バッハ: 無伴奏チェロ組曲

(最終更新日2016/04/03)  (CD感想欄へ)

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全集(153)
演奏者 レーベル 収録年 収録曲 演奏 録音 補足
アニシモワ Cellestial2002,04 全集
バディアロフ RAMÉE2009 全集 スパッラ
バグラトゥーニ Blue Griffin2000 全集
ベイリー TELARC 2008 全集
バルドヴィーノ Fontec 1989,90 全集
バールタ Supraphon1996? 全集
バウアー CD Accord1996 全集
バウマン Teldec 1981-83 全集
ベンクトソン danacord 1984 全集
ベックマン 自主制作 2008,09 全集
ベルガー Orfeo 1984 全集
ベルガー Wergo 1995,96 全集
ブロンベリ Tonart 1992-94 全集
ベッチャー Nimbus 2000,01 全集
ブルネロ Agola 1993 全集 ライヴ
ブルネロ EGEA 2009 全集 バロックVc
ブルクハート Amati 1999 全集 バロックVc
ビルスマ Seon 1979 全集 バロックVc
カー GM Recordings1994 全集 ライヴ
カー Wigmore Hall2012 全集 ライヴ
カライ Avie 2002,03 全集 バロックVc
カザルス オーパス蔵,他1936-39全集
カサド Vox 1957 全集
クラレ Valois 1993 全集
コクセ Alpha 2001 全集 バロックVc
コッペイ aeon 2003 全集
コスタンツァ 自主制作 2008,2010 全集
ドゥマルケットCollection Etoiles2001全集
P.デメンガ ACCORD 1992 全集 バロックVc
T.デメンガ ECM 1986-2000 全集
ディアス Azica 不明 全集
ディールティエンスACCENT1991 全集 バロックVc
ディールティエンスEt'cetera2009 全集 バロックVc
デルフラー VNP 1998,2001,02全集
イースト RPR 2001,04 全集 バロックVc
エイランダーNavis Classics2014,15全集
エルウォーシー 自主制作 不明 全集
ファンロ Arsis 2007 全集
フェルツ ram 1997 全集
フェルナウド Tanidos 1986 全集
フェランド exposure 2001 全集
フィリッピーニ Fonè2012 全集
フラショー Intercord不明 全集 LP
フルニエ ADDA/Accord1959 全集 ライヴ
フォンタナローザelf atochem1996 全集
ガイヤール ambroisie2000,01 全集 バロックVc
ガスティネル naïve不明 全集
ジャンドロン Philips 1964 全集
ゲオルギアン Somm Recordings2007全集
ゲリンガス Edelweiss1989 全集
ハイモヴィッツPentatone2015 全集 バロックVc
ハーン Mediaphon不明 全集
ハナーニ TownHall 不明 全集
アーノンクールTeldec不明全集 バロックVc
ハーレル Decca 1982,83,84全集
ヘンケル LYRINX 1990 全集
ハイアム Delphian 2014,15 全集
ヒュー Kevin Mayhew不明 全集 ※演奏評保留
イッサーリス hyperion 2005,06 全集
イストミン Analekta 1997 全集 バロックVc
ヤニグロ MCA 1950年代? 全集
カンタ 自主制作 2009 全集
ケネディ Signum Classics2005全集
カーシュバウム Virgin  1993 全集
クリーゲル Naxos 2003 全集
クリンガー OEHMS 2007 全集
クニャーゼフ Triton 1996 全集
クニャーゼフ Warner 2003 全集
コトワ Warner 不明 全集
W.クイケン Arcana 2001,02 全集
S.クイケン ACCENT 2006,07 全集 スパッラ
ラ・マルカ Sony 2012 全集
リーア 自主制作 2009 全集 4種のVc
リンデン HM 1996 全集 バロックVc
Sony 1982 全集
マイナルディ Archiv 1954,55 全集
マイスキー DG 1984,85 全集
マンテル SST 不明 全集
マルチンコフスカSepm Quantum1995,98全集
マルケヴィッチ Gallo 1990 全集
マーテンス Two Pianists2009 全集
マーティ swisspan 2001 全集
メネセス Philips 1993 全集
メネセス AVIE 2004 全集
マーサー PIPISTRELLE2011 全集
ジョーンズ EMEC 2002 全集
メッツガー Campion Records不明全集
モルク Virgin 2005 全集
ミュレル passavant2007 全集
ミュラー=ショットGlissando2000全集
ナキベコヴァ WCM 2007,08 全集
ナヴァラ Calliope 1977 全集
ナイクルグ Gary Studios不明 全集
ニッフェネッガーNovalis1988 全集
オレフスキー Amatius Classics 不明全集 バロックVc
オステルターグ Coviello Classics2006全集
パテルノステルMR Classics1998 全集
ペレーニ Hungaroton1981 全集 LP
ペレーニ Hungaroton1996 全集 DVD
ペルノー Ligia Digital1998 全集 ライヴ
ピオヴァーノ Eloquentia2008 全集
プレサス 自主制作 2005,06 全集
ケラス harmonia mundi2007 全集
ラーデマーカースQuintone2013,14 全集
ラモン Arkes 2000 全集
ローマン Hungaroton2013,14 全集
ローゼン John Marks Records1993全集
ルーディン Naxos 2000 全集
サンタンブロジオ自主制作不明 全集
シーフェン Arte Nova1996 全集
シフ EMI 1984 全集
シュミットSpectrum Sound1957,58全集
シャフラン Aulos 1969-74 全集
シェパード Metronome1998 全集 バロックVc
スコチッチ Bohemia Music不明 全集
スラヴィク Diskant 2001,02,04全集
ソウサ Numérica不明全集
スパノゲ SOLAL 2005 全集
シュタルケル EMI 1957-59 全集
トイチュ IPPNW 2001 全集
テディーン BIS 1995,96,99全集
トムキンス AVIE 2010 全集 バロックVc
トルトゥリエ EMI 1960 全集
タニクリフ Linn Records2010,11全集 バロックVc
トゥロフスキー Chandos 1991 全集
ヴァシリエワ Russian Disc2004? 全集
ヴァシリエヴァ Mirare 2008 全集
ヴェチトモフ Supraphon1984 全集 LP
フィールセン GLOBE 2010,11 全集
フォーグラー Sony Classical2012 全集
ワン DG 2003,04 全集
ヴィリアンクールEA Records2003 全集
ウィスペルウェイCCS 1989,90 全集 バロックVc
ウィスペルウェイ Evil Penguin2012 全集 バロックVc
Hekun Wu MSR Classics2008 全集
ヤン・ソンウォン EMI 2004 全集
ウェンシン・ヤン La Vergne1997 全集
ゼレンカ Marquis 2007-10 全集
ツェントグラーフ MDG 1992 全集
ツォイテン Scandinavian1994 全集
ツィパーリング Flora 2002 全集 バロックVc
ズロトキン 自主制作 不明 全集
上村昇 Fontec 1991,92 全集
寺神戸亮 DENON 2008 全集 スパッラ
長谷川陽子 Victor 1999 全集
藤原真理 Denon 1982-84 全集
藤原真理 Naxos Japan2011-13 全集
向山佳絵子 Sony 1999,2000 全集
鈴木秀美 DHM 1995 全集 バロックVc
鈴木秀美 DHM 2004 全集 バロックVc
堤剛 CBS Sony 1969,70 全集 LP
堤剛 Sony 1990,91 全集
堤剛 Meister Music2008 全集
安田謙一郞 DENON 1975 全集 LP
安田謙一郞 Meister Music2015 全集
 
選集(2曲以上)
演奏者 レーベル 収録年 収録曲 演奏 録音 補足
デュ・プレ EMI/Testament1962 1,2 モノラル
ヘルメルソン BIS 1974,75,772,3,5
ジョルダン Centaur 2005 1,2,3 バロックVc
ペドラッツィ MYTHOS 不明 1,3 LP復刻
ルディアコフ mmf 2000 2,3,6
シャフラン Yedang 1971 2,3,4,5 ライヴ,モノラル
シュタルケル EINSATZ 1951 1,3,4,6 LP復刻,モノラル
ティム Berlin Classics19851,2
ヴェンツィンガーBärenreiter1960,613,4,5,6LP(分売),全集の一部
ヨーラン Cascade 不明 1,2,3,5,6
ヨッチェヴァ Gega new 2001 1,3,5
寺神戸亮 なし 2006 1,2,3 音楽配信,スパッラ
毛利伯郎 DiskArt 1997 1,2,3
 
カップリング収録盤(1曲)
演奏者 レーベル 収録年 収録曲 演奏 録音 補足
アニシモワ Cellestial2002 5 ライヴ
 
番外編
演奏者 レーベル 収録年 収録曲 演奏 録音 補足
アパップ Zig-Zag 2003 1,2,3 ヴィオラ
ギドッシ・デルカ自主製作不明 1,2,3 ヴィオラ
ローランド・ジョーンズMeridian不明 全集 ヴィオラ
ウェストファル Bridge 不明 全集 ヴィオラ
ミナリ・ベラ Long Distance不明 1,2,3 アルペジーナ
パンドルフォ Glossa 2000 全集 ヴィオラ・ダ・ガンバ
ボルツ High Tower不明 1,2,3 エレクトリック・ギター
ベルナート Mad Recordings不明 全集 ダブルベース
カーター Philips 1985 選曲集 ベース
シェドラー 自主制作 2003 1,4 エレクトリック・ベース
ミルズ 自主製作 不明 1,3 バンジョー
アディー Well-Tempered 不明 2,3,5 フルート
藤井香織 Victor 1999,2004 全集 フルート
トンプソン 自主製作 1997 1,5 ユーホニウム
フェイスアイコンについては「フェイスアイコン」を,評価点については「演奏・録音 評価基準表」をご参照下さい。
「収録曲」の番号は,組曲の曲番を示しています。

CD感想

■ フィリップ・ハイアム Philip Higham

レーベルDelphian
収録曲全集
録音2014年8月2-4日,11月19-21日,2015年2月2日 セント・ジョージ・ザ・エヴァンゲリスト教会(アッパー・ノーウッド,ロンドン)
所有盤DCD 34150 (P)(C)2015 Delphian Records Ltd. (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様 カルロ・ジュゼッペ・テストーレ1697年製/カイ=トーマス・ロート2013年製(5弦)

モダン・チェロによる正統派の演奏。 技術的にも大変上手く,丁寧かつニュアンスが豊かです。 しかし,あまりに真っ当で整いすぎた感があり,かえって印象が薄くなってしまうという, ちょっと損をしているかもしれないと思ってしまう演奏です。 ただ,そんな中で第3番だけがどうしたことかとても意欲的な生命感溢れる演奏で素晴らしく, 全集の中で浮いた存在となっています。 全曲がこのアプローチだったら文句なしだったのですが...惜しいです。

録音ですが,少し残響感があり,また残響が楽器音に被って音色を少しくすませていて正直ちょっと冴えないです。 そんなに悪くはないのですが,もっとクリアーに抜けよく,質感高く録って欲しいところです。

(記2016/04/03)

■ ニコラウス・アーノンクール Nikolaus Harnoncourt

[1]
レーベルTeldec
収録曲第1番,第2番,第3番
録音記載なし
所有盤8573-81228-2 (P)1965 Musical Heritage Soc. (C)2000 Teldec Classics International GmbH (輸入盤)
備考演奏 録音 バロック仕様 Andrea Castagneri, Paris 1744
[2]
レーベルTeldec
収録曲第4番,第5番,第6番
録音記載なし
所有盤8573-81227-2 (P)1965 Musical Heritage Soc. (C)2000 Teldec Classics International GmbH (輸入盤)
備考演奏 録音 バロック仕様 Andrea Castagneri, Paris 1744; except Suite no.6: Violoncello piccolo, Baer, Salzburg mid 17th century

バロック・チェロによる演奏。 第6番はもちろん5弦のチェロ・ピッコロ。 (P)から1965年頃の録音かと思います。 原点に立ち戻るかのような,何ともシンプルな演奏。 素っ気ないほどに無骨だけど力強い。 現代のバロック・チェロによる演奏とはだいぶ違いますが, バロックの先駆者の演奏として大変興味深いです。

録音ですが,残響感はないものの,生録的で,録音している部屋の響きが結構入っていて, 録音場所の雰囲気はおおいにあるものの,音色は損なわれていてあまり良いとは言えません。 演出感が全くないという点では良いのですが...もう少し何とかならなかったのかなとは思います。

(記2016/03/12)

■ ヨアヒム・エイランダー Joachim Eijlander

[1]
レーベルNavis Classics
収録曲第1番,第3番,第4番
録音7-9 October 2014, Doopsgezinde Kerk, Haarlem
所有盤NC15003 (C)2015 Navis Classics (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様 Gaetano Chiocchi 1870
[2]
レーベルNavis Classics
収録曲第2番,第5番,第6番
録音31 August - 3 September 2015, Doopsgezinde Kerk, Haarlem
所有盤NC15007 (C)2015 Navis Classics (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様 Gaetano Chiocchi 1870

丁寧で軽く柔らかいタッチが特徴,落ち着いた演奏です。 力強さはあまりないので印象はやや薄いのですが, 無理せず自己の技量の範囲で,優しく品のある音楽を作り上げていると思います。

録音ですが,残響が多めで楽器音に被り気味,音色がややくすんでいます。 指板をたたく音まで入っているような録音でありながら,下支えが希薄で少し捉え方が弱いようにも感じます。 もう少し直接音主体にしっかりと録って欲しいところです。

(記2016/03/05)

■ アンリース・シュミット Annlies Schmidt De Neveu

[1]
レーベルSpectrum Sound
収録曲全集
録音Recorded in 1957-1958
所有盤CDSMAC024 (P)(C)2015 Spectrum Sound (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様
LPからの復刻盤(原盤 German TELEFUNKEN LT 6626-8 ED 1 LP)

超インテンポの快感とでもいいましょうか,全く揺らぎのない超快速演奏が素晴らしい効果を発揮しています。 世の中の数多の演奏がいかに表現に苦心しテンポの揺らぎでそれを豊かに表現しようとしているのか,逆にそれがよくわかります。 このような演奏をする人が他に全く現れないのが不思議といえば不思議なのですが, バッハ演奏の可能性として,こんな単純明快な解があることに驚きを禁じ得ません。 こんなに古い演奏から無限の可能性があることを教えてもらうとは!

モノラルLP盤からの板起こしディスク。 古い盤の板起こし特有のノイズがあり,絶対的なクオリティはそれなりではあるものの,かなり良い状態で復刻されています。 多少のばらつきはあるものの,元々の録音が残響を控えた明瞭なものなので, 鑑賞には十分堪えうるというのが本当に有り難いことです。

なお,後述のforgotten recordsの復刻よりも,こちらの復刻の方がより鮮明で聴きやすいです。

(記2016/02/13)

※本ディスクと同じ演奏のディスクを2010年にレビューしていました。 前回のレビュー時とだいぶ印象が異なりましたので, 前回どのような感想であったかをせっかくですので以下に残しておきます。

[2]
レーベルforgotten records
収録曲全集
録音Recorded in 1957-1958
所有盤fr 118-9 forgotten records 2009 (輸入盤) *CD-R
備考演奏 録音 モダン仕様
LPからの復刻盤(原盤 Ducretet-Thomson 300-C-043/5)

細やかに表現しようとか,ニュアンス豊かに表現しようとか,歌うとか,そういう気は全くないようです。 緩急も強弱もほとんどなく,フレーズの変わり目での「ため」なども全くありません。 「棒弾き」と紙一重というところですが,いやいや,さにあらず。 すさまじいテンポで疾走し(第一番のプレリュードなど1:26という快速!), あえて<表現しない>ことで独特の軽快さを勝ち得ています。 疾風だが怒濤ではないところに面白さがあります。

当時に比べて演奏様式の研究が進んだ現代ではこんな無茶なアプローチをする演奏家はまずいないと思います。 そういう面からこの演奏を過去の遺物と切って捨てるのは簡単でしょう。 しかし,そういう研究の成果を取り入れた現代の多くの演奏と比べても, 楽しさ,ワクワク感では決して引けを取りません。 聴く人が音楽に何を求めるかによりますが,歴史的に正しい演奏様式であるかどうかということと, 音楽として楽しいかどうかということは別の問題であるということをこの演奏は教えてくれます。 そういう意味でもこの演奏は大変貴重であると思います。

おそらくモノラルのLPからの復刻盤です。 アナログ盤特有のスクラッチノイズは全くといっていい程なく,これが本当にLPからの復刻なのだろうか? と耳を疑ってしまうほどです。 丹念にノイズ除去作業をされたのではないかと想像します。

古い録音なので帯域が狭いのはいかんともし難いところですが,元々の音の捉え方は良く, 残響などの邪魔な音もあまりないため,古い録音の割には十分聴けると思います。

復刻レーベルのforgotten recordsのサイトから直接注文して入手しました。 Webを見ていると,オリジナルのLPは超レア盤として有名だったようです。 いつも訪問してくださる方からこの盤の存在を教えていただきました。 貴重な情報を有り難うございました。

(記2010/11/28)

■ マット・ハイモヴィッツ Matt Haimovitz

レーベルPentatone
収録曲全集
録音2015年4月 芸術文化アカデミー(ニューヨーク)
所有盤PTC 5186555 (P)2015 Pentatone Music (C)2015 Oxingale Production (輸入盤)
備考演奏 録音 バロック仕様 A=415Hz

バロック・チェロでの演奏。 タイトルが“THE CELLO SUITES According to Anna Magdalena ”とありますので, アンナ・マグダレーナの写筆譜に従った演奏のようです。 ただし,第1番Gigueの写筆譜には存在する32小節目の半拍しかない小節はやっぱり省略されていますね...

持ち前の技術力の高さを活かした大胆で闊達な演奏。 吸い付くような弓遣いによる起伏が大きいフレージングが印象的です。 粘りのあるニュアンスに富んだ音色も素晴らしいです。 バロック楽器とのことですが,ざらつきのあるガサガサした音色は確かにバロック楽器のそれなのですが, 音楽自体はむしろモダンな印象を残します。

録音ですが,残響は多めで楽器に被り気味,ややモゴモゴとして伸びのない,濁った精彩に欠ける音になってしまっています。 演出感もかなり感じられます。 許容範囲だとは思うのですが,もっとすっきりと,そして生々しく録って欲しかったと思います。

本ディスクはハイモヴィッツ氏2回目の録音。 楽器は,ゴフリラー(1710)とチェロ・ピッコロコルマー(18世紀)を使用。 調律はA=415Hz。

(記2015/12/23)

安田謙一郎 Ken-ichiro Yasuda

レーベル Meister Music
収録曲 全集
録音データ Yokosuka Bayside Pocket, Yokohama, 16th-18th April 2015
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 MM-3053-54 (P)(C)2015 MEISTER MUSIC (国内盤)

朴訥とした語り口の温かく優しい音楽が印象に残ります。 歳を重ねた結果辿り着いた境地とでも言いましょうか。 音楽として決して緩むことなく前向きでありながらこの味わい深さをを出せるのはさすがです。 技術的にももちろんしっかりとしているのですが,キレは少し甘くなっているかもしれません。 ただそれは意図的かもしれません。

録音:

残響自体は少ないのですが,比較的遅延の少ない反射音が多め,直接音よりもその反射音の比率が高く,音を濁す要因となっています。 またそれによって高域の伸びが阻害され,詰まったモゴモゴとした冴えない音質になってしまっています。 比較的マイク位置は近いと思うのですが,それにしては明瞭感も悪く楽器の質感も損なわれ過ぎです。 もっとクリアで透明感のある音,楽器の質感をストレートに伝えてくれる録音をして欲しいものです。

P.S.

安田謙一郎さん2回目の録音。 1回目は1975年ですので,ほぼ40年ぶりの録音ということになります。 録音の音質については1回目の方がはるかに良好で,好録音でした。 今回,このような音質で録音をされたことがとても残念でなりません。

(記2015/08/08)


マイケ・ラーデマーカース Mayke Rademakers

レーベル Quintone
収録曲 全集
録音データ September 2013 & July 2014, Podiumkerkje, Grevenbichr [NL]
使用楽器 Saskia Schouten(モダン仕様)
所有盤 Q14004 Quintone (輸入盤)

音楽の流れはなかなか良く,意欲的で躍動感があるところは良いと思います。 技術的にはわずかにキレが悪いのが残念なところです。 第5番までは健闘していますが,第6番はちょっと苦しいです。 また,どのような版の楽譜を用いられているのかわかりませんが, あれっ?と思う聴き慣れない音が何カ所か混じっているのが気になります。 楽譜を読み間違えているということはないと思うのですが...

録音:

残響過多というわけではありませんが,響きで楽器音が濁っていて全く冴えない音になってしまっています。 残響が全く音楽的に寄与していません。 私には,残響があった方が良いから入れた,くらいの安易な考え方で録音しているようにしか聴こえません。 好録音とは程遠い残念な録音です。

P.S.

最後にヤマハのエレクトリック・チェロ(サイレント・チェロ SV-110)を用いた即興的な楽曲が収録されていて, こちらの方が楽しめました。

(記2015/02/01)


藤原真理 Mari Fujiwara

レーベル Naxos Japan
収録曲 全集
録音データ 2011年12月19-20日,2012年1月23-24日,2月12日,2013年4月4-5日,11月8日 武蔵野市民文化会館 小ホール
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 NYCC-27275-6 (P)(C)2014 Naxos Japan (国内盤)

温かく滋味豊か,それでいてなおかつ音楽がとても弾んでいます。 肩肘張らず力を抜いて思うままに自由に楽しんで弾いておられるように感じます。 技術的にはぎりぎりまで,隅々まで追い込んではいませんので,私としては少しその点が不満として残るのですが, だからこそこのような楽しげな音楽に仕上がっているのかな,とも思います。

録音:

指板をたたく音までしっかりと入るような録音で,ボディ感がたっぷりあるところは良いのですが, 飽和感・圧迫感があって音に伸びがなくモゴモゴしていますし,また歪みっぽい音割れのような雑味があるのはいただけません。 機材に問題があったんじゃないかと思ってしまいます。 う~ん...

P.S.

藤原真理氏ほぼ30年ぶりの2回目の録音(1回目は1982-84年の録音)。

(記2015/01/28)


ロッコ・フィリッピーニ Rocco Filippini

レーベル Fonè
収録曲 全集
録音データ Volterra, Italy, Persio Flacco Theatre, August 2012
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 Fonè 125 2SACD (c)(p)2013 Audiophile Productions (iTunes Music Store)

オーソドックスで無理のない落ち着いた味わいのある演奏です。 技術的な衰えがあるのか,弓遣いのキレが少々良くなくモゴモゴしたり粒が不揃いになったりと, この面では不満が多いですが,音程と基本的な音楽の骨格がしっかりとしているため,結構聴けます。

録音:

残響を控えめにして楽器音を中心にしっかりと捉えているので私の好みの録音のはずなのですが, なぜかニュアンスや楽器の質感が感じ取りにくく,もどかしさが残ります。 なぜなのか理由がよくわかりませんが,もしかしたら少しオフマイクなのかもしれません。

P.S.

フィリッピーニ氏2回目の録音(1回目は1988,89年の録音)。 SACDで販売されていたようなのですが,気がついたときにはすでに完売になったのか, どこも在庫がない状態で再入荷の見込みがなさそうでしたのでiTunes Music Storeでダウンロード購入しました。 AAC 256kbpsでした。

(記2014/11/09)


ミクローシュ・ペレーニ(Miklós Perényi)

レーベル Hungaroton
収録曲 全集
録音データ1981年
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 SLPX1270-72 (P)1982 Hungaroton (輸入盤) (*LP)

適度に肩の力を抜き,まるでこれを弾くのが日課であるかのように淡々と,あくまで自然に演奏されています。 しかし,その音楽は前向きで意欲的であり,また同時に,味わい深さを持っています。 これは完璧志向の演奏ではありません(細部へのこだわりがあまり感じられません)。 私には八割程度の力で弾いているように感じられます。 だからこそこれだけ余裕のある,懐の深い演奏になっているのではないかと思います。

録音:

極めて明瞭度の高い録音。 音の捉え方としてはかなり理想に近いと思います。 若干の響きが感じられ,わずかながら音色に色がついてしまっていますが, ほとんど無視できるレベルにとどまっています。 弓が限から離れる瞬間の微妙な音のかすれまできっちりと聴こえてきます。 演奏者の味わい深い音色が残響に邪魔されることなく堪能できる好録音です。 このような素晴らしい演奏が,これまた素晴らしい状態で残されたことに感謝します。

P.S.

今回も,T.Y.さんのご厚意により貴重な演奏を聴かせていただくことができました。 期待に違わぬ素晴らしい演奏でした。 有り難うございました。 演奏者本人がCDによる再発売を許可しないといった話をどこかで見ましたが, 本当にもったいない話だと思います。 CD化を強く強く希望します。

(記2007/12/03)

CD image

読者様からの情報で,Hungarotonのサイトでダウンロード販売されていることがわかりました。 これは本当に嬉しい発売情報です。 有り難うございました。

販売はMP3とFLACとがあり,FLACは44.1kHz/24bitのデータでした。 価格はFLACで8297フォリントで,2014年10月時点の換算で,およそ3,700円くらいになります。

Hungarotonダウンロード販売ページ

(記2014/10/26)


ディッタ・ローマン(Ditta Rohmann)

レーベル Hungaroton
収録曲 全集
録音データ (1)July, 2013 at Hungaroton Studio, (2)January 25-28, 2014 at Hungaroton Studio
使用楽器 モダン仕様 金属弦 A=415Hz,バロック弓
所有盤 (1)HCD 32731 (P)(C)2013 Fotexnet Kft. (輸入盤) No.1, 3, 5を収録
(2)HCD 32732 (P)(C)2014 Fotexnet Kft. (輸入盤) No.2, 4, 6を収録

モダン仕様で金属弦ながらA=415Hzでバロック弓(第6番も5弦チェロに金属弦)という少し変則的な楽器選択ですが, 演奏自体はオーソドックスで,穏やかで上品,流麗で爽やかささえ感じる好演奏です。 技術的にも大変上手いのですが,誇示するようなところが全くないのも好感が持てます。

録音:

残響が少し多めで付帯音が気になりますが,直接音は十分にあって明瞭に適切な距離感で捉えたまずまずの好録音です。 楽器の胴体の深々とした響きを上手く録っていると思いますし,弓遣いのニュアンスも感じられます。 こういうチェロの録音は好きです。 しかし,やっぱり残響を少し取り入れすぎかな...惜しいです。

(記2014/03/02)
(記2014/08/11) (2)の発売で全集化,再レビュー


ニーナ・コトワ(Nina Kotova)

レーベル Warner Classics
収録曲 全集
録音データ Purchase College Performing Arts Recital Hall (録音時期記載なし)
使用楽器 1679 “Du Pre” Stradivarius Cello (モダン仕様)
所有盤 0825646394111 (P)2014 Nina Kotova (C)2014 Warner Classics (輸入盤)

ジャケット写真の容姿からは想像できない力強さで大胆に表情を刻み込んでいく演奏です。 ガリガリと弾くタイプなので音色は荒れ気味で美しくありませんが,この無骨で太く力強い弾きっぷりは独特の魅力を放っています。 技術的には粗削りで隅々までコントロールが行き届いているとはとても言えませんが, これだけ積極果敢に攻める演奏でほとんど破綻をきたしていないのは立派です。

録音:

この太い音色は録音によるところも大きいと思います。 残響はやや多めですが,比較的オンマイクでボディ感たっぷりに録音しているため悪い印象ではありません。 ただ,やや飽和気味で歪みっぽいのが残念なところです。

(記2014/07/27)


パブロ・カザルス(Pablo Casals)

レーベル オーパス蔵
収録曲 全集
録音データ 録音 1936年~1939年
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 OPK 2041/2 (P)2010 オーパス蔵 (国内盤)

カザルスの無伴奏チェロ組曲を聴くときに,この組曲をこの世の中に復活させた功績を抜きにして聴くことが難しいのですが, 技術的なレベルがずっと向上し,奏法の研究も進んだ現代の優れた演奏と比較して,時代を感じさせるものであることは否めません。 しかし,決して色あせることなく私たちの心に響いてくるのは,彼のこの曲に対する熱意が音として表れ, それが音楽の本質を突いているからに他ならないと改めて感じる次第です。

録音:

SPの時代の録音がどのように行われたのかは知らないのですが,出来るだけ鮮明な音で楽器の音を残そうと努力されたはずです。 録音からもうすぐ80年になろうという現代においてもこれだけのクオリティで鑑賞できるのは,その努力のおかげと言えるでしょう。 もし現代の多くの録音のように残響まみれで録音がされていたなら,こんなに良い音で楽しめなかったことでしょう。

カザルスのバッハ無伴奏チェロ組曲のディスクはものすごく多くのリリースがあって,いったい何種類の復刻があるのかがわからないのですが, 私が聴いた,オーパス蔵盤(2010年リマスター),Warner ClassicsのSACDハイブリッド盤(2011年リマスター),古くからあるEMI盤,Membran盤,Naxos盤の中では, このオーパス蔵盤が最も良好な音質と思いました。 SP盤のトレース音がそのまま入っているために多少耳障りではありますが,鮮明さも失われず,最も音に伸びがあり,自然に聴こえました。 ノイズとしての低域成分もカットされずに入っているのは善し悪しだとは思いますが。

その次に良かったのはWarner Classicsの2011年のリマスター盤で,今選ぶならこの2つのどちらかでしょう。

(記2014/07/05)

CD image

パブロ・カザルス(Pablo Casals)

レーベル Warner Classics
収録曲 全集
所有盤 WPGS-50110/1 (P)2011 Warner Classics (国内盤)

2011年にリマスターされたSACDハイブリッド盤。 SP盤再生時特有のノイズは多少緩和されていますが,無理に消すようなことはしていないようです。 昔からあるEMI盤に比べると,格段に音色が自然です。 ただ,やはりノイズ低減処理の影響か,オーパス蔵盤に比べるとわずかに音の伸び,鮮明さが失われているように感じられます。 真っ当な音質ですが,少し地味な印象です。

(記2014/07/05)

CD image

パブロ・カザルス(Pablo Casals)

レーベル EMI
収録曲 全集
所有盤 TOCE-11567/8 (P)2000 東芝EMI株式会社 (国内盤)

昔からあるEMI盤ですが,SP盤のノイズ低減処理の影響もあるのでしょうが,ずいぶんとクセのある音色です。 中域から高域にかけて盛り上がっているような感じで,ややキンキンしていますし,伸び,自然さに欠けます。 また,復刻の質のばらつきも多いです。 さらに,特に第1番は最近の復刻と比べるとピッチが低めに感じられました。 今,このディスクを選択する理由はあまりないと言えるでしょう。

(記2014/07/05)

CD image

パブロ・カザルス(Pablo Casals)

レーベル Membran
収録曲 全集
所有盤 232675 Membran (輸入盤)

SP特有のノイズは私の聴いた中では最も低減されています。 驚くほど少ないです。 しかし,まるで低ビットレートのMP3でエンコードしたときのようなシュルシュルという独特のブリージングがあります。 ノイズ低減処理の影響だと思いますが,残念ながら人工的な処理のにおいが強く,これはあまり良くありません。

(記2014/07/05)

CD image

パブロ・カザルス(Pablo Casals)

レーベル Naxos
収録曲 全集
所有盤 8.110915-16 (P)2000 HNH International Ltd (輸入盤)

復刻の質としては中庸です。 ノイズを取るわけでもなく,さりとてオーパス蔵のような音を目指すわけでもなく, よく言えば素直な復刻ですが,悪く言うとただ単にSPを再生して録っただけ,という感じがしないでもありません。 録音レベルも若干低く,また,録音に積極的な意志が感じられず,残念ながらあまり良い印象ではありませんでした。

(記2014/07/05)


レイチェル・マーサー(Rachel Mercer)

レーベル PIPISTRELLE MUSIC
収録曲 全集
録音データ Walter Hall, Tronto, September 22 & 23, 2011
使用楽器 1696 Bonjour Stradivarius Cello (モダン仕様)
所有盤 PIP1403 (C)2013 Rachel Mercer (輸入盤)

技術的にそれほど上手いというわけではないのですが, 破綻することなく音楽的に大変よくまとまとめていると思います。 楽器を良く響かせ朗々としていますし,温かく柔らかで大らかな表情が魅力的です。

録音:

やや間接音が主体の録り方となっていて音色がくすみがちですが, 演奏者の呼吸が感じられるような間合いで楽器音を太く捉えているので, それほど悪い印象ではありません。 ただやはり私の好きなタイプの録音とは違います。

(記2014/04/12)


クリスティアン・ピエール・ラ・マルカ(Christian-Pierre La Marca)

レーベル Sony Music Entertainment(Vogue)
収録曲 全集
録音データ Paris, Eglise de Bon Secours, du 3 au 12 et le 22 Octobre 2012
使用楽器 Domenico Montagnana(Venise, 1740), "Le Vaslin" d'Antonio Stradivarius(Cremone, 1725)(モダン仕様)
所有盤 88765439332 (P)(C)2013 Sony Music Entertainment (輸入盤)

若者らしい躍動感のある清々しい演奏です。 軽めのタッチで跳ねるような弾き方がスピード感を生み出しています。 技術にも長けていて安定感があり隅々にまで丁寧に神経が行き届いています。 これはなかなか素晴らしい出来だと思います。

録音:

息づかいまで聴こえるような録音で,残響は少しあるもののしっかりと楽器音を捉えた良好な録音です。 楽器の質感もしっかりと聴き取ることが出来ます。 欲を言うともう少しすっきりと高域の伸び感があればなお良かったと思うのですが。

(記2014/01/26)


ヤン・フォーグラー(Jan Vogler)

レーベル Sony Classical
収録曲 全集
録音データ December 10-12 & 17-19, 2012, Suny Purchase, New York
使用楽器 'ex Castelbarco-Fau' Stradivarius(モダン仕様)
所有盤 88697892572 (P)(C)2013 Sony Music Entertainment Germany (輸入盤)

正統的ながら快活で開放的で楽しい演奏。 技術力の高さをフルに活かして自在で幅広い表現を見せています。 モダン楽器の良さがいかんなく発揮されていて素晴らしいと思います。

録音:

残響が多く混濁がひどいです。 歪んだというか飽和したというか,音がつぶれてすごく汚い音になってしまっています。 元々の音は綺麗だったであろうと想像に難くない演奏だけに,このひどい録音は残念でなりません。

(記2013/09/16)


コーリン・カー(Colin Carr)

レーベル Wigmore Hall
収録曲 全集
録音データ Recorded live at Wigmore Hall, London, on 5 May 2012
使用楽器 Matteo Goffriller(モダン仕様)
所有盤 WHLive0060/2 (P)(C)2013 The Wigmore Hall Trust (輸入盤)

至ってオーソドックス。 力を抜いて軽く流すような自然体の演奏であり,微妙な陰影によってニュアンス豊かに仕上げています。 緩急強弱も自然な呼吸感に沿って付けられているため,違和感がありません。 やや地味な印象を受けるのですが,聴くほどに味わい深さが増してくる好演奏です。

録音:

ライヴ録音。楽器音が主体ですが,少し距離があるのか,鮮度や質感はやや失われ気味で,高域のヌケも今ひとつ, すっきりしない録音です。 惜しいです。

P.S.

