴァイオリンによる演奏。 アクセントを抑えた吸い付くような弓使いでひたすら丁寧に綿々と音楽を紡ぎ出していきます。 ガット弦特有のわずかに雑味を含む硬い音色ながら,弾きはじめのあのガリッという音が全くしません。 このような弾き方でありながら過剰なアーティキュレーションの強調もなく極めて素直で自然な表現に好感を持ちます。 技術的にも音楽的にも優れていると思います。

録音:

録音会場の雰囲気をわずかに感じさせる響きのまとわりつき,音色への影響が気になるものの, 響きも比較的すっと消え,楽器音を曇らせることもないため許容範囲というところです。 楽器の質感,音の消え際のニュアンスも聴き取れるので,響きがある割にはまずまず良好と言えるのではないでしょうか。 もちろん私としてはもっと楽器音が響きの影響を受けないように透明感ある音で録って欲しいとは思いますが。

(記2013/03/09)


ルーシー・ファン・ダール(Lucy van Dael)

レーベル Naxos
収録曲 全集
録音データRecorded in Maia Minor Church, Utrecht, the Netherlands, 2, 9, and 16 April, 1996.
使用楽器 記載なし (バロック仕様) A=415Hz
所有盤 (Vol.1)8.554422 (Vol.2)8.554423 (P)(C)1999 HNH International Ltd. (輸入盤)

曲によっては大胆にリズムを崩す,いわゆる草書体(行書体?)風の演奏で,装飾などの奏法を含め, これぞバロックヴァイオリンという演奏です。 全体に速めのテンポで軽いタッチで音楽が流れていくのが気持ちの良い佳演です。 バロックヴァイオリンでありがちなジャリジャリした感じがなく,透明感のある音色が美しく, ピリオド楽器が苦手な私でも楽しめます。

録音:

鼻息がはっきりと聴き取れるような比較的近い距離感で捉えられていますが, 近すぎる感じはありません。 残響はそれほど多くはありませんが,少し音色を曇らせているのが惜しいです。 それでもまずまず楽器の質感は保たれ,ニュアンスも聴き取れるためまあ良しとします。 そんなに気になるものではありませんが,録音場所の遮音が今ひとつなのか,バックグラウンドノイズが若干大きめに入っています。

(記2013/01/19) ※2回目
(記2002/05/13)


ルドルフ・ゲーラー(Rudolf Gähler)

レーベル ARTE NOVA
収録曲 全集
録音データLive Recording: July 1998, Tiroler Festspiele Erl, Austria.
使用楽器 記載なし (モダン仕様) Curved Bow(バッハ弓)使用
所有盤 74321 67501 2 (C)1999 (P)1998 ARTE NOVA Musikproduktions GmbH (輸入盤)

Curved Bow(バッハ弓)による演奏。 弓は普通,スクリューを回して張力を調整しますが,この弓にはスクリューがなくレバーで張力が調整できるようになっていて, 3弦,4弦を同時に弾く場合はこのレバーを調整して張力を弱めて同時に3本以上の弦に当たるようにするようです。 この仕組みで4本同時に発音出来るため, 通常の弓での演奏のように分割して演奏せずとも和音が出せるところが最大の特徴です。

バッハ弓と呼ばれることもありますが,Wikipediaによると, これはノーベル平和賞受賞者にして音楽家でもあるアルベルト・シュバイツァーによって「発明」されたものであり, バッハの時代に使われた事実はないようです。

この弓で弾くと和音がオルガンのように聴こえることもあり,これはこれで面白いと思います。 基本的にはすべての音が均等に鳴るため,これが良い効果になるときもあれば,補助の声部が鳴りすぎて旋律が弱くなったりすることもあって, 一長一短という感じがします。 まあ,この弓での演奏が聴けるということ自体がこの演奏の価値だということで。

ただし,普通の弓を使うのと異なり,和音が連続すると運指が難しいのか音楽のつながりが悪くなったり, 演奏そのものが沈滞してしまうこともあり,これは少し残念なところです。

録音:

残響が多く直接音よりも間接音が支配的のため,音がくすみヌケが悪くなってしまっています。 この弓がもたらす響きを楽しむディスクなのに,それを残響で邪魔していったいどういうつもりなんだ?と思います。 もったいない...

Gä playing with curved bow

(記2013/01/11) ※2回目
(記2002/05/05)


ヤッシャ・ハイフェッツ(Jascha Heifetz)

レーベル RCA
収録曲 全集
録音データ1952年10月
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 GD 87708(2) (C)1988 BMG Music (輸入盤)

うまく言葉で表現できないのですが,才能頼みというか,感性の赴くままに即興的に弾いているような演奏で, 少なくとも突き詰めた,練り上げた感じは全くありません。 どれだけ練習を積み重ねたんだろうか? 譜読みしてそのままレコーディングに臨んだんじゃないだろうかと思ってしまいます。 細部にこだわらず,思いついたようにポルタメントやフラジオレットを入れてきます。

しかし,これがまた味があるのです。 勢い任せに弾き飛ばす,強いアクセントで極めてキレよくダイナミックに,そして全く淀みなく音楽が突き進んでいきます。 これこそ彼の個性そのもの。 この時代の巨匠を象徴するような演奏と言えるのではないでしょうか。

録音:

1952年のモノラル録音でいかにも古い音質です。 しかし,残響のほとんどない環境で,適切な距離感でヴァイオリンの音を捉えており, ストレートに演奏を伝えてくれるという点では好きな録音と言えます。 1950年代前半という古い録音としては良好な部類に入るのではないでしょうか。

P.S.

その昔(シェリングとクレーメルのLPしか持っていなかった頃),とあるCDショップのおやじさんに薦められて買ったCDです。 当時,ちょっと聴いて「なんだこのひどい演奏は! だまされた!」と長い間放置していました。 今改めて聴いてみて,おやじさんがなぜこれを薦めてくれたのか,わかる気がしてきました。 私もこういう演奏が素直に楽しめるようになってきたんだなぁと。 歳のせいでしょうか(^^;

(記2012/12/28) ※2回目
(記2002/05/28)


加藤知子(Tomoko Kato)

レーベル DENON
収録曲 全集
録音データ1999年5月12-15日,2000年1月13-16日 牧丘町民文化ホール
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 COCQ-83389/90 (P)2000 Nippon Columbia Co., Ltd. (国内盤)

ゆっくりしたテンポで楽譜を丹念に追っていくという感じです。 日本人の生真面目さ,謙虚さ,真摯さが見事に結実した極めて日本人的な演奏だと思います。 外国人の演奏ではきっとこんな演奏聴けません。 そしてジャパン・クオリティとも言えるこの完成度の高さ! 日本が世界に誇る高品質演奏と言えるのではないでしょうか。 これをどう聴くかは人によると思いますが,私は素晴らしいと思います。

録音:

残響が多めで楽器音へのまとわりつきがかなり鬱陶しいのですが,楽器音自体は比較的近いマイクポイントで捉えているのか, 明瞭感と音の伸びはそれなりに確保されていますので,残響量の割には十分に我慢できる音質です。 残響が許せる方なら問題ないでしょう。 もちろん残響をもっと抑えて音色への影響を避け,すっきりと明瞭感・解像感・透明感を前面に出して欲しかったとは思いますが。

(記2012/12/14) ※2回目
(記2002/05/21)


カール・ズスケ(Karl Suske)

レーベル Deutsche SchallPlatten
収録曲 全集
録音データBWV1001,1002(1983年), BWV1003,1004(1985年), BWV1005(1988年), BWV1006(1987年),ドレスデン・ルカ協会
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 TKCC-15191 (P)2000 TOKUMA JAPAN COMMUNICATIONS CO., LTD. (国内盤)

自己主張を抑えて曲の本質的な素晴らしさだけをすくい取ろうとしているかのような謙虚な姿勢が, かえってこの演奏を大きく特徴づけているように思います。 音色の美しさ,温かさ,そしてこの滋味深さ,本当に素晴らしいです。 こんな幸福感に満ちた演奏は他にないと思います。

技術的な弱さを指摘する声もありますが,まあわからないでもないですが, そういう指向の演奏ではありませんし,安定感は抜群であり,全く問題ありません。

録音:

数年にわたり録音されていますが,多少のばらつきはあるものの,全体的な統一感はあり気になりません。 ドレスデン・ルカ教会の残響が豊かに取り入れられていますが,マイク位置は演奏者の近くなのか, 主体はあくまで楽器音なので,残響が多い割には音色への影響は少なく質感もそれほど失われていません。 音の曇りも少なく,印象は悪くありません。 こういう残響の取り入れ方ならまだ許せます。 もちろん,もう少し残響を控えめにしてまとわりつきをを抑えて欲しかったとは思いますが。

(記2012/12/02) ※2回目
(記2002/05/19)


ジャン=ジャック・カントロフ(Jean-Jacques Kantorow)

レーベル DENON
収録曲 全集
録音データ1979年11月 荒川区民会館
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 COCQ-83410/11 (P)1990 NIPPON COLUMBIA CO., LTD (国内盤)

とても感情表現が豊かです。 穏やかに表情をつけていく曲もあれば,は突如として感情の高ぶりを見せる熱い曲もあります。 フーガやシャコンヌでは重音を分けず一気に弾ききり,緊張感を持続させながら怒濤のごとく突き進みます。 緊張感の高い感情移入の激しい曲と穏やかな曲が入り交じり, 「この曲はこういう表現であろう」と思って聴くと全然違って肩すかしを食らうこともあり, 掴みどころがなく戸惑うところもあります。 技術力の高さと感情表現の上手さはさすがです。

録音:

少し距離感があって楽器音が残響に埋もれ,明瞭感,解像感が落ちていて,今ひとつ冴えません。 録音レベルが若干低めなのも残念なところです。

(記2012/11/24) ※2回目
(記2002/05/20)


クリストフ・バラティ(Kristof Barati)

レーベル Saphir
収録曲 全集
録音データConcert enregistre en public le 18 juin 2002 a Pleyel.
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 LVC 1030 Saphir Productions (輸入盤)

これは本当にライヴなのだろうか,というくらい充実感のある演奏です。 非常に高い集中度で曲に真正面から取り組んでいるのがひしひしと伝わってきます。 切れ味が鋭く鋭角的であり,張りの強い音色が印象に残る力演です。 表現は奇をてらうことのないオーソドックスなもので,緩急強弱も控えめですがツボを突いていますし, テンポも中庸ですがきびきびとしており,聴いていて気持ちよいです。 強いて言えば,若さ故の謙虚さからか,一つ一つの音を丁寧すぎて推進力が削がれているところもあり, もうひと味欲しいなという感じはありますが,これは酷な要求というものでしょう。 技術力,安定感も秀でていますが,ソナタ第三番,パルティータ第三番では,あれっと思うミスも見られました。 一日で全曲をこなした疲れでしょうか,ちょっと残念に思います。

録音:

ライヴ録音。 私の大好きな録音の典型です。 残響感が全くなく,極めて鮮明に,生々しく,ライヴらしい実在感をもって捉えられています。 音色も自然であり,演奏の全てが本当にストレートに,子細に伝わってきます。 楽器の質感もよく捉えられています。 わずかに反射音による濁りが感じられるものの,この程度であれば全く問題ありません。 ライヴとしてはこれ以上は望めないでしょう。最高です。 このような録音ではオーディオ的クオリティが悪い場合も多いのですが,この録音はこの点でもまずまず合格です。

P.S.

公式Webサイトがあります。 バラティ氏は,1979年生まれ,ハンガリー,ブダペスト出身。 1997年のエリザエート国際コンクールで3位入賞など,なかなかの実力者です。

2009年に2回目の録音をしています。

(記2012/11/22) ※2回目
(記2003/06/11)


アーロン・ローザンド(Aaron Rosand)

レーベル VOX
収録曲 全集
録音データ Recorded in May and August, 1997
使用楽器 “Kochanski” del Gesu 1741 (モダン仕様)
所有盤 VXP2 7901 (P)(C)1998 The Vox Music Group (輸入盤)

ヴィルトゥオーソの面目躍如たる堂々とした演奏。 太くて押しが強く,そして温かさがあります。 アクセントを効かせた独特の歯切れ良さも気持ちがよいです。 なにより音楽が活き活きしているのが素晴らしいです。 短調の曲でさえどこか明るく微笑ましいです。

録音:

若干音色に癖を感じますが,残響はほとんどなく,極めて明瞭に質感高く捉えています(ちょっと濃すぎるくらい)。 オーディオ品質的には少し粗く劣る感じはありますが,十分許容範囲です。

P.S.

ローザンド氏は1927年生まれなので,70歳での録音ということになります。 この歳でこの出来は大変素晴らしいと思います。 10年前の1回目のレビューの時には,演奏も録音もあまり高く評価していませんでしたが, 今改めて聴いてみて,演奏も録音もこれはすごく良いじゃないですか,と大幅に見直しました。

(記2012/11/03) ※2回目 加筆
(記2002/06/17)(追2002/10/04)


トーマス・ツェートマイヤー(Thomas Zehetmair)

レーベル TELDEC
収録曲 全集
録音データ Haarlem 1982
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 3984-21035-2 (P)1983 (C)1998 Teldec Classics International GmbH (輸入盤)

私の持っている同曲の演奏の中でも最も変態的...いや失礼...最も個性的な演奏の一つと言って良いと思います。 「うげっっ...なんじゃこりゃ...なんかすげぇあぶねぇ奴!」っていう感じです(^^;。 この激しさ,唐突さ,本当に好き勝手してます。 好き嫌いがはっきり出そうな演奏ですね。 でも何度も聴いているとこれがまた快感に変わってくるんですよ,ほんとに。

でも決してバッハを軽んじているわけではなく,強い意志をもって臨んでいるというのも伝わってきます。 技術的にも冴え渡っています。 上手いからこそこういう演奏も許せるというものです(これでヘタだったらとても聴いていられない)。

録音:

わずかに残響のまとわりつきはありますが,直接音が主体で極めて明瞭かつ解像感が高く, 高域の伸び,ヌケの良さも申し分ありません(少しきついくらいです)。 距離感も適切ですが,もう一歩寄って質感を強めに出してもよかった気はします。 やや立体感には欠け,こぢんまりしている感はありますが,それでもこれはかなり良い録音と言えると思います。

(記2012/11/03) ※2回目 加筆
(記2002/05/16)


モニカ・ハジェット(Monica Huggett)

レーベル Virgin
収録曲 全集
録音データ The Warehouse, Theed Street, London, September-December 1995, except Partita No.1: St Paul's Church, Harefield, Middlesex.
使用楽器 (Violin)Violin by Antonius and Hieronymous Amati, 1618, prepared and maintained by Bridgewood & Nietzert. (Bow)Early 18th-century model by Luis Emilio Rodriguez Carrington. (バロック仕様)
所有盤 ZDCB 54205 (P)(C)1997 Virgin Classics Ltd. (輸入盤)

大きく波打つようなテンポの緩急があり,また,三音以上の重音では大きくテンポの落ち込みがあります。 音楽的に緩急を付けているというより,奏法の都合上で緩急が付いてしまっているように聴こえてしまいます。 聴いていて疲れますし,胸が苦しくなってくるところもあります(生理的に受け付けられない)。 残念ながらちょっと馴染めませんでした。 技術的にはかなり上手いですし,上記以外は不満に思うことのない素晴らしい演奏だと思っています。

録音:

残響を抑えてすっきりと適切な距離感で捉えています。 残響は皆無ではありませんが,ほとんど楽器音に影響を与えていません。 明瞭感が高く,高域の伸び感,音色の自然さ,いずれも申し分ありません。 もう少し質感を強めに出しても良いのではないかとは思いますが, それでも私としてはほぼ理想的な録音と言えます。 パルティータ第1番は少し残響が多めですが,十分許容範囲です。

(記2012/10/21) ※2回目 加筆
(記2002/05/13)(修正2002/10/21)


スザンナ・ヨーコ・ヘンケル(Susanna Yoko Henkel)

レーベル The Spot Records
収録曲 パルティータ第3番
録音データ September 19-23, 2000 at the church in Berge, Germany
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 288698 (C)2000 (P)2012 The Spot Records (輸入盤)
備考 カップリング曲: イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番,バルトーク:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ,ユン・イサン:ヴァイオリン独奏のための「王の主題」

ヴィブラートを強めにかけ,速めのテンポで躍動的に音楽が進行していくのが気持ちの良い演奏です。 モダン楽器らしい洗練された美しさがあります。 技術的にもキレがあります。 上手いです。

録音:

教会での録音でやや残響のまとわりつきが気になります。 マイク位置は比較的近いので楽器の質感はそこそこ感じられますが, 残響のために明瞭感が落ち,音色もすっきりしないのが残念です。

P.S.

この4年後の2004年に全集を録音しています。

(記2012/10/14)


イザベル・ファウスト(Isabelle Faust)

レーベル harmonia mundi
収録曲 全集
録音データ (1) 2011年9月 ベルリン,テルデックス・スタジオ(BWV1001-1003)
(2) 2009年9月1-4日 ベルリン,テルデックス・スタジオ(BWV1004-1006)
使用楽器 'Sleeping Beauty' Stradivarius of 1704 (モダン仕様)
所有盤 (1) HMC 902124 (C)2012 harmonia mundi (輸入盤)
(2) HMC 902059 (C)2010 harmonia mundi (輸入盤)

モダン楽器のピリオド奏法による演奏。 第1弾として(2)BWV1004-1006が2009年に録音され,その2年後の2011年に残りの(1)BWV1001-1003が録音されました。 これで全集として完結したことになります。 (2)は2010年4月に一度レビューしています。 その時の感想は「突出した特徴はないが,音色の美しさ,キレの良さ,推進感,どれもが高いレベルで均整の取れた素晴らしい演奏」であり, 「音楽そのものの魅力で聴き手を惹きつける本物」と評しました(※1)。 今改めて聴いてみて,その感想は変わりません。

2年後の(1)ですが,より積極的にピリオド奏法が取り入れられているように思います。 音価を短く切り上げ起伏を伴いながらも前に前にひたすら疾走する,実に胸のすく演奏として素晴らしい仕上がりを見せています。 そして,ピリオド奏法と言いつつも,ピリオド奏法の呪縛を完全に打ち破り,モダン楽器による新しい一つのアプローチを確立しつつあると感じます。 これを聴いてから(2)を聴くと,まだまだ吹っ切れていないように思います。 この2年間の進歩は非常に大きいと思います。 (1)を聴くにつけ,今のタイミングで全曲を一気に録音して欲しかったという思いが強くこみ上げてきます。 それほどまでに(1)は素晴らしい演奏だと思います。

録音:

先に録音された(2)はやや残響が多めで,私の好みとは少し異なりますが,楽器音をしっかり捉え,ニュアンスも十分に伝わってくるため印象は悪くありません。 あとに録音された(1)の方が残響が控えめでよりクリアに聴こえ,さらに録音状態が良いと言えます。 ただ,少しこぢんまりとまとまりすぎているようにも思います。 もう一歩寄って質感を強めに出してくれれば申し分ないのですが。

P.S.

※1 (2)の一回目のレビュー内容は好録音探求2010年4月29日のエントリーで残っています。

(記2012/09/26) ※(2)発売による全集完成で再レビュー
(記2010/04/29)


セシリア・アルゼウスキ(Cecylia Arzewski)

レーベル Bridge Records
収録曲 全集
録音データ Recorded March 10 & 11, May 27 & 28, 2011 at the American Academy of Arts and Letters, New York City
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 BRIDGE 9358A/B (P)(C)2012 Bridge Records, Inc. (輸入盤)

モダン楽器による演奏としてはピリオド奏法によらないオーソドックスな部類に入ります。 ヴィブラートをしっかりとかけ,緩急強弱を大きめにとって躍動感と情緒感をうまく出しています。 技術的にもキレが良く安定感もあります。 個性的な演奏ではありませんが,旧来のスタイルに慣れ親しんできた耳にはすんなりと受け入れられる好演奏と言えると思います。

録音:

背景にふわっと広がる残響のまとわりつきが少し気になるものの,直接音が主体であり,印象は悪くありません。 音色は残響の影響を受けてしまっているのが残念ですが,明瞭感や解像感はまずまず良好です。 低域にやや大きめの環境ノイズが入っているので,低域の伸びている再生装置で聴くとやや気になります。

(記2012/09/23)


ペク・ジュヤン(Ju-Young Beak)

レーベル EXTON
収録曲 パルティータ第2番
録音データ 2010年3月15-18日 富山・北アルプス文化センター
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 OVCL-00429 (P)(C)2012 Octavia Records Inc. (国内盤)
備考 カップリング曲: ユン・イサン:庭園のリーナ,シュニトケ:ア・パガニーニ,バルトーク:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ

謙虚で控えめであり,欠点のほとんどない教科書的に整った演奏です。 面白味に欠けると思う方も思うかもしれませんが,私はこれはこれで良い演奏だと思います。 確かに今後の成長に期待!というところはありますが。

録音:

残響が少しありますが,楽器音とは比較的分離して聴こえるため,影響は少なめです。 このため明瞭感も高く,音色も自然でまずまず良好というところです。 私としてはもう一歩寄ってさらに質感を高めに捉えて欲しかったという気はしますが。

(記2012/09/16)


渡辺玲子(Reiko Watanabe)

レーベル fontec
収録曲 パルティータ第3番
録音データ 13-15 Sep. 2010, 3 & 4 Feb. 2011, Karuizawa Ohga Hall
使用楽器 日本音楽財団所有グァルネリ・デル・ジェス1736年製「ムンツ」 (モダン仕様)
所有盤 FOCD9552 (P)(C)2012 FONTEC Inc. (国内盤)
備考 カップリング曲: イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第6番,ヒンデミット:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番,佐藤眞:無伴奏ヴァイオリンのための幻想曲,エルンスト:シューベルトの「魔王」による大奇想曲,エルンスト:多声的練習曲第6番「夏の名残りのバラ」

きびきびした小気味良い演奏で,機知に富む表現が随所で見られます。 これぞベテランの味というか,揺るぎのない自信と個性に溢れながらも,それが押しつけがましくなることなく, 曲の良さ,楽しさをより高める方向に働く,素晴らしい演奏だと思います。 技術的にもキレがあり,和音の響きの美しさなどは特筆に値すると思います。

録音:

若干残響が多めですが,あくまで楽器音主体で捉えられているため,明瞭感,解像感もまずまずあり印象は悪くありません。 高域の伸びもあります。 しかし,やはり残響のまとわりつきによる音色への影響は避けられず, もう一段直接音比率を高くしてピュアに捉えて欲しかったところです。

P.S.

渡辺玲子さんは,2001年頃にもバッハ無伴奏ヴァイオリンのディスクをリリースされています(→こちら)が, そろそろ新たに全曲録音されても良いのではと思います。 この演奏を聴くと,渡辺さんの今のバッハ無伴奏ヴァイオリンをぜひ残して欲しいという気持ちが強くなります。

(記2012/09/16)


ヨハンナ・マルツィ(Johanna Martzy)

レーベル Coup d'Archet
収録曲 ソナタ第1番,パルティータ第3番
録音データ ソナタ第1番:Recorded May 4th 1962. A recording of DeutschlandRadio / RIAS Berlin. Reproduced with the permission of the Hauptabteilung Musik, Funkhaus Berlin. パルティータ第3番:Recorded June 20th 1955. Reproduced with the permission of Bayerischen Rundfunk.
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 Coup d'Archet COUP CD007 (輸入盤)

ソナタ第一番は,無伴奏ヴァイオリン演奏の王道を極めた名演と言えるのではないでしょうか。 表現そのものはオーソドックスですが,極めて高い集中力によって凝縮された力強さを感じます。 シェリングやミルシテインとは次元の異なる品格を備え,なおかつ人間的な暖かさを失っていないところが素晴らしいです。 (残念ながらこの演奏に対して私の表現力がついていけません...)

パルティータ第三番もソナタ第一番と同様力強さと品格を感じさせながら躍動感も失っていない好演奏ではありますが... 残念ながら後述の通り録音が悪く,細かいニュアンスが聞き取りづらいため,演奏の特徴を感じ取りにくいです。

録音:

モノラル録音。 ソナタ第一番とパルティータ第三番では録音(音の捉え方)にかなりの差があります。 掲載しているのはソナタ第一番のポイントであり,パルティータ第三番は残念ながら です。

ソナタ第一番は1962年の録音で,スタジオで収録したものと思われます。 残響感はあまりなく,演奏を生々しく捉えた好録音ですが,古さを感じさせる音質であり,高域の伸び感も少々足りません。 ただ,機材によってかなり印象が異なることがわかってきました。 例えば帯域バランスが良く自然な音がするヘッドホンよりも,インナーホンのようにバランスが良くないものの方が良く聴こえる場合があります。

パルティータ第三番は1955年の録音ですが,百貨店の階段の踊り場で一階上で演奏されているのを聴いているような感じです。 とにかく響きが多く,音色がまともではありません。 細かいニュアンスなども聞き取りがたいほどです。 残念ながら私の好み尺度では最悪の部類に入る悪録音です。

P.S. (2002/11/25)

ソナタ第一番の録音の過大評価を是正しました。 演奏があまりに素晴らしく,感情移入してしまい,評価を誤ってしまったようです(その時は十分聴き込んで評価したつもりだったのですが)。 しかし,基本的な音の捉え方は好ましく,録音の大切さを認識させてくれたことには変わりありません。 前回の評価時に記載した録音に関する主張は,別途考えをまとめ,いずれ再掲載したいと思っています。

P.S. (2012/09/11)

マルツィのCoup d' archet(クー・ダルシェ)から発売されていた音源がまとめて復刻されるようです(→「好録音探求」参照)。 これはうれしい復刻です。ということで,久しぶりに聴いてみました。 上記はほぼ10年前のレビューですが,演奏に関しては全く印象は変わりません。 このソナタ第1番は本当に素晴らしい。 録音に関して言うと,以前聴いたときはかなり良かったという印象だったのですが,改めて今聴いてみると, 高域の伸びが足りず,ヌケが悪くてもう少し印象が落ちます。 少し付帯音があるものの,基本的な音の捉え方はそれほど悪くないと思うのですが, 単純に録音機材が良くなく,帯域が足りない,というふうに感じます。 これでパルティータ第3番のように音の捉え方が悪いと聴くに堪えなかったと思います。 音の捉え方が良かったのがせめてもの救いです。

(記2002/11/05)(改2002/11/25)(追記2012/09/11)


奥村智洋(Tomohiro Okumura)

レーベル Aurora Classical
収録曲 全集
録音データ Recorded on September 27, 28 & 29, 2011 at Chichibu Muse Park, Saitama, Japan
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 AUCD-40003-4 (P)(C)2012 有限会社アウローラ・クラシカル (国内盤)

昨今のピリオド・アプローチとは無縁,伝統的スタイルによる正統派(?)の剛健なバッハ演奏。 小細工なしで真正面からぶつかっています。 ひたむきさが心に響きます。 旧世代的ながら,それが成功していると思います。

録音:

楽器音をしっかりと捉えているので印象はそれほど悪くありませんが, 残響が多めでそれほど質も良くなく音楽的にほとんど貢献していないと思います。 音色が劣化するという悪影響の方が多いです。 もっとすっきりとヌケ良く,鮮度高く録ってほしいものです。 惜しいと思います。

(記2012/09/04)


ブロニスラフ・ギンペル(Bronislav Gimpel)

レーベル Cambria
収録曲 全集
録音データ 記載なし
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 品番なし (P)2011 Cambria
備考 Amazon.co.jpダウンロード販売(Vol.1Vol.2

折り目正しく見得を切る演奏が,往年の巨匠風で時代を感じさせます。 伝統的なスタイルによる品格を備えた立派な演奏だと思います。

録音:

録音年代がよくわかりませんが,1950年代から60年代にかけての録音だと思います。 オーディオ的には帯域も十分ではなく痩せた音であまり良いとは言えません。 残響は多くはありませんが,ややオフマイク気味で鮮明さが今一歩足らないように思います。

P.S.

Amazon.co.jpのMP3ダウンロード販売で入手しました。 パルティータ第一番でなぜかブツブツというノイズが混じりますが,元の音源から入っているものかもしれません。

(記2012/07/21)


和波孝禧(Wanami Takayoshi)

レーベル LiveNotes
収録曲 全集
録音データ 2001年4月13-14日,6月15-16日 三重県総合文化センター大ホール
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 WWCC-7689~90 (P)2011 Nami Records (国内盤)
備考 参考url: 公式Webサイト

演奏は厳しいのですが音楽は温かさに満ちています。 あまり技術的にキレが良くないところがときどき気にはなりますが, この人柄がにじみ出たようなヒューマンな音楽に思わず聴き入ってしまいます。

和波さんは2000年から2006年頃までバロックヴァイオリンとバロック弓でバッハに取り組んでおられたということですが, 再びモダン楽器に戻り,バロックヴァイオリンでの経験を活かしてこのバッハ演奏を組み立てられたとのことです。 私にはどのようにそれがこの演奏に反映されているのかはよくわかりませんでしたが, 何度も聴いているとそういったことを超えた音楽の力を感じるようになってきました。

この演奏を聴いていると,「音楽とどう向き合っているか?」と問われている気分になります。 レコード芸術誌2012年2月号のこのディスクの記事でシゲティの演奏との共通点について触れられていましたが, 私は上記のような意味でシゲティの演奏を思い浮かべていました。 この演奏をどう思うかは聴き手の姿勢次第という気がします。

録音:

ホールの響きが少し多めに取り入れられていますが, 楽器音が分離良く明瞭に録られていて細かいニュアンスまで聴き取ることが出来ます。 音色も自然です。 残響が取り入れられていてもこれならまあ納得できます。

(記2012/02/12)


ジョセフ・リン(Joseph Lin 林 以信)

レーベル fine NF
収録曲 全曲
録音データ (a) 2005年1月25-28日 魚沼市小出郷文化会館(新潟県)
(b) 2008年2月8-10日 すみだトリフォニーホール(東京)
(c) 2009年6月1-3日 所沢市民文化センター ミューズアークホール(埼玉)
使用楽器 記載なし
所有盤 (a) NF63001 (P)(C)2005 ソナタ第2番,パルティータ第2番
(b) NF53002 (P)(C)2007 パルティータ第1番,パルティータ第3番
(c) NF23003 (P)(C)2011 ソナタ第1番,ソナタ第3番
N&F Co., Ltd. Tokyo (国内盤)

深い色合い持たせながら決して嫌みにならないヴィブラートや, 連綿と美しい音を紡ぎ出していく吸い付くようなボウイングなど, その技術力の高さには感嘆します。 情に訴えるようにひたすら熱く高揚しながらも,一方で,流されることなく着実に音楽を組み上げていくしたたかさも感じます。 表現自体はどちらかといえばモダン楽器によるオーソドックスな路線上にありますが, 数多の演奏に埋もれない,光るものがあります。 モダン楽器の表現力の素晴らしさを改めて実感させてくれる秀演です。

なお,時折装飾音符が入ったり,曲の終わりを軽く編曲したり(ソナタ第二番アレグロ)していますが, 私には単に曲の流れを乱しているようにしか聴こえず,この点に関しては残念ながら消化し切れていない印象を受けます。 こういうところに走らずとも,自分の音楽を聴かせる十分な力量があると思うのですが。

録音:

(a)(b)(c)でそれぞれ収録会場が異なるために残響の質が少しずつ異なりますが,概ね違和感のない範囲で統一されています。 それぞれ残響を多めに取り入れた録音で,響きの減衰がスムーズで美しく心地よいものであり,残響の質はかなり良いと思います。 楽器音も伸びがあり,解像感が高く,オーディオ的にも優れていますが, 少し距離感があり,残響の被りがやや多めでその音色への影響を免れていません。 残響の許容できる方には優秀録音と言えるかもしれませんが,私としては,解像感があるとはいえ, 音色への影響,楽器音へのまとわりつきが許容し難いです。 もう少し直接音比率を高くして欲しかったと思います。 また,わずかながら空調ノイズのような「ゴーッ」というような低域のノイズが入っており,密閉型のヘッドホンでは少し鬱陶しく感じられます。

(a)の解説書では,録音に関して次のようなコメントが記載されています。

「ホールの自然なアンビエンスの中に定位する,演奏者の大きさと位置は,左右のスピーカーに対してまことに適切で, 録音側の意図的なアレンジやオーディオファイル受けしそうな,これ見よがしなHiFiテイストは一切感じられない。 これはfine NFの録音に一貫した特色だが,このディスクにはたぐい稀な透明感,ストレスのない音の伸びに加え, 普通演奏者にしか聴くことのできないと思える,奏法,運指が見えるかのような臨場感に圧倒される。」 - 解説書の澤田龍一氏(マランツ音質担当マネージャ)のコメントより

一部あてつけのような記述がありますが(^^);,「奏法,運指が見える」かどうかはともかく,この録音の特徴を的確に言い表していると思います。

P.S.

“Bach & Ysaÿe”という企画でイザイの無伴奏ヴァイオリンソナタとともに録音が進められ, バッハ無伴奏ヴァイオリン全曲が揃い完結しましたので,全集扱いに格上げしました。

ジョセフ・リン氏は台湾系アメリカ人。 2011年からはジュリアード音楽院で後進の指導にあたるとともに, なんとジュリアード弦楽四重奏団の第一ヴァイオリン奏者としても活躍しているとのことです(知りませんでした)。

(記2006/05/15) (a)を掲載
(追2009/09/11) (b)を追加
(追2012/01/07) (c)を追加,全集として再編


マヤ・ホムバーガー(Maya Homburger)

レーベル Maya Recordings
収録曲 全集
録音データ (a) 23-27 September, 2002,Propstei St. Gerold, Austria.
(b) 15-19 February, 2007 Stadtkirche Böblingen, Germany.
(c) 13-17 December, 2010 Propstei St. Gerold, Austria.
使用楽器 Antonio dalla Costa, Treviso 1740 (バロック仕様)
所有盤 (a) MCD0301 (P)(C)2003 Maya Recordings (輸入盤)
(b) MCD0802 (P)(C)2008 Maya Recordings (輸入盤)
(c) MCD1101 (P)(C)2011 Maya Recordings (輸入盤)
備考 参考url: Maya Recordings

バロック・ヴァイオリンによる演奏。 (a)ソナタ第1番・パルティータ第1番,(b)ソナタ第2番・パルティータ第2番,(c)ソナタ第3番・パルティータ第3番,の順に収録されています。

丁寧で柔らかな表情が印象に残る演奏です。 第1番はあまり感情の起伏がなくモノトーンの世界が広がります。 第2番はそれに比べやや感情が見え隠れして赤みが差し,音楽に奥行きが加わった印象です。 そして第3番はさらに明るさが加わってきます。

8年という年月をかけて全集として完結しましたが,全体の統一感を保ちつつ, 少しずつ音楽に深みを増していっていると思います。 どちらかといえば地味ですが,聴くほどに味わいが増してきます。

録音:

残響時間が長く,楽器音に大きく被っているため音色が大きく影響を受けていて私の好みではありませんが, 近めでしっかりと捉えているためぎりぎり許容範囲です。 収録時期が離れていますが,録音の質はほぼ揃っていて全集として違和感はありません。

(記2011/12/17) 3枚目追加に伴い再レビュー
(記2008/04/15) 2枚目追加に伴い再レビュー
(記2004/06/29)


CD image
演奏:
録音:

藤原浜雄(Hamao Fujiwara)

レーベル 東芝EMI
収録曲 全集
録音データ1985.6.5 イイノホール
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 PCDZ-1543/44 (P)1997 東芝EMI(株) (国内盤)
※1986年にLPとして発売されたものをCD化したもの

ライヴらしい気迫に満ちあふれた演奏です。 即興的な感じがほとんどなく,バッハの音楽に鋭く迫ろうとするような姿勢が感じられます。 全体的に速めのテンポで力強さがあり,また音色にも非常に張りがあって聴き応えがあります。 演奏上の傷はいろいろとありますが,そんなことが全く気にならないほどの好演だと思います。 基本的にリピートが省略されており,この点が非常に残念でなりません。

録音:

「至高のバッハ・リサイタルを完全収録したライヴ・アルバム!!」というだけあって,入場時の拍手から調弦まで収録されています。 ライヴ録音ながらかなり近接マイクで収録されているようで,残響が全くといって良いほど無く, 非常に鮮明に,かつ,生々しく収録されているところが素晴らしいです。 演奏者の芸術性が本当にストレートに伝わってきます。 ライヴ録音としてはこれ以上望むのは無理といっても過言ではないと思います。 オーディオ的な音質,バッグクラウンドノイズ,アナログテープの転写(?)など,オーディオクオリティでは今一歩という感じはしますが... 私の好みという点ではまさに理想に近い録音です。

P.S.

解説書によれば「当初は記録目的であったが内容が良かったのでレコード化した」とのことです。 製造が東芝EMIと書いてあるのですが,今ひとつ発売元がよくわかりませんし,一般の店頭で見かけたこともありません。 確かに内容が良いので,もう少し店頭に並んでも良いのではないかと思います。

(記2002/08/15)(追2002/10/01)(修正2011/08/15)


CD image
演奏:
録音:

デヴィッド・ジュリッツ(David Juritz)

レーベル NIMBUS ALLIANCE
収録曲 全集
録音データRecorded at Wyastone Concert Hall, Monmouth, 8, 9 October 2008, 23, 24, March 28, 29 May 2009
使用楽器 1746年製 G. B. Guadagnini (モダン仕様)
所有盤 NI 6142 (P)(C)2011 Wyastone Estate Ltd. (輸入盤) ※CD-R

オーソドックスなアプローチの演奏だと思います。 落ち着きがあり「動」よりも「静」のイメージであり,やや地味で印象が薄いものの, 技術的にも安定していて安心して聴くことが出来ます。

路上パフォーマンスをやる人なのでもっとくだけたバッハが聴けるかと密かに期待していたのですが, 真面目で至極真っ当でした。 もちろんこれはこれで良いのですが。

録音:

少し残響が多めですが,楽器音自体はしっかりと捉えられていますので,ニュアンスや質感がそれなりに伝わってきて印象は悪くありません。 とはいえ,響きが音色に影響を与えていますし明瞭感も損なっていますから,私としてはもっと残響を抑えてすっきりと抜けよく録って欲しかったと思います。

P.S.

デヴィッド・ジュリッツ氏は英国のヴァイオリニスト(南アフリカ,ケープタウン生まれとのこと)。 ロンドン・モーツァルト・プレイヤーズのコンサートマスター。
2007年8月2日の編集日録で, 「路上パフォーマンスで寄付を募りながら世界各地を周っておられる」と紹介しました。 日本にはその年の9月に来られていました(2007年9月4日の編集日録)。 最近では今年の3月11日(東日本大震災の日!)に兵庫の芦屋でチャリティーコンサートを行われていたようです(→参考:ふぃお~ら旅に出る)。

密かに路上パフォーマンスのライヴ録音を期待したのですが,普通の録音でした(^^;。

(記2011/05/28)


庄司紗矢香(Sayaka Shoji)

レーベル MIRARE
収録曲 ソナタ第1番,パルティータ第1番,第2番
録音データ 2010年8月 パリ,ランファン・ジェジュ教会
使用楽器 1729年製ストラディヴァリウス「レカミエ」(モダン仕様)
所有盤 MIR 128 (C)2010 mirare (輸入盤)
カップリング曲:レーガー/前奏曲とフーガ ロ短調作品117-1, ト短調作品117-2,シャコンヌト短調作品117-4

強い意志を持った堂々とした演奏。 しかし繊細さも持ち合わせていて,まったく隙がありません。 あらゆる面で飛び抜けています。 この若さにしてすでに巨匠的風格を備えていることに驚きます。 これが全曲録音でないことが残念でなりません。

録音:

残響が多く,まとわりつきがかなり鬱陶しいですし,音色への影響もかなりあります。 楽器音はしっかりと捉えられているのでなんとか許容範囲ですが, もう少しヌケよくすっきりと,透明感のある音で録ってほしいところです。 残響が気にならない方にとっては優秀録音かもしれません。

P.S.

海外のマイナーレーベルですが,日本語の解説が付いているのは有り難いです。 (輸入盤とはいえ日本人演奏家のディスクなのですから,これくらいの配慮は当たり前と思うのですが...)

(記2011/04/24)


ルース・ウォーターマン(Ruth Waterman)

レーベル Meridian
収録曲 全集
録音データ 2000-2003年 ドイツ
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 CDE 84595/6-2 (P)(C)2010 Meridian Records (輸入盤)

緩急強弱が結構付けられている気持ちのこもった演奏ですが, 自然な呼吸感の中で付けられているので嫌みもなくむしろ上品な印象を受けます。 緩徐楽章では編曲に近いくらいの装飾が結構あって,これはちょっと馴染めないところはありますが, 技術的にもしっかりしていて全体としては良い印象です。

録音:

残響が付帯音として少し気になるものの,直接音の方がわずかに優勢のため, 楽器の質感,ニュアンスも感じられてどちらかといえば良い印象です。 若干高域の伸びに欠けることと録音レベルが低めであることが惜しいところです。

P.S.

公式Webサイトがあります。

(記2011/03/28)


コリヤ・ブラッハー(Kolja Blacher)

レーベル Phil. harmonie
収録曲 パルティータ第二番,第三番
録音データ Recorded at Studio P4/Berlin, November 25/26 and December 9, 2009
使用楽器 1730年製ストラディヴァリウス「トリトン」/キミコ・パワーズ氏より貸 (モダン仕様)
所有盤 PHIL. 06007 (P)(C)2010 Forderverein Klassikwerkstatt (輸入盤)

これはちょっと変わった企画のディスクです。 バッハと同時代の詩人の朗読も収められているのですが(朗読はフランク・アルノルト), これが曲の途中に突然割り込んできたり(例えば二部形式AABBのAとAの間,AとBの間に朗読が割り込んでくる), 演奏に朗読を重ねてきたりするのです。 従って,演奏だけを抜き出して聴くということが出来ません(幸いにもシャコンヌだけは詩の割り込みはありませんでしたが)。 意図があってのことと思いますが,ドイツ語が全くわからない上に, バッハの音楽だけを楽しみたい身にはちょっと迷惑な企画です。

演奏自体はオーソドックスでキリッと引き締まった大変立派なもので聴き応えがあります。 それだけにこの企画は残念でなりません。 いつか全曲を普通に録音してくれることを期待します。

録音:

スタジオで収録されているようで,多少の響きを伴っているものの明瞭感があり,音色もまずまず自然で良好な録音です。

P.S.

ブラッハー氏は元ベルリン・フィルのコンサートマスターとのことです。

(記2011/02/20)


ルース・パルマー(Ruth Palmer)

レーベル Nimbus Alliance
収録曲 パルティータ第二番
録音データ Recorded at the Temple Church, London on 2nd & 3rd February, and 29th & 30th March 2008
使用楽器 Hubay Stradivari 1726 (モダン仕様)
所有盤 NI 6133 (P)(C)2010 Ruth Palmer (輸入盤)
カップリング曲:Bartok/Sonata for solo violin, Sz.117

どちらかといえばオーソドックスです。 で,なおかつ絶唱型というか一弓入魂というか(こんな言葉はありませんが), ものすごく気合いの入った演奏です。 ちょっと力が入りすぎて音がつぶれる寸前のところも多々ありますが, 特にシャコンヌの中間部の高揚感はこの演奏の白眉で一聴の価値ありです。 技術的にもしっかりしています。

録音:

比較的近距離で捉えているのですが,それにも増して残響が多いので,かなり音色に影響がでています。 とはいえ直接音もそれなりにあるため質感も失われずに聴こえてきます。 そういうこともあって残響量の割には印象は悪くないのですが,音色のバランスはかなり崩れているので良いとも言えません。

P.S.

公式Webサイトがあります。 わかりにくいのですがCD-Rのようです。

(記2011/01/17)


シグリッド・クルマン(Sigrid Kuulmann)

レーベル Estonian Record Productions
収録曲 パルティータ第二番
録音データ Recorded in December 2006 in the studio of Estonian Broadcasting Corporation
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 ERP 3109 (C)2010 Sigrid Kuulmann (輸入盤)
カップリング曲:Paganini/“Nel cor più non mi sento” Op.38 MS44, Ysaÿe/Sonata in D minor Op.27-3 “Ballade”, Sonata in E major Op.27-6

良い意味で教科書的。 いろいろな可能性に挑戦する前にまず誠実にバッハの音楽を表現してみようというような姿勢に感じられて, そこが好印象につながっています。 技術的にも優れていてとても立派な演奏だと思います。

録音:

少し残響は感じられるものの,かなり鮮明に,高解像に録っています。 音色も問題なし,楽器の質感も良く捉えています。 きついと感じられる方もおられるかもしれませんが,私にはちょうど良いです。 オーディオクオリティもまずまず良好です。

P.S.

クルマン氏はエストニアのヴァイオリニスト。 なお,本CDは秋山鉄さんの「シャコンヌ狂時代」より教えていただきました。 いつも有り難うございます。

(記2010/12/30)


高橋和歌(Waka Takahashi)

レーベル vivid
収録曲 ソナタ第一番,シャコンヌ
録音データ 秋川きららホール Nov. 10-11, 2009
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 EGPF-005 (P)2010 VIVID productions (国内盤)

厳しくバッハに接している演奏です。 緩急や強弱も最小限。 そのひたむきさが心に響いてきます。 技術的にも安定していて安心して音楽に浸ることが出来ます。

録音:

オーディオクオリティという面ではかなり良いと思います。 きめが細かくなめらかで,情報量の多さも特筆できます。 しかし,明らかに残響過多で間接音成分が支配的, 残響のまとわりつきが鬱陶しく,音色はくすみ(そして変にキンキンしている), 微妙なニュアンスや楽器の肌触り,質感はすっかり失われしまっています。 情報量が多いといっても音楽的情報が失われた残響成分で占有されているに過ぎません。 せっかくのオーディオクオリティが泣いています。 残念でなりません。

(記2010/08/19)


ウェルナー・ヒンク(Werner Hink)

レーベル カメラータ・トウキョウ
収録曲 全集
録音データ 2000年10月29,30日 草津音楽の森国際コンサートホール(群馬)(BWV1001,1004)
2002年2月17,18日 スタジオ・バウムガルテン(ウィーン)(BWV1006)
2004年5月30,31日 スタジオ・バウムガルテン(ウィーン)(BWV1002)
2004年11月16-18日 三重県総合文化センター(三重)(BWV1003,1005)
使用楽器 ストラディヴァリウス“Ex Hammerle” (モダン仕様)
所有盤 CMCD-20101-2 (P)2000,2002,2004 (C)2010 CAMERATA TOKYO (輸入盤)

どことなく温かさ・優しさを感じる味わい深い演奏ですが, 一方で,時代に流されることなく自分の築いてきたスタイルを頑固に守り通そうとする意志の強さも感じます。 従って,やっぱりちょっと古風というか旧世代的な印象を受けるのですが, 伝統の重みとでも言いましょうか,それが良いところでもあると思えます。 技術的には少し衰えを感じてしまうのが少し残念です(というほどのご年齢でもないとは思いつつ...)。

録音:

3カ所で4回に分けて録音されています。 確かに少しずつ音が違うのですが,意識しなければ全く意識されないほどの差しかなく, これだけ統一感のある録音になっていることに驚きます。

少し残響が多めで付帯音が鬱陶しく,またヌケの悪さにつながっているのが不満ですが, 楽器音自体は比較的しっかりと捉えられているため,質感もそこそこ感じられるので, まあ許容範囲かなと思います。

P.S.

ウェルナー・ヒンク氏はウィーン・フィルのコンサートマスターとして1974年から2008年という実に長い期間にわたって活躍されていたということです。

(記2010/07/09)


クリストフ・バラティ(Kristóf Baráti)

レーベル Berlin Classics
収録曲 全集
録音データ 07-12.09.2009, Berlin, Siemens-Villa
使用楽器 1703 Stradivarius “Lady Harmsworth” (モダン仕様)
所有盤 0016732BC (P)(C)2010 Edel Germany GmbH (輸入盤)
備考 参考url: 公式Webサイト

バラティ氏は2002年にも全集を録音していますので,これが2回目の全集となります。

すごくキレがよく推進力があります。 そして楽器の鳴りが素晴らしい。 それでいて全く淀みがなくサラッと清々しく進行していくあたりが今風という感じがします。 テクニックも万全で和音などもすごく美しく響きます。 音色は刺々しさと紙一重で豊潤さはあまりないのでこのあたりで好みが分かれるかもしれません。 ピリオドに傾かず,あくまでモダン奏法の中で新しい表現を追い求めようとしているところに好感を持ちます。 二部形式の後半のリピートのほとんどが省略されていて,それだけが惜しまれます(なんで!)。

録音:

すこし残響が多めで楽器音への被りも感じられますが,直接音が適切な距離感で捉えられているため,まずまず良好です。 もちろん私としては残響の被りによる音色のくすみが気に入りませんが。

(記2010/06/23)


セルゲイ・ハチャトゥリアン(Sergey Khachatryan)

レーベル naïve
収録曲 全集
録音データ Recorded in December 2008 and January 2009 at L'heure bleue, Salle de musique.
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 V 5181 (P)(C)2010 Naïve (輸入盤)
備考 参考url: 公式Webサイト

ビブラートをしっかりとかけて感情を込めてしっかり弾く,どちらかといえば旧来のスタイルの延長線上にあると思います。 それにしても技術的にも申し分ありませんし,そのスケールの大きさ,リピートでの微妙な表情の変化など, 聴きどころのたくさんある立派な演奏です。

録音:

少し残響が取り入れられていますが,直接音主体で微妙なニュアンスもきちんと伝わってくるので, まずまず良好と言えます。 とはいえやはり残響による音色のわずかなくすみが気になるので,文句なしとは言えませんが。

(記2010/06/07)


マリー=アニック・ニコラ(Marie-Annick Nicolas)

レーベル Alphee
収録曲 全集
録音データ 記載なし
使用楽器 Andrea Guarnerius (Cremona 1673) (モダン仕様)
所有盤 ALPHEE 0041213 (P)(C)2000 Asped production (輸入盤)
備考 参考url: 公式Webサイト

これはいい!と思わず心の中で叫んでしまいました。 ややかさついた音色ではありますが,伸びやかで透明感ある響き(残響ではありません,念のため)が本当に美しいです。 正統的で派手さはありませんが,緩急,抑揚,ヴィブラートなど絶妙にコントロールされていて,力強さの中にも繊細さ,やさしさが感じられます。 技術的にも安定感があって,安心して音楽に没入できました。

録音:

ふわっと広がる美しい響きが印象的ですが,音色への影響が感じられ,聴いていて苛々させられます。 響きの割には解像感は良好ですが,やはり残響成分がヌケの悪さにつながっていると思います。 演奏が素晴らしいだけに残念でなりません。 (おそらく一般的な評価は「優~良」だと思いますが。)

P.S.

マリー=アニック・ニコラは,1956年フランス生まれ。 1974年の第5回チャイコフスキーコンクールで3位入賞,1976年のエリザベート王妃国際音楽コンクール7位入賞など,いくつかのコンクールで入賞した実績があります。

(記2003/03/25)

複数名の方から「良かった」というコメントをいただきました(有り難うございます)。 この演奏は,私が紹介してきたマイナー盤の中で最も評判の良いものの一つに挙げられます。

演奏自体は旧世代のモダン流という感じで,昨今の洗練された, あるいはピリオド奏法を意識した演奏から比べるとやっぱり古いかなと思いますが, そういったことが些細なことに思えるくらい音楽的に充実し魅力に溢れているところが受けているのかなと思います。

なお,全てではありませんが,二部形式の曲の後半は基本的に省略されています。 この点だけが残念なところです(あと録音が私の好みとは少し違う点も)。

このディスク,入手性があまり良くないのが残念なのですが,amazon.frなどにエントリされているので入手困難ではありません。 私が入手した2003年頃は国内での取扱いが見つからず,amazonにもなかったので, alapage.comでフランス語と格闘しながら数時間かけてオーダーした覚えがあります。 一時期hmv.co.jpにも出ていたと記憶しているのですが,今は取り扱っていないようです。

(記2010/05/13)



オスカー・シュムスキー(Oscar Shumsky)

レーベル Nimbus
収録曲 全集
録音データ 記載なし(1975年だと思われる)
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 NI 2557 Original Release (C)(P)1979 Amreco, Inc. This release (P)(C)2010 Wyastone Estate Limited (輸入盤)
参考url: WyastoneAmazon.co.jp

ASV盤と同じ音源です。 感想についてはASV盤をご参照下さい。

収録曲順もASV盤と同じですが,トラックは一般的な1曲単位の分割に変更されています。 ASV盤とデータレベルの比較も行いましたが,いくつかの曲で微小な差があったものの, ほとんどの曲で完全一致しました。 基本的にASV盤のディジタルデータが引き継がれ, 再マスタリングや編集などはされていないと考えて良いと思います(すなわち音質は同等です)。

なお,もしかしたらCD-Rかもしれないという話も聞いていたのですが,私が盤面を見る限りはプレスCDのようです。(→訂正します。下記参照下さい)

(記2010/04/05)

NIMBUS盤をご購入された読者の方から,これはCD-Rであるというご指摘を受けました。 その方の話では内周部にATC700T-1という刻印があり,Sony製のCD-Rとのことでした。 私のものはT80FD-D0034という刻印があり,同じものではないようですが,恐らくCD-Rでしょう。

信号面の色やレーベル面の印刷状態からプレスCDに違いないと判断したのですが,間違いだったようです(でも今もって自信がありません...)。 誤報,申し訳ございません。 訂正いたします。

(記2010/04/18)

オスカー・シュムスキー(Oscar Shumsky)

レーベル ASV
収録曲 全集
録音データ 記載なし(1975年だと思われる)
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 CD DCD 454 (C)(P)1983 Academy Sound and Vision Ltd. (輸入盤)
※“A Musical Heritage Society Recording”とあります。
参考url: Amazon.co.jp

まさに入魂の演奏! 武骨で不器用なほどにストレート,かつ,全編に渡って極めてテンションが高く圧倒されます。 ただただひたすら無心に演奏に打ち込んでいる姿が目に浮かんできます。 決して個性の強い演奏ではありませんし(むしろ地味),洗練されているわけでもなく, その気迫が時に息苦しささえ感じさせることもありますが, 無垢の魅力に溢れており,素直に「すごい!」と言える好演だと思います。

録音:

やや残響感を伴っているものの,明瞭感,解像感はそこそこあり,この点では好ましいです。 ただ,音色はかなり硬質でギスギスして刺激的,少々聴き疲れします。 また,高域の伸び感が今ひとつで,スカッとしません(こもった感じではありませんが)。 1975年の録音にこのような文句を付けるのもどうかとは思いましたが,やっぱり1975年の録音にしてはちょっと古臭い音質に感じます。 演奏が良いだけに少々残念です。

P.S.

このCD,トラック分割が変です。 ソナタ第二番,第三番で第一楽章と第二楽章まとめて1トラックというのはまあいいとして, パルティータ第一番は2トラック(Allemande+Courante, Sarabande+Tempo di Bourree), 第二番は3トラック(Allemande+Courante, Sarabande+Gigue, Chaconne), 第三番は4トラック(Preludio, Loure+Gavotte en Rondeau, Menuet, Bourree+Gigue)しかなく, それぞれのトラックに対して,"1st Movement", "2nd Movement"などと付けられています。 聴き通す場合には問題ありませんが,ちょっと扱いにくいです。

シュムスキー盤再発売の可能性について
このシュムスキー盤,定評のある盤にもかかわらず入手困難ということで,K.N.さんが追跡調査して下さいました(2002年秋頃)。 まずASVですが,元々の権利はアメリカのMusical Heritage Societyが保有しており, ASVはそこから一時的に商品化権利を得て商品化し,現在は契約切れで再発売の権利も所有していないということでした。 返信して下さったASVの担当者も「素晴らしい演奏だったので何とかしたいが...申し訳ない」という話だったそうです。

そしてこのMusical Heritage Societyですが, 復刻を熱望するリクエストに対するここからの返信は「この録音はもう入手不能です」という素っ気ないものだったとのことです。 再度「歴史的な名演奏をぜひ復刻して欲しい」というリクエストを送ったそうですが,残念ながら返信なしとのことでした。 (注:上記のリンク先アドレスは間違っていないと思うのですが,なぜかサイトにつながりません)

Musical Heritage Societyにその気がないなら,再発売は望み薄だと思います。 これほどの演奏がこのまま埋もれてしまうのは何とも残念なことです。 これが何かの間違いであり,ある日どこかのレーベルからひょっこりと出てきて欲しいものです(復刻レーベルのがんばりに期待!)。

(記2003/10/02)

Nimbusから再発盤が出ました! Nimbus盤をご参照下さい。

(記2010/04/05)


ジャック・デュモン(Jacques Dumont)

レーベル COLUMBIA
収録曲 全集
録音データ 不明
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 COLUMBIA Japan OB-7027/9 (国内盤) (※LP)

正攻法の真面目な演奏。 ちょっと時代を感じさせる旧世代の演奏スタイルかなと思います。 推進力や躍動感はありませんが,節度ある丹念な演奏に心惹かれます。

録音:

少し残響が被っていますが,直接音もある程度確保されているので印象は悪くありません。 ただ,曲の途中で曇ったり音像ががらっと変化するところがあったりするのですが, マスターの問題なのか,盤の状態の問題なのか,再生機の問題なのか,ちょっと判断がつかないので, この点に関しては保留としたいと思います。

P.S.

ある方のご厚意でこの貴重な演奏を聴かせていただくことが出来ました。 有り難うございました。 日本コロムビアの大バッハ全集に収められていたものということです。 CD復刻を期待します。

(記2010/03/15)


ペッテリ・イーヴォネン(Petteri Iivonen)

レーベル Yarlung Records
収録曲 パルティータ第二番
録音データ 不明
使用楽器 Ferdinandus Gagliano (1767年製) (モダン仕様)
所有盤 05787 (C)2009 Yarlung Records (輸入盤) (※MP3ダウンロード購入)

小細工のない素直でストレートな表現に好感を持ちます。 キリッと引き締まった演奏なのですが,ちょっとあっさりしていて訴えかけがちょっと弱いかなと。 良い演奏だとは思うのですが,あまり印象に残りませんでした。

録音:

どのような環境下で録音されたのかわかりませんが,残響がほとんどなく,明瞭感のとてもよいすっきりした録音です。 音色もまずまず自然です。 やや楽器音のとらえ方が弱く,中低域が希薄で,ボディ感の乏しい,やや質感を失った音に感じられるのが少し残念です。 とはいえ,それでもこの録音はなかなかいいです。

P.S.

