感想

■ フランク・ペーター・ツィンマーマン Frank Peter Zimmermann

収録曲:ソナタ第2番,パルティータ第2番,第3番
録音:8th-12th June 2020 at the Evangelische Kirche Honrath, Germany (BWV 1002, 1003), 27th-28th March 2021 at Konserthuset Stockholm, Sweden (BWV 1006)
Label:BIS Records
所有盤:BIS-2577 (C)(P)2021 Deutschlandradio / BIS Records AB, Sweden (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様(Antonio Stradivarius, Cremona 1711, 'Lady Inchiquin')
収録曲:ソナタ第1番,第3番,パルティータ第1番
録音:17th-19th August 2021 at the Kammermusiksaal, Deutschlandfunk Köln, Germany, 17th-18th March 2022 and 14th-15th November 2022 at the Immanuelskirche, Wuppertal, Germany
Label:BIS Records
所有盤:BIS-2587 (C)(P)2023 Deutschlandradio / BIS Records AB, Sweden (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様(Antonio Stradivarius, Cremona 1711, 'Lady Inchiquin')

フランク・ペーター・ツィンマーマンはご存じの通り,ドイツを代表するモダン楽器の正統派ヴァイオリニスト。 このバッハもモダンなスタイルで演奏されるのかと思っていましたが, かなりピリオド寄りのアプローチで,ヴィブラートを控えめに抑え,装飾をふんだんに大胆に取り入れています(ちょっとやり過ぎ感が...)。 技術的にも安定していて全く不安なく聴けるのはさすがです。

ただ,攻める方向がピリオドに向かっていて,その方向での挑戦とその完成度はもちろん高いと思うのですが, 音楽的な表現においては少し無難に大人しくまとめているかなという気がします。 モダン楽器での現代的で力強く洗練された演奏をイメージしていたので,少し肩すかしを食らった気分は正直あります。 もちろんこれは私が勝手にそう思ってしまったのが悪いのですが。

録音ですが,少し残響が多めで楽器音へのまとわりつきは気になりますが, 響きが空間性を伴ってスッと綺麗に消えてくれるので,音色の濁りも少なく,それほど悪い印象ではありません。 ただやっぱり音色に影響はしているので,もう少し直接音を主体に透明感のある音色で録って欲しかったところです。 録音は多年にわたり会場も4カ所で録られていますが,統一感はあり,この点は良いと思います。

(記2023/10/01)

■ ヒラリー・ハーン Hilary Hahn

[1]
収録曲:パルティータ第2番,第3番,ソナタ第3番
録音:Recorded at the Troy Savings Bank Music Hall, Troy, New York, June 17-18, December 23, March 23-24, 1997.
Label:Sony Classical
所有盤:SK 62793 (C)(P)1997 Sony Music Entertainment Inc. (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様
[2]
収録曲:ソナタ第1番,第2番,パルティータ第1番
録音:February and June 2012, June 2017, The Fisher Center for the Performing Arts, Sosnoff Theater, Bard Collage
Label:DECCA
所有盤:00289 483 3954 (C)(P)2018 Decca Music Group (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

[1]はヒラリー・ハーン17歳で録音されたデビューCDで,[2]はそのおよそ15,20年後に録音・発売されたCD。 これらを合わせて「全集」と呼ぶには少しためらいもありますが,[2]の選曲は全集化を意識してのことと思われるので「全集」として扱いたいと思います。

[1]について,パルティータ第3番は若々しく溌剌と躍動感があり, パルティータ第2番は一転してゆったりしたテンポでじっくり弾いています(シャコンヌは17:47かけています)。 ソナタ第3番は静と動が絶妙にバランスしています。

特筆すべきはやはり不自然なほどに完璧で圧倒的な技術の完成度。 淀みなく滑らかに連なる旋律,そして完璧に溶け合う和音の美しさ。 特にシャコンヌの長調になる中間部の和音の天上的な神々しい響きは本当に素晴らしいです。 若いからこその純粋無垢さ,そして個性とか感情とかそういったことを超越した孤高の演奏だと思いました。

[2]について,突出した技術力に支えられた完璧な演奏である点は[1]と同様ですが, [1]と比べるとずいぶんエモーショナルで人間的,長い年月を経て音楽的成長を遂げた一方で, 失われていったものも大きいと感じざるを得ません。 これはこれで非常に完成度の高い演奏であることは間違いないのですが。 [1]の時期に全集録音されていなかったのが残念でなりません。

録音ですが,[1]は少し残響感があり楽器音にまとわりついて音色に影響しているものの, 明瞭感は十分にあり楽器の質感も伝わってきます。 高域の伸び感もそこそこあります。 不満はあるものの良好と言えます。

一方[2]の録音ですが,残響感は少なめですが会場の響きの影響とやや遠めの距離感のためか, 少し雑味があり音色の透明感が少し良くありませんし,楽器の質感も弱めです。 これでも十分良い録音だとは思うものの少し不満が残ります。 惜しいです。

余談ですが,[1]はこのCD試聴記で一番最初に取り上げたCDであり, この聴き比べのページを作るきっかけにもなった思い出深いCDです。 ということもあり強い思い入れがあることをご了承いただきたく存じます。

(記2023/09/03) DECCA盤追加 ※3回目
(記2012/10/27) ※2回目
(記2002/03/13-10/21) ※1回目

■ 桜井大士 Taishi Sakurai

レーベル:Laplace Records
収録曲:全集
録音:J2018年1月30日,31日,2月1日 岩舟文化会館コスモスホール
所有盤:LPDCD101-102 (C)2018 Laplace Records (国内盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

一つ一つの音に思いを込めて丁寧に紡いでいく, 起伏を付けず一定の緊張感で弾き進めていく, 日本語が聴こえてくる気がします(多分に先入観が入っていますが(^^;)。 技術的にもキレがあります。 バッハの音楽に対する真摯で謙虚な姿勢が伝わってきます。 今どきの演奏ではない古めかしさも感じますが,これはなかなか聴かせますね。

録音ですが,残響はやや多めで,音色の曇り,明瞭度への影響は少ないものの, 透明感,美しさは失われています。 残響の音楽性への寄与もあまり感じられません。 まあこの録音なら問題ないと思う方も多いとは思いますが, やはり得るものよりも失うものの方が大きいと思います。

(記2018/06/09)

■ ジョニー・ガンデルスマン Johnny Gandelsman

レーベル:In A Circle Records
収録曲:全集
録音:MSR Studios, NYC (January 4th-6th, 2015), Oktaven Studio, Mount Vernon (September 15th, 2017)
所有盤:ICR010 (C)2017 In A Circle Records (輸入盤)
備考:演奏 録音 Violin: Giovanni Tononi 1690 モダン仕様

う~ん,技術的には結構巧いのですが,弾き方がぶっきらぼうというか愛想がないというか, 細かく表情付けしたりしようという気がないようです。 演奏者がどのような思いでこの曲を演奏しているのか,私には全く伝わってきませんでした。 これがこの演奏者のスタイルであり個性なのだとは思うのですが,ちょっと損していると思います。

録音ですが,スタジオでの録音のようなので残響はあまりありませんが, スタジオ内の反響の影響か,スタジオの響きの癖が音色に被っていて今ひとつ冴えない音になってしまっています。 基本的には好きな録音なのですが,このすっきりしない音色は惜しいところです。

(記2018/04/15)

■ 土田越子 Etsuko Tsuchida

レーベル:EXTON
収録曲:ソナタ第1番,パルティータ第2番,第3番
録音:2017年9月5-7日 神奈川・相模湖交流センター
所有盤:OVCL-00656 (P)(C)2018 Octavia Records Inc. (国内盤)
備考:演奏 録音 Antonio Stradivarius モダン仕様

どちらかといえば旧世代の演奏スタイルを継承したような古風な佇まいの演奏です。 全体に手堅くまとめているので強い印象は残さないものの,地味ながら隅々まで細やかに配慮され, 緩急や強弱が丁寧に織り込まれ,伸びやかに表現されているのが好感が持てます。 音に張りと伸びがあるのも良いと思います。

録音ですが,残響が少し多めでしかも間接音比率の方が高いため,せっかくの音色が濁りがちで, ヴァイオリン本来の美しい音色を聴かせてくれる録音ではありません。 明瞭感も今ひとつ,音のヌケも良くなく,もどかしさを感じます。 これは本当に残念に思います。 また,それほど気になるものではないものの,ホール?でのセッション録音にしては低域のノイズが少し大きめに感じられます。 もう少し配慮して欲しいところです。

(記2018/03/21)

■ アナ・ゲッケル Anna Göckel

レーベル:NoMadMusic
収録曲:全集
録音:Église du Bon Secours, Paris, in May 2017
所有盤:FF003 (P)(C)2018 NoMadMusic (輸入盤)
備考:演奏 録音 Violin: Giovanni Tononi 1690 モダン仕様

端正で美しい好演奏。 音色も伸びやかで透明感があり,爽やかな響きをもたらしていて印象的です。 表現自体はオーソドックスで強く主張する演奏ではありませんが, 気持ちよく聴ける良い演奏でした。 技術的にも全く問題ありません。

録音ですが,少し残響を伴っていて音色に影響しているものの, 音の抜けや伸びは保たれていますし,楽器の質感やニュアンスも感じ取れるので, 十分良好と言える録音です。

アナ・ゲッケルは1992年生まれ,フランスのヴァイオリニスト。 名前の日本語表記を当初「アンナ・ゴッケル」としていましたが,通販サイト等を参考に「アナ・ゲッケル」に変更しました。

(記2018/02/17)
(修2018/04/15)

■ 川田知子 Tomoko Kawada

レーベル:MEISTER MUSIC
収録曲:ソナタ第1番,第2番,パルティータ第1番
録音:Nanso Bunka Hall, Chiba, 30th & 31th March 2017
所有盤:MM-4013 (P)(C)2017 MEISTER MUSIC (国内盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様
レーベル:MEISTER MUSIC
収録曲:ソナタ第3番,パルティータ第2番,第3番
録音:Nanso Bunka Hall, Chiba, 27th & 28th June 2017
所有盤:MM-4026 (P)(C)2018 MEISTER MUSIC (国内盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

日本人の謙虚でストイックな真面目さ,技術力の高さを象徴するかのような演奏。 感情移入することなく厳しく作品と向き合っています。 恣意的な「ため」や頭拍に過剰に重きを置くこともなく淡々としたリズムで進行していくのも好感が持てます。 声部の描き出しも丁寧で音楽の構造が良く浮かび上がってきます。 この品格のある古風な佇まいが良いですね。

録音ですが,残響感はあまりなく直接音が主体のため基本的には好感が持てるのですが, 録音会場の反射音が強めで音色の濁りが気になります。 好ましい響きの取り入れ方ではなく,これならない方がずっとマシです。 演奏が良いだけにこの録音は本当に惜しいと思います。

2017年秋に1枚目が,そして2018年初めに2枚目が発売となり全集となりました。 録音時期は3ヶ月空いていますが全体として演奏・録音とも統一されています。

(記2018/02/12) 2枚目を追記
(記2017/10/14)

■ 若松夏美 Natsumi Wakamatsu

レーベル:Arte dell'arco
収録曲:全集
録音:2014年3月18-20日,2015年8月12-14日,10月9-11日 コピスみよし,埼玉
所有盤:ADJ 055 (P)(C)2017 Arte dell'arco (国内盤)
備考:演奏 録音 violin: Carlo Tononi, Bologna 1700, bow: Anonymous (probably French, late 18th century) バロック仕様

一音一音丁寧に確かめるように弾かれていて少々地味で渋く内省的です。 気負いや力みのない自然体の音楽はとても懐が深く味わいがあります。 技術も確かで安心して聴くことが出来ます。

録音ですが,残響というか会場の響きが楽器の音色を少し曇らせているのが少し残念なところですが, 音の伸びやニュアンス,質感はそれなりに感じられるのでまあ悪くはないです。 響きが心地よさよりも音色を損なう負の効果の方が大きく,これならない方がマシで, もっと透明感のあるクリアな音で録ってくれていたらもっと楽しめたのにと思います。

あと,ホールでの録音としてはバックグラウンドノイズが大きめで, それほど邪魔にはならないものの,もう少し録音環境に気を遣って欲しいと思いました。 まあ低域までフラットに捉えていてリアルさに一役買っている面はありますが。

(記2018/01/27)

■ 高橋和歌 Waka Takahashi

レーベル:N.A.T
収録曲:パルティータ第3番
録音:記載なし
所有盤:NAT17181 (P)(C)2017 N.A.T co., Ltd. (国内盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

淡々とキッチリと,そして美しく整ったいかにも日本人らしい生真面目な演奏。 この控え目で清廉な感じにとても惹かれます。 技術力も全く問題ありません。

しかし,録音が今ひとつ良くありません。 残響が多く直接音よりも間接音が主として聴こえるため,明瞭感が落ち音色がくすみがちです。 せっかくの美しい音色を損なっているのが残念でなりません。 残響が多い割にはマシな方なので許せる方は多いと思いますが,私としては残念です。

高橋氏は2009年にソナタ第1番とシャコンヌを収録したディスクを発売されていました(→こちら)。

[併録曲]
ピゼンデル:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ イ短調
ダウランド(高橋和歌編):憂鬱なガイヤルド
ロージャヴェルジ:望郷 - ハンガリーの夢
パガニーニ:無伴奏ヴァイオリンソナタ イ長調 MS. 83
青森県民謡(藤本幸男編):津軽じょんがら節
アイルランド民謡(高橋和歌編):サリー・ガーデン

(記2018/01/07)

■ ミリアム・フリード Miriam Fried

レーベル:Nimbus Alliance
収録曲:全集
録音:Jerusalem Music Center, December 2016
所有盤:NI 6351 (P)(C)2017 Wyastone Estate Limited (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

同氏20年ぶり2回目,70歳での録音。 速めのテンポで淡々と淀みなく演奏される点は1回目と同様ですが, ニュアンスが多彩な円熟した味わい深い音楽に仕上がっています。 技術的にも衰えはほとんど感じさせず,正確で安定しています。 インパクトはありませんが,聴く度に感銘を受ける好演奏です。 音楽的な深化と技術の衰えが交差するベストタイミングを狙って録音されたのでしょうね。

録音ですが,残響の影響でわずかながら音色にくすみが感じられるものの, 直接音が主体で細部も聴き取れますし,楽器の質感も感じられます。 もう少し透明感,ヌケの良さがあると良かったのですが,これでもまずまず良好です。

