2015年の記事
■ フリフ・スィグリョンスドーティル Hlíf Sigurjónsdóttir
レーベル : MSR Classics
収録曲 : 全集
録音 : Recorded in the Church of Reykholt, Borgarfjörður, Iceland, in December 2000 [BWV1006], June 2001 [BWV1004], September 2002 [BWV1002], and October 2007 [BWV1001, 1003, 1005]
所有盤 : MSR 1605 (P)(C)2015 Hlíf Sigurjónsdóttir (輸入盤)
備考 : 演奏 録音
モダン仕様 使用楽器 Christophe Landon (Sonatas), G. Sgarabotto (Partitas)
レーベル : 自主制作
所有盤 : HSB03 (輸入盤)
備考 : 上記と同じ内容のディスク
正直なところ,技術的には相当苦しいと言わざるを得ません。
特にソナタ。
フーガなど止まってしまいそうですごくスリリングです(^^;。
一方,パルティータ第2番だけは他の曲に比べるとかなり出来が良いです。
この出来を考えると他の曲は明らかに弾き込み不足ではないかと思ってしまいます。
ただ全体を通して奏者の技量の範囲で丁寧に演奏をしておられるとは思いますので,
大きな破綻はなく持ちこたえているという印象で,それはそれで楽しめました。
録音ですが...すごい残響です。
しかし,楽器音の輪郭はそれなりに感じられ,質感もそこそこ伝わってくるので,
残響量の割にはマシかなと思います。
もちろん私の好みではありませんが。
フリフ・スィグリョンスドーティルはアイスランドのヴァイオリニスト。
名前の日本語表記は自信なしです。
公式Webサイト があります。
2010年頃に自主制作のディスクを公式Webサイトから購入し,レビューしていました。
2015年にMSR Classicsより再発売されたようです。
内容は同じでした。
(追2015/12/21)
(記2010/11/19)
■ ワンチ・ホワン Wanchi Huang
レーベル : Centaur
収録曲 : 全集
録音 : June 4, 5, and July 15, 2013 at WFMT Studios, Chicago
所有盤 : CRC 3419/3420 (P)(C)2015 Centaur Records (輸入盤)
備考 : 演奏 録音
モダン仕様
モダン楽器による演奏。
こんな書き方をして本当に申し訳ないのですが,お世辞にも上手いとは言えません。
破綻こそしていないものの,フーガなどの難しい楽章ではたどたどしさが拭えません。
安全運転に徹して楽譜を正確になぞり,その中で精一杯の表現を試みる,
誠実さの感じられる,微笑ましい演奏なので好感は持てるのですが,
やはり技術面での不満は大きく残ってしまいます。
音程はそんなに悪くないので,それでかなり救われているとは思います。
録音ですが,残響は背景にふわっと広がる程度であり,直接音を主体に録られています。
距離感も適度で,音色も自然,高域の伸びもあります。
生々しさもあり,楽器の質感もニュアンスもしっかりと聴き取れます。
まずまずの好録音と言えます。
時々音像がフラフラと移動したり,質が若干落ちるように感じるところがありますが,気になるほどではありません。
オーディオ的なクオリティもまずまず良好です。
演奏に若干の難はあるものの,結構楽しく聴くことができました。
録音が良好だからだと思います。
鑑賞する上で「良い録音」であることはとても大切ですね。
■ パヴェル・シュポルツル Pavel Šporcl
レーベル : Supraphon
収録曲 : 全集
録音 : 2015年4月16-18日,5月20-22日,6月15-17日 プラハ,チェコ兄弟団福音教会
所有盤 : SU 4186-2 (P)2015 Supraphon (輸入盤)
備考 : 演奏 録音
モダン仕様
モダン楽器による演奏。
ブルーに塗装されたヴァイオリンでどんな演奏を聴かせてくれるのかと興味津々で聴きましたが,
至極真っ当,正統派の立派な演奏でした。
技術レベルも高く,整然と隅々までコントロールが行き届いていますし,
和音の響きの透明な美しさなども特筆できます。
大きな特徴はありませんが,秀演だと思います。
録音ですが,残響が多めでしかも楽器音に被って音色をくすませています。
楽器の質感はそれなりに感じられるのでぎりぎり許容範囲というところです。
残響が気にならない方には問題ないかもしれませんが,
私としてはあまり良い印象ではありません。
スプラフォンは比較的好みの録音が多いレーベルなので期待していたのですが,この録音は少し残念に思います。
シュポルツル氏は「チェコが誇る奇才ヴァイオリニスト」とのこと。
クラシックのみならず民族音楽なども演奏するそうです。
個人的にはその多様な音楽性を生かしたバッハが聴きたかったかなと...