カー氏2回目の全集録音と思われます(→1回目)。 1回目もライヴでした。

(記2013/09/11)


アントニオ・メネセス(Antonio Meneses)

レーベル AVIE
収録曲 全集
録音データ Recorded 2-5 June 2004 at St Martin's Church, East Woodhay, Barkshire, England
使用楽器 Jean-Baptiste Vuillaumme, Paris c.1840(モダン仕様)
所有盤 AV0052 (P)(C)2004 Antonio Meneses (輸入盤)

モダン楽器として至極オーソドックスですが,ダイナミックかつ繊細に仕上げられた充実感のある演奏です。 個性を前面に出さず派手さもありませんが,モダン楽器の表現力を活かし奥行き,深みのある音楽となっています。 技術面も申し分ありません。

録音:

少し響きはありますが,直接音主体に楽器音をしっかりと捉えているので(鼻息までしっかりと捉えています), 明瞭で聴きやすい録音です。 音色は響きの影響を少し受けていますが許容範囲ですし,ヌケも悪くありません。

P.S.

ブラジル出身のチェリスト,メネセス氏2回目の全集録音(→1回目)。

(記2013/01/12)


ピーター・マーテンス(Pieter Martens)

レーベル Two Pianists
収録曲 全集
録音データ Recorded at Endler Hall, Stellenbosch University, South Africa, Sep 7-13, 2009.
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 TP1039275 (P)(C)2012 TWOPIANISTS RECORDS (輸入盤)

第1番のプレリュードが1:47という快速演奏にのっけから圧倒されるのですが, 全体に速いテンポで駆け抜けていきます。 とても意欲的で躍動感にあふれ,ニュアンスに富み細部にまで神経の通った気持ちの良い演奏です。 楽器の響かせ方も良く雑味の少ない綺麗なトーンがこれまた素晴らしいです。 技術的にも音楽的にも優れる好演奏です。

録音:

やや残響を伴っていますが,楽器音を主体にしっかりと捉えているためまずまず良好です。 しかしやはり残響のまとわりつきの影響が気になります。 音を曇らせるほどではないのが救いです。 中低域は充実しており,特に低域がブーミーになることなく良く伸びているのが良いと思います。

P.S.

マーテンス氏は1971年生まれ,南アフリカ出身のチェリスト。 公式Webサイトがあります。

(記2013/01/04)


ピーター・ウィスペルウェイ(Pieter Wispelwey)

レーベル Evil Penguin Records
収録曲 全集
録音データ Recorded at the Serendipitous Studio in Mechelen (Belgium), June 2012
使用楽器 baroque cello(Pieter Rombouts, 1700), violoncello piccolo(Anon, 18th century) A=392Hz(バロック仕様)
所有盤 EPRC 0012 (P)2012 Evil Penguin Classic (輸入盤)

バロック・チェロでの演奏。 A=392Hzという低いピッチで,絶対音感の全くない私でも,おやっと思ってしまうくらい低いです(もちろんすぐに慣れますが)。 「語るバッハ」とは良く言ったもので,この演奏も緩急強弱,抑揚という言葉を超えたフレージングの妙がこの演奏にはあります。 それが自然で嫌みのない形で実現されていることに感心します。

そして,さらに各組曲が一つの物語であり,それぞれの曲や楽節で次々とシーン展開していくかのごとく表情が変わっていく, これが面白いと思いました。 この点では特に第4番が今まで聴いたことのないような感じで良かったです。

ただ,なぜこれをバロック・チェロで演奏されたのかがよくわかりませんでした。 バロック・チェロらしい弾き方をされている感じがあまりなく, これならモダン・チェロの方がもっと多彩な表情を楽器から引き出せるのではないかと。

録音:

指板を叩く音がはっきりと聞こえるくらい近いマイクポジションで,濃厚に質感高く捉えています。 残響もそれなりに多めに取り込まれていますが,上記の理由で大きな影響は受けていません。 ただ,この音の捉え方にしては若干ヌケが悪くすっきりしないところがあり,この点は惜しく思います。 録音レベルが高いのは好感が持てます。

P.S.

ウィスペルウェイ氏3回目の全曲録音。

(記2012/10/13)


リチャード・タニクリフ(Richard Tunnicliffe)

レーベル Linn Records
収録曲 全集
録音データ Recorded at St. George's Church, Chesterton, Cambridge, UK on 12th-16th October 2010, 14th-16th February 2011 and 21st November 2011
使用楽器 Cello attributed to Leonhard Maussiell, Nuremberg c.1720, 5-string cello piccolo by Pierre Malahar, Bordeaux 1726, Pitch: A=415Hz(バロック仕様)
所有盤 CKD 396 (P)(C)2012 Linn Records (輸入盤)

バロック・チェロでの演奏ですが,ことさら楽器を意識させるようなところのない,ごく自然で軽やかな弾きっぷりが心地よい印象を残します。 技術的にもすごぶる上手く,安定感も申し分ありません。 この演奏で一番良いと思ったのがガット弦特有の引っかかりの強い,雑味の多い音色です。 美しくないと思われる方も多いかと思いますが,私がこの演奏で唯一バロック・チェロで良かったと思える点がこの音色です。 誤解を承知で書きますが,ロック・ギターのディストーションにも通じるところがあると思います。

録音:

良く響く教会での録音で,明らかに残響過多。 残響時間が長い上に楽器音に大きく被って音色を大きく損なっています。 楽器音を比較的近くで捉えているために,これだけ被ってもそれなりに質感は感じられるのと, オーディオ品質的にはきめの細かい高品質録音と言えると思いますので, 残響を許せる方なら問題なく楽しめるかもしれませんが, 私としては全く良いと思えない録音です。 残念です。

P.S.

リチャード・タニクリフ氏は,HMV Onlineによるとイギリスの古楽オケ「エイジ・オブ・エンライトメント管」の首席奏者のほか, イングリッシュ・バロック・ソロイスツやロンドン・クラシカル・プレイヤーズ,アカデミー・オブ・エンシェント・ミュージック, イングリッシュ・コンサート,フレットワークなど名だたる古楽器オケやアンサンブルで大活躍してきたチェリスト,とのことです。

(記2012/10/08)


クリストファー・コスタンツァ(Christopher Costanza)

レーベル 自主制作
収録曲 全集
録音データ The Banff Centre, Banff, Alberta: November 17-18, 2008(Suites 1-3) and November 21-23, 2010(Suites 4-6)
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 (C)2012 Christopher Costanza (輸入盤)

モダン楽器による演奏。 力強く意欲で満ち溌剌としています。 正攻法の演奏で明るく開放感のある伸びやかな表現がなかなか良いです。 演奏者自身が楽しんで弾いているのが伝わってきます。 技術的にも安定感があります。

録音:

比較的マイクポイントが近く,指板を叩く音が入るほどしっかりと楽器音を捉えています。 残響感はあまりないのですが,部屋の響きの影響か,音色はややくすんでいてすっきりしません。 楽器の捉え方は良いのですが,収録場所が良くない感じです。 惜しいです。

(記2012/09/05)


キリーヌ・フィールセン(Quirine Viersen)

レーベル GLOBE
収録曲 全集
録音データ Waalse Kerk, Amsterdam, 19-21 October 2010, 1-3 March 2011
使用楽器 Joseph Guarnerius Filius Andrea 1715(モダン仕様)
所有盤 GLO 5244 (P)(C)2011 Klaas Posthuma Productions (輸入盤)

モダン楽器による演奏。 オーソドックスで落ち着きと品格があります。 自己主張が強くはありませんが,きめ細かく丁寧に自然な呼吸感で表情付けされて陰影に富む音楽が印象深いです。

録音:

まとわりつく残響が少しあって音色を損なっていますが,明瞭感と質感はそこそこ感じられる良好な録音です。 もう少しヌケ良く録っていれば文句なしなのですが,惜しいです。 残響が許せる方ならかなり良い録音と言えるかもしれません。

P.S.

フィールセン氏は1972年生まれ。 ロストロポーヴィチ国際コンクール,ヘルシンキ国際チェロ・コンクール,チャイコフスキー国際コンクールなどで入賞歴を持つということです。 名前について,「クヴェリーヌ・フィエルセン」と記載してあるサイトもありました。

(記2012/03/31)


安田謙一郞(Ken Yasuda)

レーベル DENON
収録曲 全集
録音データ 埼玉県川口市民会館ホール, 1975年2月4-6日(No.1,2),1975年4月8-10日(No.3,4),1975年4月17/18日(No.5),1975年7月23/24日(No.6)
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 写真上:DENON OX-7045-7-ND 1976年6月25日発売 (国内盤) (*LP)
写真下:DENON COCO-73263-4 (P)2011 日本コロムビア (国内盤) (*復刻CD)

全く飾らない,素直さが魅力です。 日常の姿そのままというようなカジュアルな雰囲気が,かえって良い結果を生んでいると思います。 作品の奥深さに迫ろうというアプローチではありませんが,技術的な余裕度の大きさもあり,決めるところはビシッと決めて, 気楽さ楽しさと同時に引き締まった印象も残します(ただ,技術的な完成度の高さは追い求めていないようですが)。

何気ない演奏なのにこんなにワクワクするのはなぜだろうかと思います。

録音:

録音がこれまた最高です。 ホールでの録音にも関わらず,間接音の取り込みは最小限(ほとんど気にならないと言って良い), 直接音主体に適度な距離感で,細やかなニュアンス,楽器の質感までが感じられる,親近感のある音の捉え方をしています。 音色も極めて自然です。 この演奏の雰囲気と音の捉え方が最高にマッチした好例です。 演奏の素晴らしさをストレートに伝えてくれる好録音です。

P.S.

今回もT.Y.さんのご厚意により貴重な演奏(しかも演奏も録音もいい!)を聴かせていただくことができました。 有り難うございました。

こんな素晴らしい作品が未だに復刻されることなく埋もれているとは信じられません。 DENONは即刻この貴重な財産を復刻すべきです。 正規盤での高品質な復刻を強く希望します。

(記2009/08/04)

2011年末にCDで復刻されました! DENONさん,有り難うございます!

(記2012/01/04)


サラ・サンタンブロジオ(Sara Sant'Ambrogio)

レーベル 自主制作
収録曲 全集
録音データ (a)Church of the Ascension, New York City(No.1,3,5)
(b)West End United Methodist Church, Nashville, TN (No.2,4,6)
使用楽器 Matteo Goffriller 1715(モダン仕様)
所有盤 品番なし (輸入盤)
備考 参考url: 公式Webサイト

今となっては珍しくなった,ハイテンションでコテコテの濃いバッハ演奏。 意欲的でダイナミックで聴いていて面白いのは確かですが, 唐突なアクセントにビクッとさせられたり,大げさな表現に聴いている方も少々疲れるかなとも思います。 技術力はありますが,音色は少し荒れ気味で美しくないのも少し残念なところです。

録音:

楽器音自体はしっかり捉えているものの,響きも多く取り入れているため, 明瞭感が損なわれ,高域の抜けも悪くなっています。 録音レベルが高めに設定されているのは良いのですが。 (b)のNo.2,4,6の方が幾分すっきりしていて聴きやすいです。

P.S.

第8回チャイコフスキー国際コンクール(1986年)第3位という実力の持ち主。

(記2009/06/04)
(記2011/10/29) No.2,4,6を追記


ミクローシュ・ペレーニ(Miklós Perényi)

レーベル Hungaroton
収録曲 全集
録音データ Studio of Musical Programmes, 1996
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 HDVD 32421 (P)2005 HUNGAROTON RECORDS LTD. (輸入盤) *DVD

この演奏を何と形容したらよいのか本当に難しいです。 細部まで磨き上げた演奏でもなく,キレのある演奏でもない,「完璧」という言葉も当てはまらない。 最初聴いたときは正直言ってそんなに上手くないとも思いました。

しかし,聴き進むにつれてこの演奏はそんな次元で語れるものではないと感じてきました。 愚直なまでにしっかりと弾いていて,スピード感,流動感に乏しいのに, なぜこんなに音楽が生き生きしているんだろうか? 不思議でなりません。 気がついたらすっかり彼の音楽の世界に引き込まれてしまっています。 つくづく音楽は人そのものなんだなぁと思います。 素晴らしい演奏に感謝!

録音:

この録音,私にとってはほぼ理想的で完璧に近いです。 もともとは放送用に収録された映像ということで,スタジオで録音されています。 残響はまったくないと言ってよく,生の音が適切な距離感でしっかりと捉えられています。 まるで自分のためだけに間近で弾いてくれているようです。

一方,オーディオ的にみると,ステレオと書いてありながら実際にはほぼモノラルであり, 録音レベルも低めで良好とは言い難いです。 Dolby Digitalで圧縮されているのもマイナスです。 収録条件は申し分ないのですが,このオーディオ品質はちょっと残念です。

Webでの録音のコメントを見ても好意的に書かれているものは少ないのですが,私はそうは思いません。 オーディオ品質はともかく,この素晴らしい演奏が理想的条件で収録されたことに本当に感謝したいと思います。 ここでも音楽にとって残響は必ずしも必要ではないこと,残響のないこういう録音がどれだけ的確に音楽を伝えてくれるか, ということを見事に証明してくれました。

(記2011/09/23)


ターニャ・トムキンス(Tanya Tomkins)

レーベル AVIE
収録曲 全集
録音データ Recorded 14-19 May 2010 at Green Music Center, Sonoma State University, Rohnert Park, California, USA
使用楽器 Lockey Hill, London, 1798, Dominik Zuchowicz, 1985 (5 string cello), a=415Hz(バロック仕様)
所有盤 AVIE Records AV2212 (P)(C)2010 Tanya Tomkins (輸入盤)

バロックチェロ使用。 確かにバロックチェロの音色なのですが,そうであることが意識されないごく自然な演奏で耳によく馴染んできます。 落ち着いたテンポで奏でられる優しく穏やかな音楽に心和みます。 技術的にも上手くこの点でもまったく問題ありません。 装飾などほとんど入らないのですが,なぜか第6番のsarabandeだけ,楽譜通り演奏したあとに編曲といって良いくらい大胆に手を入れて再度繰り返されます。 これはこれで面白い試みだと思います。

録音:

少し響きを伴っていますが,直接音主体に楽器音が捉えられているため,明瞭感もまずまず良好, 音色も自然で質感もそれなりに感じられて好印象です。

P.S.

公式Webサイトがあります。

(記2011/05/01)


Hekun Wu

レーベル MSR Classics
収録曲 全集
録音データ Recorded in June, 2008 in Hudson Hall, Rogers Music Center at Willamette University, Salem, Oregon.
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 MS 1385 (P)(C)2010 Hekun Wu (輸入盤)

正直に言うと技術的にはあまりキレがありません。 残念ながらちょっと苦しいところが散見されます。 ですが,丁寧に丹念に,そして積極性を持って弾かれているので,そういう誠実で温かさの感じられる,好感の持てる演奏です。

録音:

奏者の息づかいが感じられるくらいの距離感で捉えているのですが, 残響が多く被りが相当あって辛うじて音の芯が感じられるもののやっぱり不明瞭でモゴモゴしてしまっています。 低域のバックグラウンドノイズがかなり感じられますが,この点はあまり気になりません。 もう少し残響を抑えて明瞭感と質感を出せばかなり良い録音になったのではないかと思うのですが。 惜しいと思います。

P.S.

氏名の日本語表記が全くわかりませんでした。 米国オレゴン州のウィラメット大学の准教授とのことです。 “The Tao of Bach”(「道」)というタイトルが付いています。

(記2011/02/26)


ドミトリー・バディアロフ(Dmitry Badiarov)

レーベル RAMÉE
収録曲 全集
録音データ Recorded in May 2009 at the church of Notre-Dame de l'Assomption, Basse-Bodeux, Belgium
使用楽器 violoncello da spalla Dmitry Badiarov, Brussels, 2004 (バロック仕様)
所有盤 RAM 1003 (P)(C)2010 Outhere (輸入盤)

ご自身の製作によるヴィオロンチェロ・ダ・スパッラによる演奏。 上手いというよりも味わい深いと言う方がしっくりきます。 地味ながらニュアンス豊かで,しかも実は結構小気味よいのです。 このあたりは楽器の特性を活かしていると思います。

しかし,やっぱりスパッラという楽器そのものに音色の魅力が感じられないのです。 演奏自体は小気味よいはずなのに,音の立ち上がりが鈍くもごもごしています(後述しますが,録音の悪さがこれに拍車をかけています)。 あの楽器サイズでチェロと同じ音域の低音を出すために機構上相当無理をしていることが音色からもわかります。 なぜこの楽器が廃れてしまったのか...それがこの演奏からも感じられて淋しい気分になります。

なお,このディスクはレコード芸術誌(2010年12月号だったかな?)で特選の高評価を得ています。 演奏の良さが半分,この楽器を復活させた功績に対する敬意が半分かなと想像します。

録音:

残響過多で不明瞭,音色も相当損なわれています。 スパッラという楽器の音色をきちんと伝えることがこの録音の命だと思うのですが。 なぜこのような録音を選択されたのか,残念でなりません。

P.S.

バディアロフ氏公式Webサイト楽器製作のサイト

(記2011/02/19)


ウィノナ・ゼレンカ(Winona Zelenka)

レーベル Marquis
収録曲 全集
録音データ Recorded at Pong Studio on: Suite 6, Dec 2 and 29, 2007; Suite 1, March 2, 2008; Suite 2, May 19 and 25, June 6, 2008; Suite 3, Dec 13 and 14, 2008; Suite 4, Oct 31 and Nov 1, 2009; Suite 5, Feb 6 and 7, 2010.
使用楽器 Joseph Guarnerius (1707)(モダン仕様)
所有盤 81509 (P)(C)2010 Marquis (輸入盤)

柔らかく優しい表現から力強い逞しい表現まで自在に操る腕前はなかなかのものです。 曲によっては装飾や和音の補強などを大胆にやっています。 音色も艶やかで大変魅力的です。 どちらかと言えば一昔前のスタイルに近く今時のスマートな演奏ではないかもしれませんが, モダンチェロの表現力を目一杯に活かした溌剌とした演奏は聴き応えがありますし,素直に良いなぁと思います。

録音:

残響は控えめで明瞭感,解像感に優れています。 楽器の胴鳴り,艶やかな音色を良く捉えています。 録音場所の響きの特性か,わずかに中域に癖が感じられるのが残念ですが,十分許容範囲です。 2007年から2010年にわたって録音されていますが,統一感があり,全体を通して聴いたときの違和感はありません。

P.S.

ゼレンカ氏はカナダのチェリストで,現在トロント交響楽団の首席チェリストとのこと。 公式Webサイトがあります。

(記2010/12/29)


ルドヴィート・カンタ(Ludovit Kanta)

レーベル 自主制作
収録曲 全集
録音データ Cygnus(津幡町文化会館), 27-30 July & 1, 2 December 2009
使用楽器 ガット弦使用 A=440Hz(モダン仕様)
所有盤 PANU-7007/8 (C)2010 PANCE MUSIC LTD. (国内盤)

モダン楽器にガット弦を張り,A=440Hzでチューニングされています。 解説書では「単に音が好きだからであって,歴史的に正しい演奏をするからではありません。」と明言されています。 また第五番もスコルダトゥーラではなく通常のチューニングで,第六番も五弦を使わず通常のチェロで,と書かれています。 あまりそういうことにこだわっておられないようです。 (というか,彼にとって最高のパフォーマンスが出来る方法をとっただけと想像します)

そういった姿勢が音楽にもにじみ出ているのか(あるいはそう聴いてしまっているのかもしれませんが), 大らかであまり細かいことにこだわらない自由な雰囲気が一番の魅力になっていると思います。 堅いこと言わずにみんなで楽しもうよ,という感じです。 こういうアプローチの演奏が少なくなってきているようにも思いますが, 「そうだよな,これも一つの音楽の楽しみ方だよな」っと思い起こさせてくれる良さがあると思います。 ある意味音楽の在り方の一つの本質を突いていると思いますし,個人的にも大歓迎です。

録音:

残念ながら私の好みからすれば最悪の部類に入ります。 残響過多が楽器音に大きく被っています。 不明瞭極まりなく,細部が聴き取りづらいですし, せっかくのガット弦の質感も感じられず音色が台無しになっています。 さらに少し歪みっぽい感じがします。 「ガット弦の音色が好き」というなら,なぜ氏自身が体感しておられるその素晴らしい音色をなぜ我々に共有させてくれないのですか? と苦情を言いたいです。

P.S.

公式Webサイトがあります。 スロヴァキア共和国出身で,1990年よりオーケストラ・アンサンブル金沢の首席チェリスト。 本CDはレコード芸術誌2010年10月号で特選。 公式Webサイトからメールで問い合わせれば購入可能です。

(記2010/10/14)


アルフィア・ナキベコヴァ(Alfia Nakipbekova)

レーベル WCM
収録曲 全集
録音データ Recorded at St. Boniface Kirk - November 2007 and December 2008
Ivanov + Chan Artists' Studio - December 2008, Papa Westray Orkney
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 WCM5 (輸入盤)

積極的でテンポ取りなどもすごく意欲的,しかも全く破綻することなく全体を上手くまとめています。 音色や表情付けに魅力を感じるところも多くあります。 一方で細かく見ると,音の末端まで配慮が行き届いていないというか,コントロールしきれていない(ように聴こえる)音も散見され, 良い面と悪い面が混在しているために,聴いている間もずっと印象がコロコロと変わってしまいます。

録音:

残響が多めで楽器音に大きく被っています。 そのため音色がくすみ,明瞭感もあまり良くありません。

P.S.

カザフスタン出身のチェリスト。 公式Webサイトがあります。 名前の日本語表記は間違っているかもしれません。

(記2010/09/23)


ロエル・ディールティエンス(Roel Dieltiens)

レーベル Et'cetera
収録曲 全集
録音データ 2009年4月7日-9日 アミューズ(アントワープ)
使用楽器 記載なし(バロック仕様)
所有盤 KTC 1403 (P)(C)2010 CODA BVBA (輸入盤)

吹っ切れたとでも言いましょうか,あるいは,何かの呪縛から解き放たれたとでも言いましょうか, すごく自由で解放感があります。 そして迷いがありません。 かなり大胆に装飾を盛り込んでいるのですが,それにも増してその語り口が絶妙です。 いわゆる「語る演奏」などという形容がありますが,そのレビューアの方がどういうニュアンスで捉えているかはわからないのですが, これこそ「語る演奏」だなぁと感じます。 吟遊詩人が詩を語り聴かせるがごとく(ってどんなのか知りませんが(^^;), バッハの無伴奏チェロ組曲という壮大な物語をドラマティックに表情豊かに語り聴かせてくれる, 本当にそんなイメージが湧いてきます。

録音:

結構近めのマイクセッティングで濃厚に楽器音を捉えています(指板を叩く音もはっきり聞こえる)。 そして響きもしっかりと入っていてさらに濃い感じになっています。 悪くはないのですが,私の好みからするともうちょっとすっきりと録って欲しかったというのが正直なところです。

P.S.

ディールティエンス氏2回目の録音。 前回が1991年ですので約18年ぶりの再録音ということになります。

(記2010/09/01)


ロエル・ディールティエンス(Roel Dieltiens)

レーベル ACCENT
収録曲 全集
録音データ January 14-16, 1991, 'Vereenigde Doopsgezinde Kerk', Haarlem (Netherlands)
使用楽器 Violoncello (Michiel De Hoog, 1989), Violoncello piccolo (France, anon. ca. 1750)(バロック仕様)
所有盤 ACC 9171/72 (C)ACCENT (輸入盤)

バロックチェロですが,あまりそれを強調しない自然な演奏です。 バロックチェロとしてはもはやオーソドックスな部類に入るのではないでしょうか。 明るくおおらかで,また,やや軽めの弓運びで楽しげに弾いているところがこの演奏の良いところです。

録音:

全く良くありません。 指板を叩く音が聞こえてくるくらいの距離感で捉えていながら, ほとんど間接音しか聴こえてきません。 音が曇って不鮮明極まりなく,質感もほとんど失われてしまっています。 せっかくの好演奏が台無しです(怒)。

P.S.

ディールティエンス氏1回目の録音。

(記2010/08/26)


マリオ・ブルネロ(Mario Brunello)

レーベル EGEA
収録曲 全集
録音データ Auditorium Santa Cecilia - Perugia 2009
使用楽器 “Pietro Santo Maggini Brescia 16..” accordatura a 415(バロック仕様)
所有盤 EGEA SCA 156 (輸入盤)

遊び心がちりばめられていて,まるでバッハと戯れているようです。 これは演奏会で多くの聴衆に聴かせるような感じの演奏ではありません。 自分の楽しみのために弾いている,あるいは,友人とともに音楽を楽しむ, 頑張らずに純粋に音楽を楽しむ,そんな風に私には聴こえます。 こういうアプローチは室内楽の原点だと思います。

この演奏では,リズムをいびつに崩したり,ピチカートを織り交ぜたり,いろいろとやっています。 そのためリズムを身体で感じたり,呼吸を共にしたりすることが難しく, 私にとってはちょっとつらい演奏です。 面白いということは頭でわかっていても,それを素直に楽しめない自分にもどかしさを感じるのですが, うーん,こればかりはどうにもなりません。

録音:

『録音に際して選んだ目標は,聴く事が演奏者の行為と感触にとってかわるがごとく,そして,動きや呼吸を感じられるほど「近い」音でした。』 解説書にこう書かれています。 まさにその通りの録音です。 教会の礼拝堂での録音ですが,残響感が少なく直接音を間近で捉えたハイファイ調の録音で, 極めて明瞭感が高く,音色も自然,楽器の質感もしっかりと感じられます。 距離感も適切で,演奏の雰囲気にもぴったりと合っています。 今時こんな録音には滅多に出会えません。 満点です!

P.S.

ブルネロ氏2回目の録音。 1回目は1993年でした。 こちらも素晴らしい演奏だったと記憶してます。

(記2010/06/30)


ルイジ・ピオヴァーノ(Luigi Piovano)

レーベル Eloquentia
収録曲 全集
録音データ Recorded in Montepulciano in August 2008
使用楽器 Matteo Goffriller around 1720, 5 strings by William Foster III, 1795(モダン仕様)
所有盤 EL 1021 (P)2008 (C)2010 Eloquentia (輸入盤)
備考 参考url: 公式Webサイト

ジャケット写真から受ける印象とは裏腹に,堅実かつメリハリの効いた躍動感ある演奏を聴かせてくれます。 技術的にも全く問題ありません。 個性的な演奏ではないので少々印象が薄いというのは否めませんが, 真面目な好演奏には変わりありません。

録音:

明らかに残響過多。 楽器音よりも残響が支配的で音色が全く冴えませんし,明瞭感も良くありません。 残念ながら私の好まないタイプの録音です。

P.S.

このCDには,解説書の内容を読み上げた音声トラックがCD2に入っています(英語とフランス語の2カ国語)。 このため,CD1には第一番から第四番が詰め込まれていて,CD1の総時間が80分42秒あり,80分を越えています。 世の中にはもっと長時間詰め込まれたCDがあるようですが,これもCD-DA規格ぎりぎり(違反?)のかなり長い部類に入るCDだと思います。

(記2010/06/11)


ルイス・クラレ(Lluís Claret)

レーベル Valois
収録曲 全集
録音データ Enregistrement réalisé en avril 1993 à l'Auditori Nacional d'Andorra
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 V 4695 (P)(C)1993 AUVIDIS (輸入盤)
備考 参考url: 公式Webサイト

クラレ氏1回目の録音。 今風の颯爽とした演奏ではなく,少し前の世代のスタンダードなアプローチの演奏かなと思います。 骨太で快活,どことなく漂うおおらかさがいいと思います。 技術的にもしっかりしています。

録音:

楽器音をしっかりと捉えてはいるのですが,響きが少し被って音を曇らせています。 また,少し歪みっぽい感じもします。 すっきりしないのが残念です。

(記2010/05/29)


イアゴバ・ファンロ(Iagoba Fanlo)

レーベル Arsis
収録曲 全集
録音データ 2007年9月17-18,28日 アレレ(スペイン),サンティアゴ教会
使用楽器 1998年 Jean Seyral製(モダン仕様)
所有盤 ARSIS 4228 (P)(C)2009 GEASTER S.L. (輸入盤)
備考 参考url: TOWER RECORDS ONLINE

技術に今ひとつキレが感じられず,若干締まりのなさを感じるのですが, 自分の力量の範囲で淡々とそつなくこなしているように思います。 ですので,出来はそれなりに良いとも言えますが,やっぱりちょっと音色に魅力が足りないので,そういったところに不満が残ります。 そんな中で,第五番,第六番は前向きな意欲が感じられて,聴き応えはありました。 それ以外の組曲もこんなアプローチだったらもう少し印象が違ったかもしれません。

録音:

残響時間はそれほど長くありませんが少し多めで被り気味なので,ヌケが悪く音色が曇りがち,濁りがちであまり良くありません。

(記2010/04/10)


ズイル・ベイリー(Zuill Bailey)

レーベル TELARC
収録曲 全集
録音データ Recorded at the American Academy of Arts and Letters, New York, December, 2008
使用楽器 1693 Ex “Mischa Schneider” Matteo Gofriller cello, Venice, Italy(モダン仕様)
所有盤 TEL-31978-02 (P)(C)2010 TELARC International (輸入盤)
備考 参考url: 公式Webサイト

豪快で男性的。 大胆な弓遣いと強烈なアクセントで攻める演奏です。 技術力があるのでこれだけ強烈でありながら荒っぽくなったり乱暴になったりせず,引き締まっているところはさすがです。 最近こんな演奏をする人は少ないと思いますので,そういう意味で貴重だと思いますし,かえって新鮮だったりします。

録音:

どういう環境での録音かはわかりませんが,残響はそれほどないにも関わらず, 音色がかなりくすんいるというか濁っていて聴き苦しいです。 あまり良くありません。 こんな演奏だからこそもっと鮮明に録って欲しかったと思います。 残念です。

(記2010/03/04)


ジョセフィン・ヴァン・リーア(Josephine van Lier)

レーベル 自主制作
収録曲 全集
録音データ Holy Trinity Catholic Church, Spruce Grove, July 2009
使用楽器 ※本文参照
所有盤 VANLIER2010-01 (P)(C)2010 Josephine van Lier (輸入盤)
備考 参考url: 公式WebサイトCD Baby

なんと,4種類のチェロを使い分けて演奏されています。 コンテンポラリーとバロック2種,さらにカーボン・ファイバー製のチェロが使われています。 第五番はバロック・チェロですが,おまけとして他の二種類の楽器での演奏も収録されています。 (CD 1枚に組曲2つずつなので4枚組です(^^;)

第一番 コンテンポラリー・チェロ(1870年フランス製)A=440Hz
第二番 バロック・チェロ(2007年アメリカ製)A=415Hz
第三番 カーボン・ファイバー・チェロ(2005年アメリカ製)A=440Hz
第四番 コンテンポラリー・チェロ(1870年フランス製)A=440Hz
第五番 バロック・チェロ(2007年アメリカ製)A=415Hz
第六番 ヴィオロンチェロ・ピッコロ(五弦)(2008年アメリカ製)A=415
(付録)第五番 コンテンポラリー・チェロ(1870年フランス製)A=440Hz
(付録)第五番 カーボン・ファイバー・チェロ(2005年アメリカ製)A=440Hz
※第五番はscordaturaチューニング(第一弦をA→Gに)

演奏はゆったりとしていて,さらに大きく緩急をつけています。 どの舞曲もリズミカルな感じではありません。 しかし,自然な呼吸感の範囲なので違和感は大きくありません。 技術的にキレのある方ではありませんが,特にゆっくりした舞曲でのしっとりとした節回しが良いです。 第六番のSarabandeなど,感動的です。

楽器の違いに関しては,コンテンポラリー・チェロよりもバロック・チェロの方が, この人の演奏スタイルには適合しているという感じです。 先入観で聴いてしまっているところはありますが,カーボンファイバー・チェロは, 基音成分が弱く音に深みがないように思います。

録音:

教会での録音(公式Webサイトに録音風景が載っています)。 意図的かもしれませんが,カーボンファイバー・チェロの録音だけ残響が多く不鮮明です。 その他の楽器の録音は,残響を取り込みつつも直接音もそこそこ捉えていて楽器の質感もわかります。 しかし,せっかくいくつもの楽器を遣っているのですから,その違いを鮮明に出すためにも, もう少しマイク位置を接近させて直接音比率を上げ,明瞭感と音色の自然さを確保して欲しかったと思います。

(記2010/02/25)


カリーナ・ゲオルギアン(Karine Georgian)

レーベル Somm Recordings
収録曲 全集
録音データ St. Martin's Church, East Woodhay, Berkshire May 2007
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 SOMMCD 090-2 (P)(C)2009 SOMM RECORDINGS (輸入盤)
備考 参考url: 公式WebサイトSomm Recordings

ゆったりとしたテンポで丁寧にたおやかに歌う美しい演奏です。 強くアピールしたり効果をねらう表現は一切なく, 地味ながら優しく紡ぎ上げられていく音楽は繊細で味わい深いです。

録音:

残響自体はそれほど多くは感じられないのですが,録音環境の響きの影響で明瞭感が悪化し, ヌケが良くなく音色もくすんでしまっています。 すっきりしない残念な録音です。

P.S.