なお,本ディスクはレーベル公式のCD-R盤です。

(記2018/01/01)

■ ミリアム・フリード Miriam Fried

レーベル:LYRINX
収録曲:全集
録音:du 8 au 13 décembre 1997 à la SALLE BLACHIÈRE
所有盤:LYR 187/188 (P)(C)1999 LYRINX (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

速めのテンポで淡々と,しかし淀みなく,そして生き生きと生気に溢れているのが良いですね(特にソナタ第3番,パルティータ第3番が秀逸)。 技術的にも万全で隙がありません。 50歳くらいでの録音ですが,フレッシュな印象を受けます。

録音ですが,少し残響が多めであり,楽器音に癖のある金属的な響きが重畳されて音色を損なっています。 この程度であれば問題ない方も多いとは思いますが,私としてはあまり良い印象ではありませんでした。 もっと楽器本来の透明感のある美しい音色を大切にした録音を望みたいところです。

ミリアム・フリードは1946年ルーマニア生まれ,イスラエル出身で, 1968年のパガニーニ国際コンクール優勝,1971年のエリザベート王妃国際コンクール優勝といったコンクール歴を持っています。

本ディスクは廃盤になってから久しく,少々入手がしづらい状況です。

(記2018/01/01) 2回目
(記2002/07/15) 1回目

■ 五嶋みどり MIDORI

レーベル:Accentus Music
収録曲:全集
録音:2016年8月8日-11日 ドイツ,ケーテン城
所有盤:KKC-9261 (ACC10403) (C)2017 Accentus Music (国内盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

2017年5月5日にNHK BSプレミアムで放送された番組の感想を記事にし,ディスクメディアでの発売を期待する, と記載していましたが,この12月にようやくBlu-ray DiscとDVDで発売されました。