フィンランドのヴァイオリニストのようです。 名前の日本語表記は全く自信がありません。

今回はCD Babyからこの曲だけをダウンロード購入しました。 Windowsのエクスプローラのプロパティで見ると256kbps,iTunesにインポートしてプロパティを見ると180kbps(VBR)と出ていました。 ファイルサイズと時間から計算すると約180kbpsになります。 エンコード歪みはほとんど気になりませんでしたが,MP3ならせめて256kbpsか320kbpsの固定ビットレートにして欲しかったところです。 Linn Recordsからもダウンロード購入できるようで, こちらはクオリティを選べます(こちらにすれば良かった...)。

(記2010/02/19)


鷲見恵理子(Eriko Sumi)

レーベル Musicamici
収録曲 パルティータ第二番
録音データ 2006年11月30日 紀尾井ホール(ライヴ収録)
使用楽器 1686年製 アンドレア・グァルネリウス (モダン仕様)
所有盤 ES-1002 (P)(C)2009 Office Amici (国内盤)
タイトル:鷲見恵理子 紀尾井リサイタル
併録曲 イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第二番 Op.27-2
パガニーニ:奇想曲 第22番,第3番,第13番,第11番,第14番
クライスラー:レチタティーヴォとスケルツォ・カプリス

ライヴ収録。 Gigueまではエンジンがかかっていないというか,気持ちが乗りきっていないというか,少しぎこちない印象です。 さらにAllemande, Courante, Gigueは前半のリピートまで省略されているので,あれあれっていう間に過ぎ去っていくのもなんだか物足りません。 Ciacconaの中頃あたりからようやく気合いの入った迫真の音楽が展開していきます。 しかし,ライヴ収録とはいえ,メディアを通して鑑賞するにはいろんな面で不満が残ります。 生で聴いていたらきっと違う印象を受けただろうと思うのですが。

録音:

少しマイクが遠目で,明らかに間接音比率が高く,明瞭感が良くありませんし, 何より音色がくすみ,楽器の質感も十分に捉えられていません。 残響時間はそれほど長くなく,響きがまとわりつく鬱陶しさはあまりありませんが。

(記2010/02/12)


マリナ・シシュ(Marina Chiche)

レーベル Intrada
収録曲 ソナタ第一番,パルティータ第二番
録音データ 2006年11月10-12日 IRCAM(フランス音響音楽研究所)
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 INTRA034 (P)(C)2008 Intrada (輸入盤)
タイトル(邦題):「バッハを読んで ~バッハから近代へ,そして...」
併録曲 イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第四番 Op.27-4
ベッファ:バッハを読んで...無伴奏ヴァイオリンのための
プロコフィエフ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ Op.115

とても丁寧できっちりしていて品があります。 高揚するところでも決して踏み外すことがなく,洗練された美しさを保っています。 技術力の高さ,安定感も光ります。 全曲聴いてみたいものです。

なお,パルティータ第二番では,Allemande, Courante, Gigueの後半のリピートが省略されていました。

録音:

残響を伴っているものの,楽器の直接音が主体なので,明瞭感に優れ,ヌケの良さ,音色の自然さ, ニュアンスの聴き取りやすさなど,かなり良いと言えます。 このような録音であれば,響きが必要と思っている方もまずまず満足できるでしょうし, 響きに楽器音を邪魔されたくない私もそれなりに納得がいきますので, そういう意味でちょうど良いバランスの録音と言えそうです。

(記2010/01/21)


ヴァレリー・オイストラフ(Valery Oistrakh)

レーベル MUSICOM
収録曲 全集
録音データ II Bagno, Steinfurt (Germany) (※録音年月日記載なし)
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 CD 020717 (P)MUSICOM (輸入盤)
備考 参考url: 公式WebサイトMUSICOM

かたくなに自己のスタイルにこだわり,真摯に愚直にこの楽曲に取り組み,完成させてきた,そんな風に聴こえます。 実際のところ,よく練られ,丁寧に演奏され,非常に良く仕上がっています。 今風の颯爽とした演奏でもなく,何かに秀でた尖った演奏でもなく,どちらかといえば不器用で武骨で古くさい,そんな頑固な演奏ですが, ここにはひたむきに音楽と向き合う氏の志がしっかりと刻まれているように感じます。 私の好きなタイプの演奏ではありませんが,なんだかジーンとしてきます。

録音:

残響が少し多めに取り込まれており,音色に影響しているものの,それでも直接音がそれなりの比率で入っているためにそこそこの明瞭感が確保されており, 何とかぎりぎりプラスの印象になっています。

P.S.

ヴァレリー・オイストラフ氏は,イーゴリ・オイストラフ氏の息子,すなわちあのダヴィド・オイストラフ氏の孫ということです。 現在,ベルギーのブリュッセル王立音楽院(?)の教授。

なお,入手に関しては拙ブログ「好録音探求」にて触れていますので,一度そちらも覗いてみてください。

(記2009/12/07)


ギドン・クレーメル(Gidon Kremer)

レーベル Euro Arts
収録曲 パルティータ集
録音データ Recorded at the Pfarrkirche St. Nikolaus, Lockenhaus, September 2001
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 Euro Arts 2055638 (C)2007 (輸入盤) (*DVD)

明記されていませんが,2001年9月に録音された2回目の全集のパルティータと同演奏と思われます。 私が聴く限り違いがわかりませんでした。

DVDということで,映像は聖ニコラウス教会の祭壇?の前で弾く氏の姿ですが... バッハを弾く姿を見られること自体はうれしいのですが,あまり見ていて楽しくないというのが正直なところです。 弾いている姿はあまり格好良くないし(ごめんなさい),ライティングもなんとなく不自然, 総金箔張り?の祭壇の背景は映像として煩く,また趣味が良くないです。 CDを聴きながらいろいろと想像を巡らせる方が良いかと。

しかし...久しぶりに聴いて,その表現力のすごさに改めて感嘆するものの,氏の強烈な個性にはやっぱりついて行けないなと少し淋しい気分になりました。

(記2009/11/30)


小林倫子(Michiko Kobayashi)

レーベル MPS Classics
収録曲 パルティータ第二番
録音データ 2006年9月30日 港区立高輪区民ホール
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 品番なし MPS企画 (国内盤)
タイトル:Michiko Kobayashi Solo Recital
カップリング曲:バッハ/パルティータ第三番よりプレリュード,ミルシュテイン/パガニーニアーナ変奏曲,エルンスト/夏の名残のバラ,イザイ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第三番「バラード」, 竹内邦光/無伴奏ヴァイオリンのための「落梅集」,バッハ/ソナタ第二番よりアンダンテ
備考 参考url: 公式Webサイト

ぜひ生で聴いてみたい,と思ってしまう,ライヴらしい気持ちの乗った熱演。 演奏上の傷が散見されるものの,この演奏の価値を下げるものではありません。 リピートが全て省略されてしまっているのが非常に残念です。

録音:

客席に設置されたマイクで録音したのではないか,と思えるような全く明瞭感のない冴えない音です。 客がリニアPCMレコーダでこっそりと録音したレベルとそう変わりないという印象です。 そういう意味で非常に生々しいのですが,これはあまりにも淋しいと言わざるをえません。 演奏が良いだけに残念です。

(記2009/11/16)


アリーナ・イブラギモヴァ(Alina Ibragimova)

レーベル hyperion
収録曲 全集
録音データ 2008年12月22-23日,2009年1月17-18日,2009年2月17-18日
ヘンリー・ウッド・ホール(ロンドン)
使用楽器 ピエトロ・グァルネリ(1738年製) (モダン仕様)
所有盤 CDA 67691/2 (P)(C)2009 Hyperion Records Ltd., London (輸入盤)

ノンビブラートを始めピリオド的な奏法を意識しているようで,確かにそういう特徴もあるのですが, 若い演奏者らしい意欲をストレートに表現した清新さも持ち合わせており,これが大きな魅力になっています。 技術のキレも素晴らしく,推進力にも富み,何より素直で瑞々しいところに共感します。 音色の美しさ,透明さも特筆できます。 文句なし! 見事です。

録音:

ほんのわずかに残響を伴っていますが,極めて鮮明で明瞭度の高い好録音です。 音の伸び,音色の自然さ,どれをとっても満足のいくレベルです。 オーディオクオリティもかなり良いと思います。 かなり刺激的できついと思われる方もおられるかもしれませんが,私としてはこれくらいの方が良いです。 ほんのわずかな響きが微妙に質感を覆い隠していて,その点だけが完璧に納得できないところではあるのですが, そこまで言うのは贅沢かもしれません。

(記2009/10/14)


ネイサン・コール(Nathan Cole)

レーベル Bacchanale Records
収録曲 ソナタ第一番
録音データ Recorded January 13-15, 2006 at WFMT studios in Chicago
使用楽器 記載なし
所有盤 品番なし (C)2007 Bacchanale Records (輸入盤)
カップリング曲:バルトーク:無伴奏ヴァイオリンソナタSz117,オーガスタ・リード・トーマス:Pulsar, Incantation, Caprice, Rush
備考 コール氏はシカゴ交響楽団の第一ヴァイオリン奏者。

力強く,そしてほとんど小細工のない淀みない音楽が,ある意味潔くて好感を持ちました。 技術にキレもあります。 個性的というわけではありませんが,真面目で真摯な演奏であり,これはこれで良いと思います。

録音:

スタジオでの録音のようで,残響は少ないのですが,音色がわずかに濁ってヌケが悪くなっており, すっきりしません。せっかくのスタジオ録音なのに,それを活かせていません。 もったいないです。

(記2009/09/11)


サルヴァトーレ・アッカルド(Salvatore Accardo)

レーベル fonè
収録曲 全集
録音データ September 24-29 2007
使用楽器 Antonio Stradivari “Hart” ex Francescatti (1727) (モダン仕様) (s1,2,3,p3)
Maggini “Giorgio IIIº” (1620) (モダン仕様) (p1,2)
所有盤 fonè SACD 061 (P)(C)2008 Audiophile Productions (輸入盤)
備考 アッカルド氏2回目の録音。

バッハの無伴奏ヴァイオリンはこう弾くんだ!と,端正でオーセンティック志向の演奏が多い昨今の流れに反発するかのような熱く激しい入魂の演奏。 一方で,勢い先行の粗さや微妙な音程の散らばりが見られるなど,若干安定感を欠き年老いた巨匠のイメージがついて回るのが少々残念です。 もっとも,これも何度も聴いているうちにそのスケールの大きな音楽に引き込まれて気にならなくなるのはさすがだと思いますが。

録音:

残響時間が長く,また明らかに残響過多です。 残響が大きく被るため,そのまとわりつきで不明瞭になり細部のニュアンスが聴き取りにくく, また音色も大きく損なっています。 曇った感じが少ないため許せる方もおられるかもしれませんが, 全く私の好みではありません。

(記2009/09/04)


ダヴィド・グリマル(David Grimal)

レーベル Ambroisie
収録曲 全集
録音データ Recorded in september and december 2008 at the Opéra de Dijon (France)
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 AM 181 (P)(C)2008 Naïve (輸入盤)
※パルティータ第二番を収めたDVDが付属
備考 グリマル氏2回目の録音。 ソナタとパルティータの間に,ブリス・パウゼ(Brice Pauset)による短い曲が挿入されています(Kontrapartita Corrente, Preludio, Loure)

緩急と微妙なリズムの崩しに特徴があり, また,パルティータではバロックらしからぬ独特の装飾(編曲?)が多く見られます。 そういった点を除くと,至って冷静に,技術的な余力を活かして現代的な洗練された演奏をされています。 上記の個性的な部分が受け入れられるかどうかで評価が分かれるのではないかと思います。 私としては全体としては気に入っていますし,装飾もそれなりに楽しませてもらっているのですが, 毎回毎回この装飾を聴かされるのもなぁ...と少し微妙です。

録音:

残響がやや多めに取り込まれていますが,あくまで直接音を主体に明瞭感・解像感高く捉えられており, また,残響は直接音と明確に分離され,楽器音をほとんど濁すことなく音の広がり,奥行きを演出しています。 私としてはこの残響は不要ですが,これならまあ許せます。 楽器音がややきつめですが,ニュアンスがきちんと伝わってきますし,音色も自然,高域の伸び感も十分にあります。

付属DVDですが,あまりにも局部的なアップが多すぎて,見たいところが見えず不満がたまります。 もう少し引き気味にして欲しかったところです。

(記2009/08/06)


藤原浜雄(Hamao Fujiwara)

レーベル Fontec
収録曲 ソナタ第一番
録音データ 2007年11月19日 紀尾井ホール ライヴ録音
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 FOCD9374 (P)(C)2008 FONTEC Inc. (国内盤)
カップリング曲:ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第八番,エネスコ/ヴァイオリン・ソナタ第三番,チャイコフスキー/憂鬱なセレナーデ,サラサーテ/カルメン・ファンタジー

鋭く勢いのある弓使いや細かい音にまで効かせるビブラートなど典型的なモダン流儀の演奏かなと。 真摯に厳しくバッハに対峙する姿勢を貫かれていますが,そんな中にも情緒的な表情が感じられるところは, さすがベテランといったところでしょう。 ライヴながら技術的にも非の打ち所がありません。 立派な演奏です。 全曲の再録音を期待したいところです。

録音:

残響の取り込みが多く(残響時間もかなり長い),また少し距離感もありますが, 楽器音はそれなりにしっかりと捉えられていて,これだけの残響を伴いながらもある程度の聴きやすさを保っています。 ライヴの雰囲気をそれなりに伝える音場感があり,残響が許せる方であれば納得のいく録音かもしれません。 もちろん私の好みではありませんが。

(記2009/07/21)


ボグダン・ズヴォリステアヌ(Bogdan Zvoristeanu)

レーベル Dinemec
収録曲 全集
録音データ Recorded at Dinemec Studios
使用楽器 Nicolaus Gagliano 1761 (モダン仕様)
所有盤 DCCD 060 (P)(C)2008 DINEMEC CLASSICS (輸入盤)
備考 参考url: Dinemec Records

スタンダード路線ど真ん中といったところでしょうか。 良い意味で教科書的・模範演奏的です。 整然としたテンポ,音程の正確さ,和音の響きの美しさ,音の伸び・密度感,楽器の鳴り, あらゆる面でそつがなく,安定した技術で高精度に磨き上げられています。 個性を前面に出す演奏ではなく,そういう意味で面白味に欠けるかもしれませんが, 高いレベルでまとまっていて本当に立派だと思います。 こういう演奏,好きです。 思いがけない掘り出し物でした。

録音:

息づかいが聞こえるほどの距離で捉えているものの,響きがやや被り気味で, 今ひとつすっきりしません。 悪くはありませんが,私の好みからは少し外れます。 非常に惜しい録音です。

(記2009/07/09)


ジノ・フランチェスカッティ(Zino Francescatti)

レーベル Orfeo
収録曲 パルティータ第一番
録音データ Live Recording 25, August 1958
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 C 711 081 B (P)(C)2008 Orfeo International Music GmbH. (輸入盤)
カップリング曲:ブラームス/ヴァイオリン・ソナタ第三番,ベン=ハイム/ソナタ ト長調, サン=サーンス/序奏とロンドカプリチオーソ,ラヴェル/ツィガーヌ,他

鋭角的でちょっとばかりせっかちな「フランチェスカッティ節」を,このパルティータ第一番でも期待通り聴くことが出来ます。 これはバッハを楽しむというより彼の巨匠的な強い個性を楽しむもので, そういう意味で非常に聴かせ上手だなとつくづく思います。

録音:

モノラルのライヴ録音。 若干残響は感じられるものの,音の捉え方自体はそれほど悪くありません。 しかし,如何せん,残念ながら基本的な音質が貧弱すぎます。

(記2009/06/30)


ヘルヴィッヒ・ツァック(Herwig Zack)

レーベル AVIE
収録曲 パルティータ第二番
録音データ 記載なし
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 AV2155 (P)(C)2008 Herwig Zack (Avie Records) (輸入盤)
カップリング曲:バルトーク/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ,イザイ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第三番, スカルコッタス/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ,クライスラー/レチタティーヴォとスケルツォ・カプリース
備考 ツァック氏は,1982年から1995年までシュトゥットガルト室内管弦楽団の第一コンサートマスター,現在はソリストとして活躍中とのこと。
参考url: Avie Records

時折音の処理で独特の箇所はありますが,概ね正攻法での演奏かと思います。 個性的表現があるわけではありませんが,意欲的で快活な演奏は聴き応えがあります。 技術力も十分あり安定感があります。

録音:

楽器音をしっかりと捉えていますが,残響が多く,楽器音に被って明瞭感と音色を大きく損なっています。 私の好みの録音ではありません。

(記2009/06/30)


ヴィクトリア・ムローヴァ(Viktoria Mullova)

レーベル onyx
収録曲 全集
録音データ 2007年3月18日-19日,2008年10月20日-22日,ボルツァーノ(イタリア)
使用楽器 1750 G.B.Guadagnini, gut strings; Baroque bow W. Barbiero; A=415 (バロック仕様?)
所有盤 ONYX 4040 (P)(C)2009 VIKTRIA MULLOVA (輸入盤)
輸入・発売:株式会社東京エムプラス

金属巻線処理されていないガット弦とバロック弓を使った演奏(楽器自体がモダンかバロックかはわかりません...)。 スピードとキレのある運弓はモダン的,ノンビブラートでかつ短めに切り上げる音の処理はピリオド的, 中間的というか折衷的なアプローチかなと思います。 勢いをもって大胆に切り込んでいるにも関わらず,聴き手に緊張感を強いない軽妙さが支配しているのは, ピリオド的アプローチを完全に自分のものとし,持ち前の技術力でそれを表現しきっているからなんだろうなと思います。

録音:

やや残響が多く,こもった感じこそないものの,残響が楽器音に被って明瞭感と音色を損なっていることには変わりありません。 許容範囲ではありますが,私の好みの録音ではありません。 残念です。

P.S.

それでもやっぱりモダン楽器でやって欲しかった...

(記2009/06/16)


日下紗矢子(Sayako Kusaka)

レーベル HERB Classics
収録曲 ソナタ第三番
録音データ Recorded 01-03/August 2008 at Hanakage-Hall in Yamanashi-City, Japan
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 HERB-011 (P)(C)2008 HERB Classics(Japan) (国内盤)
カップリング曲:バルトーク/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ,B. A. ツィンマーマン/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ
備考 参考url: HERB Classicsのプロフィール

真面目で慎ましく理知的,しなやかな弓使いでレガート主体の印象。 音のつながり,澄んだ音色の美しさは特筆に値します。 現代的で洗練された好演奏だと思います。

録音:

少し響きを伴っていて,その付帯音による癖のある音色の変化がわずかに気にはなるものの, 楽器音が主体で明瞭感,高域の伸びもあってまずまず良好かなと思います。

P.S.

日下氏は,2008年3月より,ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団(旧称:ベルリン交響楽団)の第一コンサートマスターとしてご活躍とのこと。

(記2009/06/16)


川原千真(Chima Kawahara)

レーベル CRÉATION
収録曲 全集
録音データ 2007年4月12-13日,6月12-13日,8月7-8日 相模湖交流センター
使用楽器 北イタリア(18世紀後半)製 (バロック仕様) ※バロック仕様のまま約200年ほどジェノヴァの農家の納屋に埋もれていたが,10年ほど前に発見されたもの
所有盤 CRT-3100/1 (P)2009 CRÉATION (国内盤)

一音一音丁寧に練り上げ,隅々にまで神経を行き届かせて演奏されています。 感情は抑え気味で熱くなることなく常に冷静,でも歌心は忘れず,美しい響きが印象に残ります。 技術的にも優れたレベルの高い演奏だと思います。 バロックヴァイオリンによる演奏ですが,それを強調するような弾き方ではなく, ごくごく自然であり,バロックヴァイオリンであることが意識に上ってくることはほとんどありませんでした。

録音:

響きがやや多めに取り入れられています。 音の伸びが感じられるので,極端に悪い印象はありませんが, 音色はかなり損なわれており,細かいニュアンスもやや聴き取りにくいように思います。 悪い録音ではないかもしれませんが,私の好みではありません。

P.S.

川原千真さんは古典四重奏団の第一ヴァイオリン奏者で,モダンとバロックの両方を演奏されるということです。 私がこの演奏で唯一残念なのが,この曲集の演奏にバロック楽器を選択されたことです。 この演奏であれば,モダン楽器を使われた方がもっと素晴らしかっただろうに,と思うのです(※注:単に私がバロック楽器よりもモダン楽器の方が好きだからなのですが)。 両方を演奏されるならバロックを選ぶのはある意味当然かもしれませんが...うーん,残念。

(記2009/05/14)


ジョコンダ・デ・ヴィート(Gioconda De Vito)

レーベル IDIS
収録曲 パルティータ第二番
録音データ Studio Recording, 1947(Ciaccona) & 1950(Allemanda, Corrente, Sarabanda, Giga)
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 IDIS 6564 (P)2009 Istituto Discografico Italiano (輸入盤)
“GIOCONDA DE VITO. THE LAST RECORDINGS”
カップリング曲:バッハ/ヴァイオリン協奏曲BWV1042,モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲K.216

1947年にシャコンヌが録音され,1950年にその他4楽章が追加で録音されたということです。 前の4つの楽章はどちらかといえば落ち着いています。 一方シャコンヌは緊張感のある演奏で, 静かに始まって徐々にテンポを速めて頂点に持って行く長調の中間部などなかなか聴き応えがあります。

録音:

アナログ盤の復刻で,楽章毎に復刻の状態が異なります。 前の4つの楽章はややこもった感じが残り状態は決して良くありませんが,1950年の録音であることを考えると, まずまずかと思います。 一方シャコンヌは,これが1940年台のしかもアナログ盤からの復刻かと思うほど鮮明でこもり感もなく,すごく状態が良いです。 残響にまみれた近年の録音よりよっぽど音楽を楽しめます。 これには少々驚きました。

P.S.

シャコンヌで一カ所,弾き直したように聴こえるところがあります(あり得ないような弾き直し方なので編集ミス?なのかもしれませんが)。 逆に編集で普通に聴こえるように出来たはずなのですが,あえてしなかったのはなぜかなとちょっと疑問に思います。

(記2009/04/21)


アレッシオ・ベンヴェヌーティ(Alessio Benvenuti)

レーベル Ludwig Classica
収録曲 全集
録音データ Italy Luglio 1997
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 Ludwig Classica 002/003 Italy 1997 (輸入盤) (*CD-R)

模範的というか,良い意味で教科書的にきちっととしています。 音にも力と張りがあり,全曲にわたって緊張感が持続しています。 技術的にも問題ありません。 秀でたところや特徴のある表現があるわけではありませんが, バランスの取れた良い演奏であると思います。

録音:

直接音主体に明瞭に捉えていおり,若干の高域の伸びの不足を感じつつも印象は悪くありません。 アナログ録音でわずかなヒスノイズを感じますが,全く問題ありません。 ただし,編集がいい加減すぎます!(怒)。 曲の終わりで楽器の響きが残っているのにブチ切ったり,曲間にプチッというノイズが平然と入ってきます。 演奏も録音も良いのに,このずさんな編集が全てを台無しにしています。 残念です。

P.S.

なお,本CDは秋山鉄さんの「シャコンヌ狂時代」より教えていただきました。 いつも有り難うございます。 紹介とサンプル音源のページがあります(Vol.1Vol.2)。 私はeBay.itから手に入れましたが,現在出ているかどうかはわかりません。

(記2009/03/26)


オルヌルフ・ボイエ・ハンセン(Ørnulf Boye Hansen)

レーベル Bergen Digital Studio
収録曲 ソナタ第一番,パルティータ第一番,第二番
録音データ Ringsaker Church, April 2005.
使用楽器 記載なし (バロック仕様)
所有盤 BD 7042CD Bergen Digital Studio (輸入盤)

うーん,技術的にちょっと苦しいかな,というところが散見されます。 左手のキレの悪さ,音程の不安定さ,地に足がついていない(?)ような弓使い(若干暴れ気味), 技術的というよりも,こなれていないというか,バロック楽器を使いこなせていない印象,といった方が近いかもしれません。 モダン楽器で聴きたかったという気がします(残りの曲はモダン楽器で録音して欲しい...)。

録音:

なぜか残響ですごく曇ったり,すぅーっと晴れるように高域が伸びたり, それが曲毎でも起きるほか,曲の途中でも刻々と変化します。 どうやったらこんな風に録音できるのか不思議でなりません。 ヘッドホンで聴いているとすごく気持ち悪いです。 「晴れ」の時の音はなかなか良いんですが。 残念な録音です。

(記2009/03/17)


アリアドネ・ダスカラキス(Ariadne Daskalakis)

レーベル TUDOR
収録曲 パルティータ第二番
録音データ 27.& 28.08.1999, Studio des SWR Kaiserslauterm
使用楽器 Giovanni Baptista Guadagnini, Parme 1769 (モダン仕様)
所有盤 TUDOR 7081 (P)(C)Tudor Recording AG, Zürich (輸入盤)
カップリング曲:ニコラ・マッテイス/グラウンド,アリア・アモローザ, ビーバー/ソナタ・レプレゼン, ティーヴァバルツァー/《John Come Kiss Me Now》変奏曲, コレッリ/ソナタ《ラ・フォリア》
備考 参考url: 公式WebサイトTobu Tradingカタログより

非常にキレの良い,推進力ある淀みのない音楽が大きな魅力です。 しかし,リピートの後半で時折挿入される装飾が音楽の自然な流れを乱しており, 入れる効果より乱れるデメリットの方が大きく感じられます。 些細なことですがちょっと残念に思います。

録音:

若干響きを伴っているものの,楽器音を主体に捉えているので印象は悪くありません。 しかし,響きのために抜けが悪くなり音色が損なわれているのは確かです。 パルティータ第二番以外の曲がずっとクリアーに透明感ある音で捉えられているので, なぜ同じように録音しなかったのかと腹立たしくなるほど差があります。 せっかくの美しい音色を台無しにしています。

P.S.

カップリングの他の曲はチェンバロとチェロとのアンサンブルですが, モダン楽器の明るく透明感ある美しい音と,チェンバロとチェロによる通奏低音の古雅な響きが, えもいわれぬ良い雰囲気を出しています。 録音の良さもあり,パルティータ第二番よりもこちらの方が聴きものだと感じました。 こういうバロック音楽がモダン楽器ですっかり演奏されなくなってしまった昨今ですが, モダン楽器ならではの大きな魅力があります。 バロック音楽を古楽器奏者のものだけにしないで欲しい,とそう思ってしまうCDでした。

なお,本CDは秋山鉄さんの「シャコンヌ狂時代」より教えていただきました。 いつも有り難うございます。

(記2009/03/17)


フレデリック・ラロック(Frédéric Laroque)

レーベル Sonogramme
収録曲 全集
録音データ Enregistrement a la Chapelle Royale le 21 septembre 2000.
使用楽器 Guadagnini? (モダン仕様)
所有盤 SNG-07-FL01 (輸入盤)
備考 参考url: Sonogramme

ライヴ録音(拍手まで収録されています)。 確かな技術の下支えの上で自由に積極的にのびのびと表現されています。 ほどよい緊張感を伴いながらも,音楽の喜びが素直に出ていて本当に活き活きしています。 自分の音楽をはっきりと前面に出す,どちらかといえば主張する演奏ですが,節度もあって嫌みがありません。 ライヴとしてはかなり良い出来だと思います。 二部形式の後半のリピートが全て省略されているのは少々残念ですが... でも,こういうモダン楽器らしい演奏,好きです。

録音:

残響が多くしかも残響時間が長いのですが,楽器音がそれなりにしっかりと捉えられており, また,これだけ残響がありながら音色は比較的自然に聴こえる素直な録音のため,何とか許容できます。 高域のヌケがもう少し欲しいところですが。

P.S.

解説書はフランス語,英語,そして日本語でも記載されています(たいした内容は書いていないのですが...)。

(記2009/01/17)


トマス・フェオドロフ(Thomas Fheodoroff)

レーベル ORF
収録曲 全集
録音データ Juni, September 2006, Pfarrkirche Maria Hilf Ob Guttaring
使用楽器 Nicolaus Gaglianus, fecit Nea;oli, 1747 (バロック仕様)
所有盤 ORF CD 3023 (P)(C)2008 ORF ALTE MUSIK (輸入盤)

バロックヴァイオリンによる演奏。 奏法自体は素直で楽器を意識させるような弾き方・表現ではないため受け入れやすいです。 どちらかといえば穏やかで優しく暖かさがあるのが良いところですが, 逆に躍動的ではないためかやや音楽が停滞気味に聴こえる部分もあって, 私としてはこの点が少し残念に思うところです。 技術的には安定しています。

録音:

残響が多く,残響時間も長く,まとわりつきが鬱陶しいのですが, 比較的近距離で直接音主体に捉えているため,残響量が多い割には印象はそれほど悪くありません。 もちろん私の好みの録音ではありませんが,残響を取り入れるならこういうやり方にして欲しいとは思う録音です。

(記2009/01/07)


ノルベルト・ヒルガー(Norbert Hilger)

レーベル querstand
収録曲 全集
録音データ 記載なし(解説書の写真から教会での録音と思われる)
使用楽器 記載なし (モダン仕様) (チェロ)
所有盤 VKJK 0722 (C)2008 querstand (輸入盤)

チェロによる演奏。 演奏者自身の編曲による。 チェロの調弦に合わせ,五度低い調に移調しているようです。

チェロってこんなに低い音が出たんだな...って思いました。 楽器の特性の違いか,伸びやかさはなくゴツゴツとした無骨な演奏ですが, 楽器のハンデをほとんど感じさせません。 健闘しています。 スル・ポンティチェロで弾いてみたり,ピチカートを使ってみたりと,ところどころでやっていますが, 嫌みな感じはありません。 楽器をしっかりと響かせていい音色を出しています。

録音:

少し残響感がありますが,楽器の響きをしっかりと捉えているので, チェロのボディの鳴り感が伝わってきて,どちらかといえば印象の良い録音です。

(記2008/11/29)


荒井英治(Eiji Arai)

レーベル HERB Classics
収録曲 全集
録音データ 30/31 may, 06/07 september, 08/09 november 2007 at Koide-go Cultural Hall in Niigata / Japan.
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 HERB-008/009 (P)(C)2008 HEAB Classics (国内盤)
備考 参考url: HERB Classics

真面目でやや堅い印象ですが,ほどよい緊張感が曲を引き締めています。 しかし,これもソナタ第三番まで。 パルティータ第三番になると様相が一変します。 一言でいうと「ノリ」が全然違う! 特にプレリュード。 これは出色の出来映えに思います。 前の五曲もこのノリでやってくれたら数多の演奏とは一線を画すすごい全集になったんじゃないかと思うのですが... でも前の五曲をノリにノってって...ちょっと想像つかないですね...

弾き方が少しゴシゴシと弦を弓でこすりつけるような感じで音の伸びがもう一つですが, ビブラートを控えめにして和音の音程をきっちり取り美しく響かせているので印象は悪くありません。

録音:

少し残響感はありますが,響きを抑え気味にして楽器音を明瞭に捉えています。 まずまず良好です。 ちょっと距離感があり,もう一歩近寄って直接音比率を上げて欲しいという気はします。

(記2008/11/06)


セルゲイ・アジジャン(Sergej Azizjan)

レーベル CLASSICO
収録曲 パルティータ第三番
録音データ Recording at Vestkirken, Ballerup, July 19, 1994.
使用楽器 不明 (モダン仕様)
所有盤 CLASSCD 114 (C)1995 Olufsen Records (輸入盤)
カップリング曲:Sarasate/Playera Op.23 no.5, Romanza Andaluza Op.22 no.1, Caprice Basque Op.24, Paganini/Concerto for Violin and Orchestra No.2 in B minor "La Campanella"

全くブレない真っ直ぐな演奏。 取れたての新鮮なレタスのように瑞々しくシャキッと,そして苦みというかちょっと青臭さを感じます。 なんの細工もない潔さ,淀みのなさが良い印象につながっています。 技術力も十分にあり,重音の美しさなど特筆に値します。

録音:

残響感が多少あるので明瞭感,音色への影響が感じられ,すっきり感に劣るものの, それでも楽器音を主体に捉えているので,何とか良い印象を保っています。 少し距離感があってこぢんまりした音像で,もう少し近めで捉えても良かったんじゃないかと思います。

P.S.

本CDではラストネームが"Azizjan"(アジジャン)ですが,全曲録音のCDの表記は"Azizian"(アジジアン?)になっています。

(記2008/10/16)


ジェニー・アベル(Jenny Abel)

レーベル PODIUM
収録曲 ソナタ第一番,第三番,パルティータ第二番
録音データ 1979年(ソナタ第一番),1984年(パルティータ第二番),1985年(ソナタ第三番)
使用楽器 不明 (モダン仕様)
所有盤 WOW-001-2 (輸入盤) (ソナタ第一番)
WOW-003-2 (輸入盤) (パルティータ第二番)
WOW-004-2 (輸入盤) (ソナタ第三番)
※併録曲:省略(下記urlを参照)
備考 参考url: PODIUM (WOW-001-2WOW-003-2WOW-004-2)

ライヴ収録ということもあると思いますが,相当気合いが入っています(特にソナタ第一番)。 熱演です。 無傷ではありませんが,気持ちの乗った音色の印象の方が強く,気になりません。

録音:

それぞれ録音の傾向が異なります。 ソナタ第一番は,会場の響きが結構あるものの,楽器音をしっかり捉えているため,聴きやすい音です。 中域に若干癖を感じる音色ですが。 パルティータ第二番は,ものすごい残響(残響時間も長い)の中での録音で,残響のまとわりつきと響きの混濁が鬱陶しく, 音色も全く伸びがなくくすんでしまっています。 ソナタ第三番はそれにもっと輪をかけたような響きに埋もれた録音で,全く良くありません。

(記2008/10/16)


ハルトムート・シル(Hartmut Schill)

レーベル auris subtilis
収録曲 全集
録音データ November 2007
使用楽器 不明 (モダン仕様)
所有盤 as 5021-2000 | 2007 auris subtilis (輸入盤)
備考 参考url: auris-subtilis (CD)

弾き方はモダンですが,音色はどことなくガット弦っぽい(そう聴こえるだけだと思いますが)。 ちょっと頼りなげな線の細さがありますが,アレグロやプレスト楽章などでは意外に小気味よく音楽を推進しています(フーガはちょっと重いかな...)。 全体に軽く明るいところが魅力です。 技術的にも不満はありません。

録音:

ものすごく残響が多く,また残響時間も相当長いです。 響きの混じり合いが半端じゃありません。 これを心地よい響きと感じるか,混沌とした,混濁した鬱陶しい響きと感じるかは聴き手次第とは思いますが。 ただ,直接音成分もそれなりにあるのか,残響が嫌いな私でも意外に聴けてしまいます。

(記2008/10/08)


米谷彩子(Ayako Yonetani)

レーベル Venus Classics
収録曲 パルティータ第一番,シャコンヌ
録音データ PhatPlanet Studios, Orlando, FL, (Ed Krout) 12/2000 (Partita No.1), Dom umenia, Kosice, Llovakia, (Gejza Toperezer, Rudolf Hentsel) 5/2008 (Others)
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 825 346-5528 (C)(P)2008 Venus Classics (輸入盤)
カップリング曲:ブルッフ/ヴァイオリン協奏曲第一番ト短調作品26(Zbynek Muller, conductor, The Slovak State Philharmonic of Kosice)
備考 参考url: CD Baby

その人の表現力の限界の枠というのがあったとして,その枠いっぱいいっぱいまでがんばった, そんなイメージが浮かんでくる熱演。 大ホールで隅々にまで行き届かせるようなきつめの発音なので,たった一曲なのに聴いた後はものすごく疲れます(これは録音の問題か)。 これに比べるとシャコンヌは随分落ち着いた印象です。

録音:

残響感はそれほどないのですが,反射音が大きいのか,音がダブったように濁って聴こえます。 透明感に欠け,高域の伸び感も今ひとつであまり良い印象を受けません。 遠くの人にまでしっかりと音を届けようというようなきつめの発音を比較的近いイメージで捉えている点も, 演奏と録音のミスマッチのように感じられます。 一方,シャコンヌは音の濁りはあまりなくこの点は良いのですが,こちらも高域のヌケが良くなく, すっきりしません(こちらの方が若干良いようには思いますが)。 このCDの中ではブルッフが一番録音が良いように思います。

(記2008/09/30)


ジェームズ・エーネス(James Ehnes)

レーベル ANALEKTA
収録曲 全集
録音データ Recorded on November 7, 8, and 9, 1999 and June 8, 9 and 10, 2000 at Église Saint-Augustin
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 ANALEKTA FL 2 3147-8 (輸入盤)
備考 参考url: 公式WebサイトANALEKTA (FL 2 3147-8)

ものすごく巧い! 技術的な余裕度がすごく大きい! この技術力を活かした力強く自在でニュアンス豊かな表現,音程の正確さから生み出される濁りのない美しい響きが実に素晴らしい。 奇をてらわない真っ当な演奏で,モダン楽器の醍醐味が堪能出来ます。

録音:

残響が多く,しかも残響時間がとても長いので,まとわりつきが鬱陶しく音色もくすんでいるので私としては好きではありませんが, 音の輪郭はぎりぎり確保されているので,何とか許容範囲と言えます。 残響の許せる方なら悪くないかもしれません。

(記2008/09/30) 2回目
(記2002/09/20)(2002/09/30)


ティム・フェイン(Tim Fain)

レーベル Image Recordings(自主制作?)
収録曲 パルティータ第二番
録音データ Recorded at Sprague Hall, New Haven, CT
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 IRC 0810 (C)(P)2008 Image Recordings (輸入盤)
カップリング曲:Kevin Puts/Arches, Randall Woolf/No Axe To Grind, Mark O'Conner/Caprice No.6, Daniel Ott/Double Aria
備考 参考url: 公式WebサイトImage RecordingsCD Baby

なかなかキレのある演奏をします。 技術の冴えに胸のすく思いがします。 もう少し色気があってもいいのにと思うのですが,これはこれで彼のキャラクターなんでしょう。 聴く前は少し心配でしたが(^^; なんのなんの,これはちょっとした掘り出し物でした。

録音:

残響感が少なく,楽器音を明瞭に捉えた好録音です。 高域の伸び感も十分にあります。 ヘッドホンで聴くとちょっと刺激が強すぎて耳が痛くなるくらいで, もう少し適度な距離感が欲しかったかなとは思いますが。 でも私の好きな録音です。

(記2008/09/24)


ミヒャエル・ヴァイマン(Michael Vaiman)

レーベル DUX
収録曲 全集
録音データ Recorded at Schloss Gottesaue, Karlsruhe, Germany, March-April 2006.
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 DUX 0610/0611 (C)2008 DUX (輸入盤)
備考 参考url: DUX (0610/0611)

無理なく丁寧に演奏されており, 引き締まっていながらも全体には穏やかで聴き手に緊張感を強いません。 音色もなめらかで美しく,技術的にもそつがありません。 どちらかといえば大人しい演奏なので少々印象に残りにくいところはありますが...堅実な好演奏です。

録音:

少し残響を伴っており,その量は多くないですし残響時間もそれほど長くはないのですが, どことなくヌケの悪さを感じるすっきりしない録音です。 というほど悪くはないのですが,私としては少し不満があります。 時折バックグラウンドに変な付帯音が聞こえるのも気になります。

(記2008/09/18)


ヘンリク・シェリング(Henryk Szeryng)

レーベル SONY
収録曲 全集
録音データ 1955年
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 MP2K 46721 (P)1965 Sony Music Entertainment Inc. (C)1991 Sony Classical GmbH (輸入盤)

まさに王道をいく演奏! 2回目の全集のような境地にまでは達していないとしても, それでも,その到達点,充実度は他の多くの演奏の一段上を行っていると思います。 異論はいろいろとあろうかと思いますが,やはり別格,すごいです。 巨匠らしい風格があります。

録音:

モノラル録音ですが,どうやら疑似ステレオ処理されているようです(LRのリサジュー波形を見ると位相処理がなされているであろうことがわかる)。 ヘッドホンで聴くと音像が広がったり,本当にモノラルになった感じがしたり,と聴き苦しさを感じます。 また,全体に高域のレンジ感がなく,抜けが悪くこもっていて印象が良くありません。 マスターの状態があまり良くないのか,部分的にこもったりふらついたりします。

肝心の録音の方ですが,やや残響が多めに取り込まれているため,ここでも明瞭感を悪化させ,音色を損なっているように感じられます。 パルティータ第三番だけが若干マシです。

P.S.

CDの解説書には"Recorded:1965"と書かれていますが,1955年の間違いだと思います。

(記2008/09/18) 2回目
(記2002/07/26)(追2002/10/04)


大谷康子

レーベル 自主製作? (Sony Music Direct)
収録曲 パルティータ第二番
録音データ Recorded at Hamarikyu Asahi Concert Hall, Tokyo. Recording Date: July 07, 2006.
使用楽器 ピエトロ・グァルネリ 1708年製 (モダン仕様)
所有盤 SSCX 10305 (P)(C)2008 Yasuko Ohtani Manufactured by Sony Music Direct (Japan) Inc. (国内盤)
アルバムタイトル:深紅(あか)のシャコンヌ
カップリング曲:プロコフィエフ/無伴奏ヴァイオリンソナタニ長調作品115, クライスラー/レチタティーヴォとスケルツォ・カプリス作品6, テレマン/12のファンタジーより第一番,第五番
備考 参考url: 公式Webサイト

渾身のバッハ! 熱い演奏ながら勢い任せに走らず,一音一音に思いを込めて確かめるように丁寧に弾いています。 表現もストレート,技術的にも安定していて好印象です。 音色は力が入りすぎてややきつい感じがしますが,大きなホールの隅々にまで音を行き渡らせるような弾き方をされているためかもしれません。

録音:

ライヴ録音と記載されていますが,拍手は入っておらず,観客のノイズも感じられません(演奏者の足音?は入っていますが)。 残響時間はそれほど長くありませんが,少し多めに取り込まれているため,明瞭感が今ひとつ, 高域の抜けも悪く,全くすっきりしない,そして少々暑苦しい息の詰まるような録音です。

それにもかかわらず,かなりきつい音に感じられます。 前述したような大ホールの隅々にまで音を行き渡らせるような弾き方の音を, 比較的近くで捉えているためではないかと思います(それでも少し距離感はあるのですが)。 弾き方と録音のミスマッチがあるのではないでしょうか。 録音レベルが高めという点だけは印象が良いのですが。

(記2008/08/15)


ウィンサム・エヴァンス(Winsome Evans)

レーベル Celestial Harmonies
収録曲 全集
録音データ Recorded at the Music Department, The University of Sydney (2006年?)
使用楽器 Alastair McAllister, Melbourne, Australia (チェンバロ)
所有盤 14268-2 (P)2007 Celestial Harmonies (輸入盤)
備考 エヴァンス氏はオーストラリアの女流チェンバロ奏者。
参考url: Celestial Harmonies (14268-2)

チェンバロによる演奏。 演奏者自身の編曲による。 CDの最初に収められているパルティータ第三番のド派手な編曲,威勢のよい演奏が圧巻! かなりたくさんの音符の追加があります。 これはもう紛れもないチェンバロ曲。 ここまで大胆にやるとは立派。 原曲のヴァイオリンによる演奏とはかなりイメージが異なりますが,これはこれで大変面白いと思います。

録音:

響きがかなり多く取り込まれ,明瞭感も音色も良くありません。 コンクリートで囲まれた狭い閉鎖空間に押し込められて聴かされているような息苦しさを感じます。 全く私の好みではありません。 また,グジュグジュした歪み(ダイナミックレンジを無理矢理圧縮したときのような)を感じるところもあり, オーディオ的なクオリティも良くありません。 ちょっとひどいと思います。

(記2008/08/15)


レジ・パスキエ(Régis Pasquier)

レーベル harmonia mundi France
収録曲 全集
録音データoctobre/novembre 1981
使用楽器 Montagnana, Venise 1742 (モダン仕様)
所有盤 HM 1085/87 (P)1982 harmonia mundi (輸入盤) (*LP)

遅めのテンポで真摯にじっくりと弾き込んでいます。 その丁寧で折り目正しい弾き方に好感を持ちます。 推進力があまりないため,その面では少し物足りなさが残りますが, この演奏にそういうところを求めること自体が間違っているかもしれません。

録音:

少し残響感を伴っており,しかも残響時間が若干長めのため,ややまとわりつきが気になるものの, 楽器音を主体に捉えており,明瞭感もそこそこあって印象は悪くありません。 高域の抜けがもう少しあれば良かったのですが。

P.S.

この貴重なLPも,いつもお世話になっているT.Y.さんのご厚意により聴かせていただくことが出来ました。 有り難うございました。

(記2008/07/17)


ウート・ウーギ(Uto Ughi)

レーベル BMG
収録曲 全集
録音データRecorded in Siena, Sala Scarlatti/Beccafumi Accademia Musicale Chigiana: April 7-10, 1991; June 14-17, 1991, September 9-13, 1991.
使用楽器 Giuseppe Guarneri Del Gesu', 1744 (モダン仕様)
所有盤 BMGCD-9H75-09026-60971-2 (C)1993 BMG Music (P)1991 BMG Music Distributed by BMG (Han Kook) Music Co., Ltd. (輸入盤)

演奏は至極オーソドックス,丁寧で均整が取れています。 派手さはありませんが,充実感のある深い,そして少し甘美な音色が素晴らしいです。 音の流れのなめらかさ,ニュアンスの豊かさはさすがです。 インパクトのある演奏ではありませんが,聴くほどに味わいが深まります。

録音:

やや残響感があり,高域の抜けが悪く,また音色も少し影響を受けていますが, 楽器音主体に捉えられているので,何とか許容範囲というところです。 ソナタ第一番のフーガでは,音像のふらつきがあったり,最後の方で突然逆位相になったり, ブツブツというノイズが入ったりと,明らかにおかしい部分があります。

(記2008/07/12) 2回目
(記2002/12/27)


ウート・ウーギ(Uto Ughi)

レーベル SONART (Stradivarius)
収録曲 全集
録音データRecorded in Siena, Sala Scarlatti/Beccafumi Accademia Musicale Chigiana: 9-13 settembre 1991(BWV1001,1002), 14-17 giugno 1991(BWV1003,1006), 7-10 aprile 1991(BWV1004,1005)
使用楽器 Guarneri Del Gesu', 1744 (モダン仕様)
所有盤 FPAP 005-006 (C)2005 (P)2005 Uto Ughi (輸入盤)

BMG盤と同じ演奏。 解説書は五カ国語で日本語もあります。 オリジナル(BMG盤のこと?)からわずかに修正を加えているということです。 解説書に次のような記載があります。 「オリジナル録音は,技術上の問題を取り除くため,また雑音を取り除くために僅少の修正が加えられています。 演奏家の要望で,シャコンヌだけに僅かな修正を加えた以外,録音時の音響の特性はそのままに保たれてあります。」

実際にBMG盤と比べてみると,音のレベルが約3dBほど上がっているほか, ソナタ第一番(特にフーガ)の音像のふらつき,突然逆位相になったりする感じは緩和されています(ブツブツというノイズは緩和されていませんでした)。 基本的な音質は変わりないように感じました。 シャコンヌについてもどの部分がどう変わっているかはわかりませんでした。 明らかな不具合は何とかして欲しかったのですが,修正困難だったのでしょうか。

(記2008/07/12)


五嶋みどり

レーベル Sony Classical
収録曲 ソナタ第二番
録音データRecorded August 22-23, 2005 at Mechanics Hass, Worcester, Massachusetts.
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 82796-97745-2 (P)(C)2007 SONY BMG MUSIC ENTERTAINMENT (輸入盤)
カップリング曲:Bartok/Sonata No. 1 Sz. 75, BB84
備考 参考url: 公式Webサイト

これはとてももう言葉では言い表せません。 無限の静寂の世界に,静かに深く染み渡っていく音楽... こんな視覚的なイメージが想起されるバッハは滅多にありません。 ある意味非常にドラマティックなのですが,あくまで内面的で奥深く,いわゆる「個性的表現」とは次元が違うように感じます。 感動しました。

録音:

やや残響が多め,残響時間が長めで,抜けの悪さ,音色のくすみ,まとわりつきが気になるものの,何とか許容範囲です。 音にきめの細かさが感じられ,オーディオ的なクオリティの良さは感じられます。 もう少し直接音主体に捉えて欲しかったと思います。 私の好きな録音ではありませんが,残響の許せる方なら悪くないかもしれません。

P.S.

芸術家としての新たな境地への一歩を踏み出したと感じさせる感動的な演奏でした。 ちょっと誉めすぎかもしれませんが... ぜひ全曲録音を!

(記2008/07/05)


緒方愛子

レーベル NGE(自主制作)
収録曲 ソナタ第一番,パルティータ第二番
録音データJuly 13-15, 2005, 福岡市タオホール
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 NGE-003 (国内盤)
カップリング曲:イザイ/無伴奏ヴァイオリンソナタ第二番ホ長調,太田哲也/無伴奏ヴァイオリンの為の詩歌 2005
備考 緒方氏は,現在シュレスヴィッヒ・ホルシュタイン州立歌劇場コンサートマスター。

真面目で節度のある演奏ながら,同時にライブのような熱気も感じられます。 一つ一つの音に込められた誠実な思いに素直に共感できる好演奏です。

録音:

やや距離感があり,残響というより主に初期に近い反射音成分が多く,明瞭感はもちろんのこと,音色もかなり濁ってしまっています。 楽器音が鳴るたびに「シー」という付帯音が聞こえるのも印象を悪くしています。 良いマイクポジションが確保できなかった生録のような感じです。 録音環境の雰囲気はそれなりに伝わってくるのですが...

P.S.

本CDは秋山鉄さん(シャコンヌ狂時代)から教えていただきました。 いつも有り難うございます。 ヤマハミュージック九州福岡店委託CD紹介コーナーで取り扱いがあります(通販可)。

(記2008/07/05)


イリヤ・カーラー(Ilya Kaler)

レーベル NAXOS
収録曲 全集
録音データRecorded at St. John Chrysostom Church, Newmarket, Canada, 19-22 July 2006 (Sonatas) & 1-4 February 2007 (Partitas)
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 8.570277-78 (P)(C)2008 Naxos Rights International Ltd. (輸入盤)
備考 参考url: ウィキペディア

テクニックが際立っています。 淀みのない自信に満ちた表現, 往年の巨匠を彷彿とさせる風格があります。 どちらかといえばオーソドックスで,やや古めかしく新鮮味に欠けるところはあるかもしれませんが, 立派な演奏には違いありません。

録音:

たっぷりと残響を取り込み,また残響時間も長いため,かなり鬱陶しく感じられます。 明瞭感も良くありませんし,当然音色への影響も大きく出ています。 残響量の割りにはマシかもしれませんが,私としてはほんのわずかに許容範囲を越えており,印象が良くありません。

(記2008/07/05)


ジャニーヌ・ヤンセン(Janine Jansen)

レーベル DECCA
収録曲 パルティータ第二番
録音データSt Martin's Church, East Woodhay, Hampshire, 6-7 August 2007
使用楽器 "Barrere" by Antonio Stradivari (Cremona, 1727) (モダン仕様)
所有盤 475 9081 (P)(C)2007 Decca Music Group Ltd. (輸入盤)
カップリング曲:The 15 Two-part Inventions, BWV772-786 (Played on violin and viola), The 15 Tree-part Inventions (Sinfonias), BWV787-801 (Played on violin, viola and cello)
備考 参考url: 公式Webサイト, ユニバーサル・ミュージック

堂々としていて芯が強い。 音楽に力があります。 しかし,力まかせにならずセンス良くスマートに聴かせるところなどなかなか上手いと思います。 テクニックも十分,密度の高い響きを生み出す柔軟で神経の行き届いた弓使いも素晴らしいです。 弓の圧力が高いのか,音色に伸びがなくつぶれ気味に聴こえるのが惜しいと思います(録音が悪いせいかもしれませんが...)。

録音:

少し距離感があります。 残響時間はそれほど長くないのですが,楽器音に中域の響きが被って明瞭感,楽器音の質感を大きく損なっており, 音色も抜けが悪く全く良くありません。 くぐもった音色にイライラが募ります。 この録音では,響きは鑑賞の邪魔をするばかりで音楽的にもオーディオ的にも何の役にも立っていません。

と書きましたが,まあそんなに無茶苦茶ひどいことはありません。 これがDECCAの録音とは...と思うとちょっと辛口になってしまいました。

(記2008/04/18)


アンジェル・ヴァルチノフ(Angel Valchinov)

レーベル Orpheus Violin House (自主制作)
収録曲 ソナタ第二番,パルティータ第二番
録音データ記載なし
使用楽器 Hristo Tchechmedjiev 1998年製 (モダン仕様)
所有盤 Orpheus Violin House 2004 自主制作 (輸入盤) (CD-R)
備考 参考url: 公式Webサイト, Orpheus Violin House(CD's)

力強い,気合いの入った発音, ストレートで自信に満ちた表現が好印象です。 気を惹く器用さはありませんが,一途な姿勢がよく伝わってきます。 技術的には,もう少し細部を練り上げて欲しいかなと思いますが,些細なことかもしれません。

録音:

これは本当に驚きの録音! これぞ私の求めていた理想的・完璧な録音と,ほとんど言い切ることが出来ます。 残響は皆無(本当に全くない!),環境雑音も皆無,楽器音を邪魔するものは何もありませんし,音色への味付けも一切ありません。 距離感もほぼ適正です(決して「松脂の飛び散る音が聞こえる」ほど極端ではありません)。 生々しく,眼前で弾いてもらっているような録音で,一般的なホールでの録音とは全く違う次元の音が目の前に現れます。 これはすごい!!

なぜかモノラルであり,ほんのわずかにクリップして歪んでいるのが本当に残念です(ほとんど気にならないレベルですが)。 一体どんな環境で録音されたのか,ちょっとわからないのですが, 放送用のスタジオでアナウンス用のマイクで録音したような,そんな感じがします。

で,この理想的な録音に始めて出会ってみての感想。 やっぱりいい! やっぱりこの音で聴きたい! と心底思いました。 ただ,このような録音は鑑賞には向かないように言われていますが,確かにその通りかもしれないな,と思ったのも事実。 それでも私はこの録音は好きですし,同じように思う人も少なからずいると信じています(オーディオマニアでなくとも)。 (でも絶対大手レーベルからはこんな録音は出ないだろうなぁ...と思います)

P.S.

本CDも小説家秋山鉄さんのWebサイト「シャコンヌ狂時代」で知り入手できました。 有り難うございました。 (しかし,秋山さんの紹介文の中では,「残響を多めに取りこんでいるが」という記載があります。なぜ...?)

(記2008/03/12)

秋山さんからメールをいただきました。 有り難うございます。 秋山さんの持っているものは明らかに残響があり,しかもステレオであるとのことです。 なぜ内容が異なるのかよくわかりませんが,何らかの理由で途中から差し替えられたのではいかと思われます。 あるいは,CD-Rなので焼くものを間違えたのか... もしそうだとしても私にとってはラッキーだったと言えるでしょう。

(記2008/03/15)


ヴェラ・ヴァイドマン(Vera Vaidman)

レーベル 自主制作
収録曲 全集
録音データRecorded at a concert on 21 March 1999, Clairmont Hall, S. Rubin Academy of Music, Tel Aviv University.
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 自主制作 (輸入盤) (CD-R 2枚組)
備考 参考url: 公式Webサイト

緊張感のあるひたむきな演奏で,ソナタ第一番はやや抑え気味ですが, 徐々にライブらしい熱っぽさを帯び,シャコンヌで頂点に達しています。 ソナタ第三番以降は少し疲れが見えるものの,最後まで集中力を持続しています。 音に粘りと伸びがあり,和音の響きも美しく,控えめながらも表情豊かな音色が大変魅力的です。 バッハの誕生日に一日で全曲を演奏されたようですが,ライヴでこの演奏は立派です。(多少の傷はありますが...)

録音:

ホールの響きを少し伴っており,距離感も感じるものの,楽器音を明瞭に捉えており,印象はそれほど悪くありません。 音色は響きの影響を受けて多少抜けの悪さにつながっていますが,何とか許容範囲です。

曲間でブツッというノイズが入ることがあったり(パルティータ第一番), 曲の終わりで音が消える前にフェードアウトし拍手をつなげてしまっている(ソナタ第二番),など, 編集上の問題があるのが少々残念です。 また,もう少し会場の雰囲気を感じさせる雑音などの小さな音が聞こえていても良いはずなのに,ほとんど聞こえないため, 逆に不自然な感じがして妙な息苦しさを感じます(気のせいだとは思うのですが,微少レベルがカットされているような感じです)。

P.S.

本CDは,小説家秋山鉄さんのWebサイト「シャコンヌ狂時代」で知りました。 有り難うございました。 CDは,ヴァイドマン氏の公式Webサイトに記載のメールアドレスに連絡して送ってもらいました。 1セットUS $25(送料込み)でした。

(記2008/02/06)


ネル・ゴトコフスキー(Nell Gotkovsky)

レーベル RCA
収録曲 全集
録音データ1978年,1979年,1980年
使用楽器 G. B. Guadanini(1770) (モダン仕様)
所有盤 RCA RL 37406 (輸入盤) (*LP 3枚組)

キリッと引き締まったストレートで端正な秀演。 アクセントが丁寧で柔らかく,音色がニュアンス豊かで気品が感じられます。 技術的にも安定感があります。 どちらかといえば生真面目で地味ですが,素直に良いと思える演奏です。 二部形式の後半のリピートが全て省略されているのが残念です。

シャコンヌの中間部の終盤(201~208小節)の和音の弾き方ですが,一般的には分散和音的に弾きますが(私の持っている楽譜でもarpeggioと書いてある), この演奏では通常の重音のように弾いています。 このような弾き方は始めて聴きました。

またパルティータ第一番AllemandeのDoubleは,後半のリピートが省略されているにもかかわらず6:13という遅さです(ちなみにシェリングは同じリピート省略で2:03!)。 これがこの曲の本来のテンポではないとは思うのですが,それでも弛緩せず聴かせるところなど,なかなかの実力者だと実感します。

録音:

やや響く環境下での録音ですが,楽器音主体に捉えているため明瞭感は良好で,印象は悪くありません。 とはいえ残響のまとわりつきと音色への影響は少々気になるレベルです。 録音が三年にわたっていますが,ばらつきはあまり感じられません。

P.S.

いつもお世話になっているT.Y.さんのご厚意によりこの貴重なLPを聴かせていただくことが出来ました。 有り難うございました。 いつかCDで復刻されることを期待します。

(記2008/01/14)


アレクサンダー・シュナイダー(Alexander Schneider)

レーベル MERCURY
収録曲 全集
録音データRecorded 1949 at Reeves Sound Studios, New York City.
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 MG10017-20 (輸入盤) (*LP 4枚組)
備考 シュナイダー氏は,ブダペスト四重奏団の第二ヴァイオリン奏者としても活躍されていたとのこと。

もうひたすら真面目でひたむきです。 小細工のないストレートで,かつ,引き締まった表現に好感を持ちます。 個性を前面に出す演奏ではないためか,かなり昔の演奏にもかかわらず古さはあまり感じません。 パルティータ第二番まではかなり良いのですが,ソナタ第三番で少々技術面での綻びが散見されます。 健闘されているのですが...ちょっと残念です。

録音:

古いLPなので,この音質はいかんともし難いものがあります。 しかし,帯域は狭いのですが,音の捉え方自体は悪くないので,鑑賞には十分堪えます。 編集の跡がはっきりわかってしまう不自然さが時折みられるのが残念ですが,当時の技術や機材のことを想像すると仕方ないかなとも思います。

P.S.