ゲオルギアン氏は,第3回チャイコフスキー国際コンクール(1966年)チェロ部門の優勝者。 1980年より英国に在住,現在ドイツのデトモルト音楽大学教授,英国王立ノーザン音楽大学教授とのこと。

(記2010/02/05)


マティアス・ミヒャエル・ベックマン(Matthias Michael Beckmann)

レーベル BeckmannMusik(自主制作)
収録曲 全集
録音データ Summer 2008(I-V), Feb. 2009(VI), Salzburg, Dorothea-Porsche-Saal
使用楽器 5弦チェロ(モダン仕様)
所有盤 MMB 008/10 (P)(C)2010 BeckmannMusik (輸入盤)
備考 参考url: 公式WebサイトBeckmannMusik

5弦チェロでの演奏(全部?)。 ピッチはA=432Hz。 あまり技術のキレが良い方ではありませんが,ゆっくりしたテンポで丁寧に弾いているお蔭で(3枚組になるくらい!), 全く破綻することなく朗々と充実した音楽を聴かせてくれます。 ご本人の満足げな顔が思い浮かぶような微笑ましさ,温かさを感じます。

録音:

響きが被って音色がかなり影響を受けていますが,直接音主体にしっかりした音の捉え方をしているので明瞭度は思ったより悪くありません。 ちょっとばかり濃いめの音です。 でもやっぱりもう少しすっきりと録音して欲しいところです。

(記2010/01/28)


パトリック・デメンガ(Patrick Demenga)

レーベル ACCORD
収録曲 全集
録音データ Enregistrement numérique réalisé en 1992 à Blumenstein (Thun) par le Pr. Jakob Staempfli.
使用楽器 Francesco Rugieri (Cremona) 1669 (バロック仕様)
所有盤 ACCORD 202192 (P)1992 MUSIDISC (輸入盤)

バロック・チェロによる演奏で,ピッチはA=415Hz。 しかし,使用している楽器は確かにバロック・チェロなのでしょうけど, 聴いていてそれが意識されることはほとんどありません。 キレとスピードがあって小気味よく,私にはモダン楽器的に聴こえます。 なんでモダン楽器で演奏しなかったんでしょう?と思ってしまいます(^^;。 技術的にも優れていて,躍動的で闊達なところが大変魅力的です。 こういう演奏,好きです。

録音:

かなりボディ感たっぷりにしっかりと楽器音を捉えているにも関わらず,響きの取り込みも多いため, 音色がかなりくぐもった感じになってしまっています。 これはちょっと残念な録音です。

(記2010/01/19)


ジョセフ・エルウォーシー(Joseph Elworthy)

レーベル 自主制作
収録曲 全集
録音データ 記載なし
使用楽器 Ferdinando Gagliano 1760(モダン仕様)
所有盤 品番なし (輸入盤)
備考 参考url: 公式Webサイト

特に優れているとか個性的とかいうことはないのですが,実に自然で素直, どちらかといえば穏やかで落ち着いています。 地味ながらも小気味よく,ニュアンス豊かに表現をされています。 技術的にもまずまず上手いです。 強い印象は残りませんが,安心して聴ける良さがあります。

録音:

やや癖のある響きを伴って音色への影響が感じられるものの,直接音主体に捉えているため, 明瞭感はそこそこあって印象は悪くありません。 もう少し高域の抜け,透明感があれば良かったのですが。

P.S.

エルウォーシー氏はカナダ,バンクーバー出身で,バンクーバー交響楽団のチェリストとのこと。

(記2009/12/03)


アンジェラ・イースト(Angela East)

レーベル Red Priest Recordings
収録曲 全集
録音データ Suites nos. 1, 3, 5 & 6 recorded in the Francois-Bernier concert hall at le Domaine Forget, Saint-Irenee (Quebec), Canada in May 2001. Suites nos. 2 & 4 recorded in Troy Savings Bank Concert Hall, near New York in February 2004.
使用楽器 Peter Wamsley(England, 1725), Kai-Thomas Roth after Amati 2000(five-stringed cello)(バロック仕様)
所有盤 RP006 (P)(C)2009 Red Priest Recordings (輸入盤)
備考 参考url: 公式WebサイトRed Priest Recordings

バロックチェロによる演奏。 自由気ままな雰囲気を持っていますが,まあ98%は常識的な範囲かなと思います。 しかし,残りの2%! 突然暴走したり,おやっ?という「間」を取ったり,ハメを外すというか型破りなところが出てきます(でも何となく気持ちはわかる)。 これが第一番のプレリュードで出てくるので,ごく一部分の暴走のために全体の印象が支配されてしまい,変に期待してしまいます(^^;。 良いのか悪いのか...

録音:

残響音はそれなりに入っていて,多少の影響はあるものの,直接音の方が割合が高く, 楽器の質感などもそこそこ感じられて悪くありません。

P.S.

イースト氏はレッド・プリースト(Red Priest)という4人組のバロック・アンサンブルのメンバー。 このアンサンブルも過激なことで知られているそうです。 それにしても,どこのレスラーがチェロ弾いてるんだ?と思ってしまうようなカバー・ピクチャーですねぇ。

(記2009/11/18)


アンドレ・ナヴァラ(André Navarra)

レーベル Calliope
収録曲 全集
録音データ Enregistre en 1977 par Georges Kisselhoff
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 CAL 3641.2 (P)1987 Arpege (C)1987 Calliope (輸入盤)

「ヒューマンな演奏」と呼びたい。 温かく懐が深い。 楽器の鳴らしっぷりが見事でモダン・チェロの魅力をたっぷりと味わうことが出来ます。 確かに技術的に苦しい面があるのは否めませんが(といっても第六番以外はさほど気になりません), この魅力あふれるの音楽の前では些細なことに思えてきます。

録音:

多少残響はありますが,直接音の比率が極めて高いので,残響の影響は全くと言って良いほど明瞭感があり, 楽器の鳴り感,擦弦の質感もしっかりと伝わってきます。 楽器音の捉え方としては,ほぼ文句はありません。 ただし,高域レベルが落ちているのか,音色がくすみ気味なのが非常に残念です。 とはいえ,やはり音の捉え方が良いので鑑賞に差し支えはありません。

P.S.

Web上のいくつかのレビューを読んでみましたが,どうも私のような感想は少数派なのかな...という気がしています。

(記2009/10/28)


イルジー・バールタ(Jiri Barta)

レーベル Supraphon
収録曲 全集
録音データ 記載なし(?)(1996年頃と思われる)
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 SU 3241-2 131/3242-2 131 (P)1996 Supraphon (輸入盤)

すっーと弓の力を抜く弾き方のため独特の軽さを持っており,(予想に反して(^^;)概して真面目で大人しめの仕上がりになっています。 技術的にも優れていますが,それを前面に出すことがないので地味な印象を受けます。 優れた演奏ではあると思うのですが...もう少し積極的であって欲しいとも思います。

録音:

それほど残響が多いという感じは受けませんが,部屋の壁面の反射音が被って高域のヌケが悪くなり, くぐもった明瞭感のない音になってしまっています。 演奏者の息づかいなども入るような音の捉え方をしているにも関わらず,です。 もったいないと思います。

P.S.

演奏者の日本語表記についてはいつもお世話になっているK.N.さんからアドバイスをいただきましたが,K.N.さん自身もちょっと自信がないとのことでした。 Web検索すると「イジー・バルタ」という表記もみられます。 アルファベット表記にはチェコ語独特のアクセント記号が付いています(チェコ語のアクセント記号をどう入力すればいいのかわかりません...)。 外国人の氏名の日本語表記には本当に悩まされます。

(記2009/09/29)


シギスヴァルト・クイケン(Sigiswald Kuijken)

レーベル ACCENT
収録曲 全集
録音データ Recorded at Galaxy-Studios Mol (Belgium), 4-7 December 2006 and 26-30 December 2007
使用楽器 Violoncello da spalla, made by Dmitry Badiarov in 2005(バロック仕様)
所有盤 ACC 24196 (P)2007 (C)2009 ACCENT (輸入盤)

ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラによる演奏。 肩掛けチェロという楽器の特徴,運指・運弓のしやすさを強調しようという感じは全くなく, また,いかにもバロック楽器ということもなく,ごくごく自然ですんなりと耳に馴染んできます。 この楽器をこの楽器らしく鳴らす術を獲得され,この楽器らしい軽快だが穏やかでおおらかな演奏になっていると思います。

録音:

若干癖のある響きが感じられるものの,楽器のボディの鳴りをしっかり捉えた好ましい録音です。 ただ,なぜか少し歪みっぽい感じがします(ヘッドクリーニングしていないカセットデッキで聞き古したテープを再生したときのような...)。 特に第四番,第五番で顕著に感じます。 これが本来の楽器の音なのかもしれませんが,そうだとしても少々不快で,もう少し目立たないように録るべきだと思います。

P.S.

この演奏の素晴らしさは認めますが,私はやっぱり楽器自体の音の魅力がチェロにははるかに及ばないと思っています。

(記2009/09/09)


堤剛(Tsuyoshi Tsutsumi)

レーベル CBS Sony
収録曲 全集
録音データ 東京 杉並公会堂
1970年1月6日(第一番),1969年4月27日(第二番),1969年4月29日(第三番),1970年7月6日(第四番),1969年12月25日(第五番),1969年12月26日(第六番)
使用楽器 J. B. グヮダニーニ(モダン仕様)
所有盤 SONS 30082-84J CBS/SONY RECORDS INC. (国内盤) (*LP)
備考 堤氏1回目の録音,昭和45年度芸術祭参加

若々しく躍動感にあふれています。 細部まで精密に仕上げるような演奏ではなく,少し荒削りのところもありますが, 勢いがあり,音楽そのものに強い生命力を感じます。

録音:

音質はやや古くさく感じますが,比較的オンマイクで生々しく捉えています。 邪魔になる残響があまり取り込まれていないのも良い印象につながっています。

P.S.

今回もT.Y.さんのご厚意により貴重な演奏を聴かせていただくことができました。 有り難うございました。 未だにこの演奏が復刻されないのは不思議です。

堤さんの3回の録音はそれぞれがどれも異なる方向性を持っているように感じました。 私としてはこの最初の録音が一番気に入りました。

(記2009/07/15)


アンドレス・ディアス(Andrés Díaz)

レーベル Azica Records
収録曲 全集
録音データ 記載なし
使用楽器 1698 Matteo Goffriller(モダン仕様)
所有盤 ACD-71252 (P)(C)2009 Azica Records, Inc. (輸入盤)
備考 参考url: 公式Webサイト

淀みのないスピード感と軽快さが痛快。 とにかく技術のキレが際立っています。 8割程度のがんばり度で余力をまだまだ残している感じです。 そして,その余裕の演奏で格好良くビシビシッと決めてきます。 これには少々驚きました。 おぉっ,御主,やるなぁ!! という感じです(^^; お見逸れいたしました。

録音:

楽器音をしっかり捉えています。 残響は控えめでこの点も好感が持てます。 少し高域のヌケが悪く,この点が少々残念ですが,総合的にみてそれほど悪くありません。

(記2009/07/02)


堤剛(Tsuyoshi Tsutsumi)

レーベル Meister Music
収録曲 全集
録音データ Yokosuka Bayside Pocket 14th-16th April 2008, Kanagawa.
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 MM-2034-25 (P)(C)2009 MEISTER MUSIC Co., Ltd. (国内盤)
備考 堤氏3回目の録音
参考url: Meister Music

ゆったりしたテンポでひたすら穏やか,外向きのアピール要素はほとんどない,そんな内向的な演奏のように私には感じられます。 気負いなく平穏な気持ちでバッハと向き合う,呪縛から解き放たれたような安堵感に包まれた音楽を聴くことが出来ます。 年輪を重ねたからこそ出来る渋く深い味わいがあります。

録音:

残響時間はあまり長くありませんが,響きが楽器音をくすませてしまっています。 もっとクリアに,そしてもっと身近に感じられるような音の捉え方をして欲しかったと思います。 ちょっと残念です。

(記2009/06/23)


エヴァ・ペドラッツィ(Eva Pedrazzi)

レーベル MYTHOS
収録曲 第一番,第三番
録音データ 記載なし
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 NR-6022 GH-G MYTHOS PHILHARMONIC SOCIETY (輸入盤)
備考 LP復刻盤

女流とは思えないバイタリティ! ハイテンションでスケールの大きな迫力ある表現,大いに楽しめます。 第一印象は「ちょっと我流っぽい?」と,その癖の強さに少し引いてしまいましたが...(^^;;

録音:

アナログ盤からの復刻。 サーフェイスノイズが少し多めですが,何とか我慢できます。 残響はやや多めで,それが付帯音となり音色を変化させています。 明瞭感や高域の伸びにも影響しています。 もう少し抑え気味にして欲しいところです。

(記2009/06/23)


タチアナ・ヴァシリエヴァ(Tatjana Vassiljeva)

レーベル Mirare
収録曲 全集
録音データ 2008年11月,シオン(スイス)
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 MIR 086 (P)2009 MIRARE & KAJIMOTO (C)MIRARE (輸入盤)
輸入・発売元:株式会社キングインターナショナル

明るく快活で活き活きした音楽が大きな魅力です。 スピード感があり,かつ柔軟できめ細やかな弓使いで豊潤な響きとニュアンス豊かな音色を出しています。 弾き方が丁寧でアクセントがきつくならないように上手く処理し, どことなく優しい雰囲気も感じられ,さらに良い印象につながっています。 技術力も確かで,例えば第六番の第一楽章など,最後まで本当にこのテンポでいけるのだろうかという速さですが, 鮮やかに弾ききっています。

録音:

少し残響感はありますが,やや近めで直接音主体に楽器自体の響きを明瞭に捉えており, 細やかなニュアンスもきちんと聴こえてきます。 ややドライな感じですが,嫌な響きが少なく,かなり印象のよい私好みの録音です。

(記2009/05/29)


ヴォルフガング・ベッチャー(Wolfgang Boettcher)

レーベル Nimbus Records
収録曲 全集
録音データ Recorded at Wyastone, Monmouth, UK, October 2000 & March 2001
使用楽器 Matteo Goffriller fecit Venetia anno 1722(モダン仕様)
所有盤 NI 5834/5 (C)(P)2008 Wyastone Estate Limited (輸入盤)

明快で活力のある前向きな演奏です。 一音一音を短めにはっきりと響かせる弾き方で, 音色は渋いのですが,楽器がよく鳴っています。 第四番のBourreeや第六番のGavotteでは繰り返しのところでピチカートを入れたり, 他の曲でも所々で装飾を取り入れるなど,意欲的に表現しています。 ピチカートや装飾については私はあまり好きではないのですが, この演奏に関してはそれなりにはまっていてそれほどマイナスに感じませんでした。

録音:

楽器音をしっかりと捉えているものの,残響がやや多めで音色がくすみがちです。 音色の自然さ,高域の抜けなど今ひとつで,悪いと言うほどではないものの少し残念に思います。

(記2009/04/28)


アラ・ヴァシリエワ(Alla Vasilieva)

レーベル Russian Disc
収録曲 全集
録音データ 2004年?
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 RDCD 00766, RDCD 00767 (C)(P)2004 Russian Disc (輸入盤)

正直言って技術的にはそれほど巧くありません。 音色もガサついていて美しくありません。 しかし,すごく意欲的で,それが上滑りすることなく音楽表現に全て活かされ,立派な演奏につながっています。 相当に弾き込んでここまで到達したことが想像されます。 難曲の第六番も積極果敢でなかなか聴き応えがありました(第六番は五弦チェロを使っています)。

第一番の終楽章が一拍多い(ヤン・スラヴィク氏の演奏と同じか?)とか, その他にもいつも聴いている演奏とは違う音で弾いているところがあったりしました。 そういう校訂版の楽譜があるんでしょうか?

録音:

少し響きは伴っていますが,直接音主体で音の捉え方としては好感が持てますが, オーディオ的にはちょっと歪みっぽくてあまり良くなく,クオリティが劣るところが残念です。

P.S.

CDの1枚目を聴き始めると,突然シャコンヌの力強い和音から始まって度肝を抜かれます。 しかも五度下げずにオリジナルの調です。 はっきり言って破綻しまくって聴けたものではありません。 なんでこんなひどいシャコンヌを全集の冒頭に持ってきたのか理解に苦しみます。 その反動でチェロ組曲が素晴らしく上手く感じてしまうことを期待したんでしょうか???

もう一点,トラックの切り方が一つの組曲全体で1トラックとなっており, やや扱いづらい切り方になっています。

(記2009/03/15)


エアリング・ブレンダール・ベンクトソン(Erling Blöndal Bengtsson)

レーベル danacord
収録曲 全集
録音データ Recorded at Emdrup Church, Copenhagen, March - May, 1984.
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 DACOCD 331-332 (C)1988 Danacord (輸入盤)

いい意味で頑張らない,肩の力の抜けた,有り体に言えば自然体の演奏かなと思います。 コンサートで大勢の人に聴かせるような感じではなく,自分自身の心を落ち着かせるため, あるいは,傍にいる友人や近親者のため,といった感じで,これが実にいい雰囲気を出しています。 特筆するようなところはありませんが,これはこれで好きです。

録音:

残響感が少しあります。 楽器音をしっかりと捉えているため,印象は悪くありませんが, しかしやはり音色には影響しており,高域のヌケの悪さ,わずかなくぐもりを感じます。 また,オーディオ的にみてもきめ細かさはあまり感じられません。

あと,なぜか各曲が終わった後に位相の回ったような響きが残り,次の曲に入る前にプツッとなくなります。 楽器音自体に違和感はありませんが,ヘッドホンで聴いていると,曲間で頭がねじれそうになります。 マイナスポイントというほどではありませんが。

(記2009/02/26)


マイルス・ジョルダン(Myles Jordan)

レーベル Centaur
収録曲 第一番,第二番,第三番
録音データ Recorded December 27, 28, and 29, 2005 at Bowdoin College Chapel, Brunswick, Maine.
使用楽器 記載なし?(バロック仕様)
所有盤 CRC 2950 (P)(C)2008 Centaur Records, Inc. (輸入盤)

おぉっ!! 第一番のPreludeこそほぼ楽譜通りの演奏ですが,その後の楽章では大胆に和音が追加されていきます。 さらにCouranteやMenuet Iではゆっくりしたテンポで全てピチカートで演奏されたりします。 多少の違いはあれど,第二番,第三番も同じようにかなり楽譜に手を加えています。

"A New Interpretation Based on Early Sources"という副題が付いており, これの意味するところが解説書に書いてあるようです(読めていません...すみません)。 かなり大胆な解釈で,最初は相当戸惑いますが,意外に悪くありません。 第一番など約27分もかけて演奏しているにも関わらず,退屈しませんでした。 続編も楽しみにしたいと思います。

録音:

残響は少なめで楽器本来の響きをしっかりと捉えていて印象はまずまずです。 少し高域のヌケが良くなくすっきりしないところはありますが。

(記2008/12/25)


サーシャ・ヴェチトモフ(Sasa Vectomov)

レーベル Supraphon
収録曲 全集
録音データ Recorded at the Organ Hall of the House of Artists, Prague, from 27 August to 4 September, 1984.
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 Supraphon 1111 4691-92G (輸入盤) (*LP)

無理せず自分のペースで着実に音楽を積み上げていくような演奏で, 全体にテンポが遅めで躍動感に欠けるきらいはありますが, また,技術的に特に優れているというわけではありませんが, 味わいがあって印象は良いです。 ただ,リピートが全て省略されているので,こういう演奏なのにあれあれっていう間に終わってしまうのが少々残念です。

録音:

残響は抑え気味で聴きやすい音質ですが,もう少し高域の伸び感,鮮明さが欲しい気がします。 音の捉え方,距離感はほぼ適切で悪くないだけに惜しいと思います。

P.S.

今回もT.Y.さんのご厚意により珍しい演奏を聴かせていただくことができました。 有り難うございました。

(記2008/12/25)


ナサニエル・ローゼン(Nathaniel Rosen)

レーベル John Marks Records
収録曲 全集
録音データDecember 18 and 19, 1993(Suites 4-6), and July 6 and 7, 1994(Suites 1-3), at the Music Division Recital Hall, Purchase College, of the State University of New York.
使用楽器 Domenico Montagnana 1738(モダン仕様)
所有盤 JMR 6/7 (P)(C)1994 John Marks Records (輸入盤)

少し地味で無難な演奏に聴こえますが,録音のせいかもしれません。 よく聴くとなかなか手堅くまとめているように思います。 音色は若干ガサガサしていて美しくはありません(これも録音のせい?)。 どちらかというとオーソドックス路線かなと思いますが,印象はやや薄いというのが正直なところです。

録音:

残響が被って間接音比率が高い上に,やや距離感があって,明瞭感もなければ音色もくすんでしまった, 全く冴えない録音です。 録音レベルも若干低めです。 録音でだいぶ損しているのではないかと思ってしまいます。

(記2008/11/14)


ホセ・ペレイラ・デ・ソウサ(José Pereira de Sousa)

レーベル Numérica
収録曲 全集
録音データ記載なし
使用楽器 Montagnana - 1710 (Guilhermina Suggia)(モダン仕様)
所有盤 NUM-1134 (P)(C)2005 S.P.A. (輸入盤) (No.1,2,3を収録)
NUM-1146 (P)(C)2007 S.P.A. (輸入盤) (No.4,5,6を収録)
備考 参考url: Numerica Multimedia

無理をせず丁寧なのが良いところで,音色もふくよかで響きがとても美しく魅力があります。 表現にも癖がなく安心感があります。 反面,躍動感には少々欠けるところもあるので,今ひとつ心が踊らないのが残念です。 第三番などゆったりしすぎです。 また,この第三番のプレリュードだけですが,リズムの崩し方がしっくりきませんでした。 音色はすごく好きなんですが...惜しいです。

録音:

楽器音がしっかりと捉えられているようにも聴こえるのですが, 残響がかなり多く明瞭感が悪くなり,また音色も高域のヌケが悪くなってしまっています。 NUM-1134とNUM-1146とではNUM-1146の方が残響が多めのように感じられますが, その他にNUM-1146には無相関化するような位相処理が加えられているようで, ヘッドホンで聴くと頭がねじれるような違和感に襲われます。 そして,下支えのないスカスカの音に感じられます(低域が出ていないわけではありませんが)。 これはちょっといただけません(怒)。

(記2008/10/24)


バネッサ・フェルナウド(Vanessa Fernaud)

レーベル Tanidos
収録曲 全集
録音データ1986年? マドリード?
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 SRD-290 (P)(C)2004 Several Records, S.L. (輸入盤) (No.2,3,5を収録)
SRD-358 (P)(C)2007 Several Records, S.L. (輸入盤) (No.1,4,6を収録)
備考 参考url: Several Records

技術的にはちょっと辛い,相当辛い... でも,音楽自体は本当に生き生きしています。 喜びに満ちているというか。 そして意欲的かつ積極果敢です。 演奏者ご本人としては,自分が出来うる最高のパフォーマンスが発揮できたと大いに満足されているのではないか, 聴いているとそんな風に感じてきます。 音楽は技術だけじゃないんだということを改めて思い起こさせてくれます。 でも,やっぱり技術も大切だ,ということも...

録音:

残響がやや多く,また少し距離感があり,直接音よりも間接音が支配的で, 明瞭感に乏しく,音色もかなりくすんだ感じです。 SRD-290の方が若干マシ,SRD-358は残響量がより増えて悪化しています。

(記2008/10/10)


セバスチャン・クリンガー(Sebastian Klinger)

レーベル OEHMS Classics
収録曲 全集
録音データRecorded June/July/September, 2007, Himmelfahrtskirche Munchen-Sendling
使用楽器 Camillus Camilli in Mantua around 1736 (モダン仕様)
所有盤 OC 718 (P)(C)2008 Oehms Classics Musikproduktion GmbH (輸入盤)
備考 参考url: 公式Webサイト

強いアクセントを避け,ふわっと,しかし十分に楽器を鳴らした後すっーと力を抜く, 柔軟性の高い,弦に吸い付くような弓使いがとても巧いです(どことなくピリオド奏法的かな...)。 ニュアンス豊かな音が魅力的です。 朗々と歌ったり力で押したりするようなことはありません。 スマートに磨き上げられた美しさを持っています。 技術力も相当高いと思います。

録音:

残響が多く残響時間も長目です。 明瞭感も音色も大きく損なわれており,これはちょっと許せないレベルです。 楽器音が比較的しっかりと捉えられていること, 響きの質がそれほど悪くないことから,心地よい響きと思う方もおられるかもしれませんが。 低域の出ないインナーホンで聴くとちょっとましに聴こえました。

(記2008/10/02)


フィリップ・ミュレル(Philippe Muller)

レーベル passavant music
収録曲 全集
録音データThe Church of Passavant in 2007.
使用楽器 Gennaro Gagliano(1756), Salomon's 5-stringed cello (Paris ca 1760) (モダン仕様)
所有盤 PASS 2122 (P)(C)2008 SPIDAM (輸入盤) (*CD-R)
備考 ミュレル氏はフランス,アルザス出身のチェリスト。 1979年よりパリ国立高等音楽院教授。 1970年には,ジャン・ジャック・カントロフ,ジャック・ルヴィエ両氏とトリオを組んでいたとのこと。
参考url: passavant music

軽くてスピード感のあるストレートな演奏です。 快活で明るいところが魅力的です。 技術的にもそつがありません。

録音:

かなり残響が多いです。 しかも残響時間が長い。 明瞭感も音色も残響にまみれて全く良くありません。 洞窟の中で録音しているのかと思ってしまいます。 私の好みの録音ではありません。

P.S.

CD-R盤ですが,レーベル面もCD-R盤とは思えないくらい綺麗に作られています。 解説書もまともです。 ただ,購入時にわかるようにして欲しいと思います。 (私はhmv.co.jpで購入しました)

(記2008/08/15)


マーティン・オステルターグ(Martin Ostertag)

レーベル Coviello Classics
収録曲 全集
録音データHans Rosbaud Studio Baden-Baden, 14th-20th July 2006
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 COV 20708 (P)(C)2008 Coviello Classics (輸入盤)
SACDハイブリッド盤(SACD Multi Channel/SACD Stereo/CD Stereo)
備考 参考url: Coviello Classics (COV 20708)

表現に癖がなく真っ当ですんなりと受け入れられます。 技術的にも安定感があり安心して音楽に浸れます。 反面,強い個性や特徴を売りにする演奏ではないので,やや印象が薄い感があります。 そこがこの演奏の良いところでもあるのですが。

録音:

残響時間自体はそれほど長くないのですが,やや距離感があり,直接音成分よりも間接音成分の比率が高く, 明瞭感,高域の伸び感などが良くなく,全く冴えない録音です。 そんなに目くじら立てるほど悪くはないかもしれませんが,私の好みからは外れるということでちょっと辛めの評価としました。

P.S.

hmv.co.jpのキングインターナショナルの紹介文によると, 「マーティン・オステルターグは,カールスルーエ音楽大学でレオ・コスチェルニー氏に学び,同様にパリ音楽院とデトモルト音楽院でアンドレ・ナヴァラ女史に師事。イラク国立交響楽団,デュッセルドルフ・シンフォニカのソロ・チェロ奏者を経て現在はバーデン・バーデン・フライブルク南西ドイツ響の第1ソロ奏者です。」 とあります。 また,楽器についても「エルセン・エイケン制作(2005)のモダン楽器」とありますが,解説書に書いてあるのかどうかわかりませんでした。

(記2008/08/05)


ジョージ・ナイクルグ(George Neikrug)

レーベル Gary Studios (自主制作)
収録曲 全集
録音データ記載なし
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 品番なし (C)2008 Gary D Brownfield (輸入盤) (*CD-R)
備考 参考url: 公式Webサイト, CD Baby(Vol.1Vol.2

うーん... ライヴとはいえ技術面で大いに不満が残ります。 誠心誠意,そして果敢に取り組んでおられるのはものすごくわかるのですが...

録音:

まるでAMラジオを聴いているかのようなくぐもった音質です。 さらに,こもったり,ちょっとましになったりと,何十年もヘッドクリーニングしていないカセットデッキでワカメ状になったテープを再生しているような感じです。 残響も多めで全く冴えません。

編集もぞんざいで,曲の終わりで楽器の響きが消えないうちに強制的にフェードアウトしてしまうところが何カ所もあります。 ブチッと切っていないだけましかもしれませんが,ちょっと配慮がなさすぎます。

P.S.

左上にカバーピクチャーを載せていますが,これはCD Babyのサイトから拝借したものです。 購入したものには解説書が付属していませんでした。 CD Babyに問い合わせたところ,仕入れ時点ですでに解説書がなかったということです。 (じゃあCD Babyのこのジャケット写真って何?) ケース裏側に入れるバックカバー?は入っていましたが,切り方,折り方がいい加減でひどいものでした。 (ディスクはCD-Rですが,これは比較的ちゃんとしていました)

バックカバーにもCD Babyの解説にも録音データの記載がないので一体いつ頃の録音なのかわからないのですが, 聴いた印象としてはかなり古い録音のように思います。 しかし,演奏はともかく,この録音のクオリティでこのひどいパッケージング, これで通常のCDと同じ価格はないんじゃないの!!(怒)。 (歴史的に何かすごく価値のある演奏なんでしょうか...)

(記2008/07/10)


寺神戸亮

レーベル DENON
収録曲 全集
録音データ2008年2月5-7日,18-19日,東京,Hakujuホール
使用楽器 Violoncello da Spalla: Dmitry Badiarov (2005, Brussels), Bow: Mashiko, Isao (2003, Chiba)
所有盤 COGQ-32→3 (P)2008 COLUMBIA MUSIC ENTERTAINMENT, INC (国内盤)
SACDハイブリッド盤(SACD 5.0/SACD Stereo/CD Stereo)
備考 参考url: 公式WebサイトコロムビアミュージックエンターテインメントのCD紹介スペシャルレポート

ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ(肩にかけるチェロ)による演奏。 速めのテンポで小気味よく躍動的です。 チェロと違って運指に無理がなくなるためか,細かい音型がなめらかで引っかかりがありません。 装飾も要所で取り入れられていますが,なかなか良く決まっています。 この楽器の弾き易さを活かした好演奏です。

しかし...如何せん,楽器そのものの音色の魅力がチェロには遠く及んでいません。 響きの支えのない低音,艶のないモゴモゴした音色... 演奏自体は素晴らしいのに,この音色のためにその魅力が半減しています。 本当に残念です。

録音:

演奏時のノイズがかなりはっきりと聞こえるような音の捉え方をしているにも関わらず, 何となくベールを被ったような,くすんだ音になっていて少々イライラさせられます。 残響が少し感じられますが,なぜここまでくすんで聞こえるのかちょっと不思議です。 響きの特性が良くないのかもしれません。 響きなどの付帯音を排し,楽器本来の音をもっと明瞭に捉えて欲しかったと思います。 ただでさえ音色の魅力に劣る楽器なので,余計にそう思います。

P.S.

スパッラが,あの楽器のサイズでなぜチェロと同じ音域の音が出せるのか, 金属を二重に巻いた重い弦を使っているからだと,参考urlのビデオの中で語っておられます。 重い弦を使っているとはいえ,多少張力を落とさなければあれだけの低い音は出ないと思います。 それでも豊かな低音を得るための十分な振幅は稼げないでしょうし, 張力の弱い分,倍音成分が立ちにくくなってしまっているのではないかと思います。 小さな楽器で低域を出そうとする「無理」が,音の艶,輝き,伸びやかさ,豊かな響きを奪っているのではないでしょうか。

寺神戸さんは,スパッラが廃れた理由として,ハイポジションの演奏の困難さを挙げておられます。 ハイドンやボッケリーニのチェロ協奏曲は,スパッラではもはや演奏不可能とのことです。 ソロ楽器としての競争でチェロに敗れてしまったと。 しかし,最大の敗因はやはり音色に魅力がないからではないかと私は思うのです。 ソロ楽器としても音色の魅力のなさは致命的です。 スパッラが本当に魅力的な楽器であったなら,エレクトリックギターのようにボディの一部をカットして弾きやすくするなどの進化をしてで生き延びようとすると思うのですが。

スパッラは,確かにヴァイオリニストがバッハの無伴奏チェロに挑戦する一つの選択肢ではあるとは思うのですが, これが本当に最適解なのでしょうか。 スパッラも楽器を復活させてからまだ日が浅いので,本来の能力が出し切れていないのかもしれませんが, 滅びた楽器にこだわらず,ヴァイオリニストが無伴奏チェロを弾くための最適解を追い求めて欲しいと思います。 ヴァイオリニストは高域の響きを出すことに長けていますので,やっぱり高域で勝負して欲しい,というのが私の希望です。

寺神戸さんは解説書の中で『「何が正しいか」ではなく「どう弾かれるか」,そして「音楽が人に何を伝えるか」が大事なのだ。』と書かれています。 全くその通りだと思います。

(記2008/06/29)

レコード芸術誌2008年8月号で見事特選盤に選ばれていました。 予想通りといえば予想通り... (決して嫌みで書いているわけではありません。 念のため...(^^;; ) ただ,優秀録音としても取り上げられている(p.185)のはう~ん,ちょっと...と思ってしまいます。

(記2008/08/15)


ユーダ・ハナーニ(Yehuda Hanani)

レーベル TownHall
収録曲 全集
録音データ記載なし
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 THCD-51 A,B (P)(C)1997 TownHall Records (輸入盤)
備考 参考url: TownHall Records (THCD-51)

気楽に音楽を楽しんでいるような肩肘張らない軽い雰囲気がなかなかいい感じです。 装飾が所どころで加えられるほか, 移弦をわざと甘くしてみたり(第三番Preludeの分散和音や第六番のPrelude), ピチカートを使ったり(パッセージの中の1音だけをピチカートに置き換えているところもある), 弓で弾きながら同じ弦を指で弾いてみたり,スル・ポンティチェロ気味に弾いてみたり, 第六番のGigueではPreludeのフレーズを挿入してみたり...と, 遊び心が顔をのぞかせます。 技術的にもそつがなく,楽しめました。

録音:

響きのあまりない環境で録音されており,楽器音が主体の好ましい録音なのですが, 音の捉え方が濃く(少々きつい),にも関わらず,高域の伸び,抜けがあまり良くなくすっきりしません。 といっても残響で濁った音に比べればずっと良いのですが。

(記2008/04/26)


ダニエル・ロス・ボルツ(Daniel Ross Bortz)

レーベル High Tower(自主制作)
収録曲 第一番,第二番,第三番
録音データ記載なし
使用楽器 Fender Stratocaster(エレクトリック・ギター)
所有盤 品番なし (C)2008 High Tower Independent Artists (輸入盤)
"J.S. Bach Suites For Unaccompanied Fender Stratocaster"
備考 参考url: CD Baby

エレクトリック・ギター(あえてフェンダー・ストラトキャスターと書いてある)による演奏。 かなりまともでちゃんとした演奏です。 ギターであることを活かすような編曲はほとんど見られません。 ただ,和音がフュージョン的な(素直でない)構成に置き換えらているところなどがあり,少々違和感を感じます(こういうのは苦手)。 忠実にやるなら忠実に,そうでないならもっと思い切ってやって欲しい。 ちょっと中途半端な印象を受けます。

録音:

このあたりは全然わからないのですが,エフェクターを通した後, アコースティック系を介さず直接録音されているのではないかと思います。 若干の響きが感じられますが,エフェクターで加えられたような音です。 善し悪しは好み次第ということで。

P.S.

第二弾 "For Unaccompanied Gibson Les Paul" で全集完成を期待します(^^; (でも,雰囲気からしてレスポールを使いそうな人ではなさそう...)