演奏も録音も素晴らしいこの人類の至宝とも言うべき映像作品がディスクメディアとして発売されたことを本当にうれしく思います。

(記2017/12/30)

~~~ 以下 2017年5月5日の記事 ~~~

(ARTE concertの動画より)

レーベル:Accentus Music
収録曲:全集
録音:2016年8月8日-11日 ドイツ,ケーテン城
所有盤:※NHK BSプレミアムでの放送
備考:演奏 録音 モダン仕様

これは2017年の3月にNHK BSプレミアムで放送された番組の感想です。 本CD試聴記では放送番組は基本的には取り上げていないのですが,これは特別に感銘を受けたので取り上げることにしました。 ちょっとタイミングを逸した感はあるのですが...ご了承願います。

演奏自体は2013年の全集とほぼ変わらぬブレない一貫した素晴らしい演奏です。 この演奏を映像で鑑賞出来るのはまさに至福と言うほかありません。

そしてさらに特筆すべきはその録音です。 この曲集はバッハがケーテン宮廷楽長だった頃の作品ということで, 五嶋みどりさんがゆかりの地であるケーテン城を訪れ,城内の幾つかのフロアで録音をされています。 吹き抜けのやや容積のあるフロアでの録音もありますが,小さめの部屋での録音もあります。 コンサートホールやや教会の録音のような豊かな響きは全くありません。 これが好録音につながっています。

ソナタ第2番,第3番,パルティータ第2番はやや広めのフロアで録音されているためか,また, 少しマイクポイントが遠めなのか,部屋の響きが少し感じられますが, ソナタ第1番,パルティータ第1番,第3番はほとんど響きがなく,適正な距離感で極めて明瞭に録られています。 弓が弦に触れるときの微妙な音や左手の運指に伴う演奏雑音を含め,演奏者の発するあらゆる音が克明に聴こえてきます。 質感,音色,ヌケの良さ,どれも申し分ありません。

特に後者は私が理想とする好録音にかなり近いです(→「好録音について考える」をご参照ください)。 残響がないから鑑賞に向かない,音楽的に劣る,といったことは全くありません。 残響の有無と音楽性とは基本的に無関係であるということを,この録音は見事に証明してくれています。

ソナタ第3番とパルティータ第2番がARTE concertというサイトで公開されていました。 録音がベストの楽曲の方ではないので上記の感想が伝わらないかもしれませんが。

この人類の宝のような映像作品,ぜひディスクで発売して欲しいものです。

(記2017/05/05)

■ パトリス・フォンタナローザ Patrice Fontanarosa

レーベル:Polymnie
収録曲:全集
録音:記載なし(2016年5月 フランス,クルトンピエル)
所有盤:POL 118 130 (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

年齢によると思われる技術の衰えでわずかにキレが悪いのは否めませんが, 終始速めのテンポで前向きで勢いがあり,音楽に淀みがありません。 そしてかつ得も言われぬ味わい深さがあります。 しかし,やはりもう10年早く録音してくれてたらなぁと思わざるを得ません。

録音ですが,残響はやや多めですが,比較的近い距離で録音されているためか,直接音もそれなりに感じられ, 楽器の質感もそれなりに保たれているため,悪い印象ではありません。 もちろんもう少しクリアに録って欲しかったとは思いますが,十分許容範囲です。

フォンタナローザ氏はフランスのヴァイオリニストで,1942年生まれで現在75歳とのことです。 いつ録音されたのか明記されていないのですが,もしここ数年で録音されたのなら, かなり健闘されていると思います。

蛇足ですが,デジパックの裏面に, 「偉大なバイオリニスト パトリス・フォンタナローサが世界中で演奏を重ねてきたバッハ無伴奏ソナタとパルティータの待望の録音である。」 と日本語だけで記載されているのがなんとも不思議な感じです。

(記2017/12/09)

HMV Onlineiconに録音データが記載されていましたので, それを信じて記事を修正させていただきました(HMV Onlineに感謝)。

(記2018/02/12)

■ アンティエ・ヴァイトハース Antje Weithaas

(1)BACH & YSAŸE 1
レーベル:Avi Music
収録曲:ソナタ第1番,パルティータ第2番
録音:X 2012, Köln, Deutschlandfunk Kammermusiksaal
所有盤:8553320 (P)(C)2014 Deutschlandradio/Avi-Service (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様 Peter Greiner 2001年製
(2)BACH & YSAŸE 2
レーベル:Avi Music
収録曲:ソナタ第2番,パルティータ第3番
録音:III 2015, Köln, Deutschlandfunk Kammermusiksaal
所有盤:8553346 (P)(C)2016 Deutschlandradio/Avi-Service (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様 Peter Greiner 2001年製
(3)BACH & YSAŸE 3
レーベル:Avi Music
収録曲:ソナタ第3番,パルティータ第1番
録音:III 2015, Köln, Deutschlandfunk Kammermusiksaal
所有盤:8553381 (P)(C)2017 Deutschlandradio/Avi-Service (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様 Peter Greiner 2001年製

モダン楽器による演奏。 抑制の効いた演奏ながら,力強くキレがあり,速めのテンポを基調に緩急強弱を巧みに活かした表情豊かな演奏です。 透明感の高い音色の美しさ,和音の溶け合った響きの美しさ,隅々まで神経の行き届いた完成度の高さは本当に素晴らしいです。 これぞモダン楽器の表現力をフルに活用した,現代的に洗練された演奏と言えるのではないかと思います。

録音ですが,わずかに残響を伴いながらも楽器音を邪魔するほどではなく, 明瞭さ,音色の自然さ,透明感などどれをとっても満足できるレベルで仕上げられています。 もう少し質感を強調しても良いかとは思いますが,これでも十分良いと思います。 なお(1)はやや残響が多めで(2)(3)に比べると少し落ちます。

ヴァイトハース氏は,アルカント四重奏団の第1ヴァイオリン奏者。 (3)でバッハとイザイの無伴奏曲を収める三部作が完結しましたので,以前の感想と併せて再編しました。

(記2017/10/14) ※(3)追記
(記2016/08/07) ※(2)追記
(記2014/12/23) ※(1)

■ ヨゼフ・スーク Josef Suk

(1)
レーベル:EMI
収録曲:全集
録音:Recorded: 1970, Abbey Road Studios, London.
所有盤:5 73644 2 (P)1971 EMI Records Ltd. Compilation and digital remastering (P)&(C)1999 EMI Records Ltd. (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様
(2)2017年リマスター盤
レーベル:Warner Classics
収録曲:全集
録音:18-25. IX. 1970. Abbey Road Studios, London
所有盤:WPCS-28097/8 (P)(C)1971 Remasterd (P)2017 Parlophone Records Limited. (国内盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

往年の正統派の演奏で,力強く張りのある芯の太い音色が印象的です。 折り目正しく丁寧であり,細部まで落ち着きを持って弾き込んでいます。 真摯で格調高く,そして個性を前面に出すことなく,この曲の本来の素晴らしさを見事に描き出していると思います。

録音ですが,残響はそれほど多くはないのですが,スタジオの響きが被ってやや曇っていると同時に, 変にキンキンした癖のある音色になっています。 EMIらしいといえばEMIらしいのですが,やっぱりすっきりしない録音です。 1970年の録音としてはクオリティはあまりよくないように思います。

このディスクは長い間廃盤で手に入りにくい状況でしたが,2014年にタワーレコードが復刻をされていました(現在は廃盤のようです)。 2017年になってリマスター盤として再び現役盤復帰しました。

リマスター盤の音質ですが,基本的な音質について大きく改善されたわけではありませんが, 特に低域のレンジ感が広がり,リアリティが増しています。 マスターテープに起因すると思われる音質の悪さは変わりがなく,この点が改善されなかった(出来なかった?)のは少々残念です。

(記2017/10/09) ※2017年リマスター盤追記
(記2014/10/11) ※タワーレコード復刻情報追記
(記2012/10/27) ※2回目 加筆
(記2002/05/09)(記2002/10/07)

■ リカルド・オドリオゾラ Ricardo Odriozola

レーベル:Amethyst Records
収録曲:全集
録音:Herdla Church Askøy, Norway, March 27th 2004 - September 30th 2006
所有盤:品番なし Amethyst Records (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

意欲がよく伝わってくる,勢いのある演奏。 技術的にものすごく上手いというわけではありませんが, 自己の技術の限界を見極めて破綻寸前まで攻めてぎりぎりで踏みとどまっているという感じで, その結果なかなか聴き応えのある音楽に仕上がっています。 パルティータ第3番は弾き込み不足なのか少し粗が目立つのが残念ですが,それ以外の曲は良いと思います。

録音ですが,残響のまとわりつきがやや気になるものの, オンマイク気味で直接音が支配的なためニュアンスもしっかりと聴き取れるまずまずの好録音です。 ただしオーディオ的な品質は「並」です。

リカルド・オドリオゾラ氏の詳細はよくわかりませんが現在ノルウェーにお住まいのようです。 自主制作盤のようで,Amethyst Recordsから注文して入手しました(支払いはPayPalのみ)。 ノルウェーからご本人の名前(サイン入りの送り状も同封)で送ってきました。

(記2017/08/15)

■ ステファノ・モンタナーリ Stefano Montanari

レーベル:Paragon(雑誌)
収録曲:全集
録音:13-16 agosto 2011, Auditorium Modernissimo, Nembro
所有盤:AMS 108-2/109-2 (P)(C)2012 PARAGON (輸入盤)
備考:演奏 録音 バロック仕様

バロック・ヴァイオリンによる演奏。 かなり好き勝手にやっています。 意欲的に攻める演奏で,即興的にいろいろな表現を試しているのは良いのですが,正直ちょっとやり過ぎと思うところもあります。 面白いとは思うのですが,あまり好きになれる演奏ではありませんでした。 技術的にはかなり上手いと思います。

録音ですが,楽器音に残響がやや多めに被って音色を損なっており,中域の癖が強く, 高域に伸びない割に妙にキンキンしているなど,あまり好ましく思えませんでした。 まあそんなに悪くはないのですが,私の好きな録音ではありません。 もう少しすっきりと透明感のある音色で録音して欲しいものです。

Élite Amadeusというイタリアの雑誌の付属CD。 いつも参考にさせていただいているFeFeFe's Bar(シャコンヌ狂時代)で知ったディスク(有り難うございました)。 海外のアマゾンで買えるとのことでしたので,早速Amazon.itに注文し,無事に入手しました。 現時点で品切れになっているのでぎりぎり間に合ったようです。 ラッキーでした。

(記2017/08/05)

■ ヘンリク・シェリング Henryk Szeryng

(1)CD初期盤
レーベル:Deutsche Grammophon
収録曲:全集
録音:1967年7月 スイス
所有盤:F66G 20001/2 (419 307-2) (P)Polydor K.K., JAPAN (国内盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様
(2)OIBPリマスター盤
レーベル:Deutsche Grammophon
収録曲:全集
録音:1967年7月 スイス
所有盤:UCCG-9719/20 (453 0052) (P)1968 Deutsche Grammophon (C)2007 Universal Classics & Jazz (国内盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

思わず居住まいを正して聴きたくなるオーソドックスで格調の高い演奏。 技術的な完璧さはもとより,重音や複数の声部が絡み合う表現など,考え抜かれ,磨き抜かれていて,聴くほどにこの演奏の凄さに感心してしまいます。 しかし,いまだに輝きを失うことのない名演奏だと思う一方で,どっしりと構えた動感の乏しい演奏はさすがに時代を感じさせる古いスタイルだなぁと思うのも正直なところです。

録音ですが,残響感が少なく細やかなニュアンスまで聴き取ることのできる好ましい録音ではあるのですが, やや録音会場の響きがのって音色に癖があり,透明感や音の伸び,ヌケが阻害され,古臭い音色になってしまっているのが残念に思います。

この演奏はシェリング2回目の全集録音で,LPの時代に最初に購入して聴き込んだ思い出深いものです。 当時から高評価を得ていた名盤で,現代でもその高評価が続いているのも頷けます。 メジャーレーベルということもあって,何度も再発売され続けていますね。

現在現役で流通しているのはOIBPリマスタリングされたものだと思います。 CD化当初の盤と聴き比べてみると,それなりに鮮明さが改善されていました。 買い直した価値はあったかなと思います。

(記2017/07/17) 2回目
(記2002/06/05) 1回目

■ フランチェスコ・テオピーニ Francesco Teopini

レーベル:Brilliant Classics
収録曲:全集
録音:28 December 2014 - 14 January 2015, Palazzo di Assisi, Perugia, Italy
所有盤:95424 (P)(C)2016 Brilliant Classics (輸入盤)
備考:演奏 録音 クラシック・ギターによる演奏

クラシック・ギターによる演奏。 実に生真面目に丁寧に仕上げています。 教科書的で遊びがなく,またギターを活かすような独自編曲もあまりされていません。 あまりワクワクする演奏ではないのですが,じっくり聴くには良いと思います。 技術的にもそつがなく全く問題ありません。

録音ですが,少し残響はあるものの,ギターそのものの響きを素直に捉えた好録音です。 これも特に優れているとは思いませんが,欠点が少なく,音楽の鑑賞を阻害する要素がほとんどないのが良い点です。

(記2017/07/17)

■ イェルーン・デ・グルート Jeroen De Groot

レーベル:JDG-RECORDS(自主制作?)
収録曲:全集
録音:不明(2016年と思われます)
所有盤:ISBN 978-90-389-2557-8 (P)2016 Jeroen De Groot (輸入盤)
※Apple Musicで試聴 →ディスクを入手しました
備考:演奏 録音 モダン仕様

力強く勢いがあり,音楽に緩みが全くありません。 演奏はちょっと荒っぽく雑とも思えるところはあるのですが, 上手下手ということではなく,粗くなることを厭わず自分の目指す表現を貫き通しているように思います。 この潔さが良いと思います。

録音ですが,残響感はあまりないのですが,録音環境の響きで音色に濁りが感じられます。 比較的近くで録音しているのか,ニュアンスや質感は伝わってくるので悪くはないのですが, この濁りだけが残念でなりません。

Apple Musicで試聴しました。 デ・グルートはオランダのヴァイオリニスト。 2枚のCDと1枚のDVDが付属したハードカバーの本のようです。 Amazon.co.jpでは注文出来なかったので, 公式Webサイトからbol.comという通販サイトに飛び, オランダ語と格闘して何とか注文し,到着を待っているところです。 送料込みで約€29でした。 到着したらまたレポートします。

(記2017/05/16)

注文してから約2ヶ月,運送途中で行方不明になったのではないかと諦めかけていた頃にやっと届きました。 立派な装丁のハードカバーの本で,全集を収めたCD 2枚とドキュメンタリーのDVD 1枚が付属していました。 ドキュメンタリーは2016年3月21日に行われた教会でのコンサートの一部とインタビューが収録されています。 CDはこのコンサートのライヴではなく,おそらく同時期にセッションで収録されたものと思われます。

本自体は結構分厚いのですが,オランダ語,英語,ドイツ語,フランス語,イタリア語,スペイン語,中国語の7カ国語で記載されていて, 分量的には一般的なCDに付属している解説書程度でした。

これはDVDのメニュー画面です。なんちゅう行儀の悪い格好で弾いてるんでしょうか!(^^;

コンサート会場の教会です。

楽器のボティにマイクを付けて演奏していますね。

(記2017/07/16)

■ 杉江洋子 Yoko Sugie

レーベル:LeavesHMO
収録曲:全集
録音:13-16 December 2016
所有盤:HMOC 17839/40 (P)2017 ヒビキミュージック (国内盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

バッハだからといって何か特別なことをされているという感じではありません。 今まで長い年月をかけて積み重ねてこられた手法, すなわちベストパフォーマンスを発揮できるご自身のやり方でこの曲に向き合われたのではないかと思います。 その結果,ごく自然に語りかけてくるような,陰影に富む味わい深い演奏に仕上がっています。 ピリオド奏法を取り入れる演奏が多い昨今, モダン楽器の伝統的なスタイルの延長線上でこのような優れた演奏が生み出されたことを大変うれしく思います。

そして録音ですが,少し残響があり,やや距離感があるために残響の影響を受けているのですが, それでも直接音が主体であり,ニュアンスも伝わってきますし楽器の質感も感じ取ることが出来ます。 もう少し音色に透明感と伸びが欲しいところですが,それでもソロ楽器の録音としてかなり良好な部類に入ると思います。

ということで,演奏も録音も良い,長く聴き続けたいと思える良盤でした。