■ 五嶋みどり MIDORI
レーベル : ONYX
収録曲 : 全集
録音 : 2013年8月13日-17日 WDRフンクハウス,クラウス・フォン・ビスマルク・ザール(ケルン,ドイツ)
所有盤 : ONYX 4123 (P)2015 WDR (C)2015 PM Classics Ltd. (輸入盤)
備考 : 演奏 録音
モダン仕様
この達観した演奏,いきなりその境地に行ってしまわれましたか...
人間的な温かさ,謙虚で優しさに溢れた音楽。
真摯でありながら,何事にもとらわれず自由に音楽と戯れる,そんな喜びが滲み出ています。
技術的にはもちろん完璧ながらそれが前面に出てこない柔らかなタッチがこの演奏を印象づけています。
ヴァイオリンという楽器は本当に難しいと思います。
どんな手練れであってもその難しさからどうしても音楽に「歪み」が生じます。
名手はそれを完璧な技巧で,研ぎ澄まされた演奏で乗り越え消し去ろうとします。
しかし彼女はそれを遙かに通り越し,さらにその上のステージでの音楽表現を試みようとしているように思えます。
ヴァイオリンという楽器の制約から解放されたこのような音楽は滅多に聴けるものではないと感じます。
彼女は2005年にソナタ第2番を録音していますが,それは静寂の中に静かに鳴り響く内向的な演奏でした。
どちらかといえば寒色系。
しかし,今回の演奏は暖色系に思います。
2005年の録音の延長線上で突き詰められた演奏を想像していたので,
最初聴いたときは「あれっ?,あれっ?」と戸惑い,肩すかしを食らった感があったのですが,
何度も聴くうちにこの演奏にどんどん惹きつけられました。
2005年にあの路線で全集を残してくれていたら,という思いは残るものの,
今ここにこの素晴らしい演奏に巡り会えたことを本当にうれしく思います。
録音ですが,やや残響は多めで楽器音への被りが気になるものの,
素直に捉えていてニュアンスも聴き取ることができるので,良好とまでは言わないまでもまずまずというところです。
空調なのか,低域の雑音レベルがかなり高く,聴く装置や環境によってはかなり気になります。
もう少し配慮が欲しかったところです。
解説書には“Artist's note”として五嶋みどりさん自身による文章が3カ国語で載せられています。
全くの蛇足ですが,日本人ヴァイオリニストなのですから,オリジナルの解説書に日本語も載せて欲しかった...
■ マリー・カンタグリル Marie Cantagrill
(1)
レーベル : Art & Musique
収録曲 : パルティータ第2番,第3番
録音 : Saint-Serge Church, Angers, France
所有盤 : Ref. AB1/1 (P)(C)2009 ABP Musique Classique Productions (輸入盤)
備考 : 演奏 録音
モダン仕様
(2)
レーベル : Art & Musique
収録曲 : ソナタ第1番,パルティータ第1番
録音 : Combelongue Abbey, Rimont, France
所有盤 : Ref. AB1/2 (P)(C)2011 ABP Musique Classique Productions (輸入盤)
備考 : 演奏 録音
モダン仕様
(3)
レーベル : Art & Musique
収録曲 : ソナタ第2番,第3番
録音 : Combelongue Abbey, Rimont, France
所有盤 : Ref. AB1/3 (P)(C)2014 ABP Musique Classique Productions (輸入盤)
備考 : 演奏 録音
モダン仕様
(1)(2)については比較的遅めのテンポでじっくりと演奏されています。
特にパルティータ第2番。
シャコンヌだけでほぼ18分,パルティータ第二番全体で約37分あります。
一方(3)は全体にもう少し速めのテンポで前向きです。
いずれにしても丁寧で真摯なところが良いと思いますが,
音色は若干固めで無機的な感じもあるので,もう少し色が欲しいかなと思います。
技術的には安定感がありまったく不安はありません。
録音ですが,3枚のディスクは全て違う場所で録音されたようですが,いずれも教会のようです。
(1)(2)は残響が少し多めです。
(3)は響きはあるもののドライな感じがします。
いずれも残響や響きによって音色はくすみがちですっきりせずあまり良いとは言えません。
中では(1)がややマシかなと思いますが,
全体通してやはり少々残念な録音です。
■ ジェニファー・コウ Jennifer Koh