(記2008/04/26)


アンヌ・ガスティネル(Anne Gastinel)

レーベル naïve
収録曲 全集
録音データRecorded in July and September 2007 at Studio Tibor Varga, Sion (Switzerland)
使用楽器 Carlo Giuseppe Testore (1690)(モダン仕様)
所有盤 V5121 (P)(C)2007 NAÏVE (輸入盤)
備考 参考url: 公式Webサイト?

都会的・現代的で洗練された秀演。 高い技術力に支えられて,自在に伸びやかに表現されています。 アタックを抑えたしなやかでニュアンス豊かな澄んだ音色がなかなか良いです。 独特の「ため」に好みが分かれるかもしれません(最初はちょっと戸惑いました)。

録音:

響きをやや多めに取り込んでいます。 残響時間はそれほど長くありません。 息づかいが聴こえる距離感ですが,響きが被って明瞭感がなく,音色はくすみ気味で抜けがよくありません。 空間性があまり感じられず,響きがマイナス方向にしか働いていません。 (スタジオで録音してるのかな,という雰囲気はありますが)

(記2008/04/02)


クリストフ・ヘンケル(Christoph Henkel)

レーベル LYRINX
収録曲 全集
録音データEnregistrement Realise Du 22 Au 24 Mai, Du 14 Au 15 Septembre Et Du 8 Au 9 Octobre 1990 Dans La Vieille Eglise De Bonnieux (Vaucluse, France)
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 LYR 135/136 (P)(C)1994 LYRINX (輸入盤)

推進力と躍動感に溢れた好演奏で,その快活さ,細部にこだわらないおおらかさが大変魅力です。 芯のある太い音色は,ややガサガサしているものの,この演奏の印象をさらに強めています。 技術的にも優れています。 時折入る装飾もご愛嬌ということで... 次々聴き進めたくなる,わくわくする楽しい演奏です。

録音:

残響がやや多めに取り込まれて明瞭感を悪化させ,音色をくすませていますが, ボディ感たっぷりに捉えているので,残響感の割りには印象は悪くありません。 もちろん私の好みの録音ではありませんが。 また,シュルシュルという付帯音が少々気になります。

(記2008/02/21)


ドミニク・ドゥ・ヴィリアンクール(Dominique de Williencourt)

レーベル EA Records
収録曲 全集
録音データAbbaye de La Prée - France, 12-13/12/2003
使用楽器 1754年製 J. ガリアノ(モダン仕様)
所有盤 EA 0312/1-0312/2 (P)(C)2004 EuropéArt (輸入盤)
備考 参考url: 公式Webサイト

録音が悪く今ひとつ掴めないのですが, 躍動感を抑えてスマートに表現しようとされているように思います。 技術的にも確かなものが感じられます。 唯一にして最大の不満は間の取り方,テンポ取りです。 フレーズや楽節の終わりにいちいちブレーキがかかる,曲が終わるようなふりをしてリピートする... 何ともじれったく,気分良く音楽に乗って楽しむことが出来ません。

録音:

残響が多く楽器音に大きく被ってモワモワし,明瞭度が全く良くありません。 残響の質も良くなく,単に楽器の音色を濁しているだけです。 細部やニュアンスが埋もれて聴き取れず,イライラが募ります。 私にとっては最悪の部類に入ります。

P.S.

上記のように書いてしまいましたが,決して下手な演奏ではありません。 むしろなかなかに優れた演奏だと思います。 演奏者の描こうとしているものが聴き手のツボにはまれば素晴らしく感じられ, はまらなければ苦痛に感じてしまう,この演奏は人によって受け取り方が大きく分かれるのではないかと。 そして私の場合はたまたま後者であった,ということだと思います。 (録音が悪く二重苦になってしまい,さらに印象を落としてしまった...という面があるのは否めません)

(記2008/01/16)


ジャン・ギアン・ケラス(Jean-Guihen Queyras)

レーベル harmonia mundi france
収録曲 全集
録音データEnregistrement mars 2007, Eglise Saint-Cyriak, Sulzburg
使用楽器 Gioffredo Cappa, 1696(モダン仕様)
所有盤 HMC 901970.71 (P)2007 harmonia mundi s.a. (輸入盤)
備考 第三番(全曲)とレコーディング風景を納めたボーナスDVDが付属しています。
参考url: 公式Webサイト

モダン楽器によるほぼ理想的な演奏。 スピード感,躍動感に溢れ,かつ穏やかで柔軟性に富んでいます。 あくまで謙虚,決して激しさ,豪快さ,厳しさに走ることはありません。 卓越した技術力で自在に曲を操っていきますが,それを誇示したり,行き過ぎた個性の発揮につなげることはなく, あくまでスタンダード路線の中で,細やかに神経を行き届かせて曲を仕上げていきます。 アクセントを抑えたふくよかで柔らかな音色も魅力があります。 強い印象を残す演奏ではありませんが,極めて高いレベルでバランスが取れた素晴らしい演奏だと思います。

録音:

残響を多く取り込んだ録音。 しかも残響時間が長め。 マイク位置が比較的奏者に近いため,楽器音の輪郭が辛うじて感じられ, 何とか許容範囲ですが,細部が聴き取りにくく,また,楽器音の質感が大きく損なわれているこの音作りは大いに不満ありです。 ただ,これを心地よい響きと受け取る方もおられると思いますし, 残響がこれだけ取り込まれているにしてはましな部類には入ると思いますが, 演奏が素晴らしいだけに残念に思います。

(記2007/11/15)


ダヴィド・ゲリンガス(David Geringas)

レーベル Edelweiss
収録曲 全集
録音データRecorded at Scuola Grande di S. Giovanni Evangelista, Venezia 1989.
使用楽器 G. B. Guadagnini, Five stringed violoncello piccolo (a copy of G. B. Guadagnini) Hubert Schnorr 1984(モダン仕様)
所有盤 ED 1006(No.1-2-6を収録), ED 1007(No.3-4-5を収録) (P)(C)1989 Cassiopeia-Edelweiss (輸入盤)
備考 参考url: 公式Webサイト

技術力を活かした積極的な演奏で, 推進力ある曲運びが素晴らしく, 力強く引き締まった表現・音色も大変魅力的です。 速い楽章はもちろんのこと,スケールの大きな緩徐楽章も聴き応えがあります。

録音:

残響が多く,しかも楽器音に大きく被っているため,明瞭度が悪く,高域の伸び感もなく,くぐもった感じがして全くすっきりしません。 演奏者の息づかいが聴こえるような音の捉え方をしているにも関わらず,です。 さらに録音レベルが全体に低めなのも印象が悪い一要因になっています(全体の数ヶ所を除けば6dBは上げられます)。 立派な演奏だけに残念に思います。

(記2007/10/17)


ヤーノシュ・シュタルケル(Janos Starker)

レーベル EINSATZ RECORDS
収録曲 第一番,第三番,第四番,第六番
録音データ1951年
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 EZCD-006 (P)2007 EINSATZ RECORDS (輸入盤) (第一番,第四番を収録)
EZCD-010 (P)2007 EINSATZ RECORDS (輸入盤) (第三番,第六番を収録)
備考 LPからの復刻盤。 ソースは英NIXA PLP582と英NIXA PLP543。

小細工一切なし,シンプルでストレートな快演! テンポの揺れがほとんどなく整然としており,速い曲は前のめりに突っ走るすごい勢いがあって圧倒されます(しかも決して「熱演」ではありません)。 これだけ突っ走っているのに全く破綻する気配すらない技術力にも感服します。 一方で,意外なほど落ち着いて演奏される曲もあり,そのコントラストの強さが一層この演奏の印象を強めています。 さすがに少々演奏スタイルの古さを感じますが,昨今の演奏では絶対にこんなの聴けないんじゃないか,と, かえって新鮮に感じたりもします。

録音:

古い録音で,帯域不足(特に高音域)は仕方ないと思います。 ほんのわずかに響きが主音に被っているものの,基本的な音の捉え方が良く,帯域不足にしては聴きやすい録音に思います。 第一番,第四番を収録したCDの方がやや音圧レベルが高く,音の鮮度も良いように思います。

P.S.

第二番,第五番を録音しなかったことに関して,「はっきりと覚えていないが,レコード会社の資金不足か, 公に演奏したことがなかったことが理由だと思う」と別のCDの解説書で述べられています。

(記2007/10/11) 2枚目を追加,再レビュー
(記2007/08/06)


マリア・クリーゲル(Maria Kliegel)

レーベル Naxos
収録曲 全集
録音データ2003年5月 ハンガリー,ブダペスト,フェニックス・スタジオ
使用楽器 Stradivarius(1693)(モダン仕様)
所有盤 8.557280-81 (P)(C)2005 Naxos Rights International Ltd. (輸入盤)
備考 参考url: 公式WebサイトNAXOS 8.557280-81

とても快活で,よく歌う,主張のはっきりしたバッハです。 大胆な表情付けがちょっとやりすぎで鼻につき,もっと素直に弾いて欲しいと思うところも多々ありますが, これはこれで楽しいのは間違いありません。 技術力もあり,何より重心が低く密度感のあるニュアンス豊かな音色が魅力的です。 装飾がところどころ入りますが,ない方がいいかな...と思うところが多いです。 第五番のサラバンドは,リピート部分がピチカートで演奏されていて,これも面白いんだけど...というところです。

録音:

楽器音を主体に,指板を叩く音まで聞こえるような音の捉え方をしているのですが, 残響感は少ないものの,中低域に独特のこもった響きが被り,少しくぐもったすっきりしない音になってしまっています。 決して悪くはないのですが,良くもありません。 音の捉え方自体は悪くないので,この響きの被りがものすごく残念。 惜しい録音です。

(記2007/10/02)


フランス・ヘルメルソン(Frans Helmerson)

レーベル BIS
収録曲 第二番,第三番,第五番
録音データ1977-03-12(Suite No.2), 1975-05-17/18(Suite No.3), 1974-05-25/27(Suite No.5) at Wik Castle, Sweden
使用楽器 Cello: Lorenzo Ventapane, Naples 1820; Bows: Louis Gillet, Paris(Suite No.2) and Hans-Karl Schmidt, Dresden(Suite 3 & 5)(モダン仕様)
所有盤 BIS-CD-5 (P)(C)1974, 1975, 1977 & 1992, Grammofon AB BIS, Djursholm (輸入盤)

じっくりと作品に向き合った真摯な演奏で,落ち着いたテンポで楽器を丁寧に十分に鳴らし,充実感のある濃厚な響きを出しているところが良いと思います。 技術的にも安定感があります。 どちらかというと地味で推進感に乏しいので,私にとっては少々物足りないところはあります。

録音:

残響時間は長くありませんが,響きの取り込みが多く,距離感も少しあり, 楽器音よりも響きの方が支配的で明瞭感に乏しく聴き苦しく感じられます(特に第三番,第五番)。 第二番は比較的良好で十分許容範囲なのですが。

(記2007/09/12)


ラーシュ・ブロンベリ(Lars Blomberg)

レーベル Tonart
収録曲 全集
録音データ1992-1994
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 Tonart CD 42/43 (C)1999 (輸入盤)

運指のキレの悪さ,ぎくしゃくするフレージングなど,技術的にはかなり苦しさを感じます。 しかも曲によってかなり出来にばらつきがあります(でも第六番はなかなか健闘されています)。 テンポが全体に遅く(しかも後ろに後ろに引きずられる),大げさに思えるくらいに思いのこもった表現, 独特の間合いに戸惑い,最初は聴き通すのがつらく感じられましたが, 何度も聴いているうちに技術面は気にならなくなり,その地味で渋い音色からその心が伝わってくるような気がしてきます。 (でもやっぱり聴き通すのはちょっとつらいかな...)

録音:

指板を叩く音や奏者の息づかい(唸り声も...)まで聴こえてくるような音のとらえ方ですが, 残響の取り込みもかなり多く,楽器音が主体であり十分許容範囲ではあるものの, 私としては少々不満に思う録音です。 曲毎に多少のばらつきはありますが,印象はそれほど変わりません。

P.S.

名前の日本語表記はアリアCDさんのサイトの記述を参考にさせていただきました(有り難うございます)。

(記2007/08/24)


エマ・フェランド(Emma Ferrand)

レーベル exposure
収録曲 全集
録音データ(Vol.1)Recorded at St. Mary's Church, Rydal on 4 & 5th of April 2001.
(Vol.2)記載なし
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 (Vol.1)TBE1005, (Vol.2)TBE1011 exposure (輸入盤)
備考 参考url: フェランド氏紹介ページフェランド氏プロフィール(チェリスト渡辺靖子氏のサイト)

素直で癖がなく,丁寧で温かな表現に好感を持ちます。 太く重心の低い音色も印象に残ります。 技術的にはキレがいま一歩で,特に第六番など少々苦しげに感じられるのが残念です。

録音:

かなり残響が多く(残響時間はそれほど長くないのですが),楽器音に大きく被っているため,明瞭感がありません。 また,高域の伸びも全く感じられず,音色も良くありません。 すっきりしない録音です。 Vol.2は録音データの記載がありませんが,音質傾向は同じです。

P.S.

上記の紹介ページにBluebell Bookshopで入手できるとあったので,記載のメールアドレスに問い合わせしてみましたが,全く応答がなく, 気を取りなおしてサイトの最後に記載されているメールアドレスに問い合わせてみたところ, 手に入るショップ(Harold Moores Records)を探して教えてくれました。 そのショップに問い合わせると,すぐに支払い方法の連絡があり,手続きして約2週間で無事手に入れることが出来ました。 送料込みで15.99英ポンドでした。

(記2007/08/07)


レーヌ・フラショー(Reine Flachot)

レーベル Intercord
収録曲 全集
録音データ記載なし
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 29 719-2 Z/1-2 Intercord (輸入盤) (*LP)
備考 データの記載がなく録音年が不明。 LP自体は1972年のプレスのモノラル録音(ジャケットには"Stereo"とあるのですが...)。

最初の第一番プレリュードのあまりのスピード感にまず圧倒されるのですが, どの曲もプレリュードは速く,その他の楽章も全体に速めで, そのストレートで潔く逞しい,そして深刻さのない明るく開放的な表現に大いに惹かれます。 「男性的」な魅力に溢れる好演奏(でも女流なんですよね...)。

なお二部形式の楽章は,後半のリピートが省略されています。 ほとんど気にはならないのですが,あれあれっという間に終わっているのでちょっと物足りない気もします(第六番など20分を切っています)。

録音:

モノラル録音。 残響の多い録音ではないのですが,第一番から第五番は全体に高域の帯域感がなく, くすんだ音色であり,また,明瞭感という点でもやや不満が残ります。 一転して第六番は弦の振動まで見えるような生々しさを感じる私好みの好録音。 高域の伸びもそこそこあります。 全曲が第六番の録音で揃っていたら...と残念でなりません。

P.S.

T.Y.さんのご厚意により貴重な演奏を聴かせていただくことができました。 有り難うございます。 T.Y.さんからいただいた情報によると,フラショー氏は1922年生まれ(1998年没), 1971年から数年間東京芸大で教鞭を執っていたとのことです。

素晴らしい演奏なので,ぜひCD復刻して欲しいものです。

(記2007/07/02)


スティーヴン・イッサーリス(Steven Isserlis)

レーベル hyperion
収録曲 全集
録音データRecorded in Henry Wood Hall, London, on 4-8 December 2005(No.1-4) and 17-19 July 2006(No.5,6)
使用楽器 Feuemann Stradivarius(1730年製)(モダン仕様)※ガット弦使用
所有盤 CDA67541/2 (P)2007 Hyperion Records Limited (輸入盤)
カップリング曲:・The Song of the Birds(カタルーニャ民謡 鳥の歌)
備考 参考url: 公式WebサイトHyperion Records (CDA67541/2)

モダン仕様の本体にガット弦を張った楽器での演奏。 そのガット弦の音色のなんと魅力的なことか! 力強くスピード感を持ちながら,一つ一つの音がふくよかで極めて繊細な表情を持っています。 そしてそこから生み出される生命力溢れる音楽の素晴らしさ! 意欲的で生き生きとしています。

必死さも過剰な熱さもなく,また,過度の真面目さ窮屈さに支配されることもなく, 自由闊達に音楽を楽しみたいという気持ちが素直に表れているように感じます(もちろん本当はもっと真摯に取り組まれていると思いますが)。 既存のスタイルにとらわれない自在な表現も新鮮です。

録音:

比較的残響の取り込みは少なく,指板を叩く音まではっきりと聴こえるような音の捉え方なのですが, 付帯音が全体に被さって明瞭感が損なわれ,くぐもった感じがしてすっきりしません。 高域の伸び,透明感もあまり良くありません。 悪くない録音ではあると思うのですが,付帯音を抑えてもう少しヌケの良さを出して欲しかったと思います。 録音レベルが少し低めなのも残念です(ピークが-6~-8dBFsで最上位ビットがほとんど使われていません)。

P.S.

CD2の最後に,アンナ・マグダレーナの筆写譜版,ヨハン・ペーター・ケルナーの筆写譜版,ヨハン・クリストフ・ヴェストファル・コレクションの筆写譜版の,第一番プレリュードの演奏が収められています。

(記2007/06/05)


ロリ・プレサス(Lori Presthus)

レーベル 自主制作
収録曲 全集
録音データRecorded July 2-3, 2005(Vol.1), 13th and 17th, 2006(Vol.2) in Portland, Oregon
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 品番なし (C)2005 (C)2006 Lori Presthus (輸入盤)
備考 参考url: Sofa InkCD Baby(Vol.1のみ)

演奏者には大変失礼ながら(ごめんなさい)... 締まりのない音色,キレの悪さ,正直なところ技術力はプロ水準に達しているかはなはだ疑問です。 しかし,この表現力はたいしたものです。 起伏に富んだフレージング,緩急強弱の使い分け,積極的,前向きなテンポどりなど,随所に工夫が見られますし, 持っている技術の中で破綻することなく最大限の表現を見せています。 締まりはないものの,楽器を良く鳴らし,深々とした響きを出していることにも感心します。 音楽の喜びを身体いっぱいに表現しようとする姿勢に素直に共感できる好演奏です。 音楽は技術だけじゃない,こんな楽しさもあるんだ,と再認識させてくれました。 (ということで,私は気に入りましたが...でも,やっぱりお薦めするものではありません)

録音:

若干残響のある環境での録音ですが,至近距離で録音されているため,楽器音への影響はほとんどありません。 極めて明瞭感,解像感の高い録音ですが,マイク距離が近すぎるのか,少し捉え方が濃く,きつすぎる気もします。 もう少し適度な距離感が欲しいところです。 私の好みの録音ではありますが,完全に満足しているかというとそうでもなく,理想的な録音の難しさを改めて認識させられます。

(改2007/06/05) Vol.2追加で改訂
(記2006/04/28)


サイモン・ローランド・ジョーンズ(Simon Rowland-Jones)

レーベル Meridian
収録曲 全集
録音データ(Vol.1) St. Edward the Confessor's Church, Mottingham, London. (Vol.2) 記載なし
使用楽器 Philip Cray(1989)(No.1-3), Giovanni Baptista Gabrielli(1775)(No.4,5), Martin Yerizian(five-string viola)(No.6), Bow: Matthew Coltman (バロック仕様)
所有盤 (Vol.1) CDE 84270 (P)(C)1994 Meridian Records (輸入盤)
(Vol.2) CDE 84324 (P)(C)1997 Meridian Records (輸入盤)
備考 参考url: Meridian Records (CDE 84270, CDE 84324)

バロック仕様?のヴィオラによる演奏。 第六番はヴィオラ・ポンポーザを復元した五弦ヴィオラとあります(高域側にE線追加)。 すべて原調通り,第六番も楽譜通りで楽器の都合による編曲は見あたりません。

ヴィオラという楽器を活かした軽快な演奏ですが, Vol.1(No.1-3)とVol.2(No.4-6)では少し印象が異なります。 Vol.1はキチッとした折り目正しさと落ち着きがあります。 一方Vol.2は,より積極的,意欲的で,活力があります。 録音のせいもあると思いますが,Vol.2の方がより魅力的です。

特に五弦ヴィオラによる第六番! とうとうと美しく奏でられる緩徐楽章, そして,次第に高揚し,全集を輝かしく締めくくるGavotteとGigue! 高域側は五弦化でヴァイオリン同等になっており,あまりの甲高さに最初戸惑うのですが, この突き抜けるような響きがやがて快感に変わってきます(^^; 五弦というだけでも拍手なのですが,それにふさわしい明るく活気ある演奏に感激です。

この演奏(特にVol.2)を聴いて,ヴィオラによる演奏の楽しさ,チェロとは違う魅力を再発見した思いです。 また,第六番に関しては,ヴィオラであっても原調のまま,五弦の楽器を使って編曲なしに演奏して欲しい,という思いが強くなりました。 それほどに,この第六番は私にとってインパクトがありました。

録音:

Vol.1とVol.2で録音が全く異なります。 Vol.1は,残響がやや多く,また少し距離感があり,響きが被って明瞭感が悪く,音色もくすんで楽器の質感が大きく失われています。 全く冴えず印象はあまり良くありません。

一方Vol.2は,残響は多少あるものの,直接音と分離しており,明瞭感が保たれています。 高域の伸びもあり,音色も自然,細部まで聴き取ることができる好録音です。 Vol.2の録音で統一されていないのが残念です。

P.S.

第六番,惜しむらくは,これがヴィオラだということ。 音域的にはヴァイオリンと同じなのですが,音色はやはりヴィオラ, 音が高くなるにつれて苦しげになっていきます。 この音域はやはりヴィオラではちとつらいと思います。 思い切って,低域側に拡張した五弦ヴァイオリンを使って欲しかった... もっと透明で,輝く第六番が聴けたんじゃないかと。 過去の楽器にこだわらず,この曲を弾くにふさわしい新しい楽器を開拓して欲しいと思います。

(記2007/05/07)


エンリコ・マイナルディ(Enrico Mainardi)

レーベル Archiv
収録曲 全集
録音データハノーファー,ベートーヴェンザール, 1954年4月12,13日(第一番),1954年4月13,15日(第二番),1954年10月29日(第三番),1954年11月19,20日(第四番),1955年2月23-25日(第五番),1955年10月24-28日(第六番)
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 PROA-59/61 (P)1954/55 (3枚組) Deutsche Grammophon GmbH, Hamburg (輸入盤)
備考 タワーレコード企画盤 Tower Records Vintage Collection Vol.3 (PROA-59/61)

CD2枚の時間を大きく超える(計約173分),推進力,躍動感とは無縁のゆったりした演奏ですが,決して緩んではいません。 音そのものは快活で,表現にも気概が感じられ, 一つ一つの音を大切に刻んでいく謙虚な音楽創りに素直に感動します(曲によっては少し大仰なところもありますが,ご愛嬌ということで...)。 技術的なキレはありませんが,欠点になるどころかむしろ味わい深さに転化させている奏者の力量もなかなかのもの。 熟練の技といったところでしょうか。

録音:

モノラル録音。 残響感がほとんどなく,楽器の肌触りが感じられるオンマイク気味の音の捉え方は私の好みなのですが, 高域の伸びがなく詰まり気味で,いかにも古くさく聴こえるのが惜しいです。 本当に古い録音なので仕方ないのですが。

(記2007/04/16)


デヴィッド・ケネディ(David Kenedy)

レーベル Signum Classics
収録曲 全集
録音データRecorded at the Manoukian Music Centre, Westminster Great School, London, 13 & 14 July 2005, 25 & 26 Aug 2005, 21 & 22 2005
使用楽器 Carlo Ferdinando Landolfi(Milan 1758)(モダン仕様)
所有盤 SIGCD091 (C)(P)2007 Signum Records (輸入盤)
備考 参考url: Signum Records (SIGCD091)

折り目正しく落ち着きがあり,また適度なダイナミクスも持ち合わせた中庸でオーソドックスな佳演。 無理せず丁寧にまとめており,耳あたりの良い音楽として仕上がっています。 一方で,ここぞというところでの押し,推進力が弱く,今ひとつワクワクするところがないのが残念なところです。

録音:

比較的残響の取り込みは少なく,楽器音をボディ感たっぷりに捉えていますが, 付帯音による若干の雑味とモゴモゴしたところあり,音の捉え方の良さの割にすっきりしない,惜しい録音に思います。

(記2007/03/28)


CD image
演奏:3.0
録音:3.0

ヴィヴィアーヌ・スパノゲ(Viviane Spanoghe)

レーベル SOLAL
収録曲 全集
録音データRecorded in August and Spetember 2005 at Royal Conservatoire, Brussels, Belgium
使用楽器 クレモナのフランチェスコ・ルジェーリ1670年作(モダン仕様)
所有盤 SOL 002 (C)(P)2006 Solal (輸入盤)
備考 参考url: スパノゲ氏公式Webサイトマーキュリー

少し速めのテンポで,軽快に音楽が流れていく,肩肘張らない気楽な雰囲気が魅力的です。 強い印象は残りませんが,すんなりと心に届く自然で素直な音楽です。 特に第一番から第四番までがこの傾向で好印象です。(ここまでの4曲がCD1に収められています)

第五番は少し雰囲気が変わり,力感が増しじっくりと演奏されています(確かにそういう曲だとは思いますが)。 第六番はプレリュードが遅めのテンポで丁寧,大人しすぎて推進力が感じられません。 また,ジーグのリピート記号直前の最後の音を伸ばしすぎて音楽が止まってしまうのも気になります。 それ以外はまずまず良いのですが,こういった些細な点に全体の印象が引きずられて損しています(もったいない...)。

モダン仕様の楽器ですが,表現の明るさ,タッチの軽さに対して音色はややくすんで地味です(録音が良くないせいかもしれません)。 技術的にも安定感がありますが,ポジション移動のグリッサンドが気になるときがあります(これも些細なことではありますが)。

録音:

残響がやや多い環境での録音です(残響時間は長くありませんが)。 残響音が楽器音に被って明瞭度が良くなく,帯域感も失われていて少しくぐもった音になってしまっています。 クッキリと楽器音を聴き取ることが出来ず,少し苛立ちを感じてしまいます。 また,全体に強奏部でジリジリという付帯音が付きまとって印象が良くありません(演奏雑音かもしれませんが,もしそうだとしても,これは少々耳障りです)。

(記2006/12/29)


CD image
演奏:3.5
録音:3.5

フレデリック・ズロトキン(Frederick Zlotkin)

レーベル 自主制作
収録曲 全集
録音データ記載なし
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 ZLOTBACH 1/2 (C)(P)1997 Frederick Zlotkin (輸入盤)
備考 Musical Heritage Societyから発売されていたLPの自主復刻盤。 ズロトキン氏の父親はハリウッドボウルを創始したフェリックス・スラトキン氏, 兄は指揮者のレナード・スラトキン氏とのこと(ラストネームがちがうのはなぜ?)。
参考url: 本演奏に関するズロトキン氏へのインタビュー記事

装飾が多用された非常に特徴のある演奏で,編曲まではいかないにしても部分的にかなり大胆に音型の変化をつけています。 また,サラバンドをコンソルディーノで(弱音器をつけて)演奏したり(第二番,第五番), ガヴォットでは一部ピチカートで演奏してみたりと,随所に自由な発想の工夫がみられます。

装飾といってもバロック的な装飾とは全く趣が異なる印象を受けるもので, ものすごくはまっているところもあれば強引に詰め込んでいるようなところもあり, 最初はそのあまりの特異さに反発を感じることもありましたが, 慣れてくるとこれはこれで面白いじゃないか,と受け入れられるようになってきました。 (この面白さを説明するのはなかなか難しい...)

表面的な特異さについつい目を奪われがちなのですが, こういった装飾以前にその骨格となる演奏自体が実にしっかりとしており, 明るく健康的で活気に満ちた魅力ある佳演であることも見逃せません。 だからこそこういった独自の工夫が一層活きてくるだと思います。

録音:

楽器本来の響きをしっかりととらえた好ましい録音です。 残響を少し伴い,楽器音への被りが感じられ,明瞭感や音色への影響は多少あるものの, それほど気になりません。

P.S.

本CDを最初に紹介して下さったK.N.さんがズロトキン氏からこの録音に関するエピソードを聞いたとのことで教えていただきました。

最初,著名なプロデューサのピーター・デルハイム氏がズロトキン氏のデモテープに興味を持ち, RCAからリリースする話が進みかけていたが,デルハイム氏がガンで亡くなられて話が流れてしまった。 一旦リリースを諦めたが,友人の支援もあってMusical Heritage SocietyからLPを出すことが出来た(このLPは全世界で6,000セットほど売れたらしい)。 その後マスターテープの権利をズロトキン氏ご自身が取得し, 親友のホルヘ・シクレ(Jorge Sicre)氏(クリーブランド交響楽団のチェリスト)の素晴らしいジャケット画を得てCDとして自主リリースすることが出来たということです。

この話を聞いた2004年4月当時,まだズロトキン氏の手元に500セットほどあったとのことで,まだまだ在庫はあるのではないかと思います。

なお本CDは本演奏に関するインタビュー記事のページから注文することが出来ます(支払いはPayPal)。 注文後ズロトキン氏ご本人から確認のメールが届き,その後すぐに郵送されてきました。

(記2006/12/12)


CD image
演奏:3.5
録音:2.5

ウェンシン・ヤン(Wen-Sinn Yang)

レーベル La Vergne Classics
収録曲 全集
録音データMunich, September 1997
使用楽器 Matteo Gofriller(18世紀中頃)(モダン仕様)
所有盤 LaVer 100252/53 (C)(P)1997 LA VERGNE (輸入盤)
備考 ウェンシン・ヤン氏1回目(?)の録音。 台湾人を両親に持つスイス出身のチェリストで, 長年バイエルン放送交響楽団の首席チェリストを務め,現在はソロと室内楽で活躍中とのこと。 2006年に2回目(?)の全集をリリースしています(Arthaus Musik 101 419,DVD+CDのセット)。

極めてオーソドックス。 緩徐楽章で時折装飾が取り入れられていますが,テンポどりも緩急強弱も自然で,力感・躍動感も適度にあり,ほとんど癖が感じられません。 技術的にも全くそつがなく,まるで模範演奏を聴いているかのようです。 非常に安定感があって,安心して音楽に浸れる好演奏と言えます。

「普通」を極めたような演奏で強い自己主張がなく,どちらかといえば謙虚で控えめなので, これはこれで好きなのですが,強いて言えば,演奏の印象,奏者の印象が残りにくいというところで少し損しているのではないかと。 ワクワクする何かが欲しい,と思うのです。

録音:

残響はそれほど多くないのですが,響きが被って鮮明さが失われ, 楽器の肌触り,ニュアンスを感じ取りにくくなっています。 まあこれは何とかぎりぎり我慢の範囲なのですが, 低ビットレートのMP3で録音したんじゃないかと勘違いしそうなくらいシュルシュルという付帯音が常に付きまとっており, これが印象を一気に悪くしています。

(記2006/11/10)


CD image
CD image
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演奏:3.0
録音:2.5

ヤン・スラヴィク(Ján Slávik)

レーベル Diskant
収録曲 全集
録音データ Recorded in the Chapel in Hlboká St., Bratislava, February 2001(Vol.1), February 2002(Vol.2), October 2004(Vol.3)
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 (Vol.1)DK 0060-2 131 (P)(C)2001 Diskant (輸入盤) (No.1-3を収録)
(Vol.2)DK 0067-2 131 (P)(C)2002 Diskant (輸入盤) (No.4を収録)
カップリング曲:Bach/Sonatas for Viola da gamba BWV 1027-1028
(Vol.2)DK 0080-2 131 (P)(C)2004 Diskant (輸入盤) (No.5,6を収録)
カップリング曲:Bach/Sonata for Viola da gamba BWV 1029

小気味よいテンポで曲をグイグイと引っ張っていくスケールの大きい意欲旺盛な演奏で,この点では好印象なのですが, 今ひとつ締まった感じがありません。 音色も少し粗く魅力に欠けます。 左手は良く回るのですが,ごくわずかですが音程が散漫に感じられる瞬間があり,また, 右手の技術が左手について行けていないように感じられるところもあります。 惜しいです。

あと一点気になったのが,第一番の終楽章,最後から3小節目が一拍多いということです。 どういう意図なのか,こういう版があるのか,ちょっとわかりません。 他にも他の演奏とは違う音程で弾いているところが何カ所かありました。

録音:

残響過多で楽器音への被りが大きく,明瞭感の低下の著しい,残響の悪影響の見本のような録音です。 細部やニュアンスが残響に埋もれ,音色も著しく損なわれています。 暑苦しくて聴き苦しい,私の好まない録音の典型です。 締まりがなく感じられるのは,この録音のせいかも...