杉江洋子さんは京都出身,幼少の頃からコンクールで優秀な成績を収められ, 京都堀川音楽高等学校,東京藝術大学・大学院を卒業,神戸室内合奏団,大阪センチュリー交響楽団を経て, 現在は京都市交響楽団の第二ヴァイオリン副首席奏者を務められているとのことです。

(記2017/06/18)

■ ニコライ・マドヤン Nikolay Madoyan

レーベル:自主制作?
収録曲:全集
録音:不明
所有盤:不明 (P)2014 Nikolay Madoyan (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

オーソドックスで力強くまた整然とした立派な演奏です。 技術的にもかなり巧いです。 演奏上の傷はいくらか散見されるものの,全体のできの良さのほうが勝っているのでほとんど気になりません。特にパルティータ第2番,ソナタ第3番あたりの充実ぶりはなかなかのものです。

録音ですが,残響はやや多く残響時間もかなり長いのですが, 楽器音の直接音成分が支配的で残響はその後方にふわっと広がるように取り入れられているため, 印象は悪くありません。 音色は残響のまとわりつきの影響を受けてやや変化していますが,ニュアンスや質感は十分に伝わってきます。 もう少し直接音に透明感があれば良かったのですが。 でもこれは残響量の割に良いと思います。 私の好みではありませんが,上手く録っていると思います。

この録音,YouTubeでは全曲が公開されており, ディスクでの発売もありそうに見えるのですが, 本当にあるかどうかはわかりませんでした。 Amazon.co.jpとApple Musicでは前半の3曲のみ公開されているという中途半端な状態です。

これを全曲扱いにするか迷いましたが,演奏も録音もそこそこ良かったので, ちゃんと全曲公開されることを期待して全曲扱いとしました。

演奏者のマドヤンはWikipediaによると, 1973年生まれアルメニア出身のヴァイオリニストとのことです。

(記2017/05/25)

■ デネス・ジーグモンディ Denes Zsigmondy

レーベル:Juneau Bach Society
収録曲:全集
録音:1995年5月
所有盤:CD JBS 1001/2 Juneau Bach Society (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

気力の漲る意欲的な演奏。 年齢からくる技術的な衰えか,キレが良くないところが散見されますが,ほとんど気になりません。 むしろ勢いのある演奏で味わい深く感じさせるところなど長年の積み重ねを感じさせます。

録音ですが,少し残響が多めなのですが,直接音が主であるため明瞭感の低下や音色への影響は少なく,印象は悪くありません。 もちろん残響を抑えてもっとクリアーに録って欲しかったところですが,これでも十分許容範囲です。」

ジーグモンディ氏は1922年生まれ,ハンガリー出身,2014年に亡くなられたとのことです。 これは73歳くらいでの録音になります。

(記2017/05/13)

■ イルジー・ヴォディチカ Jiří Vodička

レーベル:Supraphon
収録曲:パルティータ第3番
録音:2014年2月10,11日,3月12,13日,4月1-3日 プラハ,マルティーネク・スタジオ
所有盤:SU 4175-2 (P)(C)2014 Supraphon (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様
併録曲: パガニーニ:『うつろな心』による序奏と変奏曲作品38
クライスラー:レスタチーヴォとスケルツォ・カプリス
エルンスト:シューベルトの『魔王』による大奇想曲作品26
イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ ニ短調作品27
パガニーニ:24のカプリース作品1より 第5番,第15番,第24番
ハース:パガニーニの主題による小変奏曲

一聴しただけで技術力の高さがわかるほどキレのある,そして音色の透明さ,美しさのある演奏です。 ヴィブラートを少し強めにかけた演奏は少し古風な雰囲気もあるのですが, 軽やかで若者らしい爽やかさを感じる好演奏です。

録音ですが,やや残響のまとわりつきが気になるものの,直接音が主体であり, 明瞭感,音色の自然さ,ヌケの良さもそこそこ確保されていてまずまず良好と言える録音です。 一般的にも良い録音の部類に入るのではないかと思います。 私としてはもう少し残響を抑えてすっきり録って欲しかったと思いますが,十分許容範囲です。

ヴォディチカ氏は1988年生まれ,チェコ出身のヴァイオリニスト。 本ディスクは26歳頃の録音になると思います。 今後の活躍に期待。

(記2017/05/03)

■ オレグ・クリサ Oleh Krysa

レーベル:EXTON
収録曲:ソナタ第1番,パルティータ第2番
録音:2016年8月29日,11月28日 神奈川・相模湖交流センター
所有盤:OVCL-00615 (P)(C)2017 Octavia Records Inc. (国内盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様 Boris Sverdlik, Cremona 2013, バロック・ボウ使用
併録曲: バッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲ニ短調 BWV 1043

往年の巨匠のごとく,古風なスタイルで格調高く奏でられた真面目で立派な演奏です。 年齢からくる技術の若干の衰えは感じるものの,極めて安定しており,含蓄のある演奏を聴かせてくれます。 モダン楽器ですが,バロック・ボウを使っているためか,厳しさの中にも柔らかな表情が見られるのも良いと思います。

録音ですが,やや距離感があり,残響が主で直接音がほとんど感じられず,音色は濁りバランスは崩れ, 本来もっているであろうニュアンスもかなり失われているように思います。 オーディオ品質は良いのかもしれませんが,楽器本来の音色がこんなに失われてしまっては意味がありません。 残念な録音です。

クリサ氏は1942年生まれ,ウクライナ出身で,ダヴィド・オイストラフの高弟とのことです。 1963年のパガニーニ国際コンクール優勝,1966年のチャイコフスキー国際コンクール第3位などの実績のある実力者で, ベートーヴェン弦楽四重奏団の第1ヴァイオリンも務めたとのこと。 これは75歳くらいでの録音になりますが,20年くらい前に録音していてくれたらなぁと思ってしまいます。

(記2017/04/30)

■ アレクサンドラ・クルス Aleksandra Kuls

レーベル:DUX Recording Producers
収録曲:パルティータ第2番
録音:The Concert Hall of the Krzysztof Penderecki European Centre for Music in Lusławice, Poland.
所有盤:DUX 1145 (P)(C)2016 DUX (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様 Pietro Guarneri(?) (1750)
併録曲: ペンデレツキ:ラ・フォリア
プロコフィエフ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ作品115
イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第5番

オーソドックスで教科書的に整った演奏。 時折装飾が入るものの,どちらかといえば旧世代の様式を引き継いでいるように思います。 技術的にも優れ,隅々までコントロールが行き届いています。 まだまだ個性を発揮するまでにはなっていませんが,これを起点に伸ばしていけばよいと思います。 今後の成長と活躍に期待。

録音ですが,少し残響感があり音色に影響しているものの,音自体に伸びがあり,印象は悪くありません。 楽器の質感やニュアンスも感じられます。 ソロ・ヴァイオリンの録音としては標準的で,客観的にも良好な部類に入るように思います。

アレクサンドラ・クルスは1991年生まれ,ポーランド出身の若手ヴァイオリニスト。 ヨーゼフ・シゲティ国際コンクール等で優秀な成績を収めたようです。

(記2017/04/16)

■ ナタン・ミルシテイン Nathan Milstein

(1)(CD化初期の頃の盤)
レーベル:Deutsche Grammophon
収録曲:全集
録音:London, Conway Hall (Wembley, Brent Town Hall), 2, 4, 9/1973
所有盤:POCG-3305/6(423 294-2) (P)1975 Polydor International GmbH (国内盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様
(2)Deutsche Grammophon THE ORIGINALS (OIBPリマスター盤)
レーベル:Deutsche Grammophon
収録曲:全集
録音:London, Conway Hall (Wembley, Brent Town Hall), 2, 4, 9/1973
所有盤:457 701-2 (P)1975 Polydor International GmbH (C)1998 Deutsche Grammophon GmbH (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様
(3)TOWER RECORDS VINTAGE SA-CD COLLECTION Vol. 3
レーベル:Deutsche Grammophon
収録曲:全集
録音:1973年2月,4月,9月 ロンドン,コンウェイ・ホール
所有盤:PROC-2010/1 (P)1975 Deutsche Grammophon GmbH, Berlin (国内盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

ミルシテインが70歳になる頃に録音された2回目の全集。 もしかしたら技術的な衰えがあるのかもしれませんが,そんなことは全く感じさせません。 紛れもなくヴァイオリンによって奏でられている音楽なのに,ヴァイオリンが意識からふっと消え,純粋に音楽だけが鳴り響く感じがするのです。 ヴァイオリンという楽器の持つ制約から音楽を解き放っているとでも言いましょうか。 数多の演奏とは明らかに違う次元・高み・深みに達していると思います。 私が言うまでもありませんが,本当に素晴らしい演奏ですね。

録音ですが,やや多めに残響が取り込まれており,楽器音に被って音色を濁しており, 鮮度やニュアンスを損なう要因になっていますが,それでも楽器音をしっかりと捉えているので許容範囲です。 この程度であればむしろ好む方がいらっしゃるとは思いますが,私としては1回目の全集のようなストレートで生々しい録音でないのが本当に残念でなりません。

なお,(1)の初期の頃のCDに比べ,(2)のOIBPリマスター盤は鮮度が改善され,良い状態になりました。 タワーレコードの企画盤として2017年にSACDハイブリッドで発売された(3)は,さらに付帯音的な雑味が軽減われ,わずかですがさらに改善がみられました。 まあ(2)のOIBPリマスターがそこそこ良い品質でしたので,欲を言わなければ(2)でも十分かもしれません。 とはいえ,最良の状態で復刻されたことは喜びたいと思います。 タワーレコードに感謝!

(記2017/04/16) 3回目
(記2012/11/07) 2回目
(記2002/05/20) 1回目

■ ナタン・ミルシテイン Nathan Milstein

レーベル:EMI
収録曲:全集
録音:26 & 31 March 1954(Sonata No.1), 6 February 1956(Partita No.1), 27 December 1956(Sonata No.2), 23-24 March 1954(Partita No.2), 5, 16, 17 March 1956(Sonata No.3), 28 December 1955(Partita No.3), Studio A, 46th Street Studio, NY.
所有盤:ZDMB 64793 2 3 (P)1955-66 (C)(P)1993 Angel Records(compilation and digital remastering) (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

恐ろしいほどにキレが良く,その潔さが痛快極まりなし! 変な言い方ですが,過剰なまでにコントロールが効きいたオーバーシュートする音楽表現が何とも言えません。 最も覇気のある充実した時期の巨匠の強烈な個性に圧倒される,ものすごく尖った演奏です。 リピートの省略が多いのが残念ですが,時代を思えば仕方なしですかね。

これは1回目の全集録音で,一般的には1973年の2回目の全集の方が評価が高いと思いますが, この1回目の録音も捨てがたいです。 私はむしろ1回目よりこちらの方が好きかもしれません。 ミルシテインの全盛期の魅力がこの全集に凝縮されていると思うのです。

録音はスタジオでのモノラル録音で,わずかに残響が感じられる曲もありますが,その影響はほとんどありません。 少し距離感があって,そのためにわずかに明瞭感,鮮明さが落ちているのが残念ですが, それでもこの時期のモノラル録音としてはかなり良好な状態と言えると思います。 演奏をストレートに生々しく伝えてくれる点を大きく評価しました。 好録音です。

もちろん1950年代半ばの録音なのでクオリティは良いとは言えませんし, マスターテープの問題と思われる音の曇りが感じられるところもあります。 古い録音なのでこれは仕方ありません。

この演奏は時々復刻はされているようですが,もしかしたら今は現役盤がないかもしれません。 入手困難ではないと思いますが...

(記2017/04/16) 4回目
(記2012/11/04) 3回目
(記2008/08/01) 2回目
(記2002/09/05) 1回目

■ ヨーゼフ・シゲティ Joseph Szigeti

(1)旧盤
レーベル:Vanguard Classics
収録曲:全集
録音:1959年6月~1960年4月※1
所有盤:KICC 8585/6 (P)1960 King Record Co., Ltd. Recorded by Omega Record Group, USA (国内盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様
(2) xrcd24復刻盤
レーベル:Vanguard Classics
収録曲:全集
録音:1955年10月17-18(ソナタ),1955年7月(パルティータ第1番),1955年10月18,20日(パルティータ第2番),1956年3月2日(パルティータ第3番) ニューヨーク CBS 30丁目レコーディング・スタジオ
所有盤:GCAC-1002-3 (P)1955,56 (C)2017 Global Cultures Agency, Inc. (国内盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

シゲティの演奏は孤高の演奏であると高く評価される一方で, 技術的に難があるとか,技術の衰えが否めないとか,たどたどしいとか, いろいろと欠点も指摘され,評価が分かれていると思います。

私も2002年に初めて聴き,最初の感想を書いたときには, 技術的な不安定さが気になってどちらかといえば否定的な感想を持ったため, それ以来手にとって聴き返すことはありませんでした。

高音質盤で復刻されたのを機に,ほぼ15年ぶりに聴き直してみました。 不思議なことに,技術的に難があるとか,衰えが感じられるとか, そういった技術面に課題を残す演奏には全く聴こえませんでした。 彼にとっては演奏を隅々まで完璧に仕上げることよりも, 音楽に全身全霊で魂を込めることの方が優先事項であり, この演奏は彼が進んで選んだ表現様式による完璧に完成された作品そのものなのであろう, と思えてきました(→という自分に一番驚いています(^^;)。

この演奏が好きかどうかはまた別問題なのですが,少なくとも楽しめるようにはなりましたし, いろいろと発見があったのは大きな収穫です。

録音はモノラルで,スタジオで録音されたようです。 曲により多少のばらつきはありますが,残響は少なめで楽器音を明瞭に捉えていて, また,古い録音ですが音の曇りは最小限で聴きやすい録音です。 1955, 56年の録音としてはまずまず良好と言えると思います。

xrcd24の新しい復刻は,わずかながら雑味が減少し,ぼやけたところすっきりとがシャキッとした印象があります。 ただ,旧盤もそれほど悪かったわけでもなく,また,マスターに起因する音の傷は同様にあるため, 驚くほどの改善にまではいかなかったようです。 とはいえ,最良の状態で復刻されたことを喜びたいと思います。

※1: このディスクの解説では録音年が1959~60年になっていました。 正しい録音年は1955~56年で,最近のものは訂正されているようです。 2002年にこの件について調べた記事を書いていました(→こちらとこちら)。

(記2017/04/08) 2回目
(記2002/07/25) 1回目

■ ミシェル・ロス Michelle Ross

レーベル:Albany Records
収録曲:全集
録音:December 4 and 5, 2013; January 31 - February 2, 2014; March 19-21, 2014 at the American Academy of Arts and Letters, New York
所有盤:TROY1662/63 (P)(C)2017 Albany Records (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

モダン楽器による演奏。 しなやかで伸びのあるフレージングが素晴らしい好演奏。 滑らかな音の移り変わり,音色の美しさも特筆できます。 技術的にも優れ,コントロールが隅々まで行き届いています。 これは出色の出来映えで,思わず聴き惚れてしまいます。

録音ですが,若干の響きのまとわりつきはあるものの,楽器音を適度な距離感でニュアンス豊かに捉えています。 弓が弦に触れる微妙な感触まで聴き取ることができます。 好録音です。

(記2017/04/01)

■ モブセス・ポゴシアン Movses Pogossian

レーベル:NEW FOCUS RECORDINGS
収録曲:全集
録音:December 21-23, 2015 and May 28-30, 2016, at the Recording Studio of the UCLA Herb Alpert School of Music
所有盤:FCR178 (P)(C)2017 Movses Pogossian (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