(1) Bach & Beyond Part 1
レーベル : Cedille Records
収録曲 : パルティータ第2番,第3番
録音 : November 13 & 16, 2011(No.2), January 4 & 5, 2012(No.3) at the American Academy of Arts and Letters, New York City
所有盤 : CDR 90000 134 (P)(C)2012 Cedille Records (輸入盤)
備考 : 演奏 録音
モダン仕様
(2) Bach & Beyond Part 2
レーベル : Cedille Records
収録曲 : ソナタ第1番,パルティータ第1番
録音 : June 4-5, 10-12, 2014 at The Perfoming Arts Center, Purchase College/SUNY
所有盤 : CDR 90000 154 (P)(C)2015 Cedille Records (輸入盤)
備考 : 演奏 録音
モダン仕様
小気味よいのですが,一方で,美しく,優しく柔らかい印象を残す演奏でもあります。
線がやや細く弱々しい面が感じられなくもないですが,技術的にも優れキレと安定感がありますし,
音色や和音の取り方も美しく,欠点になっていません。
強い個性の主張がなく大人しい演奏ですが,自然体であり,そこが美点と言えるかもしれません。
録音ですが,少し残響を伴っているものの,直接音を主体に楽器音を透明感ある音で捉えていて好ましいです。
音色も自然で美しいです。
もう一歩寄って質感を強めに出してくれるとなお良かったと思いますが,これでも十分に良好です。
中ではパルティータ第1番の録音状態が最も良いと思います。
併録曲: (1)Ysaye/Sonata No.2, Op.27; Kaija Saariaho/Nocturne; Missy Mazzoli/Dissolve, O My Heart, (2)Bartok/Sonata for solo violin Sz. 117; Kaija Saariaho/Frises
■ ティボー・ノアリ Thibault Noally
レーベル : Aparté
収録曲 : パルティータ第2番
録音 : 2013年6月 サン・レミ教会(ベルギー)
所有盤 : AP068 (P)2013 Aparté (輸入盤)
備考 : 演奏 録音
バロック仕様
バロック楽器による演奏。
粘りのある弓遣いがいかにもバロック楽器ですが,
淡々と整然として揺るがないテンポ感で淀みなく流れる音楽が気持ちよく,
この点ではあまりバロック的ではないかもしれません。
音色も透明感があり美しく,技術的にも隙がなく大変優れています。
これは素晴らしい出来だと思います。
いずれ全集を出してくれることを大いに期待したいです。
録音ですが,残響がものすごく多く,しかも残響時間がかなり長いです。
しかし,直接音比率が結構高く,残響成分は広がり感があって楽器音とある程度分離して聴こえるため,
「豊かな残響」として何とかぎりぎり鑑賞に堪えうるというところです。
残響の質は良い方で,残響が許せる方なら優秀録音かもしれませんし,雰囲気に浸りたい方には好適と言えそうです。
残響のまとわりつきが気になるので私としてはもちろん好きな録音ではありませんが。
ティボー・ノアリは,指揮者のマルク・ミンコフスキ率いるルーヴル宮音楽隊(レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル・グルノーブル)のコンサートマスターで,
「マンゼやオノフリの後世代で最も期待できるバロック・ヴァイオリンの若手」とのことです。
使用楽器は1719年製ジェンナロ・ヴィナッチャ。
併録曲: ヴィルスマイヤー/パルティータ第5番ト短調,テレマン/幻想曲ニ長調TWV40:23,TWV40:25,TWV40:15,TWV40:17,ヴェストホーフ/組曲第5番ニ長調,バルツァー/前奏曲ハ短調 アルマンド ト短調,ビーバー/ローゼンクランツ・ソナタ~パッサカリア
■ パオロ・ギドーニ Paolo Ghidoni
レーベル : OnClassical
収録曲 : 全集
録音 : Pieve dei Campi Bonelli, Mariana Mantovana, 2012
所有盤 : OC125BrM (P)2015 OnClassical (e-onkyo音楽配信)
備考 : 演奏 録音
モダン仕様
モダン楽器による演奏。