(記2006/11/06) 追記
(記2006/10/27)


CD image
演奏:3.0
録音:3.0

ケヴィン・トンプソン(Kevin Thompson)

レーベル 自主製作
収録曲 第一番,第五番
録音データ17-18 December 1997, at the Nico Theatre Centre, Cape Town, South Africa.
使用楽器 Boosey & Hawkes (Basson) euphonium (ユーホニウム)
所有盤 自主製作 (輸入盤)
タイトル:"EUPHONIC BACH"
カップリング曲:Bach/Partita in A minor BWV1013 for Solo Flute, Bach/Partita No.2 in D minor BWV1004 for Solo Violinより4曲(Allemanda, Corrente, Sarabande, Giga)
備考 参考url: トンプソン氏公式Webページeuphplayer.com

ユーホニウムによる演奏。 重音は,装飾音符的に処理される場合と,拍の中に16分音符的に取り入れられる場合と両方がありますが, どちらかといえば後者が多いように感じられます(速いパッセージでは省略されることもあります)。 音型の変更はありますが,ほとんど違和感がなく,なかなか巧く編曲されていると思います。

管楽器による演奏では,ブレスによるリズムの乱れがまず気になるのですが,この演奏では全くと言っていいほど気にならないのが立派です。 第一番のPreludeなどいったいどこでブレスしているのか全くわからないですし, 速いパッセージでは確かにブレスの音が聞こえるのに楽器音が全く崩れないところもあり,実に見事です。 (逆にどちらかといえば緩徐楽章の方がブレスが目立っています)

演奏自体は,金管楽器での演奏であることを忘れてしまいそうなほど見事にノーマルです。 違和感なく安心して聴ける一方,金管ならではの何か仕掛けがあってもいいのでは,と思うほどです。 決して割れたり荒れたりしない艶のある音色も良いと思います。

カップリングで無伴奏ヴァイオリンパルティータ第二番から4曲が収められていますが, シャコンヌがないのが残念です(きっと吹けるに違いない...)。 無伴奏フルートパルティータは,やや乱れが目立ち,ちょっと辛そうに聴こえます。

録音:

少し響きを伴っているようにも聴こえますが,それほど気になりません。 すこし距離感があり,高域の伸びが足りないように感じます。 ラッパ開口部がマイクに向いていないのではないかと思います。 私としてはもう少し生々しくとらえて欲しいと思うのですが,金管楽器の録音としてはこんなものかもしれません。

(記2006/10/13)


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演奏:2.5
録音:3.0

マイケル・J・ミルズ(Michael J. Miles)

レーベル 自主製作?
収録曲 第一番,第三番
録音データ記載なし
使用楽器 バンジョー
所有盤 RTOR 822 (C)1997 Michael J. Miles (P)Right Turn On Red Music, BMI (輸入盤)
タイトル:"American BACH"
カップリング曲:Miles/Suite for the Americas
備考 Al Ehrich(Double Bass)との共演。
参考url: ミルズ氏公式Webページ

バンジョー・バージョン(^^;;。 楽器の都合に合わせてか,少しだけ音型の変更が見られます。 ダブルベースがベースラインとして加わっています。

なんともおっとりとした演奏でちょっと拍子抜けしますが, ベースラインに縛られたリズム感がチェロの演奏とはまた全然違う雰囲気を醸し出しています。 一つ一つの音の発音のムラが大きく,またリズムも崩れがちで,聴き苦しいところが目立ちます。 また,ポコンポコンというバンジョーの音色が何とも安っぽく,あまり良い印象を受けません(ブルーグラスで聴くバンジョーはこんな音ではなかったはず...)。 ただ,American Bachというタイトルだけあって,その雰囲気は感じられます(特に第三番)。 ベースラインが貢献していると思います。

録音:

余分な響きの取り込みもなく,楽器音を素直にとらえた録音ですが, オフマイク気味で録音レベルも低め,今ひとつすっきりしません。 悪くないとは思うのですが,良いとも言えないのが残念です。

(記2006/10/13)


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演奏:3.5
録音:3.0

トーマス・デメンガ(Thomas Demenga)

レーベル ECM
収録曲 全集
録音データ December 1991(No.1), February, July 1995(No.2), April 1989(No.3), September 1986(No.4), November 2000(No.5), December 1998(No.6)
使用楽器 Domenico Montagnana (Venezia, 1686-1750) (※備考参照)
所有盤 (1)ECM 1340 (78118-21340-2) (C)(P)1987 ECM Records (輸入盤) (No.4を収録)
カップリング曲:Heinz Holliger/Duo für Violine und Violoncello, Studie über Mehrklänge für Oboe solo, Trema für Violoncello Solo
(2)ECM 1391 (839 617-2) (C)(P)1990 ECM Records (輸入盤) (No.3を収録)
カップリング曲:Elliott Carter/Esprit rude, Esprit doux for Flute and Clarinet, Enchanted Preludes for Flute and Violoncello, Riconoscenza per Goffredo Petrassi, Triple Duo
(3)ECM 1477 (437 440-2) (C)(P)1993 ECM Records (輸入盤) (No.1を収録)
カップリング曲:Sándor Veress/Sonata per violino solo, Sonata per violoncello solo, Trio per archi
(4)ECM 1571 (78118-21571-2) (C)(P)1996 ECM Records (輸入盤) (No.2を収録)
カップリング曲:Bernd Alois Zimmermann/Sonate für Violine solo, Sonate für Viola solo, Sonate für Cello solo
(5)ECM 1782/83 (461 862-2) (C)(P)2002 ECM Records (輸入盤) (No.5,6を収録)
カップリング曲:Toshio Hosokawa/In die Tiefe der Zeit für Violoncello und Akkordeon, Duo für Violine und Violoncello, Winter Bird für Violine solo, Isang Yun/Gasa für Violine und Klavier, Espace I für Violoncello und Klavier, Images für Flöte, Oboe, Violine und Violoncello
備考 バッハと現代音楽を組み合わせるシリーズとして10年以上にわたって録音。 全5回,計6枚。 最後に発売された(5)の解説書によると,第一番の録音以降でガット弦とバロック弓を取り入れ, ピッチを第一番では半音,第二番,第五番,第六番では全音下げているとのこと(第三番,第四番は明記されていませんがモダン仕様か?)。 第六番も通常の四弦の楽器を使っているようです。 第五番がスコルダトゥーラ調弦かどうかは明記されていません。 また第五番では,特にPreludeとCouranteでバッハ自身の手によるリュートバージョンの楽譜を参考にしたとあります。
参考url: デメンガ氏公式Webサイト

全体的に緩徐楽章含めてテンポが速めで勢いがあり,覇気にあふれた活気ある演奏という点で一貫していますが, やはり録音年代を追う毎にスタイルの変化が感じられます。 モダン仕様の楽器で演奏されている第三番,第四番と,バロック仕様?に変えた第一番は真面目で比較的ノーマルな印象, その次に録音された第二番は,ガット弦を活かそうとするような発音で少し控えめに感じられます。 そして第五番,第六番,一転して楽器の特性にとらわれない思い切った弾きっぷりが見事! 特に第六番が素晴らしい。 スピーディーで自在,明るく躍動的,これがバロック楽器での演奏なのかと驚きます。 何か吹っ切れたものを感じます。 全曲をこの演奏で録音して欲しかった! 残念!

録音:

録音が長期にわたっており,それぞれ音作りが異なりますが,平均すると3.0点くらいかと思います。 第三番が最悪で2.5点程度,第六番が最も良く3.5点程度です。

第三番は残響過多でモゴモゴして明瞭感がなく,全く良くありません。 第一番と第四番はもう少しマシですが,ヌケが悪く全くすっきりしません。 第四番は左右の位相が不自然でヘッドホンで聴くと頭がねじれそうになります。 第二番はこの中では平均的ですが,どちらかといえば後述の第五番に近い印象です。 第五番は少し響きが伴い,楽器が中央に小さく定位するモノラル的な録音ながら,音の芯がしっかり捉えられているので比較的聴きやすい録音です。 第六番はもう少し近めで,音像が大きく散漫な感じはあるものの,響きの取り入れが少なく楽器音を主体にとらえており,全曲の中では最も良いと思います。

(記2006/09/22)


CD image
演奏:3.0
録音:3.0

ヴェリチカ・ヨッチェヴァ(Velitchka Yotcheva)

レーベル Gega new
収録曲 第一番,第三番,第五番
録音データRecorded in Bulgaria Concert Hall, December 2001
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 Gega new GD 279 (P)2002 Velitchka YOTCHEVA (輸入盤)
備考 ヨッチェヴァ氏はブルガリアの出身で,現在はカナダで活動されているようです。 このCDは,なぜか公式Webサイトのディスコグラフィには掲載されていません(新録音の全集は載っていますが...)。
参考url: ヨッチェヴァ氏公式WebサイトGega newのカタログ

ゆったりした楽章では重心の低い深々とした響きが心地よく, 速い楽章では派手さはないものの,ちょっとした表情づけが巧い!と思わせる, 強い印象を残す演奏ではありませんが,健全で誠意の感じられる聴き心地のよい好演です。 やや表現のダイナミックレンジが狭く,歯切れ,音色の締まりに欠けるところが残念に思います。

録音:

楽器音を厚みのあるしっかりした音でとらえていますが,低域の響きの被りが多く,モゴモゴして少々聴きづらいところがあります。 中高域にも濁りが感じられます。 もう少し響きを抑えてすっきりとした録音にして欲しいところです。

(記2006/09/11)


CD image
CD image
演奏:3.0
録音:3.0

セバスチャン・デルフラー(Sebastian Dörfler)

レーベル VEST-NORSK PLATESELSKAP (VNP)
収録曲 全集
録音データRecorded in Storetveit Church, Bergen, Norway in January and June 1998 (No.1,2,6), August 2001 and September 2002 (No.3,4,5)
使用楽器 Violoncello: School of Milano, ca. 1690, sound adjustment: Amnon Weinstein(モダン仕様), Bows: Etienne Pajeot, Daniel Schmidt, James Tubbs
所有盤 VNP 2004-0063, VNP 2004-0065 VEST-NORSK PLATESELSKAP (輸入盤)
備考 解説書によると,このCDの売り上げは,SOS Children's Villagesという団体(?)に寄付されるとのことです。
参考url: La Bottega Discantica(イタリアの通販サイト)

穏やかで優しさが感じられる佳演です。 丁寧に,丹念に,心を込めて演奏されているところに好感を持ちます。 挑戦的な演奏ではないので,技術的にも無理がありません。 あまり楽器を強く鳴らすことなく,すっと弓を引いてしまうので, 軽いのはいいのですが,音に魅力が薄く,少し物足りなさが残ります。 音の締まりと歯切れ良さがもう少しあると良かったのですが。 惜しい... で,この中では第五番が比較的ダイナミックな演奏で印象に残りました。

録音:

少し多めに響きが取り入れられており,楽器の芯は感じられるものの,明瞭感が良くなく, また,高域の伸び感も損なわれ,精彩のない音色になってしまっています。 もう少し響きを抑え,直接音比率を上げて欲しいところです。 録音レベルも全体に低めなのがマイナスです。

(記2006/08/25)


no picture
演奏:3.0
録音:2.5

寺神戸亮

レーベル なし?
収録曲 第一番,第二番,第三番
録音データ2006年6月15日,目白聖公会(目白バ・ロック音楽祭でのライブ録音)
使用楽器 ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ(ディミトリー・バディアロフ製作)
所有盤 ブラビッシモ!での音楽配信(2006年9月16日までの期間限定)→配信サイト
備考 参考url: 「寺神戸亮,ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラを語る」(無料配信)
寺神戸氏公式Webサイトウェブログバディアロフ氏Webサイト(楽器製作者)
目白バ・ロック音楽祭 寺神戸氏のプログラム

ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラという肩掛け型?の楽器による演奏で, 寺神戸氏によると,歴史の中ではれっきとしたチェロであったとのことです(ということで,番外にしませんでした)。

音域はチェロですが,そのキャラクターはどちらかといえばヴィオラに近い印象を受けます。 良く響く楽器なのですが,小気味よい奏者の動きに楽器が追従できていないようなもどかしさがあります。 録音が悪いためかもしれませんし,楽器の合わせた最適な奏法が確立できていないからかもしれません(楽器を入手されてからさほど時間が経っていないのではないかと思いますし)。 演奏そのものは,装飾や工夫を凝らした表現が時折見られるものの,奇をてらわない正攻法的なものに思います。

録音:

直接音よりも間接音成分が多く,しかも心地よい響きではなく, 単に楽器音に被って音色を曇らせているだけ, 明瞭感に乏しくモゴモゴとしています。 演奏会の雰囲気を伝えてくれる録音ではありますが,これでは今ひとつ音楽が楽しめません。

P.S.

楽器に関しては,無料配信の「寺神戸亮,ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラを語る」で詳しく説明されているので, そちらをご参照(?)いただければと思います。

このヴィオロンチェロ・ダ・スパッラという楽器,なぜヴァイオリンやチェロのように時代と共に進化の過程を歩むことなく絶滅の道をたどってしまったのか, この演奏会の録音を聴いていると,何となくその理由がわかるような気がしてきます。 確かに楽器としてヴァイオリンやチェロと異なる特徴を備えていますが,楽器そのものが発する音の魅力がそれらに遠く及んでいない... 寺神戸氏の技量をもってしても! 少なくとも私にはそう感じられるのです。

ヴァイオリニストの技術で弾ける,立って弾ける,といった(代用的な)機能性, 歴史の上でチェロとして存在した楽器で演奏するという学究性,物珍しさを越えて, 純粋に音楽としての(チェロとは異なる)魅力を引き出すことができるか, 寺神戸さんがこの楽器をどのように極めていかれるのかを注目していきたいと思います。

しかし,私としては,淘汰されてしまった楽器を追いかけるより, ヴァイオリンもしくはヴァイオリニストが無伴奏チェロを弾くのに最も適した楽器を新規開発し, チェロでの演奏とは全く違う魅力に満ちた「無伴奏チェロ組曲」を寺神戸さんに実現して欲しい。 寺神戸さんは,「シャコンヌへの道~無伴奏ヴァイオリン・リサイタル」の中で無伴奏チェロ組曲第六番のガヴォットをヴァイオリンで弾いておられます。 このスパッラによる演奏より何十倍も楽しいし,はるかに可能性を感じるのです。 2004年7月2日の編集日録でも書きましたが,寺神戸さんならそれが出来ると思うのです。 (やっぱり馬鹿げた望みでしょうか...)

(記2006/07/19)


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演奏:3.5
録音:2.5

スレン・バグラトゥーニ(Suren Bagratuni)

レーベル Blue Griffin Recording
収録曲 全集
録音データRecorded in Krannert Center, University of Illinois at Urbana-Champaign.
June 8-10, 2000(No.1,2,3,6), July 7, 2000(No.5), July 15, 2000(No.4)
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 BGR119 (C)(P)2004 Blue Griffin Recording (輸入盤)
備考 バグラトゥーニ氏は,アルメニア,エレバンの出身。 1986年のチャイコフスキーコンクールで第二位。 参考url: Blue Griffin Recording

速めテンポで淀むことなく軽快に弾ききっています。 技術力も高く,荒れることも崩れることもなく安定感があり, また,勢いだけに頼ることなく,一つ一つの音に気が配られ,丁寧に仕上げられているところも好印象です。 私は基本的にこういう颯爽としたストレートな演奏が大好きですが,少しこぢんまりとしているように思います。 表情や音色にスケール感,何かプラスアルファの魅力があるとなお良かったと,欲深いことを思ってしまいます。

録音:

残響が多く,また,楽器音にかぶっているため,明瞭感もありませんし,音色も良くありません。 奏者の呼吸音が時折聞こえますので,マイク距離はそれほど遠くはないと思うのですが... 残響時間もそれほど長くなく,響きの質も良くなく,残響の弊害ばかりが耳につきます。 残響を取り入れる意味を全く感じません。

P.S.

このCD,2枚目の最後1分くらいでブチブチという雑音が入ります。 CDの最外周をよく見ると,アルミ蒸着の端ががたがたとしています(これは2枚とも)。 これが直接音に関係していかは不明ですが,製盤が少し粗悪です。

(記2006/06/19)


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演奏:3.5
録音:3.5

ジャン・マルク・アパップ(Jean-Marc Apap)

レーベル Zig-Zag Territoires
収録曲 第一番,第二番,第三番
録音データ2003年6月
(L'enregistrement des suites de J. S. Bach a été réalisé à L'Eglise de Rivière en Indre et Loire en juin 2003 per Jean-Paul Delarbre, (Sonothèque Musicale de Tours)
使用楽器 記載なし(ヴィオラ)(モダン仕様)
所有盤 ZZT051103 (P)(C)2005 Zig-Zag Territoires (輸入盤)
カップリング曲:ライプツィヒ・コラール集より「いざ来たれ異教徒の救い主よ」BWV659, 「主イエス・キリストわれらを顧みたまえ」BWV655, 「バビロン川のほとりで」BWV653 (with Quatuor Terpsychordes)
備考 各組曲の後に,ヴィオラと弦楽四重奏用に編曲されたコラールが挿入されています(弦楽四重奏はテルプシコルド四重奏団)。
参考url: Zig-Zag TerritoiresHMVでの紹介(上記はこのHMVの情報を参考にさせていただきました)

ヴィオラによる演奏。 ヴィオラの軽快さが活きています。 リズムや流れに重点が置かれ,細部にはこだわらない演奏です。 全体にテンポが速く,ボウイングに勢いがあり,表現にキレがあります。 何ともせかせかした落ち着きのない感じがチェロとは全く違ういい味を出しています。 第二番のAllemandeなど違う曲を聴いているような錯覚に陥りますし,第三番のAllemandeもこんな軽やかな演奏は聴いたことがありません。 無伴奏チェロ組曲として好んで聴きたいかはともかく,インパクトのある面白い演奏であることは間違いありません。

録音:

残響の多い環境での録音で,たっぷりと残響成分が取り込まれていますが, 楽器音そのものは残響から浮き出るかたちで比較的明瞭にとらえられています。 残響の質も悪くないように思います。 残響のまとわりつきが鬱陶しく,私の好みの録音ではありませんが, 印象はそれほど悪くないということで3.5点としました(もちろん大おまけですが)。

(記2006/06/02)


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演奏:3.0
録音:3.0

ゲルハルト・マンテル(Gerhard Mantel)

レーベル sound star-ton
収録曲 全集
録音データ記載なし
使用楽器 Carlo Antonio Testore, 1740(モダン仕様)
所有盤 SST 31120 (P)1993 sound star-ton (輸入盤)
備考 参考url: マンテル氏公式Webサイト

ごくオーソドックスにまとめられた演奏に思います。 適度な緩急強弱と躍動性があり,テンポも速すぎず遅すぎず,安心して聴ける一方, 特徴的なところや究めたところに薄く,物足りなさがあるのも正直なところです。 技術的な安定度に不安を覚えるところもありますが,全体を通してそれほど気になるものではありません。 これはこれで良い演奏だと思いますが,あえてこの演奏を聴きたくなる「何か」が欲しいと感じます。

なお,CD2の最後に,「実験的な試み」として,第六番サラバンドのチェロアンサンブル版が収められています。 ご本人による多重録音ではないかと思います。 優しく味わいある響きが心地よく,このチェロ独奏とは全く異なる世界は一聴の価値があると思います。

録音:

残響時間は長くありませんが,反射音が多いのか,音色が濁っています(何重にもなって聴こえるような気がする...)。 広いホールではなく,比較的狭い空間で録音されたようなイメージです。 奏者が身近に感じられる点では好感が持てるものの,このくすんだ音色は残念ながら印象が良くありません。

(記2006/05/22)


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演奏:3.0
録音:2.5

アウグスト・ヴェンツィンガー(August Wenzinger)

レーベル Bärenreiter Musicaphon
収録曲 No.3, 4, 5, 6
録音データJuni 1961 im Studio Dr. Thienhaus, Hamburg=Blankenese (No.3, 4), September 1960 im Studio Dr. Thienhaus, Hamburg=Blankenese (No.5, 6)
使用楽器 Violoncello in Originalmensur und tiefem Kammerton von Jacobus Stainer, Absam 1657 (Suite No.3, 4, 5), Violoncello mit 5 Saiten von Johann Öhberg, Stockholm 1762 (Suite No.6), Leihgabe des Musikhistoriska Museet, Stockholm
所有盤 BM 30 L 1508(No.3, 4), 1509(No.5, 6) Bärenreiter Musicaphon (輸入盤) (*LP)
備考 全集の一部(No.1, 2は"BM 30 L 1507"と思われます)

オリジナル楽器(?)での演奏の先駆けではないかと思います。 第六番では5弦のチェロが使われているようです。 第五番はスコルダトゥーラ調弦かどうかよく分かりません。 オリジナル楽器とはいえ,奏法自体はモダン楽器での演奏の延長線上にあります。 当時まだまだ現在のようにそこまで研究が進んでいなかったからではないかと思います。 よく聴くと確かにそれらしい音ではあるのですが,オリジナル楽器であることはほとんど意識されません。

表現はごくオーソドックスですが,力まず折り目正しさにこだわらないおおらかさが魅力であり, 不満でもあり,また,時代を感じさせるところでもあります。 この中では第六番のテンポの良い前向きな演奏に最も惹かれました。

録音:

残響は較的少ないのですが,少し距離感があり(反響が感じられます),明瞭感,解像感には劣ります。 高域の伸びも今ひとつで,かなり古くさい音色がします(これは仕方がない)。 古い録音なので仕方ないかもしれませんが,もっと近くで録音していればもう少し良好な音で残せたのではないかと思います。 残念に思います。

(記2006/04/14)


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演奏:0.0
録音:2.0

ティム・ヒュー(Tim Hugh)

レーベル Kevin Mayhew
収録曲 全集
録音データ記載なし
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 1490174 (C)(P)2005 Tim Hugh (輸入盤)
備考 参考url:ヒュー氏公式WebサイトKevin Mayhew(出版社?)の商品紹介

【お詫び】演奏の感想は保留とさせてください。すみません。

テンポは少し速め,素直で癖のない表現で聴きやすい演奏に感じられますが... 意識を音楽に集中しようと思うのですが,気がつくと別のことを考えていて音楽を聴いていない自分に気がつきます。 そして,どんな音楽だったのか,ほとんど何も印象に残っていないのです。 あまりに私の好みからかけ離れた録音のため,いらだちを通り越して,無意識のうちに拒否してしまっているのかもしれません。 このような録音では,演奏の魅力,奏者の個性を感じ取るのは困難だと思います(私だけでしょうか?)。 残念です。

録音:

明らかに残響過多です。 直接音成分がほとんど感じられません。 距離感もかなり遠めです。 モワモワ,モゴモゴして細部がほとんど聴き取ることが出来ないほど不明瞭ですし, くぐもった音色は聴くに耐えません。 発音のはっきりしない締まりのない上擦った音,これが本来の音色とは到底考えられません。 私にとっては最悪の部類に属する録音です。 強奏部でジリジリと歪んだような音が入るのもマイナス印象です(演奏に伴うノイズには聴こえません)。

(記2006/03/08)


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演奏:3.5
録音:3.0

ミッシャ・マイスキー(Mischa Maisky)

レーベル Deutsche Grammophon
収録曲 全集
録音データ1984年-1985年 ツェントラルザール,バンベルク (解説書に記載なし)
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 445 373-2 (P)1985 Polydor International GmbH, Hamburg (C)1985 Rita Fischer; Malcolm Boyd (輸入盤)
備考 マイスキー氏1回目の録音。

基本的にはオーソドックスで奇をてらわない生真面目な演奏だと思うのですが, 楽器を存分に響かせ,雄大でどこかしら愛情を感じるような歌い回し(少し大げさに感じるときもありますが)が印象的に残ります。 輝かしくまた深々と響くニュアンスに富む音色は,美しいという感じではないのですが,とても魅力があります(特に中低域の楽器の鳴りが素晴らしい)。

全体にテンションが高めで,長く聴いていると少し疲れます。 今となってはどことなく古めかしさを感じる演奏スタイルに思いますが, 当時としてはインパクトの強い,新しい時代を感じさせる,そして当時のバッハ演奏のひとつの理想を究めた演奏であったのかもしれません。

録音:

(1)第一番・第二番,(2)第三番~第六番,では録音の傾向が少々異なります。 (1)は,残響が少なめで楽器音が比較的しっかりとらえられていますが, 直接音より反射音成分が多いのか,少しくすんだ感じに聴こえ,明瞭感,音色の自然さ,クリアさに欠けます。 (2)は,もう少し残響が多く,(1)よりも派手で濃い音作りであり, 明瞭感や音色の自然さは(1)よりも劣ります。 (1)ならまあ我慢の範囲,(2)はかなり好みから遠のきます。 せめて(1)の音作りで統一して欲しかったところです。

(記2006/02/17)


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演奏:3.5
録音:2.5

オフェリー・ガイヤール(Ophélie Gaillard)

レーベル ambroisie
収録曲 全集
録音データEnregistrement réalisé au Chateau de Corroy en avril 2000(Vol.1), juin 2001(Vol.2)
使用楽器 violoncelle anonyme français (première moitié du 18ème siècle), violoncelle piccolo de Lannoy (Lille, 1758) (バロック仕様)
所有盤 (Vol.1) AMB 9905 (P)(C)2000 Ambroisie (輸入盤) (第一番,第二番,第六番)
(Vol.2) AMB 9906 (P)(C)2001 Ambroisie (輸入盤) (第三番,第四番,第五番)
(販売元:(株)マーキュリー/MAレコーディングズ販売)

スピーディーで力感,躍動感に富む引き締まった表現が素晴らしいです。 難しいパッセージも難なくこなす技術力も大したものです。 隅々まで気配りが行き届いている点も見逃せません。 音色こそバロックチェロのそれですが,表現自体は楽器の特徴やピリオド奏法など全く意識にないのではないか, と思えるほど率直で現代的ダイナミズムに溢れているところに魅力を感じます。

録音:

かなり残響が多い(残響時間も長い)録音で,しかもモワモワと楽器音に大きくまとわりつき,明瞭感に乏しく音の輪郭がはっきりしません。 細かい音型やニュアンスが聴き取りづらいです。 高域のヌケも悪く,音色もかなり損なわれています。 全くすっきしりない録音です。 残念ながら私の許容限度を越えています。

(記2006/01/26)


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演奏:3.5
録音:2.0

ジャクリーヌ・デュ・プレ(Jacqueline Du Pré)

レーベル EMI
収録曲 第一番,第二番
録音データ7.I.1962(第一番),26.I.1962(第二番)
使用楽器 記載無し (モダン仕様)
所有盤 7243 5 73377 2 4 (P)1989 BBC (P)(C)1999 EMI Records Ltd. (輸入盤)
"Jacqueline Du Pré The Early BBC Recordings 1961-1965"
カップリング曲:Britten/Cello Sonata in C, Op.65(Scherzo & Marcia), Falla/Suite populaire espagnole, Brahms/Cello Sonata No.2 in F, Op.99, F. Couperin/Treizieme Concert ('Les Gouts-reunis'), Handel/Sonata in G minor

ライヴ(?)ということで多少の粗はあるものの,勢い任せという感じはなく, 表現自体は抑制された落ち着きのあるものに思います。 とはいえ,感情がにじみ出たような熱っぽい音色に,奏者の個性が色濃く反映された人間的な匂いを強く感じる演奏で, そういう面で大変魅力を感じます(ただ,少し聴き疲れします)。

録音:

モノラル録音。 どちらの曲も残響があまりない環境で録音されたようで,響きはほとんど感じられません。 第一番は,比較的近接で楽器音をしっかりとらえた録音で,音のとらえ方自体は良いと思います。 ただ,いかにも古いマスターテープから復刻しました,というような感じの,帯域の狭い,そして少し歪み感を伴った音質が残念なところです。 音のとらえ方が良いので,このクオリティでも何とか鑑賞に耐えうる点が救いです。 第二番は,少し距離感があり,少々反射音成分を伴っているようで,残念ながら鮮明さが第一番よりも落ちます。

(記2006/01/15) ※録音点を訂正(2.5→2.0)
(記2006/01/13)

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ジャクリーヌ・デュ・プレ(Jacqueline Du Pré)

レーベル TESTAMENT
収録曲 第一番,第二番
録音データ7.I.1962(第一番),26.I.1962(第二番)
使用楽器 記載無し (モダン仕様)
所有盤 SBT 1388 (P)1989 BBC (C)1996 BBC (輸入盤)
"Jacqueline Du Pré play Elger: Cello Concerto, etc"
カップリング曲:Elgar/Cello Concerto in E minor, Op.85(BBC Symphony Orchestra/Sir John Barbirolli)
備考 参考url:hmv.co.jpでの紹介 ~ このバッハは,「1961年12月から1962年1月にかけて行われた,BBCチューズデイ・インヴィテーション・コンサートで演奏されたもの」,とあります。

EMI盤と同じ演奏です。 音源(マスターテープ)はおそらく同一で,デジタル化は別ではないかと思います。 TESTAMENT盤は,EMI盤に比べると若干鮮明さが改善されているように感じられます。 周波数成分を見てみると,EMI盤は楽器音は14kHzまでで,それ以上はノイズ成分しかありません(しかも少しノイズレベルが高い)。 TESTAMENT盤は,一応楽器音に連動して20kHzまで成分が変化しています(高調波歪かもしれませんが)。 マスターが持っている成分を出来るだけ忠実に記録しようとした結果ではないかと思います。

どちらもほぼ完全なモノラルですが,TESTAMENT盤はなぜかRchとLchとの間で約2dBのレベル差があります(Rchの方がレベルが高い)。 もっとも,聴取に影響が出るほどのことはありませんので,気にすることはないと思います。

なお,音のとらえ方はどちらも同じですので,若干のオーディオクオリティの差はありますが, 録音評価はEMI盤もTESTAMENT盤も変わりません。

(記2006/01/13)


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演奏:4.0
録音:3.0

トゥルルス・モルク(Truls Mørk)

レーベル Virgin
収録曲 全集
録音データRiks Church, Oslo, July 2005
使用楽器 Domenico Montagnana, Venice 1723 (モダン仕様)
所有盤 7243 5 45650 2 1 (P)(C)2005 EMI Records Ltd/Virgin Classics (輸入盤)
備考 参考url:モルク氏公式Webサイト

迷いが吹っ切れたような,心理的な重圧から解放されたような,晴れ晴れした心が伝わってくるような気持ちの良い演奏です。 どの曲にもくっきりと意志を刻みながらも,それを前面に押し出すことなく,どちらかといえば謙虚で慎ましく, そして,まるで呼吸するかのような自然なフレージングで心弾む(そして心和む)バッハを聴かせてくれます。 技術的にも申し分ありませんし,深々と響く低域や伸びやかな高域,弾力のあるタッチで奏でられる柔らかでよるふくよかな発音は本当に素晴らしいです(アクセントを絶妙に抑えた移音の美しさ!)。 強い印象を残す演奏ではありませんが,モダン仕様の楽器の良さが活かされた, そしてこの曲の表現可能性の広さを改めて感じさせてくれる佳演であると思います。

録音:

残響の多い環境で録音されています。 息づかいなども感じられますが,直接音に対する残響音比率が高く,楽器音にまとわりつき, 明瞭感が損なわれ,本来の音色,ニュアンスが失われています。 細かい音型も聴き取りづらいです。 この程度なら好ましいと思われる方も多いかもしれませんが,私の好みとは全く方向が違います。 大いに不満あり,大おまけの3.0点です。 演奏が良いだけにこの録音は残念でなりません。

(記2005/12/27)


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演奏:2.5
録音:2.5

ポール・オレフスキー(Paul Olefsky)

レーベル Amatius Classics
収録曲 全集
録音データ記載なし
使用楽器 Antonius and Hieronymos Amati, circa 1580, Roi Charles IX.; Francesco Ruggeri, circa 1684; ex-Sinsheimer; and Pietro Giacomo Rogeri, circa 1720. (バロック仕様)
所有盤 ACCD 1004 (P)(C)1998 Amatius Classics Production (輸入盤)
カップリング曲:Bach/Chaconne(Unique Transcription by Paul Olefsky)
備考 参考url: Paul Olefsky氏紹介(テキサス大)Shar Music(送料・手数料に要注意)

解説書では3台のバロックチェロを使用していると書いてありますが,実際に聴こえてくる音はあまりバロックチェロという感じはしません。 (何をもって「バロックチェロ」と言っているか...)

オーソドックスなアプローチで,熱っぽく意欲的な演奏ですが, 音のキレの悪さ,不安定な音程などの技術的な弱さが目立ち,また,弾き方がやや乱雑であるなど, なかなか音楽そのものに没入することが出来ません。 表現もやや散漫な感じで,どういう音楽を聴かせたいのか,その意図が見えてこないと感じるところも散見されます。 第一番は比較的しっかりしていますが,第二番以降が今ひとつで,曲によっては大きく崩れたりと,出来不出来の差も大きく感じられます。

録音:

残響感もあまりなく,楽器音をしっかりととらえており,音のとらえ方自体は私の好みではあるのですが... まず全体に何となく歪みっぽく,音色に濁りが感じられます。 まあこれはまだよいとして,なぜかミシミシというか,プツプツというか,明らかに音響信号が電気信号に変換された後に加わったノイズ(というかこれも歪みか?)が結構なレベルで入っており, かなり耳障りです。 また,編集が雑で,一曲一曲の開始と終了部分のフェード処理などにも違和感を感じますし,曲の途中でガクンのレベルが変化するところもありました。 録音というよりかはマスタリングの問題だと思いますが,音のとらえ方がまずまず良いだけに残念に思います。

(記2005/10/25)


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演奏:3.5
録音:2.5

ヤーノシュ・シュタルケル(Janos Starker)

レーベル EMI
収録曲 全集
録音データEnregistre a Londres, Abbey Road Studios, V. 1957 - VI. 1959 (モノラル)
使用楽器 記載なし (モダン仕様)
所有盤 7243 4 89179 2 8 (P)1958-61 EMI Records Ltd. (P)(C)1996 EMI Music France (compilation & remastering) (輸入盤)
カップリング曲:Sonates & Partitas pour violon seul(Johanna Martzy), Le Petit Livre d'Anna-Magdalena Bach (5枚組)
備考 シュタルケル氏二回目の録音,初めての全集。

ちょっとせかせかしたところがスタイルの古さを感じさせますが, 直線的で歯切れが良く,スピード感を持って淀みなく弾ききっているところが爽快な演奏です。 細かいところを気にせず,勢いまかせの感はありますが,熱くなりすぎず,持ち前の技術力で颯爽とやってのけるところが素晴らしいと思います。 第六番の終曲で一カ所崩れるところがあるのが本当に残念です(なんで録り直さなかったんだろう...)。

録音:

モノラル録音。 スタジオでの録音のようで,残響感はほとんどなく,楽器音をしっかりと明瞭にとらえており, 私の好きなタイプの録音と言えます。 ただ帯域(高域)が狭く,鮮明さに欠けるのが残念なところです。 曲によって録音時期が異なり,音作りも少しずつ異なっています。 第三番が最も良く,第四番,第六番は少し付帯音が気になります。 その他の曲はさらに鮮明さが落ちるように感じます。

(記2005/10/07)


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演奏:3.5
録音:2.5

ブリュノ・コクセ(Bruno Cocset) (Alpha 2001) (全集)

バロック仕様のチェロによる演奏。 曲によって4種類の楽器を使い分けています。 第五番はスコルダトゥーラ調弦,第六番はピッコロ・チェロです。

緩急をダイナミックに取り入れた,自由で変化に富んだ演奏です。 大胆な表現にややついて行けない面も感じますが,逆にそれが面白くもあります。 楽器を思うがまま自在に操り,破綻することなくスピーディーに,鮮やかに弾ききっているところも, なかなかのテクニシャンだなぁと感心させられます。 好き嫌いがはっきり出そうなアクの強い演奏ですが,聴き応えがあることは確かです。

録音:

奏者の息づかいや指板を叩く音がはっきりと聴き取れるような音のとらえ方ですが, 録音環境が良く響くのか,残響が多く,楽器音に被って明瞭感がかなり落ちています。 音色もくすんでしまい,伸びが感じられません。 このモワモワした録音,イライラがつのります。 残念ながら全く私の好みではありません。

所有盤:

Alpha 029 (C)2002 Alpha (輸入盤) (販売元:(株)マーキュリー/MAレコーディングズ販売)
録音:2001年10月2日~7日 パリ Chapelle de l'Hopital Notre-Dame de Bon Secours
使用楽器:シャルル・リシェ 2000年製作 ガスパロ・ダ・サロ製作のモデル(1600頃)による(第一番,第五番), シャルル・リシェ 2001年製作 ピエトロ・グァルネリ製作のモデル(1734)による(第二番,第四番), シャルル・リシェ 1996年製作 アントーニオ・ストラディヴァリ製作のモデル(1700)による(第三番), シャルル・リシェ 1992年製作 アントーニオとジローラモ・アマーティ製作のモデル(1600)によるピッコロ・チェロ(第六番) ※第五番はスコラダトゥーラ調弦

P.S.