全体に遅めのテンポで音楽が進行していきます(なのでCD 3枚組になっています)。 ところどころ大見得を切るようなところはありますが,どちらかといえば正統派の演奏であり, 技術的にもそこそこの安定感があり,ハーモニーも美しく,充実感があります。 正直言うと中にはテンポが遅すぎてちょっと退屈してくる楽章ないことはないのですが, 全体としては好印象でした。

録音ですが,スタジオでの録音のためか,残響は控え目であり,適切な距離感で, 弦の上を滑る弓の微妙なニュアンスも聴き取ることが出来る好録音です。 オーディオ的にはあまり魅力がない録音かもしれませんが, 地味でもこういう楽器の質感を大事にした録音が良いのです。

ポゴシアン氏はソ連出身のヴァイオリニストで,1986年第8回チャイコフスキー国際コンクール ヴァイオリン部門第7位の入賞歴があります。 現在はアメリカのUCLA Herb Alpert School of Musicのヴァイオリンの教授とのことです。

(記2017/03/19)

■ エンリコ・オノフリ Enrico Onofri

レーベル:Anchor Records
収録曲:ソナタ第1番,パルティータ第2番,第3番
録音:2014年12月16日-22日 イタリア,クレマ "Cascina Giardino music hall"
所有盤:UZCL-1030 (P)(C)2016 Anchor Records (国内盤)
備考:演奏 録音 バロック仕様 a=390Hz

バロック楽器による演奏。 旧来からの演奏とはかなりアプローチの異なる表現が随所に見られるという点でかなり面白い演奏です。 ある意味バロック楽器による演奏に対する期待を裏切らないと言えます。 ただ,これが好きかと言われると話は別で, 個人的にはバロック楽器の演奏のこういうところが苦手でどうしてもこれが好きにはなれません。 すみません。

録音ですが,録音会場の響きを活かした,そして過剰になることなく高いクオリティで収録しているという点で優秀録音と言えるかもしれない録音なのですが, やはり響きを重視した録音のトレードオフとして楽器音がくすんでおり, 楽器の質感が失われているのが私としては好ましく思えません。 もっと楽器そのものの音色を大事にした録音をして欲しいものです。

(記2017/03/12)

■ タマーシュ・フェイェシュ Tamás Fejes

レーベル:Discovery Music & Vision
収録曲:全集
録音:4-7, November 2014 and 28-31, October 2015
所有盤:DMV120 (P)2016 Tamás Fejes (C)2016 Discovery Music & Vision (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

オーソドックスで,丁寧に演奏しています。 技術的にも安定感があり,音色も綺麗です。 特徴のある演奏ではありませんが,耳に馴染みやすく安心して聴くことが出来ます。

録音ですが,少し残響が多めで楽器音に被り,まとわりつきが少々鬱陶しく感じられます。 また音色も影響を受けて癖がついており,明瞭感も落ちています。 そんなに悪くはないとはいえ,もう少しすっきりとヌケ良く明瞭に録って欲しいところです。 ちょっともったいないと思います。

タマーシュ・フェイェシュはハンガリー出身のヴァイオリニストで, フィルハーモニア管弦楽団に所属していたことがあり, 最近はロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団のアシスタント・リーダー,および, 英国王立スコットランド音楽院の非常勤講師とのことです。

(記2017/02/05)

■ 浦川宜也 Takaya Urakawa

レーベル:ヒビキミュージック
収録曲:全集
録音:2015/12/16, 2016/1/30, 2/26, 3/28, 4/14-15
所有盤:HMOC 17836/8 (P)(C)2016 HIBIKI MUSIC (国内盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

浦川氏34年ぶり2回目の録音で,75歳くらいの録音になります。 年齢からくる技術の衰えはいかんともし難く,相当キレはなくなり音程を含めて不安定です。 しかし,年齢の積み重ねから来る得も言われぬ味わいがあるのも確か。

録音ですが,少し残響が取り入れられていて音色に影響を与えているものの, 楽器の質感もそれなりに感じられて,まずまず良好です。 ソロヴァイオリンの録音として標準的で悪くありません。 もちろん個人的にはもっと残響を抑えてすっきりした音で録って欲しいと思っています。

でもやはりこれは浦川氏とご縁がある方に向けたアイテムなのでしょうね。

(記2017/01/07)

■ 浦川宜也 Takaya Urakawa

レーベル:Fontec
収録曲:全集
録音:1979年-1982年
所有盤:FOCD 2505/6 FONTEC RECORDS (国内盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

旧世代の古めかしい演奏スタイルを頑なに守り続ける職人気質の頑固オヤジ的演奏(^^;。 遅めのテンポで一音一音力を込め,ヴィブラートをしっかりかけて弾いています。 弓の圧力が強くひたすらハイテンションで音が少々ギスギスしています。 技術的なキレが良いとは言えませんが,地に足の付いた音楽を聴かせてくれます。 渾身のシャコンヌは一聴の価値ありです。 リピートの省略があるのが少々残念です。

録音ですが,比較的オンマイクで残響を抑え気味にしていますが,響きの質があまり良くなく楽器音が少し濁っています。 惜しいと思います。 ソナタ第3番,パルティータ第3番は少し良い状態です。

浦川氏1回目の録音で,40歳頃の録音と思われます。 15年ほど前に1回目のレビューを載せていましたが,久しぶりに聴いてみてだいぶ印象が異なりました。 再レビューです。

(記2017/01/07) 2回目
(記2002/07/10)

■ イ・ソンイル Sungil Lee

レーベル:Arcade 9
収録曲:全集
録音:不明(2016?)
所有盤:WMED 0520 (P)(C)2016 Arcade 9 (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

モダン楽器の伝統的なスタイルによるオーソドックスな演奏。 技術的にものすごくキレるわけではありませんが,安定感はあって安心して聴けます。 特徴のある演奏ではありませんが,真摯に音楽に向き合う姿勢が伝わってくる良い演奏だと思います。

録音ですが,やや残響が多めで楽器音へのまとわりつきが少し気になりますが, その影響は少なめで許容範囲です。 ソロ・ヴァイオリンの録音としては標準的だと思います。 もちろん私としては残響をもっと抑えてすっきりと伸びのある音で録って欲しかったとは思います。

(記2017/01/02)

■ チョン・キョンファ Kyung Wha Chung

レーベル:Warner Classics
収録曲:全集
録音:19-21.II, 24-26.III, 3-5.IV & 30.V-1.VI.2016, St George's Brisol
所有盤:0190295944162 (P)(C)2016 Parlophone Records (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

人間的な魅力に溢れる快演! 力を抜くことで音楽的な表現の幅が格段に広がっています。 陰影に富み情緒豊かであり,彼女自身の言葉でバッハに対する思いが語りかけられているようで大変魅力的です。 かつてのあらん限りの情熱を注ぎ込んだ演奏とは目指す方向性が明らかに変わった,まさに新境地の演奏と言えると思います。

録音ですが,やや残響が多めであり,その影響で少し音色がくすみ,まとわりつきですっきりしません。 旧EMI的音づくりが少々不満ですが,それでも楽器の音はしっかりと捉えられている方なので,許容範囲ではあります。

満を持しての全集録音が素晴らしい出来でホッとする気持ちがある一方で, やはり全盛の時期に全曲録音がされなかったことを残念に思う気持ちが余計に強くなります。 ファンとしては満を持すことなくその時々の姿を残していってくれたらそれが一番うれしいと思うのです。

(記2016/12/24)

■ エドゥアルド・メルクス Eduard Melkus

レーベル:Particleboard Productions
収録曲:ソナタ第2番,パルティータ第2番,第3番
録音:Karlskirche, Vienna, August 1975
所有盤:(C)2015 Particleboard Productions (輸入盤)
備考:演奏 録音 バロック仕様 Aegidius Klotz in original mensur

バロック楽器による演奏。 1975年のライヴ録音。 あと,ソナタ第3番から第3楽章 Largoも収録されています。

ライヴらしい勢いのある演奏であり,その勢いに身を委ねているというか, 赴くままに即興的に表現を展開していっているような演奏です。 一方で,細部にこだわらない粗削りな演奏なので,つきつめたような完成度はありません。 これもライヴならではの1回限りの演奏を楽しむ,というところでしょう。 シャコンヌの演奏時間が10:26というところからもその勢いが想像できると思います。

録音ですが,残響が多い上に,まるでラジカセで録ったような音であり, 環境ノイズもかなり多く,全く録音状態は良くありません。 中低域が薄く帯域バランスも大きく崩れています。 高域がまずまず出ているので曇りは少なく,この点だけは救いと言えますが, 商用の音源としては全くもって不足と言わざるを得ません。 同氏の貴重な演奏の記録として捉えるべき録音なのでしょうね。

あと,カップリングとして,フーガの技法からCONTRAPUNCTIS XIV (Completion - Eduard Melkus)も収録されています。 このディスクはMARAIS MUSIC STUDIOというサイトで販売されているのを見つけました。 ほとんど自主制作のような感じです。

(記2016/07/24)

■ キャロライン・アドメイト Caroline Adomeit

(1) BACH to TANGO
レーベル:自主制作
収録曲:パルティータ第2番
録音:不明
所有盤:(P)2011 Caroline Adomeit (輸入盤) *Apple Music
備考:演奏 録音 モダン仕様
(2) BACH to JAZZ
レーベル:OEHMS Classics
収録曲:パルティータ第3番
録音:October 2 & 3, 2011, at Großer Konzertsaal, Hochschule für Musik und Theater, München
所有盤:(P)2011 (C)2012 OehmsClassics (輸入盤) *Apple Music
備考:演奏 録音 モダン仕様

モダン楽器による演奏。 淀みのない軽快なテンポで進行する気持ちのよい演奏。 技術的にもキレがあり安定しています。 表現自体は高いレベルでバランスが取れており,ノーマルで癖がなく聴きやすいのですが, ごく標準的な感じなので少し印象には残りにくいかなと思います。

録音ですが,少し残響が多めですが,直接音もしっかりと捉えられているので明瞭感はあり,印象は悪くありません。 もう少し残響を抑えて透明感のある音で録ってくれていれば良かったのですが,これでも十分許容範囲でしょう。 屋外の車の往来のノイズが少し気になります。 鑑賞の邪魔になるほどではありませんが,外来ノイズにはもう少し気を遣って欲しいところです。

公式Webサイトがあります。 キャロライン・アドメイトはドイツ系の英国人で,ハンブルクとミュンヘンに留学,オランダでは名手ヘルマン・クレバースから教えを受けたとのことです。

(記2016/07/03)

■ 伊藤亜美 Ami Ito

レーベル:TC Records
収録曲:パルティータ第2番
録音:2015年10月26-27日 聖ヨハネ ネポムク教会(ウィーン)
所有盤:TCR2016A (C)2016 TC Records (国内盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

モダン楽器による演奏。 端正で大変美しい。 自然体であり,伸び伸びとした表現が気持ちの良い好演奏です。 技術的にも上手く,隅々まで気配りが行き届き,高いレベルで仕上げているのはさすが日本人演奏家と言いたいです。 今後のご活躍にも期待します。 是非全曲録音を。

さて録音ですが,教会で録音されているということもあり,ものすごく残響時間が長いです。 ここまで残響時間が長いのも滅多にないと思います。 しかし,直接音が比較的きちんと捉えられているので, これだけの残響がありながら残響の被りによる音色への影響は少なめで,私の感覚でもぎりぎり許容範囲です。

しかしながら,やはり楽器音へのまとわりつきが鬱陶しく,本来の音色の伸びやかさが阻害されていると思いますし, あまりに残響時間が長いため,過去の響きが混じり合って混沌とし,これは音楽的にどうなんだ?という気もします。 実際にその会場で聴くには良いにしても,録音にした場合には「過ぎたるは及ばざるがごとし」ではないかと。 確かに雰囲気はありますし,残響の取り入れ方としては良くできている方だと思いますが, 私は楽器から放出される音をもっとストレートに聴きたい!と強く思います。

アルバムのタイトルは「A」(バッハ バルトーク ヴァイオリン無伴奏作品集)。 併録曲として,バルトークの無伴奏ヴァイオリン・ソナタSz.117と, バッハの無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番から第3楽章ラルゴが収録されています。

なお,このラルゴだけは東京の紀尾井町スタジオで録音されたものですが,教会で録音されたようなものすごい残響が付加されています。 他の収録曲と印象を揃えるために人工的に残響を付加したものと想像します。 実際,ちょっと聴いた印象ではかなり似た音響になっています。 しかし,この響きは教会の響きとは全く異なり,ものすごく演出色が強く,また中高域の成分が不自然に多めで極めて不快です。 この演出はこのアルバムの品位,価値を著しく貶めています。 こういうのは本当にやめていただきたい。 (もしこれが自然な響きだというのであれば申し訳ありません。でも不快には違いありません。)

伊藤亜美さんの公式Webサイトがあります。 昨年ご結婚され,2016年よりアーティスト名を「尾池亜美」から「伊藤亜美」に変更して活動されているとのことです。

(記2016/06/05)

■ マーク・キャプラン Mark Kaplan

レーベル:Bridge Records
収録曲:全集
録音:The American Academy of Arts and Letters, December 10-12 and 16-18, 2011
所有盤:BRIDGE 9460A/B (P)(C)2016 Bridge Records (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様 Antonio Stradivari in 1685 "The Marquis"

キャプラン氏のほぼ10年ぶりとなる2回目の全集録音。 演奏の基本的な解釈は1回目からあまり変わっていないように思います。 そして,技術力の高さ,キレの良さはそのままに,細やかな緩急強弱によって, 柔らかくそして深みのある陰影に富んだ音楽に進化しています。 1回目のストレートな演奏も大変魅力的でしたが, この演奏も大変素晴らしいです。

録音ですが,わずかに残響感があるものの,楽器音をしっかりと捉えているので印象は悪くありません。 ただ少し高域の伸びが不足してモゴモゴしているのが惜しいです。 1回目の録音と今回の録音の中間くらいの録音が良かったのですが。

キャプラン氏は2005年からインディアナ大学ジェイコブズ音楽院の教授とのことです。

(記2016/05/29)

■ マーク・キャプラン Mark Kaplan

レーベル:Mitch Miller Music
収録曲:全集
録音:Recorded at Concordia College: 1/1991, 6/1991, 1/1992
所有盤:MMM 14630-2 (C)1995 Mitch Miller Music (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様 Antonio Stradivari in 1685 "The Marquis"

一聴しただけで情感溢れる表現に魅了されてしまいました。 技術力の高さ,抜群の切れ味にも脱帽! 奇を衒わないストレートな表現と相俟って,この曲の造形的美しさをくっきりと浮き彫りにしています。 気持ち良いくらいにシャープなのに,緊張感よりもむしろ暖かさを感じる, そんな豊かな表現力が本当に素晴らしい。 細身で透明感ある音色もとても美しいです。 感動しました!

録音ですが,残響感はあるものの,直接音が主であり,残響の被りの影響は少ないです。 明瞭感,解像感が高く,演奏の細部までしっかりと聴こえてきて好印象です。 帯域バランスが高域に偏っていて音色のバランスがやや崩れているのは惜しいところですが, 残響による音色への影響は最小限で,全体として良いとは言えませんが,これならまあ納得できます。

キャプラン氏は2004年の1回目のレビュー当時はUCLAの教授とのことでした。

(改訂2016/05/29)
(記2004/06/22)

■ アニコ・コヴァーチュ Anikó Kovács

レーベル:TON 4 RECORDS
収録曲:パルティータ第2番,第3番
録音:不明
所有盤:(C)2008 TON 4 RECORDS (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

モダン楽器による演奏。 無骨で不器用なくらい生真面目な印象を受ける演奏で,少し一本調子な気がします。 決して技術的に下手ではないのですが,ちょっとキレに欠けるかな思うところが散見されます。 カップリングのイザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタが意欲的な演奏で, それに比べるとバッハは少しかしこまり過ぎのように思います。

録音ですが,残響感がほとんどなく,演出感もほとんどない生録的な録音で, 目の前で(しかし適切な距離感で)弾いているような生々しい感じがすごく良いです。 細かいニュアンスまで聴き取れる,私の好きな録音です。 ただ,オーディオ的なクオリティが良くなく,特にパルティータ第2番ではブツブツといったノイズが乗ることがあったり, 編集の痕ではないかと思われるような不自然な音のつながりがあったりします。 これはとても残念です。

“Masterpieces for Solo Violin”と題されたアルバムで,イザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番,第3番がカップリングされています。 今回はApple Musicでの試聴であり,ディスクの発売があるかどうかは確認できませんでした。

(記2016/05/03)