乱暴とも思える思い切りの良い意志の強さを感じる強い弓遣いで大胆に攻める演奏です。
緩急はそれほどでもありませんが,時折強烈なアクセントがあったり聴こえないくらい弱音で弾いたり,起伏に富んでいます。
音色は全体にキツめで刺激的であり美しくはありません。
技術的にはかなりしっかりとしていると思います。
受け入れがたい部分も多々ありますが,聴き慣れると芯のしっかりした,筋の通った演奏に思えるようになってきました。
これはこれでアリだと思います。
録音ですが,残響は多めで,残響時間はそれほど長くありませんが,音色の濁りがかなりあります。
残響の広がりも感じられず楽器音にまとわりついて音を濁すだけです。
そしてその割にキンキンと刺激的な音色が残っています。
少し遠めの音像で明瞭感も不足しています。
残念ですが全く良くありません。
パオロ・ギドーニは1964年生まれのイタリアのヴァイオリニスト。
この全集は音楽配信のみでディスクでの販売はないのではないかと思います。
■ 横山奈加子 Nakako Yokoyama
レーベル : EXTON
収録曲 : 全集
録音 : 2014年10月15-16日,12月9-10日,2015年2月3-4日 横浜・かながわアートホール
所有盤 : OVCL-00561 (P)(C)2015 EXTON (国内盤)
備考 : 演奏 録音
モダン仕様
モダン楽器による演奏。
甘さのない引き締まった演奏です。
癖がなくオーソドックス,良い意味で教科書的,
緊張感と躍動感のバランスの良さが心地よさを生んでいます。
技術のキレも素晴らしく,一音たりとも気を抜かず隅々まで気が配られている点も良いと思います。
録音ですが,残響がかなり多く,残響時間も長め,直接音比率が低く,残響の被りによる音色の濁りがかなりあります。
残響の質も悪く,ワンワンと洞窟のように響くだけで,録音空間の広がりも感じさせず,音楽的な寄与も感じません。
明瞭感も良くなく,ニュアンスも失われてしまっています。
音色のバランスも崩れ,変にキンキンうるさいです。
全く良くありません。
ソナタ第3番,パルティータ第3番はさらに一段悪くなります。
残念です。
横山奈加子さんは,第60回日本音楽コンクール第2位,第10回チャイコフスキーコンクール第5位などのコンクール入賞歴を持つ実力者。
■ 島田真千子 Machiko Shimada
レーベル : Altus
収録曲 : パルティータ第2番,第3番,ソナタ第3番
録音 : 2014年5月1日,7月2日,12月2日 所沢市民文化センター キューブホール
所有盤 : ALT318 (C)2015 Altus Music (国内盤)
備考 : 演奏 録音
モダン仕様
モダン楽器による演奏。
緊張感が高く,淀みのないテンポで突き進む潔い音楽が実に気持ちが良く,
また彫りが深く起伏に富んだ思い切りの良い表情が印象的です。
そしてヴィブラートがコブシのように利く「泣きのヴァイオリン」というイメージが強く残る演奏です(それはちょっと違うだろ!と突っ込まれるかもしれませんが...(^^;)。
大変細かい話で恐縮ですが,パルティータ第3番 Gavotte en Rondeauの最初のリピートが省略されています。
そういう版もあるのでしょうか?
録音ですが,残響がかなり多く,残響時間も長めのため,楽器音に大きく被り音色が混濁しています。
高域の伸び,輝きも今ひとつでモゴモゴしているほか,強く演奏される部分での音の潰れが気になります。
やや歪みっぽく,オーディオ品質もあまり良いように思えません。
また録音会場の「ドーン」とか「ゴワーン」とかいう低いノイズが結構入っていて気になります。
少々配慮が足りない気がします。
さらに編集されているのではないかと思わせるような不自然な音のつながりもあるような気がして,
今ひとつ落ち着いて聴けないのが残念です。
楽器はGoffredo Cappa(1685年)を使用。
■ イ・ボギョン Bokyung Lee
レーベル : LEEVÉ ART
収録曲 : 全集
録音 : LEEVÉ ART HALL, June & December 2014
所有盤 : LVAP-15K1404 (P)(C)2015 LEEVÉ Production (輸入盤)
備考 : 演奏 録音
モダン仕様
モダン楽器による演奏。
丁寧ですっきりと整った演奏で,緩急や強弱は控えめですが,速い楽章での淀みのない軽快なテンポ感,
自然な呼吸感に沿った細やかな表情付けが好印象です。
強い印象を残す演奏ではありませんが,技術的にも安定感があり,
無難に上手くまとめていると思います。