この貴重なLPですが,いつもお世話になっているMさんとT.Y.さんのお二方のご厚意により聴かせていただくことが出来ました。 有り難うございました。

(記2007/12/27)


ララ・セント・ジョン(Lara St. John)

レーベル ANCALAGON
収録曲 全集
録音データRecorded at Skywalker Sound, A Lucasfilm Company, Marin County, California; August 28-30, 2006, January 2-4, 2007.
使用楽器 Guadagnini "Salabue" 1779 (モダン仕様)
所有盤 AR 132 ANCALAGON (輸入盤)
SACDハイブリッド盤(SACD 5.0/SACD Stereo/CD Stereo)
備考 参考url: 公式Webサイト

これはかなり挑戦的(挑発的?!)です。 弱音を巧みに使った緩徐楽章から,アグレッシブに攻める急速楽章まで, 緩急や強弱を絶妙に織り交ぜつつ,ここまでやるかぁ...というくらい大胆です。 楽節や楽章の終わりから次に向かって飛び込んでいくやり方などを含め, いろいろな面で特徴があって,とにかく面白い。 (でも,ピッチが上擦らんばかりの強奏音はやりすぎじゃないか...)

とまあ特異な面に目が行きがちな演奏ですが,技術はしっかりしていますし, ニュアンスも豊かで,何より伸びやかで充実感に満ちたサウンドが素晴らしく思います。 楽器を気持ちいいほどに良く鳴らしています。 ただ,洗練されたスマートな演奏を期待していた私としては,やや下品な方向に走ってしまったところが大いに不満なのですが(^^;。

録音:

ルーカスフィルム社のスカイウォーカーサウンドという,おそらくスタジオでの録音。 残響感はそれほどありませんが,マイク位置がやや遠めなのか,反射音成分の被りが感じられ, 抜けが悪く鮮明さのない音質になってしまっています(直接音声分よりも反射音成分の方が多く感じられる)。 残響に汚されていないだけましで,目くじらを立てるほど悪くはないのですが,苛立ちを感じるのも事実。 せっかくのスタジオ録音(?)なのにこの音の捉え方は全くもってもったいないとしか言いようがありません。 残念です。 (以上,SACD Stereoでの試聴)

(記2007/11/20)


豊田耕兒

レーベル Victor
収録曲 全集
録音データ1971年4月20~30日 川口市民会館
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 NCS-591-592 (P)(C)2007 Victor Entertainment, Inc. (国内盤)
タワーレコード企画盤(TOWER RECORDS VICTOR HERITAGE COLLECTION Vol.III "豊田耕兒の芸術" (オリジナルはLP Victor VX-70/72)
備考 参考url: TOWER RECORDS

緩急強弱の変化はほとんどありません。 ひたすらに高い緊張感を維持した,普遍性を追求するかのような精神性を感じさる演奏です。 確かに模範演奏的で,かつ,時代を感じさせるスタイルではありますが,決して単調でも退屈でもありません。 気合いのこもった音楽にただただ圧倒されるばかりです。 演奏上の傷は散見されるものの,この演奏の価値を落とすものではありません。

録音:

ホールでの録音ですが,直接音比率が高く,残響はわずかに感じられるものの, 楽器音にはほとんど影響を及ぼしておらず,極めて明瞭感の高い,そして楽器の質感がよく感じられる素晴らしい録音です。 とはいえ,わずかながら付帯音が感じられること, オーディオ的なクオリティとしてのクリアさが今一歩であること(マスターテープの劣化も多少感じられる),など本当に惜しいと思います。

音の捉え方としてはほとんどこれ以上望めないと思うくらいですが, このような音の捉え方をするなら,いっそのことスタジオでもっとクリアに録音して欲しかったと思います。 ホールで録音する意味があまり感じられません(わずかに感じられる響きはプラスに働いていない)。

と,少し不満を書きましたが,最近聴いた録音の中では飛び抜けて良いことには変わりありません。 残響のない録音がいかに素晴らしいかを再認識させてくれます。

(記2007/11/01)


渡辺玲子

レーベル TELDEC
収録曲 ソナタ第一番,第三番,パルティータ第二番
録音データ2000年12月,2001年2月,秩父ミューズパーク音楽堂
使用楽器 ストラディバリウス Engleman(1709) [日本音楽財団より貸与] (モダン仕様)
所有盤 WPCS-11101(8573-86404-2) (P)(C)2001 WARNER MUSIC JAPAN INC. (国内盤)
備考 参考url: 梶本音楽事務所

ビブラートを深めにかけた濃厚で気持ちのこもった音色が特徴で,全編,真摯で厳しい姿勢が貫かれています。 バッハ,あるいはバロックを意識した奏法は取られておらず, 自分が最も力を発揮できるやり方で演奏した,というように受け取りました。 不器用だけど(失礼...決して悪い意味ではないです)真面目で一途な日本人らしい演奏だなと思います。

録音:

残響過多の録音で(残響時間も長め),少し距離感があることもあり, 楽器音に大きく被って明瞭感,質感を大きく落としています。 楽器音のエッジは辛うじて感じられるので何とか許容範囲ではありますが, 残響のまとわりつきが鬱陶しく,雑味が混じって音色がくすんでしまったこの録音は, 全く私の好みではありません。 せっかくのいい演奏に何てことしてくれるんだ,と残念でなりません。

(記2007/11/01) 2回目
(記2002/05/15)


フリードマン・アマデウス・トレイバー(Friedemann Amadeus Treiber)

レーベル PODIUM
収録曲 ソナタ第一番,第二番,パルティータ第二番
録音データ1993年?(パルティータ第二番),1997年(ソナタ第一番,第二番)
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 WOW-002-2 (P)(C)1993 Friedemann Amadeus Treiber (輸入盤) (パルティータ第二番)
WOW-005-2 (輸入盤) (ソナタ第一番,第二番)
※併録曲:省略
備考 参考url: PODIUM (WOW-002-2WOW-005-2)

全体にテンポが速めで,かつ,起伏が大きく情緒に訴える傾向の強い演奏です。 緩徐楽章では要所要所に装飾が取り入れられています。 少し癖がありますが,演奏者の領域に聴き手を引き込む技術力・表現力が十分にあります。 好きかどうかは別にして,かなり楽しめます。 些細なことですが,ソナタ第一番のアダージョとフーガで,それぞれ一カ所,和音の音程が違うところがあり(半音高い音がある), そこを聴く度に少々違和感を感じます。

録音:

それぞれかなり録音状態が異なります。 パルティータ第二番は,まるでカセットテープの転写のようなエコーが聞こえます。 自然な残響なのか人工的なものなのかわかりませんが,かなり鬱陶しく感じます。 ソナタ第一番は,残響量がかなり多く,また楽器音への被りも多くて明瞭感が良くありません。 ソナタ第二番も同傾向ですが,第一番に比べると幾分ましです。

全体に残響過多で明瞭感が良くないのは共通しており,さらにモノラル気味(ソナタ第二番だけ完全モノラル)で, さらに印象を落としていると思います。 (モノラル自体が悪いわけではないのですが,楽器音と残響との聴感上の分離が悪い要因の一つになっているように感じます)

(記2007/10/09)


桐山建志

レーベル ALM Records
収録曲 全集
録音データ 2002年7月2日-7日(BWV1001),2002年7月5日-6日(BWV1005),2003年9月10日-11日(BWV1006),2004年8月17日-18日(BWV1002),2005年3月31日/2006年2月6日-8日/4月27日-28日(BWV1003,1004),山梨市花かげホール(旧牧丘町民文化ホール)
使用楽器 Minoru Sawabe, 1991 Tokyo (Model: J. Guarneri "Del Gesu" Cremona 1740) (バロック仕様)
所有盤 (Vol.1) ALCD-1048 (P)2003 (ソナタ第一番を収録)
(Vol.2) ALCD-1054 (P)2003 (ソナタ第三番を収録)
(Vol.3) ALCD-1065 (P)2004 (パルティータ第三番を収録)
(Vol.4) ALCD-1072 (P)2005 (パルティータ第一番を収録)
(Vol.5) ALCD-1087,1088 (P)(C)2006 (ソナタ第二番,パルティータ二番を収録)
ALM RECORDS / Kojima Recordings, Inc. (国内盤)
備考 『この全5巻シリーズは,ヨハン・セバスティアン・バッハの作品として今日に伝えられる「ヴァイオリンとオブリガート・チェンバロのためのソナタ」全6曲「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」全6曲と,そのチェンバロまたはリュートのための編曲版, および「ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ」全2曲をひとつの大きなまとまりの中でとらえてみるべく計画された。』とあります。(Vol.1解説書より)
参考url: 公式Webサイト?

バロックヴァイオリンによる演奏ですが,奏法および表現はモダン楽器的で, バロックヴァイオリンでの演奏を聴いているという感じがほとんどしません。 全体に速めのテンポで推進力があります。 起伏は控えめで粘らず歌い込まず,どちらかと言えば,淡泊な印象です。 技術的にも隙がありません。 楽器の能力以上にドライブしようとしているような,締め付けられるような苦しげな音色に聴こえる時があるのが少々残念に思います。 これならモダン楽器で伸び伸びと開放感ある音色で演奏して欲しかった...と思うのは私だけでしょうか?

録音:

残響の取り込みがやや多めで,楽器音を主体に捉えつつも残響が被って精彩を欠いたすっきりしない音色になってしまっているのが残念です。 音の捉え方自体は悪くないとは思うのですが。 録音が多年にわたっており,多少のばらつきはありますが,全体の印象はそれほど変わりません。

(記2007/09/26) Vol.3-5を追加し全集盤扱いで記載
(記2004/02/06) Vol.2追加に伴い加筆修正
(記2003/11/05) Vol.1掲載


モーリス・スクラール(Maurice Sklar)

レーベル Maurice Sklar Ministries
収録曲 全集
録音データ1999年9月~12月
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 (写真上) 品番なし (P)(C)2004 Maurice Sklar Ministries, Inc. (輸入盤) (CD 3枚組)
(写真下) 品番なし (P)(C)2000 Maurice Sklar Ministries, Inc. (輸入盤) (カセットテープ2本組)
備考 参考url: 公式Webサイト

極めてオーソドックスな路線。 全曲で約162分(CD2枚に収まらない!)というゆったりした演奏ですが,弛緩したところなど微塵もない充実した内容で, 謙虚な態度で臨む真摯で意欲的な演奏でありながら,厳しさに走らず,じわっと心に染み込んでいくような温かさが実に素晴らしいです。 こういうのが本物の「個性」なんじゃないだろうかと思います。 一部の急速楽章や難しいところでわずかに崩れることがあり,技術的に全く不満がないわけではありませんが, 逆に巧い(表現力がある)と感じるところも多くあり,全体的には技術面でも好印象です。

録音:

良く響く環境下での録音で,残響時間は少し長めです。 ただし,オンマイク気味での録音のため残響の影響は最小限で,楽器音を明瞭に捉えた好録音です。 私としては残響の多い環境での録音という点が不満で,残響のない環境で録音して欲しかったという気持ちには変わりありませんが, 残響を多く取り込んだ録音としては明瞭感も解像感も良く,楽器の質感をなかなかよく捉えており, 残響を取り込むなら,こういう音の捉え方をして欲しい,というお手本のような録音です。 残響の取り込みがやや多いということでとしましたが,実際のところの印象は実はもっと良いです。

印象は,CD,カセットテープともほとんど変わりません。 メディアの性能云々以前に,その素材となる音をいかに良く捉えるかの方がはるかに重要である,ということを再認識させられる録音です。

P.S.

CDとカセットテープで(C)の年が異なりますが,同じ演奏でした。 カセットテープには立派な解説書が付属していましたが,CDの方は,裏面に曲目リストが載ったカバーピクチャ1枚だけで, ちょっと寂しくなったのが残念です。

こちらの頁によると, 当初音楽家としての道を歩み,その後,クラシック音楽を通して神に仕えていく聖職者への道に進まれたようです。 解説書によると,ジュリアード音楽院やカーティス音楽院で学び, イヴァン・ガラミアンやドロシー・ディレイに師事して研鑽を積まれたとあります。 「シャコンヌをガラミアン先生の前で演奏した歳,涙を浮かべて素晴らしい演奏だった,と言葉をかけて下さったが, その三日後に心臓発作で亡くなられた。」という逸話も紹介されています。

この演奏を見つけた当初(2003年末頃),CDが品切れということで,カセットテープでも良いとお願いしていたところ, 約1年後に入手することが出来ました。 最近になってCDをオーダーしたのですが,これも入手までに約半年かかりました。 メールでの問い合わせに対する反応は悪く,すごく心配になってしまうのですが,最終的にはきちんと対応してくれています。

(記2007/09/26) CD追加と再レビュー
(記2004/01/16)


二村英仁

レーベル Sony
収録曲 ソナタ第三番
録音データ2001年5月22日 ソニー・ミュージックスタジオ
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 SRCR 2721 (P)(C)2001 Sony Music Entertainment (Japan) Inc. (国内盤)
タイトル:「時空(とき)をこえて(From the Past to the Present)」
併録曲:省略
備考 二村氏は,日本人で初めてユネスコが認定した『アーティスト・フォー・ピース(平和芸術家)』の称号を与えられたヴァイオリニストとのこと。
参考url: 公式Webサイト

キレのある大変威勢のいい,そして極めて個性の強い演奏です。 ヴィブラートをたっぷりかけ,ポルタメントやフラジオレットまで織り交ぜ,個性を色濃く出しています。 バッハを自分側にぐっと引き寄せ,自分の流儀で料理しているという感じで,これはこれで大変面白く, またその推進力に心動かされます。

一つだけどうしても納得できないのが,フーガの最後の音を途中で堂々と弓を返していることです。 オーケストラやコンチェルトのソロでは見たことがありますが(返しているのが音として聴こえないので許せる), 無伴奏では聞いたことがありません。 正直,この一音のために興ざめしてしまいます(些細なことですが...)。

録音:

残響というほどではありませんが,響きが楽器音に付帯音として加わり, 透明感,高域の伸びが損なわれて,ピュアな感じがせずすっきりしません。 楽器音自体はしっかり捉えられているので,全体の印象としては悪くはないのですが。 惜しいと思います。

(記2007/08/28)


レベッカ・ハルトマン(Rebekka Hartmann)

レーベル FARAO classics
収録曲 パルティータ第二番
録音データAufgenommen in den farao studios Februar 2006
使用楽器 Antonio Stradivari (1703) (by the German Foundation Musikleben) (モダン仕様)
所有盤 B 108029 (C)2006 FARAO classics (輸入盤)
併録曲:Hindemith/Sonate für Violine solo Op.11-6, Zimmermann/Sonate für Violine solo
備考 参考url: 公式WebサイトFARAO classics (B 108029)

緩急強弱を大きく取った,起伏に富んだ積極性のある表現が印象的です。 気配りが隅々にまで行き届き,音色,重音の響きも美しく,技術的にも全く申し分ありません。 モダン楽器ですが,どこかピリオド奏法的で,これがこの演奏を特徴づける最大の要因になっています。

録音:

残響が少しありますが楽器音に被ることはなく,極めて明瞭に解像感高く捉えています。 高域の帯域感も十分にあります。 やや刺激的な感じがありますが,私にはこれくらいがちょうど良く感じられます。

(記2007/08/09)


アリーナ・ポゴストキン(Alina Pogostkin)

レーベル PODIUM
収録曲 ソナタ第二番
録音データ記載なし
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 WOW-016-2 (C)2001 PODIUM (輸入盤)
併録曲:Hindemith/Sonate für Violine allein Op.31-2, Prokofieff/Sonate für Violine solo Op.115, Ysaye/Sonate Op.27-3, Milstein/Paganiniana
備考 参考url: 公式WebサイトPODIUM (WOW-016-2)

ヴィブラートをやや深めに効かせた熱っぽく艶のある音色に特徴があります(短い音にまでしっかりと付けられている)。 全体に荒削りですが,力強く堂々としている一方で,音のつながりの美しさなどの緻密さも持ち合わせています。 これがバッハにふさわしいかどうかは別にして,心をグッと掴む魅力があるのは確かです。

録音:

残響がそれほどあるわけではないのですが,響きが付帯音となって音色を濁しています。 悪いとまでは言いませんが,今ひとつすっきりしません。

P.S.

公式Webサイトを見ると,"Alina Pogostkina"(ポゴストキナ?)と名前の表記の最後に"a"が付いていました(昨冬は"a"はありませんでした)。 入手経緯については編集日録 2006年12月13日に記載しています。 PODIUMレーベルの扱いのあるアリアCDさん,CDショップ カデンツァさんに依頼すれば入手は可能と思います。

コンクールではかなり活躍されているようで,最近では,第9回シベリウス国際ヴァイオリンコンクール(2005年)で第一位とのことです。

(記2007/08/07)


ジャクリン・ロス(Jacqueline Ross)

レーベル Gaudeamus
収録曲 全集
録音データRecorded at St. Michael's Church, Highgate, London, 8 & 9 May and 1 & 2 June 2006
使用楽器 Andrea Amati, 1570, A=415Hz (バロック仕様)
所有盤 CDGAU358, CDGAU359 (P)(C)2007 Sanctuary Records Group Limited (輸入盤)
備考 参考url: Sanctuary Classics (CDGAU358, CDGAU359)

バロックヴァイオリンとしては中庸で受け入れやすい演奏だと思います。 緩徐楽章は速めで軽くさらっと流しています。 適度な起伏が心地よく,また音色も美しく,全体によくまとまっています。 ただ反面,強く主張するような演奏ではないので,印象が薄いというのが正直なところです。 私としては,三重音や四重音を十分鳴らさず短かく切り上げてしまう奏法や,その拍への入れ方など, 細かい点ですが少し馴染めないところがありました。

録音:

残響の多い環境での録音で,楽器音と残響は比較的分離されており,残響の質もそれほど悪くないので, 聴き苦しいということはありませんが,残響比率がやや高く,明瞭度の低下,音質の変化,残響のまとわりつきの鬱陶しさはそれなりにあります。 私の好みの録音ではありません。 オーディオクオリティは良好です。

(記2007/07/20)


スザーネ・ラウテンバッハー(Susanne Lautenbacher)

レーベル Vox Unique
収録曲 全集
録音データRecorded in Stuttgart, 1973-1974
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 SVBX 526 (C)2003 Vox Unique (輸入盤)
備考 Vox UniqueがVoxの過去の音源をCD-Rで復刻したもの。 2007年7月頃よりプレス盤に変更。

正統路線を極めたかのような堂々たる演奏! 何の迷いも感じられないひたむきな表現に,そして淀みのないテンポ感,静かな推進感に心奪われます。 深々とした,そして極めて充実した重音の響きの美しさ,一つ一つの音のつながりの美しさ, これはもう芸術的「技」としか言いようがありません。 技術的にはそれほどキレの良い演奏ではありません。 正直言って「あれっ?」という第一印象でした。 しかし,聴き進むにつれてそんな印象はどこかに吹っ飛んでしまいました。 なぜそんな不満を持ったのか,今となってはもう思い出せません。 味わい深い好演!

録音:

曲によって多少のばらつきがあります。 残響は多めですが,明瞭感,解像感は残響量の割には悪くありませんが, 音色はやはり残響が被って変化がみられ,また,全体にキンキンしています。 どことなく「古臭さ」を感じる音質です。 マスターテープの問題か,時折わずかに「ブッ」というような乱れが感じられるのが残念です。

P.S.

ジャケットもインクジェットプリンタで印刷されたもので,まるで海賊盤風ですが, Voxのオリジナルのマスターテープからきちんと復刻されたようで,音質も良好です。

注文は上記のWebpageに掲載されているメールアドレスにオーダーメールを送ります。 支払いはPayPalでした。 ショップではなく一個人とやり取りするような感じであること,オーダーしてから2週間くらい音沙汰がなかったことから, 本当に大丈夫か?と一抹の不安を覚えましたが,結局何のトラブルもなく無事入手出来ました。

(記2007/07/19) 一部修正
(記2004/07/16)

P.S.

最近は輸入CD店でも比較的安価に入手可能でした。 2007年7月頃よりCD-R盤からプレス盤に変更されましたので購入・確認してみました。 音声そのものはCD-R盤と全く同じようです(いくつかデータレベルで比較して完全一致しました)。 解説書等はインクジェットプリンタ出力から印刷に変わっていますが,記載内容は全く同じです。 本当に単にそのままプレス盤になっただけでした。

(記2007/07/19)


クリスティアン・テツラフ(Christian Tetzlaff)

レーベル hänssler CLASSIC
収録曲 全集
録音データHoff kirke (church) at Østre Toten, Norway, March/June 2005
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 CD 98.250 (P)(C)2006 hänssler CLASSIC (輸入盤)
備考 参考url: hänssler CLASSIC

推進力ある音楽の流れの中に柔軟性の高い自在な弓使いでニュアンスを織り込み, 節度を保ちつつも極めて情緒的で,オーソドックスでありながら現代的な印象をも受ける演奏です。 第一印象こそ線の細い印象を受けましたが,練り上げられたきめ細やかな,そして,確信に満ちた表現に, 聴くほどに共感を覚えていきます。 (でも,音楽の流れを乱す無理のある装飾の入れ方だけはちょっと...パルティータ第一番AllemandaのDoubleだけなんですが...)

録音:

少し残響が感じられますがまとわりつくようなことはなく,楽器音を主体にとらえた好ましい録音です。 ただ,その楽器音がクリアに聴こえるかというとそうでもなく,一枚ベールをかぶったような, 楽器の質感に触れられそうで触れられないもどかしさのような,すっきりしないものを感じます。 惜しいと思います。

(記2007/07/11)


クリスティアン・テツラフ(Christian Tetzlaff)

レーベル Virgin CLASSICS
収録曲 全集
録音データMarch & November 1993, St George's Brandon Hill, Bristol
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 TOCE-11597/98 東芝EMI株式会社 (国内盤)

全体に速めのテンポで,すっきりと端正にまとめられています。 推進力のある演奏ですが,決して乱雑になることなく,細部までコントロールが行き届いています。 どちらかと言えばオーソドックス,真正面から真摯に取り組まれた好感の持てる演奏です。

録音:

残響過多まではいきませんが,直接音成分よりも間接音成分がやや勝っており, 明瞭度が損なわれ,高域の抜けも良くなく,今ひとつすっきりしない録音です。

(記2007/07/11) 一部修正
(記2002/06/03)


ヴィヴィアン・ハーグナー(Viviane Hagner)

レーベル altara
収録曲 パルティータ第二番
録音データ14th-15th September 2005, Jesus Christus Kirche, Berlin
使用楽器 Stradivarius "Sasserno"(1717年製)(日本音楽財団から貸与)(モダン仕様)
所有盤 ALT1016 (P)(C)2005 Altara Music/Bonnier Music (輸入盤)
併録曲:Bartok/Sonata for Solo Violin Sz.117, Hartmann/Suite No.1 for Solo Violin
備考 参考url: 公式Webサイト

一音たりともおろそかにしない丁寧な弾き方が印象に残ります。 真摯に,謙虚にバッハの表現を追求し,自己の力量を全て出し切って完成させているように思います。 ジーグまでの4曲は控えめですが,シャコンヌでは感情がにじみ出し,熱気と高揚感が加わっています。 音色も細やかなニュアンスを持ち艶やかで美しく,技術的にも完璧で申し分ありません。 ただ,やや型にはまった感があり,もう少し何か惹きつけられるものがあればと思います。

録音:

かなり残響の多い録音。 ある程度の明瞭度は確保されているものの,残響音のまとわりつきによる音色への影響は避けられず, 聴き苦しい音になっています。 本来の音色が楽しめないのは非常に残念!

(記2007/06/08)


ヒロ・クロサキ(Hiro Kurosaki)

レーベル ORF
収録曲 パルティータ第二番
録音データ20. JUNI 2005
使用楽器 Giovanni Battista Rogeri, Brecia 1690 (バロック仕様)
所有盤 ORF CD 449 (P)(C)2006 ORF ALTE MUSIK (輸入盤)
SACDハイブリッド盤(SACD Multi-ch/SACD Stereo/CD Stereo)
カップリング曲:バッハ/ヴァイオリン・ソナタ ハ短調 BWV1017, ト長調 BWV1019(ヴォルフガング・グリュクサム(Wolfgang Glüxam)(Cembalo))
備考 トリゴナーレ音楽祭 ライヴ録音(Trigonale 2005
参考url: Ö1 Shop(o1@orf.at)

バロック・ヴァイオリンによる演奏。 フレーズや拍の頭に重きを置き,速い音型など端折ったように弾き飛ばして聴かせ(実際には端折られていないのですが), 微妙なテンポの揺らぎ(ギクシャクしているが不自然ではない)と強弱を駆使して,極めて彫りの深い情緒豊かな音楽を聴かせてくれます。 バロック・ヴァイオリンの醍醐味が堪能できる好演です。

録音:

ライヴ録音。 かなり残響の多い,そして残響時間の長い環境での録音で,その残響音の取り込みも多いのですが, 楽器音自体が比較的オンマイクで直接音主体で収録されており,残響音の被りがほとんどなく明瞭感は良好です。 残響のまとわりつきは鬱陶しく,また,少々音の捉え方が濃いものの,高域の伸びもあり, バロック・ヴァイオリンの質感も良く捉えられているので,印象は悪くありません。 残響成分の質感は悪くなく,残響が許せる方には好録音かもしれません。 低域側のレンジも広く,会場の雰囲気もリアルに感じられます。 録音レベルがかなり高いのも好印象です(他のCDを聴いた後に同じボリューム設定で聴くとあまりの大きさにびっくりします)。 併録のソナタのチェンバロも,音の立ち上がり,粒立ち,響きがリアルに美しく捉えられています。

(記2007/05/15)


ジョン・ホロウェイ(John Holloway)

レーベル ECM
収録曲 全集
録音データRecorded July and September 2004, Propstei St. Gerold
使用楽器 Ferdinando Gagliano, Napoli, 1760 (バロック仕様)
所有盤 ECM New Series 1909/10 B0007621-02 (P)(C)2006 ECM Records GmbH (輸入盤)
備考 参考url: 公式Webサイト, ECM New Series 1909/10

バロック・ヴァイオリンによる演奏。 弓使いが粘らず,また起伏も控えめであっさりしているので,淡泊な印象を受けます。 感情に流れず淡々と,しかし,適度な緊張感と推進力をもってひたむきに築き上げられる流麗で清涼感のある音楽に好感を持ちます。 音色も透明感があって美しく,また,重音・分散和音の表現がなめらかで,時折はっとするような響きが聴こえます。 よく練り上げられていると思います。 (でもちょっとこぢんまりとまとめすぎているかな...)

録音:

かなり残響量が多く,また残響時間も長く,響きが混沌としています。 楽器音自体は比較的しっかりと捉えられており,残響量の割に明瞭度は何とか保たれているものの, やはり楽器音へのまとわりつきが鬱陶しく,楽器の肌触りも失われており, 私としては許容限度を大きく越えています(残響が多い録音としてはましな部類に入るとは思いますが)。 オーディオとしての音質は悪くなく,残響が許せる方には良好な録音かもしれません。

(記2007/04/24)


斎藤アンジュ玉藻(Tamamo Ange Saito)

レーベル Art Union
収録曲 パルティータ集
録音データ2006年6月,7月,杉並公会堂
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 ART-3098 (P)2006 ART UNION RECORDS (国内盤)
備考 参考url: 公式Webサイト

意欲みなぎる力演で,荒削りながら直球勝負的に切り込む潔い表現が印象的です。 全体を貫くテンションの高さ(刺激的な音色)が,良くも悪くも聴き手にそれ相応の緊張感を要求してきます(もちろんそうでない部分もあるのですが,そういう印象ばかりが記憶に残ってしまうのです)。 これはこれで素晴らしいのですが... 柔らかさ,豊かさ,暖かさといった方向へも表現の幅を拡げ,押し切る音楽から脱却されていくことを期待します。 (ぜひライヴで聴いてみたい,と思う演奏ではあります)

解説書に音程にこだわっている旨の記載があるのですが, どちらかというと私にはしっくりこない部分の方が多いように感じます(旋律や分散和音で上擦って聴こえる時があります)。 また,技術的な詰めにも若干の不満が残ります。

録音:

少し響きを伴っていますが,残響時間は長くなく,残響で大きく明瞭感が損なわれていることはありませんが, 高域の抜けが良くなく,今ひとつすっきりしません。 惜しい録音です。

(記2007/04/09)


ワンダ・ウィウコミルスカ(Wanda Wilkomirska)

レーベル Connoisseur Society
収録曲 ソナタ第一番,パルティータ第二番
録音データRecorded by Connoisseur Society in New York City, NY in the mid-1960's
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 CD 4270 (C)(P)2006 In Sync Laboratories, Inc. (輸入盤)
カップリング曲:Bach/Partita No.1 BWV825, Partita No.2 BWV826 (João Carlos Martins, piano)
備考 参考url: Connoisseur Society

思いの強さが音としてにじみ出た熱演。 全体にテンションが高く,厳しい表情で貫かれています。 また緩徐楽章での雄大な表現も印象的です。 リピートが全て省略されているのが残念です。

録音:

やや多めの残響を伴っていますが,楽器音を主体に捉えて明瞭感を確保しており,どちらかといえば好ましい印象です。 時々バックグラウンドに「ゴー」というノイズ(?)が入ります。 部屋の外から漏れてきた音ではないかと思いますが,少々気になります(突然大きくなったりするのでびっくりします)。 マスターテープの問題か,時折音像が不自然に移動したり,不連続を感じたり,ボッというようなノイズを感じることがあります。 オーディオ品質はあまり良いとは言えません。

(記2007/03/28)



演奏:3.0
録音:3.5

ローナ・グローヴァー(Lorna Glover)

レーベル GLOBE
収録曲 全集
録音データ記載なし(1990年頃?)
使用楽器 Ilfredos Cappa of Taurini in 1720 (バロック仕様)
1980年にW. Boumanによってバロック仕様に改修,ネック,バスバー,指板などが交換されているとのこと。 チューニングはA=440Hz。
所有盤 GLO 6002 (P)(C)1990 Klass Posthuma Production v.o.f. (輸入盤)
備考 グローヴァー氏は1944年生まれ。 18世紀オーケストラの創設メンバー,Netherlands Ballet Orchestraのソロヴァイオリニスト。 モダンとバロックの両方を演奏。

バロックヴァイオリンによる演奏。 全体にテンポが速めで小気味よいと言えば確かにそうなのですが,どちらかといえばせかせかした感じが強いです(フレーズ間の「間」が若干詰まっているのが原因か?)。 一方でテンポの速さに反して,ここぞというところで音楽が沈滞してしまっているところも多々見受けられ, 良い印象を受けるところとそうでないところの落差が大きく,なかなか印象が定まりません。 技術面でももう少しキレがあると良かったのですが(そういうキャラクターなのかもしれませんが)。 バロックヴァイオリンらしいガット弦の質感の良く出た,エッジが効いてなおかつ透明感のある音色は好印象です。

録音:

音のとらえ方の異なるおそらく2種類の録音が混在しています。 後で録音し直して差し替えたのではないかと思いますが,楽章毎に全く印象の異なる録音が入れ替わるのはいただけません。 全体として,少し距離感があってモノラル的,残響少し多めに取り入れられていますが, その割には楽器音の質感がそれなりに良くとらえられており,印象は悪くありません。 そして,後で差し替えられたと思われる楽章は,よりオンマイクで明瞭感,解像感が高く,音色も自然でかなり良い印象です。。 後者の録音で統一されていれば私としては文句なしなのですが...惜しいです。

P.S.

N.M.さんのご厚意で聴かせていただくことが出来ました(解説書はA.I.さんから)。有り難うございました。 →やっと入手できました!(2006/11/29)

(追2006/12/13) やっと入手! ということで2回目...
(記2004/02/12)


CD image
演奏:3.0
録音:3.0

クリスチャン・フェラス(Christian Ferras)

レーベル Ages Records
収録曲 全集
録音データUSA , December 1977
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 Ages 509 008-2 (P)(C)2006 Ages Records (輸入盤)

真面目でひたむき,派手さはありませんが,芯の太い艶やかな音色で奏でられる力ある音楽に内なる情熱のほとばしりを感じます。 ただ,推進力,躍動感は薄く,また技術的精度という面で出来が今ひとつで(音程を探るところがあったり,しっくりこないときがある), 私としては少々不満が残ります(そういうことを目指した演奏ではないとしても...)。

録音:

曲毎に少しずつ傾向が異なりますが,総じて雑味の感じられる濁った音質です。 残響が特に多いというわけではないのですが,反響が被って音を濁しているように思います。 ソナタ第一番,第二番,パルティータ第一番がこの点で良くありません。 パルティータ第二番は少しマシですが,距離感があってこれで明瞭感を落としています。 また,シャコンヌだけ音の捉え方が異なります(左右の位相ずれが感じられる)。 ソナタ第三番はさらに遠くなって残響に埋もれ,最も良くありません。 極端に悪いものはないものの,どれを取っても今ひとつ冴えない録音で残念に思います。 また,たとえばソナタ第二番では,曲の途中で音場感が頻繁に変わったりすることもあり, さらに印象を悪くしています(録音そのものではなく編集上の問題と思われます)。

(記2006/11/21)


CD image
演奏:4.0
録音:3.0

スザンナ・ヨーコ・ヘンケル(Susanna Yoko Henkel)

レーベル the spot records
収録曲 全集
録音データRecorded July 24th & 25th, August 7th, 8th, 21st and 22nd 2004 at the minster St. Marien in KWS Klostergut Wiebrechtshausen
使用楽器 Giovanni Battista Rogerius from 1705 (モダン仕様)
所有盤 28869-4 (P)(C)2006 the spot records (輸入盤)
備考 参考url: ヘンケル氏公式Webサイトthe spot recordsCD Baby

現代的・都会的で洗練され,力感のある凛とした佇まいが印象的です。 全体に速めのテンポで,情緒表現は控えめに,憎らしいほど淡々と曲を進めていきます。 これがまたクール! 緩徐楽章の軽い弓使いも新鮮な印象を生み出しています。 技術的にも申し分ありません。 ニュアンスに富む音色も素晴らしいです。

一点残念なのは,後半のリピートの省略が多いことです。 前半のリピートは全て行われているので,聴いていて気になるというほどでもないのですが, なんとなく物足りなさを感じるのも事実。 最近の録音では全てリピートをされているものが多いので,ちょっと残念に思います。 (でも,ソナタ第二番Andanteの後半のリピートは行われています...2カッコがあるから?)

録音:

残響の多い,残響時間の長い環境での録音です。 楽器音へのまとわりつき,過去の音との混じり合いが鬱陶しく,音色へも大きく影響しているので, 私の好みの方向とは全く違いますが, 楽器音の輪郭,芯は,残響量の割にはくっきりしているので,まだ何とかぎりぎり我慢の範囲です。

(記2006/11/05)


CD image
演奏:3.5
録音:3.5

ジョン・キング(John King)

レーベル NALU Music
収録曲 パルティータ第三番
録音データRecorded 1996-98 at Paul Oldack Productions
使用楽器 ウクレレ
所有盤 NALU Music & Compact Discs (輸入盤)
カップリング曲:バッハ/無伴奏チェロ組曲第一番よりPrelude, Sarabande, Gigue, 無伴奏チェロ組曲第六番よりGavotte, 無伴奏チェロ組曲第五番よりGavotte, 無伴奏チェロ組曲第四番よりBourree, 平均率クラヴィーア曲集Book IよりPrelude BWV846, カンタータNo.147よりJesu, joy of man's desiring
備考 参考url: NALU Music(J.キング氏の公式Webサイト?)CD Baby

ウクレレによる演奏。 一瞬,ハープかと思うほどの美しい響き!(メロディーのそれぞれの音を違う弦で弾く「カンパネラ・スタイル」という奏法?による効果らしい)。 ウクレレがこれほど美しい響きを発する楽器だとは想像もしませんでした。 ちょっとした衝撃を受けました。

演奏も実にしっかりとしています。 撥音が力強く躍動感に富み,また,ときにふと繊細な表情をも見せる,その表現レンジの広さがこれまた素晴らしい。 個々の音の粒立ちもよく揃っていますし,難しいところでも余裕をもって表現する技術力の高さにも脱帽です。

しかし,実はカップリングで収められている無伴奏チェロ組曲の方がより溌剌としており数段出来が良く感じられます(特に第六番のガヴォット! これは4.0点を付けたい)。 無伴奏ヴァイオリンの方は全体に表現が小粒で遠慮がちなのが残念です。

楽器の音域やカンパネラ・スタイルのためか,音型に大きく手が入れられていますが,違和感を感じることはほとんどありません。 むしろ高域の美しい響きを積極的に活かした編曲部分もあって楽しく聴くことが出来ます。 無伴奏ヴァイオリン,無伴奏チェロのどちらもこの演奏で全曲を聴いてみたい...ほんと!

録音:

撥弦音を明瞭にとらえ,かつ楽器の響きをバランス良く取り入れた好録音です。 残響の取り入れも少なからずあるように思いますが,この録音においてはプラスに働いています。

残響が嫌いな私としては積極的に認めたくはないのですが... ただ,ウクレレやギターのような撥弦楽器では比較的気にならない場合が多いように思います。 もちろんあくまで直接音が主体で残響が楽器の響きを助ける補助的な取り入れ方がされている場合に限りますが。

(記2006/10/13)


CD image
CD image
演奏:4.0
録音:3.5

ドゥヴィ・エルリー(Devy Erlih)

レーベル ACCORD
収録曲 全集
録音データDisques Adès, 1969
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 476 9685, 476 9686 (P)1969 (C)2006 Universal Music Classics France (輸入盤)

激しく,人間臭く情をほとばしらせた熱演! 誰が何と言おうと己のやり方を頑固に通す信念に支えられたような力強さがあります。 緩徐楽章であっても力のこもった弓使いでグイグイと音楽を牽引し, 急速楽章では推進力に溢れ疾走していくのが最高! 細部にわたって練り上げる気などなく,自己の強い思いに忠実であれ,といったように感じられます。 こんな演奏なので技術的に万全でないところもありますが,そもそもそんなところを狙っておらず,何の欠点にもなっていません。 勢い任せのようでいて決して乱雑になることなく,一貫したスタイルとして確立しているところが立派です。

今の世の中,こんな個性むき出しの演奏はなかなか聴けません。 思わず一緒に熱くなってしまいます。 素晴らしい貴重盤復刻に感謝!

録音:

残響の少ない空間での録音(背景に多少の響きは感じられます),スタジオでの録音ではないかと思います。 響きに邪魔されることなく楽器音そのものを堪能できる,私の大好きな音のとらえ方の録音です(これを評価して3.5点に)。 ただ,マスターテープの質があまり良くないのか,鮮度が今ひとつであり, また強奏部で歪が感じられたり,ドロップアウトのようなエラーがあるのも残念です。

さらに,編集があまり上手くなく,リピートや曲の途中で不自然なつながり方をしているところが散見されるほか, 頭切れがあったり(ソナタ第一番フーガ), 質が一段落ちる楽章があったり(ソナタ第三番フーガ)と, 全体的にはあまり出来が良くないというのが正直なところです。

とはいえ,この音のとらえ方は魅力的! オーディオクオリティや編集の悪さをカバーして余りあるものがあります。 現代の残響まみれのデジタル録音よりはるかに音楽にのめり込めます。

(記2006/10/06)


CD image
演奏:4.0
録音:3.5

ヴィクトル・ピカイゼン(Victor Pikaizen)

レーベル МЕЛОДИЯ(Melodiya)
収録曲 全集
録音データRecorded in 1971
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 MEL CD 10 01000 (P)(C)ФГУП "Фирма Мелодия" (輸入盤) (5枚組)
カップリング曲:Paganini/24 caprices for violin solo, Op.1, Introduction and Variations on "God Save The King", Variations on "Pria ch'io l'impegno", Introduction and Variations on Non piu mesta from Rossini's "La Cenerentola", Mostras/"Caprice"(Recitativ and Toccata), Khachaturian/Sonata-monologue for violin solo, Levitin/Variations, Op.45, Vainberg/Sonata No.3 for violin solo, Op.126
備考 参考url: ピカイゼン氏プロフィール(仙台国際音楽コンクールWebサイトより)
参考url: hmv.co.jpの商品紹介

比較的落ち着いたテンポで,冒険することなく真面目にキッチリと演奏されています。 全体に緩急強弱は控えめで,急速楽章であっても疾走することなくひたすらインテンポで淡々と押し通しています。 しかし,決して退屈しないのがこの演奏のすごいところ! 内面から静かに深々と表現しようとする真摯で謙虚な姿勢が一つ一つの音ににじみ出しているかのようで, そうして発せられる凝集された音,意志のこもった音楽に釘付けにされてしまいます。

録音:

少し響きを伴っていますが,あくまで楽器音が主体であり,そこそこ明瞭感があります。 帯域感もあり,音色も自然で美しくとらえています。 ソロの録音として至極オーソドックスな印象を受けますが,私の好みに照らし合わせてもまずまずの好録音と言えます。 ソナタ第一番,パルティータ第一番が特に良く,あとの曲は響きが少し多めで鮮明度やや劣る印象です。

(記2006/09/15)


CD image
演奏:3.5
録音:3.0

ネマーニャ・ラドゥロヴィチ(Nemanja Radulovic)

レーベル TRANSART
収録曲 パルティータ第二番
録音データ2005年7月 ランス(フラヌリ・ミュジカル夏季音楽祭におけるライヴ録音)
使用楽器 ジョヴァンニ・バティスタ・グヮダニーニ1765年製作(モダン仕様)
所有盤 TR 136 (P)(C)2005 TRANSART (輸入盤)
輸入代理店:株式会社マーキュリー ※日本語解説書付き
カップリング曲:ミレティチ/無伴奏ヴァイオリンのための舞曲,イザイ/無伴奏ヴァイオリンソナタ第二番,第三番,パガニーニ/奇想曲作品1より第一番,第十三番
備考 ラドゥロヴィチ氏は1985年,セルビア生まれ。
参考url: ラドゥロヴィチ氏公式Webサイトマーキュリー(輸入代理店)(※でも以前あったこのCDの情報が見あたりません...)

意気込みがそのまま音となって放出されているような,ライヴらしい熱演。 深いヴィブラートに,音がつぶれんばかりの(つぶれてしまっているところも所々あります)高い弓圧, 勢いある弓遣いで,濃厚に,そして,激しく感情をほとばしらせています。 それでいて,勢いに任せて乱暴になってしまうということがなく, 楽器をしっかりコントロールして表現しきっています。

このような野性味あふれる演奏,久しぶりに耳にする気がします。 全集をこの調子でやられると聴く方もつらいかもしれませんが, ライヴでパルティータ第二番だけ聴くなら,こんな演奏もありかなと。

なお,基本的にリピートが省略されているので(サラバンドの前半だけはリピートしていますが), あれあれっという間に曲が進んでしまって,この点だけは少し物足りず残念に思います。

録音:

ライヴ録音。 残響の取り込みは控えめで,直接音を明瞭にとらえています。 高域がわずかに落ち気味で,もう少し伸びが欲しかったところです。 もうほんのわずか近い距離感の方が私としては好みです。 とはいえ,ライヴとしては良い方ではないかと思います。 時折ブチブチ,ミシミシというノイズが入るのが気になります。

(記2006/08/30)


CD image
演奏:3.0
録音:2.5

アドルフ・ブッシュ(Adolf Busch)

レーベル Biddulph Recordings
収録曲 ソナタ第三番
録音データRecorded on 18 May 1942
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 80211-2 (P)(C)2004 Biddulph Recordings (輸入盤)
カップリング曲:Beethoven/Violin Concerto in D (with Fritz Busch conducting, the New York Philharmonic-Symphony, recorded on 9 February 1942)
備考 参考url: Biddlph Recordings

年代を思うと,思いのほか癖のない表現だなぁという印象です(間違った偏見は捨てないと...)。 細部まで磨き上げるというよりは,あくまで全体の大きな音楽の流れを重視したアプローチに思えます。 技術的には,フーガやアレグロ・アッサイで少しキレの悪さが見られ,表現についていけていないところがあるのが残念です。 癖がないといっても,やっぱりその当時のスタイル,奏者の個性が前面に感じられる演奏には違いありません。

録音:

モノラル録音。 楽器音自体は多少の残響を伴っているものの,音の芯はしっかり捉えられているように思います。 ただ,高域の帯域感が全くなく,詰まってしまっていて,生気が感じられないのが残念です。 どういう復刻なのかよくわかりませんが,この時期の録音とは到底思えないくらい驚くほどノイズがありません。 何らかのノイズ除去処理が行われているものと思われます。 精彩がないのはノイズ除去処理の影響かもしれません。 ノイズまみれでも構わないので,出来るだけ再生音そのままを復刻してくれる方が有り難いのですが...

(記2006/08/09)


CD image
演奏:2.0
録音:3.5

能宗さち

レーベル SC企画
収録曲 ソナタ第一番,パルティータ第二番,第三番
録音データRecorded September 2004 - April 2005 Kyoto
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 SC-0010 SC企画 (国内盤)
備考 能宗氏は大阪出身,東京芸術大学卒業(解説書より)。 京都JEUGIA 三条本店にて入手。 発売元/製造元がSC企画とありますが,自主製作ではないかと思います。 LIVEレコーディングで,つなぎ無しの一発録音,とあります。

失礼ながら正直なところ技術的にかなり苦しさがあります。 表現上,相当個性的な面があるのも確かですが,例えばソナタ第一番のフーガの三重音以上の奏法(グキッと完全に2つに音が分かれている)や弓をぶつけて弾く極端なスタッカートには, 好み・スタイル以前の疑問を感じたりもしますし,技術面からくるリズムの崩れなども散見されます。 そういった不満をとりあえず横に置いておいて...パルティータ第二番,第三番は最大限の力を発揮された充実感ある演奏に思いますが, それに比べてソナタ第一番が少々弾き込み不足という印象を受けます。

録音:

"LIVEレコーディング"とあるのですが,いわゆるコンサートを録音した"LIVE"ではないようです。 スタジオでの一発録りという意味ではないかと想像します。 残響がわずかに感じられますが,ほとんど気になりません。 音色に少し癖があり,少々キンキンしてはいますが,明瞭感,解像感の高い, 演奏を子細に伝えてくれる私好みの好録音です。 演奏者を身近に感じるアマチュア的な手作りの風合いのある音作りで,この点も好印象です。

P.S.

購入して始めて聴いたとき,このCDをどう紹介したものか...と少々頭を抱えてしまいました。 自分の演奏を広く世に問うというよりは,ご自身の研鑽の一つの目標としてこのCD制作に取り組まれてきたのではないかと勝手に想像しています。 そう思いながら何度も聴いていると,様々な不満は次第に薄れ,親しみがわき,応援したくなってくるから不思議です(録音が好みであるということも手伝っていると思います)。 今後一層の研鑽とその成果(ぜひ全集の完成を)を期待します。

(記2006/07/20)


CD image
演奏:3.5
録音:3.5

ローマン・トーテンベルク(Roman Totenberg)

レーベル MCS (Media & Communication Systems)
収録曲 全集
録音データ記載なし(1971年 Heidelberg)
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 Bestell-Nr. CD 99115 Vol.1, Vol,2, Vol.3 Media & Communication Systems GmbH Sachsen (輸入盤) (*3枚分売)
備考 トーテンベルク氏は1911年生まれ,ポーランド出身。

真摯で厳しく,堂々とした風格を持つ演奏であり, その密度の高い,緊張感の高い音楽は聴き応え充分です。 確信に満ちた力強いボウイングで推進力をもって奏されるフーガなど特に素晴らしく思います(ただ,パルティータ第三番までこの調子なのでちょっと疲れます)。 テンポは少し遅めですが(総演奏時間が160分を越え,CD2枚に収まりきらない), 遅さを全く感じさせない充実感があります。

録音:

各曲毎に少しずつ録音傾向が異なりますが,総じて残響が少なく,楽器音を明瞭にとらえた好録音です。 録音環境の反響音がすこしかぶって音色に影響しており, また,少し中低域の支えが弱く,現実感に乏しいのが少し残念です。 全体にやや古い感じのする録音ですが,明瞭感,解像感の高さもあって, 印象は悪くありません。

P.S.

録音年代がはっきりしません。 ステレオ録音で,"DAD"という表記(デジタル録音,アナログ編集)を信用すれば1980年代以降と思われるのですが, 音を聴く限りもう少し古いのではないかと思います。 もしご存じの方がおられましたらご一報いただけると助かります。

本盤は,いつもお世話になっておりますMさんよりeBayのショップから購入可能とご連絡いただき,無事入手することが出来ました。 有り難うございました。 現時点(2006/07/10)でまだ購入可能のようです。 (2008/03/04時点ではショップがなくなっています→下記参照)

(記2006/07/10)

録音データに関し,LPレコードを所有されているT.O.さんより,1971年 Heidelbergの録音であると教えていただきました。 有り難うございました。

(記2007/09/04)

M.Y.さんより,こちらのeBayのショップから購入可能とご連絡をいただきました。 貴重な情報を有り難うございました。

(記2008/03/04)


CD image
演奏:3.0
録音:2.0

アンリ・マルトー(Henri Marteau)

レーベル Caprice
収録曲 パルティータ第三番
録音データBerlin den 26 november 1912 & 14 februari 1913
使用楽器 記載なし(モダン仕様?)
所有盤 CAP 21620 (P)(C)1999 Swedish Broadcasting Corporation P2 and Caprice Records (輸入盤) (4枚組)
"The String Players, HENRI MARTEAU Swedish pupils & colleagues"
原盤:Deutsch Grammophon 47993-97 [2479 ah, 15038 L, 2480 ah, 15039-40 L]
備考 アンリ・マルトーとその弟子・同僚の演奏を集めた4枚組のCDで,マルトー氏の演奏はCD1に収められています。 私が所有している中で最も古いバッハの録音です。 hmv.co.jpにもリストアップされていますが, 現在入手可能かわかりません。

およそ100年前の録音で,どんな演奏だろうかと興味津々でしたが, スマートで現代においてもそのまま違和感なく通用するようなセンス良い整った演奏であることに驚きました。 特にPreludioのスピーディでキレのある演奏は聴きものです。 技術レベルも思いのほか高く(近年の演奏家には及ばないとしても),癖のない素直な表現に感銘を受けます。 歴史的演奏に対する見方(50年代以前の巨匠のスタイルが私の頭の中にイメージとして染みついています)が変わるほど, 私にはインパクトのある演奏でした。

録音:

SPの復刻で,盛大に針音が入っていますが,100年前近い古い録音にも関わらず, 細かいニュアンスまで聴こえてきそうな,十分に鑑賞に耐えうる録音です(もちろんSP復刻の音質であるという前提で)。 残響など皆無で,帯域は狭いものの音色も驚くほど自然です。 当時の録音環境は本当に貧弱でしたでしょうから,そんな中で最大限の情報量を残そうという努力の結果ではないでしょうか。 こんな良い録音で残されていたことを心から感謝します。

P.S.

本CDには,Göran Olsson-Föllingerというヴァイオリニストが演奏したバッハ無伴奏も収録されています(パルティータ第三番Preludio(1936年録音),同Gavotte en Rondeau(1942/43年録音))。

なお本CDは,いつもお世話になっておりますLBさんのご厚意によりお譲りいただき,聴かせていただくことが出来ました。 貴重なCDを有り難うございました。

(記2006/06/26)


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演奏:3.5
録音:3.0

エレーヌ・シュミット(Hélène Schmitt)

レーベル Alpha
収録曲 全集
録音データ2004年9月 パリ,ノートルダム・ド・ボン・スクール病院礼拝堂
使用楽器 カミッロ・カミッリ製作(18世紀最初期)(バロック仕様)
所有盤 (写真上) Alpha 082 (P)2004 (C)2005 Alpha (輸入盤) (s1, p1, p2)
(写真下) Alpha 090 (P)2004 (C)2006 Alpha (輸入盤) (s2, s3, p3)
輸入代理店:マーキュリー(MAレコーディングズ販売)※日本語解説書付き
備考 参考url: Alphaマーキュリー(輸入代理店)

バロックヴァイオリンによる演奏。 緩急が激しく,彫りが深く陰影に富んだ語り口が印象深いです。 明確な意志のこもったアーティキュレーション,ロングトーンのふくらませ方,張りと透明感ある音色,楽器の鳴りが素晴らしく, 特に緩徐楽章は情緒豊かで強く心に響きます。 一方,テンポの崩しが急速楽章にも激しく及んでおり,疾走感が失われ音楽に乗り切れないところがあるのはとても残念です。 バロックヴァイオリンらしさを極めたような演奏で,一貫性があるといえばあるのですが, 緩徐楽章と急速楽章のコントラストがもう少しあってもよかったのではないかと思います。

録音:

残響量が多く,また,残響時間もかなり長い録音ですが,残響が楽器音に大きく被ることはなく,比較的自然な音色で明瞭にとらえられています。 響きの減衰も美しく,空間性を見事に表現していると思いますが, やはり響きが多すぎて楽器音へのまとわりつきが鬱陶しく,私の好みの録音ではありません。 しかし,楽器とマイクとの距離感,楽器音のとらえ方は適切ですし(演奏雑音も適度にとらえられています※1...呼吸音はちょっと大きいかな), 残響を許容すれば直接音と間接音のバランスは悪くなく, 「残響を取り入れるならせめてこうして欲しい!」という見本のような録音と言えます。 3.0点としましたが,印象はそれほど悪くありません。

CDのたすきに「天才技師ユーグ・デショーの自然録音でおくる……」などと書かれていますが,まあそれだけのことはあると思います。

※1 別に演奏雑音を有り難がっているわけではありません...念のため(^^);。 私にとって演奏雑音は,奏者との心理的距離感をぐっと縮め,親近感をもたらしてくれる一つの大切な要素なんです。 演奏雑音の全く聴こえてこない録音は,私には実在感が希薄でどこかよそよそしく,工業製品的な作り物のにおいがしてしまうのです。 何を音楽的と感じるかは人それぞれだと思うのです。 それにしても,シャコンヌの中間部での,呼吸に伴って発せられる声にはちょっとびっくりします(けっこう色っぽかったりします...失礼しました...)。

(記2006/06/09)


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演奏:3.5
録音:4.0

ステファニー・マリー・ドゥガン(Stephanie-Marie Degand)

レーベル Intrada
収録曲 パルティータ第二番
録音データ2002年2月15,16,22,23,24日 パリ,サル・アデャル
使用楽器 ミッテンヴァルトのエゲディウス・クロッツ 1960年製作 a=415Hz (バロック仕様)
所有盤 INTRA002 (P)(C)2002 Intrada (輸入盤)
輸入代理店:マーキュリー(MAレコーディングズ販売)※日本語解説書付き
邦題:「無伴奏ヴァイオリンでたどる5世紀の旅」
カップリング曲:ビーバー/パッサカリア,パガニーニ/24の奇想曲より第5番,第15番,第24番,イザイ/無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番,第6番,タンギー/ソナタ・ブレーヴェ
備考 ビーバー(17世紀),バッハ(18世紀),パガニーニ(19世紀)はバロック楽器で,イザイ(20世紀),タンギー(21世紀)はモダン楽器で演奏されています。
参考url: マーキュリー(輸入代理店)

バロック楽器による演奏で,確かにバロック楽器に適した奏法で演奏されているのでしょうけど, 力強くシャープなボウイングでドライブされるその音楽は,どちらかといえば現代的に響きます(特に重音奏法など……少なくとも私にはそう聴こえます)。 確かな技術に支えられた推進力ある前向きな表現には胸がすく思いがしますし,透明感ある音色,重音の美しい響きには聴き惚れます。 でも...この演奏ならモダン楽器で聴いてみたい,と思うのは私だけでしょうか? これはこれで素晴らしいとは思うのですが。

録音:

奏者の存在を身近に感じることの出来る,実在感のある録音です。 あまり広くない空間での録音なのか,空間性を感じさせる反響が多少あるものの,残響と言える響きはほとんどありません。 楽器音を明瞭に,解像感高く,適度な距離感で捉えていますが(もう少し近めでもいいかも),反響のかぶりによる音色のくすみがほんのわずかに感じられるところが本当に惜しい!(4.0点はちょっとおまけです)

(記2006/05/26)


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演奏:3.0
録音:3.0

ザイーダ・レヴィン(Zaida Levin)

レーベル MSR Classics (Musicians Showcase Recordings)
収録曲 パルティータ集
録音データ記載なし
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 MS1047 MSR Classics (輸入盤)
備考 ザイーダ・レヴィン氏は,ニューヨーク出身。 解説書によると,現在はイタリアのウンブリア(Umbria)州ペルージャ(Perugia)で活動されているとのこと。
参考url: MSR Classicsの紹介ページ

緩急強弱は控えめで,破綻をきたさないテンポでキッチリと弾きこなしています。 誠実さが好印象である一方,あまりにもインテンポ過ぎ,教科書的で今ひとつ意図が伝わってこないように思います。 この路線を突き詰めるなら突き詰めるで,目指す姿を明確に打ち出す演奏であって欲しい。 技術的にキレの良くないところが所々ありますが,無理をしていないのでこの点はほとんど気になりません。

録音:

各曲で少しずつ録音状態が異なります。 パルティータ第三番は,残響があるものの直接音に大きく被ることがなく, 明瞭感があり,音色も自然で印象は悪くありません(ただ,すこしジリジリと歪むところがあるのが残念ですが)。 一方,パルティータ第一番,第二番は残響が直接音に被り気味で,明瞭感に劣り,音色もくすんで良くありません。 パルティータ第三番の録音で統一して欲しかったと思います(これなら3.5点を付けたかも)。

(記2006/04/26)


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演奏:3.5
録音:2.5

ジーノ・ヴィンニコフ(Zino Vinnikov)

レーベル IM Lab
収録曲 全集
録音データRecorded at the Lutheran Church of St. Catherine (St. Petersburg Recording Studio) between 26 February, 09 March 2004
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 IMLCD133 IM Lab (輸入盤)

力強くキリッと引き締まった,そして終始厳しい表情で貫かれた,真摯で緊張感の高い力演だと思います。 深いヴィブラートのかかった(そして感情の乗り移った)音色にしつこさを感じるところもありますが, 伸びのある充実した響きに聴き惚れてしまうところも多いです(特にソナタ第三番のアダージョやフーガの響きに感激)。 技術的なキレ,安定感も十分で,かなり大胆に弓を使って鋭いアクセントをつけていますが, しっかりコントロールされて崩れることがありません。 またアクセントの後の力の抜き方も絶妙で,個々の音の表情,つなぎのニュアンスも豊かで素晴らしいです。

録音:

残響時間のかなり長い環境で録音されており,響きのまとわりつきがかなり鬱陶しく感じられます。 音色も曇ってしまっていますし,かなり過去の音まで混じり合って混沌とした響きになってしまっているように思います。 直接音も何とか感じられないことはないのですが,残響過多で明瞭感に乏しいです。 私の我慢の範囲をわずかに越えています。 演奏に伴うノイズとは思えないジリジリという歪のような付帯音が感じられる曲があるのも残念です。

(記2006/03/15)


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演奏:3.0
録音:3.0

シェルバン・ルプー(Sherban Lupu)

レーベル Electrecord
収録曲 全集
録音データ記載なし
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 EDC 583/584 (P)(C)2003 Electrecord (輸入盤)
備考 ルプー氏はルーマニアのヴァイオリニスト。 現在,イリノイ大学音楽学部ヴァイオリン科教授。
参考url:ルプー氏公式Webサイト

要所でヴィブラートをしっかりかけ,情感をストレートに音に表出するタイプで, どちらかといえばモダン楽器によるオーソドックスで少し懐かしさを感じさせるスタイルに思います。 速めのテンポで推進感があり,果敢で意欲的な音楽作りが印象的に残ります。 起伏はそれほど大きくありませんが,勢いに頼ることなく個々の音に丁寧にニュアンスを与えて表現しているところも好印象です。 技術的なキレは今一歩という感じがしますが,表現力がそれを十分にカバーしていると思います。 (ちょっと濃いめの)味のある好演奏です。

録音:

少し残響感があり,少し残響音の被りの影響を感じますが,明瞭感を大きく損なうほどまではいっていません。 とはいえ,音色への影響は避けられず,高域の伸び感に欠けるくすんだ音になってしまっています。 それほど悪い印象はないとはいえ,3.5点を付けるには及びません。

あと,「チッチッチッ」音(ソナタ第二番フーガの最後), 「ブッ」音(パルティータ第二番アルマンドの1:18付近), など,製盤上の問題と思われるノイズが入ります(これ以外にも怪しいところが何カ所かある)。 工業製品としての品質があまり良くないように思います。

(記2006/02/28)


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演奏:3.5
録音:3.5

リチャード・トニェッティ(Richard Tognetti)

レーベル ABC Classics
収録曲 全集
録音データRecorded July and December 2004 at the Eugene Goossens Hall of the Australian Broadcasting Corporation's Ultimo Centre.
使用楽器 Violin by Giovanni Battista Guadagnini, Parma 1759, played on gut strings at Baroque pitch a'=415Hz. Bow by John Dodd, c. 1800, with a pernambuco stick and ivory frog and button. (バロック仕様)
所有盤 ABC 476 8051 (P)(C)2005 Australian Broadcasting Corporation. (輸入盤)
備考 トニェッティ(トネッティ)氏はオーストラリア出身,オーストラリア室内管弦楽団の芸術監督兼リーダーとのこと。
参考url:Buywell(オーストラリアの通販ページ)

バロックヴァイオリン(?)による演奏(ガット弦を張り,バロックピッチのA=415Hzにチューニングした,とあります)。 時折装飾が織り込まれています。 微妙なテンポの崩し,弓のスピードコントロール,力の抜き方が絶妙でニュアンスに富む豊かな表情を生み出しています。 全体に柔らかく軽いタッチで,明るく軽やかで優しい音楽に仕上がっています。 音色はやや細めですが,伸びがあり透明感があって美しく,荒れることはほとんどありません。 自分の思いを確実に音に変換する,技術力の確かさも感じられます。 バロックヴァイオリンの良さが現代的な感性で活かされた,そして,どこを切っても奏者の匂いが感じられる個性的な好演奏です。 表現が一貫しており,どう聴いて欲しいのかが何となく伝わってくる気がします。

録音:

ホールでの録音で,少し残響が感じられるものの,楽器音そのものは比較的近接で明瞭に,解像感高く,美しくとらえられています。 高域の伸び感も十分あり(ちょっときつめかも),音色も自然に感じられます。 もう少し残響を抑えて欲しかったところですが,残響の質も悪くないと思いますので, 私の好みの録音とは方向が違うものの,まずまず納得できる好録音です。 残響を取り入れるなら,せめてこういう音のとらえ方をして欲しいものです。

パルティータ第三番の第二曲以降,なぜか左右チャネルの相関が希薄になります。 ヘッドホンで聴いていると,頭がねじれるような違和感が走ります。 ちょっと残念です。

(記2006/02/01)


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演奏:3.0
録音:3.0

千住真理子

レーベル Victor Entertainment
収録曲 全集
録音データRecorded on January 18(BWV1001), August 5(BWV1002), March 23(BWV1003), September 27(BWV1004), May 16(BWV1005) & October 13(BWV1006), 1994 at PHILIA HALL, Yokohama
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 VICC-40229/30 (P)(C)1995 ビクターエンターテイメント(株) (国内盤)

この曲に対する強い思い入れが丹念に,丁寧に織り込まれています。 感情の起伏が音に,そして音楽の流れにそのまま大きな起伏となって表れているように思います(「熱っぽく」はありますが「激しく」ではないです)。 大きく共感を覚えるところもあれば,ちょっとやりすぎかなと思えるところもあり,表現が練り切れておらず, 少し感情移入に頼りすぎているのではないかという印象を受けます。

丁寧かつ思い切りの良いボウイングから出てくる音はなかなか聴き応えがあります(ソナタ第三番のフーガなど特に素晴らしく聴き惚れます)。 音色が少しざらついているのが残念です。 全体にゆっくりしたテンポであり,無理な表現をされていないので崩れることはないのですが, 技術的に詰め切れていない思えるところが散見されるのが惜しいところです。 この演奏,健闘されていますし,実は結構いいじゃないかと思ってしまったのですが,不満も大いにあるということで...