コクセ氏はフランスのチェリスト。 楽器制作者のシャルル・リシェ氏とのコラボレーションによって出来上がった全集とのことです。

(記2005/09/28)


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演奏:3.5
録音:3.0

ヴィーラント・クイケン(Wieland Kuijken) (Arcana 2001,02) (全集)

モダン楽器での演奏とのことですが,それが記載された記事を読むまでピリオド楽器での演奏だと思い込んでいました。 モダン楽器とわかっても,私の耳にはピリオド楽器での演奏に聴こえます。 楽器自体はモダン仕様だけど,これにガット弦を張っているのではないかと想像します。

まず最初に耳に付くのがリズムの崩れです。 ちょっとヨタっています。 でも,またこれがどことなく微笑ましい雰囲気を醸し出しています。 全く欠点につながっていないところが不思議です。 まさに「いい感じで年を取ったねぇ」という感じです(ごめんなさい)。 技術的にキレのよい演奏ではありませんが,音程は全く問題ありませんし, このあたりは何度も聴いているうちに全く気にならなくなります。

演奏全体についてもそんな雰囲気が漂っています。 バッハ演奏はこうあるべき,といったような固いことは横に置いといて, 仙人から「自分の思うように自由に弾きゃいいんじゃよ」と諭されながら聴かせてもらっているような気分になってきます。 実際,隅々まで神経を行き渡らせて表現を追究し磨き上げようという感じは全くなく, 気楽に思うがまま弾いているように感じられ,こちらもそんな楽しい気分に引き込まれていきます。 バッハ演奏のあり方や完成度がどうのこうのという次元を超えて, 理屈抜きに楽しい,そして味わい深い演奏だと思います。

録音:

第一番から第五番までと,第六番とは録音の傾向が若干異なりますが, どちらも楽器音はしっかりと捉えられているものの,残響が非常に多く,まとわりつきが鬱陶しく感じられます(第六番の方が残響が多い)。 ただ,息づかいもはっきりと聴こえてくるような音の捉え方なので,残響が多い割には音の輪郭が保たれており, 何とか印象が悪くなるぎりぎり手前の範囲内,残響が許容できる人には好録音と感じられるかもしれません。 とはいえ,もう少し残響を抑えてすっきりした録音に仕上げて欲しかったところです。 蛇足ですが,このCDの中では,ヴィオラ・ダ・ガンバ組曲の録音が最も良く感じられます(特にチェンバロの音がリアル! ちょっと濃い録音ですが...)。

所有盤:

A 421 (P)2004 ARCANA (輸入盤)
Enregisterment realise en l'eglise de Saint Jean de Cole, du 24 au 29 septembre 2001 [BWV 1007-1011] et du 29 juin au 3 juillet 2002 [BWV 1012 et 1027-1029]
使用楽器:violoncelle, interpretation fin XVIIIe - debut XIXe siecle de ce qu' Andrea Amati aurait pu faire [BWV 1007/1011], violoncelle piccolo Filip Kuijken, Tokyo 2001 [BWV 1012]
カップリング曲:ヴィオラ・ダ・ガンバ組曲BWV1027-29

P.S.

使用楽器ですが,アンドレア・アマティの贋作(知りつつも購入したらしい)と, 東京で弦楽器工房を営む息子のフィリップ・クイケン氏が2001年に製作したチェロ・ピッコロを使用しているとのこと。 アマティの贋作は,モダン仕様とのこと。 (以上,
hmv.co.jpに掲載されている東京エムプラスからの情報)

P.S. 初期盤のノイズについて:

このCDの初期のものは,DISC 1のトラック16(2:10あたり)にノイズが入っているということで, 輸入元の(株)東京エムプラスから,ノイズ除去処理され再プレスされたDISC 1が送られてきました。 hmv.co.jpから購入したので,住所が流れたのでしょう。 個人情報管理的には疑問があるものの,代替品を送付していただいたこと自体は感謝します。

該当箇所について,処理前と処理後を聴き比べ(+波形比較)してみました。 ノイズは,音響的なものではなく,デジタル変換後のデータエラーのようです(DATテープの読み取りエラーのような感じ?で「ジッ」という音です)。 一瞬ですが,すぐにわかります。 さて,処理後ですが,波形上はノイズが消えていますが,音の方は,ノイズの高域成分が消え,くぐもったノイズに変化していました。 添付されていた東京エムプラスの説明では, 「再プレスされたCDのこのノイズ除去部分には,演奏録音中に一般的に発生する多数の音(例えば,楽器から発せられる音,演奏者の靴音,呼吸など)の一部が認められるが, いわゆる不良品としてのノイズといわれるものではなく,従って音楽的価値を一切損なうものではありません。」 とあります。 しかしながら,確かに目立たなくなっているものの,明らかに不自然な音の崩れが感知でき,残念ながら解消されているとは言い難いです。 関係者のご努力には感謝しますが...

さらに,実はトラック17の0:45あたりにも同様のノイズが入っていますが, こちらは再プレス盤でも全く手が加えられている様子はありませんでした。 トラック16のノイズより若干レベルが低いとはいえ,普通に聴いていて感知出来ますから, こちらが見過ごされているがちょっと不思議に思います。 現行のものはどうなんでしょう?

まあ,ほんの一瞬ですし,アナログ盤のスクラッチノイズみたいなもの,とあきらめて聴けばさほど気になりません。 そう思って聴くと,ノイズ除去処理されていようがいまいがあんまり変わりません。 むしろ,無処理の方が,「あっ,エラーだ」と自然に受け流せます(笑)。

(記2005/09/05)


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演奏:3.5
録音:3.0

コーリン・カー(Colin Carr) (GM Recordings 1994) (全集)

ライヴ録音。 力強く推進感があり,起伏に富んだ演奏ですが,ライヴだからといって勢い任せというわけではなく, むしろ流麗でスマートな印象を受けます。 音楽の流れに淀みがなく気持ちよいです。 表現自体はどちらかといえばオーソドックスで癖がなく,素直に音楽に聴き入ることが出来ます。 技術的にも安定感があります(多少の傷はありますが,気になりません)。 ライヴの良さはもちろん,スタジオ録音的な良さも併せ持った好演奏に思います。

録音:

残響時間はそれほど長くないものの,中低域成分の響きが多めに取り入れられており,楽器音へのかぶり,まとわりつきが鬱陶しく感じられます。 会場の雰囲気がそのまま感じられる素直で自然な録音で,ライヴ録音らしい録音ではあるとは思いますが, もう少し明瞭感を重視して,くっきりと,すっきりととらえて欲しかったと思います。

あと,MP3でエンコードしたときに発生するようなシュワシュワ感のある音がしたり(なぜ?), 曲の途中で距離感が変わったり(編集?)することがあります。 こういう点でも今ひとつです。

所有盤:

GM2054CD (C)(P)1998 GM Recordings, Inc. (輸入盤)
Suites 1, 3 and 5 were recorded in concert, September 19, 1994. Suites 2, 4 and 6 were recorded in concert, September 23, 1994. Additional recording session, September 25, 1994. Recorded in Jordan Hall, New England Conservatory, Boston.

(記2005/08/19)


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演奏:4.0
録音:2.5

鈴木秀美 (deutsche harmonia mundi 2004) (全集)

バロック仕様の楽器での演奏。 ゆったりした楽章では,大きな呼吸で深々と響かせ,速い楽章では颯爽としたテンポで淀みなく音楽が流れていきます。 それぞれの曲の特徴を際立たせようとか,個性的な表現をしようとか,そういった主張があまり感じられず, 使用楽器や奏法といった要素を大きく越えて, この組曲が持つ普遍的な魅力をそのままのイメージで具現化しようとしているかのように感じます。 そういう意味で素晴らしく整ったバランスのよい演奏と言えると思います。

9年前の1回目の録音と比べると,アグレッシブさ,大胆さが陰を潜め,落ち着きと心の余裕が感じられ, より深く,熟成された感がありますが,どちらが好みかということになると,少し迷います。

録音:

SACDハイブリッド盤ですが,CD層での試聴コメントです。 低域のエネルギー感の高い録音です。 響きの成分が低域に偏っているためだと思いますが,音に全く締まりがなくブーミーに聴こえます。 CD層ステレオで聴く限り,録音会場の空間性を感じさせるような豊かな響きではなく, 単に直接音に被って聴き苦しさを助長しているだけのように思います。 残響過多で明瞭感に乏しく,細かなニュアンスや質感,音色が大きく損なわれているのが残念です。

この録音は私にとって大切なものをほとんど覆い隠してしまっています。 イライラするのを我慢して音楽に集中しようと思うのですが,それにも限界があります。 ということで,少し厳しいとは思いましたが,どうしても3.0点を付ける気になれず,2.5点としました。

所有盤:

BVCD 34028-29 (P)2005 BMG FUNHOUSE, INC. (国内盤)
録音:2004年10月31日~11月5日,8日~11日,秩父ミューズパーク音楽堂
SACDハイブリッド盤(SACD Multi(4.0 channel)/SACD Stereo/CD Stereo)
使用楽器:チェロ:アンドレア・アマティ(?クレモナ1570年頃?),5弦のチェロ・ピッコロ(作者不詳18世紀前半ドイツ), 弓:ルイス=エミリオ・ロドリゲス(1995年デン・ハーグ)

P.S.

鈴木秀美氏2回目の録音。 使用楽器は1回目の録音と同じものとのこと。
公式サイトがあります。

それにしてもこの録音,私としては大いに不満です。 残念ながら,これではいくら演奏が良くても絶対に愛聴盤になり得ません。 ただ,Web上での同録音に対する感想を眺めていると,概ね好評であり, 私のような否定的な感想は見つけることが出来なかった,ということを付記しておきます。 もちろん録音に対する好みもあると思いますが,試聴環境によるのかもしれませんし, SACD Multiでないと本来の音が聴けないということかもしれません。 しかし,試聴環境に大きく左右されたり,CD層では良い音で音楽が楽しめないということだとすると,やはり良い録音とは言えないと思います。

(記2005/07/25)


P.S. (その2)

SACDが聴ける環境がありましたので,CD層とSACD層(2ch)を聴き比べてみました。 クオリティの差があるかどうかはともかく(あくまでこれは器の問題), 基本的に音作りが同じであるということがわかりました。 ということで,私の録音に対する評価はCD層と何ら変わりません。

感想を掲載してからも何度もじっくり聴いてみました。 また,機材や環境をいろいろ変えて聴いてみました。 私が聴くことのできる最も良いと思える条件(Marantz DV6500 + Panasonic SU-MA10 + Sennheiser HD580 ... ショボくてすみません)では確かに「なるほど」と思える音で聴けましたが(それでも私はこの録音を許容できませんが), その他の環境では,残念ながら我慢できる音質ではありませんでした(意外に良かったのがインナーホン(Sennheiser MX500)での試聴,聴き苦しさの要因の一つの低音が出ないためだと思います)。 結局この録音が良いと思えるかどうかは,聴取環境と好みに大きく左右されるのだと思いますが, 聴取環境を選ぶ録音というのは,やっぱり私はどうしても好きになれません。

(記2005/07/29)


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演奏:3.0
録音:3.0

クラウス・ペーター・ハーン(Klaus-Peter Hahn) (Mediaphon 録音不明) (全集)

真面目に一生懸命気持ちを込めて弾いているのが伝わってくる誠実で味わいのある演奏ですが, 技術的に少々不満を感じ,音楽にのめり込めないというのが正直なところです。 粗くなったり破綻したりすることもなく,音程が崩れたりすることもなく,うまくまとめ上げていると思いますが, 右手がやや弱く弓をコントロールし切れていないような感じがありますし, テンポにぎこちなさも残っています(意図的な部分もあるかもしれませんが,音楽的でないと思える部分の方が多いです)。 あと,第五番,第六番では,明らかに聴き慣れた音程とは違う音程が聴こえてきて,あれっ?と思う箇所がいくつかあります。 間違えているのか,意図的なのか,わかりませんが。

録音:

残響が少し多めに取り入れられています。 明瞭感や音色に悪影響を与えていますが,残響量の多さに対して比較的自然さは失われていないように思います。 もちろん全く私の好みの録音ではありませんが,いらだたしさを覚えるほどは悪くないです。

所有盤:

(写真上:No.1-3) MED 72.145 (P)1994 (C)1995 Mediaphon GmbH (輸入盤)
(写真下:No.4-6) MED 72.146 (P)1994 (C)1995 Mediaphon GmbH (輸入盤)

(記2005/07/05)

名前の日本語表記ですが,多くのサイトではクラウス・ペーター・ハンとされています。

(記2008/10/15)


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演奏:3.5
録音:3.5

藤井香織 (Victor 1999,2004) (全集) (*フルート)

フルートによる演奏。 第一番から第四番までは演奏者本人による編曲,第五番,第六番はパウル・マイゼン氏による編曲。 第六番のみ二度下げてハ長調に移調されています。 重音の処理はあるにせよ,第一番から第五番までは,編曲による違和感はほとんど感じません。 第六番は,音域の制限からかオクターブシフトが頻繁に出てくるので,編曲されていることがどうしても意識にのぼってきます。 さすがにこれは仕方ないのでしょう。

木管楽器ということで,まず最初に気になるのがブレスです。 個々の音を大事にするか,拍を優先するかが悩みどころだとは思いますが, この演奏では,緩徐楽章では個々の音を,急速楽章では拍を,それぞれ優先させているように思います(あてはまらない部分もありますが)。 息継ぎをするたびに音楽の流れが分断されてしまい,しかも,思わぬところでも入るので, 聴いている側として呼吸を共有することが出来ず,音楽に乗りきれないところが多々あります。 残念ながら,チェロによる演奏に聴き慣れた耳には我慢できないところです。

しかし,このフルートの音色の素晴らしさには感動しました。 張りがあって艶やかで輝かしい! フルートってこんなに素晴らしいんだ,と初めて知りました。 この曲に新たな生命を吹き込んでいることに間違いはないと思います。 ただ,第一番から第四番はストレートで勢いがあり,音楽が生き生きと息づいているのに対し, 第五番,第六番は地味で大人しく,今ひとつ覇気というか,音楽の生命力が感じらません。 曲調を意識してのことと思いますが,第五番,第六番を録音するまでの5年間の成長の代償として失われてしまった何かがあるように思えてなりません。 私には第一番から第四番の方が圧倒的に面白く,第五番,第六番はどことなく漂う作為的な匂いがあって素直に楽しめません。 (録音の好き嫌いも影響しているかもしれません)

録音:

第一番から第四番と,第五番,第六番では録音時期も録音場所も異なるので,全く質が異なります。 前者は,少し残響を伴っていますが,直接音主体であり,明瞭感・解像感が良好です。 風切り音も息づかいもはっきり聴き取れて,フルートの音色を満喫できるなかなか良い録音に思います。 一方後者は,やや残響の多い環境で録音されており,前者に比べれば明瞭感が劣ります。 まとわりつく残響が鬱陶しく,音色も精彩がありません。

前者と後者を比較すると,前者の方がはるかに良いです。 藤井さんの素晴らしいフルートの音色がストレートに心に響きます。 後者は,こういった良いところを全て残響が覆い隠してしまっています。 後から録音した方が良くないとはどういうことでしょうか? 残念でなりません。

所有盤:

(写真上:No.1-4) VICC-60131 (P)(C)1999 Victor Entertainment, Inc., Japan. (国内盤)
Recorded on June & July 1999 at Kawakami-mura Bunka Center.
(写真下:No.5-6) VICC-60441 (P)(C)2005 Victor Entertainment, Inc., Japan. (国内盤)
Recording: 29, 30 Nobember & 1 December 2004 at Lamont School of Music, Denver, USA.
カップリング曲:無伴奏フルート・パルティータ BWV1013

P.S.

公式サイトがあります。 第一番から第四番までは,藤井さんが19歳,東京芸術大学に在学中の時だそうです。 しかも,これがデビューCDだとか。 デビューCDにオリジナルがフルートではない曲を選ぶとは! しかも無伴奏チェロ組曲とは!

(記2005/06/09)


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演奏:3.5
録音:3.0

ジャン・ワン(王健 Jian Wang) (DG 2003,04) (全集)

速い楽章は淀みなく推進感に溢れ,緩徐楽章はじっくりと,ダイナミックで非常に表現レンジの広さを感じさせる音楽を展開しています。 抜群のテクニックを活かし,めまぐるしいほど柔剛自在に表情付けされています。 音色も濃く図太く迫力があります。 個性を強く主張するタイプではなく,どちらかといえば真面目で正攻法的な演奏に思いますが, 激しさのある場面でもしっかりコントロールされていますし,思わぬところにアクセント付けされていたりして, どことなく「今風」(「洗練」とは少し違うと思いますが)の風合いを感じます。

録音:

楽器音が比較的しっかり捉えられているにも関わらず,残響が多いために明瞭感が今ひとつです。 高域のヌケも良くなく,すっきりしません。 どことなく息苦しさを感じる録音です。 客観的にはそんなに悪くないとは思うのですが,残念ながら私の好みにはあまり合っていません。

所有盤:

00289 477 5228 (P)(C)2005 Deutsche Grammophon GmbH, Hamburg. (輸入盤)
Recording: Paco de Arcos (Portugal), Igreja da Cartuxa, 7/2003 & 5/2004

P.S.

ジャン・ワン氏は,1968年上海生まれ。 ジャケットの「巴赫」は中国語の「バッハ」のことでしょうか?

(記2005/02/20)


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演奏:3.0
録音:2.5

アントニオ・メネセス(Antonio Meneses) (Philips 1993) (全集)

奇をてらわない正統的なスタイルで,がっしりした土台の上にスケール大きく表現されています。 力強く太い音色もなかなか良いですし,技術的な安定感も申し分ないです。 しかし,何度聴いても印象に残らないのはなぜなんだろう?と思います。 テンポの揺れがしっくりこないため? 推進感,躍動感に物足りなさを感じるため? ... 優れた演奏であるとは思うのですが。

録音:

響き中心に捉えられていて,明瞭感が良くない録音です。 響きも空間性が感じられず,心地よいというよりは単に楽器に被って音質を損なっているだけです。 こもった感じこそしないものの,高域が落ち気味でヌケが良くありませんし, 細かい音型や細部も埋もれてしまっています。

ケースの帯には「収録からマスタリングまでにテープを全く使用しないフィリップスの完全オプティカル方式による新録音第一弾でもあり,カザルスのチェロが語る,力強く艶やかな味わい,そしてそれを包む豊かなホール・トーンを完璧に再現しています。(Optical Disc Recording)」とあります。 カザルスの楽器によるカザルスホールの響きを活かした録音,意図はわからないではないですが, カザルスホールの良質な響きが活かされているとは到底思えませんし, なにより肝心の楽器の音が台無しになっているのが残念でなりません。 フィリップスらしからぬ録音に思います。

所有盤:

PHCP-1414-5(442 620-2) (P)1994 (C)1994 Philips Classics Productions (国内盤)
録音:1993年10月14-16日,12月18-19日,東京,カザルスホール

P.S.

使用楽器は,カザルスが所有していた「カルロ・ベルゴンツィ=ゴフリラー 1733年製」とのこと。

欠点のない好演奏なのですが,少し厳しめのコメントになってしまいました。 やはりこの録音の悪さが少なからず影響し,音楽の輝きが曇ってしまっているのではないかと感じます。 録音の善し悪しに左右されてはいけない,とは思うのですが... 改めて録音の大切さを痛感しました。 録音を通して聴く者に何を伝えたいのか,今一度考えて欲しい,と録音を担当する技術者の皆様にお願い申し上げる次第です。

(記2005/01/19)


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演奏:3.5
録音:2.5

アンナー・ビルスマ(Anner Bylsma) (SEON 1979) (全集)

バロックチェロによる演奏。 第六番は五弦のチェロ・ピッコロが使用されています。

この曲の持つある種の神聖さ,重々しさから解放され,確かに氏本人が述べるとおり, これらの曲が「舞曲」であることを再認識させられる内容です。 舞曲としてのリズムに重きを置き,緩徐楽章では一つ一つの音を短めに,そして楽器に残るニュアンス豊かな響きを空間に放出し, 急速楽章では快活に疾走するが如く楽器をドライヴする,そんな表現,弾きっぷりが非常に印象的です。 独特のかさついた音色,粘りある楽器の鳴り方はいかにもバロックチェロですが, この粘りが軽妙さの足を引っ張っているような気がして,どこかしらもどかしさを感じてしまいます。 この演奏の楽しさに心踊らせつつも,好きになりきれない, 私がバロックチェロを苦手と感じる理由は,このあたりにあるのかもしれません。

録音:

響きがやや多めに取り入れられており,明瞭感,音色の良くない録音です。 しかも低周波域で癖のある共鳴がのるという,私の最も好まないパターンです。 2.5点は少々厳しいとは思いましたが,やはり私の許容範囲を越えているということでこの評点としました。 指板をたたく音も捉えられているような録音なのに,もったいないと思います。 ただ,第四番から第六番は気のせいか,幾分マシに思います。

所有盤:

SRCR 2421-2 (P)1979 Sony Classical (C)1999 Sony Music Entertainment Inc. (国内盤)
Recorded at the Church in Eching, Bavaria, Germany on April 23-26 and May 14-16, 1979.

P.S.

よく「語るバッハ」と評される,定評あるビルスマ氏一回目の全集録音です。 解説書に渡邊順生氏によるインタビューが掲載されており, この「語る」という言葉はこのインタビューに由来するものではないかと思います。 解説書でビルスマ氏は次のように述べています。

「バッハの組曲の偉大さは,そこに書かれている音符と同様に,そこに書かれていない音符によります。」 ・・・中略・・・ 「私の同業者達の演奏方法の中で,特に私の好まないのは,彼らが歌い過ぎ,語らな過ぎることです。 バッハの組曲は<語る(speak)>音楽であって,<歌う(sing)>音楽ではありません。 バッハのチェロ組曲は,今述べたように,たとえ単音部で書かれているところでも必ず2つの声部,時には3つの声部が結び合わされています。 しかし殆どの場合,これが1本の旋律線として歌い込まれてしまう場合が多いようです。」 ・・・中略・・・ 「たった1つの楽器で,大勢が合奏しているような効果を出す,これがバッハのチェロ組曲の演奏の秘訣です。 そのためには,<歌う>のではなく,<語る>のです。」 - 解説書の渡邊順生氏のインタビューより

ところで,この「語る」ということに関して,私が漠然と抱いていたイメージが全く氏の意図していたところと違うということに, インタビューを読んで気が付きました。 恥ずかしながら,長い間この「語る」というところの意味を勘違いしておりました。 そして,このインタビューを読んだ今でも「語る」という言葉自体と氏の演奏とがあんまり結びついていません(意図はそれなりに理解できるのですが)。 私は,この「語るバッハ」という言葉だけが氏の意図から遊離して一人歩きしているように感じてならないのですが... 皆さんはどう思われますでしょうか?

(記2004/12/27)


演奏:
録音:

ターニャ・アニシモワ(Tanya Anisimova) (Cellestial Records 2002) (No.5)

モスクワでの無伴奏リサイタルのライヴ収録盤。 バッハは,第五番の他に,第三番からPrelude, Sarabande, Gigueの3つの楽章, 無伴奏ヴァイオリンのパルティータ第三番からPreludio,ソナタ第一番からAdagio, Fugueが収録されています。 その他,アニシモワ氏の自作曲などが収録されています。

全曲盤で印象的だった編曲に関しては,たまたま編曲が少ない曲ばかりが収録されていることもあって, その点ではあまり印象を残しません(ミスタッチ?と勘違いしそうな音の変更はありましたが)。 ライヴらしい即興的表現には確かに面白さを感じますが,今ひとつ散漫で焦点の定まらない印象が拭えません。 演奏面でもやや粗さが目立ち,全体の出来という点からは少々不満が残ります。 ライヴ演奏に対して厳しいことを言って申し訳ないとは思いますが...

録音: すこし距離感があり,少々多めに会場の響きが取り込まれています。 場の雰囲気の伝わってくるいかにもライヴらしい録音ではありますが, 響きによって明瞭感,音色などが損なわれており,残念ながら良いとは言い難いです。

所有盤: 品番なし? (P)(C)2003 TANYA ANISIMOVA (輸入盤)
"Concert in Moscow", Recorded live: Chamber Hall of The Moscow Conservatory, September 22, 2002
カップリング曲:Ezra Laderman/A Single Voice, Tanya Anisimova/September 11th, Song on Mt. San Angelo, R.U.E.Tagel/Flamenco

P.S. これも全曲盤と同じくCD-R盤のようです。 ジャケット等も厚紙にカラープリンターで印刷したもののようです。

(記2004/11/11)



演奏:
録音:

ターニャ・アニシモワ(Tanya Anisimova) (Cellestial Records 2002,04) (全集)

この全集,大胆な編曲がたくさん盛り込まれています。 通例的な装飾はもちろんのこと,和音の追加,音型の変更なんていうのは序の口, 和音構成を変えたり,左手ピチカートを入れたり,リピートを即興風につないだり, 単純な音型のところを強烈に刻んでみたり,「あれっ,一拍多いぞ?!」ってなところもあります。 第二番では,最初とメヌエットの前に短いインプロヴィゼーションがあり, プレリュードでカデンツァを挿入しています。 また,第四番はF flat majorからG majorへ,第六番はD majorからC majorへ,それぞれ移調されています。 当然ながら,移調に起因すると思われる音型の変更が行われています。

編曲については,「なるほど,こうやりたい気持ちはよくわかる!」と膝を叩きたくなるもの, 「あはは」と笑いがこみ上げてくるものから,「ちょっとそれはやりすぎだろぉ」とつっこみたくなるものまでいろいろです。 第四番については「G Majorの開放弦がクリアな共鳴を作り出す」, 第六番については「響きが『甲高く』なく,より深く美しくなる」といった理由のようですが, 第四番は妙に軽々しくなってますし,第六番では,特にプレリュードなど音型が全く変わってしまっているところもあり, 少々疑問符が付くところもあります。

演奏自体ですが,Volume 1は豪快で突進感があり,激しく体当たり的な印象であり, 一方Volume 2は,Volume 1に比べると全体に落ち着きが感じられ,タッチも軽めで,印象が少々異なります。 いずれも音色は重心が低く,深々とした響きが好印象です。

この演奏,良く言えば「意欲的」,悪く言えば「好き放題」, 面白いと思ったり,呆れかえったり,部分部分によって感想もいろいろです(結構好きだったりします)。 ただ,こればっかり聴いていると,普通の演奏を聴いていてもこの演奏の編曲が頭をよぎってしまう, なんていう中毒症状になりそうで怖くなってきます(笑)。

録音: Volume 1とVolume 2では,やや印象が異なります。 Volume 1は,やや響きの取り入れが多めで,くすんだ感じがしてあまり良くありません。 それに比べてVolume 2の方は,響きが少なく,明瞭感が良いと思います。 ただ,いずれにしても高域のレンジ感が良くなく,今ひとつすっきりしないのが残念なところです。

所有盤: 品番なし? (P)(C)2002,2004 TANYA ANISIMOVA (輸入盤)
Recorded: (Volume 1:No.1,3,5)Silver Spring MD, June-July, 2002, (Volume 2:No.2,4,6)Silver Spring MD, August 16, 17, 27, 2004

P.S. 公式ホームページがあります。 なんと無伴奏ヴァイオリンも録音しています。 なおこのCDは,CD-R盤のようです。 ジャケット等も厚紙にカラープリンターで印刷したもののようです。 (無伴奏ヴァイオリンの方は,プレスCD+印刷のジャケットでしたが)

(記2004/11/08)


演奏:
録音:

キャロル・アディー(Carol Adee) (Well-Tempered 録音不明) (No.2,3,5) (*フルート)

フルートによる演奏。 演奏者自身による編曲とのこと。 さらに"BACH TO NATURE"と題し,演奏者自身(とその友人)がカリフォルニアとブラジルで収録したという自然音(主に鳥の鳴き声)を重ねています。

重音は拍の前に出して装飾音のように扱っていますが,特に違和感はありません。 それよりも息継ぎによる音楽の流れの途切れがやや気になります。 これは楽器の制約上仕方ないと思います。 そういった点を除けば,気負ったところのない素直な表現に,フルートによる演奏であるということ忘れてしまいそうなくらい自然に「無伴奏チェロ組曲」として音楽を受け入れられます。

さて,この自然音を背景音として入れるアイデアですが,私はこういう余計なことをしているものは基本的に嫌いなのですが, この録音はまったく嫌な感じがしませんでした。 もちろん控えめに取り入れられているからだと思いますが,不思議なものです。 しかし,ここまでやるなら,いっそのことフルートの演奏自身もスタジオではなく自然の中で収録して欲しかった...

録音: フルートの演奏はホールまたはスタジオで録音されたようで,やや多めの響きを伴っています。 私の好みからは外れますが,響きが楽器音をそれほどじゃませず,それほど悪い印象ではありません。 自然音の方は,かなり静寂の中で鳥の鳴き声にフォーカスして収録されているので, 不思議なくらいざわざわした感じがなく,鳥の鳴き声が明瞭に捉えられています。 自然音としてはやや「不自然」かもしれませんが,演奏の背景に流すことを考えると,うまく収録されていると思います。 楽器音と背景音のバランスもちょうどいいと思います。

所有盤: WTP 5171 (P)(C)1994 Well-Tempered Productions (輸入盤)
"BACH TO NATURE - Three Suites Performed in the Wilderness by Flutist Calol Adee"
Location: Suite No.2 - San Geronimo Ridge and Elkhorn Slough, California. Suite No.3 - Itatiaia Rain Forest and Pantanal Wetland, Brazil. Suite No.5 - San Geronimo Ridge and Abbott's Lagoon at Point Reyes National Seashore, California.

P.S. アディー氏は,アメリカ,ハリウッド出身。 スタンフォード大学でフルートと室内楽を教えているとのこと。

(記2004/10/23)


演奏:
録音:

アダルベルト・スコチッチ(Adalbert Skocic) (Bohemia Music 録音不明) (全集)

地味ですが彫りが深くニュアンス豊か,人間的な暖かさを感じます。 リズミックな楽章の適度な力感,スピード感,ゆったりした楽章の落ち着きのある曲運び, 素直に曲を表現しようという気持ちが,これまた素直に伝わってきます。 技術的には,細かいパッセージでリズムの歪みが出るなど,キレの悪さを感じるところが少々残念ですが, 音程がしっかりしているので,大きな不満は感じません。 音色は少々ざらざらしていて美しいとは言えないものの,重心が低く芯がしっかりしており, 時に輝かしく,時にふくよかに響き,なかなか魅力的です。

録音: 響きがやや多めに取り入れられていますが, 指板を叩く音がはっきり聞き取れるような音の捉え方をしているため, 明瞭感はまずまずですし,音色もそれほど悪くありません。 ただ,ちょっと音の捉え方が濃すぎるかな,と思います。 まとわりつく響きが鬱陶しく,私としてはこれを許したくないということで3.0点としていますが, 正直なところそれほど悪い印象ではありません。

所有盤: BM 0059-2032 Bohemia Music, Prague 1998 (輸入盤)
※録音年は明記されていません

P.S. スコチッチ(スコツィツ)氏は,オーストリア,マンハイム出身。 元ウィ-ン国立歌劇場管弦楽団,ウィーンフィルのメンバー(1964-85年)。 ウィーンフィル室内アンサンブルのメンバーとしても活躍。 現在ウィーン音楽院教授とのこと。

(記2004/10/15)


演奏:
録音:

ミヒャエル・ルディアコフ(Michael Rudiakov) (mmf 2000) (No.2,3,6)

至極正統的な演奏に思います。 力強さ,躍動感,スピード感が気持ち良く,全体にバランス良くまとめられた好演ですが, 突出した特徴,訴えかけてくるところが少なく,印象が残りにくいのがちょっと残念に思います。 キレの良い演奏ではありませんが,技術的不満は全く感じません。

録音: 比較的残響の取り込みが少なく,私好みの録音に思うのですが, 今ひとつ音の輪郭が明瞭ではありません。 マイクまでの距離があって,初期反射音を多めに拾っているのかもしれません。 帯域的には特に低域の量感があり,楽器そのものの響きをうまく捉えていますが, 一方,高域の伸びが今一歩で抜けの悪さが感じられ,ちょっとスカッとしません。 惜しい録音だと思います。

所有盤: CMW 1457 (P)(C)2001 Manchester Music Festival (輸入盤)
Recorded June 13-15, 2000 in the Church-On-The-Hill, Weston, Vermont.

P.S. レーベルのホームページにルディアコフ氏の紹介があります。

(記2004/09/29)


演奏:
録音:

ユーリ・トゥロフスキー(Yuli Turovsky) (Chandos 1991) (全集)

速い楽章は概して小気味よく,また,おおっと思うような大胆な表現も時折聴かれますが, 全体としては真っ当で手堅くまとめられているという感じです。 技術的にも安定感がありますし,安心して聴き入ることのできる好演なのですが, 反面,強く主張してくるところがないので,聴取後の印象がやや薄いというのが正直なところです。 音色は少しカサカサした乾いた肌触りがします(嫌いではありません)。

録音: 残響時間はそれほど長くありませんが,録音環境の空間性を再現するような響きが多めに取り込まれており, 明瞭感,音色が損なわれ,今ひとつ冴えない録音になってしまっています。 好意的に受け取れば,その場の雰囲気をごく自然に捉えているとも言えますが, やっぱり響きが主音に被りすぎで,残念ながら私の好みの録音ではありません。

所有盤: CHAN 9034/5 (P)(C)1992 Chandos Records Ltd. (輸入盤)
Recorded in Layer Marney Church, Essex on 19-22 August 1991

P.S. トゥロフスキー氏は,モスクワ出身,カナダ在住。 1977年から1993年までボロディン・トリオのメンバー。 1983年にイ・ムジチ・モントリオール(I Musici de Montreal)を結成し,指揮者を務めているとのこと。

(記2004/09/12)



演奏:
録音:

ディミトリー・マルケヴィッチ(Dimitry Markevitch) (Gallo 1990) (全集)

細かいパッセージでリズムが崩れたりと,残念ながら技術的に苦しい部分が多々あります。 とはいえ,音程の崩れは少なく,第五番まではなかなか健闘していると思います。 ただやっぱり第六番は,ハイポジションで音が萎縮してしまったり,音楽の流れに息切れが感じられたりして, 聴いている側もちょっとつらくなってしまいます。 音色は深々とした響きを持っていて好きなのですが...