録音ですが,残響は控えめですが,音に伸び,精彩がなく,くすんでややモゴモゴした音色です。
高域のヌケ,輝きが感じられないのが残念です。
そんなに悪くはないとはいえ,どっちつかずの半端な音作りで損をしていると思います。
■ タマラ・スミルノヴァ Tamara Smirnova
レーベル : Croatia Records
収録曲 : 全集
録音 : 不明 (1995/5/23リリース)
所有盤 : Apple Music にて
備考 : 演奏 録音
モダン仕様
モダン楽器による演奏。
力強く自信に満ち推進力があります。
弓遣いに迷いなく鋭く切り込んでいくところが良いと思います。
技術的にも優れています。
しかし,この全集には重大な欠陥があります。
パルティータ第1番のSarabandeのDoubleのところで,こともあろうかCouranteのDoubleがもう一度入っているのです。
つまり,SarabandeのDoubleが抜けているのです。
これは完全な編集ミス。
いつ公開されたのか知りませんが,こんな状態で放置されていることが信じられません。
録音ですが,とても残響が多く,しかも楽器音に被って音色が大きく損なわれています。
明瞭感も悪く,ニュアンスや楽器の質感も失われています。
残響を入れれば良いというものではありません。
全く良くありません。
ヴァイオリニストについては詳細がよくわかりません。
クロアチアのレーベルのようですので,そのあたりの出身のヴァイオリニストだとは思います。
iTunes Storeのダウンロード販売で購入(AAC 256kbps)。
ディスクでも販売されていたようですが,現在は入手困難のようです。
上記のような欠陥があり,また録音も良くありませんので,演奏は良いと思うのですが,お薦めできません。
■ マルコ・リッツィ Marco Rizzi
レーベル : Amadeus
収録曲 : 全集
録音 : 不明 (2012/9/19リリース)
所有盤 : Apple Music にて
備考 : 演奏 録音
モダン仕様
オーソドックスながら,卓越した技術と高い集中力で,緊張感の持続する隙のない音楽を築いています。
速めのテンポで淡々としていますが,力強く引き締まっていて,かつ隅々にまで神経が行き届いているのが素晴らしいです。
これは思いがけないところで優れた演奏に出会いました。
録音ですが,やや残響が多くまとわりつきがやや鬱陶しく感じられます。
音色のバランスはあまり崩れていないものの,ヌケの悪さにつながり,楽器の質感も弱めています。
それでも直接音が感じられるのでまだ聴ける方ですが,もう少し直接音比率を上げて明瞭でクリアに録って欲しいところです。
マルコ・リッツィ氏はイタリア出身のヴァイオリニスト。
エリザベート王妃国際音楽コンクール(1993年)第8位,チャイコフスキー国際コンクール第10回(1994年)第3位,などのコンクール受賞歴があるようです。
iTunes Storeのダウンロード販売で購入(AAC 256kbps)。
日本のAmazonでは扱っていないようですが,海外のAmazonではダウンロード販売していました。
ディスクメディアが販売されているのかどうかは確認できませんでした。
ところでこのダウンロード販売には重大なエラーがあります。
といいますのも,ソナタ第3番の終楽章の曲がパルティータ第3番の前奏曲に入れ替わり,
その後の曲が全て前に1曲ずつずれて収録されており,
パルティータ第3番の終楽章にソナタ第3番の終楽章が入っているのです。
こんなエラーが見過ごされて放置されているとは,管理がずさんというのにもほどがあります。
海外のAmazonもエラーは同じでした。
■ マッツ・セッテルクヴィスト Mats Zetterqvist
レーベル : Kulturhuset
収録曲 : 全集
録音 : 不明 (2015/1/9リリース)
所有盤 : Amazon.co.jp ダウンロード販売(MP3 256kbps)
備考 : 演奏 録音
モダン仕様
隅々までコントロールが行き届いた技術のキレが抜群に良い演奏です。
速めのテンポで颯爽としていますが,ニュアンスも豊かです。
音色は固めですが雑味のない美しい輝きを放っています。
モダン楽器らしい好演奏で,水準も高いと思います。
録音ですが,残響は少しあり楽器音へのまとわりつきと音色への影響がわずかにありますが,直接音が主体であり,
明瞭感も高く,楽器の質感もよく感じられる良好な録音です。
曲によって少しチリチリという付帯音が聞こえます。
録音時に入ったものか圧縮時のエラーかはわかりませんが,これは少し残念に思います。