録音:

録音時期が1曲ずつ異なり,それぞれに音作りが少しずつ異なりますが,全体としては違和感はありません。 比較的近接での録音だと思うのですが,残響の取り込みが少し多めで,明瞭感が落ち,音色がくすんでしまっているのが残念です。 また,なぜかどの曲でも音に連動して「ジッ」という歪のような付帯音がまとわりつきます。 演奏に伴うノイズには聴こえないのですが...何でだろうと思います(複数の環境で同じように聴こえるので再生機器の問題ではないと思います...盤の劣化?)。 この点も印象が良くありません。

P.S.

1回目に2.0点という評を付けていましたが,改めて聴き直してみて,なんでそんな点を付けてしまっていたんだろうと思います。 長い間そのまま放置していて申し訳ありませんでした(でもやっぱりちょっと厳しめのコメントになってしまいました)。 千住さんは現在も精力的にバッハ無伴奏を演奏し続けておられるようで,今の千住さんがどのような演奏をされているのか興味深いところです。 この路線の演奏を突き詰めていって欲しいと思います(ぜひ再録音を!)。

(記2006/01/19) ※2回目
(記2002/05/09)


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演奏:3.5
録音:3.5

エルマー・オリヴェイラ(Elmar Oliveira)

レーベル Elan Recordings
収録曲 ソナタ第一番,パルティータ第二番
録音データ9/1988 at St. Matthew's Church, Hyattsville, Maryland
使用楽器 Antonio Stradivarius (1692) (モダン仕様)
所有盤 CD 2212 (P)(C)1989 Elan Recordings (輸入盤)
カップリング曲:Marutinu/Three Madrigales for Violin and Viola (Va: Sandra Robbins)
備考 参考url:オリヴェイラ氏公式Webサイト

至極オーソドックスな演奏に思います。 遅いテンポで一歩一歩踏みしめるように,丁寧に,慎重に演奏されているため, 音楽が前に流れず歯がゆい思いをしたり(ただし,ソナタ第一番のPrestoとパルティータ第二番のGigaは推進力に満ちていて素晴らしい), 楽節(?)の終わり毎に見栄を切るように拍をのばしたりするところに野暮ったさを感じることもありますが, 音楽を丹念に緻密に仕上げていく姿勢には心打たれるものがあります。 さらに,磨き上げられた強靱な鋼を連想させる,硬質で渋く輝く音色が大変魅力的です。 少しスタイルの古さを感じますが,地味ながらも高い技術力に支えられた生真面目な演奏はやっぱりいいなぁ,と素直に思います。

録音:

教会での録音のようですが,残響はそれほど感じられません。 ただ,比較的初期の反射音成分が多いのか,音色が少しくすんでいます。 楽器音を解像感高くとらえているだけに,この音色のくすみは残念です。 私の好きなタイプの録音なので3.5点としましたが,もう少しクリアにとらえて欲しかったと思います(大おまけです)。

(記2006/01/06)


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演奏:3.5
録音:2.5

アラ・マリキアン(Ara Malikian)

レーベル Warner Music Spain
収録曲 全集
録音データ不明
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 5046701432 (P)(C)2003 Warner Music Spain, S.A. (輸入盤)
備考 参考url:マリキアン氏公式WebサイトEl Corte Ingles(スペインの通販サイト)

モダン仕様のヴァイオリンによる素直な演奏ですが,重音を分散和音的に,そして一番上の音だけをふくらますような弾き方にピリオド奏法的なところも感じます。 全般に落ち着いたテンポで丁寧に演奏されており,重音もアクセント的に一気に弾き鳴らすことはせず, 音楽の流れよりも美しく響かせることに主眼が置かれているように思います。 その結果,音色もとても伸びやかで美しく印象が良いのですが,逆に特にフーガなどで音楽が少し沈滞するように感じられるところもあり, 痛しかゆしというところです。 一方,ソナタの終楽章などの急速楽章は前向きなテンポがとても気持ち良く,落ち着いた中にも適度な変化,緩と急のコントラストが明確にあって, 最後まで楽しく聴くことができました。

録音:

残響時間のやや長い環境での録音ですが,楽器音を比較的近接でとらえているので,明瞭感,解像感は良好で, 残響量の割に印象の良い録音です。 音色は残響の影響を受けてやや変化が感じられるのが惜しいと思いますが,残響が許せる方には好録音であると思います。

ただ,なぜか強い音で歪んでいます。 貧弱な再生機器で,能率の低いヘッドホンを無理矢理ドライブしたときに発生する,あんな感じのざらついた付帯音がまとわりつきます。 複数の機器で同様に発生していますので,録音側の問題だと思います。 これがなければ3.5点を付けるところですが,この分を差し引いて2.5点としました。 残念です。

(記2005/12/16)


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演奏:3.5
録音:4.0

シュムエル・エルバス(Shmuel Elbaz) (*マンドリン)

レーベル 自主製作
収録曲 ソナタ第一番,パルティータ第一番,第二番
録音データEshel Studio, Tel Aviv, October 2003
使用楽器 記載なし(マンドリン)
所有盤 品番なし (P)(C)2004 Shumuel Elbaz. (輸入盤)
備考 エルバス氏は,1966年イスラエル生まれのマンドリン奏者で,Kerman Mandolin Quartetのメンバー。 参考url:CD BabyのCD紹介ページ

クラシックマンドリンによる演奏。 マンドリンは調弦がヴァイオリンと同じ(はず)なので,編曲はほとんどされていないと思います。 マンドリンというと,トレモロ奏法を思い浮かべてしまうのですが,この演奏ではトリル以外では使われていません。 全体的にはどちらかというとブルーグラスのマンドリンの印象に近いです(私だけかも)。

演奏は意外にも(失礼!)たいへんしっかりしており,技術的安定感がありますし,細部の表現にまで気配りが行き届いています。 速いパッセージでも崩れることなく,気持ちのよいテンポで弾ききっています。 音そのものにも力があり,決して平板になることなく活気ある音楽になって耳に届きます。 そして,マンドリンの気楽で素朴な響きと,どちらかというと堅いバッハの音楽とのアンマッチがまた楽しい! 緩徐楽章などももたれることなくサラッと弾き流していますし, スチール弦のシャーンという透明感ある美しい響きを活かした和音なども聴きものです(シャコンヌのあの延々と続く分散和音など!)。

録音:

若干残響がありますが,楽器音はオンマイクで極めて明瞭にとらえられており, 高域の伸び感も十分にあり,音色も自然で申し分ありません。 マンドリンという楽器そのものの美しい響き,ピッキングのニュアンスを良くとらえた好録音です。 もう少し残響を抑えてくれればなお良かったのですが,楽器音そのものをほとんど邪魔していないので十分に許せます。

P.S.

使用されているマンドリンはクラシックマンドリンのようですが,私の知っている底の丸いものではなく, ブルーグラス等で使われているようなフラットマンドリンのような底の平らな形をしているようです。 タイトルにVol.1とありますが,Vol.2はまだ発売されていないようです。 Vol.2にも期待します。

(記2005/11/22)


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演奏:4.0
録音:3.0

ギドン・クレーメル (Gidon Kremer)

レーベル ECM
収録曲 全集
録音データ2001年9月25日-29日 ロッケンハウス,聖ニコラウス教会(BWV1002,1004,1006),2002年3月10日-15日 リガ(BWV1001,1003,1005)
使用楽器 Giuseppe Guarneri del Gesu, the "Ex-David" from 1730 (モダン仕様)
所有盤 UCCE-9068/9(UCCE-2045/6) (P)(C)2005 ECM Records GmbH (国内盤)
発売・販売:ユニバーサルミュージック株式会社
備考 クレーメル氏2回目の全集録音。

強いアクセントを伴う(彼らしい)思いっきりの良い奏法が基調ですが, 絶妙な緩急強弱で実に多彩なニュアンスが織り込まれ, 広大な大地の地平線を眺めているような,果てしない表現世界が目の前に広がります。 様々なエピソードを語るようにそれぞれの楽章が描写され, 全体として六編の壮大な物語を構成するかのような一貫したストーリー性さえ感じられます。

難所を全く感じさせない曲運び,一挺のヴァイオリンから出ているとは思えない和声の響き,声部表現など, テクニックは冴え渡っていますし,楽器の持つ能力を極限まで引き出すようなダイナミックレンジの広い鳴らしっぷりも見事です(従って,やはり音色はどちらかと言えば刺激的で美しくはないですが...というか,そもそも美しい音を出そうという気がない?)。 しかし,この演奏においては,こういった表面的な要素よりも,内面的な要素が強くにじみ出ているように感じられます。

この演奏,彼が長年様々な試みを通して培ってきた表現力がいかんなく発揮されたオリジナリティの強い音楽であり, そしてまた現代的感性で磨き上げられた紛れもないバッハでもあると思います。 この曲の表現可能性はまだまだ無限にあるんだということ,様々な解釈や表現を受け入れる極めて懐の深い音楽なんだということを, 改めて思い起こさせてくれます。

しかし,私は,この演奏を素晴らしいと思いつつも,どこか得体の知れぬ薄気味悪さを感じ, 実のところ諸手を挙げて賞賛する気になれないでいます...ごめんなさい... いつか真に理解できる日がやってくるのだろうか...

録音:

よく響く環境で録音されており,残響がかなり多く取り入れられています。 楽器音は比較的明瞭にとらえられており,また,残響の質も悪くないため,残響量の割には印象は悪くなく, 豊かな響きを好む方には好録音と言えるかもしれません。 しかし,やはり残響過多で楽器音への被りによる音色への影響は避けられず, 変にギスギスしていますし,残響のまとわりつきも鬱陶しく感じられます。 残念ながら私の好みからは大きく外れます。

二ヶ所で録音されていますが,録音の傾向はほぼ同じで,通して聴いても全く違和感がありませんが, どちらかと言えば,リガでの録音よりも聖ニコラウス教会での録音の方が響きが素直で多少良いように感じられます。

P.S.

クレーメル氏の20年ぶりの再録音ということで,一体どんな演奏が聴けるのか, 期待と不安が入り交じる複雑な心境で聴き始めました。 そして,ある意味,至極まっとうに年齢を重ね成長されたんだという当然の結果に, ちょっぴりさびしさを感じてしまいました(私は一体何を期待していたのか...あぁ情けなや...)。

(記2005/11/18)


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演奏:4.0
録音:3.5

ギドン・クレーメル (Gidon Kremer)

レーベル Philips
収録曲 全集
録音データ1980年3月23-29日(BWV1001,1002),1980年2月5-6日(BWV1003,1005),1980年6月14-16日(BWV1004,1006),オランダ,ハーレム,ルター教会
使用楽器 ストラディヴァリウス?(詳細な記載なし)(モダン仕様)
所有盤 PHCP-20360/1(454 325-2) (P)1981 Philips Classics (国内盤)
発売・販売:ユニバーサルミュージック株式会社
備考 クレーメル氏1回目の全集録音。

多少の弓の暴れなど何のその,前のめりに曲をドライブする,とにかくこの尋常でない推進力に圧倒されます。 しかし,単に勢いだけに頼ったり,その技術力に溺れたりした演奏では決してありません。 一つ一つの音には明確に意志が込められ(緩徐楽章でさえ!),確信に満ちた揺るぎない表現を貫いています。 そして,力強く鋭い弓使いで,異次元の響きと動感を獲得することに成功しています。

表現も音色も極めて刺激的で反発を覚えることもありましたが, 真正面から真摯に取り組み,卓越した技術力で思いの丈をストレートに具現化しようとするその姿勢に, 素直に共感・感動できる快演でもあります。

録音:

比較的オンマイクで明瞭に楽器音をとらえた好録音です。 わずかに響きを伴っており,すっきりしない面が残りますが, それでも解像感高く細部までしっかりと伝えてくれます。 あともう一歩というところ。 惜しい!

P.S.

LPの時代,シェリング盤の次に購入した思い出深い演奏です。 あまりの強烈さになかなか受け入れることが出来ませんでしたが, 今では最も気に入っている全集の一つとしていつも手元に置き,聴き続けています。

(記2005/11/18) ※2回目
(記2002/05/30)


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演奏:3.5
録音:3.0

ポール・ズーコフスキー(Paul Zukofsky)

レーベル Vanguard
収録曲 全集
録音データ1971, 72
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 VSD 71194/6 Vanguard (輸入盤) (*LP)

猛烈とも思える推進感に圧倒される演奏です。 急速楽章では破綻・崩壊寸前のぎりぎりのところ狙っているのか,ばく進的テンポ設定に度肝を抜かれます。 最初は乱暴とも思える弾きっぷりに反発を覚えましたが,何度も聴いているうちに粗さは気にならなくなり, 勢いある表現に惹きつけられるようになりました。 そうなってくると,逆に,比較的落ち着きのあるパルティータ第一番,ソナタ第二番などはちょっと物足りなくなってきます。 不思議なものです。

録音:

曲ごとに少しずつ録音の質が違い,2.5~3.5程度のばらつきを感じます。 パルティータ第三番が残響感もほとんどなく生々しい録音で最も好ましいです。 一方パルティータ第一番,ソナタ第二番,第三番はあまり良くなく,やや距離感があり,響きが被って明瞭感が落ち,音色も曇りがちです。 パルティータ第三番の録音で統一して欲しかったところです。

P.S.

ズーコフスキー氏は1943年生まれ,アメリカ出身。 私が探した限り,CD化されていないようです。 なかなかの快演ですので,ぜひCD化してほしいところです。 →CD化されました!(下記参照)

(記2004/04/08)(改2005/10/20)


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演奏:3.0
録音:3.0

ヴァータン・マヌージアン(Vartan Manoogian)

レーベル University of Wisconsin-Madison School of Music
収録曲 全集
録音データ記載なし
使用楽器 Joannes Baptista Guadagnini (1747年製) (モダン仕様)
所有盤 品番なし (C)2004 University of Wisconsin-Madison School of Music (輸入盤)
備考 参考url: UW-Madison School of Music Online CD Store

一つ一つの音のキレの悪さ,音程の甘さ,リズムの崩れなど,技術面での不満は大いにあります。 しかし,こういった弱点を持ちながらも,果敢に表現に挑戦し,そのスピード感ある前向きな流れに圧倒される曲, 雄大で深みある表情を持つ曲など,感銘を受ける曲がいくつもあります。 一方で,やはり技術的弱さからくるギクシャク感が勝ってしまう曲もあり,出来不出来の差が大きく, 結果,全体的に大味な印象を受けてしまうのが残念なところです。

録音:

残響感が少し多めにありますが,楽器音そのものは比較的しっかりととらえられており,この点では好ましく思います。 しかし,響きそのものに癖があり,量は少ないものの付帯音となってまとわりつきます。 また,これが音色の癖,高域のヌケの悪さにもつながっていると思います。 オーディオ品質に関しても,少し歪み感が多いように感じられ,クオリティも今ひとつという印象です。 曲によって少しずつ録音の傾向が異なり印象も異なりますが,総合的に見て上記のように感じられます。 前半3曲が幾分マシ,それに比べ後半3曲がやや落ちるように感じられます。

P.S.

読み方は,「ヴァルタン・マヌーギアン」かもしれません。 マヌージアン氏は,ジュリアード音楽院を経て,スイス・ロマンド管弦楽団のコンサートマスターを務め, 現在,University of Wisconsin-Madison School of Musicの教授とのこと。

(記2005/10/18)


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演奏:3.5
録音:3.0

高橋満保子 (Victor 2001) (全集)

オーソドックスなスタイルの演奏です。 音楽の密度の高さ,一つ一つの音の移り変わりのニュアンスの豊かさ,ふくよかで暖かい音色など, 実に充実感ある音楽を聴かせてくれます。 技術的には,全体に今ひとつキレに欠け,稀ではありますが音程がばらけてしまうように感じられるところがあるなど若干の不満が残りますが, 真面目でストレートなバッハとして聴き応え十分の好演奏に思います。 最初は何の変哲もない普通の演奏に聴こえたのですが,聴き込むうちにだんだんその良さがわかってきました。

録音:

やや残響が多めに取り入れられています。 楽器音自体はしっかりととらえられており,明瞭感は悪くありませんが, 残響の影響で音色のくすみ,ヌケの悪さが感じられますし,残響のまとわりつきが気になります。 CD1とCD2では,CD2の方がやや間接音比率が高く,楽器音が響きに埋もれがちであり,若干印象が良くありません。 正直なところ全体的な印象はそれほど悪くないのですが,やはり私の好みとは離れており,少し厳しいとは思いましたが3.0点としました。

所有盤:

NCS-393-394 (P)2003 Victor Entertainment, Inc. (国内盤)
録音:2001年4月11, 12日/5月23, 24, 25日 バッハホール

P.S.

高橋満保子氏は,京都出身,1970年のチャイコフスキー・コンクールでディブロマ賞を受賞, 現在,神戸女学院大学音楽学部非常勤講師。 製造元はビクター・エンターテイメントですが,自主製作的なCDではないかと思います。

(記2005/10/03)


CD image
演奏:4.0
録音:3.5

ルミニッツァ・ペトレ(Luminitza Petre) (自主制作 録音不明) (全集)

モダン楽器による正統路線の演奏です。 緩急強弱はあくまで控えめ,聴き手に強くアピールするタイプではなく, ひたむきに,誠実に音楽を創り上げていっているように感じられます。 確かな技術をもって,力強く揺るぎない,そして見通しの良い音楽を構築しています。

しかし,そういった演奏でありながら,息苦しさがなく,緊張感を強いられることもありません。 一つ一つの音符に込められた細やかな表情が,端正で気品ある演奏の中にほのかに情緒を漂わせ,聴き手を暖かく包み込んできます。 心の動きがそのままアーティキュレーションとして音楽に織り込まれていく, 奏者と呼吸を共にするような,そんな自然で豊かな表現力が素晴らしいです。 伸びのある艶やかな音色,重音の響きの美しさも特筆できます。

さらに,全曲を支配するテンポ感の良さ,特に速い楽章での推進力! 淡々としたインテンポ感の強い着実な曲運びの中に感じられる独特のドライブ感, 緩徐楽章での情感豊かな表現とのコントラスト,実に気持ちがいいです。

伝統的なスタイルの中に,控えめに,しかし,くっきりと,奏者の言葉が刻み込まれています。 完成度が云々といった言葉では到底語り尽くせない魅力にあふれています。 「表現する」とはこういうことなのかと,目から鱗が落ちる思いです。 素晴らしいです。 感動しました。 (ちょっとほめすぎか...)

録音:

残響がやや多めに取り入れられている録音ですが,明瞭感,解像感は比較的良好です。 楽器音そのものが適度な距離感をもってしっかりと,肌触りがわかるほどにとらえられています。 とはいえ,やはり響きの音色への影響は避けられず,今ひとつスキッとしない面が残ります。 私の好みではないのですが,残響量の割に印象が悪くないため3.5点としました。 しかし,もう少しすっきりととらえて欲しかったと残念に思います。 惜しい録音です。

なお,パルティータ第二番シャコンヌで,0:34~0:39の約5秒間,位相に乱れがあり, 左右チャンネルがほぼ無相関になっています(リサジュー波形でも確認)。 なぜこんなことになっているのかよくわかりませんが,明らかに違和感を感じます。 ちょっとしたことですが,残念です。

所有盤:

品番なし (ラ・ヴォーチェ京都 PLV-1001) (輸入盤)

P.S.

ペトレ氏は,ルーマニア出身。
ラ・ヴォーチェ京都によると, 「S. ゲオルギュとZ. ブロンに師事し,現在バーデン=ヴュルテンベルグ州立歌劇場(シュトゥットガルト)のコンサートマイステリンとして活躍中」とのことです。 使用楽器はマッテオ・ゴフリラー(Matteo Gofriller 1628)。

(記2005/09/20)


CD image
演奏:4.0
録音:3.0

ユリア・フィッシャー(Julia Fischer) (Pentatone 2004) (全集)

要所要所でのアクセントやテンポの揺らし方に個性的な側面が感じられるものの, 全体としては,過度の感情移入や個性的表現を避け,モダン楽器らしい端正で素直な表現によって, バッハの音楽の表現のあり方を追及しているかのように感じられます。 技術的にも全く隙がなく,確信に満ちた足取りで淀みなく躍動的に音楽が流れる様は圧巻です。 伸びやかなボウイングから繰り出される響きの美しい音色も素晴らしいです。

現在までに築かれてきたモダン楽器によるバッハ演奏を完全に消化し, スタンダード路線の極めて完成度の高い音楽を構築していると思います。 今後,「彼女らしさ」を加えて,個性的な演奏へとさらに発展させていって欲しいと思います。

録音:

SACD Stereoでの試聴。 残響時間が長いというわけではありませんが,初期反射より少し遅めではないかと思われる間接音比率が高く,明瞭感に悪影響を及ぼしています。 楽器音に濁りが生じ透明感がなく,中域に付帯音が感じられ,高域の伸び感のないくすんだ音色になってしまっています。 演奏が素晴らしいだけに,このすっきりしない録音は本当に悔しく思います。

CD層は録音レベルが少し低く,最後の1ビットがほとんど遊んでしまっています。 もう3dBくらいは上げられるのではないかと思います。 少しもったいない気がします。

所有盤:

PTC 5186 072 (P)(C)2005 PentaTone Music b.v. (輸入盤) (※東京エムプラス直輸入盤)
Recording venue: Doopsgezinde Singelkerk, Amsterdam, 12/2004
SACDハイブリッド盤(SACD Multi/SACD Stereo/CD Stereo)

P.S.

フィッシャー氏は,1983年ドイツ,ミュンヘン出身。 国際コンクールでの優勝歴が8回あり,そのうち3回がなんとピアノによるものとのこと。 このバッハはフィッシャー氏21歳での録音。

このCDには,フィッシャー氏のインタビューと, パルティータ第二番のサラバンド,ジーグの録音風景を収録した特典DVDが付属していました(限定盤)。

(記2005/08/29)


CD image
演奏:3.0
録音:3.0

コーネリア・レシャー(Cornelia Loscher) (ORF 2004) (パルティータ第一番)

リズムを際立たせるような,独特の崩し方,緩急の付け方に特徴があります。 曲を手中に収め,入念にコントロールしているかのように感じます。 独自性を出そうという気持ちはよくわかるのですが,私としては今ひとつしっくりとせず, 少々聴き疲れしてしまうのが残念なところです。 決して悪い演奏ではないのですが,もう少しなにか惹きつけられるところが欲しかったと思います。

録音:

残響はそれほど多くないのですが,初期反射音の割合が多いのか,音色に透明感がなくすっきりしません。 やや距離感があり,明瞭感も今ひとつ良くありません。 惜しいと思います。

所有盤:

ORF CD 380 (P)(C)2004 (輸入盤)
"Solo ... spielt die Ö1-Geige"
カップリング曲:イザイ/無伴奏ヴァイオリンソナタ ト短調 op.27 Nr.1, アラン・リド/牛のフェルディナント(語りとヴァイオリンのための), ブーレーズ/無伴奏ヴァイオリンのための賛歌

P.S.

レシャー氏に関する情報がほとんど見つかりませんが,
CDショップ カデンツァによると, 1980年ザルツブルグ生まれとのこと。 リドの曲では,弾き語りに聞こえますが,本人の語りかどうか定かではありません。

(記2005/08/16)


CD image
演奏:3.0
録音:2.0

ジル・コリャール(Gilles Colliard) (EMEC 2003) (全集)

バロック仕様のヴァイオリンによる演奏ではないかと思います。 緩急,強弱を巧みに利用して表情豊かに表現されています。 アタックを抑えた柔らかなトーン,響きが心地よいです(もちろん残響のことを言っているのではありません)。 急速楽章で安定感を欠いているのが少々残念です(音程,リズムの微妙な乱れ?)。

録音:

残響の取り込みの非常に多い録音です。 しかも残響時間が長く,明らかに後続の音に被って混濁しています。 当然明瞭感も良くなく細かい音型なども聴き分けが困難ですし,音色もまともではありません。 楽器の質感なども全く感じ取ることが出来ません。 残念ながら私にとっては最悪に近いと言わざるを得ません。

さらに,編集点としか思えない不連続点が散見されます(例えば,ソナタ第三番フーガの4:10あたりなど)。 音楽の流れそのものはそれなりにつながっているのですが,その背景にある残響音が不自然に途切れています。 編集されたという確証があるわけではありませんが,仮に編集点ではないとしても,違和感を感じることには変わりありません。 些細なことですが,こんな些細なことであっても興ざめです。 編集そのものについては否定的に思っているわけではありません。 やるならバレないようにうまいことやってくれ,と言いたいだけです。

所有盤:

E-060/1 EMEC Disribution (輸入盤)
Recorded at Santa Enfemia de Cozollos, Olmos de Ojeda, Palencia (Spain), August 9th, 10th and 11th 2003.

(記2005/07/13)


CD image
演奏:3.0
録音:3.0

ヴァネッサ・メイ(Vanessa Mae) (Angel 1996) (パルティータ第三番)

奏者の外見から受ける印象とは全く異なり,ごく普通の演奏に思います。 癖がなく,また音色も美しく聴きやすいのですが,まだまだ曲を自分のものに出来ていないのか,今ひとつ棒弾きという感が否めません。 テンポどりもぎこちなく,無理矢理表情をつけようとしているようで,少し違和感があります。 気取っているというか,吹っ切れていないというか, 「クラシックなのでまじめに弾いてみました」みたいなものを感じるからでしょうか(思いっきり先入観かも...ごめんなさい)。

録音:

高域の伸び感もあり,楽器音としては比較的自然で印象は悪くないのですが, 中域の響きのかぶりがやや多く,付帯音が鬱陶しく感じられます。 この癖のある付帯音によって,再生装置毎に音の印象がころころ変わります。 それほど残響量が多いわけではなく,悪い録音ではないと思うのですが, なぜか息苦しくイライラしてきます。 ちょっと損していると思います。

所有盤:

7243 5 55395 2 6 (P)(C)1996 EMI Records Ltd. (輸入盤)
"THE CLASSICAL ALBUM"
カップリング曲:Brahms/Scherzo for Violin and Piano, Beethoven/Romance No.2, Bruch/Scottish Fantasy, Trad./I'm A-Doun for Lack O' Johnnie(A Little Scottish Fantasy)

(記2005/06/24)


CD image
演奏:4.0
録音:3.5

久保陽子 (自主製作 2004) (全集)

確固たる意志,揺るぎない信念を感じます。 美しさや完成度を求めず,自分の思いをありったけ楽器にぶつけて表現に集中する真摯さに心打たれます。 実際,音色はきつくガサガサしていますし,技術的にも隅々まで磨き上げているという感じではありません。 しかし,そういった点をカバーするに余りある音楽的魅力にあふれています。 とりわけ私が気に入ったのは,その自信に満ちた推進力です。 全体にテンポが速めなのですが,単に速いだけでなく,音楽を前へ前へと推し進めようとする力強さが胸のすく疾走感につながっています。 奏者の強い思いが見事に具現化されていると思います。 拍手!

録音:

残響が少々気になり,その質もあまり良いとは思えないのですが, 楽器音はまずまず明瞭感があります。 高域成分は十分に持っていますが,伸びているという感じではなく,少しきつい感じがします。 解像感の高さにはつながっていますが,自然さという点で今一歩で,どことなくすっきりしません。 と,不満も多い録音ですが,総合的な印象は悪くないということで,大おまけの3.5点です。

所有盤:

KBYK-1002/03 (P)(C)2004 KUBOYOKO (国内盤)
録音:2004年1月~6月 水戸芸術館コンサートホールATM

(記2005/06/23)


CD image
演奏:3.5
録音:4.0

レイチェル・バートン・パイン(Rachel Barton Pine) (Cedille 2004) (ソナタ第一番,パルティータ第二番)

バロック仕様の楽器での演奏(A=415Hz)。 ごく自然に弾きこなしているという印象で,バロックヴァイオリンであることを強く意識したアプローチではないように思います。 抜群の技術力を駆使し,隅々まで神経を通わせた高い完成度を感じさせる音楽を構築しています。 自己主張を抑え,安易に歌うことを避け,ストイックにバッハを追求するかのような姿勢に共感を覚える一方, そんな中でも何かもう一つ光るものが欲しい,と,どこか物足りなさを感じるところもあります。 ガット弦が弓圧に耐えきれず,弦が悲鳴を上げているように聴こえるのも少々残念に思います。

と,不満を述べましたが,高いレベルでバランスの取れた素性の良い素晴らしい演奏であることには違いないと思います。 自己表現をさらに磨いて光と深みを加えていって欲しいと思います。 今後に期待!

録音:

ほんのわずかに残響感がありますが,楽器音にはほとんどかぶっておらず,クリアで極めて明瞭感の高い好録音です。 音色もきつくなることなく自然で聴きやすいです。 わずかな残響が薄くベールのようにかぶって質感を覆い隠しているのが惜しいです。 とはいえ,私としては十分に納得できる良い録音です。

所有盤:

CDR 90000 078 (P)(C)2004 Cedille Records (輸入盤)
"Solo Baroque", Recorded January 29-30, and February 1, 2004 at WFMT, Chicago
カップリング曲:Westhoff/Suite II in A Major, Biber/Passacaglia in G Minor, Pisendel/Sonata in A Minor

P.S.

公式サイトがあります。 私としては,アグレッシブなバッハを期待していたので,ちょっと肩すかしを食らった気分です。 バロックヴァイオリンという選択は本当に残念です。

(記2005/06/03)


CD image
演奏:3.5
録音:0.0

ウート・ウーギ(Uto Ughi) (Fone 2004) (ソナタ第一番,パルティータ第二番)

ライヴということもあって,演奏上の傷が散見され,また,音程もしっくりこないところが多く, 正直言って技術的には大いに不満です。 しかし,この全編にわたる厳しい姿勢,匠の技とも言える味わい深さ,なかなか聴かせるじゃないですか。 氏が長年かけて培ってきた「芸」の世界が堪能できます。 時代を感じさせるちょっと古風な芸風が,これまたいい感じです。 これぞライヴの醍醐味!

録音:

楽器音が明瞭にとらえられた好録音。 会場の響きも最小限に抑えられています。 聴衆のざわめきがやや多めに取り入れられていますが,それほど気になるものではありません。 オーディオ的なクオリティは決して高くはありませんが,直接音主体で音色も自然であり, 細かい表情の変化までしっかりと聴き取れます。 ライヴの音のとらえかたとしては,かなり私好みと言えます。

しかしこの録音,残念なことに疑似ステレオ化処理されている疑いが濃厚です (これだけ楽器音を明瞭にとらえているにも関わらず,リサジュー波形を見ても左右の信号にほとんど相関が見られません)。 ヘッドホンで聴いていると位相操作されているときに感じる,頭がねじれるような,強烈な違和感が走ります。 また,スピーカ聴取でもわずかながら違和感が伴います。 疑似ステレオ化処理の確証があるわけではありませんが,聴取に苦痛が強いられることも事実,抗議の意味を込めて0点とします。 何度も申し上げますが,疑似ステレオ化処理は百害あって一利なし! なぜ最新の録音でこんな処理が必要なのか,モノラル(的)でなぜ悪いのか,理解に苦しみます。 是非やめていただきたい。

所有盤:

FONE 2005 CD (P)(C)2005 The Music Production (輸入盤)
"Live in Roma", Auditorium Parco Della Musica Sala Santa Cecilia, Roma, 26 Novembre 2004.
カップリング曲:Ysaye/Sonata No.4 Op.27, Paganini/Capricci N.1, N.9, N.13, N.15, Paganini/Paganiniana

P.S.

SACD盤も同時に発売されているようです(FONE 034SA)。 SACDでもやっぱりこんな位相操作がなされているんでしょうか?

(記2005/06/01)


CD image
演奏:3.0
録音:3.0

レオニダス・カヴァコス(Leonidas Kavakos) (ECM 2002) (ソナタ第一番,パルティータ第一番)

バロック奏法的なタッチで,一種の軽さが感じられる演奏です。 時折装飾音符なども聴かれます。 重音など,和音を響かせるのではなく,分散和音的,装飾音的に扱うことで, 主旋律を際立たせようとしているように思います。 音色も透明感があり美しいです(ちょっと冷たい感じがしますが)。 技術的にも申し分ありません。 ただ,きれいにまとまった好演奏であるとは思うのですが,やや内向的な印象であり, 正直なところ少し物足りなさも感じます。

録音:

かなり残響量の多い録音です。 音の輪郭は比較的失われていませんが,残響時間が長いこともあって明瞭感が良いとは言えません。 残響が楽器音に被っているので,音色にもかなり影響が感じられます。 響きの質は悪くないとは思いますが,響きのまとわりつきが鬱陶しく,私の好みではありません。 演奏者の息づかいがかなり大きく入っているのですが,楽器の距離感に対して呼吸音がかなり近く感じられ, ちょっと違和感を感じます。

所有盤:

ECM New Series 1855 (472 7672) (P)(C)2005 ECM Records GmbH (輸入盤)
Recorded October 2002, Radio Studio DRS, Zurich
カップリング曲:Igor Stravinsky/Duo Concertant, Suite Italienne

(記2005/05/18)


CD image
CD image
演奏:3.5
録音:3.5

フランソワ・フェルナンデス(Francois Fernandez) (Flora 2002) (全集)

バロック・ヴァイオリンによる演奏。 短い音符は軽い弓づかいで小気味よく,長い音符はノンヴィブラートでの透明感ある響きが美しく, バロック・ヴァイオリンの長所がうまく活かされていると思います。 自然なフレージングで癖がないのですんなりと耳に入ってきますし,なにより全体を通して明るい雰囲気で貫かれているのが好印象です。

一方,一つ一つの音の処理にばらつきがあったり,急速楽章でテンポが引っ張られたり,端折ったように聴こえたりと, 技術的な正確さという点では少々不満を感じます。 惜しいです。

録音:

教会という非常に残響の多い環境での録音ですが,比較的オンマイクで録音されているのか, 直接音が主体で明瞭感は悪くなく,音色もそれほど失われていないように思います。 取り入れられてる響きの質も悪くないと思いますので,響きが許容できる方には好録音と言えるかもしれません。 とはいえ,響きのまとわりつきはやはり鬱陶しく,私の好みの録音でないことには変わりありません。

所有盤:

(Vol.1)FLORA 0402, (Vol.2)FLORA 0403 (C)KELYS productions (輸入盤)
Enregistre en juillet 2002, a l'eglise de Basse-Bodeux (Belgique)(録音:2002年6月,ベルギー,アルデンヌ,バス・ボデュー教会)

P.S.

解説が英語ではないので,何が書いてあるのか全くわからないのですが, このCDを輸入している
サラバンドのホームページで,以下のように紹介されています。

「シキスヴァルト・クイケンに師事し,クイケン・クァルテットの第2ヴァイオリニストやラ・プティト・バンドのコンサートマスターを務めてきたフェルナンデスの「無伴奏」。 彼は全曲の表題("Sei Solo a Violino senza Basso accompagnato")の冒頭にある「Sei Solo」を「6つの独奏曲」ではなく「あなたは一人である」という意味でとらえ, このCDの制作を自分一人だけで行うことにこだわりました。 録音場所である教会にヴァイオリンを携えて一人でこもり,テープを回しっぱなしにして演奏,録音。 編集とブックレット制作の技術的な面以外すべて,自分の手だけでこの全曲CDを完成させたのです。」 - サラバンドのホームページより

サラバンドのホームページは,本家FLORAのホームページからもリンクが張られていました。

(記2005/04/29) Vol.2を加え全集扱い
(記2004/01/06) Vol.1のみ


CD image
演奏:3.5
録音:2.5

ダニエル・フロシャウアー(Daniel Froschauer) (Deutsche Schallplatten 2004)
(ソナタ第一番,第三番,パルティータ第三番)

正統的で落ち着きがあり,細部まで丁寧に仕上げられた好演奏です。 癖のないニュートラルな表現で,ほのかに暖かくホッとする雰囲気を持っています。 ロングトーンの透明感,重音の響きの美しさも素晴らしく思います(録音が良くなく,氏の本来の音色をストレートに聴けないのが本当に残念!)。 躍動感や緊張感はありませんが,頑張り過ぎず,日常に自然と溶け込むようなバッハもなかなかいいんじゃないかと思いました。

録音:

非常に残響の多い録音です。 比較的近距離で録音されているのか,運指時に発せられる雑音などもかすかに聞こえてくるような音のとらえ方です。 音の輪郭もぎりぎり失われずにいるので,何とか鑑賞には耐えうるのですが, とにかく残響時間が長いので,現在の音と過去の音とが混濁して明瞭感に著しく悪影響を及ぼしており, 音色も変にギスギスしたものになってしまっています。 残響自体は教会の実際の響きを忠実にとらえているものかもしれませんし, 「豊かな響き」と言えないこともなく,これを心地よいと思われる方もおられるかもしれませんが, 私にとってはこのまとわりつく残響が我慢の限度を越えています。

私はフロシャウアー氏の音に,音楽に,ダイレクトに触れたいだけなんです。 私は教会の中で演奏を聴きたいとも思わないし,教会の音場を自室で再現したいとも思いません。 私にとって教会の響きは,氏の素晴らしい演奏を曇らせてしまう阻害要因でしかないからです。 残念です。

所有盤:

TKCC-15294 (P)2005 Deutsche Schallplatten Records (発売元:徳間ジャパン) (国内盤)
2004年6月30日,7月1日 サンクト・ヤコブ教会(ウィーン,オーストリア)にて録音

P.S.

フロシャウアー氏は,1997年よりウィーンフィルのメンバー。 また,ピアニストの鳥羽泰子とチェリストのラファエル・フリーダーと
アリスタ・トリオを結成し, オーストリアと日本を中心に活動中とのこと。

(記2005/04/28)


CD image
演奏:3.5
録音:3.5

今井信子 (BIS 2001) (パルティータ第三番)

肩の力を抜いて,心の中から自然とわき出てくる喜びをそのまま音楽にしたかのようで, 明るく暖かく,飾らない素直さがとても心地よいです。 という演奏なので,パルティータ第三番という曲のキャラクターのせいもあるとは思いますが, この曲をとことん追求し,練り上げたという感じではなく, 気楽な気持ちでちょっと弾いてみました,というふうに聴こえます(もちろんそう感じるだけであろうとは思いますが)。 突き詰めた演奏とは別種の魅力を感じます。

録音:

かなり残響の多い録音ですが,楽器音がしっかりとらえられており,高域の伸び,楽器音の自然さが比較的よく保たれているのではないかと思います。 好みの録音ではありませんが,残響が与える悪影響がそれほど大きくなく,悪い印象ではありません。

所有盤:

BIS-CD-1229 (C)(P)2004 BIS Records (輸入盤)
"ANTIQUITIES"
カップリング曲:Bach/Italienisches Konzert BWV971 for solo accordion, Gamba Sonata No.1 BWV1027, Guillaume de Machaut/Motet 23, Rondeau 14, Heinrich Isaac/Amis des que, A fortune contrent, John Dowland/Lachrimae Antiquae, Can she execuse my wrongs, If my complaints

P.S.

アコーディオンの御喜美江さんとの競演盤。 今井さんがヴィオラではなくヴァイオリンを弾いておられることに驚きました。 ヴァイオリンでの無伴奏ヴァイオリン全曲録音を期待してもいいんでしょうか? (俄然期待してしまいますが...無理でしょうねぇ...)

(記2005/03/11)


CD image
演奏:3.5
録音:3.5

キャティー・ランズデール(Katie Lansdale) (Cyberphunx Music 1999,2000) (全集)

このCD,曲順がBWV番号順ではなく,s2-p1-s3/p2-s1-p3 という配列になっています。 まあこれはいいとして... パルティータ第一番の演奏順がちょっと変です。 通常,例えば Allemande - Double は,Allemandeを演奏してからDoubleを演奏する,という順序ですが, この演奏では,Allemandeの前半 - Doubleの前半 - Allemandeの後半 - Doubleの後半,という順序になっています。 リピートはされていません。 他の楽章も同様です。 意図については不明ですが,やはり奇異な感じがします。 また,解説書によると,パルティータ第三番の装飾は,バッハ自身の鍵盤楽器への編曲の装飾を参考にしているとのこと。

肝心の演奏ですが,大きな呼吸でのびのびと快活に表現されているのが非常に好印象です。 さらに,やや金属的ではありますが,ビブラート控えめの透明で伸びのある音色もすがすがしく魅力的です。 重音をサラッと流し,どちらかと言えばこの曲のポリフォニックな面を強調するよりも主旋律に重きを置くような演奏なので, 物足りなさを感じる面もあるものの,このような,はつらつと素直に音楽の喜びを表現した演奏もなかなか良いのではないかと思いました。 というキャラクターなので,長調のソナタ第三番やパルティータ第三番が最も楽しめます。 一方,パルティータ第二番などは,それでも少し構えているのか,少々伸びやかさに欠けるのが残念です。

録音:

残響が少しあってまとわりつく感じがあるものの,明瞭感,解像感はかなり良いです。 曲の終わりのロングトーンで,弓をあげるまでのかすれ音まで明瞭に聞こえてくるのは立派。 残響の影響か,少し音色に色づきを感じるのが残念ですが,手作り風の音作りが好感が持てる,かなり私の好みに近い録音です。 中でもパルティータ第三番はかなりいい出来に思います。

所有盤:

品番なし (C)2001 Cyberphunx Music Productions. (輸入盤)
Recorded 1999-2000 in Yale University's Sprague Hall.

P.S.

レーベルのホームページに演奏者の紹介が, また,バッハのCDの紹介も掲載されています。

(記2005/02/24)




演奏:
録音:

久保田巧

レーベル EXTON
収録曲 全集
録音データ (Vol.1 ソナタ集) 2002年3月19-21日,(Vol.2 パルティータ集) 2004年3月23-25日
山形・余目町文化創造館 響ホール
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 (Vol.1) OVCL-00119 (P)(C)2003 Octavia Records Inc. (国内盤)
(Vol.2) OVCL-00181 (P)(C)2004 Octavia Records Inc. (国内盤)

真面目でひたむき,感情を押しとどめ,この曲が持つ神聖さ,普遍性を追求するかのような演奏です。 パルティータにおいても舞曲的な要素はほとんど感じられず,まるで敬虔に祈りを捧げるかのような禁欲的な印象が強いのですが, そんな中でほんのりと感じられる暖かさ,情緒感が,この演奏をより感銘深いものにしています。 音色,響きの美しさも格別です。 表現的にも技術的にも,あらゆる面で完成度が高いと思います。 どちらかといえば躍動的な演奏が好きなのですが,その対極に位置するような演奏にも関わらず, 深い感動を与えてくれました。

全曲で160分を越えていますが(従って,これだけでもCD2枚に収まりきらない),遅いという印象は全くありません。 逆に,いつまでもこの音楽の中に身をゆだねていたいと思ってしまうほど充実しています。

録音:

わずかに残響を伴っていますが,極めて明瞭で解像感が高く,高域の伸び感も十分ある好録音です。 楽器音が自然で透明感があり,細かなニュアンスまでつぶさに,リアルに伝わってきます。 ホールでの録音としてはこれ以上望めないと思える出来です。 私の好みの音作り,音の捉え方とは少し違いますが,一般的にも優秀録音として通ると思いますし, 私としてもかなり満足しています。 どちらかといえば,先に発売されたソナタ集の方がピュアな感じがします。

P.S.

前回,録音評価を4.5点としていましたが,やはり私の好みと少々方向性が異なるということで, 今回4.0点としました(残響のないスタジオでレコーディングして欲しいという気持ちに変わりはありません)。 また同様に,前回,「まるで『日本代表』が演奏しているようで,久保田さんの顔が見えてこない」といったコメントを書きましたが, ずっと聴き続けているうちに,これこそがまさに久保田さんそのものではないか,と思えるようになってきました。 ということで,私にとっては演奏・録音共にトップクラス,いつも手許に置いて聴き続けたい全集盤の一つに仲間入りしました。 素晴らしい演奏に感謝!

蛇足ですが,無伴奏フルート・パルティータ(ヴァイオリン編)もいいのですが,ここまでやるなら, ぜひとも無伴奏チェロ組曲全曲(ヴァイオリン編)に挑戦して欲しい!と思います。 (やっぱり無理だろうなぁ...)

(記2005/02/10) パルティータ集を加え全集扱い
(記2003/08/07) ソナタ集のみ


CD image
演奏:3.5
録音:3.5

ライナー・クスマウル(Rainer Kussmaul) (SIMPK 1995) (パルティータ第二番)

ライヴらしい勢いがあり,またバッハの音楽に対する真剣さ,厳しい姿勢が伝わってくる意欲的演奏です。 演奏上の傷が散見されるのが残念ではありますが, この傷をいとわない大胆さ,熱意が魅力的な表現につながっているとも思います。 バロック仕様の楽器が使われているようですが,確かに音色はそうかもしれないと思うものの, アプローチ自体は現代楽器的に感じます。

カップリングの2曲のソナタは,一転,活気にあふれ,ノリにのっているという感じで,愉快痛快,これぞライヴ! 私はどちらかといえば無伴奏よりこちらの方に感激しました。

録音:

かなりのオンマイクで録音されたようで,極めて解像感,明瞭感の高い録音。 これのどこがライヴ録音なんだ?,と一瞬思ってしまいました。 よく聴くと残響が少しあり,ホールの空間性が感じられますが,邪魔になるものではありません。 ただ,残念なことに,帯域バランスがすこし崩れているように思います。 高域が強調され,楽器音を支える低域成分が希薄に感じられます。 その結果,自然さが失われ,耳に突き刺さるようなキツい音になってしまっています(なぜかヌケもよくありません)。 音の捉え方は私の好みではあるのですが。 また,無伴奏とカップリングのソナタとを比べると,ソナタの方がよりクリアな音に感じられます。 マイクセッティングが微妙に違うのでしょうか。 この点も残念です。

所有盤:

SIMPK Live 1 (輸入盤)
Klingendes Museum Live 1 "Gagliano in Concert"
Mitschnitt eines Konzerts im Musikinstrumenten-Museum des Staatlichen Institutes fur Musikforschung Preußischer Kulturbesitz, Berlin, von 22. Oktober 1995.
カップリング曲:Bach/Sonate fur Cembalo und Violine BWV1015, BWV1019

P.S.

クスマウル氏は,ベルリンフィルのコンサートマスター。
ベルリン楽器博物館でのライヴ録音。 使用楽器はジェナーロ・ガリアーノ(Januarius Gagliano, 1750年頃)とのこと。

入手および上記コメントに際しては,いつもお世話になっております斉諧生さんの音盤狂日録(2004年10月19日),および, そこからリンクされております「クスマウル&シュタイアーのデュオを聴く」(SEEDS ON WHITESNOW アーカイブ)を参考にさせていただきました。 有り難うございました。

(記2005/02/03)


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演奏:3.5
録音:2.0

天満敦子 (King 2004) (全集)

極めて感情表出の激しい熱演に,ただただ圧倒されます。 美しく歌うというよりは絶叫調,そのあまりのテンションの高さに常に緊張を強いられ, 聴いているこちらも大変疲れますが,ここまで全身全霊を傾け,全てをさらけ出して表現しようという意欲に感動を覚えます。 とうとうと響くソナタの第一楽章,力強く推進感に満ちたフーガなどは特に聴き応えがありますし, パルティータ第二番の練り上げられた表現はさすがと思います。

ただ,些細なことではありますが,不満がないわけでもありません。 フレーズの終わりの音を後押ししたり,シャコンヌの中間部後半(177小節あたりから)で, あまりにもったいぶった弾き方になって音楽の流れが途切れてしまっているのが少々ひっかかりますし, パルティータ第三番まで同じように力で押してくるあたりも,少し違和感を感じてしまいます。 ソナタ第三番は他の曲に比べるとややオーバーヒート気味に思います。

また,思い入れの強さを技術が受け止めきれていないと感じられるところも時折見受けられます。 もっとも,これが気になったのは聴き始めて最初の数回だけで, 何度も聴いているうちに意識から消えて全く気にならなくなりましたが。

録音:

非常に残響の多い録音で,直接音成分がほとんど感じられず,明瞭感が全くありません。 残響感は曲により多少異なります。 また同じ楽章内でふらつきが見られるところもあります。 さらに,残響によって失われた高域成分をイコライザで無理矢理持ち上げたような音作りで, 変にギスギスしており,音色の自然さ,バランスを完全に失っています(本当にイコライジングされているかどうかはわかりませんが)。 残念ながら私の好みからは最も遠い録音です(1.5点を付けたいくらいだ!)。

また,録音レベルが低く,波形を見た範囲では,CDの16ビット中最後の1ビットが全く使われていません。 すなわち15ビット録音相当であり,ダイナミックレンジを6dB近く損しています。 些細なことですが,ただでさえ良くない録音をさらにさえないものにしていると思います。

所有盤:

KICC 481/2 (P)2004 King Record Co., Ltd. (国内盤)
録音:2004年8月12,13,16日 横浜フィリアホール

P.S.

「無伴奏に魅せられて~バッハへの手紙」(銀の鈴社)という本を書かれています(未読)。

(記2005/01/25)


CD image
演奏:3.5
録音:3.5

カレン・ベントレイ(Karen Bentley) (Neptunus Records 2001) (パルティータ第二番)

個性を追い求めず,謙虚に,真面目に,正統的なアプローチでまとめられた演奏です。 透明感のある輝かしい音色が特に素晴らしく(少々ナイロン弦ぽいところが惜しい!), シャコンヌの中間部など,和音の響きの美しさは格別のものがあります。 丁寧に,丹念に,一つ一つの音に心が込められているのが感じられますが, ジーグなどは丁寧すぎて推進感に乏しく,また全体的にも少し控えめすぎるかなと思います。 技術的に特に優れているというわけではありませんが,破綻するようなところも全くなく,気持ちよく聴き入ることが出来ました。

録音:

残響を少し伴っていますが,オンマイクで収録しているのか,極めて明瞭感,解像感の高い好録音です。 やや高域がきついのですが,シャキッとしていて私としてはむしろ好ましく,全く気になりません。

所有盤:

NEPCD005 (c)2002 Neptunes Records and Ariel Ventures (輸入盤)
"Dancing Suite to Suite"
Recorded on October 23 and 24, 2001 at Skywalker Sound Scoring Stage, San Rafael, CA.
カップリング曲:Ole Pullar Saxe/Dance Suite for Solo Violin, Odd Bakkerud/Fanitullen for Norwegian hardangerfele...

P.S.

公式ホームページがあります。 ヴァイオリン,ヴィオラの他に,Norwegian hardangerfele(ノルウェーの9弦のヴァイオリン風民族楽器?)を演奏されるようで, このCDの最後にこの楽器による演奏と思われる小品が収められています。 ヴァイオリンのようで明らかに違う音色を持っています(薄っぺらく安っぽいけど味のある音色...)。 カップリングの2曲はどちらもわかりやすい音楽で楽しめました。

(記2004.12.29)


CD image
CD image
演奏:4.0
録音:2.5

セルゲイ・アジジャン(Sergej Azizian) (Classico 1996-97,2001-02) (全集)

力強く,速めのテンポで淀みのない曲運びが小気味よく, 量感たっぷりにスーッと美しく伸びる響きに魅了される快演です。 時折みせる完璧な重音の響きにはゾクゾクさせられます。 重厚で密度感高く,鋭く切り込んでくるフーガなど, 多声部のところを分けて弾いているのに,それぞれの声部が渾然一体となって響いてきます。 圧巻としか言いようがありません。 バッハはきっとこういう響きを聴かせたかったに違いない,なんて,わかったようなことを思わせます(笑)。 こう表現したい,という明確な意志が伝わってくるこの演奏,何度聴いても飽きません。 パルティータ集は,急速楽章でわずかに乱れが見られるのが少々残念です。 一方ソナタ集は,磨きがかかっており,充実度が高いです。

録音:

残響時間が長く,さらに直接音成分よりも間接音成分の方が多いと感じられる録音で, まとわりつく残響が鬱陶しく,私の許容範囲を大きく越えてしまっています。 全く好みではありません。 細部や微妙なニュアンスが聴き取りにくいのはもちろんのこと, 音色も響きが大きく被って全く良くありません。 素晴らしい演奏を録音が台無しになっており,残念でなりません。 ソナタ第二番,第三番が,ほんのわずかにマシというのが救いです。

所有盤:

パルティータ集(写真上):CLASSCD 161 (1996-97年録音) (輸入盤)
ソナタ集(写真下):CLASSCD 411 (2001-02年録音) (輸入盤)
Recorded in Bronshoj Church, Copenhagen.
カップリング曲:Tocata & Fugue BWV565(World Premiere Reording)

P.S.