■ エルファ・ルーン・クリスティンスドティル Elfa Rún Kristinsdóttir

レーベル:自主制作
収録曲:パルティータ集
録音:不明 (2016/03/20発売)
所有盤:(C)2016 Elfa Rún Kristinsdóttir (輸入盤)
備考:演奏 録音 バロック仕様

バロック楽器による演奏。 すっきりとしたスムーズな表現が良いと思います。 技術的にも上手いですし,細やかで神経が行き届いた整った演奏です。 音色も透明感があり美しいです。 インパクトの強い演奏ではありませんので印象が残りにくいですが, そつなく上手くまとめた佳演だと思います。

録音ですが,やや残響が多めで残響時間も長め,まとわりつきが気になり, 音色も少しくすんでしまっていますが,ヌケが悪いところまでは行かず,ぎりぎり許容範囲というところです。 残響が許せる方なら問題ないと思います。 もちろん私としてはもっと残響を抑えてすっきりと録って欲しかったと思いますが。

公式Webサイトがあります。 今のところ配信のみでディスクでの販売はないようです。 私はAmazon.co.jpで入手しました。 MP3 256kbps(VBR)でした。 なお,CD BabyというサイトからはMP3 320kbpsまたはFLACでダウンロード購入できるようです。

(記2016/05/03)

■ ミドリ・ザイラー Midori Seiler

レーベル:Berlin Classics
収録曲:ソナタ集
録音:Johann-Sebastian-Bach-Saal from September 26-28, 2015
所有盤:Berlin Classics 0300721BC (P)(C)2016 Edel Germany GmbH (輸入盤)
備考:演奏 録音 バロック仕様 Andrea Guarneri

緩徐楽章はじっくりと,フーガと終楽章は快活に,緩急強弱を駆使して彫りの深い音楽に仕上げています。 これはパルティータ集と同じなのですが, ソナタ第3番だけはフーガも終楽章もリズム感というかビート感が希薄で, なんでこの表現を選択されたのか疑問符が付きます。 ここだけが少し残念なところです。

録音ですが,残響が多めでかつ直接音よりも残響音の方がやや勝っているため, 明瞭感が落ち,音色がくすんでしまっています。 パルティータ集よりも少し悪いように思います。

ミドリ・ザイラーは,ベルリン古楽アカデミーやアニマ・エテルナでソリストやコンサート・ミストレスとして活躍するヴァイオリニスト。 母が日本人,父がドイツ人で,生まれが大阪,ザルツブルグ育ち,とのこと。

パルティータ集から6年を経てのソナタ集の録音で全集となりました。 以下に,パルティータ集のレビューを併記しておきます。

(記2016/04/23)
レーベル:Berlin Classics
収録曲:パルティータ集
録音:09-12.11.2009, Johann-Sebastian-Bach-Saal im Schloss Kothen
所有盤:Berlin Classics 0016722BC (P)(C)2011 Edel Germany GmbH (輸入盤)
備考:演奏 録音 バロック仕様

バロックヴァイオリンでの演奏。 緩急強弱が激しく非常にダイナミックで意欲的です。 しかしそれが自然な呼吸感の中で行われているため,不自然さも嫌みも感じることなくすんなりと受け入れられます。 この人の音楽性の高さ,センスの良さを示していると思います。

録音ですが,残響は多めに取り入れられていますが,直接音主体で明瞭感と音の伸びがあって好印象です。 やや高域がきつめですが,近めで録っているためであって自然さを失うものではなくまったく問題ありません。 もちろん私としてはもっと残響を抑えてすっきりと録って欲しかったとは思いますが,十分良好と言えます。

(記2011/06/16)

■ レイチェル・バートン・パイン Rachel Barton Pine

レーベル:AVIE
収録曲:全集
録音:16-18 April, 28-30 May, 29 & 31 August 2015, St. Pauls United church of Christ, Chicago
所有盤:AV2360 (P)(C)2016 RBP Music, LLC (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様 Guarneri 'del Gesù', Cremona, 1742, the ex-Bazzini, ex-Soldat

モダン楽器による演奏。 淡々としていますが,現代的,クールで洗練された美しさを感じます。 曲によっては装飾も積極的かつ大胆に取り入れ,変化に富んでいます。 技術的にも大変上手く,隅々まで神経が行き届いており,ニュアンスの豊かで爽やかな音楽に仕上がっています。 素晴らしい出来です。

録音ですが,背景にふわっと広がる残響が取り入れられていますが, 直接音主体に明瞭感と透明感ある自然な音色で捉えられています。 残響のまとわりつきがわずかに気になるものの,楽器の質感も良く感じられる好録音です。

レイチェル・バートン・パインは米国のヴァイオリニスト。 公式Webサイトがあります。 2004年にソナタ第1番とパルティータ第2番のディスクをリリースしています。 この録音の時にはバロック仕様のヴァイオリンを使用されていました。

(記2016/04/17)

■ 堀米ゆず子 Yuzuko Horigome

レーベル:EXTON
収録曲:全集
録音:2015年3月9日,7月21-22日,2016年1月5-6日 神奈川・相模湖交流センター
所有盤:OVCL-00587(P)(C)2016 Octavia Records Inc. (国内盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

モダン楽器による演奏。 1986-87年にソナタ集のリリースはありましたが,全集はこれが初めて。 まさに満を持しての全曲録音というところでしょう。 情熱ほとばしる渾身の演奏が素晴らしいですね。 特にシャコンヌの高揚感に胸が熱くなります。 技術が優れているのはもちろんですが,綺麗にまとめようとせず, ぎりぎりまで挑戦する意欲的演奏に感動!

ただ一点惜しいのは,パルティータの二部形式の楽章で,後半のリピートが省略されていることです。 私にとっては心底からこのバッハ演奏を楽しむための基本条件が欠けています。 素晴らしい演奏だけにこれは残念でなりません。

そして録音なのですが...残響が直接音よりも支配的で, 心地よい響きを演出するよりも楽器音を濁し,明瞭度と質感を低下させる効果しか感じられません。 残響の取り入れ方,残響の質とも良くないと思います。 楽曲によって録音の質に若干のばらつきがあり統一感がないのも全集としてあまり良い印象ではありません。

まあここまでは録音のポリシー,好みの問題なのである意味諦めざるを得ない面はあるのですが, この録音には私にとっては許容し難い欠陥があります。 少なくとも数カ所,クリップによる「ジャ」という異音が発生するところがあります。 たとえば,ソナタ第2番フーガの4:57,ソナタ第3番フーガの6:45のところです。 一瞬なのと元々録音があまり綺麗ではないので気がつきにくいのですが, 気になり出すと安心して音楽に身を委ねることが出来ません。

これは録音の善し悪し以前の製品の基本品質の問題です。 一瞬のことだからええやんと思われるかもしれませんが,私にとっては傷のあるダイヤモンドと同じです。

そもそもこのレベルのクリップに編集段階で気がつかないということはあり得ないと思います。 それをこのまま何の断りもなく知らん顔してリリースするというのはあまりに音楽愛好家に対して不誠実ですし, 演奏家にも失礼だと思います。 もし気づかずにリリースしているとしたら,品質に対する意識が低すぎてそれはそれで問題だと思いますが...

と,いろいろと文句を垂れてしまいましたが,素晴らしい演奏であったが故に, 落胆も大きかったということで...失礼しました。 世界標準の使い方から外れるこの変なパッケージにも文句を付けたかったのですが,そんなことはどうでも良くなってしまいました。

(記2016/03/31)

■ アンネグレット・ベルンシュタイン Annegret Bernstein

レーベル:a-b.violin
収録曲:ソナタ第1番,第2番,パルティータ第1番
録音:不明
所有盤:(P)2013 a-b.violin (輸入盤) (Apple Musicより)
備考:演奏 録音 モダン仕様
レーベル:a-b.violin
収録曲:ソナタ第2番,パルティータ第2番,第3番
録音:不明
所有盤:(P)2013 a-b.violin (輸入盤) (Apple Musicより)
備考:演奏 録音 モダン仕様

モダン楽器による演奏。 落ち着いたテンポで一つ一つのフレーズを丁寧に,丹念に表現をされているところが好印象です。 技術的にものすごく上手いというわけではありませんが,全く破綻をきたすことなくしっかりと仕上げています。 心に染み渡るような柔らかく優しい表現が良いと思います。 押しが弱くいささか印象には残りにくいのですが。

録音ですが,残響自体はそれほど多くはないのですが,全体に残響が被り気味で明瞭感が良くなく,音色も今ひとつ冴えません。 音像も遠めで楽器の質感も感じ取りにくいです。 少々残念な録音です。

音源はまだApple Musicが始まる前のiTunes Storeで購入したのですが, パルティータ第3番のPreludioの音声がブツブツと途切れます。 現在のApple Musicでもそれは変わらず,Amazon.co.jpで公開されている試聴音源でも同様の途切れが見られますので, 元々の音源に問題があるものと思います。 こんな欠陥がある状態で放置されているとはちょっと信じられません。 品質に対する意識が低すぎると思います。

公式Webサイトがあります。 ディスクでの発売があるかどうかは不明です。

(記2016/03/21)

■ ユリア・ベリンスカヤ Yulia Bberinskaya

レーベル:Classica Viva
収録曲:全集
録音:不明
所有盤:GTVS1302 (P)2013 Classica Viva (輸入盤) (Apple Musicより)
備考:演奏 録音 モダン仕様

モダン楽器による演奏。 オーソドックスですが,程よいテンポで淀みなく音楽が流れていくのがとても気持ちの良い演奏です。 技術のキレが素晴らしく,そして,控えめながらも気遣いの行き届いた情緒豊かな表現が良いと思います。 一部の楽章(パルティータ第1番のDoubleなど)でリピートが省略されているのが惜しいです。

録音ですが,残響が少し多めで,残響の被りによる音色のくすみがわずかにあるものの, 直接音成分とのバランスはぎりぎり取れているので,印象は悪くありません。 楽器の質感も感じ取ることが出来ます。 もう少しクリアでヌケ良く録って欲しいとは思いますが。

公式Webサイトがあります。 ディスクで発売されているようにも見えるのですが,見つけることが出来ず,以前にiTunes Storeで購入しました。 現在はApple Musicで聴くことができます。

(記2016/03/21)

■ クシシュトフ・ヤコヴィッツ Krzysztof Jakowicz

レーベル:MTJ
収録曲:全集
録音:不明
所有盤:(P) MTJ (輸入盤) (Apple Musicより)
備考:演奏 録音 モダン仕様

モダン楽器による演奏。 どちらかといえば旧世代の伝統的なスタイルですが, 長い間弾き込んで年輪を重ねてきたような味わい深い演奏。 しかも,とても意欲的,前向きで推進力があるのが素晴らしいです。

録音ですが,残響の量が多く,また残響時間がものすごく長い環境下で録音されているのですが, 直接音の比率が高いので,楽器音の音色への影響は少なく,明瞭感もそこそこあって印象は悪くありません。 残響時間が長いので響きの混濁がものすごいのですが,意外に残響の質も悪く感じません。 残響のまとわりつきはやはり気になり,これが最良とは思いませんし,肯定するつもりもありませんが, こういう残響ならまだ許せる範囲です。

クシシュトフ・ヤコヴィッツは1939年生まれのポーランドのヴァイオリニスト。 この全集,ディスクでの発売があるのかどうかわかりませんでした。

(記2016/03/13)

■ マリア・シャルギナ Maria Shalgina

レーベル:Alberich Music Production
収録曲:ソナタ第1番,第2番,パルティータ第1番
録音:不明
所有盤:(P)2013 mariashalgina.com (輸入盤) (Apple Musicより)
備考:演奏 録音 モダン仕様

モダン楽器による演奏。 力強く,また,速めのテンポで上品に淡々と弾き進める様が気持ちの良い好演奏。 印象の強い演奏ではありませんが,こういうサラッとした癖のない演奏も良いものです。 技術的にも安定感があります。

録音ですが,残響時間が長めで量もやや多めですが,直接音との比率が適切に取られているので, 比較的聴きやすくまとめられています。 ただやはり響きの影響で音色に癖が出て透明感を失っています。 惜しいと思います。

マリア・シャルギナはロシア出身のヴァイオリニスト。 公式Webサイトがあります。 本ディスクのタイトルは“Bach, Volume I”となっており, 公式WebサイトのShopではVolume IIが coming soon... となっているのですが... (Webサイトの別のページでは2015年1月のリリースとも書いてあるのですが...) どうなっているのでしょう???

(記2016/02/28)

■ マルック・ルオラヤン=ミッコラ Markku Luolajan-Mikkola

レーベル:Linn Records
収録曲:全集
録音:Church of St Catherine, Karjaa, Finland, 9-12 September 2013 and 5-8 May & 16-19 June 2014
所有盤:CKD 548 (P)(C)2015 Linn Records (輸入盤)
備考:演奏 録音 バロック・チェロによる演奏 a'=415Hz

バロック・チェロによる演奏。 原曲より五度低い調に下げて弾いています。 チェロで低い音にシフトしている上に五度低い音程で弾いているので,ものすごく重心が低く沈み込んだ音楽に聴こえます。 かなり健闘されてはいるのですが,早いパッセージでのキレの悪さ,不安定さがあるのは楽器のハンデでしょうか。 パッセージによってはモゴモゴとしてよくわからなくなるところもあります。 バロック・チェロの発音の立ち上がりの遅さにも起因しているのかもしれません。 聴き慣れてくるとだんだんおもしろさがわかってくるのですが...それでもやっぱりちょっと苦しいですね。

録音ですが,残響がかなり多く,楽器音に被って音色を大きく損なっていますし,明瞭感もかなり落ちています。 モゴモゴして混沌としてしまう原因はこの録音にもあると思います。 そして少し歪みっぽいようにも感じます。 Linn Recordsらしい雰囲気があるのはわかるのですが,こういう演奏ほどくっきりと録って楽器のハンデをカバーすべきと思うのですが。

(記2016/02/13)

■ ジェームズ・スターン James Stern

レーベル:Albany Records
収録曲:全集
録音:Recorded in Deklboum Concert Hall, Clarice Smith Performing Arts Center, University of Maryland, August 2013
所有盤:TROY 1605/06 (C)2015 ALBANY RECORDS (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様 使用楽器 Vincenzo Panormo (1781)

モダン楽器によるオーソドックスな演奏。 生真面目で手堅く,真摯な演奏であり,アクセントを効かせた引き締まった演奏ながら,あまり遊びや挑戦的なところはありませんが, たとえばソナタ第2番の終楽章では独特のアクセントでシンコペーションのような効果を出したり, ちょっとした仕掛けがみられる曲もあります。 技術的にも安定感があり安心して聴くことが出来ます。 しかしやっぱりちょっとお堅いかな,とは思います。

録音ですが,残響が多めで付帯音としてやや音色に影響を与えているものの, 直接音を主体に捉えているために,楽器の質感もニュアンスも感じられ, 十分我慢の範囲であり,良好な録音と言えると思います。

ジェームズ・スターン氏はメリーランド大学音楽学部の教授とのこと。

(記2016/01/19)

■ フリフ・スィグリョンスドーティル Hlíf Sigurjónsdóttir

レーベル:MSR Classics
収録曲:全集
録音:Recorded in the Church of Reykholt, Borgarfjörður, Iceland, in December 2000 [BWV1006], June 2001 [BWV1004], September 2002 [BWV1002], and October 2007 [BWV1001, 1003, 1005]
所有盤:MSR 1605 (P)(C)2015 Hlíf Sigurjónsdóttir (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様 使用楽器 Christophe Landon (Sonatas), G. Sgarabotto (Partitas)
レーベル:自主制作
所有盤:HSB03 (輸入盤)
備考:上記と同じ内容のディスク

正直なところ,技術的には相当苦しいと言わざるを得ません。 特にソナタ。 フーガなど止まってしまいそうですごくスリリングです(^^;。 一方,パルティータ第2番だけは他の曲に比べるとかなり出来が良いです。 この出来を考えると他の曲は明らかに弾き込み不足ではないかと思ってしまいます。 ただ全体を通して奏者の技量の範囲で丁寧に演奏をしておられるとは思いますので, 大きな破綻はなく持ちこたえているという印象で,それはそれで楽しめました。

録音ですが...すごい残響です。 しかし,楽器音の輪郭はそれなりに感じられ,質感もそこそこ伝わってくるので, 残響量の割にはマシかなと思います。 もちろん私の好みではありませんが。

フリフ・スィグリョンスドーティルはアイスランドのヴァイオリニスト。 名前の日本語表記は自信なしです。 公式Webサイトがあります。 2010年頃に自主制作のディスクを公式Webサイトから購入し,レビューしていました。 2015年にMSR Classicsより再発売されたようです。 内容は同じでした。

(追2015/12/21)
(記2010/11/19)

■ ワンチ・ホワン Wanchi Huang

レーベル:Centaur
収録曲:全集
録音:June 4, 5, and July 15, 2013 at WFMT Studios, Chicago
所有盤:CRC 3419/3420 (P)(C)2015 Centaur Records (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