公式Webサイト があります。
セッテルクヴィスト氏はスウェーデン出身のヴァイオリニスト。
2009年よりヨーロッパ室内管弦楽団の第2ヴァイオリン首席奏者。
AmazonでのMP3(256kbps)ダウンロード販売の他にディスクメディアの販売もあるようですが,
気軽に買えそうなサイトではなかったため諦めてダウンロード購入しました。
■ クリスティアン・フェラス Christian Ferras
レーベル : Meloclassics
収録曲 : ソナタ第2番,第3番
録音 : 29 Feb. 1956 (No.2), 3 Feb. 1960 (No.3), Hessischer Rundfunk, Radio Studio Recording
所有盤 : MC 2001 (C)2013 Meloclassic (輸入盤)
備考 : 演奏 録音
モダン仕様
アクセントを付けながらキチッと弾く折り目正しさが印象に残ります。
重音を正確に半拍前からリズムに合わせて弾くスタイルもその印象を強くします。
特にソナタ第3番のフーガは過剰なくらいで,ここまで徹底しているともう立派としか言いようがありません。
この楽章がこのディスクの白眉です。
ソナタ第3番が優れていると思います。
1956年と1960年の録音(いずれもモノラル)。
放送用音源から復刻されたもの。
スタジオで放送用音源として録音されているため,残響がなく極めて明瞭で,この点では間違いなく好録音です。
古い録音なのでクオリティは年代相応で,緻密さに欠けるのは仕方ありません。
併録曲:タルティーニ:ヴァイオリン・ソナタ ト短調「悪魔のトリル」,
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタK.526
■ レオニード・コーガン Leonid Kogan
レーベル : Meloclassics
収録曲 : ソナタ第3番
録音 : 25 May 1964, Bardeaux, Grand theatre, Radiodiffusion-Television Francaise
所有盤 : MC 2012 (C)2013 Meloclassic (輸入盤)
備考 : 演奏 録音
モダン仕様
力強くキレの良い演奏ですが,(意外にも)冷静で落ち着いています。
オーソドックスで,どちらかといえば綺麗にまとめることに重きを置いた守りの演奏のように思えます。
正直なところもう少し推進力が欲しかったなと思います。
1964年の録音(モノラル)なのでそこそこ良いクオリティがありますが,中低域は薄めでやや軽い音質です。
また,高域側も帯域が不足しているということはありませんが,やや伸びが足りないかなと思います。
放送用ということでスタジオで録音されていて,残響がほとんどないためとてもクリアで明瞭です。
この点ではまさに好録音と言えます。
私の好きな録音ではありますが,客観的にみてオーディオ的には年代相応というところだと思います。
放送用音源から復刻されたもの。
最初に曲の説明のナレーションも入っています。
併録曲:ヘンデル:ヴァイオリン・ソナタHWV370,
ブラームス:スケルツォ,
ファリャ:スペイン民謡組曲,
ラヴェル:ツィガーヌ,
ドビュッシー:美しい夕暮れ,
サラサーテ:サパテアード
■ ドミトリー・マフチン Dmitri Makhtin
レーベル : Lontano (Warner Classics)
収録曲 : ソナタ第1番,第2番,パルティータ第1番
録音 : L'Arsenal (Metz) salle de L'Esplanade 19-21 fevrier 2007
所有盤 : 2564 69813-3 (P)(C)Lontano (輸入盤)
備考 : 演奏 録音
モダン仕様
伝統的なスタイルの引き締まった演奏。
オーソドックスで大きな特徴はないものの,インテンポで淀みなく淡々と弾き去る技量は大したもの。
技術的には隙がなく相当上手いです。
今風の演奏ではありませんが,充実度の高い好演奏です。
録音ですが,残響はそれほど多くありませんが,響きが結構あるため楽器音がやや濁り気味です。
楽器音自体はしっかりと録っているのですが,この響きのために高域の伸びが損なわれ,ニュアンスも失われています。
また,背景にブーンというノイズがかすかながら入っているのも気になります。
惜しい録音です。
ドミトリー・マフチンは,ロシア,サンクトペテルブルク出身のヴァイオリニスト。
本ディスクはVolume 1と記載されていますが,Volume 2が一向に発売される気配がありません...