アジジャン氏は,1957年アルメニア生まれ。 1993年からCopenhagen Philharmonic Orchestraのコンサートマスター,1997年よりThe Royal Danish Academy of Music in Copenhagenの講師。 パルティータ集のジャケットの絵がヘビメタのCDのようで...ちょっと薄気味悪いです。

(追2004.12.16) ※ソナタ集を追加し全集扱い
(記2002.09.04)(追2002.10.07)


演奏:
録音:

フランクリン・デラノ・フォスター(Franklin Delano Foster) (Delano Music 録音不明) (ソナタ第一番)

大変失礼ながら,技術的に大いに難あり!です。 Adagio, Sicilianoはまだ良いとして,Fugaはう~んちょっと苦しい,Prestoに至ってはもうメロメロです。 とにかく左手のキレが良くないです。 そういった難点に目をつぶって聴くと,アクセントの付け方や音色に個性が見えてくるのですが, 残念ながらそれらを楽しむまでに至りません。

録音: 残響は多めですが,音の捉え方は悪くなく,芯がしっかりしているのでそれほど印象は悪くありません。 もちろん私にとっては,残響のまとわりつきが鬱陶しいこの録音は好みではありません。

所有盤: 品番なし (P)1998 Delano Music Company (輸入盤)
"Alone and Two's Company"
カップリング曲:Paganini/Caprice Op.1, No.1, No.17, Telemann/Duet for two violins - Menuet, Seixas/Duet for two violins - Toccata

P.S. 公式ホームページがあります。 ソリストとしてサンフランシスコ交響楽団を含む多くの楽団と共演,多くのアンサンブルのコンサートマスターとして演奏, などと書いてありますが,申し訳ありませんが,この演奏を聴く限りちょっと信じ難いです。

(記2004.11.19)


演奏:
録音:

ノクトゥーラ・ングウェニャーマ(Nokuthula Ngwenyama) (EDI Records 録音不明) (パルティータ第一番,第二番) (*ヴィオラ,ギター)

パルティータ第一番はヴィオラ(Viola Scordatura)とギターによる演奏(ギターはミヒャエル・ロング(Michael Long))で, 原曲のB minorのまま演奏されています。 Viola Scordaturaとありますので,調弦を変えているのかもしれません。 パルティータ第二番はヴィオラのみによる演奏で,D minorからG minorに移調されています。 パルティータ第一番では,まずギターで演奏され,Doubleをヴィオラが演奏するという変則的な構成(つまり交互)になっています(意図不明)。

パルティータ第一番のギターは,非常にゆったりしたテンポで,さらにフレーズ毎に「ため」が入るため,テンポ以上に遅く感じるというか, 曲が止まってしまいそうな感じがして,最後まで聴き通すのがつらいです。 最初のAllemandeだけで9:20もあります。 やっと終わったかと思うとリピートだったりして,脱力してしまうこともしばしば。 一つ一つの音に感情を込めて弾こうとしているのは伝わってくるので,表現自体は嫌いではありませんが, このテンポ感だけは勘弁して欲しいです。 一方ヴィオラも,ギターに合わせるように中庸テンポですが,こちらは「ため」がないので,はるかに聴きやすいです。 丁寧で彫りの深い表現,深々としたヴィオラらしい音色が印象的です。

パルティータ第二番は,ヴァイオリン的流麗さが見られる一方,起伏,彫りの深さがやや控えめで, 第一番で感じられたヴィオラならではの良さが薄くなってしまっているのが少し残念に思います。 (録音が良くないせいかもしれません)

録音: パルティータ第一番と第二番は,エンジニア(?)が違うようで,音もそれを反映してか全く異なっています。 パルティータ第一番のギターが最も良く,わずかに響きを伴っているように感じますが, 極めて明瞭感が高く,弦の振動,ボディーの響きが良く捉えられています。 ヴィオラも同様に,わずかな響きを伴いながらも明瞭感が高くて気持ちの良い録音です。 一方パルティータ第二番は,響きが多く,明瞭感,音色を大きく損なっています。 これはいただけません。 残念です。

所有盤: EDI16738 (P)(C)2004 EDI Records, Inc. (輸入盤)

P.S. 公式ホームページがあります。 ングウェニャーマ氏は,カリフォルニア出身,ジンバブウェ人と日本人の間に生まれたとのことです。

(記2004.11.17)


演奏:
録音:

ギャレット・フィッシュバッハ(Garrett Fischbach) (自主製作? 2002-04) (全集)

サラリと流す「軽さ」が魅力の好演! しかも,一つ一つの音にしっかりとアクセントがあって,折り目正しさもあります。 細身でひたすらクリアな音色も美しいです。 キレのある演奏ではありませんが,技術的不満は全くありません。 精神性を追求する厳しい演奏とは全く別次元の,優しく暖かな眼差しを感じる(そして,ちょっと垢抜けない) 個性的演奏に思います(緩徐楽章での今ひとつしっくりこない装飾はご愛嬌ということで)。 この曲を聴いてホッとする,なんて珍しいです。

録音: 録音時期によって多少質が異なります。 パルティータ第三番は,残響がほとんどなく,極めて明瞭,解像感も高く,音色の自然さ,透明感,全てにおいて群を抜いています。 文句なしの4.0点です。 続いてソナタ第一番,パルティータ第一番,第二番で,やや響きを伴っているものの,明瞭感は悪くありません(3.5点)。 しかしながら,やはり響きの影響を受けて精彩を欠いているのは残念なところです。 ソナタ第二番,ソナタ第三番は,響きが大きく被って全く良くありません。 大おまけでも3.0点というところです。 パルティータ第三番の録音で統一して欲しかったところです。 残念!

所有盤: 品番なし? (C)2004 Garrett Fischbach (輸入盤)
Recorded: 2002-2004, Upper Ridgewood Community Church, Ridgewood, NJ, USA.

P.S. 公式ホームページがあります。 フィッシュバッハ氏は,現在メトロポリタン歌劇場管弦楽団のヴィオラ奏者?!とのことです。

(記2004.11.10)


演奏:
録音:

ターニャ・アニシモワ(Tanya Anisimova) (Cellestial Records 2000,01) (全集) (*チェロ)

チェロによる演奏。 パルティータ第一番がB minorからG minorに,パルティータ第三番がE majorからD majorに, それぞれ移調されている他は,原曲の調で演奏されています。 ヴィオラやチェロで演奏する場合は五度下げて演奏するのが当然と思っていただけに,ちょっと驚きました。 そういったことから,音型や和音の変更などの編曲がなされています。

また,楽器の制約による編曲というよりは,意図的に編曲していると思われるところも幾つかあります。 左手によるピチカートが加えられているところもあります。 と書くと,キワモノ的に思われるかもしれませんが,さにあらず,それらしくはまっているから不思議です。

肝心の演奏ですが, 緩徐楽章では,チェロの響きを活かした深々とした情緒溢れる表現が印象的ですし, 急速楽章では,ボディ感たっぷりで迫力があります。 倍音成分がキリッと立った芯の強い音色,粗削りながら力強い弾きっぷりにも魅力を感じます。

ヴァイオリン曲をチェロで弾いているということ,さらに,移調していないためにポジションがどうしても高めになってしまう, といったことで,さすがに技術的な面では少々苦しいと感じるところがありますが, ヴァイオリンにはない,そして原曲がヴァイオリン曲であることを忘れさせてくれるチェロならではの良さが感じられますし, なによりこの曲に対するこだわりと表現意欲に溢れているところが良いと思います。

録音: 録音時期が約1年異なるCD1とCD2で多少異なりますが, どちらも響きの少ない環境で,しかも圧迫感を感じるほどのオンマイクでの録音です。 極めて明瞭感,解像感が高く,私好みの音の捉え方の典型と言えます。 「松ヤニが飛び散る音が聴こえる」とか「マイクを楽器の中につっこんで録音したような」なんて表現を聴くことがありますが, そんな印象に近いです。 ただ,CD1の方はややくぐもった感じがありますし,CD2の方もスカッとしきれていないところが本当に惜しいと思います。 それでもCD1は3.5点くらい,CD2は大おまけですが4.0点を付けたいくらいです。

ただし,一部の曲で問題があります。 パルティータ第一番のCorrenteは,まるで疑似ステレオ化されているかの如く, 左右チャンネルの相関が希薄で(リサジュー曲線が4つの象限に散らばります)で,かなり聞き苦しいです。 録音の質も他の楽章のものと異なり,少し落ちます。

もっとひどいのはパルティータ第二番のCiaccona!。 まず明らかな逆位相から始まって,途中で二度無相関状態に変化します(リサジュー曲線で明らか!)。 変わり目で音質が変わるので,違う録音をつなげているのではないかと思われます(つなぎ目はほとんどわからないので,この点はすごいと思いますが...)。

この二つの楽章のために,せっかくの好録音が台無しになっています。 演奏が気に入らなくて,後から録音し直したものに差し替えているのかもしれませんが, もう少し配慮して欲しかったと思います。

所有盤: 品番なし? (C)2001 TANYA ANISIMOVA (輸入盤)
Recorded: Silver Spring MD, (CD1)03/2000-07/2000, (CD2)06/2001-09/2001

P.S. 公式ホームページがあります。 無伴奏チェロ組曲も録音しています。

(記2004.10.29)


演奏:
録音:

アンドレアス・リュッケ(Andreas Lucke) (Cavalli Records 1992) (ソナタ第三番)

細部まで練り上げられた緻密さ,凝集感の高さが印象的です。 弓運びに勢いがあり,力感に溢れているのに,スムーズで音色の輝きを失わないところがなかなかいいです。 あまりにストレートな表現に最初は少々印象が薄かったのですが,聴くたびに味わいが深まってきます。 特に,声部の描き出しの美しいアダージョと緻密にがっしりと構築されたフーガが素晴らしく, 一方,ラルゴはちょっとあっさりしすぎ,アレグロ・アッサイはもう少し勢いが欲しかったと思います。 ちょっと残念。

録音: 残響感が少しありますが,それよりも初期反射音が大きいように感じられます。 明瞭感,解像感は悪くないのに音が濁って聴こえる(だぶって聴こえる)のは,この初期反射音が原因だと思います。 高域の伸び感も悪くないので,この音の濁りは本当に惜しいです。

所有盤: CCD 111 (P)(C)1993 CAVALLI RECORDS (輸入盤)
カップリング曲:Ysaye/Sonate Nr.3 "Ballade" op.27/3, Kreisler/Recitativo und Scherzo-Caprice op.6, Milstein/Paganiniana Variations, Ernst/Der Erlonig Grand Caprice op.26, Barkauskas/Partita fur Violine solo, Wieniawski/La Cadenza(Nr.7 der Etudes-Caprices op.10)

P.S. リュッケ氏は,1955年生まれ,1979年よりバンベルク交響楽団のメンバー, 1992年よりソリストとしての活動を開始,とのこと。

(記2004.10.20)


演奏:
録音:

バイバ・スクリッド(Baiba Skride) (Sony 2004?) (パルティータ第二番)

力強く快活,しかも,隅々まで神経の行き届いた繊細さも併せ持った,高いレベルでバランスの取れた好演です。 一つ一つの音,そして,音の移り変わりの微妙なニュアンス,本当に美しい。 技術的にも表現的にも完成度が高く,隙が全く感じられません。 ただ,あまりにもニュートラルすぎるというか,無難すぎるというか, もう少し個性の主張,冒険があって欲しかったと思います。 演奏者自身を印象づけるところが少ないのが惜しいです。 今後に期待!

録音: スーパーオーディオCD(SACD)。 CD層での試聴です。 残響のまとわりつきがやや鬱陶しく感じられるものの, 明瞭感,解像感は非常に高く,細かい動き,微妙なニュアンスも克明に聴き取ることが出来ます。 高域もスキッと伸びており,音色も自然です。 残響の取り入れ方,音作りが私の好みから少し外れるので3.5点としていますが, 一般的な観点からすれば優秀録音と言えるのではないかと思います。

所有盤: SK 92938 (P)2004 Sony Music Entertainment (Germany) GmbH / DeutschandRadio (C)2004 Sony Music Entertainment (Germany) GmbH (輸入盤) (*SACD)
カップリング曲:Ysaye/Sonata No.1 in G minor for Violin Solo, Bartok/Sonata for Violin Solo

P.S. 公式ホームページがあります。 スクリッド氏は,1981年生まれ,ラトヴィア出身。 2001年のエリザベート王妃国際音楽コンクールで優勝。

(記2004.10.04)


演奏:
録音:

ヤッシャ・ハイフェッツ(Jascha Heifetz) (EMI 1935) (ソナタ第一番,第三番,パルティータ第二番)

持ち前のテクニックを活かして颯爽と弾ききっています。 バッハの音楽に身構えている感じもなければ,細部まで磨き上げようという感じもありません。 バッハを自分のスタイルに当てはめて弾いている,という風に私には聴こえてきます。 粗さ,強引さを感じるところもあり,こういったことが一種の古めかさ感じさせる要因の一つになっているのではと思いますが, 当時としてはこういうスタイルが普通だったんだろうなと想像しています。 今ひとつ私の肌には合わないのですが,そう思って何度も聴いているうちに,妙に納得してしまう魅力ある演奏でもあります。

録音: モノラル録音。 明記されていませんが,音を聴く限りアナログレコードからの復刻のようです。 サーというノイズが多いものの,スクラッチノイズは比較的少なく,復刻状態はかなり良いと思います。 古い録音なので帯域が狭く音色が変化しているのは仕方がないのですが,こもった感じはなく,十分鑑賞に耐えうる音質だと思います。 スタジオでの録音で,残響がほとんどない環境で出来るだけ明瞭に録音しようとした結果だと思います。

所有盤: CDH 7 64494 2 (P)1974,1975 EMI Records Ltd. Compilation & digital remastering (P)1992 EMI Records Ltd. (C)1992 EMI Records. (輸入盤)
Rec.: London, No. 3 Studio, Abbey Road, 1935
上記の曲の他に,パルティータ第三番のメヌエット,イギリス組曲から数楽章(ハイフェッツ編)が収録されています。 パルティータ第三番は1925年の録音とあります。

(修2004.09.01) ※2回目
(記2002.12.13)


ヤッシャ・ハイフェッツ(Jascha Heifetz) (Centurion Classics 1935-37) (パルティータ第二番)

上記のEMI盤のパルティータ第二番と同じ演奏です。 同様にアナログ盤からの復刻で,しかも,ノイズの入り具合がそっくりで,原盤も同じではないかと思われます。 ただ,音作りは若干異なります。 こちらの方がEMI盤よりもややS/N比が向上し,明瞭感,音の鮮やかさが改善されています。 一方音色は少し色づけというか癖が感じられ,EMI盤の方が自然に思います。 どちらが良いかは好み次第というところでしょうか。

所有盤: Centurion Classics 2067 (P)(C)2003 FLEX MEDIA ENTERTAINMENT GMBH (輸入盤)
Recorded in 1935-37
カップリング曲:モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第5番(Recorded in 1934)

(記2004.09.01)


ヤッシャ・ハイフェッツ(Jascha Heifetz) (membran 1935-37) (パルティータ第二番)

クアドロマニアシリーズの1セット。 上記のEMI盤,Centurion Classics盤のパルティータ第二番と同じ演奏です。 ノイズの入り具合から原盤が同じ,音質はCenturion Classics盤と同等に思います。

所有盤: 222137-444 (P)TIM Cz (C)2004 Membran International GmbH (輸入盤)
「クアドロマニア」シリーズ4枚組 "Jascha Heifetz Violin Masterworks"
カップリング:ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲(1934年録音),ブラームス/ヴァイオリンソナタ第二番(1935年録音), シューベルト/ピアノ三重奏曲D898(1941年録音),チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲(1937年録音),グラズノフ/ヴァイオリン協奏曲(1934年録音), メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲(1949年録音),ブラームス/ヴァイオリン協奏曲(1939年録音)

(記2004.09.26)


演奏:
録音:

シモン・ゴールドベルグ(Szymon Goldberg) (自主製作? 録音不明) (ソナタ第一番,パルティータ第二番)

真摯で厳しく,ストレートな表現に好感を持ちました。 コンサートの緊張感の高さがひしひしと伝わってきます。 ライヴということもあって,所々ミスがありますし,音程に不安を感じるところもありますが, そういったことをカバーするに十分な気迫に満ちた演奏に思います。

録音: モノラルのライヴ録音。 録音年代不明です。 会場の響き,環境ノイズが取り込まれていながらも,比較的明瞭に捉えられており,素直な感じのする録音です。 残念ながら,元々のLPの盤質が良くないためか,楽器音の歪み感が多く,かなりきつい感じがします。 ぎりぎり鑑賞には耐えうるとは思いますが,全体の質としてはやはり良くありません。 プライベート盤という位置づけなら仕方ないという気もしますが。

所有盤: D-7003/4 自主製作?(Collector's Limited Edition) (輸入盤) (*LP)
"The Art of Szymon Goldberg (Live Recordings)"
カップリング曲:モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第五番,ヘンデル/ヴァイオリン・ソナタ第四番,ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第九番「クロイツェル」

(記2004.09.22)


演奏:
録音:

オラシオ・フランコ(Horacio Franco) (Quindecim Recordings) (選曲集) (リコーダー)

リコーダーによる演奏。 楽器の音域に合わせて編曲されており,音型が変えられていたり,旋律の途中でオクターブ跳躍があったりしますが, 楽器の制約上仕方ないと思って聴けば,それほど違和感はありません。 重音は,拍の前に装飾音のように出して演奏しており,それなりにそれらしく聴こえます。 複数の声部が同時に動くところは,拍ごとに時分割で複数の音を出そうとしているので, なんだかやたら装飾の多い,わけわからん曲にしか聴こえてきません(特にソナタ第三番のフーガ!)。 さすがに無理を感じます。 原曲を思い浮かべながら聴くとなるほどと思うのですが...

それにしても,このやけクソなアグレッシブさ! すごいです(※注:全部が全部そうというわけではありませんが...総じてそういう印象を受けます)。 無謀とも思えるテンポ設定(それでも破綻寸前でなんとか踏みとどまっています), 音のつぶれや音程の上擦りなど意に介さない強烈な吹き込み(?)... バロック音楽を聴いているという気がしません。 技術的に本当に巧いのかどうかよくわかりませんが,分散和音など超絶的と思えるところも随所に出てきます。 音楽的に好きかと問われると疑問符が付いてしまいますが,ゲテモノ的面白さ(ごめんなさい!)は抜群です。 この積極果敢,チャレンジ精神旺盛な演奏に敢闘賞!

収録曲(順不同):

  • J.S.バッハ/無伴奏ヴァイオリンソナタ第一番より Adagio, Presto (alt recorder in f, a=406Hz)
  • J.S.バッハ/無伴奏ヴァイオリンソナタ第二番より Allegro (2 alt recorder in f, a=415Hz)
  • J.S.バッハ/無伴奏ヴァイオリンパルティータ第二番より Gigue, Chaconne (2 alt recorder in f, a=415)
  • J.S.バッハ/無伴奏ヴァイオリンソナタ第三番より Fuga, Allegro assai (alt recorder in f, a=415Hz)
  • J.S.バッハ/無伴奏ヴァイオリンパルティータ第三番より Preludio (alt recorder in f, a=392Hz)
  • J.S.バッハ/無伴奏フルートパルティータ (voice flute in d, a=415Hz)
  • C.P.E.バッハ/無伴奏フルートソナタ (voice flute in d, a=415Hz)

録音: 非常に残響の多い環境で録音されており,主音に残響音が大きく被って明瞭感がかなり失われています。 細かい音の動きなど,もやもやして聴き取りにくいです。 また,リコーダー特有の風切りノイズが歪みのように汚く被ってきてしまっています。 損していると思います。

所有盤: QP101 (P)(C)2003 Quindecim Recordings (輸入盤)
Recorded at Library of Exmonasterio del Desierto de los Leones, Cuajimalpa, Mexico. D.F., February 2 to 6, 2003.

P.S. オラシオ・フランコ氏は,メキシコを代表する古楽系リコーダー奏者,とのこと。

(記2004.09.15)


演奏:
録音:

ユーディ・メニューイン(Yehudi Menuhin) (Tahra 1968) (パルティータ第二番)

技術的な難点は多々あります。 しかし,この気迫,推進感,心技とも最高潮に達したかのような充実感, 数々の技術的欠点を覆い隠すに十分です。 メニューインというと,天才肌で感性に任せて弾くタイプかと思っていたのですが, この演奏ではそういった感じがなく,真摯に,謙虚に,この曲に真正面から取り組む姿勢がうかがわれ, 彼の演奏がどちらかというと苦手な私も,この快演には感動しました。

録音: ライヴ,モノラル録音(デジタルデータレベルで左右チャンネルが一致する完全なモノラル!)。 ホールトーンが程よく取り込まれているという感じで,響きやや多めに取り込まれているものの, 主音にそれほど被っておらず,明瞭感は良好です。 音色もそれほど損なわれていません。 響きがやや多めで私の好みから少し外れることから3.0点としましたが,決して印象は悪くありません(モノラルであることはマイナス要因ではないです)。 モノラル録音なので立体感はありませんが,響きの取り入れ方がうまいので, 心理的にホールの空間性を感じることが出来ます。 ステレオ録音なら,主音とホールトーンが分離して,なお聴きやすくなっていたのではないかと思います。

所有盤: TAH 533 (P)(C)2004 TAHRA (輸入盤)
録音:1968年10月6日 ベルンでのライヴ
カップリング曲:モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第4番(Karl Bohm/RIAS Sinfonie-Orchester, 1951年録音)

(記2004.09.07)


演奏:
録音:

ユーディ・メニューイン(Yehudi Menuhin) (Biddulph 1951) (ソナタ第一番,パルティータ第三番)

細部にこだわることなく,感性の赴くまま,思うがままに弾いているような,そんな印象を受けます。 スタジオ録音だと思うのですが,構えたところが感じられず,ライヴのような自由闊達さを感じます。 まるで1930年代の演奏を聴いているような錯覚に陥いります(録音の古さからくる印象もあるでしょうけど)。 技術的な不満はやっぱりありますが,こういうアプローチの演奏なので,気にしてはいけないのかもしれません。

録音: アナログ盤からの復刻。 サーというノイズがかなり盛大に入っていますが,プチプチ音はほとんどありません。 いかにも古いアナログ盤という感じの歪み感,音色をしています。 元々の録音が残響なく明瞭に楽器音を捉えているため,音質が悪いながらも何とか鑑賞には耐えると思います。

所有盤: LAB 162/3 (P)(C)1999 Biddulph Recordings (輸入盤)
Recorded in October 1951; first issued on Japanese Victor SD 3034/5(s1), 3030/41(p3) [in set JAS 214]
"Menuhin: The Japanese Victor Recordings"
カップリング曲:Bach/Sarabande from Partita No.2, Tartini(arr. Kreisler)/Sonata "Devil's Trill", Beethoven/Sonata No.5 "Spring", No.9 "Kreutzer", Brahms(arr. Joachim)/Hungarian Dance No.1, Dvorak(arr. Kreisler)/Slavonic Dance No.2, Negro Spiritual Melody, Novacek/Perpetuum Mobile, Granados(arr. Kreisler)/Spanish Dance, Sarasate/Romanza Andalusa, Malaguena, Habanera, Ravel(arr. Catherine)/Piece en Forme D'Habanera, Wieniawski/Scherzo Tarantelle, Kreisler/Caprice Viennois, Bartok(arr. Szekely)/Rumanian Folk Dances

(記2004.09.06)


演奏:
録音:

アンドレ・アルメーヌ・スターキアン(Andree-Armene Stakian) (Gallo 録音不明) (パルティータ第二番)

遅めのテンポで丁寧にじっくりと歌っているのは良いのですが, 実際のテンポ以上に後ろに後ろに引っ張られる感じがして, 音楽の流れに乗り切れません。 シャコンヌは18:14もあって,ちょっと聴き疲れします。 中間部で高揚感を出そうと頑張っているのはわかるのですが, テンポが遅いために音を持続しきれず,息切れしてしまっているのも残念です。

録音: 残響時間の長い環境で録音されたようで,明らかに残響成分が直接音よりも多く, 明瞭感が良くありませんし,音色も冴えないものになってしまっています。 音量をいくら上げてもはっきりと聞こえてこず,苛立ちます。

所有盤: CD-510 (C)(P)1991 VDE-GALLO (輸入盤)
カップリング曲:Andre Jolivet/Suite rhapsodique pour violon seul, Jean Martinon/Sonate no.6 op.49 no.2 pour violon seul, Paul Hindemith/Sonate pour violon seul op.31 no.1

P.S. スターキアン氏は,スイス,アルメニア(?)出身。 Corrado Romano, Andre Certler, Sandor Veghらに学び, 1973年より,ジェノバのConservatoire de Musiqueで教鞭を執っているとのこと。

(記2004.08.24)


演奏:
録音:

ミリヤム・コンツェン(Mirijam Contzen) (Arte Nova 2004) (パルティータ第三番)

洗練されたスマートさを持つ現代的,都会的な演奏です。 速めのテンポでスイスイと音楽が流れていくのが何とも気持ちよいです。 ヴィブラートを控えめにし,楽器そのものの響きを活かすような奏法で,透明感ある美しい響きを出しています。 何の不安も感じさせない技術力の高さも素晴らしいです。 しかしながら,良くも悪くも全く「アク」が感じられず,あまりにもスムーズすぎて何となく物足りない, なんていう贅沢な不満を持ってしまいます。

録音: 残響がかなり多めに取り入れられていますが,音の捉え方が良いためか, 明瞭感,解像感は悪くありません。 音色はやはり残響の影響を受けていると思います。 悪い録音ではないとは思いますが,私にとってはまとわりつく残響が鬱陶しく,好みの録音ではありません。

所有盤: 82876 57741 2 (P)(C)2004 BMG Ariola Classics GmbH (輸入盤)
Recording: January 12-14, 2004, Reitstadel Neumarkt
カップリング曲:Tibor Varga/Le Serpent, Bartok/Sonata for Solo Violin Sz117, Stravinsky/Elegie, Ysaye Sonate Op.27-4

P.S. コンツェン氏は1976年生まれ,ドイツ,ミュンスター出身(母親は日本人とのこと)。

(記2004.08.02)


演奏:
録音:

オットー・ビュヒナー(Otto Buchner) (Calig 録音不明) (パルティータ第二番,第三番)

湾曲弓(通称バッハボウ)を使った演奏。 湾曲弓を使うとどうしても三重音以上(特に連続するとき)の発音の際に, わずかに音楽の流れが沈滞してしまう傾向にあり,この演奏も例外ではないのですが, 全体に優しさ漂う穏やかな演奏ということもあって,音楽的にうまく溶け込ませていると思います。 三重音以上では,例によってオルガンのような,とてもヴァイオリンとは思えない独特の響きが興味深いところで, シャコンヌ中間部の重音が連続する部分など,美しい響きに満たされていて非常に印象的です。 ただ,こういった重音と,単音や二重音との響きの質の差に,わずかに違和感を感じないでもありません。 湾曲弓の是非,好む好まざるはあるにせよ,単に「湾曲弓を使った」という以上の音楽的内容を持ち合わせた佳演であると感じます。

録音: 残響が少なめで明瞭感の良い好録音です。 湾曲弓による独特の響きを自然にうまく捉えていると思います。 古い録音だと思うのですが(録音年代不明),思いのほか古臭さは感じません。 (アナログディスク再生時の歪み感は考慮に入れていません)

所有盤: TST 75349 CALIG-VERLAG GMBH (輸入盤) (*LP)

P.S. パルティータ第二番,第三番以外の録音があるかどうかは不明です。 湾曲弓を使用した演奏としては演奏,録音とも良いと思いますので,是非ともCD化して欲しいところです。

(記2004.07.27)


演奏:
録音:

アイザック・スターン(Isaac Stern) (INA 1953) (ソナタ第一番)

ライヴらしい勢いと厳しさに満ちた演奏です。 甘さを廃し,贅肉をそぎ落としてズバッと切り込んでくるような,そんな鋭さを感じます。 無機的とも思える表現ながら,決して無味乾燥にならず,かえってストレートに心に響いてくるように思います。 全くこの人らしい,といえるのではないでしょうか。 結構好きです,こういうの。 演奏上の傷はけっこうありますが,ライヴならではの勢い優先の表現ということで,仕方ないかなと思います。

録音: モノラルのライヴ録音。 少々距離感があるものの音の捉え方は悪くなく,そこそこ明瞭感があって印象は悪くありません(3.0点を付けようかと思ったくらいです)。 1953年のライヴ録音ということを考えると,かなり良い状態ではないかと思います。 記録用の録音といった感じで,周囲雑音等も遠慮なく飛び込んできますが,こういうのはほとんど気になりません。 オーディオ的クオリティはやはりあんまり良くなく,高域の伸び感の不足(こもった感じはありませんが), わずかな歪み感,テープノイズなどあります。 これは仕方がないでしょう。

所有盤: IMV054 (P)2004 INA (輸入盤)
録音:1953年2月,パリ,サル・ガヴォー
カップリング曲:Beethoven/Sonata No.2 Op.12-2, Paganini/La Campanella, Prokofiev/Sonata Op.80, Vieuxtemps/Concerto No.4 Op.31, Haydn/Adagio(Concerto Hob.VIIa:1), Suk/Burlesque Op.17-4, Kreisler/Siciliano et Rigaudon dans le style de Francoeur

P.S. スターン氏唯一のバッハ無伴奏ヴァイオリンではないか,ということです(単楽章の録音はあったと思いますが)。

(記2004.07.09)


演奏:
録音:

録音:

ジノ・フランチェスカッティ(Zino Francescatti) (Biddulph/DOREMI 1950,52) (パルティータ第二番,第三番)

ポルタメントの入り方など,演奏スタイルの古さを感じさせるところはありますが, 武骨で小細工のない直線的な表現が気持ちの良い好演に思います。 特に速いパッセージの推進感あるテンポどりが爽快! 張りのある発音のしっかりした音色にも魅力を感じます(細かいヴィブラートはちょっと好みではありませんが)。

録音: パルティータ第二番が1950年,第三番が1952年のモノラル録音。 第二番は比較的近接で録音されており,残響もほとんど感じられないので,古いなりにも聴きやすい音質です。 第三番はやや距離感があり,残響感もあって明瞭感がなく,ややこもった感じがします。 いずれにしても古い録音なので帯域感がなく,また,オーディオ的クオリティも決して良くありませんが, 音の捉え方がそれほど悪くないので,十分鑑賞に耐えます。 DOREMI盤は,アナログディスクの復刻なのか,スクラッチノイズが聞こえます(アナログ復刻としてはかなり上出来と思いますが)。 一方Biddulph盤はマスターテープからの復刻なのか,スクラッチノイズ等はありません。 音の傾向は両者ともあまり変わりませんが,やはりBiddulph盤の方に分があるように思います。

所有盤: (写真上)80207-2 (P)(C)2004 Biddulph Recordings (輸入盤) カップリング曲:バッハ/ヴァイオリン協奏曲第二番
"Zino Francescatti Vol.1" DHR-7780 (C)(P)2002 DOREMI (輸入盤) カップリング曲:パガニーニ/ヴァイオリン協奏曲第一番
録音:23 May 1950(パルティータ第二番),24 April 1952(パルティータ第三番)

P.S. DOREMI盤にカップリングで収められているパガニーニの協奏曲には,オイストラフ盤で見られた疑似ステレオ処理がなされていました。 幸運なことにバッハの方は普通のモノラルで助かりました。 最初にDOREMI盤を掲載したときの録音評は1.5点でした。 スクラッチノイズが気になるということでそういう点になってしまったのだと思いますが, 今の基準でみれば,クオリティは良くないものの音の捉え方が良いということで,それほど悪くない評価になります。

(追2004.06.04) Biddulph盤掲載にあたり全面修正
(記2002.09.30) DOREMI盤掲載


演奏:
録音:

ナタリー・シャボー(Nathalie Chabot) (Ligia Digital 2002) (ソナタ第一番,第二番,パルティータ第二番) (ピアノ伴奏付き)

ロベルト・シューマンによるピアノ伴奏付き(ピアノ伴奏はセルジュ・ハインツ(Serge Heintz))。 ピアノ伴奏が加わり,ヴァイオリンもリズミカルで幾分軽やかに感じます。 反面,ピアノ伴奏による拘束感も感じます。 伴奏が加わることで表現の幅が広がるかと思いきや,かえって平板になってしまっているように思います。

それなりにうまくまとまっていますし,決して悪い演奏ではないと思うのですが, 普通の演奏に求めていることをこのピアノ伴奏付きの演奏に求めるとガッカリします。 聴く側としては全く別の曲として接する必要があると思います。 しかし,そう思って聴いてもこの演奏はちょっと中途半端な印象を受けます。 ピアノ伴奏付きを選択するなら,ピアノ伴奏付きでしか出来ない表現を追求して欲しい。

録音: やや響きを伴っていますが,明瞭感,解像感は比較的良好に思います。 ただ,音の捉え方が濃厚で,ちょっとうるさく感じます。 もう少しすっきり捉えられていれば良かったのですが。 惜しいです。

所有盤: Lidi 0103120-03 (P)(C)2003 Ligia Digital. (輸入盤)

(記2004.05.18)


演奏:
録音:

川畠成道 (Victor 2003) (パルティータ第二番)

なんと感情のこもった人間味溢れる演奏であろうか。 気持ちが表現に,音色に,素直に表出されていると感じます。 それでいて,技術的な切れ味の良さのために,感情過多でもたれることがなく,むしろ躍動的で引き締まった印象さえ受けます。 いろいろな要素が高い次元でバランスが取れています。 素晴らしい!

録音: 残響が多めに取り入れられていますが,主音と残響音が比較的分離して聴こえるので, 残響量が多い割に明瞭感,解像感は悪くありません。 しかし,音色への影響はわずかに感じます。 そして,分離しているとはいえ,私には残響音が鬱陶しく感じられます。

この録音,stereo誌4月号(音楽之友社)の録音評でオール10の満点評価を得ています。 なるほど,そう言われてみればそうかもしれません。 多くの方にとっては,確かに超優秀録音として受け入れられてもおかしくないと思います。 しかし,私はあえて言いたい! こんな素晴らしい演奏だからこそ,残響という粉飾を一切排したピュアな録音で聴かせて欲しかった。 この残響がなければ,感動がどれだけ倍増したことであろうか。 残響が素晴らしい演奏を台無しにしてしまっている,と感じる人もいるということを少しはわかって欲しい。

この残響過多の録音に対する抗議と,stereo誌の録音満点評価への反発の意味を込めて, 録音評を3.0にしようかと真剣に悩みましたが,あまりにアンフェアと思いましたので3.5点にしました。 しかし,それくらいの気持ちがあったことをご理解いただきたいと思います。

所有盤: VICC-60386 (P)2004 Victor Entertainment Inc.(国内盤)
アルバムタイトル:「シャコンヌ」,Recorded on November 2-4, 2003, at Jesus Crist Church, Berlin. (エヴァンゲリッシュ教会)
カップリング曲:バルトーク/無伴奏ヴァイオリンソナタ Sz.117

P.S. 公式ホームページがあります。 またもや日本人ヴァイオリニストのレベルの高さを思い知らされました。 しかも「日本代表」的でなく,地味ながらも紛れもない川畠さんの個性がしっかりと光っていると感じます。 是非とも全曲録音を!

(記2004.05.07)


演奏:
録音:

ヨアンナ・マドロシュキェヴィッチュ(Joanna Madroszkiewicz) (Gramola 2000-02) (全集)

ソナタ第一番の出だしから,その鋭角的な表現にびっくりします。 リズムの崩し方も,緩急をつけているというよりは,いびつさを強調するような感じです(奇異に感じるところまではいきませんが, 間違いなく全体を特徴づけています)。 全体的に強烈(「厳しい」とはちょっと違います)な印象が強いのですが, そんな中でふと優しい,暖かい表情が垣間見えたりします。 パルティータ第三番は,軽く明るい表現が印象的でした(全集の中では異質に思いますが)。

録音: 残響感が多少多めに取り入れられています。 比較的オンマイクの録音で,明瞭感,解像感は残響量の割には悪くないと思います。 音色は残響の影響を受けてあまり良いとは感じませんし,妙に刺激的にも感じます。 明瞭感がそれほど悪くないのでどうしようか悩みましたが,まとわりつく残響と音色の変化が気になり, どうしても3.5点を付ける気になれず, 厳しいとは思いましたが3.0点としました。

所有盤: Gramla 98752/53 (輸入盤)
Recorded 2000-2002 at Augustiner Lesesaal der Nationalbibliothek, Vienna.

P.S. レーベルのサイトに紹介があります。 「ポーランド生まれでフーベルマンの系統のシュテファン・ヘルマン,アルテュール・グリュミオー,ギュンター・ピヒラーに指導を受ける。 パガニーニ国際コンクール優勝。バッハ,モーツァルト,ベートーヴェン,ブラームスから現代作品までレパートリーは幅広いが, 同朋の作曲家カロル・シマノフスキーの演奏にはとりわけ定評がある。 その素晴らしい演奏はフーベルマン,ハイフェッツ,ミルシティンに例えられるが,彼女自身の個性もくっきりと刻んでいる。」 とのことです(K.N.さん要約)。

(記2004.04.20)

名前の日本語表記ですが,レコード芸術誌2008年8月号に「ヨアンナ・モンドロシュキエヴィチ」とありました。 ちなみに準特選盤でした。

(記2008/08/05)


演奏:
録音:

アンタル・サライ(Antal Szalai) (BMC 録音不明) (パルティータ第二番)

正当路線の演奏であり,個性的というわけではありませんが, とにかく隅々まで神経が行き届いており,磨き上げられた美しさがあります。 音色も曇りがなく,重音も濁りがなく,聴いていて本当に気持ちがよいです。 この技術力の高さの上に,さらに個性を積み上げていってほしいと思います。

録音: やや残響感がありますが,比較的近接で録音されており,明瞭感,解像感とも悪くなく, 細部までしっかりと聴き取ることができます。 音色もそれほど残響の影響を受けていないと思いますが,私にとっては少し鬱陶しく感じます。

所有盤: BMC CD 047 (P)2001 Budapest Music Center Records
Recorded at the Phoenix Studio, Hungary
カップリング曲:Kreisler/Recitativo and Scherzo-Caprice Op.6, Ysaye/Sonata Op.27-3, Petrovics/Rhapsody No.1

P.S. レーベルのホームページに紹介があります。 サライ氏は1981年生まれ,ハンガリー出身。 ブタペスト音楽アカデミーでバルトーク弦楽四重奏団のペーター・コムローシュに師事, その後,ティボール・ヴァルガ,ジョルジ・パウクのマスターコースに参加して学んだとのこと。 録音年について明記されていませんが,2001年頃だと思います。

(記2004.03.31)


演奏:
録音:

ワディム・レーピン(Vadim Repin) (A&E 1990) (ソナタ第二番)

真正面から小細工なしに攻めた引き締まった演奏で,技術的にも巧い!と思うのですが, なぜか今ひとつ心に響いてきません。 発音が不安定に聴こえる(おそらくそう感じるだけなのですが)ところがあったりはするのですが, それが直接の要因とは思えません。 欠点らしい欠点もなく(逆に完成度はそれなりに高い),優れた演奏と感じてもおかしくないはずなのですが... 不思議です。

録音: 多少残響感がありますが,明瞭感は悪くありません。 高域の伸び感はそれなりにあるのですが,やはり残響の影響を少々受けており,スキッと抜けるような感じはありません。 少し距離感があり,そのせいか少し現実感のない音に感じます。 また,録音レベルが少々低いように思います。 気のせいか,カップリングのブラームスのソナタの方が,残響感が少なく,より明瞭ですっきりしている感じがします(なんで同じように録音しないんでしょう...)。

所有盤: A&E TECC-30034 (N.M.氏からの借用盤)
カップリング曲:Brahms/Violin Sonata No.3 Op.108, Wieniawski/Faust Fantasy Op.20

P.S. レーピン氏の公式ホームページがあります。

(記2004.03.19)


演奏:
録音:

マイケル・レビン(Michael Rabin) (EMI 1955) (ソナタ第三番)

極めて切れ味のよいテクニックでズバッと切り込んでくる表現の鋭さ, 息もつかせぬほどの密度感,凝縮感に満ちたフレージング, 前に前につんのめるほど推進感に満ちたテンポどり, 完璧とも思える重音の響きの美しさ, もうただただ圧倒されっぱなしです。

時代を感じさせるスタイルの古さはありますし,ややテクニックに頼った表現であり,深み,味わいに乏しいといえばそうかもしれませんが, これはこれで一つの方向を極めていると思います。

録音: モノラル録音。 響きのほとんどない環境で録音された生々しい録音で,私の大好きな音の捉え方ではあるのですが, 少々帯域感に乏しい感じがします(キンキンしていてこもった感じはないのですが)。 惜しいです。 残念!

所有盤: "Michael Rabin 1936-1972"より (N.M.氏からの借用盤)

P.S. レビン氏は,1936年ニューヨーク生まれ,1972年不慮の事故で35歳の若さで他界。 このバッハの録音,1955年ということは,20歳にもなっていないということになります...絶句。 このCD,いろいろ探しましたが残念ながら現役盤が見つかりませんでした。 ぜひ復刻して欲しいと思います。

(記2004.03.09)


演奏:
録音:

フランコ・グッリ(Franco Gulli) (Trio 録音不明) (ソナタ第一番) (*LP)

極めてオーソドックスにそつなくまとめられていると思います。 技術的安定感も素晴らしく,安心感,充実感がある一方, どこか模範演奏的なにおいがして,強く印象に残るということはありませんでした。 ビブラートもちょっと細かすぎる感じで,音色も魅力が薄いです。

録音: 残響感はあまりないのですが,多少の反射音がのっているのか,透明感,すっきり感に欠け,音色に雑味を感じます。 明瞭感もそこそこあるので,決して悪い録音ではないと思うのですが。

所有盤: TRIO PAC-2007 トリオ株式会社 (国内盤) (*LP) (アンジェリクム原盤)
カップリング曲:タルティーニ/悪魔のトリル,パガニーニ/カプリッチョ第13番,第20番,ヴュータン/ロマンツァ

P.S. グッリ氏は,1924年,イタリア,トリエステ生まれ。 ヴィルティオージ・ディ・ローマ(ローマ合奏団)のメンバーとして活躍した後,1959年にトリオ・イタリアーノ(イタリア弦楽三重奏団)を結成し活躍。 キジ音楽院の教授として長年後進の指導にあたったとのこと(藤原浜雄,和波孝禧は彼の門下生とのこと)。

(記2004.02.23)


演奏:
録音:

ナタン・ミルシテイン(Nathan Milstein) (Bridge 1946) (ソナタ第一番)

ライヴらしい勢いのある演奏ですが,やや勢いに頼りすぎている感もあります。 曲の中では第三楽章の力強くスケールの大きな表現に心動かされました。 第一番の第三楽章で感動するという演奏はそうそうありません。 しかし,全体としては少し充実感に欠けると感じます。 ミルシテインということで,過度に期待してしまうためかもしれません。

録音: ライヴ録音。 アナログ盤からの復刻でスクラッチノイズが少々目立ちます。 古い録音のため帯域が狭くややこもりがちですが,ライヴにしてはかなりオンマイクで録音されたようで, 邪魔になる残響はほとんどなく,なんとか鑑賞に耐えうるレベルを保っています。 このバッハでは,前半の二楽章の音のこもりがひどいですが,後半の二楽章はそれに比べて明らかにマシです(アナログ盤の盤面が変わったせいか?)。

所有盤: BRIDGE 9064 (P)(C)1996 Bridge Records, Inc. (輸入盤)
"The 1946 Library of Congress Recital"
カップリング曲:Vitali/Chaconne, Milstein/Paganiniana, Mendelssohn/Concerto Op.64, Chopin/Nocturne, Wieniawski/Scherzo-Tarantelle

P.S. カップリングのメンデルスゾーンの協奏曲はピアノ伴奏です。 演奏は堂々とした立派なものですが,ピアノ伴奏ということでちょっと拍子抜けします。 他の曲では,パガニーニアーナが充実感のある演奏でした。 一方,ヴィターリのシャコンヌは,音程が良くなく,ミスが目立って良くありません。

(記2004.02.20)


演奏:
録音:

リッカルド・オドノポソフ(Ricardo Odnoposoff) (Bayer 1974) (パルティータ第三番)

演奏自体は個性的というわけではありませんが,どことなくオールドスタイルで味わいがあります。 しかしながら,不安定な音程,ミスが散見され,ライヴとはいえ技術的には大いに不満を感じます。 リピートもほとんど(全て?)省略されており,この点でも残念に思います。

録音: 何もデータを見ずに聴き始め,「これは1940年代の録音に違いない。それならこの音質も仕方ないな。」と思ったのですが, データを見てびっくり,1974年の録音とは...トホホ。 そういえば,ノイズ感がほとんどありません。 おかしいと思いました。 しかし,帯域感が全くなく,また,何より音の歪み感が大きく,音のクオリティが全くよくありません。 想像するに,これはTV放送用に録画された映像の音声トラックの復刻ではないかと(自信はありませんが...)。

さらに輪をかけているのが疑似ステレオ処理です。 モノラル的な音なのに,妙に頭がねじれる感じがして気持ち悪いです。 リサジュー図形を見ると,全く無相関,いや,人工的に加工されたような軌跡を描きます。 疑似ステレオとしては比較的マシな方だと思いますが,素直にモノラルのままにしておいてもらった方がよっぽど良いのに,と思います。

所有盤: BR 200 046/47 CD Bayer Records (輸入盤)
録音:28. September 1974
カップリング曲:Max Reger/Sonate fur Violine Solo op.42-1,2, Joseph Joachim/Variationen e-moll, Heitor Villa-Lobos/Gesang des schwarzen Schwanes, Niccolo Paganini/Caprice op.1-24, Joseph Haydn/Adagio aus d. Violinkonzert Nr.1 C-dur, Karol Szymanowski/Notturno und Tarantella op.28 (以上,25. Oktober 1952), Claude Debussy/Sonate fur Violine und Klavier, Paul Hindemith/Sonate fur Violine allein op.31-2 (以上,21. Oktober 1961), Antonio Vivaldi/Sonate fur Violine und B.C. op.2-2, Paul Hindemith/Sonate fur Violine und Klavier op.11-2, Robert Schumann/Sonate fur Klavier und Violine op.105, Johannes Brahms/Sonate fur Violine und Klavier Nr.3 op.108 (以上,28. September 1974)

P.S. オドノポソフ氏は1914年,ブエノスアイレス生まれ(ロシア移民二世)。 ウィーン・フィルのコンサートマスターを務めたこともあるとのこと。

(記2004.01.26)



演奏:
録音:

木野雅之 (Exton 2003) (全集)

非常に淡々とした,整然とした印象を受けます。 速めのテンポで緩急強弱も必要最低限,ところによってはメトロノームに合わせて弾いたんじゃないか?と思えるくらいガチガチのところもあります。 遊びがほとんど感じられず,息苦しさを覚えるところもあります。

しかし,一見単調とも思えるこの演奏,全神経を集中して意図的に作り上げたに違いありません。 そういった思いがこのストレートな演奏を通してひしひしと伝わってきます。 下手に曲をいじくり回した演奏よりはるかに良いです。 素直に感動できる,そんな演奏です。

やや弓圧が高く擦りつけるような弾き方のため,すごく力強さはあるのですが,もう少し音色に透明さが欲しかったと思います。 表現優先で細部の磨き上げにこだわっていないのでは?と思われるところも少し残念です。 まあ,贅沢な不満ではあると思います。

どちらかといえば,パルティータ集の方がこの表現がぴったりきており,好ましく感じました。

録音: SACDハイブリッドですが,SACDの再生機を持っていないため,CD層のみのコメントです。 残響がやや多めに取り入れられていますが,それでも明瞭感,解像感が十分にあります。 音色はやや残響の影響を受けていると思います(大したことはないのですが)。 優秀録音と言われれば,確かにそうかもしれません。 しかし,わずかではありますが,やっぱりまとわりつく残響が鬱陶しく,私の好みからはすこし外れます。 4.0点は私としては出血大サービスの評価です。

所有盤: OVCL-00143(ソナタ集), OVCL-00135(パルティータ集) (P)(C)2003 Octavia Records Inc. (国内盤)
録音:2003年6月10-12日,埼玉・秩父ミューズパーク
CDとSACDのハイブリッド盤

P.S. 木野さんの公式ホームページがあります。 またもや日本人ヴァイオリニストのレベルの高さを思い知らされました。 真摯,生真面目であり,個性の表出よりも普遍性を追求するような姿勢,いかにも日本人的だなぁと思いました(もちろん良い意味でです)。 そして,そんな演奏に共感を覚える私もやっぱり日本人なんだなぁと思います。

(記2003.12.19)


演奏:
録音:

ライナー・キュッヒル(Rainer Kuchl) (Platz 2003) (全集)

全体に速めのテンポ設定で,なみなみならぬ表現意欲を感じます。 淡々と突っ走っているようで,実はアクセントをしっかり効かせた小気味よい小粋な演奏だと思います。 それぞれの曲の持つ個性を大きな流れの中で表現しようとしているかのように感じます。 しかし,一方で,わずかながら音程の乱れ,音のつぶれ,発音の乱れなど,技術的不安要素も散見され, 安心して音楽に集中することが出来ませんでした。 私が神経質すぎるんだ(事実そうかもしれません),録音があまりに悪すぎでそう聞こえるだけなんだ,と思いたい。 ちょっと残念!

録音: 残響過多で残念ながら私の最も好まない録音の典型です。 まるで銭湯の中で聴いているようです。 ヴァイオリンの音は残響にまみれて濁りきっており,また,変にギスギスして,全くまともではありません。 当然ながら明瞭感もなく,細部が,微妙なニュアンスが,全然伝わってきません。 一体この録音で聴き手に何を伝えたいんですか???

所有盤: PLCC-766/7 (P)2003 Gakken Co., Ltd./Platz (国内盤)
録音:2003年3月 ウィーン

P.S. キュッヒル氏はご存じの通り,ウィーン・フィルのコンサートマスター。 どんな素晴らしい演奏が聴けるのかと大きな期待を持って聴いただけに...

(記2003.12.09)(修正2003.12.10)


演奏:
録音:

アーノルド・シュタインハート(Arnold Steinhardt) (TownHall 1966) (ソナタ第一番,パルティータ第二番)

鋭角的で引き締まった演奏ですが,やや淡々としすぎている感があります。 また,所々音の処理が甘くなっているというか配慮が行き届いていないと感じるところもあり, 全体としては私の好きなタイプの演奏ながら,聴取後いまひとつ物足らず,すっきりとしないところが残ります。

録音: 残響がほとんどなく,非常に明瞭で聴き取りやすい私好みの録音ですが, 高域の伸び感が今ひとつで,音色も1966年の録音にしてはちょっと古臭すぎるというのが残念なところです。 また,音像が左右にフラフラと揺れるのも,ヘッドホンでの聴取ではつらいところがあります。 さらに,やや歪み感が多い,テープヒスノイズが若干多め,といったようにクオリティは良くありません。

所有盤: THCD-07 (P)(C)1966,1998 TownHall Records (輸入盤)
Recorded February 8-10, 1966, Fine Recording, New York City.

P.S. シュタインハート(スタインハート?)氏はロサンゼルス生まれ, グァルネリ弦楽四重奏団のヴァイオリン奏者。 映画「ミュージック・オブ・ハート」にも出演されていたとのこと。 1963年のエリザベート王妃国際音楽コンクールで第三位入賞等の経歴があるようです。

(記2003.12.01)


演奏:
録音:

ミカエル・ゴルトシュタイン(Michael Goldstein) (MITRA 録音不明) (パルティータ集)

細身で透明感のある明るい音色が美しく好印象です。 強奏部でもつぶれることなくこの音色を保っています。 テンポにも淀みがなくきびきびとしており,変にもったいぶったところがないのもいい感じです。 表現自身は正統的ですが,気負ったところがなく,素直で伸びやかさの感じられる,なんだかホッとする演奏です。 リピートが省略されているのがちょっと残念です。

録音: 透明感ある音色が活きる,すっきりとした好録音です。 明瞭感,高域の伸び感も十分あり,音色も自然です。 わずかに残響感があるものの,全く主音を邪魔していません。

所有盤: MITRA CD 16 239 (輸入盤) (N.M.氏からの借用盤)

P.S. N.M.さんのご厚意で聴かせていただくことが出来ました。 有り難うございます。

(記2003.11.23)


演奏:
録音:

ボブ・ファン・アスペレン(Bob van Asperen) (チェンバロ) (AEOLUS 2000) (ソナタ第二番,第三番,パルティータ第三番,シャコンヌ)

解説書では,ソナタ第二番はBWV964(Johann Sebastian Bachの編曲?), ソナタ第三番の第一楽章はBWV968(Wilhem Friedemann Bachの編曲?)と書かれています。 ソナタ第三番の第二楽章から終楽章,パルティータ第三番,シャコンヌは演奏者自身の編曲です。

演奏自身は歯切れ良く気持ちよいのに,また,技術的にもしっかりしていて安心して聴けるのに, なんで心に響いてこないんだろうと常々思っていました。 結局よくわからないまま今に至ってこの感想を書いていますが, 一つ言えるのは,あまりに音数が多くゴチャゴチャ, ガチャガチャしすぎているのが要因なのではないだろうか,ということです。 和声の補強によって,その構造が明確に意識されるはずなのに, また,リズム構造がはっきりと意識されるはずなのに, かえって希薄に感じたりもします。 音の洪水によって響きが混沌とし,残念ながら美しく感じません。

これはチェンバロ曲なんだ,と自分に言い聞かせても駄目でした。 やっぱり私の聴き方は間違っているだろうか?と真剣に悩んでしまいます。

録音: 響きが多い録音です。 相変わらず楽器自身の響きなのか,録音環境の残響なのか,わかりづらいのですが, 音の残り具合,音色の感じから,残響もかなり取り込まれているようです。 元々音が多い上にこの響きの多い録音ということで,なおさらゴチャゴチャ感が助長されています。 なぜもっとすっきりと録音できないのかと残念に思います。

所有盤: AE-10044 (P)(C)2002 AEOLUS (輸入盤)
Recording: II/2000, Hervormde Kerk, Bennebroek

P.S. アスペレン氏は1947年生まれ,グスタフ・レオンハルト氏の高弟とのこと。

(記2003.10.27)


演奏:
録音:

アンドレアス・シュタイアー(Andreas Staier) (チェンバロ) (TELDEC 1997) (ソナタ第二番,第三番)

ソナタ第二番,第三番と書いていますが,解説書によるとソナタ第二番はBWV964(バッハ自身の編曲?), ソナタ第三番の第一楽章はBWV968(バッハ自身の編曲?),第二楽章から終楽章は演奏者自身の編曲,とあります。 編曲はバッハ自身かどうか,疑問視されているということです。

原曲に対してかなりたくさんの音が追加されていて,壮麗な雰囲気を湛えています。 テンポのゆらぎ方もヴァイオリンという楽器の特質から来るものとは全く異なりますし, 終楽章ではヴァイオリンではなかなか味わえない快速さが爽快な気分にしてくれます。 しかし,他のチェンバロ編曲版にも言えることですが,これはもう全く別の曲として聴いた方がいいみたいです。 ヴァイオリンの演奏に求めていたものをチェンバロの演奏にも期待しながら聴くと, ゴチャゴチャしている割に単調で面白くない,という面がどうしてもつきまとってしまうと思います。 こういう編曲ものでは,いかに原曲を忘れさせ,その楽器のために作曲されたものであるかのごとく聴かせるてくれるかがポイントだと思いますが, そういう点ではこの演奏は,残念ながらそこまでの思いにさせてくれるまでに至りませんでした。 (単に私がチェンバロの面白さを知らないだけなのか... 編曲版を聴く態度が間違っているのか...)