モダン楽器による演奏。 こんな書き方をして本当に申し訳ないのですが,お世辞にも上手いとは言えません。 破綻こそしていないものの,フーガなどの難しい楽章ではたどたどしさが拭えません。 安全運転に徹して楽譜を正確になぞり,その中で精一杯の表現を試みる, 誠実さの感じられる,微笑ましい演奏なので好感は持てるのですが, やはり技術面での不満は大きく残ってしまいます。 音程はそんなに悪くないので,それでかなり救われているとは思います。

録音ですが,残響は背景にふわっと広がる程度であり,直接音を主体に録られています。 距離感も適度で,音色も自然,高域の伸びもあります。 生々しさもあり,楽器の質感もニュアンスもしっかりと聴き取れます。 まずまずの好録音と言えます。 時々音像がフラフラと移動したり,質が若干落ちるように感じるところがありますが,気になるほどではありません。 オーディオ的なクオリティもまずまず良好です。

演奏に若干の難はあるものの,結構楽しく聴くことができました。 録音が良好だからだと思います。 鑑賞する上で「良い録音」であることはとても大切ですね。

(記2015/11/29)

■ パヴェル・シュポルツル Pavel Šporcl

レーベル:Supraphon
収録曲:全集
録音:2015年4月16-18日,5月20-22日,6月15-17日 プラハ,チェコ兄弟団福音教会
所有盤:SU 4186-2 (P)2015 Supraphon (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

モダン楽器による演奏。 ブルーに塗装されたヴァイオリンでどんな演奏を聴かせてくれるのかと興味津々で聴きましたが, 至極真っ当,正統派の立派な演奏でした。 技術レベルも高く,整然と隅々までコントロールが行き届いていますし, 和音の響きの透明な美しさなども特筆できます。 大きな特徴はありませんが,秀演だと思います。

録音ですが,残響が多めでしかも楽器音に被って音色をくすませています。 楽器の質感はそれなりに感じられるのでぎりぎり許容範囲というところです。 残響が気にならない方には問題ないかもしれませんが, 私としてはあまり良い印象ではありません。 スプラフォンは比較的好みの録音が多いレーベルなので期待していたのですが,この録音は少し残念に思います。

シュポルツル氏は「チェコが誇る奇才ヴァイオリニスト」とのこと。 クラシックのみならず民族音楽なども演奏するそうです。 個人的にはその多様な音楽性を生かしたバッハが聴きたかったかなと...

(記2015/11/29)

■ 五嶋みどり MIDORI

レーベル:ONYX
収録曲:全集
録音:2013年8月13日-17日 WDRフンクハウス,クラウス・フォン・ビスマルク・ザール(ケルン,ドイツ)
所有盤:ONYX 4123 (P)2015 WDR (C)2015 PM Classics Ltd. (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

この達観した演奏,いきなりその境地に行ってしまわれましたか... 人間的な温かさ,謙虚で優しさに溢れた音楽。 真摯でありながら,何事にもとらわれず自由に音楽と戯れる,そんな喜びが滲み出ています。 技術的にはもちろん完璧ながらそれが前面に出てこない柔らかなタッチがこの演奏を印象づけています。

ヴァイオリンという楽器は本当に難しいと思います。 どんな手練れであってもその難しさからどうしても音楽に「歪み」が生じます。 名手はそれを完璧な技巧で,研ぎ澄まされた演奏で乗り越え消し去ろうとします。 しかし彼女はそれを遙かに通り越し,さらにその上のステージでの音楽表現を試みようとしているように思えます。 ヴァイオリンという楽器の制約から解放されたこのような音楽は滅多に聴けるものではないと感じます。

彼女は2005年にソナタ第2番を録音していますが,それは静寂の中に静かに鳴り響く内向的な演奏でした。 どちらかといえば寒色系。 しかし,今回の演奏は暖色系に思います。 2005年の録音の延長線上で突き詰められた演奏を想像していたので, 最初聴いたときは「あれっ?,あれっ?」と戸惑い,肩すかしを食らった感があったのですが, 何度も聴くうちにこの演奏にどんどん惹きつけられました。 2005年にあの路線で全集を残してくれていたら,という思いは残るものの, 今ここにこの素晴らしい演奏に巡り会えたことを本当にうれしく思います。

録音ですが,やや残響は多めで楽器音への被りが気になるものの, 素直に捉えていてニュアンスも聴き取ることができるので,良好とまでは言わないまでもまずまずというところです。 空調なのか,低域の雑音レベルがかなり高く,聴く装置や環境によってはかなり気になります。 もう少し配慮が欲しかったところです。

解説書には“Artist's note”として五嶋みどりさん自身による文章が3カ国語で載せられています。 全くの蛇足ですが,日本人ヴァイオリニストなのですから,オリジナルの解説書に日本語も載せて欲しかった...

(記2015/11/28)

■ マリー・カンタグリル Marie Cantagrill

(1)
レーベル:Art & Musique
収録曲:パルティータ第2番,第3番
録音:Saint-Serge Church, Angers, France
所有盤:Ref. AB1/1 (P)(C)2009 ABP Musique Classique Productions (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様
(2)
レーベル:Art & Musique
収録曲:ソナタ第1番,パルティータ第1番
録音:Combelongue Abbey, Rimont, France
所有盤:Ref. AB1/2 (P)(C)2011 ABP Musique Classique Productions (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様
(3)
レーベル:Art & Musique
収録曲:ソナタ第2番,第3番
録音:Combelongue Abbey, Rimont, France
所有盤:Ref. AB1/3 (P)(C)2014 ABP Musique Classique Productions (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

(1)(2)については比較的遅めのテンポでじっくりと演奏されています。 特にパルティータ第2番。 シャコンヌだけでほぼ18分,パルティータ第二番全体で約37分あります。 一方(3)は全体にもう少し速めのテンポで前向きです。

いずれにしても丁寧で真摯なところが良いと思いますが, 音色は若干固めで無機的な感じもあるので,もう少し色が欲しいかなと思います。 技術的には安定感がありまったく不安はありません。

録音ですが,3枚のディスクは全て違う場所で録音されたようですが,いずれも教会のようです。 (1)(2)は残響が少し多めです。 (3)は響きはあるもののドライな感じがします。 いずれも残響や響きによって音色はくすみがちですっきりせずあまり良いとは言えません。 中では(1)がややマシかなと思いますが, 全体通してやはり少々残念な録音です。

(記2015/09/13)

■ ジェニファー・コウ Jennifer Koh

(1)Bach & Beyond Part 1
レーベル:Cedille Records
収録曲:パルティータ第2番,第3番
録音:November 13 & 16, 2011(No.2), January 4 & 5, 2012(No.3) at the American Academy of Arts and Letters, New York City
所有盤:CDR 90000 134 (P)(C)2012 Cedille Records (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様
(2)Bach & Beyond Part 2
レーベル:Cedille Records
収録曲:ソナタ第1番,パルティータ第1番
録音:June 4-5, 10-12, 2014 at The Perfoming Arts Center, Purchase College/SUNY
所有盤:CDR 90000 154 (P)(C)2015 Cedille Records (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

小気味よいのですが,一方で,美しく,優しく柔らかい印象を残す演奏でもあります。 線がやや細く弱々しい面が感じられなくもないですが,技術的にも優れキレと安定感がありますし, 音色や和音の取り方も美しく,欠点になっていません。 強い個性の主張がなく大人しい演奏ですが,自然体であり,そこが美点と言えるかもしれません。

録音ですが,少し残響を伴っているものの,直接音を主体に楽器音を透明感ある音で捉えていて好ましいです。 音色も自然で美しいです。 もう一歩寄って質感を強めに出してくれるとなお良かったと思いますが,これでも十分に良好です。 中ではパルティータ第1番の録音状態が最も良いと思います。

併録曲: (1)Ysaye/Sonata No.2, Op.27; Kaija Saariaho/Nocturne; Missy Mazzoli/Dissolve, O My Heart, (2)Bartok/Sonata for solo violin Sz. 117; Kaija Saariaho/Frises

(記2015/08/23)

■ ティボー・ノアリ Thibault Noally

レーベル:Aparté
収録曲:パルティータ第2番
録音:2013年6月 サン・レミ教会(ベルギー)
所有盤:AP068 (P)2013 Aparté (輸入盤)
備考:演奏 録音 バロック仕様

バロック楽器による演奏。 粘りのある弓遣いがいかにもバロック楽器ですが, 淡々と整然として揺るがないテンポ感で淀みなく流れる音楽が気持ちよく, この点ではあまりバロック的ではないかもしれません。 音色も透明感があり美しく,技術的にも隙がなく大変優れています。 これは素晴らしい出来だと思います。 いずれ全集を出してくれることを大いに期待したいです。

録音ですが,残響がものすごく多く,しかも残響時間がかなり長いです。 しかし,直接音比率が結構高く,残響成分は広がり感があって楽器音とある程度分離して聴こえるため, 「豊かな残響」として何とかぎりぎり鑑賞に堪えうるというところです。 残響の質は良い方で,残響が許せる方なら優秀録音かもしれませんし,雰囲気に浸りたい方には好適と言えそうです。 残響のまとわりつきが気になるので私としてはもちろん好きな録音ではありませんが。

ティボー・ノアリは,指揮者のマルク・ミンコフスキ率いるルーヴル宮音楽隊(レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル・グルノーブル)のコンサートマスターで, 「マンゼやオノフリの後世代で最も期待できるバロック・ヴァイオリンの若手」とのことです。 使用楽器は1719年製ジェンナロ・ヴィナッチャ。

併録曲: ヴィルスマイヤー/パルティータ第5番ト短調,テレマン/幻想曲ニ長調TWV40:23,TWV40:25,TWV40:15,TWV40:17,ヴェストホーフ/組曲第5番ニ長調,バルツァー/前奏曲ハ短調 アルマンド ト短調,ビーバー/ローゼンクランツ・ソナタ~パッサカリア

(記2015/08/14)

■ パオロ・ギドーニ Paolo Ghidoni

レーベル:OnClassical
収録曲:全集
録音:Pieve dei Campi Bonelli, Mariana Mantovana, 2012
所有盤:OC125BrM (P)2015 OnClassical (e-onkyo音楽配信)
備考:演奏 録音 モダン仕様

モダン楽器による演奏。 乱暴とも思える思い切りの良い意志の強さを感じる強い弓遣いで大胆に攻める演奏です。 緩急はそれほどでもありませんが,時折強烈なアクセントがあったり聴こえないくらい弱音で弾いたり,起伏に富んでいます。 音色は全体にキツめで刺激的であり美しくはありません。 技術的にはかなりしっかりとしていると思います。 受け入れがたい部分も多々ありますが,聴き慣れると芯のしっかりした,筋の通った演奏に思えるようになってきました。 これはこれでアリだと思います。

録音ですが,残響は多めで,残響時間はそれほど長くありませんが,音色の濁りがかなりあります。 残響の広がりも感じられず楽器音にまとわりついて音を濁すだけです。 そしてその割にキンキンと刺激的な音色が残っています。 少し遠めの音像で明瞭感も不足しています。 残念ですが全く良くありません。

パオロ・ギドーニは1964年生まれのイタリアのヴァイオリニスト。 この全集は音楽配信のみでディスクでの販売はないのではないかと思います。

(記2015/08/14)

■ 横山奈加子 Nakako Yokoyama

レーベル:EXTON
収録曲:全集
録音:2014年10月15-16日,12月9-10日,2015年2月3-4日 横浜・かながわアートホール
所有盤:OVCL-00561 (P)(C)2015 EXTON (国内盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

モダン楽器による演奏。 甘さのない引き締まった演奏です。 癖がなくオーソドックス,良い意味で教科書的, 緊張感と躍動感のバランスの良さが心地よさを生んでいます。 技術のキレも素晴らしく,一音たりとも気を抜かず隅々まで気が配られている点も良いと思います。

録音ですが,残響がかなり多く,残響時間も長め,直接音比率が低く,残響の被りによる音色の濁りがかなりあります。 残響の質も悪く,ワンワンと洞窟のように響くだけで,録音空間の広がりも感じさせず,音楽的な寄与も感じません。 明瞭感も良くなく,ニュアンスも失われてしまっています。 音色のバランスも崩れ,変にキンキンうるさいです。 全く良くありません。 ソナタ第3番,パルティータ第3番はさらに一段悪くなります。 残念です。

横山奈加子さんは,第60回日本音楽コンクール第2位,第10回チャイコフスキーコンクール第5位などのコンクール入賞歴を持つ実力者。

(記2015/08/08)

■ 島田真千子 Machiko Shimada

レーベル:Altus
収録曲:パルティータ第2番,第3番,ソナタ第3番
録音:2014年5月1日,7月2日,12月2日 所沢市民文化センター キューブホール
所有盤:ALT318 (C)2015 Altus Music (国内盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

モダン楽器による演奏。 緊張感が高く,淀みのないテンポで突き進む潔い音楽が実に気持ちが良く, また彫りが深く起伏に富んだ思い切りの良い表情が印象的です。 そしてヴィブラートがコブシのように利く「泣きのヴァイオリン」というイメージが強く残る演奏です(それはちょっと違うだろ!と突っ込まれるかもしれませんが...(^^;)。

大変細かい話で恐縮ですが,パルティータ第3番 Gavotte en Rondeauの最初のリピートが省略されています。 そういう版もあるのでしょうか?

録音ですが,残響がかなり多く,残響時間も長めのため,楽器音に大きく被り音色が混濁しています。 高域の伸び,輝きも今ひとつでモゴモゴしているほか,強く演奏される部分での音の潰れが気になります。 やや歪みっぽく,オーディオ品質もあまり良いように思えません。

また録音会場の「ドーン」とか「ゴワーン」とかいう低いノイズが結構入っていて気になります。 少々配慮が足りない気がします。

さらに編集されているのではないかと思わせるような不自然な音のつながりもあるような気がして, 今ひとつ落ち着いて聴けないのが残念です。

楽器はGoffredo Cappa(1685年)を使用。

(記2015/08/01)

■ イ・ボギョン Bokyung Lee

レーベル:LEEVÉ ART
収録曲:全集
録音:LEEVÉ ART HALL, June & December 2014
所有盤:LVAP-15K1404 (P)(C)2015 LEEVÉ Production (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

モダン楽器による演奏。 丁寧ですっきりと整った演奏で,緩急や強弱は控えめですが,速い楽章での淀みのない軽快なテンポ感, 自然な呼吸感に沿った細やかな表情付けが好印象です。 強い印象を残す演奏ではありませんが,技術的にも安定感があり, 無難に上手くまとめていると思います。

録音ですが,残響は控えめですが,音に伸び,精彩がなく,くすんでややモゴモゴした音色です。 高域のヌケ,輝きが感じられないのが残念です。 そんなに悪くはないとはいえ,どっちつかずの半端な音作りで損をしていると思います。

(記2015/07/24)

■ タマラ・スミルノヴァ Tamara Smirnova

レーベル:Croatia Records
収録曲:全集
録音:不明 (1995/5/23リリース)
所有盤:Apple Musicにて
備考:演奏 録音 モダン仕様

モダン楽器による演奏。 力強く自信に満ち推進力があります。 弓遣いに迷いなく鋭く切り込んでいくところが良いと思います。 技術的にも優れています。

しかし,この全集には重大な欠陥があります。 パルティータ第1番のSarabandeのDoubleのところで,こともあろうかCouranteのDoubleがもう一度入っているのです。 つまり,SarabandeのDoubleが抜けているのです。 これは完全な編集ミス。 いつ公開されたのか知りませんが,こんな状態で放置されていることが信じられません。

録音ですが,とても残響が多く,しかも楽器音に被って音色が大きく損なわれています。 明瞭感も悪く,ニュアンスや楽器の質感も失われています。 残響を入れれば良いというものではありません。 全く良くありません。

ヴァイオリニストについては詳細がよくわかりません。 クロアチアのレーベルのようですので,そのあたりの出身のヴァイオリニストだとは思います。

iTunes Storeのダウンロード販売で購入(AAC 256kbps)。 ディスクでも販売されていたようですが,現在は入手困難のようです。 上記のような欠陥があり,また録音も良くありませんので,演奏は良いと思うのですが,お薦めできません。

(記2015/06/07)

■ マルコ・リッツィ Marco Rizzi

レーベル:Amadeus
収録曲:全集
録音:不明 (2012/9/19リリース)
所有盤:Apple Musicにて
備考:演奏 録音 モダン仕様

オーソドックスながら,卓越した技術と高い集中力で,緊張感の持続する隙のない音楽を築いています。 速めのテンポで淡々としていますが,力強く引き締まっていて,かつ隅々にまで神経が行き届いているのが素晴らしいです。 これは思いがけないところで優れた演奏に出会いました。