■ アルベルト・コチシュ Albert Kocsis
レーベル : Hungaroton
収録曲 : ソナタ第1番,パルティータ第2番
録音 : 不明(リリース 1963年)
所有盤 : Hungarotonのサイト よりダウンロード購入
備考 : 演奏 録音
モダン仕様
恐ろしく気合いの入った力強く実直な演奏。
およそ50年前の演奏で,当時としてはこのようなアプローチが主流だったのではないかと思います。
技術的にもかなり上手く,この点はほぼ不満がありません。
リピートの省略が多いのが残念です。
録音ですが,残響はほとんどない極めて明瞭な録音で,この点で不満はありません。
古い録音のため高域の伸びが今ひとつであり,音色が古臭いです。
これは仕方ないところです。
明らかに編集されたとわかるところが何カ所かあり,これも残念なところです。
また,FLAC配信にもかかわらず,時折低ビットレートのMP3でエンコードしたときに発生するような音の歪みが感じられます。
配信のクオリティはあまり良いとは言えません。
デネス・コヴァーチュの全集 と同様,ブログ読者様から教えていただいたフンガロトンのサイトでこれを見つけた演奏です。
やはり同じくMP3とFLACで販売されており,FLACは44.1kHz/24bitのデータでした。
価格は2015年5月現在2,899フォリント,日本円換算で1,300円ほどです。
併録曲:イザイ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ作品27-4
■ コンラッド・フォン・デア・ゴルツ Conrad von der Goltz
レーベル : Cascade
収録曲 : 全集
録音 : 不明
所有盤 : 品番なし iTunes Music Store にてダウンロード販売 “よくばりクラシック 100min.×100 vol.96” より
備考 : 演奏 録音
モダン仕様
至極オーソドックスなアプローチです。
奇を衒うことなくじっくりと真摯に取り組りくんでいる様が伝わってきます。
この点に関しては好印象です。
しかし,残念ながら技術が伴っていません。
音程が悪くしかも不安定,緩急も曲想で変化するというよりは左手の難易度で発生しているように聴こえます。
ただ,それに対して右手の技術はしっかりしているので,技術に不安を覚えながらも結構聴けます。
また,パルティータ第二番の出来が図抜けて良く,上記の弱点はほとんど気になりませんでした。
録音ですが,まるで銭湯の中で録音したような音です。
楽器音が響きに埋もれてニュアンスや質感がよく伝わってきませんし,当然音色もかなり影響を受けています。
特にソナタ第一番がひどいです。
他の曲は幾分マシで,息づかいが聞こえてくるような距離感をもった録音ですが,それでもやっぱり響きが多すぎます。
以前取り上げた「クアドロマニア」シリーズ に含まれていたものの全曲セット。
クラシック入門用のシリーズだと思われます。
演奏,録音とも以前レビューしたときと変わらない印象でしたので,その記事をほぼそのまま引き継いでいます。
2015年5月時点のダウンロード販売価格が900円と安いのは有り難いのですが...
入門用としては(入門用だからこそ)演奏,録音とも,もう少しクオリティの高いものを選んで欲しいものです。
ゆったりした演奏とは思えないのですが,全曲でCD 2枚に入りきらない演奏時間でした。
このためクアドロマニアでは曲数が少なかったものと思われます。
■ ギル・シャハム Gil Shaham
レーベル : Canary Classics
収録曲 : 全集
録音 : Studio 2, Bayerischer Rundfunk, Munich, Germany in June and July, 2014
所有盤 : CC14 (P)(C)2015 Canary Classics LLC (輸入盤)
備考 : 演奏 録音
モダン仕様
上手い! 本当に上手いです。
技術のキレは抜群で,技術的制約からくるもたつきは皆無です。
優れた技術による演奏でしか得られない快感がこの演奏にはあります。
そしてとても個性的。
どの曲にも彼流の仕掛けが仕組んであります。
曲を完全に支配し,変幻自在に操る。
彼の世界に強引に引きずり込まれてしまいます。
それがまた楽しいのです。
録音ですが,残響は少し多めですが,直接音もしっかりと明瞭に質感豊に捉えられています。
音の伸びもあり,ヌケも悪くありません。
高域が少し刺激的なところはありますが,私にとっては問題ありません。
残響が多くてもこの録音ならまずまず納得出来ます。
楽器は,Antonio Stradivarius "Countess Polignac" 1699 を使用。
■ 藤原浜雄 Hamao Fujiwara
“藤原浜雄:ヴァイオリン・リサイタル2012”より
レーベル : Sonare
収録曲 : パルティータ第2番
録音 : 2012年10月11日 東京 紀尾井ホール(ライヴ)
所有盤 : SONARE1016-7 (P)(C)2013 Sonare Art Office (国内盤)
備考 : 演奏 録音
モダン仕様
渾身のバッハ。