録音: ヘッドホンで聴いていると,チェンバロの蓋の中に頭をつっこんで聴いているような密度の濃さを感じる録音です。 響きが豊かなのですが,私には少々響きをとらえすぎているように感じます(これが楽器自体の響きなのか残響なのか, チェンバロの録音ではいつも悩むのですが,これはどうも残響も結構含まれているようです)。 明瞭感,解像感,音色,高域の伸び感,どれを取っても悪くないのですが, やっぱりもう少し響きを抑えてすっきりとした録音にして欲しかったと思います。

所有盤: WPCS-6497 TELDEC (国内盤)
録音:1997年11月,12月 ケルン

P.S. シュタイアー氏は1955年ゲッティンゲン生まれのピアノフォルテ,チェンバロ奏者。 1983年から86年までムジカ・アンティカ・ケルンで活動,その後,ソリストとして活動,とのこと。

(記2003.10.25)


演奏:
録音:

ルジェーロ・リッチ(Ruggiero Ricci) (One-Eleven 録音不明) (パルティータ第三番)

テヌートとスタッカートの明快な弾き分け方, 独特のねっとりしたヴィブラートと強めの弓圧による濃い音色, どこを取ってもリッチそのもので,相変わらず彼らしい個性の強い演奏ですが, 彼の録音で時々感じられる技術的な難点がほとんどなく,安心して音楽に浸ることが出来ました。 とはいえ,やっぱりこの個性的な演奏が好きかといわれると,どうかな,と思います。

録音: 明記されていませんが,周囲雑音の入り具合からしてライヴ録音と思われます。 ガサガサ,ゴソゴソとバックグラウンドノイズがありますが,楽器音が非常に明瞭なため全く気になりません。 残響感もあまりなく,また,音色も自然好感が持てます。 オーディオ的に優れているとは思いませんが,音の捉え方が良く,私の好みの録音です。

所有盤: URS-93060 (C)(P)1993 One-Eleven Ltd. (輸入盤)
"Portrait of an Artist Vol.6, Ricci Plays Flury, Bach, Ysaye, Wieniawski, Sarasate, Bartok, Chopin"

P.S. 収録曲に関するデータがなく,素性がわかりませんが,彼のライヴ収録を集めたような企画盤のようです。 聴衆の笑い声の中で演奏されるバルトークのデュオなども入っており,彼の人柄が窺われて興味深いです。 インタビュー?を収めたトラックもありました。

(記2003.10.24)


演奏:
録音:

カルロ・グランテ(Carlo Grante) (ピアノ) (Music & Arts 録音不明) (ソナタ第一番,第二番,パルティータ第一番) (ゴドフスキー編)

曲についてはナナサコフ盤を参照してください。 演奏についても,このナナサコフ盤との比較になってしまいますが, こちらの方が人間的情緒感,暖かみがあってはるかに鑑賞に耐えうる演奏だと感じますし, 原曲のイメージを微かながら感じさせるものになっています。 もっとも,やっぱり編曲が編曲なだけに,馴染めないことには変わりがありませんが。

録音: 高域の伸び感がなく,今ひとつヌケの悪さがあってすっきりしません。

所有盤: CD-1039 (P)1998 Music and Arts Programs of America, Inc. (輸入盤)

(記2003.10.22)


演奏:
録音:

ミヒャエル・ナナサコフ(Michael Nanasakov) (ピアノ) (Nanasawa Articulates 2000) (ソナタ第一番,第二番,パルティータ第一番) (ゴドフスキー編)

レオポルド・ゴドフスキー(Leopold Godowsky)によるピアノ編曲版。 タイトル下のコメントに "Very Freely Transcribed and Adapted by L. GODOWSKY" とあるように, これはもう編曲というより,バッハの無伴奏ヴァイオリンを素材に新たにピアノ曲を作曲した,と言ってもいいくらい変わり果てています。 もうバッハの無伴奏ヴァイオリンを聴いているという感覚はありません。

演奏は非常に派手で劇的,また,速い楽章でのまるで機関銃の連射を聴いているようなアグレッシブさに圧倒されますが, 自動演奏(後述)という先入観もあってか,無機的な印象が強いです。 人間が演奏したときの微妙なゆらぎがないからかもしれません。 これを面白いと思うかは聴き手次第だと思います。 私はちょっとついて行けませんでした。

録音: 残響感はあまりないのですが,ちょっと距離感があり,高域の伸び感もなく全く冴えません。

所有盤: JNCD-1007 (P)2000 Nanasawa Articulates (国内盤)

P.S. 解説書によると,演奏者のミヒャエル・ナナサコフは,『「1955年リトアニアに生まれ,作曲と即興演奏をアロイジオ神父に師事。 1989年アメリカに亡命,演奏会活動はせず,CD録音でしか自分をアピールしない。」という設定の電子上のヴァーチャル・ピアニスト。 手法は,プロデューサー(七澤順一)による解釈を,コンピュータと自動演奏ピアノを用いて実音再現するというもの。(後略)』ということです。 ヤマハの自動演奏ピアノとMACが使われているみたいです。 MICHAEL NANASAKOV Piano Workshopというホームページがあります。

収録曲は,ソナタ第一番~第三番と書いてあるのですが,ソナタ第二番→パルティータ第一番,ソナタ第三番→ソナタ第二番でした。

(記2003.10.22)


演奏:
録音:

ジェニファー・コウ(Jennifer Koh) (Cedille 2001) (パルティータ第二番)

個性的というわけではありませんが,若者らしいストレートで素直な表現に心惹かれます。 技術的安定感もあります。 短調の曲ですが,音色,全体の表情が明るいのも好印象です。 特にシャコンヌまでの4つの楽章がよいのですが,シャコンヌはやや構えてしまっているようで, ややストレートさに欠けるのが残念なところです。

録音: わずかに残響感がありますが,ほとんど気にならないレベルです(ごくわずかに音色に影響している感はありますが)。 実在感のある(ちょっとだけ)生々しい音の捉え方をしており好感が持てます。 録音レベルが若干低いのが残念なところです。

所有盤: CDR 90000 060 (P)(C)2001 Cedille Records (輸入盤)
"Solo Chaconnes"
Recorded: January & May 2001 at WFMT Chicago
カップリング曲:Richard Barth/Ciacona in B minor for Solo Violin, Op.21, Max Reger/Chaconne in G minor for Solo Violin, Op.117 No.4

P.S. ジェニファー・コウ氏は第10回チャイコフスキーコンクール(1994年)第2位(第1位なしの最高位)。 全くの蛇足ですみません,解説書表紙の写真,目つきの悪いおばちゃん風で(ごめんなさい!)印象が良くないのですが, 裏面の写真はすごくいい表情しています(何でこっちの写真を表紙に使わなかったんだ!)。

(記2003.10.15)


演奏:
録音:

ホプキンソン・スミス(Hopkinson Smith) (リュート) (DHM 1987) (パルティータ第二番)

演奏者自身の編曲による演奏。 録音が良いせいもあると思いますが,リュートの音色ってこんなに美しかったんだな,と再認識しました。 楽器の性質上,全体に地味な印象があるのは仕方ありませんが,シャコンヌの中間部など, この上なく響きが美しく,幸せな気分に浸ってしまいました。

録音: 残響感がほとんどなく,楽器自身の響きを明瞭に,ピュアに捉えた好録音です。 音色も自然です。 演奏者の息づかいや指板の上をすべる運指の音などもリアルに捉えられています。

所有盤: 05472 77451 2 (P)1988 BMG Music (C)1997 BMG Music (輸入盤)
Recorded at: Kirche in Seewen, 1987; Sonart, Milano
カップリング曲:Sonata a-moll BWV 1013

P.S. スミス氏の演奏としては,このほかに全集盤があります。

(記2003.10.10)


演奏:
録音:

ジャン・ジョフリー(Jean Geoffroy) (マリンバ) (Skarbo 録音不明) (パルティータ集)

マリンバによる演奏。 きびきびとスピーディで淀みのない音楽の流れにびっくりしました。 マリンバという楽器に漠然と抱いていたイメージを完全に覆されました。 全体に速めのテンポなのは,音を持続させることが出来ない打楽器の特性をカバーするためかもしれません。 微妙に変化が付けられたタッチ,一つ一つの音の音量バランス,細かく粒の揃ったトリル,... とにかく打楽器からこれだけ豊かな音楽が出てくることに本当に驚きます。 テンポどり(揺らし方)をはじめ,表現自身はヴァイオリンの演奏に近く,意外なほどに違和感がありません。 ただ逆に,もう少し打楽器の特性を活かした,ヴァイオリンの演奏とは異なる表現があってもよかったのに,と思います(じつはこれを期待したのですが,この点では肩すかしを食らいました)。

録音: 残響感がほとんどなく,楽器音を素直に,リアルに捉えた好録音。 低域レンジの広さを感じますが,逆に高域の伸び感はどうかな?という印象です。 もっとも,元々高域成分の多い楽器ではないようなので,何とも言えません。

所有盤: D SK 1944 Skarbo (輸入盤)
"MARIMBA'CH"

P.S. 解説書によると,ジョフリー氏は,パリ交響楽団(Ensemble Orchestral de Paris)のティンパニスト,パリ国立高等音楽院の助教授ということです。

(記2003.09.24)


演奏:
録音:

ジュディス・インゴルフソン(Judith Ingolfsson) (Catalpa Classics 2000) (ソナタ第三番)

何気ない演奏ですが,気負いが感じられず,力を抜いて伸び伸びと表現されているのが清々しいです。 優しく丁寧でニュアンスにも富んでおり,また,強奏部でも決して荒れず透明感を保っている音色も心地よいです。

録音: 少し残響が伴っていますが,明瞭感,解像感高く楽器音を捉えた好録音です。 高域の伸び感も十分,音色も自然です。 バックグラウンドノイズも不自然なくらい全くありません。 録音レベルが低めなのが少々残念です。

所有盤: 30101 (P)(C)2000 Catalpa Classics (輸入盤)
Recorded in Indianapolis, January 2000.
カップリング曲:Bloch/Poeme Mystique(Sonata No.2), Rorem/Autumn Music, Wieniawski/Fantasie Brillante on Themes from Gounod's Faust, Op.20

P.S. 公式ホームページがあります。 アイスランド出身。 1998年のInternational Violin Competition of IndianapolisのGold Medalistということです。 デビューCD。

(記2003.09.19)


演奏:
録音:

クリストフ・ポッペン(Christoph Poppen) (ECM 2000) (パルティータ第二番)

ヒリヤード・アンサンブルとの共演盤で,CDの前半で,パルティータ第二番の各楽章と声楽曲が交互に演奏されます。 またCDの最後でシャコンヌに声楽が加えられた編曲版が演奏されます。 ここでは前半のパルティータ第二番の演奏だけに触れます。

バロック・ヴァイオリンによる演奏で,控えめながらも緩急があり, いかにもバロック・ヴァイオリンらしい角の立った,そして透明感ある音色が特徴的です。 とはいえ,個性的かというと特にそういうわけではなく,「あぁ,やっぱりバロック・ヴァイオリンだった」という印象です。 技術的にも全く不安なく聴き通せるのですが,線が細く,弱々しい感じがしますが,これは楽器の特性かもしれません。

と,演奏の感想を書いてきましたが,このCDはヒリヤード・アンサンブルとの共演を,また,斬新な解釈をCD全体として楽しむものであって, パルティータ第二番だけを取り出して感想を述べてもあまり意味がないかもしれません。 CDの後半で演奏される,声楽が加えられたシャコンヌは,確かに面白く一聴の価値はあるとは思うものの, 取って付けたような感は否めず,声楽に弱い私にとっては特に興味をそそられるものではありませんでした。

録音: かなり残響時間の長い環境で録音されています。 音の捉え方は悪くなく,残響量の割には聞き取りやすいとは思うのですが,やはり残響が主音にまとわりついてかなり鬱陶しく感じます。 豊かな残響を好む方には好録音かもしれませんが,やはり私はこの録音は好きになれません。

所有盤: ECM 1765 461 895-2 (P)(C)2001 ECM Records GmbH (輸入盤)
Recorded September 2000, Monastery of St. Gerold, Austria.

P.S. 「モリムール」と題されたヒリヤード・アンサンブルとポッペン氏との共演CD。 ユニバーサル・ミュージックのホームページに紹介文が掲載されています。 『有名な「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番《シャコンヌ》」にまったく新しい解釈を加え,当時バッハの頭の中で鳴っていたであろうサウンドを再現するため,ヴァイオリンと声楽のための新たな編曲を施した革新的なバッハ作品集。』とあります。 シャコンヌの編曲版(Ciaccona for solo violin and four voices, a performance including hidden chorales as revealed in a study by Helga Thoene)は, デュッセルドルフ大学教授のヘルガ・テーネ女史の「シャコンヌは,バッハの旅行中に亡くなった彼の最初の妻,マリアへの追悼曲である」という説に基づいている?ということです。

(記2003.09.16)



演奏:
録音:

ジャン=ジャック・カントロフ(Jean-Jacques Kantorow) (The National Trusut 1995,96) (全集) (ピアノ伴奏付き)

ロベルト・シューマンによるピアノ伴奏付き。 ピアノ伴奏を付けることの是非は別にして,ピアノ伴奏が付いていることの功罪を考えさせられます。 ピアノ伴奏によって,今まで頭で補っていた和声構造が明確になる,リズム構造が明確になる,といった面がやはりあると思います。 ただ,和声に関しては必ずしも違和感なく受け入れられるかというと,そうとは限らないということがわかってきました。 あくまでもシューマンの視点で,ということになると思います。

しかし,何といってもピアノ伴奏があることによって,演奏者のアプローチが全く異なってしまうことが一番大きいのではないかと思います。 一番わかりやすいのはテンポ感で,ピアノ伴奏がベースにあるため,とにかくインテンポ感が強いです。 まるでメトロノームに合わせて弾いているみたいで,拘束されている感が強いです。 普通の演奏が,曲想に合わせて緩急を大きく付けているからこそ自然に聴こえるんだ,ということを実感します。

ということで,このピアノ伴奏付きの演奏には,無伴奏による演奏に求めていることを求めてはならず, 全く違う曲なんだと思って接した方が良いようです。 そう思って聴くと,なかなか楽しめると思います。 カントロフの演奏は,全体にテンポ設定が速く(ソナタ第三番のフーガは,何と7:28!),ダイナミックで小気味よいので,聴いていてなかなか気持ち良いです。

録音: 録音時期が異なるためか,Vol.1とVol.2でやや傾向が異なります。 Vol.1は,やや距離感があり,残響感こそそれ程多くないものの,高域の伸び感がなく,冴えない録音になってしまっています。 Vol.2は,同じようにやや距離感を感じるものの,帯域感はそこそこあって,Vol.1に比べてかなり聴きやすい録音です。

所有盤: NTCD-009 (P)(C)1996 (Vol.1), NTCD-010 (P)(C)1997 (Vol.2) (輸入盤)
Vol.1: s1,2,p1 - Recorded in the Picture Gallery at Attingham Park July 20ht+21st 1995
Vol.2: s3,p2,3 - Recorded in the Picture Gallery at Attingham Park September 26ht+27th 1996

(記2003.09.09)


演奏:
録音:

ルジェーロ・リッチ(Ruggiero Ricci) (One Eleven 1988) (ソナタ第二番,パルティータ第二番)

技術的な切れの悪さ(音程は悪くないと思います),ヴィブラートの質など,不満に思うこと,好きになれないことは多々ありますが, ダイナミックで迫力があり,前述の不満を越えて唸らされる充実感があります。 どちらかというとソナタ第二番の方が良く,パルティータ第二番はややミスが多く音楽的にも締まりに欠けるところが少し残念に思います。

録音: ライヴ録音ながら残響感は比較的少なく,この点では好ましいものの, やや距離感があって,明瞭感,解像感が今ひとつ,という感じです。 高域の伸び感ももの足りません。 確かにライヴらしい会場の雰囲気を良く捉えた録音であるとは思うのですが。 録音レベルもやや低く,距離感があるせいもあって,やや聞き取りづらく苛々する録音です。

所有盤: URS-89013 (P)1989 One-Eleven Ltd., Hong Kong (輸入盤)
"A Tribute to Ruggiero Ricci", From an unaccompanied violin recital given by Ruggiero Ricci on June 11, 1988 at the City Hall Concert Hall in Hong Kong.
カップリング曲:Paganini/Caprices Op.1 13-24, Kreisler/Recitative & Scherzo Caprice, Wieniawski/Le Staccato, L'Ecole Moderne Op.10, Paganini/"God Save the Queen" Variations, Tarrega/Recuerdos de la Alhambra

(記2003.09.01)


演奏:
録音:

ペッカ・クーシスト(Pekka Kuusisto) (Ondine 1997) (パルティータ第三番)

現代的で洗練された印象を受けます。 細身で冷たく,金属的透明感のある音色のためかもしれません。 技術的にも全くそつがなく,安心して聴くことが出来ます。 ただ,表現上の個性が強いというわけではありませんので,聴取後の印象がやや薄いです。

録音: 残響が少しあり,明瞭感,解像感は比較的良好なものの,この残響がまとわりつく感じであり, 残響量が少ないのに鬱陶しい感じが残ります。 決して悪い録音ではありませんが,少しすっきりしない感じがして,今ひとつ好きになれません。

所有盤: ODE 901-2 (P)1997 Ondine Inc. (輸入盤)
"STRINGS ATTACHED", Recorded at the Jarvenpaa Hall, 5/1997
カップリング曲:Barkauskas/Toccata, Ravel/Sonata, Schnittke/Sonata No.1, Sibelius/Romance Op.78/2, Rondino Op.81/2, Mazurka Op.81/1

P.S. ペッカ・クーシストは1976年生まれ,フィンランド出身。 第4回カール・ニールセン国際音楽コンクール(1992年)第三位,第7回シベリウス国際コンクール(1995年)第一位,などのコンクール歴があります。

(記2003.08.29)


演奏:
録音:

ジノ・フランチェスカッティ(Zino Francescatti) (Biddulph 1958) (パルティータ第一番)

キリッと引き締まった好演です。 速めのテンポできびきびとしており,気持ちが良いです。 ライヴということで,演奏上のミスもありますが,全体の印象が良いのでほとんど気になりません。

録音: ライヴ録音。モノラル。 ホールの残響がほとんどなく,ライヴらしい生々しさを良く捉えている私好みの好録音ですが, いかんせんテープの保存状態が良くなかったようで,ヒスノイズの他,ザザザー,ブチブチブチというような大きな雑音が時折入ります。 まあここまでは慣れれば我慢できるのですが,後半の数曲ではドロップアウトのような音の途切れが入ってかなり聴きづらくなってしまっています。 これは本当に残念です。

所有盤: FZ1 (P)1991 Biddulph Recordings. (輸入盤)
This recording was recorded live in concert on 9 September 1958.

P.S. 1枚に1曲,約16分しか収録されていない,いわゆる「シングルCD」です。

(記2003.08.22)


演奏:
録音:

アドルフ・ブッシュ(Adolf Busch) (EMI 1929) (パルティータ第二番)

いかにも古い! 弾き飛ばし(?)や弾き崩し,ポルタメントなど,現代の演奏では消えてしまった表現が続出してきます。 リズムもギクシャクしたり,切れが悪かったりと,技術的にも不満がいろいろとあります。 現代の緻密な演奏に慣れた耳にはなかなか馴染んできませんが,例えばシャコンヌの中間部など, 気持ちがそのまま音に現れたような表現にハッとさせられることもありました。

録音: アナログ盤からの復刻と思われます。 古い録音なので歪み感が多少大きいのは仕方ありませんが,元々がスタジオで(残響のない環境で)鮮明に録音されていたようで, 思いのほか聴きやすく,十分鑑賞に耐え得ります。 アナログ盤からの復刻によくあるノイズも気にならないレベルです。 1929年の録音ということを考えると,これはなかなか良い状態と言えるのではないでしょうか。 残響まみれの現代の録音よりよっぽど良いと感じます。

所有盤: CDH 7 63494 2 (P)1990 EMI Records Ltd. (輸入盤)
Recorded: London, No.3 Studio, Abbey Road, 8,11. XI. 1929.
カップリング曲:Beethoven Violin Sonata No.5, No.7

P.S. もう75年前にもなろうという演奏に対して,どのように接したらよいのか? 今までこういった歴史的録音に対しても,現代の演奏と同じように聴いてきたのですが, これはちょっとフェアでないのではないか,と思い始めています。 当時の演奏家が受けてきた教育がどのようなものであったか,演奏家がどのような演奏を目指していたのか, 聴衆はどのような演奏を期待していたのか... こういった背景を理解するか否かで歴史的録音に期待することも変わってくるはず。 実際のところどうであったかは全然理解していないのですが,そういうことを想像しながら聴き返してみると, いままで馴染めなかった古い表現も,以前ほどの違和感を伴うことなく耳に入ってくるような気がしてきました。 もっとも,まだまだこういった歴史的演奏を楽しめるところまではいっていないのですが...

(記2003.08.19)



演奏:
録音:

ニコラス・チュマチェンコ(Nicolas Chumachenco) (Edelweiss 1988,89) (全集)

全体的に速めのテンポできびきびしており,非常に引き締まった印象を受ける好演です。 歯切れ良い奏法も印象的で,重音なども重音であることを感じさせない切れの良さがあります。 また,ノヴォトニーほどではありませんが,ソナタ第二番のフーガやシャコンヌの中間部など, ポリフォニックな側面を浮かび上がらせるような効果を狙った奏法も聴かれ,興味深いです。 一方,拍の取り方(ため方?)には少々違和感を感じるところもありました。 音楽の流れを崩しているようにしか感じられず,この点だけが残念なところです。

録音: やや残響感があるものの,主音にはあまり被っておらず,そこそこ明瞭感があります。 音色も自然で聴きやすい好録音です。 ソナタ集はやや録音レベルが低いです。 パルティータ集は録音レベルも高く,より解像感があってこちらの方が若干好ましく感じます。

所有盤: ED 1002(ソナタ集), ED 1003(パルティータ集) Cassiopeia-Edelweiss (輸入盤)

P.S. チュマチェンコ氏は,ポーランド生まれ,アルゼンチン育ち。 1966年第3回チャイコフスキーコンクール第4位,1967年エリザベート王妃国際音楽コンクール第7位。

(記2003.07.30)


演奏:
録音:

レベッカ・ジョンソン(Rebekah Johnson) (2002) (パルティータ集)

落ち着きがあり,きれいにまとめられていると思います。 丁寧で優しく,音色も美しい好演ですが,何度聴いても「どんな演奏だったかな?」という感じで,やや印象が薄いです。

録音: 豊かな残響が印象的ですが,やっぱりこれは多すぎて鬱陶しく感じます。 しかし,残響量の割には明瞭感,解像感,高域の伸び感も悪くなく,残響の多い録音の中ではまだましな方とは思います。 豊かな響きを好む方には好録音かもしれません。

所有盤: 情報なし (輸入盤)
Recorded January 28-30, 2002 at Church of the Immaculate Conception in Montclair, New Jersey.

P.S. レコード会社,レーベル,品番等の記載が一切なく,プライベート盤と思われます。 「この録音は,Mellon Foundationからの補助金で可能になった」というような記述がありました。

(記2003.07.24)



演奏:
録音:

ジェームズ・グリーニング・ヴァレンズエラ (James Greening-Valenzuela) (Con Brio Recordings 1997,2002) (全集)

リズムが今ひとつぎこちなかったり,技術的な切れに欠ける演奏ではありますが,どこか素朴であり親しみを感じます。 丁寧であり,曲に対する誠実な姿勢が感じられるためだと思います。 どちらかというとソナタ集の方が良い感じです(録音の影響もあるとは思いますが)。

この演奏で面白いのは装飾です。 各ソナタの終楽章など「普通,こんな風に付けるかぁ?」と思えるほど大胆に付けています(他の楽章の付け方にも特徴がありますが)。 演奏者には申し訳ありませんが,正直言ってこの装飾はちょっと無理があると思います。 リズムも崩れていますし,無理矢理入れようとしている感が否めません。 チャレンジ精神には敬意を表しますが...

録音: ソナタ集とパルティータ集では,全く録音傾向が異なります。 ソナタ集は,残響感がほとんどなく,手作り風でアットホームな雰囲気を持った好ましい録音です。 オーディオ的には決して良いとは言えませんが,楽器音を明瞭に,生々しく捉えており,このヴァイオリニストの持つ暖かい音色を良く伝えてくれます。 私はどちらかといえば好きです。 しかし! こともあろうか,この録音には疑似ステレオ処理が施されています。 スピーカで聴く分にはさほど気になりませんが,ヘッドホンで聴くと頭がねじれそうになってとても聴いていられません。 左右チャネルのスペクトラムを比較すると,ほぼ同じ包絡線を描いていますので,オイストラフ盤とは違う処理のようです。 しかし,リサジュー曲線を描かせてみると,明らかに位相が操作されていると思われる軌跡を描きます。 このような小細工は百害あって一利なし! ぜひともやめていただきたい。 せっかくの好録音が台無しです(激怒)。

一方パルティータ集は,残響まみれで明瞭感も高域の伸び感もなく,全く冴えない録音です。 こちらは一応ステレオですが,ほとんどモノラルに近いです。 疑似ステレオ処理はされていません。

録音場所,録音時期が異なるとはいえ,セットで発売するには余りにも録音が違いすぎると思います。 ソナタ集の録音で,なおかつ疑似ステレオ処理なしで統一されていたら,私も相当満足していたと思います。 本当に残念。

所有盤: CBR 231(ソナタ集), CBR 232(パルティータ集) (P)(C)2003 Con Brio Recordings (輸入盤)
ソナタ集: Recorded in December 2002 at Hollcraft Studios, Pleasant Hill, CA.
パルティータ集: Recorded in April 1997 at Morrison Recital Hall, Boise State University, Idaho.

(記2003.07.16)


演奏:
録音:

ミシェール・マカルスキー(Michelle Makarski) (ECM 1995) (パルティータ第一番)

バロックヴァイオリンのような陰影の深さを持ちながら,非常に現代的な印象を受ける演奏です。 やや金属的で硬い響きではありますが,透き通るような音色がとても美しいです。 線が細くインパクトには欠けますが,繊細で洗練された表現が心に残ります。

録音: 残響がかなり多いですが,後方で広がる感じであり,明瞭感,解像感はそれ程悪化していないと思います。 とはいえ,まとわりつき気味の残響によって音色が損なわれている感じはあります。 残響量の割には悪くないと思いますが,やはり私の好みではありません。 美しい音色をストレートに聴かせて欲しかった。 残念!

所有盤: ECM 1587 (P)(C)1997 ECM Records GmbH (輸入盤)
Recorded June 1995, Propstei St. Gerold
カップリング曲:Biber/Passacaglia in G Minor, Hartke/Caoine, Reger/Chaconne from Sonata in A Minor op.91, Rochberg/Caprice Variations

(記2003.07.13)


演奏:
録音:

ヨーゼフ・シゲティ(Joseph Szigeti) (Music & Arts 1946,49) (ソナタ第一番,第二番,パルティータ第三番)

この曲に対する決然とした態度が表現に滲み出ています。 この強い思い入れに心動かされるのも確かですが,一方で,沈滞する音楽の流れに乗り切れない(フーガ,パルティータ第三番など), 技術的正確さよりも表現優先といった感じで弾き飛ばされてついていけない(ソナタの終楽章など),といった面があるのも正直なところです。 やはりどうしても技術的な弱さが耳についてしまい,純粋に音楽に没入することができませんでした。 こんな表現もあるんだ!という,現代の演奏からは決して聴くことの出来ない表現に面白さを感じるのですが。

録音: アナログ盤からの復刻。モノラル。ライヴ録音。 1946年録音のソナタ第一番は,ややホールトーンを含んでおり,明瞭感,音色ともあまり良くありません。 1949年録音のソナタ第二番,パルティータ第三番は,一変して全く残響がなく,この点で大変好ましいのですが, 帯域が狭い点,弱音の再現が悪い点でそれ程良いとは言えません。 1940年代の録音であり,アナログ盤からの復刻ということを思えば,これでも良い方だと思わないといけないかもしれませんが。

所有盤: CD-774 (P)1993 Music & Arts Progams of America, Inc. (輸入盤)
Recording: 10 Nov. 1946, New York (ソナタ第一番),13 Feb. 1949, New York (ソナタ第二番,パルティータ第三番)

P.S. シゲティの演奏に対して,「技術が気になるようではまだまだ芸術の深奥に達していない」といった主旨の評論を時々見かけますが, 残念ながら,どうも私はその部類に入るようです。

(記2003.07.07)


演奏:
録音:

オレグ・カガン(Oleg Kagan) (Erato 1989) (全集)

演奏に対する厳しい姿勢が窺える熱演であり,様々な表現上の工夫もあって意欲を感じるのも確かですが, 音程の不安定さ,演奏上の些細なミスが散見され,残念ながら集中して聴くことが出来ませんでした。 ライヴなので,演奏上の傷は付き物,と無視しようと思ったのですが... また,全体的に音楽の流れもわずかながらギクシャクするところがあるように感じました。

録音: ライヴ録音。 やや距離感があり,ホールの響きが主音に大きく被って明瞭感が失われています。 高域もこもった感じで伸びがなく,また,音色も損なわれています。 全く冴えない録音で残念です。

所有盤: 2292-45805-2 (P)1992 Erato Disques s.a. (輸入盤)
Recorded in 16/04/89, Concertgebouw, Amsterdam.

P.S. カガン氏は1946年生まれ。 1990年に若くして癌で亡くなられたということで,このCDはその前年の録音ということになります。 ということもあり,すでに本来の実力を発揮できない状態であったのかもしれません。

(記2003.07.01)


演奏:
録音:

小林美恵 (Nippon Columbia 2001) (ソナタ第一番,パルティータ第二番,第三番)

慎重に,丁寧に,深く深く表現しようという姿勢がありありと感じられます。 解説書に小林さん自身が書かれている「(バッハの曲に対して)あまりに畏敬の念が強すぎて...」という気持ちが, 表現に,音色に,そのまま反映されていると思います。 細やかに神経が行き届いたアーティキュレーション,一音一音深く丁寧にかけられたヴィブラートも印象的です。 しかし,ほとんど祈りとも思える雰囲気が漂い,聴いている方は少々息苦しさを感じてしまいます。 また,パルティータ第三番では装飾も取り入られていますが,音楽の自然な流れを乱して引っ掛かりを感じてしまうのが残念です。

録音: 明瞭感,解像感はそこそこあるものの,残響がやや多めであり,音色に影響してすっきりしません。 決して悪い録音ではないと思うのですが,もう少しヌケの良さがあればと思います。

所有盤: GES-12250 (P)2001 Nippon Columbia Co., Ltd. (国内盤)
録音:2001年3月13日~15日,彩の国さいたま芸術劇場音楽ホール

P.S. 小林美恵さんの後援会設立10周年記念として製作されたとあります。 一般には販売されなかったのではないでしょうか。 幸運にも手にすることが出来ました。

(記2003.06.20)



演奏:
録音:

フレデリック・ペラシー(Frederic Pelassy) (BNL 1990) (全集)

気負うことなく落ち着きをもって取り組まれたと感じる演奏です。 派手なところもなく,取り立てて個性的な表現があるというわけでもなく,どちらかといえばオーソドックスで何気ない演奏に聴こえますが, 丁寧,繊細であり,またここぞというところでは力強く,控えめながらもニュアンスに富んだ表現に心惹かれます。 伸びやかな音色も魅力的です。

録音: 残響が多くまとわりつく感じであり,また,主音にも大きく被って明瞭感が失われています。 音色にも影響しており,持ち前の美しい音が損なわれています。 非常に残念!

所有盤: BNL 112781 (P)1990 BNL Productions, BNL 112790 (P)(C)1991 SCAM/BNL (輸入盤)
Enregistre en l'Eglise d'Auribeau-sur-Siagne en Mai 90.

P.S. 公式ホームページがあります。 ペラシー氏は1972年生まれ,フランス,パリ在住。 このバッハの録音はペラシー氏17歳の時のもの。 17歳にしてこの演奏! しかし,10年以上経った今の彼の演奏を(良い録音で)聴いてみたいというのも正直なところです。

(記2003.06.17)


演奏:
録音:

イリヤ・グリンゴルツ(Ilya Gringolts) (DG 2002) (ソナタ第二番,パルティータ第一番,第三番)

猛烈な表現意欲に圧倒される怪演です。 緩急強弱が激しく,装飾も取り入れられていて,バロックスタイルをかなり意識していると思うのですが, これがまた極めて個性的で(もう匂いがしてきそうなくらい!),もうバロックという感じではないです。 速い楽章での突進感,ぶつけ弓の強烈な重音奏法(パルティータ第一番のtempo di borea - double,ソナタ第二番のfugaで顕著), 緩徐楽章での粘り着くような弓使い,極めて高い弓圧によるエッジの効いた音色,大胆な装飾,など, 今まで聴いたことないような表現が,これでもか!これでもか!と続出してきます。 躍動感があるとか,美しいとか,そういった言葉とは次元の違う世界です。

ここまでの大胆な自己主張にはただただ感服します。 こういうチャレンジ精神旺盛な演奏は大歓迎で,そういう意味で大変楽しめました。 しかし,この演奏が好きかと問われると,う~ん,どうかな?という感じです。 聴いているこちらまでヘトヘトになります。 好き嫌いが大きく分かれると思います。

録音: 極めて明瞭感,解像感の高い好録音。 残響もわずかですっきりしており,音色への影響もほとんど感じられませんし, バックグラウンドノイズも不自然なほど皆無で透明感も高いです。 距離感も程々で,聴きやすい録音です。

所有盤: 474 235-2 (P)(C)2003 Deutsche Grammophon GmbH. (輸入盤)
Recording: Mol (Belgium), Galaxy Studios, 11/2002

P.S. グリンゴルツ氏は1982年,サンクトペテルスブルグ生まれ。 16歳でパガニーニ国際コンクールに優勝したとのこと。

(記2003.06.04)


演奏:
録音:

ブロニスラフ・フーベルマン(Bronislaw Huberman) (Arbiter 1942) (パルティータ第二番)

弾き飛ばすような弓の使い方,ややせかせかした感じの演奏スタイルなど, 時代を感じずにはいられませんが,これが当時の当たり前の姿なんだろうな,と思います。 現代の演奏とは目指す方向が違うのか,演奏に対する考え方が変わってきたのか,趣が全く異なります。 現代の演奏に接するのと同じ姿勢で聴くと,「なんだこれは」になりかねないですが, 当時の事を想像しながら聴くと,これも一つの演奏の姿なんだなと妙に納得してしまいます。 (もっともこれはこの演奏に限ったことではありませんが)

録音: ライヴ録音。SPからの復刻と思われます。 SP復刻盤特有のシュルシュル音がかなり強く,また大きな音量時の歪み感もかなりあります。 音色もこもっていますが,こればかりは仕方ないところです。 ライヴにしては音の捉え方が良く,近接マイクでしっかり録られているため, 悪条件にもかかわらず何とか鑑賞に耐えうると思います。 部分的に霧が晴れたようにスーッと音が伸びるときがあります。 最初,マスタリングのミスかと思ったのですが,SP盤の復刻とはこのようなものなのかもしれないと思い直しています。 (前にも同様の現象に遭いました)

カップリング曲のブラームスのソナタは1年後の録音ですが,こちらはかなり状態が良く, このバッハとは雲泥の差で,なかなかリアルでした。 バッハがこの状態でなかったのが残念です。

所有盤: arbiter 105 (P)(C)1997 arbiter recording company inc. (輸入盤)
"huberman in recital, brahms, bach, schubert, sarasate, new york 1936-44", rec. 6. 12. 1942
カップリング曲:Brahms/Violin Sonata Op.78, Schubert/Phantasia Op.159, Sarasate/Romanza Andaluza Op.22-1

(記2003.05.30)


演奏:
録音:

エミール・テルマーニ(Emil Telmanyi) (Testament 1953,54) (全集)

いわゆるバッハボウ(curved bow)による演奏。 これは本当に面白い響きです。 単に同時に和音が鳴っているというにとどまらない,バッハボウ独特の響き,音色があるように思います。

しかし,これが音楽的に成功しているかというと,話は別です。 四重音では,最初から4本の弓を同時に鳴らさなければならないため,その出だしの準備で拍毎に「えいや」という感じになってしまい, 結果的に音楽が沈滞してしまっています。 その他にも,この弓で一気に四重音を出せることと引き替えに,音楽的に様々な点が犠牲になっています。 この演奏に限っていえば,その犠牲のほうがはるかに多いと感じます。

また弓とは無関係に,全体として技術的にも不満の多い演奏です。 音の切れ,運指の切れに欠け,音程もやや不安定です。 面白い試みではあるのですが,「面白い」以上の音楽的感動が得られませんでした。

録音: モノラル録音。 古い録音なので,高域の伸び感など十分ではありませんが,音の捉え方は好ましく,明瞭感,解像感などそこそこあります。 録音年代を考えると,かなり良い状態(ベストに近い)での復刻と言えると思います。

所有盤: SBT2 1257 (P)1954 Decca Music Group Limited. (C)2003 Testament (輸入盤)
Recorded: 19-20, 23 & 27. XI. 1953; 1-2 & 5-7. IV. 1954, West Hampstead Studios, London.

P.S. テルマーニ(1892-1988)は,ハンガリーのアラド(後にルーマニアに吸収された?)出身。 作曲家ニールセンの娘婿だそうです。

CDの解説書をTestamentのホームページで読むことが出来ます。 この演奏で使用されているのは"Vega"という弓で,製作者の名前"Vester Gaard"から付けられたようです。

「バッハボウ」に関しては,ベネディクト・クラフト氏がTononi Recordsのホームページで批判的な意見を述べておられます。 この中でクラフト氏は,「新しい弓でさまざまな演奏の試みをするのは素晴らしいことだが,自分たちの作り上げた弓に対して,この神聖なバッハの名前をつけてほしくはなかった。」, 「エミール・テルマーニとアルバート・シュバイツァーの理論は20世紀初頭のものであり,20世紀後半に古楽器奏者が当時の楽器で実際に素晴らしい演奏をするようになり, この理論が明らかに間違っていることが明らかである。」といった趣旨の内容を述べています(K.N.氏意訳より)。 これを読んで「バッハボウ」という表現を改めようと思ったのですが,面倒だったのでそのままにしています。ご了承下さい。

(記2003.05.26)


演奏:
録音:

デイヴィッド・ギャレット(David Garrett) (DG 1993) (パルティータ第二番)

丁寧で整っており,力強く緊張感もある演奏ですが,とにかくテンポが遅い! シャコンヌだけで19:50,全曲で約38分もあります(もしかしたら最長記録かも?)。 音色など美しく,それなりに心動かされるところはあるにせよ,躍動感に乏しく,この調子で長時間聴かされるとちょっと疲れてしまいます。

録音: やや残響の被りはあるものの,解像感,明瞭感もあり,比較的音色も自然で聴きやすい音質です。

所有盤: 445 657-2 (P)(C)1995 Deutsche Grammophon GmbH, Hamburg (輸入盤)
Recording: Polling, Bibliothekssaal, 11/1993
カップリング曲:Beethoven/Violin Sonata No.5, Mozart/Adagio K.261

P.S. ギャレットは1980年生まれ。録音時の年齢が13歳ということです。 若者らしい躍動感ある溌剌とした演奏を期待していましたが,ちょっと違って残念でした。 若すぎてまだまだ自分らしさを表出するまでに至っていないのではないか,という印象です。 巧いのは確かですが,教科書通りというか,先生から教えられたとおりに弾いているという感が否めません。

(記2003.05.23)


演奏:
録音:

ジュリアン・オレフスキー(Julian Olevsky) (Doremi 1953) (全集)

フラジオレットの使い方などに時代を感じさせるものがありますが,全体的には正統的な演奏に思います。 ひたすら緊張感が高く,緩急強弱を抑え,速めのテンポで一直線に疾走する感じがあります。 独特のドライヴ感に胸のすく思いがする一方,余韻に乏しく聴いた後に何か物足りなさも感じてしまいます。

ソナタ第三番のプレリュードは,遅めのテンポながら,力強く楽器を鳴らし切っており,このCDの中でも最も聴き応えがあります。 しかし,プレストではなぜか緊張感の抜けた軽い表現になっており,このあまりの落差に「あれっ?」と思ったりもします。 パルティータ第三番は,比較的肩の力が抜け,表現に余裕を感じますが,全体の統一感から少し外れる感じもします。

録音: モノラル録音(のはず)。ノイズの感じからしてアナログ盤からの復刻と思われます。 オイストラフ盤と同じ疑似ステレオ処理がなされています。 やはりヘッドホンでの聴取はかなりの苦痛を強いられます。 録音自体は,残響がほとんどない環境で録音されたようで,音の捉え方自身は好ましいものですが, 帯域が狭く,また歪み感も多いことから,残念ながらあまり良い状態とは言えません。 曲によって音の傾向がわずかに異なっており,さらに楽章毎にも歪み感などが異なっています。

所有盤: DHR-7831/2 (P)(C)2003 DOREMI (輸入盤)
"Julian Olevsky Volume 2"

P.S. ジュリアン・オレフスキー(1926-1985)はベルリン出身。 録音年に関してCD解説書に記載がなく,CDショップ・カデンツァのホームページでの記載, 「録音:1953年頃,原盤:Westminster,国内外初CD化。」を信じれば,27歳頃の録音ということになります。 (録音年は,この記載を信じて採用しています。)

(記2003.05.20)


演奏:
録音:

堀米ゆず子 (SONY 1985) (パルティータ第三番)

柔らかく繊細なタッチが印象的な好演奏です。 速い楽章では軽快に,緩徐楽章ではしっとりと,あくまでも優しく歌い上げています。 音色も透明感があってとても美しいです。

しかし,これもメヌエットまで。 なぜかブーレから突如として力強く快活な音楽に急転換してびっくりします(それまでの心地よい音楽に浸りきっていると...びっくりシンフォニーのように本当にドキッとします)。 同じ曲の中でこんなに変わってしまってもいいのか?どうしたんだ?と耳を疑ってしまいました。 これはこれでいいんですけど...私は前半のタッチで最後まで通して欲しかったとちょっと残念です。

録音: 残響が多く多少の煩わしさはあるものの,明瞭感,解像感とも良好,音色も比較的自然であり, 残響量の割には聴きやすい録音です。

所有盤: 32DC 600 (P)(C)1986 CBS/SONY Inc. (国内盤)
Recorded at EMI Abbey Road Studio 1, London, on Nov. 28, 29 & Dec. 2 1985.
カップリング曲:バッハ/ヴァイオリン協奏曲第一番,第二番

(記2003.05.12)


演奏:
録音:

レオシュ・チェピツキー(Leos Cepicky) (Multisonic 2001,02) (全集)

全体に落ち着いたテンポで丁寧に演奏されており,派手さはないものの,一音一音に込められたエネルギーがひしひしと伝わってきて圧倒されます。 最初はオーソドックスな印象を受けましたが,古くさい感じは全くなく,現代的なスタンダードを指向しているのではと思えます。 長年バッハに真正面から取り組んでここに到達したといったような充実感,表現においても技術においても高い完成度を感じる素晴らしい演奏です。

録音: 極めて明瞭感,解像感の高い好録音です。 録音レベルも高く,非常に濃い感じがします。 残響がやや多めで後方にふわっと広がる感じでそれほど悪くないのですが,やはり音色に影響を与えており,やや透明感が失われ,ヌケの悪さにつながっているのが本当に惜しいです。

所有盤: 31 0487-2 (C)2002 Multisonic (輸入盤)
Recorded at the Faculty of Divinity of Charles University in Prague (Dejvice compound), between December 2001 and June 2002.

P.S. チェピツキーはチェコ出身。 1985年に結成されたウィハン四重奏団のリーダー。 このバッハは,ノヴォトニー,スークに続くチェコ人として3人目の全集らしいです。

(記2003.04.29)


演奏:
録音:

オッシー・レナルディ(Ossy Renardy) (Testament 1950,51) (ソナタ第一番,第三番)

全編に渡って緊迫感溢れる音楽が展開して聴き応えがあります。 表現自体は極めてオーソドックスで特に個性的というわけではありませんが,引き締まった立派な演奏に惹きつけられます。 技術的にも安定感がありますが,ソナタ第三番のフーガとアレグロ・アッサイでわずかに崩れる感じがある点だけが残念です。

録音: モノラル録音。 悩んで悩んでの4.0点です。 何で1950/51年のモノラル録音が4.0点なんだ!とお思いになるでしょう。 実際に聴いた方も,なぜ?と思われるかもしれません。 しかし,私にとってこの録音は,最高!と思える素晴らしいものです。

何がそんなに素晴らしいか? とにかく音の捉え方が最高です。 残響が皆無でヴァイオリンの生の音だけを極めて明瞭に解像感高く捉えており,演奏の全てが何の飾り気もなくストレートにガンガン伝わってきます。 確かに古い録音で音質もやせ細っており,決して良いとは言えませんが,意外に帯域感もあって,古臭い音質が鑑賞の妨げになっていないことも特筆できます。 最近の残響過多のデジタル録音よりはるかに良いです。

幸運なことに,というか,残念なことに,というか,カップリングの他の曲は音質が必ずしも良くありませんでした。

所有盤: SBT 1292 (P)1960 Decca Record Group Limited (Compilation & Remastering (P)(C)2003 Testament) (輸入盤)
"Bach: 2 Sonatas for solo violin & Violin Encores"
カップリング曲:Paganini/Le Streghe, Caprice No.17, No24, Kreisler/Liebesleid, Liebesfreud, Caprice vennois, Tambourin chinois, Wieniawski/Scherzo-tarantelle, Shubert/Ave Maria

P.S. レナルディは1920年,ウィーン生まれ。1953年,自動車事故のため33歳の若さで亡くなられたということです。 このCDは没後50周年記念アルバムとのことです。

(記2003.04.22)


演奏:
録音:

デイヴィッド・ラッセル(David Russell) (ギター) (TELARC 2001,02) (パルティータ第二番,第三番)

曲によってはリュートっぽい装飾が入りますが,全体としては自然な表現です。 安定感のある整った演奏ではありますが,やや印象が薄いです。

録音: 音場感豊かな録音ですが,やや生々しさに欠けると思います。 高域の伸び感にも少し不満を感じ,どこか冴えない感じが残ります。

所有盤: CD-80580 (P)(C)2003 TELARC (輸入盤)
"david russell plays Bach"
Recorded in The Peggy and Yale Gordon Center for Performing Arts, Owings Mills, Maryland, March 7, 2001, and April 11-13, 2002. カップリング曲:Prelude, Fugue, and Allegro, BWV998, Chorale Prelude, "Wachet auf, ruft uns die Stimme", BWV645, Chorale Prelude, "Jesu, Joy of Man's Desiring"

(記2003.04.16)


演奏:
録音:

ナタン・ミルシテイン(Nathan Milstein) (Biddulph 1935) (パルティータ第二番,ソナタ第一番よりアダージョ)

荒削りなところが時代を感じさせますが,ミルシテインらしいきびきびと引き締まった演奏です。 落ち着きのなさを感じるくらいに淀みなくスピーディであり,淡々と,そしてここぞというところで猛突進し,音楽が活き活きとしていて気持ちよいです。 さすがに後年の表現の深さまでは感じないまでも,若いときにしか出来ない表現がここにあるように感じます。

録音: アナログ盤からの復刻で,定常的にパチパチというノイズが入っていますが,大きなプスクラッチノイズが少なく, この種の復刻盤の中では比較的良い部類に入るのではないかと思います。 ソナタ第一番のアダージョの方がノイズレベルに対して主音レベルが大きく,音色も比較的自然で聴きやすいです。 ただ,ちょっと高域が落とされている感じはします。 パルティータ第二番は,ややノイズレベルが大きく,また主音の基本波成分が欠けているような音色(電話で聴いたような感じ)で少し質が落ちます。 いずれもデッドな環境で録音されたもので残響感は全くなく,これが幸いして古い録音ながら生々しくストレートに演奏を伝えてくれます。

所有盤: LAB 055 (P)(C)1992 Biddulph Recordings (輸入盤)
"Nathan Misltein the early Columbia recordings(1935-38) Baroque masterpieces"
(Sonata No.1 Adagio) Recorded on 21/2/1936; first issued on Columbia X61 (matrix XCO 18475)
(Partita No.2) Recorded on 27 & 30/12/1935; first issued on Columbia 276 (matrices 18452/3 & 18460/2)
カップリング曲:Vitali/Chaconne, Vivaldi/Sonata in A, in D, Tartini/Sonata "Devil's Trill", Pergolesi/Sonata in E, Nardini/Larghetto in A

(記2003.04.15)


演奏:
録音:

エドアルド・エグエス(Edoardo Eguez) (リュート) (MA Recordings 2000) (ソナタ第一番,パルティータ第三番)

リュートによる演奏。 録音のせいか,リュートというよりはギター的な音に聞こえます。 芯の通ったしっかりした演奏ですが,その表情は穏やかで聴いていて心地よいです。 ただ,なぜか聴いた後あまり印象に残りません。 ギターのように思って聴いてしまうために,物足りなく感じてしまうのかもしれません。

録音: 残響がかなり多いですが,響きの質は悪くなく,豊かな感じを出しています。 明瞭感,解像感もそれほど悪くないと思いますが,響きが多すぎて,全体の雰囲気として自然さ,ストレートさに欠けていると思います。 優秀録音ではあると思いますが,やっぱり私にとっては響きが煩わしく感じられます。

所有盤: M054A (P)(C)2002 MA Recordings (国内盤)
録音:2000年10月,イタリア,ブレッシアにある修道院にて
カップリング曲:Suite in G major (BWV1007), Prealude in C minor (BWV999)

P.S. 1959年,ブエノスアイレス生まれ。 現在,スイス,バーセル音楽学院にて教鞭をとっているとのこと。

(記2003.04.11)


演奏:
録音:

アンドリュー・ローレンスキング(Andrew Lawrence-King) (バロックハープ) (DHM 1999) (パルティータ第二番)

バロックハープによる演奏。 ハープ音楽としてしっかり消化されていて,すんなりと受け入れることが出来ました。 バロックハープということで,素朴な味わいを期待していたのですが,さにあらず,なかなか芯のあるダイナミックな演奏を聴かせてくれます。 特に印象に残ったのがシャコンヌの中間部で,ひたすら穏やかにしっとりと歌われており,ああ,こんな表現もあるんだ!,と,ちょっと心揺り動かされました。 もっとも,ハープでどんな高揚感を表現してくれるのか,と最初は期待しながら聴いたので,肩すかしを食らった感じではありましたが。

録音: 響きが美しいのは確かですが,音の捉え方がヒーリング系音楽のそれに似ており, バロックハープそのもの,バッハの音楽そのものを楽しむというよりかは,その心地よさを楽しむといった感じで, ハープの録音としては悪くないと思うのですが,私としてはちょっと色づけされすぎているかな,という気がします。

所有盤: 05472 77523 2 (P)(C)1999 BMG Ariola Classics GmbH (輸入盤)
Recorded: February 1999, at St Andrew's Toddington
Instrument: Chromatic double-harp by Simon Capp

(記2003.04.10)


演奏:
録音:

ヨゼフ・シルヴァーシュタイン(Joseph Silverstein) (Image Recordings 2001) (全集)

全体に速いテンポできびきびとしていて気持ちよいですが,聴取後には穏やかで暖かな余韻が残ります。 技巧が冴え渡っているとか,強烈な個性の主張があるというわけではありませんが,聴くほどに愛着の湧いてくる味わい深い演奏です。

録音: 後方にふわっと広がる残響が多少取り入れられており,わずかに音色に影響があるように感じます。 全体としてそれ程悪くないとは思うのですが,高域の伸び感がほんのわずかに足りず,ややヌケの悪い感じがするのが残念です。

所有盤: IRC 0201 (C)2002 by Image Recordings (輸入盤)
"J.S. Back: The Music for Solo Violin (Complete)"
Recorded August 27-31, 2001, at the Hevreh of Southern Berkshire, Great Barrington, MA.

P.S. この無伴奏ヴァイオリンの録音は,70歳の誕生日を記念して録音されたものとのことです。 シルヴァーシュタインのプロフィールがImage Recordingsのサイトに掲載されています。 その他,レビュー記事もありました。 過去,ボストン交響楽団のコンサートマスターを務め,現在は,シアトルにあるノースウェスト室内管弦楽団の首席客演指揮者,ユタ交響楽団の名誉指揮者の肩書きもあるようです。

(記2003.04.08)


演奏:
録音:

舘市正克 (ALM 1999) (ソナタ第一番)

ライヴらしい熱気に満ちたダイナミックな演奏です。 細かい音にまで深くかけられたヴィブラートが,艶やかで妖しい魅力を出しており,ゾクゾクします。 音程が何となく低めに感じたり(意図的かもしれません),強奏部で音がつぶれたり,弓が震えたり, いろいろと残念な点はあるのですが,独特の音色がこういった点を忘れさせてくれる熱演です。

録音: ライヴの雰囲気を良く伝えてくれる生々しい好録音です。 残響も抑えられ,明瞭感,解像感もそこそこあり,音色も自然で良いのですが, 唯一,高域の伸び感が足りない感じがあって,すっきりしないのが残念です。 ちょっと距離感があるせいでしょうか。

所有盤: ALCD-9020 (P)2000 Kojima Recordings, Inc. (国内盤)
"舘市正克ヴァイオリン・リサイタル", Recorded on October 1999 at Tokyo Bunka-kaikan.
カップリング曲:ルクレール/ヴァイオリン・ソナタニ長調Op.IX-3,ストラヴィンスキー/ヴァイオリンとピアノのための協奏的二重奏曲,ブラームス/ヴァイオリン・ソナタ第三番

(記2003.04.04)


演奏:
録音:

セルゲイ・スタドレル(Sergei Stadler) (Art & Electronics 録音不明) (パルティータ集)

奏法が非常に鋭角的で,かつ,かなりゴツゴツした無骨な演奏です。 力強く「これはなかなか!」というところも随所にありますが,全体的には緩急強弱,テンポのゆれなどもほとんどなく,やや単調な感じがするのが残念なところです。 一方で,シャコンヌでは極端に弱々しく演奏されるところもあったりするのですが,今ひとつ意図が読めず,単に聴きづらいだけというところもあります。 これはちょっといただけません。 パルティータ第三番は,表現に幅があってなかなか良い感じです。

録音: わずかに残響を伴っているものの,非常に鮮明で生々しい好録音です。 音色も自然です。 私としてはもう少し残響感を抑えて欲しかったと思いますが,それ程気になるものではありません。

所有盤: AED-68001 (P)(C)1988 Art & Electronics (輸入盤)
録音年は明記されていません。

P.S. セルゲイ・スタドレルは1962年レニングラード生まれ。 1982年の第7回チャイコフスキー・コンクールで,ヴィクトリア・ムローヴァと第一位を分け合ったようです。

(記2003.04.02)


演奏:
録音:

ユーディ・メニューイン(Yehudi Menuhin) (BIDDULPH 1929) (ソナタ第三番)

13歳の時の録音。 アダージョの深々とした表現に「これが13歳の演奏とは!」と唖然とします。 全体に荒削りであり古さを感じさせるスタイルながら,そういった事を越えて心に迫ってくるものがあります。 また,メニューインらしさも垣間見られ,すでにこの年齢から後年の演奏を彷彿させるスタイル(特に音色)を持っていることにも驚きます。

録音: アナログ盤からの復刻CD。モノラル。 ザーという古いアナログ盤特有のノイズが多いものの,プチプチ音はほとんどなく,比較的聴きやすいです。 楽器音も歪み感は多いものの,残響がほとんどないため思いのほか良好に聞こえます。 70年以上前の録音ですが,演奏がストレートに伝わってきます。

所有盤: LAB 032 (P)(C)1990 Biddulph Recordings (輸入盤)
"the young Yehudi Menuhin, the HMV recordings with Hubert Giesen (1929-30) including the first solo Bach and Beethoven sonata recordings"

(記2003.03.26)


演奏:
録音:

セレドニオ・ロメロ(Celedonio Romero) (ギター) (DELOS 1985,86) (パルティータ第二番)

ペペ・ロメロの編曲による演奏。 ただし,編曲といっても極めて原曲に近く,編曲されているという感じがほとんどしません。 演奏もギターらしさを出そうという感じはあまり見られず,原曲をいかに再現するかというアプローチを取っているように思えます。 という演奏なので,個性的という感じではありませんが,全体を通してきびきびと引き締まっており好感が持てます。 ギターという楽器の特性上仕方がないことかもしれませんが,特に速いパッセージで音の長さがバラバラになることがあって,この点が少々残念です。

録音: 近接で楽器音を極めて明瞭に捉えた好録音です。 高域だけでなく,低域方向の帯域感もそこそこあり,音色も自然です。 ギターのパルシヴ(?)な音の立ち上がりが身体に伝わってきて心地よいです。

所有盤: DE1005 (P)(C)1986 Delos International, Inc. (輸入盤)
Recorded during Mr. Romero's concert tour in Spain, 1985/86.
カップリング曲:バッハ/無伴奏チェロ組曲第三番,他

P.S. セレドニオ・ロメロはペペ・ロメロの父です。

(記2003.03.19)


演奏:
録音:

ルジェーロ・リッチ(Ruggiero Ricci) (UNICORN-KANCHANA 1981) (全集)

音色は相変わらずリッチらしくねちっこいですが,思いのほか濃くなく私にとっては聴きやすいです。 これまた意外なことにやや抑え気味の演奏であり,冷静に,丹念に,より深く表現しようとしているように思います。 抑え気味といっても,静かな力強さがあり,また集中度の高さをを感じさせる密度感があり,全体としてとても引き締まった印象を受けます。 リッチファンの方はもしかしたら物足りなさを感じるかもしれませんが,私にとってはリッチの個性とバッハとしての音楽表現がいい感じでバランスしていて好ましく聴こえます。

技術面での不安はやっぱりあるのですが,この演奏ではあまり気になることがありませんでした。 それだけ充実感の方が勝っているということでしょうか。

録音: やや残響感多く音色への影響が感じられますが,明瞭感,解像感はそれほど悪くありません。 高域の伸び感はやや足りない感じがあって,少しすっきりしません。 CDの1枚目と2枚目で録音レベルがかなり異なります。 1枚目のレベルが低すぎる感じです。 音質の傾向はほとんど変わらないように思いますが,印象が全く異なります。

所有盤: UKCD 2053/4 (P)(C)1992 Unicorn-Kanchana Records (輸入盤)
Recording Location: St. George the Martyr, London, on 27 and 28 February 1981 and 1-3 March 1981.

(記2003.03.18)


演奏:
録音:

ナタン・ミルシテイン(Nathan Milstein) (Bridge 1953) (パルティータ第二番)

ミルシテインらしいきびきびした演奏です。 ライヴらしい熱気に満ちていますが,技術的に崩れないところがさすがです。 シャコンヌは中間部の盛り上がりが素晴らしく,聴き応えがあります。 やっぱりリピートは省かれて,ちょっと残念です。

録音: モノラル録音。 やや距離感があり,明瞭感がよくありません。 高域の伸び感も足りず,こもった感じがしてこれも良くありません。 残響の取り入れ方が少なく,上記のような録音でも何とか鑑賞に耐えうるものになっている点が救いです。

所有盤: BRIDGE 9066 (P)(C)1996 Bridge Records, Inc. (輸入盤)
"The 1953 Library of Congress Recital"
Recorded in concert on March 13, 1953. The Coolidge Auditorium, The Library of Congress.
カップリング曲:Beethoven/Sonata in F major, Op.24, Brahms/Sonata No.3 in D minor, Op.108

(記2003.03.14)


演奏:
録音:

チョン・キョンファ(Chung Kyung-Wha) (BADINAGE 1998) (パルティータ第二番)

ダイナミックで豪快な演奏です。 静かに始まってシャコンヌでは頂点に達するような,大きな流れがあり,さらに,劇的,ドラマティックな表現が印象に残ります。 それでいて野暮ったくならないところはさすがです。

ライヴらしく勢いに満ちていますが,やや荒っぽさがあり,音色もちょっと荒れ気味です。 また切れの悪さを感じさせる場面もあり,ライヴとはいえやや不満が残ります。

録音: ホールトーンを含んでいるものの,楽器音を生々しく捉えた好録音です。 どういう機材,状況で録音されたのかわかりませんが,比較的近いマイク位置だったのではないかと思われます。

所有盤: BCD 3/4 (P)Badinage Music Co, Inc. (輸入盤?)
"Chung Kyung-Wha Violin Recital in Tokyo 1998 Volume 2"
1998年4月28日 東京でのリサイタルを収録したもの

P.S. 日本語の解説書が入っており,「聴衆の一人として客席に居合わせたポリーニがこのリサイタルを激賞した」と書かれていました。 それにしても,こういうCD-R盤はどのような経緯で発売に至るのでしょうか? いかにも海賊盤といった雰囲気で,こういう場に出すのが少々気が引けるのですが...(と言いつつ出していますが)

(記2003.03.12)



演奏:
録音:

フロリン・パウル(Florin Paul) (TACET-10/47 1989,95) (全集)

極めてオーソドックスで,真正面から取り組んでいるという感じを受けます。 奇をてらうわけでもなく,演奏自身に強烈な個性があるわけではありませんが,丁寧に,かつ,堂々と,朗々と歌われる演奏に素直に感動します。 音色も伸びやかで美しいです。 特に和音の響きの美しさは特筆ものです。

録音: たっぷりとした響きがとても美しい! とても広がり感があって空間性をうまく再現しており,響きの捉え方は素晴らしいです。 響きの量の割には解像感が失われていないところもなかなか良いです。 しかし,やはり生の音色は大きく失われており,残念ながら私にとっては,この響きの量は許容限度を超えています。 響きを抑えて楽器音だけをストレートに伝えてくれたらこの感動が何倍にもなるだろうに,という思いが聴く度に募ってきます。

パルティータ集とソナタ集は録音時期が異なり,録音の質も多少異なりますが,基本的にはほとんど変わりません。 パルティータ集の方がやや響きが多い感じがします。

所有盤: [パルティータ集] TACET 10 (C)(P)1989 TACET (輸入盤)
Recorded in Falicon, Nice, France, 1989.
[ソナタ集] TACET 47 (C)(P)1995 TACET (輸入盤)
Recorded at Franziskaner Konzerthaus Vilingen-Schwenningen, 1995.