録音ですが,やや残響が多くまとわりつきがやや鬱陶しく感じられます。 音色のバランスはあまり崩れていないものの,ヌケの悪さにつながり,楽器の質感も弱めています。 それでも直接音が感じられるのでまだ聴ける方ですが,もう少し直接音比率を上げて明瞭でクリアに録って欲しいところです。

マルコ・リッツィ氏はイタリア出身のヴァイオリニスト。 エリザベート王妃国際音楽コンクール(1993年)第8位,チャイコフスキー国際コンクール第10回(1994年)第3位,などのコンクール受賞歴があるようです。

iTunes Storeのダウンロード販売で購入(AAC 256kbps)。 日本のAmazonでは扱っていないようですが,海外のAmazonではダウンロード販売していました。 ディスクメディアが販売されているのかどうかは確認できませんでした。

ところでこのダウンロード販売には重大なエラーがあります。 といいますのも,ソナタ第3番の終楽章の曲がパルティータ第3番の前奏曲に入れ替わり, その後の曲が全て前に1曲ずつずれて収録されており, パルティータ第3番の終楽章にソナタ第3番の終楽章が入っているのです。 こんなエラーが見過ごされて放置されているとは,管理がずさんというのにもほどがあります。 海外のAmazonもエラーは同じでした。

(記2015/05/30)

■ マッツ・セッテルクヴィスト Mats Zetterqvist

レーベル:Kulturhuset
収録曲:全集
録音:不明 (2015/1/9リリース)
所有盤:Amazon.co.jpダウンロード販売(MP3 256kbps)
備考:演奏 録音 モダン仕様

隅々までコントロールが行き届いた技術のキレが抜群に良い演奏です。 速めのテンポで颯爽としていますが,ニュアンスも豊かです。 音色は固めですが雑味のない美しい輝きを放っています。 モダン楽器らしい好演奏で,水準も高いと思います。

録音ですが,残響は少しあり楽器音へのまとわりつきと音色への影響がわずかにありますが,直接音が主体であり, 明瞭感も高く,楽器の質感もよく感じられる良好な録音です。 曲によって少しチリチリという付帯音が聞こえます。 録音時に入ったものか圧縮時のエラーかはわかりませんが,これは少し残念に思います。

公式Webサイトがあります。 セッテルクヴィスト氏はスウェーデン出身のヴァイオリニスト。 2009年よりヨーロッパ室内管弦楽団の第2ヴァイオリン首席奏者。

AmazonでのMP3(256kbps)ダウンロード販売の他にディスクメディアの販売もあるようですが, 気軽に買えそうなサイトではなかったため諦めてダウンロード購入しました。

(記2015/05/23)

■ クリスティアン・フェラス Christian Ferras

レーベル:Meloclassics
収録曲:ソナタ第2番,第3番
録音:29 Feb. 1956 (No.2), 3 Feb. 1960 (No.3), Hessischer Rundfunk, Radio Studio Recording
所有盤:MC 2001 (C)2013 Meloclassic (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

アクセントを付けながらキチッと弾く折り目正しさが印象に残ります。 重音を正確に半拍前からリズムに合わせて弾くスタイルもその印象を強くします。 特にソナタ第3番のフーガは過剰なくらいで,ここまで徹底しているともう立派としか言いようがありません。 この楽章がこのディスクの白眉です。 ソナタ第3番が優れていると思います。

1956年と1960年の録音(いずれもモノラル)。 放送用音源から復刻されたもの。 スタジオで放送用音源として録音されているため,残響がなく極めて明瞭で,この点では間違いなく好録音です。 古い録音なのでクオリティは年代相応で,緻密さに欠けるのは仕方ありません。

併録曲:タルティーニ:ヴァイオリン・ソナタ ト短調「悪魔のトリル」, モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタK.526

(記2015/05/16)

■ レオニード・コーガン Leonid Kogan

レーベル:Meloclassics
収録曲:ソナタ第3番
録音:25 May 1964, Bardeaux, Grand theatre, Radiodiffusion-Television Francaise
所有盤:MC 2012 (C)2013 Meloclassic (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

力強くキレの良い演奏ですが,(意外にも)冷静で落ち着いています。 オーソドックスで,どちらかといえば綺麗にまとめることに重きを置いた守りの演奏のように思えます。 正直なところもう少し推進力が欲しかったなと思います。

1964年の録音(モノラル)なのでそこそこ良いクオリティがありますが,中低域は薄めでやや軽い音質です。 また,高域側も帯域が不足しているということはありませんが,やや伸びが足りないかなと思います。 放送用ということでスタジオで録音されていて,残響がほとんどないためとてもクリアで明瞭です。 この点ではまさに好録音と言えます。 私の好きな録音ではありますが,客観的にみてオーディオ的には年代相応というところだと思います。

放送用音源から復刻されたもの。 最初に曲の説明のナレーションも入っています。

併録曲:ヘンデル:ヴァイオリン・ソナタHWV370, ブラームス:スケルツォ, ファリャ:スペイン民謡組曲, ラヴェル:ツィガーヌ, ドビュッシー:美しい夕暮れ, サラサーテ:サパテアード

(記2015/05/14)

■ ユーディ・メニューイン Yehudi Menuhin

レーベル:Meloclassics
収録曲:パルティータ第3番
録音:25 August 1952, Ascona Palestre delle Schuola, Radio Svizzera di Lingua Italiana
所有盤:MC 2003 (C)2013 Meloclassic (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

ものすごい勢いに圧倒される演奏ですが,一方でかなりせっかちに聴こえます。 そして昨今の演奏と比べると相当荒っぽいです。 そういった点で大いに時代を感じさせる演奏ですが,それがまた良いのだとも思います。 かつては音楽はもっと自由で大らかだったんだなと。

1952年の録音なのでさすがに古くクオリティは良くありませんが, 放送用の音源のためか,残響は全くなく楽器音が極めてクリアに録られているため, 1952年の録音とは思えないほど鮮明です。 音色のバランスは大きく崩れているのですが,高域が比較的きちんと出ているため,あまり不満に感じません。 ある意味好録音と言えるかもしれません。

放送用音源から復刻されたもの。 最初に曲の説明のナレーションも入っています。

併録曲:タルティーニ:ヴァイオリン・ソナタ ト短調「悪魔のトリル」, フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調, サン=サーンス:ハバネラ,序奏とロンド・カプリチオーソ

(記2015/05/13)

■ ドミトリー・マフチン Dmitri Makhtin

レーベル:Lontano (Warner Classics)
収録曲:ソナタ第1番,第2番,パルティータ第1番
録音:L'Arsenal (Metz) salle de L'Esplanade 19-21 fevrier 2007
所有盤:2564 69813-3 (P)(C)Lontano (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

伝統的なスタイルの引き締まった演奏。 オーソドックスで大きな特徴はないものの,インテンポで淀みなく淡々と弾き去る技量は大したもの。 技術的には隙がなく相当上手いです。 今風の演奏ではありませんが,充実度の高い好演奏です。

録音ですが,残響はそれほど多くありませんが,響きが結構あるため楽器音がやや濁り気味です。 楽器音自体はしっかりと録っているのですが,この響きのために高域の伸びが損なわれ,ニュアンスも失われています。 また,背景にブーンというノイズがかすかながら入っているのも気になります。 惜しい録音です。

ドミトリー・マフチンは,ロシア,サンクトペテルブルク出身のヴァイオリニスト。 本ディスクはVolume 1と記載されていますが,Volume 2が一向に発売される気配がありません...

(記2015/05/09)

■ アルベルト・コチシュ Albert Kocsis

レーベル:Hungaroton
収録曲:ソナタ第1番,パルティータ第2番
録音:不明(リリース 1963年)
所有盤:Hungarotonのサイトよりダウンロード購入
備考:演奏 録音 モダン仕様

恐ろしく気合いの入った力強く実直な演奏。 およそ50年前の演奏で,当時としてはこのようなアプローチが主流だったのではないかと思います。 技術的にもかなり上手く,この点はほぼ不満がありません。 リピートの省略が多いのが残念です。

録音ですが,残響はほとんどない極めて明瞭な録音で,この点で不満はありません。 古い録音のため高域の伸びが今ひとつであり,音色が古臭いです。 これは仕方ないところです。 明らかに編集されたとわかるところが何カ所かあり,これも残念なところです。 また,FLAC配信にもかかわらず,時折低ビットレートのMP3でエンコードしたときに発生するような音の歪みが感じられます。 配信のクオリティはあまり良いとは言えません。

デネス・コヴァーチュの全集と同様,ブログ読者様から教えていただいたフンガロトンのサイトでこれを見つけた演奏です。 やはり同じくMP3とFLACで販売されており,FLACは44.1kHz/24bitのデータでした。 価格は2015年5月現在2,899フォリント,日本円換算で1,300円ほどです。

併録曲:イザイ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ作品27-4

(記2015/05/09)

■ コンラッド・フォン・デア・ゴルツ Conrad von der Goltz

レーベル:Cascade
収録曲:全集
録音:不明
所有盤:品番なし iTunes Music Storeにてダウンロード販売
“よくばりクラシック 100min.×100 vol.96” より
備考:演奏 録音 モダン仕様

至極オーソドックスなアプローチです。 奇を衒うことなくじっくりと真摯に取り組りくんでいる様が伝わってきます。 この点に関しては好印象です。 しかし,残念ながら技術が伴っていません。 音程が悪くしかも不安定,緩急も曲想で変化するというよりは左手の難易度で発生しているように聴こえます。 ただ,それに対して右手の技術はしっかりしているので,技術に不安を覚えながらも結構聴けます。 また,パルティータ第二番の出来が図抜けて良く,上記の弱点はほとんど気になりませんでした。

録音ですが,まるで銭湯の中で録音したような音です。 楽器音が響きに埋もれてニュアンスや質感がよく伝わってきませんし,当然音色もかなり影響を受けています。 特にソナタ第一番がひどいです。 他の曲は幾分マシで,息づかいが聞こえてくるような距離感をもった録音ですが,それでもやっぱり響きが多すぎます。

以前取り上げた「クアドロマニア」シリーズに含まれていたものの全曲セット。 クラシック入門用のシリーズだと思われます。 演奏,録音とも以前レビューしたときと変わらない印象でしたので,その記事をほぼそのまま引き継いでいます。 2015年5月時点のダウンロード販売価格が900円と安いのは有り難いのですが... 入門用としては(入門用だからこそ)演奏,録音とも,もう少しクオリティの高いものを選んで欲しいものです。

ゆったりした演奏とは思えないのですが,全曲でCD 2枚に入りきらない演奏時間でした。 このためクアドロマニアでは曲数が少なかったものと思われます。

(記2015/05/06)

■ ギル・シャハム Gil Shaham

レーベル:Canary Classics
収録曲:全集
録音:Studio 2, Bayerischer Rundfunk, Munich, Germany in June and July, 2014
所有盤:CC14 (P)(C)2015 Canary Classics LLC (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

上手い! 本当に上手いです。 技術のキレは抜群で,技術的制約からくるもたつきは皆無です。 優れた技術による演奏でしか得られない快感がこの演奏にはあります。

そしてとても個性的。 どの曲にも彼流の仕掛けが仕組んであります。 曲を完全に支配し,変幻自在に操る。 彼の世界に強引に引きずり込まれてしまいます。 それがまた楽しいのです。

録音ですが,残響は少し多めですが,直接音もしっかりと明瞭に質感豊に捉えられています。 音の伸びもあり,ヌケも悪くありません。 高域が少し刺激的なところはありますが,私にとっては問題ありません。 残響が多くてもこの録音ならまずまず納得出来ます。

楽器は,Antonio Stradivarius "Countess Polignac" 1699 を使用。

(記2015/04/01)

■ 藤原浜雄 Hamao Fujiwara

“藤原浜雄:ヴァイオリン・リサイタル2012”より
レーベル:Sonare
収録曲:パルティータ第2番
録音:2012年10月11日 東京 紀尾井ホール(ライヴ)
所有盤:SONARE1016-7 (P)(C)2013 Sonare Art Office (国内盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

渾身のバッハ。 熱く濃い,人間味あふれる,演奏者の個性が色濃く反映された,そして巨匠的風格を備えた堂々とした演奏です。 実直でブレのない音楽が素晴らしく思います。

録音ですが,ホールの残響をかなり多く取り入れていますので,そのまとわりつきがかなり鬱陶しく, 本来の音色や質感,ニュアンスが感じ取りにくいです。 ピアノとのデュオの他の曲では少し残響が抑えられていて聴きやすいのですが, このソロだけこのような録音の仕方をされていて,余計に残念に思います。 録音レベルも若干低めです。

併録曲:ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第4番,バルトーク/ヴァイオリン・ソナタ第1番Sz.75, ラヴェル/ツィガーヌ,ラヴェル/ハバネラ形式の小品,パガニーニ~リリアン・フックス編/カプリス第24番

(記2015/03/06)

■ オスカー・シュムスキー Oscar Shumsky

“Oscar Shumsky Legendary Treasures - Broadcasts & Live Performances 1940-1982”より
レーベル:DOREMI
収録曲:パルティータ第2番
録音:1982年10月24日 バーゼル(ライヴ)
所有盤:DHR-8031-3 (C)2015 DOREMI (輸入盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

シュムスキーらしい力強く引き締まった集中度の高い演奏でこれは期待通りなのですが, その一方でミスも散見されます。 もちろんそんなに気になるものではありませんが。 ライヴ録音なので仕方ないかもしれません。 本質的なところではありませんが,シャコンヌでは一部の分散和音をあまり聴かない音型で弾いたりとちょっと変わったところがあります。

録音ですが,明らかに高域側の帯域が不足して音の伸びがなくヌケが良くありません。 ライヴとはいえ状態は良くなく,1982年の録音としては少々寂しいと言わざるを得ません。

“Oscar Shumsky Legendary Treasures - Broadcasts & Live Performances 1940-1982”と題された, 1940年から1982年のシュムスキーの様々な音源を集めた3枚組のセットから。 シュムスキーファンにとっては貴重な音源かもしれませんが,雑多な音源をとにかくかき集めてセットにしたという感じがします(ごめんなさい)。 録音も全体に良くなく冴えません。

(記2015/03/04)

■ 千住真理子 Mariko Senju

レーベル:Universal Classics
収録曲:全集
録音:2014年9月1日-4日 草津国際音楽の森コンサートホール
所有盤:UCCY-1049/50 (P)(C)2015 Universal Classics (国内盤)
備考:演奏 録音 モダン仕様

モダン楽器による伝統的なスタイルの延長線上にある演奏で,緩急強弱は控えめですが, 一つ一つの音に勢いがあり力強く自信に満ちています。 演奏者の込めた思いがひしひしと伝わってくる芯の強い音楽です。 技術的な不満はゼロではありませんが,全くと言って良いほど気になりません。 もう少し技のキレが欲しいところもありますが,音程やリズムが崩れないため安心して聴くことが出来ます。 この録音に向けて鍛錬を重ねてこられたことが感じられます。

正直に言いますと,聴く前はあまり期待をしていませんでしたが(本当にごめんなさい...), その予想を大きく覆す立派で充実した演奏にちょっと感動してしまいました(^^;。

録音ですが,残響感が少しあってまとわりつきが気になるものの,明瞭さは失われておらず,楽器の質感も良く感じられます。 音色もそれほど損なわれておらず,音の伸びもありますし,ヌケも悪くありません。 もちろん私としては残響をもっと抑えてすっきりと録って欲しかったと思いますが, これでも十分良好な録音と言えると思います。

20年ぶり2回目の全集録音。 2015年はデビュー40周年とのことです。 これだけ長い間第一線で活躍を続けられて来たこと,本当に立派だと思います。

楽器は,ストラディヴァリウス「デュランティ」を使用。

(記2015/02/28)

■ リュディガー・ロッター Rüdiger Lotter

レーベル:OEHMS Classics
収録曲:ソナタ第1番,第2番,パルティータ第2番
録音:2010年4月, 2011年7月 ミュンヘン,ゼントリンク,昇天教会
所有盤:OC 838 (P)2010,2011 (C)2012 OehmsClassics (輸入盤)
備考:演奏 録音 バロック仕様

バロック・ヴァイオリンによる演奏。 丁寧で美しくとても上品に仕上げています。 強い主張はなくどちらかといえば控えめですが, 技術的にも上手く,ニュアンスが豊で味わいの深い秀演だと思います。

Vol.1ということですので,Vol.2で全集として完結するのが楽しみです。

録音ですが,やや長めの残響を伴っていますが,直接音の裏でふわっと広がるように響くので, 楽器音をあまり損なっていません。 まとわりつきはあるのでもちろん残響はもう少し控えて欲しいところですが, 音の伸びもまずまず,楽器の質感も残っていますのでこれなら許せる範囲かと思います。 残響を入れるならせめてこのような取り入れ方にして欲しいですね。

(記2015/02/01)