熱く濃い,人間味あふれる,演奏者の個性が色濃く反映された,そして巨匠的風格を備えた堂々とした演奏です。
実直でブレのない音楽が素晴らしく思います。
録音ですが,ホールの残響をかなり多く取り入れていますので,そのまとわりつきがかなり鬱陶しく,
本来の音色や質感,ニュアンスが感じ取りにくいです。
ピアノとのデュオの他の曲では少し残響が抑えられていて聴きやすいのですが,
このソロだけこのような録音の仕方をされていて,余計に残念に思います。
録音レベルも若干低めです。
併録曲:ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第4番,バルトーク/ヴァイオリン・ソナタ第1番Sz.75,
ラヴェル/ツィガーヌ,ラヴェル/ハバネラ形式の小品,パガニーニ~リリアン・フックス編/カプリス第24番
■ オスカー・シュムスキー Oscar Shumsky
“Oscar Shumsky Legendary Treasures - Broadcasts & Live Performances 1940-1982”より
レーベル : DOREMI
収録曲 : パルティータ第2番
録音 : 1982年10月24日 バーゼル(ライヴ)
所有盤 : DHR-8031-3 (C)2015 DOREMI (輸入盤)
備考 : 演奏 録音
モダン仕様
シュムスキーらしい力強く引き締まった集中度の高い演奏でこれは期待通りなのですが,
その一方でミスも散見されます。
もちろんそんなに気になるものではありませんが。
ライヴ録音なので仕方ないかもしれません。
本質的なところではありませんが,シャコンヌでは一部の分散和音をあまり聴かない音型で弾いたりとちょっと変わったところがあります。
録音ですが,明らかに高域側の帯域が不足して音の伸びがなくヌケが良くありません。
ライヴとはいえ状態は良くなく,1982年の録音としては少々寂しいと言わざるを得ません。
“Oscar Shumsky Legendary Treasures - Broadcasts & Live Performances 1940-1982”と題された,
1940年から1982年のシュムスキーの様々な音源を集めた3枚組のセットから。
シュムスキーファンにとっては貴重な音源かもしれませんが,雑多な音源をとにかくかき集めてセットにしたという感じがします(ごめんなさい)。
録音も全体に良くなく冴えません。
■ 千住真理子 Mariko Senju
レーベル : Universal Classics
収録曲 : 全集
録音 : 2014年9月1日-4日 草津国際音楽の森コンサートホール
所有盤 : UCCY-1049/50 (P)(C)2015 Universal Classics (国内盤)
備考 : 演奏 録音
モダン仕様
モダン楽器による伝統的なスタイルの延長線上にある演奏で,緩急強弱は控えめですが,
一つ一つの音に勢いがあり力強く自信に満ちています。
演奏者の込めた思いがひしひしと伝わってくる芯の強い音楽です。
技術的な不満はゼロではありませんが,全くと言って良いほど気になりません。
もう少し技のキレが欲しいところもありますが,音程やリズムが崩れないため安心して聴くことが出来ます。
この録音に向けて鍛錬を重ねてこられたことが感じられます。
正直に言いますと,聴く前はあまり期待をしていませんでしたが(本当にごめんなさい...),
その予想を大きく覆す立派で充実した演奏にちょっと感動してしまいました(^^;。
録音ですが,残響感が少しあってまとわりつきが気になるものの,明瞭さは失われておらず,楽器の質感も良く感じられます。
音色もそれほど損なわれておらず,音の伸びもありますし,ヌケも悪くありません。
もちろん私としては残響をもっと抑えてすっきりと録って欲しかったと思いますが,
これでも十分良好な録音と言えると思います。
20年ぶり2回目の全集録音。
2015年はデビュー40周年とのことです。
これだけ長い間第一線で活躍を続けられて来たこと,本当に立派だと思います。
楽器は,ストラディヴァリウス「デュランティ」を使用。
■ リュディガー・ロッター Rüdiger Lotter
レーベル : OEHMS Classics
収録曲 : ソナタ第1番,第2番,パルティータ第2番
録音 : 2010年4月, 2011年7月 ミュンヘン,ゼントリンク,昇天教会
所有盤 : OC 838 (P)2010,2011 (C)2012 OehmsClassics (輸入盤)
備考 : 演奏 録音
バロック仕様
バロック・ヴァイオリンによる演奏。
丁寧で美しくとても上品に仕上げています。
強い主張はなくどちらかといえば控えめですが,
技術的にも上手く,ニュアンスが豊で味わいの深い秀演だと思います。
Vol.1ということですので,Vol.2で全集として完結するのが楽しみです。
録音ですが,やや長めの残響を伴っていますが,直接音の裏でふわっと広がるように響くので,
楽器音をあまり損なっていません。
まとわりつきはあるのでもちろん残響はもう少し控えて欲しいところですが,
音の伸びもまずまず,楽器の質感も残っていますのでこれなら許せる範囲かと思います。
残響を入れるならせめてこのような取り入れ方にして欲しいですね。