P.S. このパウル盤,優秀録音として有名なようで,愛好されている方が多いようです。 私自身,このCDを最初に聴いたときに,その響きの美しさに心を動かされ,「響きはない方がよい」という私の信念が揺らいだのも事実です。 何度も聴き返し,さんざん悩みましたが,やはり残念ながらこれは私の求める録音ではなく,そういう意味で厳しめの評価をしました。 愛好されている方にとっては不愉快な評価であろうと思います。 着目点次第で優秀録音であることは私も認識しています。 ということで,何卒お許しを。

(記2003.03.11)


演奏:
録音:

ヴィドール・ナギー(Vidor Nagy) (ヴィオラ) (CADENZA 2000) (変則ソナタ集+シャコンヌ)

3曲のソナタの第一楽章(アダージョまたはグラーヴェ)と第二楽章(フーガ)およびシャコンヌを取り出し, さらに,各曲間に20世紀のヴィオラ独奏曲を挟むという,変則的な構成になっています。

  1. バッハ / ソナタ第一番 - Adagio, Fuga
  2. ツィンマーマン / Sonate fur Viola solo
  3. バッハ / ソナタ第二番 - Grave, Fuga
  4. ペンデレツキ / Cadenza per Viola sola
  5. バッハ / ソナタ第三番 - Adagio, Fuga
  6. バルトーク / Sonate fur Violine solo - Fuga
  7. バッハ / パルティータ第二番 - Ciaccona
  8. リゲティ / Sonate fur Viola solo - Chaconne chromatique

バッハの演奏は,ヴィオラの音域に合わせて音程がシフトし,音色が多少地味ではありますが, オーソドックスなスタイルで,ヴィオラであることが意識されないくらいしっかりとしています。 技術的にも不安を感じさせません。 ただ,ヴィオラであること以外の特徴が薄く,聴取後どんな演奏であったかあまり思い出せないくらい印象が薄いです。

録音: 少し距離感があり,残響をたくさん取り入れた録音です。 まるで銭湯の中で聴いているようであり,主音に残響が被ってかなり煩わしく感じます。 音色も残響に汚されて全く良くありませんし,明瞭感,透明感にも欠けます。

所有盤: CAD 800 913 BAYER RECORDS (輸入盤)
"Bach und das 20. Jahrhundert"

(記2003.03.06)


演奏:
録音:

ナイジェル・ノース(Nigel North) (リュート) (LINN RECORDS 1993) (全集)

リュートによる演奏。 当然ながら,編曲によってハーモニーとベースラインの追加がなされています。 また,楽器もしくは奏法上の制約のためでしょうか,部分的にオクターブ上げたり下げたりといった音型の変更がなされています。 これらの編曲にも関わらず,編曲による違和感をほとんど感じません。 原曲のイメージそのままに,あたかも最初からリュート曲として作られたように感じます。

演奏自身も,ヴァイオリンによる演奏とほとんど変わりない感覚で素直に受け入れられます。 リズム感がヴァイオリンによる演奏と似ているためだと思います。 また,リュートというと弱々しい地味なイメージを持っていたのですが,繊細さと力強さを兼ね備えた演奏であり, 高揚感もうまく演出していて,なかなか聴き応えがあります。 技術的にも安定感があって安心して音楽に浸ることが出来ました。

録音: リュートという楽器の特色を解像感高くキチッと捉えた好録音です。 また,録音している場の雰囲気を良く捉えており,一般的にはおそらく優秀録音に入ると思われますが, やや響きを取り入れすぎており,ストレートさに欠ける点が私にとってはマイナスです。

所有盤: CKD 128 (C)(P)2000 LINN RECORDS (輸入盤)
Recorded at St Martins Church, East Woodhay on 12,13 & 14 July 1993.
Instrument: 13 course lute by Thomas Neitzert, London 1986, after an original by Leopold Widhalm, Nurnberg c.1730.
無伴奏チェロ組曲(全集)と組み合わせた4枚組BOX。 Vol.1(CKD 013), Vol.2(CKD 029), Vol.3(CKD 049), Vol.4(CKD 055),から構成されています。

(記2003.03.04)


演奏:
録音:

ルジェーロ・リッチ(Ruggiero Ricci) (One-Eleven 録音不明) (パルティータ第二番)

思いのほか正統的な演奏ですが,独特のヴィブラートで歌い込んでいるところはリッチらしいです。 ただ,ちょっと精彩がなく聴取後の物足りなさが残ってしまいます。 録音が良くないせいかもしれません。

録音: アナログ盤からの復刻で,元音源はモノラル。 やや距離感があり,また,帯域が狭いせいもあって,明瞭感に乏しいです。 アナログ盤特有のスクラッチノイズがありますが,こちらはさほど気になりません。

所有盤: URS-92030 (P)1992 One-Eleven Ltd. (輸入盤)
録音年代が不明ですが,比較的若いころの録音ではないかと想像しています。

(記2003.02.28)




演奏:3.0
録音:3.0

ウェルナー・ホイトリング(Werner Heutling)

レーベル gutingi
収録曲 全集
録音データKonzertsaal des Klosters Wenningen, 25-27.8 1999, Mai 2000
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 (Vol.1)gut 224 (Vol.2)gut 227 (C)2000 gutingi (輸入盤)

愛奏曲をいつもの調子で弾きました,といった感じの,気負いのない演奏です。 「突き詰めた」「充実した」とは全く別次元の世界を築いており,暖かく懐の深さを感じる好演奏です。 かさついた音色もこの演奏を引き立て,味わい深いのもにしています。

技術的には,やや歯切れの悪さが気になってしまいます。 特に,速いパッセージで右手と左手の連携が微妙にずれたような音になっているのがちょっと残念です。

6曲の中では,パルティータ第二番が特に良くて音楽に没入できました。 逆にソナタ第三番,パルティータ第三番は音楽がやや沈滞傾向にあり,技術的な弱さも目立って,少し聴いていてつらい感じがします。

録音:

やや残響感があり,わずかにまとわりつく感じがあって鮮明さが失われているように感じます。 その割に音色の変化はあまりなく,この点では良いと思います。 音の捉え方としては悪くないと思うのですが,今ひとつ冴えない感じです。

P.S.

ホイトリング氏は1921年生まれとのことですので,録音時は80歳間近ということになります。 この年齢を考えると,この演奏も納得です。

(記2003/02/26)


演奏:
録音:

ヘンリク・シェリング(Henryk Szeryng) (PALEXA 1979) (パルティータ第三番)

演奏自身はシェリングらしい品格の高さを感じさせる確固たるものがありますが,やや音程が不安定であったり,発音ミスがあったりと,技術的にやや不安を感じます。 また,ヴィブラートもやや締まりがないのが残念です。

録音: ライヴ録音。 全くといって良いほど残響が無く,極めて生々しい快録音。 まるで自宅の一室で演奏してもらっているのを間近で聴いているような感じです。 おそらくこのような環境で録音すれば,こんな音になるでしょう。 高域の伸び感もあり,音色も全く自然そのもので素晴らしいです。 私の最も好きな音の捉え方で,この録音は最も好きな録音の典型と言えます。 シェリングの芸術が何の飾りもなく丸裸の状態でつぶさに伝わってきます。

残念なことに,シー,ジャリジャリというかなり大きなレベルのバックグラウンドノイズが入っており,オーディオ的にはあまり良いとは言えません。 ということを考えると,録音評価として4.5点はちょっと高すぎるかと思いましたが,私の好みを伝えたいという意図であえて高い点を付けました。

所有盤: CD-0502 (P)1996 Productions Polyphonie (輸入盤)
"Henryk Szeryng et Charles Reiner En recital"
Enregistrement: Pittsburgh, U.S.A., 6 decembre 1979.

P.S. この録音は上述の通り私にとってまさに理想とも言える録音ですが,実際にこのようなCDに巡り会った今,非常に複雑な気分です。 客観的にみてこの録音が一般的に受け入れられるかどうかと考えてみると,「きつい」「鑑賞に耐えない」「貧相な録音」といった否定的な意見があっても確かにおかしくないなと感じています。 演奏する方も,自分の演奏がここまで赤裸々にされるとちょっと抵抗があると思います。 世の中にこのような録音が皆無に等しいというのも納得してしまいました。 それでも私は,このような録音で全曲録音してくれる強者が現れることを期待したいです。

(記2003.02.13)

P.S. K.N.さんより,このCDのレビュー記事が掲載されているサイトを教えていただきました。有り難うございました。 アラン・ホーガンという方が書いたレビューで,こちらおよびこちらに掲載されています(同じ記事です)。 最後の方に録音評が書かれています。その一部を引用します。

The big problem with this disc is the poorly recorded sound. ... , and the close-miking introduces harshness in Szeryng's usually gorgeous tone. This disc has historical interest, but the poor sound will turn many listeners off. - Alan Horgan
このディスクの最大の問題点は録音である。 近接しすぎたマイク位置が本来ゴージャスなシェリングの音をぎすぎすした音としている。 このディスクは歴史的な意味があっても、このプアな音質のために多くのファンはそっぽを向くだろう。 アラン・ホーガン
(以上,K.N.氏訳)
この記事と私の録音評を見比べていただければ,どれだけインパクトのある録音か少しはご想像いただけるのではないでしょうか。

(記2003.02.25)


演奏:
録音:

グスタフ・レオンハルト(Gustav Leonhardt) (チェンバロ) (Deutsche Harmonia Mundi 1984) (ソナタ第一番,第三番)

チェンバロによる演奏なので,編曲によってかなりの音の追加がなされており,原曲に比べてかなり豪勢な印象です。 ソナタ第三番のプレリュードなど,やや速めのテンポで壮麗に演奏されており,ヴァイオリンによる演奏とは同じ曲とは思えない全く違う雰囲気を出していて面白いです。 ソナタ第一番のプレストでは,もともと単音のパッセージに何度かの差で並行するパッセージが加えられているほか, ベースラインのリズムも加わり,聴いている側の音楽の捉え方も全く変わってきます。 ジャカジャカと演奏されるところもたくさんあり,元がヴァイオリン曲であることを意識するとかなり違和感がありますが, これはチェンバロ曲なんだと思って聴けば,たいへん聴き応えがある好演奏です。

録音: まるで楽器の中にマイクを突っ込んで録ったような録音です。 過剰なほどに解像感が高く,あまりの密度感にかえって自然さを失ってしまっているのでは,と感じます。 純粋に楽器の響きのみが捉えられており,残響感はほとんどありません。 また,録音レベルが高く,他のCDを再生した後でこのCDを再生すると音の大きさにびっくりします。

所有盤: BVCD-1835(GD77014) (P)1992 harmonia mundi (国内盤)
Recorded: 17, 18. III. 1984, Doopsgezinde Gemeente Kerk, Haarlem.
「J. S. バッハ/ソナタと組曲 - トランスクリプション集」
カップリング曲:無伴奏チェロ組曲第六番

P.S.: カップリングの無伴奏チェロ組曲は,無伴奏ヴァイオリンよりも大胆に編曲されているところもあり, また,緩徐楽章など情感がよく伝わってきて,こちらのほうが出来としては良いのではないかと思います。

(記2003.02.21)


演奏:
録音:

諏訪根自子 (KING(Firebird) 1978,79,80) (全集)

派手さはないものの,この曲の演奏にかける内に秘められた思いが伝わってくるような静かな熱演です。 残念ながら技術的にややしんどいところがあり,歯切れ,音程,といった点で劣る感は否めませんが, 決して音楽として沈滞することはなく,むしろ前向きな流れを感じ,いつの間にか演奏に引き込まれて聴き入ってしまいます。

録音: 残響感が少なく,楽器の音色をストレートに捉えた好録音です。 明瞭感,解像感,高域の伸び感も十分にあって,演奏の細部まできっちり聴き取ることができます。 録音時期が長期に渡っていますが,わずかな差があるものの一貫していて聴いていて違和感がありません。

所有盤: KICC-133/4 (P)1981 KING RECORD CO., LTD (国内盤)
録音:1980/4/29(s1), 1978/11/25(p1), 1979/4/1(s2), 1979/6/16(p2), 1979/11/10(s3), 1979/10/8(p3), キングレコード 第1スタジオ
解説書には「レコード化にあたっては,生の演奏を尊重するため,テープ編集は一切行いませんでした」とあります。

P.S. 解説書には,「幻の天才少女,ここに復活」「戦後生まれの若い世代にとって,諏訪さんの名前は,今日神話に属する,といっていいのかもしれない」といったように書かれています。 解説書の中でも諏訪さんの今までの活動に対する著名な方々の数々の賛辞が並べられています。 恥ずかしながら私は諏訪さんの名前をこのCDの存在によって始めて知りました。 このCDは,諏訪さんが公の演奏活動を休止してから20年の沈黙を破って発表されたものということです。 最初,諏訪さんの演奏を記録に残しておきたいという私家版のようなつもりで録音したものだそうですが,キングレコードから広く愛好者に行き渡るようにしたいとのことで,レコード製作に至ったとのことです。

このような演奏ですから演奏評を書くことは少々ためらわれましたが,こういう演奏も記録として残されているんだということを知ってもらうためにも掲載することにしました。 しかし,残念ながら現在CDの入手はかなり困難な状況のようです。

(記2003.02.19)


演奏:
録音:

ルジェーロ・リッチ(Ruggiero Ricci) (One-Eleven 1993) (パルティータ第一番)

リッチ独特のねちっこい音色は健在ですが,やや薄まっている感じがします。 発音,音程が不安定で,技巧的に衰えがあるのは残念ながら否めません。 しかし,それでも音楽的には聴かせ所を押さえていて,聴いていて引き込まれるところはさすがだと思います。

録音: ライヴ録音。 やや距離感があって残響があるものの,そこそこ明瞭感があり,高域の伸び感もあって音色が自然なため,ライヴ録音としてはかなり聴きやすい好録音だと思います。

所有盤: EPR 97013 (C)(P)1998 One-Eleven Ltd. (輸入盤)
"RICCI 75th Birthday Celebration"
Recorded on October 5, 1993 at Wigmore Hall, London
カップリング曲:Beethoven Sonata in G #10, op.96, 他

P.S. このCDはリッチ75歳のお祝い演奏会のライヴ録音で,リッチファンのためのCDですから, このような批評をすること自体が間違っているかもしれません。ごめんなさい。
アンコールと思われるところでは,リッチ自身が曲目を紹介する声を聴くことが出来ます。 笑い声なども入っており,アットホームで暖かい雰囲気が感じられます。

(記2003.02.07)


演奏:
録音:

ユリアン・シトコヴェツキー(Yulian Sitkovetsky) (SYD RECORDS 1954) (パルティータ第二番)

緩急強弱が少なく,至極オーソドックスな印象を受ける演奏です。 淡々としていますが,演奏自体は力強く引き締まっていると思います。 技術的にも安定感があって,全く不安なく聴き通すことが出来ました。 シャコンヌでは,弱奏部でやや緩んで聴こえるところが残念なところです。

録音: モノラル録音。 残響感も少なく,音の捉え方自身は良いのですが,古い録音だけに高域の伸び感も悪く,また,マスターテープの劣化による歪み感がわずかに感じられ, やや聴きづらい録音です。

所有盤: SYD 001 (C)(P)1995 SYD Records (輸入盤)
"The Art of Yulian Sitkovetsky Vol.1" From the Sitkovetsky Family Archives.
カップリング曲:Mozart/Sonata No.26, Tartini/Sonata in G minor "Il Trillo del Diavolo", Paganini/"La Campanella"

(記2003.02.06)


演奏:
録音:

テディ・パパヴラミ(Tedi Papavrami) (Prise de son Philippe Labroue 2000) (全集)

緩急強弱が比較的激しく,全体に速めのテンポでスピード感のある演奏です。 このスピード感のあるボウイングの中で,力の抜き方をきめ細かく制御して表情付けしているところが印象的です。 リズムも前に前につんのめるような感じがあり,独特のドライヴ感がありますが,私としてはちょっと落ち着かない感じがしています。 全力で表現に集中しようとする迫力がひしひしと伝わってくる,緊迫感のある演奏で,なかなか聴き応えがあります。

録音: ライヴ録音。 音像的にはやや距離感を感じますが,息づかいなどもしっかりと捉えられており,ちょっと不思議な感じのする録音です。 ホールの響きがかなり被っており,音の輪郭がやや曖昧になっているのが残念です。 ただ,その割には音色は自然で,この点では聴きやすいと言えますが,ちょっとキンキンしすぎという気もします。

所有盤: (C)2001 Tedi Papavrami (輸入盤)
Enregistrements live du concert donne au Theatre de Saint-Quentin En Yvelines le 17 octobre 2000.

(記2003.02.05)


演奏:
録音:

江藤俊哉 (BMG/RCA 1976) (全集)

「江藤のボウイング」と賞賛されるボウイングから繰り出される独特の素晴らしい音色が堪能できる演奏です。 決して美しくはありませんし,特に重音など少々濁りを感じますが,図太く,エネルギーが凝縮され,極めて緊張感の高い音色に,ただただ圧倒されるばかりです。 本当に楽器を極限まで鳴らし切っているという感じがします。 演奏も真正面から正攻法で堂々と攻めており,比較的遅いテンポながら,全く「ゆったり」した感じを与えず,絶えず高い緊張感をもって迫ってきます。

録音のせいもあると思いますが,この中でも特にソナタ第三番が,この独特の音色を堪能できる充実感の高い演奏だと感じました。 逆にパルティータ第三番は,これも他の曲と同じような調子で演奏されるので,一貫性があるとはいえ,ちょっともたれる感じがするのが残念なところです。

録音: 残響が多いという感じではないのですが,響きの成分によって音色が汚されている感じがします。 本当にこれは残念です。 録音の詳細が書かれていないのですが,ソナタ第三番,パルティータ第三番は,録音の環境が異なるのか,この中ではだいぶ音色が自然で良い感じです。 特にソナタ第三番が良いように思いました。

所有盤: BVCC-7344-5 (P)1994 BMG VICTOR, INC. (国内盤)
Recorded 1976. Setagaya Kumin Kaikan, Tokyo

P.S. この演奏は,レコード芸術誌の「独断!こだわりのディスクベスト3」中で,戸田弥生さん(2002年4月号),長谷川陽子さん(2002年5月号),が続けてお気に入り盤として挙げられていたもので,かねてから聴きたかったものです。 このたび念願かなってじっくり聴くことが出来たわけですが,期待に違わない素晴らしい演奏で感激しました。 現在廃盤で極めて手に入りにくい状態です。 復刻されることを切に望みます。

(記2003.01.31)


演奏:
録音:

エリザベス・ウェーバー(Elisabeth Weber) (PRIMAVERA 2001,02) (ソナタ第一番)

とても整っていて,現代的に洗練された印象を受ける演奏です。 力強さはないものの,発音が丁寧で音色も澄んでひたすら美しく,緩急も自在にこなし,技術的にも全く不安がなく,本当に欠点が見あたりません。 ただ,あまりにも整いすぎており,ぐっとくるところがなく印象が薄いです。 もうひと味なにか加わっているとすごく良かったのですが。 これはちょっと酷な要望でしょうか?

録音: 多少の残響はありますが,息づかいもはっきりと聴こえてくるような近接での録音です。 高域の伸び感もあります。 しかし,不思議と生々しさがなく,その点でどことなく物足りなさを感じます。

所有盤: AMP 5106-2 (C)(P)2002 FREIBURGER MUSIK FORUM (輸入盤)
Recorded: 19-21 Dezember 2001, 09 April 2002, Musikwerkstatt Schlosspark Ebnet (Freiburg i. Brsg.), Theodor-Egel-Saal

(記2003.01.22)


演奏:
録音:

ゴルダン・ニコリック(Gordan Nikolic) (SYRIUS 1997) (全集)

アクセントが抑えられ,しかもノンヴィブラートで奏されているため,ヌメッとした感じがして最初は馴染めなかったのですが, よくよく聴いてみると伸びやかで透明感があり非常に美しい音色であることに気がつきました。 このような演奏なので,演奏自身も一瞬冴えないように感じるのですが,これまた速めのテンポでキリッと引き締まった演奏を聴かせてくれます。 現代楽器による演奏ですが,上記のような奏法から流れ出てくる音,パルティータで時折入る装飾などから,バロック奏法を意識してことがうかがわれます。

録音: 基本的な音の捉え方は悪くないと思うのですが,やや響きが多く,しかも少し癖があってせっかくの美しい音色を損なっています。 楽器音が美しいだけに少々残念です。

所有盤: SYR 141323 A/B (C)(P)1998 SCAM/SYRIUS (輸入盤)

(記2003.01.21)


演奏:
録音:

アルトゥーロ・デルモーニ(Arturo Delmoni) (John Marks Records 1988) (パルティータ第二番)

オーソドックスな演奏です。 落ち着いたテンポで,丁寧にきちっと弾いています。 表現上の印象は薄いものの,生真面目な姿勢が感じられ,また粘りのある音色に魅力を感じる演奏です。

録音: かなり近接で録音されたような生々しい音で,多めの残響を伴いながらも明瞭感,解像感の高い好録音です。

所有盤: JMR 14 (C)(P)1996 John Marks Records (輸入盤)
Recording: December, 1988, at the Christ the King Chapel, Saint Anthony's Seminary, Santa Barbara, California.
Instrument: J. B. Guadagnini, 1780. カップリング曲: Ysaye/Sonata for Solo Violin, Op.27, No.2, Kreisler/Recitativo and Scherzo, Op.6

(記2003.01.17)


演奏:
録音:

ハンスハインツ・シュニーベルガー(Hansheinz Schneeberger) (JECKLIN 1987) (全集)

全体に速めのテンポで小気味良いのですが,曲によっては(特にシャコンヌなど)落ち着きのなさを感じたりもします。 また,パルティータでは大胆に装飾が散りばめられており,ちょっと面食らいます。 試みとしては歓迎ですが,好きかと問われれば「ちょっと違和感を感じる」というのが正直なところです。 また,全体の表現に関しても,良く言えば個性的,悪く言えばどことなく癖があるという印象です。

録音: 少々距離感を感じます。 響きの量は少ないものの,音色に変化を与えてしまっているように感じます。 透明感がなく冴えません。

所有盤: JS 266/7-2 (C)(P)1988 Jecklin (輸入盤)
Recording: 1987 Pere Casulleras, Waldenburg/BL

(記2003.01.16)


演奏:
録音:

アレクサンドル・ブルシロフスキー(Alexandre Brussilovsky) (SUONI E COLORI 1990) (全集)

オーソドックスでどこを取っても中庸であり,演奏自身の印象が薄いですが, 落ち着いたテンポ,違和感のない適度な緩急強弱,透明感こそありませんが荒れることのない美しい音色,など, 充実感があって何度聴いても飽きのこない好演奏です。 技術的にも安定感があって安心して聴くことが出来ました。

録音: 残響感が少なく,明瞭感,解像感のある好録音ですが,高域の伸び感が足りない点が惜しまれます。

所有盤: SC 53023 Suoni e Colori (輸入盤)
分売のAB 31001/2と同一演奏と思われます。

(修2003.01.15) ※録音評価を3.5→3.0に修正しました。
(記2003.01.08)


演奏:
録音:

オレグ・カガン(Oleg Kagan) (LIVE CLASSICS 1979) (パルティータ第一番,第二番)

実直な,ひたむきな感じのする演奏です。 緩急強弱があまりありませんが,力強く表現しようとする意気込みが感じられ,素直に感動できます。 ライヴ収録ですが,技術的にも安定感があって充実した演奏だと思います。 音色が全般にざらつき気味で,特に強奏部での荒れが目立つのが少々残念なところです。

録音: 明瞭感,解像感の高い好録音。 高域も気持ちよく伸びています。 残響が少し多めに取り入れられています。もう少し抑えて欲しかったところです。 わずかに歪みっぽい感じがあります。オーディオ的にはあまり良くないかもしれません。 またホール雑音,特に低域ノイズが多いように思いますが,ライヴの雰囲気が感じられてこれはこれで気になりません。

所有盤: DMCC 24527 (LCL 171) (C)(P)1997 LIVE CLASSICS (国内盤)
"Oleg Kagan Edition 11"
録音:1979年12月21日 モスクワ音楽院大ホール

P.S. 別CDに収められたパルティータ第三番と同一日の録音で,録音状態も同じであるにも関わらず録音評価が異なっていたのを是正しました。 (1枚のCDに収めて「パルティータ集」として欲しかったところです)

(記2002.11.08)(修2003.01.14)


演奏:
録音:

アーロン・ロザンド(Aaron Rosand) (AUDIOFON 録音不明) (ソナタ第一番,パルティータ第二番)

力強く,演奏に対する厳しい姿勢がうかがえる一方で,一種の「情」をも感じる好演奏です。 時折あれっと思うミスもありますが,全体的には安定した技術で密度感があり充実しています。

録音: わずかに残響を感じますが,近接での生々しい好録音です。 低周波数のバックグラウンドノイズがやや大きく,また,マスターの状態が良くないのか,時々ブッという感じのノイズが入ります。 残念ながらオーディオ的には良いとは言えません。

所有盤: AUDIOFON CD 72012 (P)(C)1983,1987 PM & J Productions, Inc. (輸入盤)
カップリング曲:Ysaye/Sonata No.2, No.6, Teleman/Fantasia IV, XII

(記2003.01.10)


演奏:
録音:

ヨーゼフ・シゲティ(Joseph Szigeti) (OPUS蔵 1931,33) (ソナタ第一番,第二番)

この曲に対する思い入れをそのまま音色に表出したような演奏です。 厳しく曲を追求し,表現に関しては妥協を許さない真摯な態度が,音の一つ一つ,淀みのない音楽の流れから感じ取ることができます。 残念ながら技術的にやや切れの悪さが感じられますが,これぞシゲティの音という感じで気にならなくなってきました。 録音のせいもあって,第二番の方がよりシゲティの芸術性が堪能できると思います。

録音: モノラル録音。 SPの復刻盤でかなりスクラッチノイズが多いです。 特に第一番はかなりノイズに埋もれて聴きづらいです。第二番は信号レベルが高く第一番に比べればかなり聴きやすいです。 解説書によれば「オーパス蔵の音はノイズ取りは原音を損なわない範囲の最小限の使用に限定している」とのことで,これは納得できるものです。 確かにノイズの音色も含めて自然な感じがします。 ただ,楽器音の音色を一定に保つためか,曲の途中でもイコライジングを変化させているようで,ノイズの音色が時々変化し,最初ちょっと違和感を感じました。

さらに,解説書によれば,SP原盤について,第一番は日本盤,第二番はアメリカ盤を用いており,「(アメリカ盤は)音がしっかりしているものの響きに魅力がないのは残念である」と書かれています。 確かに,第一番は響きがかなり含まれており,第二番はほとんど響きがありません。 しかし私は,第一番は響きで音色が損なわれている良くない録音であり,第二番は生々しくストレートにシゲティの芸術性を伝えてくれる好録音であると感じています。

所有盤: OPK2030 (P)2002 発売元:オーパス蔵,販売元:株式会社キングインターナショナル (国内盤)

(記2002.12.25)


演奏:
録音:

ナタン・ミルシテイン(Nathan Milstein) (Orfeo 1956) (パルティータ第一番)

気合いの入った切れ味の鋭い素晴らしい演奏です。 ライヴらしい熱気とライヴらしからぬ安定感が感じられるところがさすがです。 音色も絶妙なヴィブラートによって細やかに表情付けされており,決して荒れることなく透明さを保っています。 基本的にリピートを省略しており,全体で15:12しかありません。この点がちょっと残念です。

録音: モノラル録音。 ライヴ収録ながら基本的な音の捉え方はそれ程悪くなく,比較的生々しく楽器音が捉えられていると思いますが, 中低域の充実感に欠け,線の細い頼りのない音です。 また,キンキンする割には高域の伸び感も少なく,全体に帯域の狭い感じのする冴えない音です。 もっとも,1956年の録音と考えれば決して悪い録音ではないとは思いますが。

所有盤: C 590 021 B (C)(P)2002 ORFEO International Music GmbH, Munchen (輸入盤)
2. Solistenkonzert Mozarteum 6. August 1956
カップリング曲:Vivaldi/Sonate fur Violine und Basso continuo No.30, Beethoven/Sonate fur Klavier und Violine No.9, Glasunow/Konzert fur Violine und Orchester op.82

(記2002.12.24)


演奏:
録音:

オレグ・カガン(Oleg Kagan) (LIVE CLASSICS 1979) (パルティータ第三番)

オーソドックスですが,密度の高い充実した演奏です。 全体に渡って高いテンションが持続して惹きつけられるのですが,やや一本調子で聴き疲れします。 プレリュードはもう少し活気が欲しかったところです。 音色は透明感があるとまではいきませんが美しいと思います。

録音: 明瞭感,解像感の高い好録音。 高域も気持ちよく伸びています。 残響が少し多めに取り入れられています。もう少し抑えて欲しかったところです。 わずかに歪みっぽい感じがあります。オーディオ的にはあまり良くないかもしれません。 またホール雑音,特に低域ノイズが多いように思いますが,ライヴの雰囲気が感じられてこれはこれで気になりません。

所有盤: DICC-24556(LCL 103) (C)(P)2000 LIVE CLASSICS 販売:(株)デジタル・メディア・ラボ (直輸入盤 日本語解説付き)
"Oleg Kagan Edition Vol.25"
録音:1979年12月21日 モスクワ音楽院
カップリング曲:バッハ/ヴァイオリン協奏曲第二番,ブランデンブルグ協奏曲第五番

(記2002.12.20)


演奏:
録音:

ヨハンナ・マルツィ(Johanna Martzy) (DOREMI 1960) (ソナタ第一番)

ライヴながら,マルツィのどの演奏にも共通する力強さと品格を感じさせる演奏がここでも聴くことが出来ます。 ヴィブラートがしっかり効いていながら上品さをを失わず,きりっとしていて素晴らしいです。

録音: モノラル録音。 ただし,オイストラフ盤の疑似ステレオ処理と全く同じ処理が施されており, ヘッドホンで聴くと頭がねじれるようでかなりつらいです。と,まあこれは良いとして...(良くないですが)

フーガの3:21を境に,音質がガラッと変わっています。 この境より前,アダージョとフーガの前半は,かなりこもった音質なのに対し, フーガの後半からシチリアーノ,プレストは,高域が持ち上げられたような音質になっています。 曲と曲の切れ目で音質が変化するならまだしも,曲のど真ん中でこのような変化があるのはマスタリング過程で何らかのミスがあったとしか思えません。 どちらかというと後半の音質の方が高域ノイズが多くなるものの自然な音色で聴きやすいです。 ただし,CD全体からするとこの部分だけが異質です。

マスターのクオリティもあまり良いとは言えないようでボツボツというノイズが散見されますが,残響があまりなく基本的な音の捉え方は良いようです。 演奏が良いだけに,疑似ステレオ処理やマスタリングのミス,マスターのクオリティの悪さが残念です。

所有盤: DHR-7753 (C)(P)2000 DOREMI (輸入盤)
"JOHANNA MARTZY Volume 1"
Live Performance, 1960 recital in Redpath Hall, Montreal.

(記2002.12.19)


演奏:
録音:

ラーラ・レーフ(Lara Lev) (APEX 2001) (全集)

全体的に速めで,スピード感と力感に満ちた演奏です。 そして,絶妙な緩急,アクセントが現代性溢れる独特のフレージング,音楽の横の流れを生み出しています。 単に「速い」「力強い」に留まらない個性,魅力を感じます。 音色は,強奏部でやや荒れ透明感に欠けるものの,全体としては美しいと思います。

録音: 残響がやや多く取り入れられているものの,主音を邪魔せず明瞭感のある録音です。 高域の伸び感もあり音色も自然です。 もう少し響きを抑えて欲しかったという気がします。

所有盤: 0927-48307-2, 0927-48308-2 (P)2002 Finlandia Records, (C)Warner Clasics, Waner Music UK. (輸入盤)
Recorded at Kuusaa Hall, Kuusankoski, Finland, from 24-27 July 2001.

(記2002.12.18)


演奏:
録音:

ジェラール・プーレ(Gerard Poulet) (ARION 1994,95) (全集)

力強く勢いのある演奏でありながら,一つ一つの音の隅々にまで神経が行き届いたような細やかさがあるところが素晴らしいです。 アクセントが抑えられた流れの美しいところから力強いところまで,幅は小さいものの刻々と変化し,ニュアンスに富んでいます。 音色も荒れることなく美しいです。

録音: 指板を叩く音が聞こえるような録音ではありますが,残響感がやや多く,音色がわずかに変化してしまっているのが残念です。 高域のヌケも今ひとつですっきりしません。

所有盤: ARN 268296 (P)1996 ARION (輸入盤)
Enregistrement (1994/1995) realise en la Basilique St-Pierre de Luxeuil
Instrument: Ferdinando Gagliano (1743)

(記2002.12.12)


演奏:
録音:

福田進一 (ギター) (DENON 2000) (パルティータ第三番,シャコンヌ)

ブリッジ近くを弾いているのでしょうか,芯のしっかりした張りのある明るい音色が特に印象に残ります。 また,この音色を軸にしながらも,柔らかい音から芯のしっかりした音までフレーズ毎にきめ細かく制御されています。 技術的にも全く不安を感じさせないところはさすがです。

表現もオーソドックスながら,現代的な感性でギター音楽として昇華されているように感じます。

録音: やや響きが多いものの自然な広がり感を持っており,主音を邪魔することなくギターの音を明瞭に捉えています。 高域の伸び感も十分あり,音色も自然です。 もう少し響きが抑えられていれば最高なのですが。 ちょっと残念です。

所有盤: COCQ-83384 (P)2000 NIPPON COLUMBIA CO. LTD. (国内盤)
録音:2000年2月8日-11日 福島市音楽堂
楽器:ベール・ブーシェ作(1966年)

(記2002.12.09)


演奏:
録音:

ヘンリク・シェリング(Henryk Szeryng) (AURA 1975) (パルティータ第二番)

さすがシェリング!と思わせる安定感を感じさせる演奏です。 他の演奏家とは別次元のすごさを感じます。 表現自身はレギュラー盤と同傾向ですが,やや速めのテンポで,より陰影が深く,きめ細かな表情づけがあります。 シャコンヌの中間部では,レギュラー盤ではなかった開放感が感じられます。

録音: ライヴ録音。 やや響きが多いものの,主音を邪魔していないので比較的聴きやすいです。 オフマイク気味なので,明瞭感がやや落ちます。 また少し歪みが多いように感じます。

所有盤: AUR 203-2 (P)(C)1998 Edimedia srl - Italy (輸入盤)
Recorded by Radiotelevisione della Svizzera Italiana/Rate 2, Ascona, September 1975.
カップリング曲:ベートーヴェン/ヴァイオリンソナタ第一番,ブラームス/ヴァイオリンソナタ第一番

(記2002.12.06)


演奏:
録音:

ミヒャエル・フィヒテンホルツ(Michael Fichtenholz) (GREAT HALL 録音不明) (パルティータ第一番,第二番)

終始高いテンションを保った聴き応えのある演奏です。 重音奏法なども鋭角的で印象に残ります。 テンポはそれ程速くないのですが,メリハリが効いており,充実感があって最後まで引き込まれます。 音色はややきつめです。 ライヴのためか,時折大きなミスがあるのがちょっと残念です。

録音: ライヴ録音でありながら,非常に鮮明な録音です。 残響感もほとんどなく,楽器音を生々しく捉えています。 ホールの雑音,観客の咳払いなどもリアルです。 ライヴ録音としてはかなり良いと思います。 オーディオ的にみると,やや音が粗いかもしれません。

なお,パルティータ第二番の録音はやや距離感があって鮮明さが失われ,ホール雑音も大きく,録音としてはやや落ちます。

所有盤: GHCD 10 012 (P)(C)1993 Great Hall. (輸入盤)

P.S. CDのトラックの切り方が,パルティータ第一番,第二番,全曲でそれぞれ1トラックとなっており,合計2トラックしかありません。 インデックスも付けられていませんでした。 CDの背の曲目一覧では,いかにも楽章毎にトラックが切られているように見えるのですが。 ちょっと扱いづらいです。

(記2002.12.04)


演奏:
録音:

レオニード・コーガン(Leonid Kogan) (DML/TRITON 1953) (パルティータ第一番)

ポルタメントの多用や歌い方が演奏スタイルの古さを感じさせます。 緩急強弱は抑え気味なものの,テンポ感は単調になることなく全く自然で違和感がありません。 また,同じような音型の中でも飛ばし弓のスタッカートから微妙に長めに弾いて歌うような弾き方まで実に多彩でツボを押さえており,うならせるものがあります。 速い楽章ではちょっと端折ったようなところもありますが,ライヴということで許してしまいます。

録音: 古い録音で帯域感に乏しいですが,楽器音の捉え方自体はとても良く,古い割に聴きやすく好感の持てる録音です。 残響感もほとんどありません。 やや周囲のざわめきといった雑音が多いですが,これは邪魔になる類のものではなくそれ程気になりません。 マスターテープの劣化と思われる雑音と転写音が多少気になります。

所有盤: DMCC-24004 (P)1996 D.M.L Manufactured by D.M.L. Classics (国内盤)
録音:1953/03/31 モスクワ音楽院大ホール
"レオニード・コーガン大全集4 - コーガン・ライヴレコーディング VOL.4"
カップリング曲:ブラームス/ヴァイオリンソナタ第二番,イザイ/詩曲「糸車に向かいて」,他

(記2002.12.03)


演奏:
録音:

戸田弥生 (音楽之友社 2000) (パルティータ第二番)

オーソドックスながら,力強く,一つ一つの音をたっぷり歌い込んだ表現が印象的な「濃い」演奏です。 音色も密度感があります。 技術的にも全く不安がなく,完成度の高さを感じます。

録音: 響きが多く明らかに音色に影響を及ぼしています。 息づかいや指板を叩く音が聞こえてくる録音にも関わらず,楽器音は距離感を感じ,明瞭感もあまり良くありません。

所有盤: OCD 0065 (P)(C)2000 by ONGAKU NO TOMO SHA CORP. (国内盤)
Recorded on 21th, 26th of June and 4th of July 2000, at ONGAKU NO TOMO HALL, Tokyo, Japan
Instruments A. Stradivari (1717)
カップリング曲:エネスコ/ヴァイオリンソナタ第三番,ファリャ/7つのスペイン民謡曲集より「ナナ」,シチェドリン/アルベニス風に

(記2002.11.29)


演奏:
録音:

ユーディ・メニューイン(Yehudi Menuhin) (EMI 1973,74,75) (全集)

この曲に対する意気込みをひしひしと感じる演奏で,勢いがあります。 また,一つ一つの表現も十分に納得のいくものではありますが,残念ながら技術が表現に追いついていけていない感があります。 重音のつぶれ(特に曲頭で顕著),音の切れの悪さなど,聴いているこちらがつらくなってきます(音程は悪くありません)。 音色もややざらついています。

録音: ステレオ録音だと思うのですが,限りなくモノラルに近いです(リサージュ波形で確認しました)。 残響感というよりも,響きによって音色が変化していると言う感じが強いです。 ソナタ第一番,第二番,パルティータ第一番,第二番は同傾向の録音です。 ソナタ第三番はやや距離感があり残響感が多いです。 逆にパルティータ第三番は比較的生々しさを感じる録音ですが,同じ曲内でも距離感が変化する妙な感じのする録音です。

録音というよりもマスターテープの問題と思われる歪み感も多く,かなり聞きづらいです。 時折「ブッ」という感じの歪み音が入ります。また,全般にざらついた感じがします。 オーディオ的なクオリティも良くありません。

所有盤: TOCE-11347, TOCE-11348 東芝EMI株式会社 (分売)
Recorded: 5 March 1973 / 4 January; 5, 7, 11, 13, 15 & 26 February 1974 / 17 January & 15 July 1975, No.1 Studio, Abbey Road
[追悼盤]不滅の巨匠 メニューインの芸術 第2集,第3集。1999年6月の発売。

(記2002.11.28)


演奏:
録音:

ヴィクトリア・ムローヴァ(Viktoria Mullova) (PHILIPS 1987) (パルティータ第一番)

ムローヴァがバロック奏法の影響を受ける前の録音だと思います。 オーソドックスな表現で音楽の流れが極めて自然であり,一つの完成された姿を感じます。 強いて不満を述べるとすれば,余りにもきれいにまとめすぎており,もう少し緊迫感に富んだ演奏が聴きたかった,というところでしょうか。 しかし,これは贅沢な不満でしょう。 音色も美しく技術的にも安定感があり,全く不安を感じさせないところもさすがです。

録音: やや残響が多く音色への影響を少し感じますが,残響が主音に被らず比較的好ましい類のものです。 もう少し抑えてくれるともっと良いとは思いますが。 高域の伸び感,解像感も良好です。

所有盤: PHCP-20226(420 948-2) (P)1988 Philips Classics (国内盤)
録音:1987年6月3-6, 16-18日,オランダ,ユトレヒト
"バッハ,バルトーク,パガニーニ/無伴奏ヴァイオリンのための作品"より。 バルトーク/無伴奏ヴァイオリンソナタ,パガニーニ/「我が心はうつろになりて」の主題による序奏と変奏曲,が収録されています。

(記2002.11.25)


演奏:
録音:

アンナ・ビルスマ(Anner Bylsma) (Violoncello piccolo) (DHM 1988) (ソナタ第二番,パルティータ第三番)

ピッコロチェロによる演奏。 チェロによる演奏とは思えない軽やかさと,チェロ独特の柔らかい優しさとがうまく融合した演奏です。 速い楽章では,バロック奏法的なやや飛ばし弓のスタッカートで軽快に,緩徐楽章では穏やかに,優しい音色で奏されています。 音色がやや地味ですが,これは楽器の特性上仕方ないかもしれません。

異楽器による演奏では,ヴァイオリン曲であることを忘れさせるか,異楽器であることを忘れさせるか,がポイントだと思いますが, この演奏はどちらかというと後者の方だと思います。ヴァイオリン曲のイメージのまま巧く表現していると思います。

録音: やや響きを伴っており,薄くベールを被ったような感じがしますが,比較的聴きやすくまとめていると思います。 音色は自然ですが,もう少し鮮明さが欲しいところです。

所有盤: 05472 77843 2 (P)1989 BMG Music (C)2002 BMG Entertainment (輸入盤)
Recorded: Hervormde-Kerk, Bennebroek, Haarlem, NL, 23-25 June 1988
Sonata g-moll BWV1013も収録されています。

(記2002.11.22)


演奏:
録音:

ジェームズ・バスウェル(James Buswell) (CENTAUR 1989) (全集)

スピード感があり,テンポの引っ掛かりが全くなく疾走する感じが印象に残る演奏です。 しかも,全く破綻を見せず,その中でアクセントや強弱,テンポの微妙な変化がしっかり付けられています。 緩徐楽章もじっくり歌っており,充実感があります。 音色も雑味がなく美しいと思われます(録音が悪く音色を十分に味わうことが出来ないのが残念です)。

録音: 距離感があり,残響時間はそれ程長く感じないものの,響きが主音に被って音色を著しく変化させている典型的な録音です。 音質変化ばかりが気になって残念ながら全く良くありません。

所有盤: CRC 2147/48 (C)(P)1994 Centaur Records, Inc. (輸入盤)
Recorded January 1-6 and 11, 1989 at Trinity Church, Bolton, MA.

(記2002.11.19)


演奏:
録音:

ピエール・フランク(Pierre Franck) (ヴィオラ) (PIERRE VERANY 1997) (パルティータ集)

バロック的な奏法が印象的です(写真を見るとバロック弓を使っているようです)。 極端に詰めた付点のリズムや音の切り方などに顕著に現れています。 緩急が激しいですが,ゆっくりになるところでちょっと締まりがなく,全体としても散漫な印象となっているのが残念なところです。 音色もちょっと荒れており,特に強奏部で「グォー」と鳴り響き過ぎている感じがします。

録音: やや残響が多く,音色に変化も感じられますが,なんとか許容範囲だと思います。 比較的近接での録音のようで,残響感の割に聴きやすい方です。

所有盤: PV797101 (C)(P)1997 ARION S.A. (輸入盤)
April 1 to 4, 1997 at Temple Saint-Hean in Paris.

(記2002.11.14)


演奏:
録音:

豊嶋泰嗣 (CANYON CLASSICS 1992) (パルティータ第二番)

全体としてオーソドックスなイメージの強い演奏です。 アクセントを効かせた力強い奏法で,最初から最後まで緊張感が持続されています。 一方,テンポは比較的ゆっくりしており,この点では落ち着きを感じます。 技術的な安定感も高く,安心して音楽に浸ることが出来ました。 器の大きさを感じさせる好演です。

録音: 響きの質としては悪くなく明瞭感・解像感の低下は小さい方だと思いますが,とにかく響きすぎて残響音がまとわりつき,鬱陶しく感じます。 音色も損なわれているように思います。

所有盤: PCCL-00167 (P)1992 Pony Canyon (国内盤)
"MONOLOGUE"
Recording Date: 14, 15, 17 July 1992; Recording Location: Akigawa Kirara-hall Tokyo, Musashino Bunka-Kaikan Hall

(記2002.11.13)


演奏:
録音:

マヌエル・バルエコ(Manuel Barrueco) (ギター) (EMI 1995) (ソナタ集)

演奏者本人の編曲による演奏。 アダージョ(グラーヴェ)楽章での即興的な節回しが印象的ですが,全体としては編曲されているという印象はほとんど受けない演奏です。 ややブリッジ寄りを弾いているような独特の音色をしています。

録音: オフマイク気味でほんのわずかに明瞭感が落ちている感じのする録音です。 高域の伸び感も今ひとつで,わずかに音色の変化も感じます。

所有盤: 5 56416 2 (P)(C)1997 EMI Records Ltd. (輸入盤)

(記2002.11.12)


演奏:
録音:

ニコラス・ゴルセス(Nicholas Goluses) (ギター) (NAXOS 1994) (ソナタ集)

演奏者本人の編曲による演奏。 時折,ギターらしいバロック的な装飾が控えめに入りますが,原曲のイメージがほぼ保たれています。 音の追加,和音の補強なども最小限に抑えられている感じです。 テンポも落ち着いており,堅実さを感じます。

録音: 比較的オンマイクで残響が抑えられ,明瞭感があります。 低弦の響きもリアルに捉えられた良好な録音です。

所有盤: 8.553193 (P)(C)1995 HNH International Ltd. (国内盤)
Recorded at St.John Chrysostom Church, Newmarket, Canada, from 4th to 7th October 1994.

(記2002.11.11)


演奏:
録音:

イダ・ヘンデル(Ida Haendel) (DOREMI 1968) (ソナタ第一番)

比較的落ち着いたテンポで,なおかつ緩急をあまり付けずにきっちり弾こうとしているような感じです。 フーガは力感もありなかなか充実していますが,シチリアーノの後半から凡ミスが目立ち始め,プレストでは完全に集中力を失っているように思えます。 全く冴えません。緊張の糸が切れたのでしょうか。残念です。

録音: 高域が伸びておらず,かなりこもっていて聴きづらいです。 FFTで見ると,5kHzくらいから減衰が始まって10kHz以上の成分が全くありません。 1968年の録音とは思えない質の悪さです(感覚的には1950年代前半の音です)。 一応ステレオ録音のようですが,リサージュ波形を見ても左右の相関がほとんどないように見えます。 通常のステレオ感のような自然さがなく,疑似ステレオ処理されているかもしれません(ちょっと自信がありません。櫛形フィルタによるものではないことは確かです)。

所有盤: DHR-7726 (C)(P)1998 DOREMI (輸入盤)
"IDA HAENDEL Vol.1" Recorded live, 1968 CBC Recital, Montreal, Canada.
ライヴ収録の放送音源(Canadian Broadcasting Corporation archives)。 近年発見されたものとのこと。

P.S. 曲間にナレーションが入っており,そこでは「アイダ・ヘンデル」と言っているように聞こえました。

(記2002.11.07)


演奏:
録音:

チョン・キョンファ(Chung Kyung-Wha) (LUCKY BALL 1983) (パルティータ第二番) (CD-R盤)

力強くダイナミックで推進感のある好演です。 正規盤では聴くことができないであろう熱気に満ちています。 時として力みすぎて音がつぶれ気味になることもありますが,ライヴならではということで気にはなりません。 力強いといっても荒っぽいという感じではありません。 緩急強弱の付け方も即興的雰囲気を持ちながら絶妙に決まっており,表情がとても豊かで聴き応えがあります。

録音: 比較的オンマイクで残響が抑えられており,楽器音が鮮明に録られています。 音の捉え方はなかなか良く,ライヴ盤としてはかなり良い部類に入ると思います。 ただ,再生機材によっては,フラッターエコーのような,あるいは,ヘッドの汚れたデッキでカセットテープを再生したときのような,音の震える歪みを感じました。 このような現象は初めてで原因が全くわからないのですが,確かにかなりきわどい音質ではあるような気がします。 数カ所で,なぜかスクラッチノイズのような「プチプチ」音がありましたが,これはそれ程気になりません。

所有盤: LBCS 1500 (P)2000 by Lucky Ball
1983年のライヴ録音。 フランクのヴァイオリンソナタとクライスラーの小品がカップリングで収録されています。

P.S. ケース背面のトラック一覧の配置が変で,なおかつデザインフォント?が使用されており,非常に見づらいです。 デザインしているつもりかもしれませんが,全く実用的ではありません。 CD-R盤とはいえ,これはちょっとひどすぎます。 ユーザー無視もいいところです。 こういうのは止めていただきたい。

(記2002.11.06)


演奏:
録音:


(演奏:)
録音:

ジョルジュ・エネスコ(Georges Enesco) (La Voce - Ton Rede 1948,49) (全集)

演奏はIDIS盤と同一です。 時として調性感を失ってしまうほどの音程の悪さは所有盤中飛び抜けていますし,切れの悪さを感じさせる左手の技術にも大いに不満を感じます。 また,テンポ感もせかせかした感じがあって聴いている方も落ち着きません。

右手の技術も優れているとは思えないのですが,しかし,ダイナミックかつ繊細に制御された弓づかいから繰り出されるニュアンスに富んだ表現が独自の世界を築いているのは確かで, 演奏スタイルの古さを感じさせながらも独特の魅力に溢れていることを認めざるを得ません。

録音: LPレコードからの復刻のため,かなり「プチプチ」というスクラッチノイズ,「サー」というノイズがかなり目立ちます。 また,音の歪み感もかなりあります。 しかし,録音に残響感が全くなくストレートかつクリアに録られているため,ノイズ感,歪み感がありながら自然な音色で聴きやすいです。 (残響でくぐもった現代の録音よりよっぽど良いです)。 IDIS盤との差異については別項で掲載しています。

所有盤: (写真上)La Voce - Ton Rede CCD104/5
ラ・ヴォーチェ京都が(米)コンチネンタル盤を復刻したCD。 入手経緯をこちらに掲載しています。

P.S. 以前掲載したIDIS盤の感想でも述べたように,なぜエネスコの演奏がここまで高く評価されているのか,長い間疑問に思っていました。 La Voce盤を入手して聴き始めたときも,確かに音質はかなり良くなっているのですが,相変わらず音程の悪さばかりが気になって, やっぱりこの演奏のどこが良いのかわからないという状態が続きました。 しかし,音程の悪さを堪え忍んで聴き続け,これが自然に受け入れられるまでになったとき,「これがエネスコの芸術か!」と感じる瞬間がやってきました。 そして上記のような感想となったわけです。

エネスコのように自己の音楽に対する姿勢をあそこまで生々しい形で表現する演奏スタイルは,時代の流れとともに姿を消してしまっているように感じます。 エネスコの演奏がここまで名盤の地位を獲得しているのは,単に当時の演奏スタイルを象徴する歴史的な記録であるというだけでなく, その独自の芸術性によって多くの人の心に訴えかけているからなのでしょう。

(記2002.11.01)


ジョルジュ・エネスコ(Georges Enesco) (ISTITUTO DISCOGRAFICO ITALIANO 1948,49) (全集)

エネスコという演奏家が残した貴重な歴史的録音の一つであることは理解できるものの,余りにも音程が悪く残念ながら聴くに耐えない演奏でした。 この演奏から聞こえてくる「何か」を感じ取ろうと努力しましたが断念しました。(これが有名な録音そのものかどうかわからないのですが...)

録音: 1940年代のモノラル録音なので当然ながら良くありませんが,演奏そのものが好みであればなんとか鑑賞に耐えうる音質だとは思います。

所有盤: (写真下)IDIS 328/29 (P)1999 Made in Italy (輸入盤)
Studio recordings 1940 c.

P.S. 盤の素性については何も記載がありません。

(記2002.07.24)(追2002.10.22)


La Voce盤とIDIS盤は,演奏自身は同じですので,感想を結合しました。 録音自体の出来によって演奏の印象が影響を受けるということを示す意味で, 先に聴いていたIDIS盤の感想をそのまま残しています。

(改2004.01.05)


演奏:
録音:

ベネディクト・クラフト(Benedict Cruft) (TONONI RECORDS 1998) (全集)

アクセントが抑えられ,声を荒げられること無くひたすら穏やかに優しく奏されたバッハです。 テンポも非常にゆったりとしていますが,間延びすることなくしっかりと(しかし,しつこくなることなく)表現されており,退屈することはありませんでした。 音色も透明感があって美しいです。 曲によっては装飾や音型の変化が大胆に取り入れられており,少々違和感を感じる面もありました(例えば,Partita No.3 Loure など)。

音のかすれ,リズムの乱れ,移音時の切れの悪さなど,技術的には不満が少々ありますが,聴き込むにつれ気にならなくなる類のものでした。 全体として人間的な暖かみを感じさせる好演ではありますが,「快活さ」とはちょっと方向性の違う演奏なので,(私としては)少々物足りなさを感じます。

録音: 残響が多く取り入れられているものの,主音を邪魔せず,また音色も変化が少なく自然で聴きやすい録音です。

所有盤: TON-001 Tononi Records (輸入盤)
Played at Binham Priory 1998.
Violin by Carlo Tononi, Bologna, circa 1715. Bow by Francois Tourte, Paris, circa 1785; frog by Tim Baker, 1997.

(記2002.10.25)


演奏:
録音:

フランツ・ハラツ(Franz Halasz) (ギター) (BIS 1997) (ソナタ集)

聴感的にはほとんど編曲されたようには聞こえません。 原曲をそのまま演奏している感じで,ギター版を聴いているといった違和感はほとんどありません。 丁寧で,きめ細かく表情付けがなされており,また,音色もフレーズに応じて変化させています。 演奏は全体的に大人しく,活気に乏しいため,やや物足りなさを感じます。

録音: 残響も適度に抑えられており,楽器音を明瞭に捉えた好録音です。

所有盤: BIS-CD-943 (C)1997 (P)1998 Grammofon AB BIS (輸入盤)
October/November 1997 at Lanna Church, Sweden. Guitar: Yugi Imai 1996

(記2002.10.21)


演奏:
録音:

ララ・セント・ジョン(Lara St. John) (ANCALAGON 2001) (ソナタ第一番)

選集盤と基本的には同スタイルですが,より洗練度が増しています。 ハーゲン弦楽四重奏団の「ハイドン・セット」を初めて聴いたときと同種の感覚に襲われました。 誰もがバッハだということで踏み込まなかった(踏み込めなかった)表現領域にあえて挑戦し,新たなバッハ像と自己の演奏スタイルを築こうとしているかのように感じます。 音色も硬く冷たく透明感があり,この演奏を一層引き立てています。 ぜひともこの演奏で全曲録音を完成して欲しい!

録音: 残響感がほとんどなく,明瞭感,解像感,高域の伸び感とも申し分ありません。 楽器音をストレートに伝えてくれる好録音ですが,あまりに雑音感がなく,かえって不自然な感じさえします。

所有盤: AV 0007 (C)2001 Ancalagon (輸入盤)
"Bach the concerto album", Recorded in February 12, 2001 at Skywalker Sound Scoring Stage, Marin Country, CA.
バッハ/ヴァイオリン協奏曲集とのカップリング盤。

P.S. ララ・セント・ジョンのOfficial Web Siteがあります。

(記2002.10.18)


演奏:
録音:

ララ・セント・ジョン(Lara St. John) (Well-Tempered 1996) (パルティータ第二番,ソナタ第三番)

第一印象は「アグレッシブな演奏」でした。 激しくエモーショナルであることは確かですし,時として弓圧をかけすぎたようなつぶれ気味の音色になることもあります。 しかし,全体を通してよく聴いてみると,感性主導の演奏のようでありながら,緩急強弱,音の消え際などが大胆かつきめ細かく制御されており,これが野暮になることなく現代的な形で昇華されていると思います。 演奏の性格上,好みが激しく分かれると思います。

よく制御された弓使い,運指の確かさ,重音の正確さ等,技術的な高さも感じます。

録音: わずかに響きが主音に被って音色が変化していますが,明瞭感,解像感の高い好録音です。

所有盤: WTP 5180 (P)(C)1996 Well-Tempered Productions. (輸入盤)
Recorded in February 1996 at the Scoring Stage at Skywalker Sound, a division of Lucas Digital Services, Marin Country, CA.

(記2002.10.18)


演奏:
録音:

リディア・モルトコヴィッチ(Lydia Mordkovitch) (CHANDOS 1987) (全集)

弓使いが大胆かつダイナミックで力感に富み,推進感のある好演です。 音色も張りがあり密度感をがあります。 特に緩徐楽章,フーガなど,とても聴き応えがあります。 一方,やや左手の技術がついていっていないところがあり,特に速い楽章などでは運指の切れの悪さを感じます。 また,重音も濁りがちなのが残念です。

録音: 残響が適度に抑えられ,明瞭感,解像感のある好録音です。 もう少し高域の伸び感があれば良いのですが。

所有盤: CHAN 8835/6 (P)(C)1990 Chandos Records Ltd. (輸入盤)

(記2002.10.16)


演奏:
録音:

イングリッド・マシューズ(Ingrid Matthews) (CENTAUR 1997) (全集)

緩急強弱の激しいバロック・ヴァイオリンらしい演奏です。 バロック・ヴァイオリンとしては至極オーソドックスで特に個性的という感じではありませんが,音色に透明感があって美しく,また技術的にも安定感があって,まとまりのよい演奏に感じます。 装飾音は曲の終わりに入る程度ですが効果的に使われています。 曲と曲のつながりを意識したような間の取り方が全体として良い流れにつながっていると思います。 ソナタ第二番では,プレリュードの最後の音でクレッシェンドしてフーガに突入するところなどなかなかユニークです。 パルティータ第三番が,奏法と曲調がマッチしていて最も良いと思いました。

録音: 比較的近接で録音されているようで,残響が多い割には明瞭感,解像感がそれほど損なわれていません。 やや響きがまとわりつき,音色が少し損なわれている感じがあるので,もう少し抑えて欲しかったと思います。

所有盤: CRC 2472/2473 (P)(C)2000 Centaur Records, Inc. (輸入盤)
Recorded July 7-11 and August 12-17, 1997 at St. Bridget's Church, Iowa City, Iowa.