録音: やや響きが取り込まれているものの,比較的オンマイクで明瞭に捉えていると思います。 音の捉え方としては好ましく,聴きやすい録音です。 ただ,帯域感が少々乏しく,まるでAMラジオを聴いているような印象です(もちろんそこまで悪くはないのですが)。 惜しいです。

所有盤: (Vol.1)CD-670 (No.1,3,5), (Vol.2)CD-671 (No.2,4,6), (P)(C)1992 VDE-GALLO (輸入盤)
Recorded: 12-21.10.1990

P.S. この録音は,アンナ・マグダレーナ・バッハの写譜および,Johann-Peter Kellner,Johann Jakob Heinrich Westphalの版, そして第五番は,バッハ自身のLuteへの編曲版に基づいて演奏されているようです。 参考にしている版の影響かどうかは定かではありませんが,確かに所々聴き慣れない音程が聞こえてきますし, 特に第五番は,普通聴く版と全く違う部分が多くあります。 興味深いところですが,ちょっと戸惑います。

(記2004/08/30)


演奏:
録音:

ポール・トルトゥリエ(Paul Tortelier) (EMI 1960) (全集)

音色の密度感,濃さがまず印象に残りました。 油絵の具でくっきりと描き出しているような感じです。 とはいえ,勢いのある活気に満ちた演奏で,小気味よさも感じられ,重たい印象は全然ありません。 さらに流麗さも併せ持っていて,これらの相反するような要素がどれも際立っているところが素晴らしいです。 節度を持って音楽をカッチリと見通しよく仕上げているところも好感が持てます。 惜しいのは,わずかに技術的な詰めの甘さが感じられるところです。 希に音程の乱れ,細かい音型でのリズムの崩れ(移弦が苦手?)がみられます。 気にするほどのことはないのですが,内容が良いだけに,こういった些細なことが目についてしまいます。

録音: 残響感があまりなく,楽器音を明瞭に捉えた好録音ますが, 帯域感がやや不足しており,いかにも古い!という音質です。 鑑賞するには何の支障もありませんが,やはりこの古臭さは少し残念に思います。 テープのサーッというヒスノイズがやや多めですが,こちらはほとんど気になりません。

所有盤: SAN-65-66 企画:株式会社新星堂, 制作:東芝EMI株式会社 (国内盤)
SINSEIDO ANGEL 1000シリーズ(※ケース背面に1971年録音とありますが,1960年の間違いだと思います)

P.S. トルトゥリエ氏1回目の録音。

(記2004/08/12)



演奏:
録音:

バーバラ・マルチンコフスカ(Barbara Marcinkowska) (Sepm Quantum 1995,98) (全集)

豪快,大胆,がんばって表現しようという姿勢が良く伝わって,この点では好感が持てます。 ただ,全体にテンポが遅く,また,後ろに後ろに引っ張られる感じがして,スムーズに音楽が流れていきません。 また,技術的にも少々苦しさを感じます。 第一番から第三番までを納めたVol.1は,それでも健闘しているな,と思うのですが, 第四番から第六番までを納めたVol.2では,音程が今ひとつ決まらず,また,リズムの乱れ,キレの悪さも散見されます。 第六番など,ハイポジションの音が本当に苦しげです。 音色は図太く芯がしっかりしていて印象は悪くありませんし, 部分的には驚くほどバシッと決めているところもあり,「おぉ,これはなかなかいいゾ」と思わせるところもあるのですが... 良いところと良くないところの落差が激しすぎます。

録音: やや残響が多めに取り込まれており,明瞭感,音色に影響を与えていますが, 指板を叩く音がはっきりと聞こえるようなしっかりした音の捉え方をしているため, 残響が鬱陶しいことには変わりありませんが,何とか許容範囲かな,と思います。

所有盤: (写真上:Vol.1) dQM 6972 (P)1996 SEPM QUANTUM (輸入盤)
(写真下:Vol.2) dQM 7015 (P)1999 SEPM QUANTUM (輸入盤)

P.S. マルチンコフスカ氏はポーランド出身,現在パリ在住とのこと。

(記2004/07/30)


演奏:
録音:

ユルンヤコブ・ティム(Jurnjakob Timm) (Berlin Classics 1985) (No.1,2)

真面目で誠実な印象を受ける好演奏です。 何気ない演奏でやや印象が薄い面はありますが,適度な推進感が小気味よく,気持ちよく聴き通せます。 倍音成分を豊富に含んだ音色もなかなかいい感じです。 ほんとに楽器をしっかり鳴らし込んでいます。 技術的にも安定感があります。 全曲録音でないのが残念!

録音: 残響感が少なく,楽器音を克明に捉えています。 音色も自然で好ましいです。 あとほんの少し鮮明さがあれば最高だったのですが... 録音レベルがやや低めなのも残念です。

所有盤: 0032032BC (P)(C)1999 edel records GmbH. (輸入盤)
カップリング曲:バッハ/無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第二番BWV1004(カール・ズスケ)(*おそらく全集盤と同じ演奏)

P.S. ティム氏はゲヴァントハウス管弦楽団の首席奏者,ゲヴァントハウス四重奏団のメンバーとのこと。

(記2004/07/22)


演奏:
録音:

アメデオ・バルドヴィーノ(Amedeo Baldovino) (Fontec 1989,90) (全集)

アクセントを効かせた力強く豪快な弾きっぷりが,なかなか聴き応えありです(ちょっと大仰な感じがなくもないですが)。 全体に遅めのテンポであり,キレ,躍動感に乏しいのが残念なところですが, 骨太でがっしりとした基礎の上に気迫を持って音楽を構築していくようであり,決して印象は悪くありません。 技術的にもほとんど気になるところはありませんでした。

録音: 録音時期が2年にわたっているためか,曲ごとに若干質の違いを感じますが, 総じて響きが主音に被って冴えない音になってしまっています。 明瞭感も音色もあまり良くなく苛々します。 2.5点はちょっと厳しいと思いましたが,抗議の意味を込めて,あえてこの採点とさせていただきました。

所有盤: FOCD2714/5 Fontec, INC. (国内盤)
Recording Dates: 8 Oct. 1990(No.1), 4 June 1990(No.2), 9 Oct. 1990(No.3), 5 Feb. 1990(No.4), 12 Oct. 1989(No.5), 2 Mar. 1989(No.6), Location: Montevarchi, Itary

P.S. バルドヴィーノ氏は,1912年エジプト生まれ(両親はイタリア人)。 このバッハは70歳代後半での録音ということになりますが, 全く年齢を感じさせません。 驚きました。

(記2004/07/07)


演奏:
録音:

ルノー・フォンタナローザ(Renaud Fontanarosa) (elf atochem 1996) (全集)

難しいところで音程やリズムに乱れがあり,技術的にやや苦しさを感じるのですが, 無理のないテンポ設定でじっくり弾き込んでいるので, 大きな破綻がなく,ある意味完成度が高いとも言えるのではないかと思います。 聴き始めたときは技術的な面が気になりましたが,聴き込んでいるうちに気にならなくなりました。 真面目な姿勢が感じられ,「がんばれ!」と応援したくなります。 もう少し躍動感が欲しかったと思いますが,これは仕方ありません。

録音: 指板をたたく音がはっきりと捉えられているような録音ながら, 響きが多めに取り入れられているので明瞭感が少し落ちています。 音色も残響の影響を受けて良いとは言えません。 録音レベルが高いのは良いのですが,ちょっと濃すぎる感じです。 それほど悪くはないのですが,もう少し残響を抑えてすっきりと捉えて欲しかったと思います。

所有盤: ILD 642171 (C)1996 R.FONTANAROSA (輸入盤)
Enregistrement realise en plusieurs seances publiques en mai 1996

P.S. フォンタナローザ氏は,1968-1980年 Orchestra of the Paris Operaのメンバー, また1968年以降,ソリストとして,フォンタナローザ・トリオ,ノールマン・トリオ(Nordmann Trio)等の室内楽メンバーとして活躍とのこと。 ディスコグラフィを見ていると,1977年にもバッハの無伴奏チェロ組曲をリリースしているようです(こちらは未発見)。

(記2004/06/27)


演奏:
録音:

ゲッツ・トイチュ(Gotz Teutsch) (IPPNW Concerts 2001) (全集)

真正面からじっくりと取り組んだ,味わい深さを感じる好演です。 一つ一つの音を大切に扱っており,決めるところはしっかりと決めているのが好印象ですが, テンポが抑え気味ということもあり,全体としては渋く地味で,少し物足りなさを感じるというのが正直なところです。 もう少し躍動感が欲しかったと思います。 堅実な演奏なので,粗が目立ちにくく,技術的な不満は特に感じませんが, 難しいパッセージでは「ぎりぎり踏ん張っている」というような感じを受けるところもあります。

録音: 比較的近接で,音の捉え方としては基本的に悪くないと思いますが, しかし,それでも響きがやや多めに被っていて明瞭感,音色が若干損なわれています。 やはり響きの鬱陶しさを許すことが出来ず,ちょっと厳し目とは思いましたが3.0点としました。

所有盤: CD 38/39 (P)(C)2001 IPPNW-Concerts (輸入盤)
録音:2001年6月(Aufnahme vom Juni 2001 im Kammermusiksaal der Philharmonie Berlin.)

P.S. トイチュ氏は,1941年ルーマニア生まれ。 1970年にベルリン・フィル入団,1976年以降首席奏者。 60歳を迎えた記念に録音したとのこと。

(記2004/06/15)


演奏:
録音:

藤原真理 (Denon 1982-84) (全集)

力強くアクセントの効いた,そしてリズミカルで躍動的な演奏なのですが, テンポが落ち着いているためか,どちらかといえば地味で理性的に聴こえてきます。 気負ったところがなく,また,表現に癖がなく,極めて自然に音楽が流れていくのが何とも心地よいです。 深みのある低音の響き,贅肉のない引き締まった中高域の音色も素晴らしいです。 もう少し推進感がある方が好みではありますが,それでも静かな意欲がしっかり伝わってきますし, これはこれで大いに納得できます。

録音: 演奏者の息づかいや指板をたたく音がはっきりと聴こえてくる,私の好きなタイプの録音です。 わずかに残響感があるものの,ほとんど気になりません。 ただ,今ひとつ抜けの悪さがあってスカッとしません。 これは本当に惜しいです。 また,録音レベルが低いのも残念です。 16ビット中の最上位ビットが全く使われていません。 たかが1ビットですが,1ビットで2倍の振幅(+6dB!)が稼げるわけですから,ちょっともったいない気がします。

所有盤: COCO-70553-4 (P)2003 Columbia Music Entertainment, Inc. (国内盤)
録音:1982年7月~1984年10月,聖グレゴリオの家,石橋エオリアン・ホール

P.S. このディスク,プリエンファシスがかけられており, データストリームのサブコードにはエンファシス情報が書かれているのに, TOC(Table of Contents)領域にはエンファシス情報が書かれていません。 CD-DA(音楽CD)規格違反と言えるかどうかはわかりませんが,やっぱりおかしいと思います。 通常のCDプレーヤではサブコードの方も見てディエンファシス制御するので実害はありませんが, パソコンではTOC情報しか見ないソフトも多いと思いますので注意が必要です(キンキンした音になることがあります)。 もっとも,こんなディスクをパソコンで扱う人はあんまりいないと思いますが...

(記2004/06/02)



演奏:
録音:

ヴィクトール・ヨーラン(Victor Yoran) (Cascade 録音不明) (No.1,2,3,5,6)

どの曲もプレリュードはアグレッシブで「おぉ,これは!」と思うのですが, その他の楽章が意外に大人しい(じっくり弾いている)ので,ちょっと拍子抜けの感があります。 そうはいっても,概して大胆に緩急強弱が付けられており,聴かせどころのツボはしっかり押さえていると思います。 駒近くで弾いているのか,高調波成分をたっぷり含んだ明るい音色(しかも荒れていない)もなかなかいい感じです。 技術的にすごいということはありませんが,安定感はあります。 もう少し全体にわたって躍動感で満たされていれば良かったと思うのですが。 ちょっと残念です。

録音: 残響感が少しありますが,明瞭感,解像感があり,細かいニュアンスまできっちり伝わってくる好録音です。 音色も自然に感じられます。 第六番だけは別録音なのか,残響が多くあまりよくありません。

所有盤: (写真上)222104-444 (P)Cascade Medien GmbH (C)2004 Membran International GmbH (輸入盤) 「クアドロマニア」シリーズ4枚組(No.1,2,3,5,6を収録),カップリング:無伴奏ヴァイオリン(s1,3,p2,3)(演奏:コンラッド・フォン・デア・ゴルツ)
(写真下)品番なし (C)e.f.s.a. Licenced by Cascade GmbH (輸入盤) (No.1,2を収録)

(記2004/05/21)


CD image
演奏:3.5
録音:3.5

アンリ・ドゥマルケット(Henri Demarquette)

レーベル Collection Etoiles
収録曲 全集
録音データEglise Saint Clair d'Herouville du 2 au juillet 2001.
使用楽器 記載なし(モダン仕様)
所有盤 Collection Etoiles FAE 009, 2002 - Festival d'Auvers-sur-Oise (輸入盤)

全体にわたって速めのテンポが颯爽として気持ちの良い,私好みの快演です。 躍動感があり,速いテンポでも全く崩れず,荒れることもなく弾き切ってしまう技術力の高さも素晴らしいです。 緩徐楽章も力強く,かつ朗々としており,聴き応え十分です。 全くそつがなく,レベルの高い演奏ですが,これにふっきれたところが感じられれば最高だったのに,と思います。 全く贅沢な不満であるとは思いますが,素性の良い演奏だからこそついつい欲が出てしまいます。

録音:

残響が多めに取り入れられており,主音に被って明瞭感が良くありません。 モワモワしたものが付きまとう感じでかなり鬱陶しいです。 当然ながら音色も大きく影響を受けています。 どう評価しようかさんざん迷いましたが,やはり許容範囲をわずかに超えていると判断しました。 ちょっと厳しいとは思いましたが2.5点です。 演奏が良いだけにこの録音は残念です。

P.S.

"Henri Demarquette"の日本語表記について,「アンリ・デマルケ」としていましたが, H.U.さんより「ドゥマルケット」の方が実際の発音に近い,とアドバイスをいただきましたので,そのように修正しました。 有り難うございました。

(記2007/05/05) ※日本語表記修正
(記2004/05/12)


演奏:
録音:

クレイグ・シェドラー(Craig Schoedler) (自主制作 2003) (No.1,4) (*Electric Bass)

いわゆる「ベースギター」による演奏です。 通常のベースギターは4弦ですが,6弦のものを使っているようです。 「ベース」というと,何となくリズムが重く切れが悪い,音程が不安...というイメージがあるのですが, ギターということもあって,極めて切れが良く,スピード感ある音楽が展開しています。 また,ハンマリング・オン,プリング・オフによる装飾,ポルタメントが随所に出てきて,いかにもギターっぽくていい感じです。

しかし!なんといっても特徴的なのがボリューム奏法です。 ギター本体についているボリュームを操作しているのか,ボリュームペダルを使っているのかはよく分かりません(本体のボリュームを操作出来るほど右手に余裕があるとは思えませんが)。 自然な弦の振動の減衰に逆らう音量変化がきめ細かく付けられていて,一種独特の奇異さを醸し出しています。 これぞエレクトリックならでは!ということで非常に面白く,それでいてバッハの音楽が損なわれていないところが素晴らしく思います。 しかし,こういった細工のないストレートな演奏も聴きたかったという気もします。

録音: ライン直結での録音なのか,一旦音響信号に変換してマイクで拾ったのかよく分かりませんが, 背景にわずかに響きを感じるものの,極めて明瞭に録音されています。 楽器の性格からして当たり前といえば当たり前ですが。 好録音ではあるのですが,優秀録音かといわれると,どうかな?と思います。

所有盤: 品番なし (C)2003 (輸入盤)
"BACH TO BASS" featuring Craig Schoedler on 6-string Electric Bass.

(記2004/04/28)


演奏:
録音:

ジェローム・ペルノー(Jerome Pernoo) (Ligia Digital 1998) (全集)

ライヴらしい勢いの感じられる,躍動感に溢れる演奏です。 緩急強弱が自在で表現のレンジが広いのですが,それでいて癖がなく素直に感じられるところが好印象です。 特に神経の行き届いた弓さばきが素晴らしいです。 弓が弦に吸い付くようであり,一つ一つの音がまるで生き物のように息づいています。 強奏部でも荒れることのないねばり強い音色もなかなかいい感じです。 ライヴとは思えない技術的安定感も素晴らしいです。 今後一層個性を磨いていって欲しいと思います。

録音: ライヴ録音。拍手は入っていません。 録音された場所の雰囲気を伝えてくれる響きが多めに取り入れられています。 残響時間はあまり長くないと思いますが,まとわりつく響きがかなり鬱陶しく感じられます。 細かい音型や微妙なニュアンスが響きに埋もれがちです。 はっきり聴き取りたくてついつい音量を上げてしまうのですが,いくら上げても聴き取りづらくて苛々します。 残念!

所有盤: Lidi 0105098/99-01 (P)(C)2001 Ligia Digital (輸入盤)

(記2004/04/15)


演奏:
録音:

ジャン・ポール・ミナリ・ベラ(Jean-Paul Minali-Bella) (アルペジーナ) (Long Distance 録音不明) (No.1,2,3)

奇妙な楽器を使っていますが,アプローチは奇を衒うことのない至ってオーソドックスなものに感じます。 表現も素直ですし,技術的にも全く不満がありません。 全くそつなくまとめ上げており,安心して聴き入ることのできる演奏ですが, 欲を言わせてもらえば,こういったチェロに比べて音域が高く軽い音色の楽器ならではの表現が聴きたかった,というところでしょうか。

録音: やや多めの響きを伴っていますが,明瞭感,解像感はそこそこあります。 音色も響きの影響が少なく自然に感じます。 もう少し響きを抑えて欲しかったと正直思いますが,まあ十分我慢のできる範囲です。

所有盤: 0480303 (P)(C)2003 Long Distance (輸入盤)

P.S. hmv.co.jpに「珍楽器アルペジーナによるバッハ無伴奏」と題した紹介記事が掲載されています。 以下,この記事からの引用です。 アルペジーナについては以下のように紹介されています。 「そもそもはパリの楽器職人ベルナール・サバティエが1995年来,子供用に製作していた左右非対称の小型ヴィオラがその由来。 これをフルサイズに発展させたものに目を着けたのが,シューベルト「アルペジオーネ・ソナタ」を演奏する楽器を探していたヴィオラ奏者ミナリ=ベラ。 いびつな胴と5つの弦を持つ楽器「アルペジーナ」は,音域的にヴィオラとチェロの間を受け持ち,かつて聴いたことのない独特の音色に魅力があります。」 また,演奏者については以下のように紹介されています。 「名手セルジュ・コロ(パレナンSQ)に師事したのちパリ音楽院に進み,アメリカではトランプラーに師事。 帰仏後は一時フランス国立管の首席を務めたこともある,現在フランスを代表するヴィオリスト。」

解説書によると,低弦側にE線(Fではなく)が追加されているとあります。 共鳴が加わる効果はあると思いますが,バッハの無伴奏チェロをヴィオラで弾くのと音域的には変わりませんので, 聴いた印象はヴィオラと大差ありません。 それにしてもこの形状,生理的に受け付けられません。 みていると本当に気分が悪くなってきます。 絶妙に均整のとれたあの美しい形状が台無しです。 形状を工夫することは大いに歓迎したいと思いますが,造形美も追求してほしかったと思います。

(記2004/04/02)


演奏:
録音:

マルク・コッペイ(Marc Coppey) (aeon 2003) (全集)

第一印象は「地味な大人しい演奏」だったのですが... 確かに全体に地味な印象を受けるのですが,意外に小気味よく,切れの良い演奏でした。 地味に感じるのは,この渋い音色のためだと思います。 重心が低く派手さはありませんが,楽器がふくよかによく鳴っており,なめらかで本当に美しいです(私の好きな音色です)。 技術的にも安定感があり,しっかりした土台の上に音楽を築いているという感じです。 強烈な印象を残すことはありませんが,聴き込むほどに味わい深さが増してくる好演奏に思います。

録音: かなり近接での録音のようで,指板を叩く音や息づかいがはっきり聴こえてきます。 残響感が少しありますが,明瞭感はまずまずです。 高域の伸び感がわずかに足りず,すっきりしない感じがありますが,気になるほどではありません。 少々圧迫感があり,また,残響がわずかにまとわりつくのが残念ではありますが,全体的には好感の持てる録音です。 (でも3.5点はちょっとおまけかなと思います)

所有盤: AECD 0316 (P)(C)2003 aeon (輸入盤)
録音:2003年4月12-15日,5月16-18日,パリ,イルカム

P.S. コッペイ氏は,1969年生まれ,フランス,ストラスブール出身。

(記2004/03/25)


演奏:
録音:

スザンヌ・ラモン(Suzanne Ramon) (Arkes 2000) (全集)

思いっきりの良さが気持ちの良い,意欲溢れる好演です。 とにかく一つ一つの音の勢いがすごい! 力強くスピード感がある(しかも緩急コントロールがきっちり効いている)ボウイングによって, 極めてダイナミックな表現を引き出しています。 しかも,速い楽章はもとより,緩徐楽章でも音そのものの勢いが衰えません。 音色はややざらつきを感じますが,ゾクッとするような魅力ある響きも随所に現れます。 荒削りな面がないとは言えませんが,逆に無垢の素材からザックリと削りだしたような魅力があるとも言えます。 こういう明確な主張を感じる演奏,聴いていて本当に楽しいです。

録音: 残響感が全くなく,生々しく実在感のある好録音です。 私の大好きなタイプの録音なのですが,なぜか高域のヌケが悪くスキッとしません。 これは本当に惜しいです。 残念!

所有盤: AMDG 033/034 (P)(C)2000 ARKES Records France (輸入盤)
Recorded: July 2000, Paris.

P.S. ラモン氏は,ブタペスト出身。 レーベルのホームページにラモン氏の情報が掲載されています。

ケースが厚紙ベースで,非常に重量感,高級感ある立派な作りになっています (CDを2枚縦に並べて収めるため,縦長でちょっと収納には困るのですが...)。 付属のブックレットがこれまたすごいです。 なんと,ラモン氏によるボウイングが付加されたフルスコアが付いています(しかも写譜も手書き!)。 この録音への意気込みが,こういったところからも伝わってきます。

(記2004/03/17)


演奏:
録音:

アレクサンドル・クニャーゼフ(Alexander Kniazev) (Warner 2003) (全集)

全曲で約170分に及ぶ,CD2枚に全然収まらない長大な演奏です。 速い楽章は平均速度よりも概して速いので,緩徐楽章が如何にすごいか想像できると思います(第六番の第二楽章は15:49もある!)。 それにしても,この思い切った表現に感動しました。 流動感溢れる急速楽章,まるでセレナーデのようにしっとりした緩徐楽章, しかも,力任せでもなければ気負いも力みも過剰な感情移入もない,気持ちの良い快演です。 ほんとにこの曲が好きなんだな,と感じます。 音色のなめらかさ,美しさも特筆ものです。 最初から最後まで演奏に引き込まれ,演奏時間の長さを全く感じさせません。

この大胆な演奏,大仰で鼻につく人もいることでしょう。 好き嫌いがはっきり分かれるのではないかと思いますが,私は嫌みのない好演と受け取りました。 こう表現したい!こう聴いて欲しい! という主張がしっかり伝わってきますし, 何より演奏している本人が心底楽しんでるな,と感じるからです。 楽しい演奏をありがとう,と感謝したい気持ちになります。

録音: 残響量の多い録音ですが,比較的近接でしっかりと音が捉えられているため, 残響量の割には明瞭感は悪くないと思います。 しかし,やっぱり音色への影響は免れておらず,微妙なニュアンスが失われ,いささか暑苦しく,鬱陶しく感じるのが残念なところです。 何とか許容範囲,というところでしょうか。

所有盤: 2564 61294-2 (P)(C)2004 Warner Classics. (輸入盤)
Recording: La Chapelle des Parlementaires, 29 rue Las Cases, 75007 Paris; 8-9 and 16-18 September, 2003.

P.S. 旧録音のトリトーン盤に比べ,一皮むけた感じがします。 旧録音からそれ程月日が経っていませんが,再録音の価値を十分に感じます。

(記2004/03/04)


演奏:
録音:

フェーベ・カライ(Phoebe Carrai) (AVIE 2002,03) (全集)

バロックチェロによる演奏。 軽いタッチで優しくじっくり表現しようという感じです。 音色はノンビブラートの透明感を持ちつつ,太く粘りも持ち合わせています。 タッチと音色のミスマッチが独特の雰囲気を出していて面白く思います。 どちらかといえば軽やかで推進感ある演奏が好みの私としては,正直言ってちょっと物足りなさを感じ, 何度聴いても印象が残りにくいのですが,安定感のあるうまくまとまった好演だとは思います。

録音: 残響が多めで主音に被って明瞭感を落としており,細かいニュアンスが聴き取りにくいです。 音色も今ひとつ冴えず,すっきりしません。 2.5点は少し辛目と思いましたが,やはり残響量が私の許容範囲をわずかに越えています。

所有盤: AV 0021 (P)(C)2003 G & H Music Ltd. (輸入盤)
Recorded August 26-30 2002 and April 21-24 2003, at CREAR, Argyll, Scotland.

P.S. カライ氏は,アメリカ,ボストン出身。 1983年(~1993年?)にムジカ・アンティカ・ケルンに参加。 現在は米国在住。 アルカディア・アカデミー,フィルハーモニア・バロック・オーケストラ,アンサンブル・アリオン,Les Musiciens de Louvre, The Handel and Haydn Society等で活動中。 また,ベルリンの芸術大学,ケンブリッジのLongy音楽学校(?)の職員とのこと。

第六番では5弦チェロが使用されています。

全くの蛇足ですが,風貌が「腕っ節の強そうなベティさん」とホームページに書かれている方がおられました。 なるほど...(風貌はこちらでご確認を)

(記2004/02/26)


演奏:
録音:

ケルスティン・フェルツ(Kerstin Feltz) (ram 1997) (全集)

アクセントをうまく抑えた柔らかい表現, スラーとスタッカートのコントラストをうまく取り入れた軽めのアーティキュレーション, 表現と対照的な太く粘りのある音色(ザラザラして美しさに欠けるのが残念)が, 独特の印象をもたらします。 技術的な不安,不満も特にありません。 気負わない自然体な表現だと思いますが,全体的には控えめで地味に感じます。 そんな中で,第三番の快活で前向きな表現が印象に残りました。

録音: 残響がやや多めで明瞭感が今ひとつですし,音色にも多少影響していますが, 音の捉え方は比較的良く,残響量の割には聴きやすい録音ではあると思います。 しかし,やはり残響が鬱陶しく,私の好みでないことには変わりありません。

所有盤: ram 5961-2 ram Musikproduktions GmbH (輸入盤)
Recorded: 1997

P.S. フェルツ氏は,ドイツ,イェーナ出身。 第8回チャイコフスキーコンクール(1986年)第7位入賞。 オーストリアのグラーツ音楽・演劇芸術大学でチェロ科教授を務めているとのこと(1994年~)。 第六番は5弦チェロ使用。

(記2004/02/10)


演奏:
録音:

マルティン・ブルクハート(Martin Burkhardt) (Amati 1999) (全集)

バロックチェロによる,いかにもバロックチェロらしい演奏です。 速めのテンポできびきびとしており,また,表現が大きめでダイナミックな印象を受けます。 技術的にも不満に思うところは特にありません。 音色はちょっと粗いかなと思いますが,これこそバロックチェロだという感じもします。 第六番は五弦の楽器を使っているのだと思いますが, 前の五曲と全く異なるやや丸い音色をしており,前の曲から続けて聴くと,あれっ?とちょっと違和感を感じてしまいます。

全体として良くまとまった演奏だとは思いますが, バロックチェロで演奏されているという以上の魅力が今ひとつ感じられず, 印象が薄いというのが正直なところです。

録音: 曲によってちょっとずつ違って聴こえるのですが, どれも残響時間が長く,大きく主音に被って明瞭感が悪く聴きづらいです。 当然ながら音色も悪影響を受けています。 第五番だけなぜかやけに録音レベルが高く,残響感も一番多い感じがします。 評価は悩みましたが,あえてちょっと辛めにしました。

所有盤: ami 9903/2 Sonomaster - Rudolf R. Bayer (輸入盤)
Recording: 11./12. Oktober und 16. November 1999, Evangelische Kirche Honrath

P.S. ブルクハート氏は,1964年生まれ。

(記2004/01/29)


演奏:
録音:

ダニエル・ミュラー=ショット(Daniel Muller-Schott) (Glissando 2000) (全集)

何と躍動感に富んだ若々しい,清々しい演奏であることか! 奇を衒わないストレートな表現ながら,隅々まで神経を行き渡らせ,ダイナミックかつ繊細に表現しきってます。 どんな強奏部,速いパッセージでも荒れることがなく, 音色も柔らかく透明感があって美しいです。 音楽的にも技術的にも完成度が高く,久々に心躍りました。 録音が良くないのが本当に残念!

録音: かなり残響の多い録音です。 主音に大きく被って明瞭感,音色,高域の伸び感が損なわれており,全く精彩がありません。 残響量の多さの割には聴きやすく,心地よい残響感と思われる方も多分おられることと思いますが, やはり私にとっては許容範囲を大きく越えてしまっています。 せっかくの好演が台無しです。 評価も大いに悩みましたが,抗議の意味を込めてあえて辛目にしました。

所有盤: 779 024-2 (P)(C)2000 Pure Classics. (輸入盤)
Recording: Wallfahrtskirche Binabiburg (Bavaria); August 2000.

P.S. ミュラー=ショット氏の公式ホームページがあります。 ミュラー=ショット氏は1976年,ミュンヘン生まれ。 スティーヴン・イッサーリス,ハインリヒ・シフらに師事したそうです。 2000年の録音ということは20歳代前半ということになります。 よくぞやってくれた!と拍手を贈りたいです。 今後の成長にも大いに期待します。

(記2004/01/21)


演奏:
録音:

エステル・ニッフェネッガー(Esther Nyffenegger) (Novalis 1988) (全集)

至極オーソドックスな印象を受けます。 荒れることなく上品で丁寧,それでいて適度な力強さと躍動感も持ち合わせています。 技術を誇示するふうでもなく,音色も特に美しいというわけでもなく, 個性を主張するわけでもなく,あくまでも控えめですが,非常にバランス良くまとまっていると思います。

録音: 残響という感じではないのですが,独特の響きが被って音色に色が付いてしまっています。 明瞭感はそれ程悪くないと思うのですが,高域の伸び感不足と相俟って,何とも古臭い感じのする冴えない録音です。 1960年代の録音かと思ってしまいました。 残念!

所有盤: NOV-2001-2(Novalis 150 037-2) (P)1989 Crown Record Co., Ltd. (国内盤)
録音:1988年10月 パリ,サル・アディヤール

P.S. 解説書によると,ニッフェネッガー氏は,スイス,チューリヒ出身, カザルスやマイナルディのマスタークラスで研鑽, カザルス国際コンクール第二位の入賞歴などがあり, 長くルツェルン音楽祭弦楽合奏団のメンバーとして活躍, 1983年から1986年まで東京芸術大学の客員教授として招かれていたとのこと。

(記2004/01/08)


演奏:
録音:

長谷川陽子 (Victor 1999) (全集)

バッハの音楽に臆することなく果敢に,意欲的に,スケール大きく表現されています。 とにかく思いっきりの良さが爽快です(あまりの思いっきりの良さに度肝を抜かれることも!)。 それでいて決して粗くなることなく,それどころか一つ一つの音を本当に歌っているのもすごいです。 音色がこれまた気持ちよい! 特に中高域の美しく艶やかな音色,本当にゾクゾクします。 また,腰が強く粘りのある低域の表現もなかなかのものです。 技術的な切れの良さも特筆ものです。

しかしこのダイナミックな演奏,ともすれば大仰と感じられるかもしれません。 好みが大きく分かれるのではないでしょうか? かくいう私も最初は歌心溢れた表現に魅力を感じながらも心のどこかで抵抗を感じていました。 しかし,聴き込むにつれ,これがえも言われぬ快感に変わってきました。 こういう演奏,やっぱり好きです。

録音: 残響が少し多めに取り入れられていますが, 息づかいや指板をたたく音まではっきりと聞こえてくるような音の捉え方をしており, 明瞭感,解像感はそれ程悪くありません。 しかし,やはり残響が主音に被って音色が損なわれ,高域のヌケが悪くすっきりしません。 一方,中低域のレンジ感,密度感はなかなかよいと思います。

所有盤: VICC-60139-40 (P)(C)1999 Victor Entertainment, Inc. (国内盤)
Recorded on April 15-17 & May 4-6, 1999 at Makioka-chomin Bunkakaikan

P.S. これは若いからこそ出来る演奏だと思います。 これはこれで素晴らしいくて好きなのですが,これからどんな風に成長されていくのか本当に楽しみになってきます。 また何年後かに再録音して成長した姿を聴かせて欲しいと思っています。

最後に... 解説書が黒の紙に金色で印字してあり,元々が非常に読みにくい上に,印刷が不鮮明なページもあり, プロフィールやレコーディングデータなどほとんど読めないです(怒!)。

(記2003/12/27)


演奏:
録音:

ユリウス・ベルガー(Julius Berger) (Orfeo 1984) (全集)

ダイナミックで躍動感に富んだ快演です! 快活な急速楽章ももちろん良いのですが,それ以上に熱のこもった緩徐楽章に圧倒されます(ゆっくりしたテンポなのに! 第六番のサラバンドなど,聴きものです)。 技術的安定感からくる余裕綽綽の表現,図太く締まりのある中低域,倍音成分を豊富に含んだ高域の音色も素晴らしいです。 表現自身は正統路線ながら,やや大仰なところも目立ち,鼻につかないこともないのですが, とにかく充実感のある演奏であり,そういった点も許してしまいます。

録音: 少し残響感があるのですが,音の捉え方は悪くなく,演奏そのものはそこそこしっかりと伝わってきます。 ただ,やはり残響のせいでしょうか,音色が良くなく,ヌケの悪さを感じます。 これは惜しい! 演奏が素晴らしいだけに本当に残念!