(記2002.10.12)


演奏:
録音:

ルジェーロ・リッチ(Ruggiero Ricci) (MCA 1965) (全集)

強烈な個性を感じさせる演奏です。 感性を優先させたような自由さを感じる一方,全体としてやや散漫な感じがしないでもありません。 荒々しい勢いを感じさせる奏法から,この曲に対する意気込みの強さを感じます。

しかし,何と言ってもこの演奏の最大の特徴は,重厚かつ独特の甘美さを持った音色で迫ってくるところです(「甘美」という表現が適切とは思えないのですが,他に言葉が浮かばないので...)。 大きな振幅で,かつ震えるような細かいヴィブラートがどんな短い音にもたっぷりとかけられています。 好みの分かれるところだと思いますが,残念ながら私はこの手の音色が苦手です(生理的に受け付けられません)。 音程が不安定(上擦って聞こえる)のように感じるのも,この独特の音色のためだと思います。

録音: やや残響を伴っていますが,比較的主音を損なっていないと思います。 高域の伸び感が選集盤よりも若干悪く,より詰まった感じが強いです。 ただし,ヒスノイズはほとんど感じません。 左右の音の相関が低く,また音像が左右にふらふらする曲(特にパルティータ第三番)があって,ヘッドホンでの聴取はつらいところがあります。

所有盤: MCAD2-9841 (C)1967, 1992 MCA Records, Inc. (輸入盤)
この盤ではパルティータ第二番のトラック分割にミスがあります。 第一曲のAllemandeと第二曲のCouranteが1つのトラックとなっており,第五曲のChaconneの中間部の頭でトラックが分割されています。 トータル5トラックで辻褄はあっているのですが... (当然,付属のトラック番号目次内容も間違っています。Allemandeが(6:24),Chaconneが(7:01)と表示されています。)

P.S. この全集盤と選集盤は同一演奏だと推定されますが,やや音質が異なります。 詳細についてこちらに掲載しました。

(記2002.10.08)


演奏:
録音:

ルジェーロ・リッチ(Ruggiero Ricci) (MCA 1965) (ソナタ第二番,第三番,パルティータ第三番)

全集盤と同じ演奏と推定されるため,感想を全集盤に統合しました。

録音: 残響感に関しては全曲盤と同じです。 高域の伸びがないためにやや詰まった感じがあります。 若干ヒスノイズが大きいですが,全集盤に比べて生々しさがあります。

所有盤: MCD 80117 This compilation (P)&(C)1996 MCA Records Inc. (輸入盤)
"Millennium Classics"というシリーズの中の一枚。リマスタリング,生産とも欧州のようです。

(改2002.10.08)
(記2002.08.01)(追2002.10.01)


演奏:
録音:

ヨッシ・ツィヴォーニ(Yossi Zivoni) (MERIDIAN 1990?,94?) (全集)

オーソドックスであり,一音一音丁寧に弾かれた落ち着きのある演奏です。 発音もしっかりしており,また,音色も美しく聴き応えがあります。 技術的にも破綻がなく聴いていて安心感があります。 曲によってはややテンポが落ち着きすぎていて腰が重い感じがあります。 もう少し躍動感,推進感があると良いと思いました。

録音: 分売の(1)と(2)で全く録音の質が異なります。 (1), (2) で圧倒的に(1)の音質が良いです。 (1)は響きがほとんどなく,明瞭感,解像感の高いストレートな録音です。音色も自然です。 一方(2)はややオフマイクであり,響きが主音に被って明瞭感が失われており,また,音色も変化していて全く良くありません。 (2)の方が後発なのに音質が悪化しているのはちょっと納得できません。

所有盤: (1)CDE 84206 (P)1990 (C)1992, (2)CDE 84283 (P)(C)1994 Meridian Records (輸入盤)
(1)Sonata2, Partita2,3,(2)Sonata1,3, Partita1,がそれぞれ収録されています。

(記2002.10.04)


演奏:
録音:

マルク・ルボツキー(Mark Lubotsky) (BRILLIANT CLASSICS 1987) (全集)

オーソドックスな演奏です。 力強さと軽快さを兼ね備えた小気味の良さがあり,これが高いレベルでバランスが取れていると思います。 音色に張りと透明感があり,また,控えめながらツボをおさえたヴィブラートが心地よいです。 時折わずかに崩れることがあったり,速いパッセージの切れが悪いなど,技術面での不満点がないわけではありませんが,全体として充実感があるのでそれ程気になりません。

録音: わずかに残響を伴っているものの適度に抑えられており,明瞭感のある好録音です。 高域の伸び感がもう少しあれば良いのですが。ほんのわずかではありますが,ヌケの悪さを感じます。

所有盤: "Bach Edition Vol.16 Chamber Works" 99375/1,2 (輸入盤)
オランダの廉価盤レーベル"ブリリアント・クラシックス"のバッハ・エディション室内作品集14枚組の中の2枚。

(記2002.10.02)


演奏:
録音:

ダヴィド・オイストラフ(David Oistrakh) (DOREMI 1947) (ソナタ第一番)

オーソドックスかつ飾り気のないストレートな表現で好感が持てます。 古い録音ですが,演奏スタイル自身は古さを感じさせません。

録音: モノラル録音(のはず)。オリジナルテープの品質の悪さによると思われる歪み音がかなり強く耳障りですが,楽器音の捉え方がよく意外に聴きやすい音質です。 しかし,このCDの問題は別のところにあります。 この時代の録音はモノラルのはずなのですが,左右の音の相関が異常に低いです。 左右の音を別々に聴くと,ほとんど同じ音に聞こえますが,波形レベルで比較するとモノラル録音とは思えないくらい異なっています(ステレオ録音でもここまで異なることは少ないです)。 疑似ステレオ処理が施されていると思われます(おそらく櫛形フィルタを用いた手法)。 スピーカで聴く分には単に音が散っているくらいにしか感じませんが,ヘッドホンで聴くと位相が狂っているような感覚に襲われ,とても聴いていられません。 このような処理はやめていただきたいと思います。 (疑似ステレオ処理に関する分析結果をこちらに掲載しています)

所有盤: "David Oistrakh Collection Vol. 8 J.S. Bach" DHR-7760 (C)(P)2001 DOREMI (輸入盤)

(記2002.09.27)(追2002.10.16)


演奏:
録音:

アロイス・コットマン(Alois Kottmann) (MELISMA 1997?) (全集)

非常にゆったりしています。一つ一つの音にしっかりヴィブラートをとアクセントを効かせて独特の音世界を作っています。 やや歯切れが悪く,速い音型ではリズムの乱れが見られるなど,技術的にはやや不安定な感じがあります。 音色は暖かみがあり甘美な感じですが,ざらつき感がかなりあります。

全体にテンポが遅いだけでなく,発音毎に呼吸をおいている感があり,ソナタ(特にフーガ)では音楽が沈滞して聴き通すのがつらいくらいです。 そんな中で,パルティータ第二番のシャコンヌ以外の4楽章は充実感があり良いです。 シャコンヌは途中の分散和音でまるで酔っぱらっているが如くリズムを崩していてちょっとやりすぎだと思います。 シャコンヌは演奏時間が約18分もあり,私が持っている中では最長の部類に入ると思います。

録音: (A)s1,s2,p2,p3 (B)p1,s3,の2グループが同傾向の録音です。 (A)は多少残響音があるものの近接での録音のようで,明瞭感があります。 (B)はやや距離感があり,また残響音比率が高くなって明瞭感に劣ります。音色も変化しており,特徴のある本来の音色が失われているように思えます。 特に(A)では演奏音に同期して「ジー」というような歪み音が付帯音として付いてきて気になるのですが,録音の問題ではなく,どうも演奏上発生している音ではないかと思えてきました。 また,質の悪いアナログテープを聴いているような音のゆれを感じます。本当にデジタル録音なのでしょうか?

所有盤: MELISMA 7135/36 (P)1997 Melisma (輸入盤)

(記2002.09.26)


演奏:
録音:

ヘンリク・シェリング(Henryk Szeryng) (TDK 1976) (ソナタ第一番,パルティータ第二番)

紛れもない「シェリングのバッハ」を聴くことが出来ました。 演奏スタイルは1967年のレギュラー盤と基本的には変わりなく,確固たるものを感じます。 さらにライヴらしい表情豊かさとレギュラー盤とは異質の気迫,力強さを感じます。 弓の圧力がやや強く音がつぶれ気味のところがあります。 また,ライヴなので演奏上の傷は多少ありますが,特に気になりません。

録音: やや距離感がありライヴの雰囲気が伝わってくる音質ではありますが,反射音等によって鮮明さが失われてるのが残念なところです。 かなり大きなレベルの低周波ノイズ(40Hz程度と思われます)が含まれており,密閉型ヘッドホンで聴くとかなり鼓膜を圧迫されてつらいです(スピーカでの聴取には問題はありません)。 録音レベルがやや低めですが,カップリングのヴァイオリン・ソナタに合わせているものと思います。

所有盤: TDK-OC010 (C)2002 (P)2002 TDK Core Co., Ltd. (国内盤)

(記2002.09.24)


演奏:
録音:

Scott Slapin (ヴィオラ) (The Stewart Society for the Recording Sound 1998) (全集)

力強く重厚な演奏ですが,やや腰が重い感じがします。 音色に張りと深みがあってなかなかよいと思います(ヴィオラだからかもしれません)。 急速楽章では,技術的にやや破綻気味なのが残念です。

録音: それほど響きがあるようには思えないのですが,変に共鳴して音色がやや変化しているのではないかと思えます。 しっかりと捉えられているとは思いますが,ややガチャガチャした感じに聴こえるところがあります。

(記2002.09.19)


演奏:
録音:

ビン・フアン(Bin Huang) (PHILARMONIA 2000) (ソナタ第三番,パルティータ第二番)

静かで穏やかな雰囲気を持った演奏です。 表現そのものは極めてオーソドックスで特徴に薄い印象を受けるものの,音色に透明感があって美しく,また,要所要所で力強く締められていて惹きつけられるところがあります。

録音: 残響感はあまりなく決して悪い録音ではないとは思いますが,ややオフマイク気味で明瞭感,解像感に欠け,冴えがないように思います。 また,プチプチというノイズやわずかな歪みを感じます。

(記2002.09.18)


演奏:
録音:

ベンヤミン・シュミット(Benjamin Schmid) (MDG 1994,95) (全集) (ピアノ伴奏付き)

ロベルト・シューマンによるピアノ伴奏付き。ヴァイオリンパートに編曲はなく,単にピアノ伴奏が付加されたものと思われます。 しかし,ただ単にピアノ伴奏が付いた,ということに留まりません。 聴く度に笑みがこぼれる楽しい演奏です。 ソナタ第三番,パルティータ第三番など,今までにこんなに楽しい演奏があっただろうか,と思えるくらいです。

ピアノ伴奏があるためか,全体にインテンポ感が強いですが,単にそういった印象に留まらず,全く違った曲としてアプローチされているように感じます。 強烈なアクセントの付け方など弾き方はロマン派的で,実際かなりロマンティック,ドラマティックに聴こえます。

伴奏によってよりリズム構造がはっきりし,また,和声的にも今まで頭で補っていた分が明快に聴こえてきます。 今までこの曲に期待していたことを望むと裏切られますが,いろいろと新しい発見があり楽しめる演奏だと思います。

録音: 残響も適度に抑えられており,音色の変化も少なく聴きやすい録音です。 やや録音レベルが低い感じがありますが,ピアノ伴奏が付いているためかもしれません。

(記2002.09.17)


演奏:
録音:

エレーナ・デニソヴァ(Elena Denisova) (ETCETERA 2000) (パルティータ第二番)

全体的にテンポを遅く取った演奏です。 テンポ以上に曲そのものの捉え方が独特で,おどろおどろした感じで躍動感がなく,あまり好みではありません。 (カップリング曲の"Kollontaj/Partita Testament for Violin Solo"(現代曲)とイメージを合わせたのかもしれません。)

録音: 響きが主音に被って明瞭感が損なわれており,また,音色も変化していて聴きづらいです。

(記2002.09.12)


演奏:
録音:

ジョシュア・エプスタイン(Joshua Epstein) (AGORA 1995) (全集)

オーソドックスできれいにまとめていると思います。 音色も美しく,技術的にも安定感があって安心して聴くことの出来る演奏ですが,訴えかけてくるところがあまりなく,やや物足りなさを感じます。 良い演奏ではあると思うのですが...

録音: やや残響が多くまとわりつく感じがあります。音色の変化も少しあり,少々聴きづらく感じます。

(記2002.09.11)


演奏:
録音:

エリザベス・バティアシュヴィリ(Elisabeth Batiashvili) (EMI 2000) (パルティータ第一番)

やや線が細い感じで今ひとつインパクトに欠けますが,オーソドックスで音色も美しく整った演奏です。

録音: 若干の残響を伴っているものの,自然な音色で聴きやすい録音です。 やや録音レベルが低くかなりボリュームを上げないと聞き取りにくいです。 もう少しCDのレンジをフルに使って録音して欲しいところです。(2bitぐらい無駄にしている感じです。他の曲のレベルに合わせているのかもしれません。)

(記2002.09.10)


演奏:
録音:

Alex Deych (ヴィオラ) (不明 1999?) (全集)

音程が良くない,発音の歯切れが良くない,など,技術的にはかなり不満があるものの,意欲的に表現されており聴き所が多いです。 パルティータ第三番など軽快で小気味よく弾いており,なかなか良いです。他の急速楽章も同様です。 一方ソナタ第三番のフーガなど,技術的な問題が目立ってあまり良くありませんでした。

録音: 残響がほとんどなく,オンマイクでストレートに録音されており,私の好みの録音ではあるのですが...  強奏部でクリップ音にも似た歪み音があります。 波形を見たところ,CDの16ビットの範囲内には収まっているので明らかにクリップしているわけではないのですが。 また,所々でプチプチというノイズも入っています。 最初は再生機器の問題かと思いましたが,元々の音にこのような歪みやノイズが入っているようです。 特にパルティータ第一番,ソナタ第三番で顕著です。この二曲は若干録音レベルも高いようです。

所有盤: 1999 Alex Deych (輸入盤)
レーベルの表記等が全くなく,自主制作盤のような感じです。

(記2002.09.10)(追2002.10.07)


演奏:
録音:

ナタン・ミルシテイン(Nathan Milstein) (OLFEO 1957) (ソナタ第一番,第二番,パルティータ第二番,他)

基本的には同時期のEMI盤と表現はあまり変わりません。 ライヴ録音で演奏上の傷はいろいろありますが,引き締まった演奏にライヴならではの熱気が加わってスタジオ録音盤にはない雰囲気を感じることが出来ます。

録音: モノラル録音。若干キンキンするものの,残響が抑えられて音色の変化が少なく,基本的な音質は悪くないと思いますが,古い録音だけに冴えがなく良いとは言い難いです。 録音レベルも若干低く,もう少しCDのレンジ一杯を使ってほしいところです。

(記2002.09.09)



演奏:
録音:

ユーディ・メニューイン(Yehudi Menuhin) (EMI/HMV 1956,57) (全集)

乱暴なほどの勢いを感じるダイナミックな演奏です。 音も美しくありませんし音程も良くありませんが,どこか迫ってくるところがあって惹きつけられます。 感性の赴くまま弾ききっているといった雰囲気があります。 しかし,やっぱりいくらなんでも雑すぎると思います。(ソナタ第三番フーガなど特に!)

録音: モノラル録音。わずかな響きが直接音を損なっています(マイクとの距離があるような感じですがモノラルなのでわかりにくいです)が, 比較的ストレートに捉えており解像感もそこそこあって聴きやすい録音です。 古い録音なので高域の伸びと鮮明さに欠けるのは仕方ありません。

所有盤: (1) 5 75416 2 (P)1957 EMI, Digital remastering (P)1993 EMI (C)2002 EMI Music France (輸入盤)
(2) HMVD5 73050 2 (P)1957 EMI, Digital remastering (P)1993 EMI (C)1998 EMI (輸入盤)
HMVからも同じ録音のCDが出ていることを知らず買ってしまいました・・・失敗です。

(記2002.07.16)(追2002.09.08)(追2002.09.29)


演奏:
録音:

ブジェチスラフ・ノヴォトニー(Bretislav Novotny) (SUPRAPHON 1969) (全集)

この演奏の目玉は,あたかも二人で弾いているかのように聞こえる特殊な奏法でしょう。 ソナタのフーガ(特に第二番のフーガ)で顕著に聴くことが出来ますが,このような演奏姿勢が全体にわたって感じられ,独特の味を出しています。 この奏法を聴けるだけでも価値のある貴重な演奏だと思います。

とはいえ,全体的にみればオーソドックスで手堅い印象を受けます。 力強く緊張感のある音色ですが,表現自身は落ち着きを感じます。奏法が特殊だからといって奇をてらった感じはありません。 シャコンヌはやや劇的効果をねらった感があり,緊張感,高揚感があります。

録音: やや音色が古めかしいです。こもった感じはあまりありませんが,レンジ感に乏しく高域の冴えがありません。 残響感もやや多めです。

所有盤: 11 1806-2 112 (P)1971 Supraphon (輸入盤)

(記2002.09.03)(追2002.10.03)


演奏:
録音:

パトリック・ビスムート(Patrick Bismuth) (STIL 1991) (全集)

テンポの大きなゆれ,付点リズムの詰まりなど,緩急の激しい演奏です。 緩急の激しい演奏に見られがちな「端折り」感はほとんどなく,また,短く音を切ることが多いにも関わらず雑な印象は受けません。 バロックヴァイオリン的表現(奏法)の関係もあって全体的に速めの印象を受けますが,よく聴くと意外に急速楽章でも抑制された感じがあります。 ただ,シャコンヌだけが突出して速く(演奏時間が9:32と10分を切っています),また,表現上も気合いの入り方が異様で,全体の演奏からやや浮いている感じがしないでもありません。 音色はバロックヴァイオリンらしく,また伸びもあって美しいです。

録音: 残響音が多めでからみつく感じが若干ありますが,近接での録音で解像感が高く,また高域の伸び感も申し分ありません。

(記2002.09.02)


演奏:
録音:

ヴァセリン・パラシェフコフ(Vesselin Paraschkevov) (TELOS RECORDS 1996) (全集)

ダイナミックで力強く,骨太の演奏ですが,やや大味な感じが否めません。 一つ一つの音への配慮もあまり感じられず大雑把な感じがします。 フーガなどもやや締まりがなく間延びした感じがあります。

曲と曲との合間を意味のある「間」でつなげて演奏しているところはなかなか良いと思います。

録音: ややオフマイクの録音。残響音が直接音に大きく被っており,明瞭感,解像感が大きく損なわれています。 音色もかなり変化しており,かなり聴きづらい録音です。

所有盤: (1) TLS 007 (C)(P)1998 TELOS RECORDS (輸入盤)

(記2002.08.30)(追2002.10.03)


演奏:
録音:

高田あずみ (EUROS 1994) (パルティータ第二番)

モダン楽器による極めてオーソドックスな演奏です。 個性的というわけではありませんが,確かな技術に支えられた安定感のある演奏を聴くことが出来ます。 音色も美しいです。

録音: ややオフマイク気味の録音のようです。今ひとつ明瞭感に欠けます。 残響感はそれほど多くなく決して悪くはないと思うのですが,なぜかいくら音量を上げても聞き取りづらい録音です。

所有盤: MGCC-1007 (P)(C)1994 ONGAKU NO TOMO SHA CORP. (国内盤)

(記2002.08.28)(追2002.10.03)


演奏:
録音:

桐山建志 (CAILLE 2000) (パルティータ第二番)

奏法,音色,表現,どれを取っても思いのほかバロックヴァイオリンらしからぬ「普通」の印象を受ける演奏でした。(悪い意味ではありません)。 たまたま使用している楽器がバロックヴァイオリンであった,くらいの感じです。 やや速めのテンポで軽快かつロマンティックであり,表現が素直で癖が無く聴きやすい演奏です。

録音: ややオフマイクであり,ホールの響きがたっぷりと取り入れられていますが,解像感が高くオーディオ的には良い録音だと思います。 しかし,響きがあまりにまとわりつく感じがあって,どちらかといえば好みの録音ではありません。

所有盤: Caille Records CAIL-728 (国内版)
カイユ・レコードのホームページがあります。

P.S. バッハの無伴奏Vnよりも,むしろ,カップリングのJ.J.ヴァルター,J.H.シュメルツァーといったなじみの薄い作曲家の曲の演奏がとても魅力的で興味深く,楽しく聴くことが出来ました。

(記2002.08.28)(追2002.09.29)


演奏:
録音:

久保田巧 (日本光ディスク 1992) (パルティータ第二番,第三番)

極めてまじめに,素直にアプローチされたオーソドックスなスタイルの演奏だと思います。 一音一音丁寧に,慎重に奏でようという姿勢が感じられます。 音色も張りがあって美しいです。 もう少し躍動感があればもっと良いと思いました(特にパルティータ第三番)。

録音: 密度の濃い,という印象を受ける録音です。 残響が多少多めに入っていますが直接音を汚す類の響きではなく後方で空間イメージを再現する方に貢献しており,残響感の割に印象はそれほど悪くありません。 解像感はかなり高いと思います。

所有盤: JOD-123 Japan Optical Disc Corp. (国内版)
CD★WORLDから購入。限定盤ということですが,掲載されているうちは入手可能と思われます。(2002年9月現在)。

(記2002.08.27)(追2002.09.27)


演奏:
録音:

ホプキンソン・スミス(Hopkinson Smith) (リュート) (ASTREE 1999) (全集)

楽器の特性上,地味な印象を受ける演奏です。 強弱や音色の変化を付けようとする努力は感じられますが,残念ながらあまりそのように聞こえてきません。(リュートによる演奏にこれを求めるのが間違いでしょうか?)。 編曲は,和声的な補強がなされたもので,また,演奏の都合上か,一部音型を変えているところがあります。 しかし,聴いた印象としては,ヴァイオリンの演奏に近いものがあり,良く言えば原曲のイメージを損ねていないと言えると思います。

録音: やや響きが多いような気がしますが,解像感,明瞭感はそれほど悪くありません。

所有盤: E 8678 (P)19999-2000 (C)2000 AUVIDIS NAIVE (輸入盤)

(記2002.08.26)(追2002.10.02)


演奏:
録音:

グレゴリー・ファルカーソン(Gregory Fulkerson) (BRIDGE 1995) (全集)

堅実で技術的にも高い安定感を感じさせる演奏です。 表現もオーソドックスながら,力強さと丁寧さがうまくバランスしていると思います。 奏法の都合によるリズムの引っ掛かりが比較的少なく,音楽の流れの良さを感じます。 音色にも伸びと厚みがあります。

録音: やや距離感があり,反射音が直接音に被って音色が汚されており,明瞭感,解像感,高域の伸び,どれを取ってもあまり良くありません。 演奏が良いだけに,この録音は非常に残念です。

所有盤: 9101A/B (P)(C)2000 Bridge Records, Inc. (輸入盤)

(記2002.08.23)(追2002.10.02)


演奏:
録音:

ポール・ガルブレイス(Paul Galbraith)(ギター) (DELOS 1997,98) (全集)

演奏者自身の8弦ギターへの編曲による演奏です。 ベース音の追加の他に,ソナタでは,第一楽章と第二楽章が連続して演奏されるなど,大きな編曲がなされているところもあります。 この編曲がまた結構ツボにはまっています。

また,多くのヴァイオリンでの演奏と大きく異なるのはテンポ感です。 これは,重音奏法の制約から解放されたというより,曲に対するアプローチが全く異なるところからきているのではないかと感じます。 言葉で表現するのは難しいですが,ヴァイオリンの演奏ではほとんどの演奏がリタルダンドをかけて次のフレーズで仕切り直すような場所でも, 全く何事もなかったかのようにインテンポで演奏されていたりします。 大胆な編曲とも相まって,全く別の曲を聴いているかのような錯覚に陥ることさえあります。 この演奏によって,この曲の新たな魅力と受容度の大きさを感じた次第です。

録音: 明瞭感,解像感もそこそこあり,音色も自然な好録音です。

所有盤: DE 3232 (C)(P)1998 Delos International Inc. (輸入盤)

(記2002.08.22)(追2002.09.29)


演奏:
録音:

フランク・ブンガルテン(Frank Bungarten) (ギター) (MDG 1987,2000) (全集)

かなり原曲に近い印象を受ける編曲で,演奏自身もギターであることをあまり意識させないごく自然な仕上がりになっています。 逆に言うと「ギターらしさ」「個性」に乏しいかもしれません。 音色にも癖がなく暖かみがあり聴きやすいです。

録音: 比較的近接でギターの音を素直に捉えており,音色も自然です。

(記2002.08.20)


演奏:
録音:

メラ・テネンバウム(Mela Tenenbaum) (ESS.A.Y 1994) (全集)

緩急の激しい演奏です。 バロック的な自然な緩急ではなく明らかに意図的に付けられたもので,やや作為的かつ不自然なところがありますが,これはこれで面白いと思います。 ただ,やはり,独特のテンポ感,間合いの取り方がちょっと馴染めませんでした。 また,現代楽器による演奏にしては装飾音が多いと思いますが,バロック的のようで実はこれも独自性を感じさせるものがあります。 重音も一般的な奏法とは違う響かせ方をしているところもあって,全体として際立った特徴はないものの,小さな特徴がいくつもあって全体として独自の雰囲気をうまく出していると思います。

録音: やや距離感があり,響きが多めに取り入れられた録音です。従って,明瞭感,解像感にやや欠けるところがあります。 音色の色づけも若干あるように思います。

P.S. このCDセットには,"Thoughts Aloud About Bach's Solo Sonatas with Mela Tenenbaum"というおまけCDが付いて3枚組になっています。 訛りの強い英語でバッハのソナタに対する考えを実演を交えながら語っている(と思われる)CDですが,特筆したいのは,その録音です。

スタジオでの録音だと思われます。バックグラウンドでわずかに残響がありますが,近接で極めて明瞭に録音されています。 スピーチがメインですので,それに適した録音環境になっていると思われます(モノラルで録音されているのもおそらくスピーチがメインだからでしょう)が,ここで演奏される楽器音が非常に生々しくリアルに捉えられていて本当にすばらしいです。 全くと言っていいほど残響音や反射音がかぶっておらず,楽器本来の音がストレートに録音されています。

豊かな残響を含む録音が好みの方からすれば鑑賞に耐えない録音と思われるかもしれません。 しかし,私としてはこれぞ鑑賞に最もふさわしい録音!と言えるものです。まるで目の前での演奏を聴いているようで,演奏の全てがストレートに伝わってきます。 モノラルとはいえ,こんなところで理想に近い音に出会えるとは思ってもみませんでした。なぜ本編をこのように録音してくれなかったのか!と残念でなりません。

所有盤: CD1049-50-51 (P)(C)1997 S.A.Publishing Co., Inc. (輸入盤)

(記2002.08.19)(追2002.10.02)


演奏:
録音:

ヴィト・パテルノステル(Vito Paternoster)(チェロ) (MR CLASSICS 1995) (全集)

チェロによる演奏。緩急強弱が非常に激しく,リズムの崩し方が独特です。 チェロという楽器からくる奏法の制限によるところもありますが,どちらかというとチェロという楽器の特性を活かした独自性を感じます。 いわゆる「語りかけるような」演奏ですが,緩急強弱の付け方,ボウイングの力の抜き方(響かせ方)もバロックヴァイオリンとは異なるチェロらしさを感じます。 重厚さ,力強さはありませんが,ヴァイオリンでは絶対に聴けない独自の世界を構築しており,しかも完成度が高いと思います。

録音: 若干の残響を伴っているものの,自然な音色であり明瞭感,解像感とも悪くありません。

所有盤: MR 10033 (C)(P)1995 Musicaimmagine Records (P)2000 (輸入盤)

(記2002.08.09)(追2002.09.29)


演奏:
録音:

ロベルト・ミケルッチ(Roberto Michelucci) (FONE 不明) (全集)

オーソドックスにまとめられていますが,訴えかけてくるところがあまり感じられません。 技術的に切れがなく微妙にいびつなリズムにもやや違和感を感じます。

録音: 曲によってかなり傾向が違います。違う時期に違う環境で録音されたと思われます。 ソナタ第一番,パルティータ第一番はこの全集の中でも比較的聴きやすい録音です。若干残響を伴っていますが,高域まですっきりと出ており,ステレオ感も自然です。 ソナタ第三番は残響過多でまともな音色ではありません。高域の伸び感,明瞭感,解像感,どれも良くありません。 問題はソナタ第二番,パルティータ第二番,第三番です。少々古くさい感じのする音色でモノラル的な感じがします。 が,それは良いとして...左右の位相が完全に逆です。とても聴いていられません(ヘッドホンで聴いていると発狂しそうになります)。 波形エディタで見ても逆になっていることが明らかにわかります。

はっきり言って欠陥CDです。こんなディスクを平気で売るメーカーの品質管理は一体どうなっているのか!! 信じられません。 しかも3枚組で同曲のCDの中でも最も高価な部類に入ります。余計に腹立たしいです。

所有盤: 90 F 27 (P)1991 Fone (輸入盤)
約\7000もしました!(怒)

(記2002.08.08)(追2002.09.30)


演奏:
録音:

ギドン・クレーメル (YEDANG 1974,76) (パルティータ第三番,第二番よりシャコンヌ)

期待に違わない鋭角的な演奏。 基本的に1980年のレギュラー盤とスタイルは変わりませんが,ライヴらしい即興性と熱っぽさが加わって聴き応えがあります。 ライヴなので演奏上の傷はいくらかありますが特に気になりません。

録音: パルティータ第三番とシャコンヌは別のライヴ録音。何となく海賊版っぽい感じです。 パルティータ第三番は奏者とマイクの距離が若干遠い感じでホールトーンが多めに入っていますが,空間性の再現に寄与しており,それほど悪くありません。 明瞭感に欠けるものの音色も比較的自然で高域の伸び感もそこそこあって聴きやすいです。聴衆のノイズが大きく,時々びっくりするような音も入っています。 シャコンヌはモノラル録音。前者と全く違った捉え方で,かなりオンマイクの感じがします。直接音と間接音の比率が曲の途中でゆるやかに変化しますが, おそらくマイクのまわりをうろうろ歩き回って距離が変化しているのではないかと想像します。マイクに近いと思われるときはほとんど残響が意識されず, 生々しい感じでなかなか良いです。モノラルなのが残念なところです。

ちなみに,カップリングのフランクのソナタは,ライヴの雰囲気を良いクオリティで伝えてくれる好録音でした。

(記2002.08.07)


演奏:
録音:

ユーディ・メニューイン(Yehudi Menuhin) (EMI 1934,35,36) (全集)

この曲の演奏史についてほとんど知らないのですが,これだけ古い録音で,しかも10代後半の若さで,現在にも通用する解釈,スタイルで演奏されていることに驚きました。 演奏スタイルに関して本当に全く古さを感じさせません。また,確固たる自信さえ感じさせる落ち着きがありながら聴き手に訴えかけてくるところがあります。

もっとも,冷静に,客観的に見るとやや荒っぽく音程が良くないなど技術的にはやや劣る面があることは残念ながら否めません。

録音: モノラル録音。私の所有しているCDの中では飛び抜けて古い録音です。 オーディオ的なクオリティは当然悪いですが,しかし,(古い録音にしては)思いのほか聞き取りやすく,演奏の細かいニュアンスまでかなり伝わってくる印象を受けます。 高域の伸びはありませんが,音質としてバランスが取れていると思いますので,聴いていてあまり違和感がありません。 残響が全くといってよいほど無く,オンマイクでストレートに録音している恩恵ではないかと考えます。 私にとっては残響で汚された最近の録音よりもよっぽど鑑賞に耐えうる好録音です。

所有盤: (1) 5 67197 2 (P)1989 EMI, Digital remastering (P)1999 EMI (C)1999 EMI Music France (輸入盤)

(記2002.08.06)(追2002.09.29)


演奏:
録音:

山下和仁(ギター) (CROWN 1989) (全集)

演奏者自身の編曲による演奏。要所要所で和声的な補強がなされている部分がありますが,ほぼ原曲に忠実と言ってよいと思います。 ボウイングからくるリズムの制約から開放され,より自由に演奏されている演奏されている感じがします。 概してテンポが速く,特に急速楽章では「超特急」と言ってよいほど速い曲もありますが,ちょっとやりすぎの感じもします。 しかし,この独特のテンポ感によって,ヴァイオリンの演奏では感じることの出来なかった新しいフレージングの発見がいくつもあり,楽しんで聴くことが出来ました。

ヴァイオリンの演奏では耳で自然に補っていた和声的欠落部分が実音として補強されており,一面納得しながら聴けるものの,少々お節介な気がしないでもありません。 もっとも,ギターで楽譜通りに弾くと間が抜けて聞こえるのかもしれません(聴いてみないとわからないです)。

爽快な急速楽章,フーガ,じっくり聴かせる緩徐楽章など聴き所は多いですが,シャコンヌでは高揚感を出そうと努力しておられるのはわかるのですが,持続音が苦手なギターだけに若干空回りしているような気がしてちょっと残念です。 音色も全体に硬質でやや汚い感じがしますが,好みの範囲だと思います。

録音: 若干の響きを伴っているものの,比較的ストレートに録音されており聴きやすい音質です。もう少し近接音場で高域の伸び感があると良いのですが。

所有盤: CRCC 7005/9 (P)1992 日本クラウン株式会社 (国内盤)
「バッハ・セット」(5枚組),無伴奏チェロ組曲,リュート組曲とのカップリング。

(記2002.08.06)


演奏:
録音:

スザーネ・ラウテンバッハー (BAYER 1964) (全集)

シェリング盤と相通じるような格調の高さ,品格を感じさせる演奏です。 全体的に落ち着きのある表現ですが,中でもパルティータ第三番は,これに躍動感が加わった好演奏だと思います。

録音: モノラル録音ですが,比較的高域まで伸びており,また解像感もそこそこあって良好です。 モノラル録音であることがあまり意識されないくらい自然な感じです。 残念ながら一部の曲ではすり減ったヘッドでテープを再生したときのような歪み感があります。

(記2002.08.03)


演奏:
録音:

ブレイン・ブルックス (ARTS 1999) (全集)

いかにもバロックヴァイオリンらしい緩急強弱の激しい演奏。 急速楽章はかなり速いですがやや乱雑で小気味よさが感じられず,残念ながら共感できませんでした。 リズムが詰まりすぎていびつに聴こえたり,細かい音符を端折っているように聴こえるところが多く,この点でも違和感を感じます。 全体として今ひとつ訴えかけてくるものを感じませんでした。

録音: ある種のリアルさは感じますが,響きによって音色が汚されており,高域の伸び感,明瞭感,解像感,どれも今ひとつ冴えません。

(記2002.08.01)


演奏:
録音:

ルジェーロ・リッチ(Ruggiero Ricci) (DECCA 1957) (ソナタ第一番,パルティータ第二番)

重厚な演奏。 ソナタ第一番は思いのほか癖が少なくオーソドックスな印象を受けました。 パルティータ第二番はリッチの本領発揮という感じで,独特のヴィブラートで歌い込んでいます。 同時期の録音にしては二つの曲のアプローチが異なっているところがちょっと変な感じがします。

録音: モノラル録音。響きによってやや音色が損なわれていますが,比較的すっきりしていて聴きやすい音質です。

所有盤: POCL-4625(466 012-2) (P)1958 The Decca Record Company Limited (国内盤)

(記2002.08.01)(追2002.10.01)


演奏:
録音:

ドミトリ・シトコヴェツキー(Dmitry Sitkovetsky) (HANSSLER 1997) (全集)

一音一音しっかり弾いていますが,全体的に鋭角的でテンポが速めなので重苦しくなることもなく小気味の良い演奏だと思います。 鋭角的で速めといっても,表現はどちらかといえば全体的に抑制の効いた落ち着きのあるもので,速い楽章でも疾走する感じや荒々しさはありません。 強弱のコントラストが比較的はっきりしており,また,盛り上がるところではしっかり高揚感も出しています。 素直に受け入れることの出来る好演奏です。

録音: 残響感は少なめですが,響きによる若干の音質劣化が感じられ,明瞭感が損なわれています。 近接で息づかいまで録音されているような録音だけに,この音質劣化が惜しまれます。 ただ,それほど悪い録音ではなく音質だけをみれば少なくとも3.0ポイントくらいの評価だと思っています。

しかし,この録音でどうしても許せない点が2つあります。一つは,編集の継ぎ目ではないかと思われる一瞬の不自然なミューティングです。 (たとえばパルティータ第三番Preludeの約12秒)。 波形を見てみると約20msec程度無音に近い状態になっており,その前後が極めて短い時間でのフェードアウト,フェードインとなっています。 聴感上明らかに不自然です。このような箇所が何カ所もあります。 編集時のクロスフェードのミスではないかと思いますが,そうだとすると余りにもお粗末だと言わざるをえません。

もう一点は,雑音の混入です。この雑音も演奏上自然に発生した雑音,あるいは録音環境のバックグラウンドノイズ程度ならまだ許せます(といいますか,気にならないと思います)。 しかし,この雑音は,安物のパイプ椅子がきしむような音でとても演奏上の雑音とは到底思えない人工的な感じのするものです。 悪いことに,私にとっては黒板を爪で引っ掻いたときのような不快きわまりない雑音です。

残響で音が聞き取れないとか,そういった音質の悪さとは次元が違います。 このような録音を平気で出してくる気が知れませんし,余りにもファンを馬鹿にしていると思います。(怒!!)。 演奏が好みなだけに余計に腹立たしいです。

所有盤: CD 92.119 (C)(P)1998 Hanssler-Verlag (輸入盤)

(記2002.07.31)(追2002.10.04)


演奏:
録音:

ルジェーロ・リッチ(Ruggiero Ricci) (PROMPT) (ソナタ第三番)

ライヴ録音なので演奏上の傷はたくさんありますが,勢いがあり,また即興的雰囲気に溢れています。 音楽を突き詰めて演奏しているという印象は薄く,全体に速めのテンポで感性の赴くまま弾いている感じがします。 スタジオ録音盤では決して味わうことの出来ないおもしろさがあります。

録音: オーディオ的なクオリティはともかく,ライヴ録音なのに残響が全くといって良いほど取り入れられておらず, 近接でストレートに録音されていて,ライヴらしい生々しさとともに細かいニュアンスまでしっかり伝わってきます。私の好きな録音の一つです。 このような録音で全曲録音を聴いてみたいところです。

所有盤: URS-90033 (P)1990 One-Eleven Ltd. (輸入盤)
"Sibelius Complete Works for Violin & Piano", "Solo Works by Bach, Hindemith, Ysaye, Paganini (Live Performance)"というタイトルの2枚組。 録音年代不明ですが,それほど古そうな感じはありません。販売元はOne-Elevenという香港の会社のようですが,Made in Japanとなっています。

(記2002.07.28)(追2002.10.01)


演奏:
録音:

ミクローシュ・セントヘイ(Miklos Szenthelyi) (HUNGAROTON 2001) (全集)

オーソドックスですが,メリハリのあるダイナミックな演奏です。 音色は張りがあって美しいです。 しかし,特徴に乏しく印象にあまり残りませんでした。

録音: やや距離感があり明瞭感がありません。 残響というよりも響きによってかなり主音が汚されており,ざらついた音になってしまっています。

(記2002.07.26)


演奏:
録音:

エリザベス・ウォルフィッシュ(Elizabeth Wallfisch) (HYPERION 録音不明) (全集)

付点を詰めたリズムの付け方,重音の奏法,やや跳ねるようなスタッカート,緩急の付け方など,バロックヴァイオリンによるバロックヴァイオリンらしい演奏です。 装飾は曲によりますが,全体に控え目です。こぢんまりとまとまっていますが,やや動感に欠け,いまひとつ訴えかけてくるものが感じられませんでした。

録音: 多少の残響感はありますが,解像感,明瞭感は損なわれておらず好ましい録音です。

所有盤: CDD22009 (P)(C)1997 Hyperion Records Ltd. (輸入盤)

(記2002.07.25)(追2002.09.29)


演奏:
録音:

テオ・オロフ (VANGUARD CLASSICS 1979) (全集)

技術的な切れは感じませんが,暖かく落ち着きのある好演です。 緩急強弱,アクセントも激しくなく,全体に中庸で一見特徴がない演奏ですが,聴くほどに奥深さを感じさせてくれました。

録音: 多めの残響感を伴っていますが直接音をほとんど損なっておらず空間イメージの再現に寄与しています。 明瞭感のそこそこ高い好録音です。 残響の取り入れ方がうまくいっている一例だと思います。

(記2002.07.24)


演奏:
録音:

潮田益子 (FONTEC 1996) (全集)

オーソドックスですが,力強くまた表情が豊かで曲の奥深さを実感させてくれる好演。 技術的な安定感もあり,音色も美しいです。 ややもったいぶったようなテンポの取り方が時々あり,間延びする感じがするのが残念です。

録音: 残響を多少伴っているものの,解像感,明瞭感も高く,高域の伸び感もそこそこあって,演奏の細かいニュアンスまで伝わってきます。

(記2002.07.17)


演奏:
録音:

塩川悠子 (CAMERATA 1989) (全集)

落ち着きのある自然体の演奏。 力強さはありませんが,気負いが感じられずとても素直に表現されていると思います。 無理をしていない分音色も澄んでいて美しく技術的な破綻もないので安心して聴くことが出来ました。 素朴で聴いていて心安らぐ好演奏です。

録音: 残響感があるものの直接音が支配的であり,解像感,明瞭感もそこそこある好録音です。

所有盤: 30CM-145/6 (P)1991 CAMERATA TOKYO (国内盤)
スタジオ・バウムガルテン,ウィーンでの録音。使用楽器:ストラディヴァリ"エンペラー"。

(記2002.07.14)(追2002.10.18)


演奏:
録音:

イツァーク・パールマン (EMI 1986,87) (全集)

パールマンらしい明るさや軽々と弾きこなしているといった雰囲気は薄く,気迫のこもった真摯な演奏であるところが少々意外な感じがします。 オーソドックスな表現ながら力強く前進していく演奏にぐいぐいと惹きつけられます。 曲間の間の取り方がライヴのような独特の感じがしておもしろいです。

録音: 残響感が少々多めに入っており,高域の伸びのなさと解像感の悪さを感じます。

(記2002.07.12)




演奏:
録音:

サルヴァトーレ・アッカルド(Salvatore Accardo) (PHILIPS 1976) (全集)

音の出だしから極めて正確に響く重音,はっきりした発音など,まず技術的な安定感と切れの良さを真っ先に感じました。 それでいてテクニックを誇示するでもなく控えめで落ち着いた表現に好感が持てます。 声部を意識した重音奏法が独特でおもしろいです。 パルティータ第三番はちょっとどっしりと落ち着きすぎの感じがします。 ヴィブラートのよく効いた音色と独特のアクセントが特徴的ですが,このあたりは好みが分かれるところだと思います。

録音: 多少の残響感はあるものの気にならず聴きやすいですが,高域の伸びがやや足りず詰まった感じがするのが残念です。

所有盤: (写真上)PHCP 9087/8 (P)1976 (C)Philips Classics Productions (国内盤)
(写真中)17CD-93,(写真下)17CD-94 (P)1976 Philips (国内盤)

(記2002.07.09)(追2002.09.30)



演奏:
録音:

レイチェル・ポッジャー (Channel Classics 1997,98,99) (全集(分売)) (バロックVn)

奏法的にはバロックヴァイオリンそのものですが,そこから奏でられる音楽そのものは現代的感覚に溢れていると思います。 全体的に軽めで明るく表情豊かです。技術的にも安定感があり,安心して聴くことが出来ます。 音色は透明感があり美しいですが,やや硬質です。

録音: 残響がかなり多いですが,どちらかというと空間イメージ再現に寄与しており,解像感はそれほど失われておらず, 残響の量の割には聴きやすいと思います。

(記2002.07.06)


演奏:
録音:

アルテュール・グリュミオー (PHILIPS 1960,61) (全集)

全体的に速めのテンポで折り目正しく演奏されていますが,ややせわしなさ,落ち着きのなさを感じます。 オーソドックスで緩急強弱などもあまりありませんが,楽譜を素直に格調高く表現してると思います。 ヴィブラートをよく効かせた独特の音色ですが,いわゆるグリュミオーらしいトーンがあまり感じられないのが残念なところです。

録音: 曲により多少の違いは感じますが,全体的な傾向として残響がたっぷり取り込まれた録音になっています。 そのため非常に曇った感じでかなり聴きづらいです。

(記2002.07.03)


演奏:
録音:

セルジウ・ルカ (NONESUCH 1977) (全集)

バロックヴァイオリン独特の奏法とその奏法から生み出される音,時折控えめに入れられる装飾,といった特徴を除けばバロックヴァイオリンでの演奏であることがあまり意識されません。 極めて自然にアプローチされており,緩急強弱も激しくなくすんなりと受け入れることが出来ました。 力まず比較的軽いタッチの演奏だと思います。

録音: 若干残響感が多めですが,それほど直接音を邪魔していないので好ましい録音ではありますが,やや高域の伸びが足りません。 録音の音の捉え方ではありませんが,マスターテープ再生時の不具合(?)と思われる音の曇りが感じられる曲があります(例えばソナタ第一番)。 コテコテに汚れたヘッドでカセットテープを再生したときのような感じの音です。 また,これらをヘッドホンで聴くと左右の位相がねじれた感じがします。気のせいでしょうか?

(記2002.07.02)


演奏:
録音:

和波孝禧 (アートユニオン 1993) (全集)

最も特徴的なのは,かなり短い音まで深くしっかりかかったヴィブラートです。 最初聴いたときは多少しつこい感じがしましたが,聴き込むと違和感はなく,むしろ暖かでありながら透明感のある独特の音色が心地よくさえ感じてきます。 暖かといっても,アクセントはしっかりとついておりメリハリはありますし,躍動感にも溢れたとても明るい演奏だと思います。 技術的な切れ味はやや物足りない感じはありますが,ほとんど欠点として感じません。

録音: 結構な残響感(響きが長く残る)がありながら,透明感,解像感がほとんど失われておらず,とても聴きやすい好録音です。

(記2002.06.28)



クリスティアーネ・エディンガー(Christiane Edinger)

レーベル Amadis
収録曲 全集
録音データRecorded at Tonstudio van Geest in Sandhausen(Heidelberg) from 26th to 29th July, 1991
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 (Vol.1) 7186 (P)1991 (C)1999 HNH International Ltd. (輸入盤)
(Vol.2) 7187 (P)1992 (C)1999 HNH International Ltd. (輸入盤)

NAXOS盤と同じ演奏です。 音声データ比較しましたが,完全一致しました。

(記2007/03/06)


演奏:
録音:

シギスヴァルト・クイケン (独ハルモニア・ムンディ 1981) (全集)

やや乾いた音色,発音などバロックヴァイオリンそのものです。 ですが,かなり速めのテンポで小気味よく音楽が進行していき, 緩急強弱もそれほどなく,この点ではバロックヴァイオリンらしさはあまり感じません。 かなり鋭角的で意欲を感じる演奏です。 技術的な不安もほとんどありません。 私にとっては2回目の録音よりも1回目のこの録音の方がはるかに充実している印象を受けます。

録音: かなり残響が多いにも関わらず,後方にふわっと広がる感じで収録されており, 解像感,明瞭感がそれほど損なわれていませんので,かなり聴きやすいよい録音だと思います。 演奏と同様,私にとっては2回目の録音よりも1回目の録音の方がはるかに好ましいです。

(記2002.06.26)


演奏:
録音:

シャンドール・ヴェーグ(Sandor Vegh) (AUVIDIS 1971) (全集)

音に暖かみがあり,良い意味で泥臭さを感じさせる人間味溢れる好演。 音の切れの悪さ,速いパッセージでのテンポの乱れ,つぶれた重音など,技術的に不安な部分が散見されるところが非常に残念です。

録音: 近接で細かなニュアンスまでしっかり伝えてくれる好録音。 細かく聴くと曲毎に微妙に録音の質が異なるように感じますが,全体として統一感があり特に違和感はありません。 指板を叩くパンパンという音,息づかいまでしっかり入っているところが面白いです。

所有盤: V 4865 (P)1971/1988 Auvidis France (C)1999 Auvidis Naive (輸入盤)

(記2002.06.26)(追2002.09.29)


演奏:
録音:

ユージン・ドラッカー (PARNASSUS 1988,89) (全集)

鋭角的でやや堅い印象を受けました。音色はかなり図太く感じ,美しいという感じはあまりありません。 スタッカートで弓を飛ばしてみたり,堅いところから軽やかなところまで変化を付けようとする工夫の跡を感じますが, うまくはまっている曲もあれば,堅い中で無理に軽やかさを出そうとしてやや滑稽な感じのする曲(例えばパルティータ第三番のGavotte en Rondeau)もありました。 全般的にまじめさ,真剣さ,静かな熱意が滲み出た好演に思います。

録音: 残響も余りなくそこそこの解像感があり好ましい録音ですが,やや高域のヌケが悪いように感じます。

(記2002.06.24)


演奏:
録音:

ステファン・ミレンコヴィッチ (DYNAMIC 1996) (全集)

速めのテンポでよどみなく進行していきます。アクセントは強くなく流麗な感じでうまくまとめている感じです。 緩徐楽章ではヴィブラートを抑えた独特の響きを出すような弾き方をしており,なかなか面白いと思いました。 速い楽章ではどちらかというとスタッカート気味で軽快に弾いています。 パルティータ第三番はもう少し活気が欲しいところでちょっと残念です。

録音: やや遠方でこぢんまりした音像です。明らかに直接音よりも間接音の比率が大きく,高域のヌケが悪く解像感もありません。 こもった感じの全く冴えない録音です。残念です。

(記2002.06.23)


演奏:
録音:

潮田益子 (EMI 1971,72) (全集)

やや武骨で音色の美しさはあまりありませんが,音に張りがあり生気と力強さに溢れた佳演だと思います。 アクセントを効かせ,速めのテンポでぐいぐい引っ張っていく感じです。

録音: 曲によってばらつきを感じます。ソナタ第一番が最もストレートで聴きやすく, パルティータ第一番,ソナタ第二番はソナタ第一番と同じ傾向ですが,やや響きによる濁りが増え,また音像感が少し異なります。 パルティータ第二番,第三番,ソナタ第三番は,やや離れて録音したような感じで残響が増えて聴きづらくなります。 全般的にトーンコントロールで高域を持ち上げたときのようなざらつき感があります(特に後半3曲で顕著)。

(記2002.06.23)


演奏:
録音:

イダ・ヘンデル (TESTAMENT 1995) (全集)

揺らぎが多く低めに決まりがちな音程,不安定な音,端折ったように聞こえる重音奏法など,技術的にはかなり不満があります。 アクセントが効いていてダイナミックですが,やや唐突な感じが否めません。特にソナタ第一番が良くありません。

しかし!ソナタ第三番の後半からパルティータ第三番の出来は前記の欠点を忘れさせるに十分な充実した演奏を聴かせてくれます。 活き活きと躍動感に溢れており,アクセントの効いた演奏がすばらしくはまっています。 聴き始めたときの印象と聴き終えたときの印象がこれほど異なる演奏も珍しいです。

録音: 残響もほとんど気にならず,良くも悪くも演奏の細部までしっかりと伝えてくれるストレートな好録音。

(記2002.06.19)


演奏:
録音:

清水高師 (PLATZ 1994) (全集)

一音一音太い音色でしっかりと弾かれています。 大胆に表現しようとする意欲と音楽を前へ前へ進めようとする意識が感じられ,聴いていて気持ちがよいです。 移音の切れの悪さ,音程,音のかすれなど,残念ながら技術面では若干不満が残ります。

録音: ホールの響きが多めに取り込まれておりやや明瞭感に欠けます。 音色への独特の色づけもほんの少し感じられます。

(記2002.06.15)


演奏:
録音:

ダヴィド・グリマル (TRANSART 1999) (全集)

緩急の激しい演奏。一瞬バロック的な印象を受けますが,ちょっと違う独特の表現です。 テンポや間合いの取り方にライヴらしい即興性を感じます(考え過ぎでしょうか?)。 深く突き詰めた演奏とは次元の違う自由な感性による演奏という感じがしました。

録音: 曲集間で拍手の入るライヴ録音。曲間での足音や聴衆の咳払いなどが臨場感を醸し出しています。 ホールの響きが多めに取り込まれており,やや高域のヌケが悪くこもった感じが残念なところです。 拍手も同様で,もっと明瞭に録音して欲しいところです。(たかが拍手ですが,音質が良くないと興醒めです。これならない方が良いと思います。)

(記2002.06.15)


演奏:
録音:

フェリックス・アーヨ (PHILIPS 1974,75) (全集)

オーソドックスな演奏。特に個性的というわけではありませんが,落ち着いたテンポで堅実に演奏されていると思います。 力強さを感じる部分もありますが,どちらかといえば全体的にやわらかで丁寧な印象を受けます。

録音: 残響成分が多く高域のヌケの悪さがあり,ややこもった感じがあります。

(記2002.06.11)


演奏:
録音:

ドミトリ・シトコヴェツキー(Dmitry Sitkovetsky) (ORFEO 1984) (全集)

全体的に硬質で鋭角的な印象を受けるメリハリのある演奏。 個々のフレーズをとってみると緩急強弱は激しくありませんが,曲全体を大きく捉え,大きな流れとして変化を付けようとしているように思います。 緩徐楽章や弱音部でも発音がしっかりしており,柔かくゆったり歌う中にも芯がしっかり通っています。

録音: わずかな残響感を伴っているものの,極めて解像感,明瞭感が高く,微妙な音色の変化,細かいニュアンスなどストレートに伝わってきます。 残響によると思われる音色への色づけがわずかに感じられますが,これを割り引いても私にとってはかなり理想に近い好録音です。 再生機器によってはややキンキンするかもしれません。 演奏者の息づかいまでしっかり録音されているところがおもしろいです。

所有盤: C 130 852 H (P)1985 ORFEO International Music GmbH (輸入盤)

(記2002.06.10)(追2002.10.02)


演奏:
録音:

辻井淳 (ISODA 2000) (全集)

真摯でオーソドックスなスタイルの演奏。 全体的にはきびきびした感じですが緩急の緩のところでやや締まりがなくなるような感じがあります。 (録音が悪く細かいニュアンスが聞き取れないので,残念ながらこれ以上の評価が出来ません)

録音: やや距離感があり,明らかに直接音成分よりも間接音成分の比率が高く感じられます。 この間接音は残響と言えるものではなく(実際残響時間はそれほど長く感じません), 空間イメージの再現に寄与しないばかりか,単に音色を汚し明瞭感を損なうだけの役目しかしていません。

(記2002.06.07)


演奏:
録音:

ベンヤミン・シュミット (ARTE NOVA 1999) (全集)

緩急強弱の激しさと重音奏法やアタックの付け方がバロック的な雰囲気を醸し出してますが, やや弓を浮かせたような弱音の奏法や速いパッセージでの跳ばし弓の使い方などかなり個性的に感じます。 全体に速めで小気味よく演奏されています。 音色がややざらつきがあるところが少々残念なところです。

録音: 残響が多めでややヌケの悪さがありますが,その割にある程度の解像感があり微妙なニュアンスが伝わってきます。 音色への色づけも余り気にならずそれほど悪くないと思います。

(記2002.06.05)


演奏:
録音:

前橋汀子 (SONY 1988) (全集)

オーソドックスで丁寧かつ力強い演奏。 技術的にも安定感があって全体に高いレベルでバランスが取れていると思います。 明るさと躍動感に乏しく少々暑苦しいところが残念なところ。

録音: 比較的近接にも関わらず残響感がたっぷりでやや息苦しさを感じます。 何となく音の芯がしっかりせず浮いた感じがします。

(記2002.05.31)


演奏:
録音:

寺神戸亮 (DENON 1999) (全集) (バロックVn)

緩の楽章と急の楽章のコントラストがくっきりしており,急の楽章が速く軽快なのが意外な感じがしました。小気味よくて気持ちが良いです。 シャコンヌなど物足りない感じを受けるかもしれませんが,これはこれで納得できました。 緩の楽章はいかにもバロックヴァイオリンらしい演奏です。 意図的にだとは思いますが重音でテンポが崩れすぎる感じがあり,もう少し自然に流れてくれればと思います。

録音: オンマイクですが多少残響感が伴っています。鮮明さは十分にあり,残響感の割に好ましい録音だと思います。 個人的にはもう少し響きを抑えて欲しかったと思います。

(記2002.05.27)


演奏:
録音:

島根恵 (ALM 2000) (全集)

丁寧で美しい演奏です。各曲のテンポ,緩急,抑揚など程良くバランスが取れていると思います。 表現が全体に明るく,適度にメリハリもあります。 オーソドックスで強い個性の主張はありませんが,癖がなくごく自然に受け入れることが出来ます。 技術的にも破綻がなく安定感があって安心して聴くことが出来ました。

録音: 残響がやや気になり鮮明さが少し落ちますがなんとか許容範囲だと思います。 少し音色に録音上の色づけが感じられました。 好演なだけにもっとすっきりストレートに録音できていればと少々残念です。

(記2002.05.24)


演奏:
録音:

シギスヴァルト・クイケン (DHM 1999,00) (全集) (バロックVn)

バロックヴァイオリンによるバロックヴァイオリンらしい演奏ではないでしょうか。 粘りのある発音と独特のボウイングによる独特のスタッカート音など私が抱いているバロックヴァイオリンのイメージそのものです。 速めのテンポで淡々と,表現は意外にあっさりと進んでいきます。

音程がやや不安定であったり,ミスとも思えるような発音の悪さがあったり,細かいスケールの発音が不明瞭だったりと, 技術面では少々不満があります。安心して音楽に没入することが出来ませんでした。

録音: 残響が非常に多く,鮮明さに欠けます。確かに残響が空間イメージを創出しているのは確かですが, 主音を汚していては何にもなりません。大いに不満です。また,パルティータ3番プレリュード(CD-2 Track10)の2:16付近,2:25付近で人工的とも思える音の乱れが聞こえます。 (演奏上の乱れとはとても思えない類の音です)。私の耳がおかしいのでしょうか???(それとも盤が痛んでいるのか...)

(記2002.05.23)


演奏:
録音:

漆原朝子 (FUN HOUSE 1996) (パルティータ集)

アクセントを抑え,やわらかに歌った演奏。緩急強弱の付け方もごく自然で何の違和感もなく受け入れられます。 強烈な個性の主張はありませんが,丁寧で美しく他には感じられないしっとりとした味わいがあります。 テクニックも問題ありません。

録音: 比較的近接でありながら残響があまりに多く主音を著しく損なっています。 せっかくの好演が台無しです。

(記2002.05.22)


演奏:
録音:

シュロモ・ミンツ(Shlomo Mintz) (DG 1983,84) (全集)

教科書的な演奏。比較的ゆっくりしたテンポで丁寧に弾いています。 テンポの揺らぎがほとんどなく,まるでメトロノームに合わせて弾いているようでちょっと違和感を感じます。 丁寧で美しく弾いているのですが,ナイロン弦のような独特の音色で損をしていると思います。

そんな中でソナタ第三番の第一楽章はゆったりと控え目な表現ながら独自の響きを出していて,ハッとさせられました。 他ではなかなか聴けない良さがあります。

録音: やや距離感があり,残響が多めで鮮明さに欠けます。 スピーカで聴いているときは気になりませんでしたが,ヘッドホンで聴くとザワザワというバックグラウンドノイズがやや耳障りでした。

所有盤: UCCG-9108/9(471 080-2) (P)1984 Polydor International GmbH, Hamburg (国内盤)
録音:1983年1月,12月,1984年3月,6月,ユーヘン(デュッセルドルフ近郊),ニコラウス修道院

(記2002.05.21)(追2002.10.21)


演奏:
録音:

ヴィクトリア・ムローヴァ(Viktoria Mullova) (PHILIPS 1993) (パルティータ集)

感情を抑えて曲を深く掘り下げて演奏しようとしているかのようで, 全体としてバロックを意識した表現になっているように思えます。 厳しさ,重厚さはなく,バロック的なやや軽めの仕上げになっています。 平均水準以上の演奏ですし,決して嫌いではないのですが,何度聴いても印象に残らないのはなぜでしょうか?

録音: 残響も適度に抑えられてすっきりとしており,レンジ感もあって好ましい録音です。

所有盤: PHCP-5198(434 075-2) (C)1994 Philips Classics Productions (国内盤)
録音:1993年6月28-30日(BWV1002,1004), 1992年8月10-12日(BWV1006), ブリストル,セント・ジョージ・ヒル

(記2002.05.15)(追2002.10.22)