所有盤: C 146 852 H (P)1985 (C)ORFEO International Music GmbH. (輸入盤)
Recording 26-28.09 & 28-30.11.1984

P.S. ベルガーの一回目の録音。 二回目の録音はすごい個性的な演奏でしたが, こちらは正統路線を極めたような演奏であり,これはこれで素晴らしいと思います。 しかし,この二つの演奏,あまりに違いすぎて同じ人の演奏とはとても思えません(だからこそ二回目を録音する意味があるとも言えますが)。

(記2003/12/16)


演奏:
録音:

ラルフ・カーシュバウム(Ralph Kirshbaum) (Virgin 1993) (全集)

飛ばし弓のスタッカートを効果的に使って変化に富んだ音楽を展開しています。 表情付けがちょっと大げさな気はしますが,速いテンポで躍動感溢れる楽章,じっくりと美しく歌う楽章など, 動と静のコントラストがくっきりしていて聴き応えがあります。 音の隅々までしっかりとコントロールしており,ニュアンスも豊か,技術力の高さからくる余裕の表現にも感心します。

録音: 残響感があまりなく,息づかいまで聴こえてくるような音の捉え方で好感が持てます。 ただ,なぜかスカッと高域まで伸びた感じがなく,ヌケの悪さを感じますし,それに伴って明瞭感も落ちているように思います。 惜しい! 残念!

所有盤: 7243 5 61609 2 7 (P)1994 (C)1999 Virgin Classics (輸入盤)
Recording St George's, Brandon Hill, Bristol, I. 1993

(記2003/12/05)


演奏:
録音:

トーレフ・テディーン(Torleif Thedeen) (BIS 1995,96,99) (全集)

速めのテンポで颯爽としていて気持ちの良い好演です。 やや大仰な表現ではありますが,鼻につくほどではありません(ただ,スラーの付け方などで,あれっ?と感じるところが何度かありました)。 むしろ躍動感があってどちらかといえば好ましく感じます。 芯のある図太い渋めの音色もなかなかいい感じです。 技術的な高さも感じます。

録音: 残響が多めで主音に被っており,明瞭感が良くありませんし,音色も変化してしまっています。 元々それ程楽器音が輝かしいわけではないので,曇ってしまって冴えない感じです。 録音時期の遅い第五番,第六番は少しマシのように思います。 (全体として2.5点はちょっと厳しい採点かもしれません)

所有盤: BIS-CD-803/804 (C)1995,1996,1999 (P)2000 Grammofon AB BIS (輸入盤)
Rcording data: October 1995 (Suites 3 & 4), May 1996 (Suites 1 & 2), December 1996 (Suite 5) and March 1999 (Suite 6) at Lanna Church, Sweden.

(記2003/11/28)


演奏:
録音:

セルゲイ・イストミン(Sergei Istomin) (Analekta 1997) (全集)

バロックチェロによる演奏。 終始穏やかな表情で優しい雰囲気を持っており, 古楽器による演奏でありがちな強烈な個性の主張もなく,素直に聴き流すことが出来ました。 丁寧で荒れることがないのは良いのですが,躍動感には乏しくちょっと物足りなさも感じます。 決して悪くないのですが,私としては,ほんのもう少し快活さが欲しかったなと思います。

録音: 響きが多く,明瞭感というか鮮明さがなく,聴いていてちょっと苛立ちの募る録音です。 音色も響きが被って冴えません。 残念です。

所有盤: FL 2 3114-5 ANALEKTA fleurs de lys (輸入盤) (K.N.氏所蔵盤)
Recorded in April, 1997 at Saint-John's Anglican Church, Elora, Ontario.
楽器: Baroque Violoncello: Dominik Zuchowicz, Ottawa, 1994 (after Montagnana, 1739), Baroque bow: Stephen Marvin, Tronto, Ontario. (Suite no.5) Scordatura: a-string to g. (Suite no.6) Five-string Bohemian violoncello piccolo, mid-18th century, anonymous, Bow: David Orlin, Ann Arbor, MI. Pitch A-415Hz.

(記2003/11/19)


演奏:
録音:

アレクサンドル・クニャーゼフ(Alexander Kniazev) (Triton 1996) (全集)

特に緩徐楽章の祈りを捧げるような表現が感動的です。 第6番のアルマンドなど12分もあるのですが,テンポの遅さを全く感じさせません。 その他の楽章でも力をうまく抜いた軽めの表現が心地よく心に響いてきます。 洗練されているわけでもなく,音色が特に美しいわけでもなく,技術的に切れるわけでもなく, どちらかといえば田舎臭い印象ですが,素朴で暖かく懐の深さを感じさせる表現に心惹かれます。

最後に無伴奏ヴァイオリンからシャコンヌが収められています(演奏者自身の編曲)。 こちらもヴァイオリンでは得られない優しく深みのある演奏が印象に残りました。 しかし,やはり技術的にはかなり苦しさを感じます。

録音: 曲により多少のばらつきを感じますが,全体に残響感がやや多めで鮮明さに欠ける録音です。 中低域のエネルギー感はすごくあるのですが,高域の伸びが足りず,苛々させられます。 音色も残響が被っていてあまり良くありませんし,曲によってはかなり濁った感じさえします(特に第6番,シャコンヌがひどい!)。 残念です。

所有盤: DICC-60006-8 (P)(C)2000 DML (国内盤)

P.S. クニャーゼフ氏は1961年モスクワ生まれ。 第9回チャイコフスキー国際コンクール(1990年)第2位。

(記2003/11/07)


演奏:
録音:

アンジェイ・バウアー(Andrzej Bauer) (CD Accord 1996) (全集)

軽快に演奏される曲もありますが,全体としては穏やかで落ち着いた印象があります。 表現が丹念で若者らしい謙虚さが感じられ気持ちよいです。 力強さはないものの,静かな躍動感,切れの良さがあり,ゆったりしたテンポであっても退屈することがありません。 技術面でも全く文句ありません。

録音: 響きが非常に豊かです(残響時間が長い)。 音の捉え方が良いため(息づかいがはっきり聞き取れます), 聴き苦しさは思いのほか少ないものの,やはり残響量が許容範囲を越えています。 解説書に「CDアコード,自信の高音質録音」とあり,おそらくこれは響きの豊かさを指しているのだと思います。 響きの好きな方には心地よいかもしれませんが,私にとっては,まとわりつく残響が鬱陶しく, せっかくの演奏を損なっているようにしか感じません。 演奏が良いだけに残念! (録音評2.5点はちょっと厳しいかなと思いましたが,残響の取り込み方に対する抗議の意味を込めてあえてこの点としました)

所有盤: DICA- 34003-4 (011 315-2) (P)(C)1999 CD ACCORD (直輸入盤)
録音:1996年12月 フランシスコ教会(ワルシャワ)

P.S. バウアー氏はポーランド出身。 1992年ARDミュンヘン国際コンクール優勝。

(記2003/10/29)



演奏:
録音:

ピエール・フルニエ(Pierre Fournier) (ADDA/ACCORD 1959) (全集)

これが本当にライヴなのか,と思えるほどの充実感と完成度の高さ(演奏上の傷はあるのですが)と, 聴き手をグイグイと引き込むライヴらしい勢い,自由闊達さも併せ持っています。 ダイナミックでかつキリッと引き締まっており,また,一つ一つのフレーズがニュアンス豊かに表現されているのが本当にすごいと思います。 さすがです。 やや駒寄りで高調波成分をたっぷり含んだ音色(この音色をどう表現したら良いのか?)も魅力的です。

録音: ライヴ収録で会場の響きが入っていますが,それ程主音を邪魔していません。 古い録音なので帯域感など十分ではなく,古臭さがあることは否めませんが, この時期のライヴ録音としてはかなりうまく音が捉えられていると思います。 シーというテープノイズが少しあります。

所有盤: (写真上)581154/55 (C)1959 (P)1990 ADDA distribution (輸入盤) (K.N.氏所蔵盤)
(写真下)464 201-2 (P)1997 Musidisc (C)2001 Musidisc, un label Universal Music (輸入盤)
Enregistrement realise par la Radio Suisse Romande - Espace 2 - Studio R.S.R. - Geneve (octobre 1959)

P.S. ADDA盤とACCORD盤は,同じ音源のようです。マスタリングまで同じかどうかまではわかりませんでした。 ADDA盤の方が少し録音レベルが低いように感じます。

(記2003/10/23)


演奏:
録音:

ライナー・ツィパーリング(Rainer Zipperling) (Flora 2002) (全集)

バロックチェロによる演奏。 速い楽章は思いっきり速いです。 頭の中にあるテンポ感と全く異なり,まるで別の曲を聴いているみたいな気分になってきます。 緩徐楽章がゆったりしているわけではないのに,非常にダイナミックで変化に富んでいる感じを受けるのは, 速い楽章の思いっきりの良さのためだと思います。

しかし,こういう演奏は好きなはずなのに,スカッとしません。 録音があまりに悪いためだと思います。 きっとこの演奏の面白さ半分も感じ取れていないに違いありません。

録音: 残響量があまりに多く,明瞭感が大きく損なわれて細かい音型や微妙なニュアンスが埋もれてしまっていますし, 音色も残響音が被っていてまともではありません。 私の好みから言えば残念ながら最悪の部類に属します。 演奏が良さそうなだけに本当に悔しい思いです。

所有盤: FLORA 0202 (C)KELYS productions (輸入盤)
Enregistre a Bra sur Lienne en aout 2002(録音:2002年8月 ブラ・シュ・リエンヌ)
Violoncello: Vincenzo Trusiano Panormo 1786, Violoncello piccolo a cinq cordes: Ludovicus Guersan 1750, Archet: Luiz-Emilio Rodriguez
ピッチ:400Hz

P.S. 英語の解説が全くないので何が書いてあるのか全然わからないのですが, このCDを輸入しているサラバンドのホームページによると, 「アンナー・ビルスマにチェロを,ヴィーラント・クイケンにヴィオラ・ダ・ガンバを師事,18世紀オーケストラ,カメラータ・ケルン等のメンバーを務める」とありました。

(記2003/10/17)


演奏:
録音:

ギド・シーフェン(Guido Schiefen) (Arte Nova 1996) (全集)

力強くダイナミックで,強奏部での迫力には圧倒されます。 しかも荒れることなくやってのけているので,なかなか大したものだと思います。 技術的にも相当優れていることが一聴してわかります。 しかし,表現が大仰で芝居がかっており,残念ながらどうも肌に合いません。 また,個々の音も棒弾き的で繊細さに欠け,音色を含めて今ひとつ魅力を感じません。 決して悪い演奏ではないと思うのですが...

録音: 残響感はあまりないので聴き苦しい感じはありませんが, やや距離感があり,反射音の被りがあって音色が損なわれているように感じます。 高域の伸び感も今ひとつでヌケの悪さを感じます。

所有盤: 74321 39045 2 (C)(P)1996 ARTE NOVA Musikproduktions GmbH (輸入盤) (K.N.氏所蔵盤)
Recording: March 1996, Tonstudio van Geest, Sandhausen

P.S. シーフェン氏は1968年生まれ。 第9回チャイコフスキーコンクール(1990年)チェロ部門第5位入賞。

(記2003/10/14)


演奏:
録音:

ヴィト・パテルノステル(Vito Paternoster) (MR Classics 1998) (全集)

フレーズの終わりで急ブレーキをかけ,スーッと歌って次につなげる独特の節回しがなかなか面白いです。 時折入る装飾のトリルも特徴があります。 まるでバッハの音楽と戯れているようで,微笑ましいです。 おっとりした雰囲気の演奏(第一番など)もあれば,快速のプレリュードから始まる活気ある演奏(第三番など)もありますが, 全体としてはどちらかといえば前者の印象が強いです。 個性的で面白い演奏ですが,今ひとつ食い足りなさも残ります。

録音: 残響感が少しあるものの,それほど主音を邪魔することもなく,音の捉え方としてはまずまずです。 録音レベルが若干低く,また,なぜか今ひとつ鮮明さに欠けるのが残念なところですが,印象としては悪くありません。

所有盤: MR 10032 (C)(P)1998 Musicaimmagine Records, Roma (輸入盤)

P.S. パテルノステル氏は,イ・ムジチ合奏団のチェロ奏者。 他に,チェロによる無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータの録音があります。 さらに,無伴奏チェロの各プレリュードに歌を付けた録音もあるらしいです("INZAFFIRIO" MR 10006,詳細不明)。

(記2003/10/09)


演奏:
録音:

ロン・カーター(Ron Carter) (ベース) (Philips 1985) (選曲集)

(ジャズ)ベースでの演奏。演奏は全てピチカートで行われています。 まず選曲について触れておきます。選曲といっても第○番という単位ではなく,次のように楽章単位で選ばれています。 第一番(クーラント,メヌエット,ジーグ),第二番(メヌエット,ジーグ),第三番(クーラント,ブーレ), 第四番(ブーレ,ジーグ),第五番(ジーグ),第六番(ガヴォット)。

"RON CARTER PLAYS JAZZ'N BACH"と銘打たれたCDですが,確かにピチカート奏法がジャズを感じさせるものの, 真正面から真摯にバッハに取り組まれており,これ以外にジャズを感じさせる要素はほとんどないと思います。 バッハへの思い,この演奏に賭ける熱意がひしひしと伝わってくる内容の濃い演奏ではありますが, 音程の悪さ,開放弦と押さえた弦の響きの違い,発音の粒立ちのばらつき,リズムの乱れ,など, 常にベースのハンディを感じながら聴かなければならず,残念ながら素直に楽しむことが出来ませんでした。 ただ,深く引き締まった音色が本当に素晴らしく,ベースってこんなにすごい音が出るんだ,と感激したことを付け加えておきます。

録音: 非常に低域レンジの広さを感じる録音です。 締まりのある低音がリアルに響いてきます。 オンマイクで残響を排しており,どちらかというとクラシック的録音ではなく,まさにジャズ的Hi-Fi録音という感じで,私好みです。 録音レベルも高く,普通の音量設定にしていても出てくる音の大きさにびっくりします。

所有盤: FNCP 30390 (P)1994 a PolyGram Company (国内盤)
録音:1985年4月8~13日,ニュージャージー,イングルウッド・クリフス,ルディー・ヴァン・ゲルダー・スタジオ
カップリング曲:12トーンズ,トゥ・ハンズ・オンリー(アルバム「オール・アローン」より収録)

P.S. ロン・カーターは1937年生まれ。 解説書によると,彼はチェロで出発し(14歳でこの組曲を手がけていた),高校でベースに転向したとのこと。

(記2003/09/22)


演奏:
録音:

毛利伯郎 (DiskArt 1997) (No.1, 2, 3)

ジャケットデザイン(ポートレート)から受ける印象とは全く異なり(ごめんなさい), きびきびと淀みなくスピード感に溢れており,また極めて力感に富んでいて聴き応え十分,迫力に圧倒されます。 音色も渋く深みがあります。 フレーズの終わりをあまり歌わず,前へ前へ突き進んでいくところが気持ち良いのですが, 一方でちょっとせかせかした印象もあります。

録音: やや響きを伴っていますが,比較的解像感高く捉えられていると思います。 ただ,なぜか高域の伸び感が感じられず,全く冴えません。 まるで1960年代の録音を聴いているような錯覚に陥ります。 これはちょっと残念です。

所有盤: DACD-982 ディスクアート (国内盤)
1997年9月24,25日 ふれあいプラザ栄ホール

P.S. 毛利氏は10歳からチェロを始め,ジュリアード音楽院在学中からニューヨークを中心に演奏活動を開始, 1985年に帰国後,読売日本交響楽団のソロ・チェリストに就任。 東京ピアノ・トリオ,桐五重奏団,ATMアンサンブル,水戸カルテット,ナーダ,その他のアンサンブルで活動中。 現在桐朋学園大学教授とのこと。 タイトルに「第一集」とありますが,第二集はまだないようです。 全集として完結することを期待します。

(記2003/09/17)


演奏:
録音:

ヤープ・テル・リンデン(Jaap Ter Linden) (harmonia mundi 1996) (全集)

バロックチェロによる演奏。 音色こそバロックチェロそのものですが,演奏自体はバロックチェロを意識させない,奇を衒うことのない自然な表現に思います。 適度な力強さは持っていますが,どちらかというと全体に穏やかで優しい雰囲気を持っていると思います。 また低域の深い響きが印象に残ります。 技術的にも申し分ありません。 好演ですが,私としてはもう少し躍動感が欲しかったかな,と思います。

録音: 響きがやや多めで,その場の雰囲気を再現してくれるような録音です。 息遣い,指板をたたく音が聞こえてくる音の捉え方をしていますが,やはり響きが煩わしく,また,高域の伸び感も損なわれているように感じます。 悪い録音ではない(音の捉え方の良さに救われている)と思いますが,やはり私の好みの録音ではありません。

所有盤: HMX 2957216.17 (P)1997,1999 harmonia mundi u.s.a. (輸入盤)
Enregistrement: 21-28 octobre 1996, Forde Abbey, Chard, Somerset, U.K.

P.S. 第六番は5弦のチェロが使用されています。 リンデン氏は1947年生まれ。 ムジカ・アンティカ・ケルン,イングリッシュ・コンサート,アムステルダム・バロック・オーケストラなど,ヨーロッパの著名なアンサンブルに参加。 最近はバロックオーケストラ(アムステルダム・モーツァルト・アカデミーなど?)の指揮もされているようです。

(記2003/09/14)


演奏:
録音:

ハンス・ツェントグラーフ(Hans Zentgraf) (MDG 1992) (全集)

丁寧で荒れることもなく,また力強さもあるバランスの取れた好演です。 表現は,奇を衒うことのないオーソドックスな印象を受けます。 音色も太く密度感があり,技術的にも極めて安定感があって安心して音楽に没入できました。 速い楽章では,もう少し躍動感があればと思います。 また,個性的というわけではないので,充実感を感じながらも聴取後の印象はやや薄く感じます。

録音: 明瞭感,解像感はそこそこあるものの,残響が多めであり,主音に被ってすっきりしない音質です。 高域の伸び感も今ひとつです。 一般的にはそれ程悪い音質ではないと思うのですが,残念ながら私には好みの音質ではありません。

所有盤: MDG 612 0554-2 (P)1994 (輸入盤)
録音:1992年4-5月?

P.S. ツェントグラーフ氏は1954年生まれ。 フランクフルト音楽院?,ジュリアード音楽院でチェロを学んだ後,ハノーバーのLower Saxony State Orchestraに10年在籍。 現在(1994年当時)はミュンヘンをベースにソリストとして活動中。

全くの蛇足ですが,解説書の表紙のポートレート,かなり気色悪いです。 ケースを開けるのに勇気がいります(ほんとに!)。 これはちょっと勘弁して欲しい。

(記2003/09/04)


演奏:
録音:

アレクサンダー・ルーディン(Alexander Rudin) (Naxos 2000) (全集)

よく練りに練られた演奏という感じがします。 そつなくまとめ上げられ,整った印象を受けます。 音色は芯が太く,密度感があります。 美しくはありませんが,荒くなることもありません。 技術的にも欠点がなく,高いレベルでバランスの取れた完成度の高い演奏に思います。 ただ,全般的に中庸路線であり,何か物足りなさを感じるのも正直なところです。 何かひと味,ピリッとくるものが欲しい,と贅沢な不満を感じます。

録音: 残響感が少しあり,低域で少し被った感じがあるものの,明瞭感,解像感はまずまずというところです。 やや高域の伸び感に乏しく,すっきりしないのが残念なところです。 すっきりしないとはいえ,残響があまり悪さをしていないので,それ程聞き苦しいというわけではありません。

所有盤: 8.555992-93 (P)(C)2002 HNH International Ltd. (輸入盤) (K.N.氏所蔵盤)
Recorded in the Small Hall, Moscow Conservatory, Moscow, Russia, in January 2000.

P.S. ルーディン氏は1960年,モスクワ生まれ。 第六番は五弦のチェロを使用しているとのことです。 演奏者自身の編曲による「シャコンヌ」が収められています。 これはさすがにちょっと苦しげに感じます。

(記2003/08/27)


演奏:
録音:

ガスパール・カサド(Gaspar Cassado) (Vox 1957) (全集)

丁寧,穏やかでゆったりとした印象を受ける演奏ですが,快活さが欲しい曲でもゆったりとしているので, 物足りなさを感じてしまいます。 また,移弦が苦手なのか,第一番や第三番のプレリュードなど滑らかに移弦が連続するような曲でリズムの崩れが見られますし, 全般に音程も良くなく,技術的にも不満ありです。

なお,この録音では,第四番を変ホ長調からヘ長調に移調されています。 また,ところどころ楽譜に手を入れているのではないかと思われるところがありました。

録音: 残響感が結構ありますが,残響感というよりその場の雰囲気を再現するような間接音といった感じであり, ライヴ録音のような雰囲気を持っています。 ただ,やはり主音に被って音色が損なわれていると思います。 また,高域の伸び感もあまりなく,ややこもった感じで聴きづらいです。 さらに,テープのヒスノイズが若干大きく,そのノイズがフラフラとするものですから, 特にヘッドホンで聴いていると気になって音楽に集中できません。 アナログテープの保存状態が良くなかったのか,再生機が良くなかったのか,いずれにせよ,ちょっと残念な録音です。

所有盤: CDX2 5522 (P)(C)1996 THE VOX MUSIC GROUP (輸入盤) (K.N.氏所蔵盤)

(記2003/08/20)


演奏:
録音:

鈴木秀美 (deutsche harmonia mundi 1995) (全集)

いわゆるオリジナル楽器による演奏ですが,オリジナル・スタイル?による演奏にありがちな一種独特の奇異さ(激しい緩急強弱を含めて)が全くなく, シンプル,直線的で,極めて<現代的>な印象を受けます(少なくとも私が抱いているバロックチェロによる演奏とは全く異なります)。 もちろん,音色は全くオリジナル楽器のそれですし,ヴィブラートが少ないなど,オリジナル楽器による演奏の特徴は備えているものの, この演奏においては,これらは些細な要素でしかないように思います。 速い楽章はかなり思い切って速く演奏されていますが,単に速いにとどまらない独特のリズム感が他の演奏とは全く異なる躍動感を生み出しています。 あえて不満を述べるとすれば,速い音型での粒立ちがはっきり聞き取れないことが多い(録音が悪いためかも), 遅い楽章では実際のテンポ以上に後ろに引っ張られる感じがすることがある,くらいでしょうか。

録音: 低域がボンボン響きすぎで,その後に続く細かい音型に被ってかなり聴き苦しく感じます。 また,直接音よりも間接音比率のほうが高く感じるような音色で全く良くありません。 残響時間が長いという感じではありませんが,明瞭感に乏しく,音色も全く冴えない録音です。 演奏が良いだけに,一層苛々が募ります。

所有盤: BVCD-1632-33 (P)1997 BMG Japan Inc. (国内盤)
録音:1995年9月4-8日,オランダ,ハーレム,ルーテル教会
楽器:アンドレ・アマティ[クレモナ1570年頃],5弦のチェロ・ピッコロ(作者不詳)[ドイツ18世紀前半], 弓:ルイス=エミリオ・ロドリゲス[デン・ハーグ(オランダ)1995年]

P.S. 鈴木秀美さんのホームページがあります。

(記2003/08/05)


演奏:
録音:

向山佳絵子 (Sony 1999,2000) (全集)

優しく,暖かく,また,歌心に溢れた演奏に思います。 各フレーズの終わりの音,ちょっとした伸ばしの音に,大切そうに美しくヴィブラートがかけられているのが印象に残ります。 適度な躍動感も持ち合わせていて,とても耳あたりが良く,気持ちよく聴き通すことができました。

録音: 残響感が少しあり,明瞭感がわずかに落ちている感じがします。 高域もどこかすっきりせず,ヌケの悪さを感じます。 決して悪い録音ではありません。 が,全体にもやもやした感じがつきまとい,私としては少し残念に思っています。 あえて辛目のコメントとさせていただきました。

所有盤: SRCR 2511-2 (P)(C)2000 Sony Music Entertainment (Japan) Inc. (国内盤)
Recorded at Yokohama Minato Mirai Hall (Small Hall), Yokohama City, September 7-9, 1999 & January 18-20, 2000.

P.S. 第五番では,オリジナルの楽譜の指定通り,第一弦を一音下げた(A→G)調弦で演奏されているそうです。

(記2003/07/28)


演奏:
録音:

リン・ハーレル(Lynn Harrell) (Decca 1982,83,84) (全集)

とにかくテクニックの切れ味の良さが印象的です。 全体に速めのテンポで引き締まっており,快活かつ豪快です。 弾きっぷりの良さ,楽器の鳴らしっぷりの良さに感激します。 かといって大味なところがなく,一つ一つの音に神経が行き届いているところも素晴らしいです。 張りのある芯のしっかりした音色で,低域の歯切れの良さも特筆ものですが,ややゴリゴリという感じであり,伸びやかさ,潤いに欠けるのが残念なところです(これは無理な注文か?)。

録音: 残響が少なく,楽器音を明瞭に捉えた,この切れ味の良い演奏にふさわしい好録音です。 低域もブーミーに響くことなく非常に聴きやすいです。 ただ,高域の伸び感が今ひとつでスカッとしないのが残念です。

所有盤: 466 253-2 (P)1995 (C)1999 The Decca Record Company Limited. (輸入盤)
Recording locations: Kingsway Hall, London, October 1982 (1 & 3), March 1983 (2), September 1983 (4 & 5); Henry Wood Hall, London April 1984 (6).
Cellos: Domenico Montagnana, 1920 (1-5), Antonio Stradivari, 1673 (6).

P.S. リン・ハーレル氏は,クリーヴランド管弦楽団の元首席奏者とのことです。

(記2003/07/23)


演奏:
録音:

バーバラ・ウェストファル(Barbara Westphal) (ヴィオラ) (Bridge 録音不明) (全集)

チェロに対して(いろいろな意味で)軽いことを活かした小気味好い演奏です。 全体にテンポが速く軽快で気持ちがよいです。 技術的にも非常に安定感がありますし,なにより音色が伸びやかで,ヴィオラでありがちな苦しげな高音になっていないのが良いです。

一方,軽やかな演奏であることに加え,特に低弦の響きがチェロに比べて残りにくいので, チェロの演奏を聴いているときよりも頭の中で和声を補完する想像力が要求されるように思います。 また第六番は,解説書には原曲通りニ長調と書いてありますが,五度下げたト長調に移調しているようです。 従って,5弦の楽器を想定した場合の最低弦がないことになりますので,この弦が絡む部分の音型を変更する編曲がなされているようです。 違和感とまではいきませんが,時々「あれっ,こんなんだったっけ」と思うことがありました。

録音: 残響感がわずかであり,明瞭感,解像感が高く,高域の伸び感も十分な好録音です。 わずかな響きが楽器音に被って音色が変化しているようにも感じますが,ほとんど気になりません。 どのような環境で録音されているのかよくわかりませんが,実在感のある音で捉えられていると思います。

所有盤: Bridge 9094 A/B (P)(C)1999 Bridge Records, Inc. (輸入盤) (K.N.氏所蔵盤)

P.S. ウェストファル氏は,デロス弦楽四重奏団のヴィオラ奏者としても活躍, また,ソリストとしての活動の他,Trio da Saloのメンバー,Musikhochschule in Lubeck (Germany)のヴィオラの教授,とのこと。 使用楽器は,Gasparo da Saloによる1570年製。

(修2003/07/29) ※第六番に関する記述を修正
(記2003/07/15)


演奏:
録音:

モーリス・ジャンドロン(Maurice Gendron) (Philips 1964) (全集)

素直な表現で音楽の流れが非常に自然であり,何の違和感もなく耳に届きます。 力強さを持ちながら決して粗くも熱くもならず,紳士的な態度を崩しません。 音色も明るく,技術的な安定感もあって安心して音楽に浸ることが出来ました。 強烈な個性を持った演奏というわけではありませんが,一つの模範的な演奏としての完成度を感じさせます。

録音: 少し残響感があり,明瞭感がわずかに損なわれています。 また,音色に影響して少々冴えない感じがします。 1964年の録音ということもあって,音色がやや古くさく感じられます。 私の好みの録音ではありませんが,それほど悪くはないかもしれません。

所有盤: 442-293-2 (P)1964 (C)1994 Philips Classics Productions (輸入盤) (K.N.氏所蔵盤)
Recorded: France, 2/1964

(記2003/07/13)


演奏:
録音:

ダニール・シャフラン(Daniil Shafran) (Aulos music 1969-74) (全集)

曲によって演奏の傾向が異なります。 第一番,第三番が同傾向,第二番,第四番,第五番,第六番が同傾向です。 前者は,全体として肩の力を抜いて自由奔放に弾きまくっている感じです。 粗さは目立つものの,快活で躍動感があり,弾むようなリズム感が心地よいです。 一方後者は,やや前者の快活さが影を潜め,思い入れたっぷりの重厚な表現です。 どちらにしても表現はやや大仰な感じがします。 また,一音たりともかけ損ねまいといった感じの深いヴィブラートも独特の音色をを出しています。 私としては,前者の演奏の方が聴いていて気持ちよく,この表現で全体を通してくれていたら,とちょっと残念に思います。

それにしても,今やこういう表現をする人はもういなくなったのではないでしょうか。 過去の一つの演奏スタイルの記録として貴重ではないかと思います。

録音: 演奏と同様,第一番と第三番が同傾向,第二番,第四番,第五番,第六番が同傾向です。 前者は,残響感がほとんどなく比較的明瞭に捉えられた好ましい録音です。 ただ,少し高域の伸び感に欠け,また,弱音がきちんと再現されていない感じがします(これは機材,もしくは録音テープの問題だと思いますが)。 後者は,残響感が多めで明らかに明瞭感に劣ります。 残響が主音に被って音色も損なっており,残念ながら全く冴えない録音です。 録音年代が長期に渡っているのである程度録音の傾向が変わるのは仕方ありませんが, 第一番,第三番のような録音で統一されていたら良かったのに,と思います。

所有盤: AMC2-012 (P)(C)Firma Melodiya in Russia. (輸入盤)
Recorded: BWV1007(1970), BWV1008(1973), BWV1009(1969), BWV1010(1974), BWV1011(1974), BWV1012(1969)

P.S. ほぼ同時期にDOREMI盤が発売になったようで,店頭でも並べて置いてありました。 録音年が(第六番を除いて)一致していますので,同じ録音だと思うのですが... 演奏,録音の傾向からすると,DOREMI盤での記載通り第六番は1974年が正解ではないかという気がします。

(記2003/07/04)


演奏:
録音:

パオロ・パンドルフォ(Paolo Pandolfo) (ヴィオラ・ダ・ガンバ) (Glossa 2000) (全集)

ヴィオラ・ダ・ガンバによる演奏。 演奏者自身によって次のように移調されています。 第一番(ト長調→ハ長調),第二番(移調なし),第三番(ハ長調→ヘ長調),第四番(変ホ長調→ト長調),第五番(ハ短調→ニ短調),第六番(移調なし)。 編曲は移調が主ですが,曲によっては和声的な追加がかなりなされています。 また,部分的にピツィカートで演奏されている曲(第四番サラバンド)もありました。 フレットがあるためでしょうか,まるでギターのように響きます。

演奏はバロック楽器らしい緩急強弱を大胆に取り入れたものですが,どちらかというと弾き崩しと言ってよいくらいの曲もあります。 ダイナミックであり,フレージングが明快なのは良いのですが,聴いている側として音楽の流れになかなか乗り切れません。 ヴィオラ・ダ・ガンバという楽器の特長を活かそうとした非常に意欲的な演奏であり,音楽的にも技術的にも優れたものを感じるものの, ちょっと私にはついていくことが出来ませんでした。

一曲だけとても印象的だったのが第四番のブーレIIで,表現,リズム感がやけに現代っぽいというか,ポピュラー音楽っぽくて, 他からちょっと浮いているものの大変素晴らしく感激しました(この調子で全曲通してくれたらよかったのに!...と勝手なことを思ってしまいます)。

録音: 少し距離感があり,響きが多くて主音に被っており,明瞭感,音色がかなり損なわれていると思います。 弱音で細かく動くところなど,なにかモゾモゾしていて音の粒が聞き取りづらく,苛々させられることもしばしばです。

所有盤: GCD 920405 (P)2001 Glossa Music, S. L. (輸入盤)
Recorded in Sajazarra (La Rioja), Spain, in October 2000.

P.S. パンドルフォ氏は,1982年からエスペリオンXXのメンバーとして活躍,1992年には5人のヴィオラ・ダ・ガンバのグループ「ラビリント」を結成したとのこと。

(記2003/06/18)


演奏:
録音:

イエルク・メッツガー(Jorg Metzger) (Campion Records 録音不明) (全集)

技術的にはどうかな?と思うのですが, 無理をせず自己の技量の範囲内で丁寧にしっかりと弾こうという意図が感じられ, これが何とも素朴な雰囲気を出していて好感を持ちました。 一つ一つの音を確かめるようにしっかり弾いており,素朴ではありますが,力感のある芯の詰まったいい音を出していると思います。 ヴィブラートも深めで印象的です。 全体に無理なくゆったり目のテンポで演奏されているので破綻することなく安心して聴くことは出来るのですが, 特にブーレやガヴォットなどではもう少し躍動感が欲しかったなと思います。

録音: 非常に素直に,ストレートに録音された好録音。 残響感がほとんどなく,楽器そのものの音が極めて明瞭に,自然な音色で伝わってきます。 ライヴ録音のような生々しさがあるわけでもなく,オーディオ的高品質を誇示するようでもなく, 何気ない普通の録音のように聞こえますが,シンプルでバランスの取れた良い録音に思います。 録音が良いとか悪いとか,音響がどうだとか,そういったことが全く意識に上ってこないので,純粋に音楽に没頭できます。

所有盤: RR2CD 1326/27 (P)1990 (C)2004 Campion Records (輸入盤)

P.S. メッツガー氏は,スデーテン地方(チェコ北部?)ライヒェンベルグ出身。 ベネツィアのサント・セラフィンによる1710年製の楽器を使用しているとのこと。

(記2003/06/13)


演奏:
録音:

ダニール・シャフラン(Daniil Shafran) (Yedang 1971) (No.2,3,4,5)

非常に熱く激しく気迫に満ちた演奏です。 緩急強弱がダイナミックに付けられてはいるのですが,全体としては, ひたすら轟々と楽器が壊れそうなくらい鳴らし続けているという印象です。 ライヴということもあり,熱気,推進感がものすごく,ここまでやるとはすごい!と一面感心するものの, やや暴走気味であり,勢い余って音符を端折ってしまっているようなところも見られ,バッハの音楽に対してあまりにもやりすぎではないか, というのが正直な感想です。

録音: 1971年のライヴ録音。 放送音源のためかモノラルです。 高域側の帯域がかなり狭く,また,明瞭感にも乏しくて聴きづらい録音です。 1971年の録音だから...と思って期待して聴くと,かなり裏切られます。 各楽章の終わりも,楽器の響きが消えきらないうちに素早くフェードアウトされてしまうので, 余韻が全くなく興醒めです。 些細なことではありますが,もう何とかならなかったのかと思います。

所有盤: YCC-0010 (C)2001 Yedang Entertainment (P)Pipeline Music, Inc. (輸入盤)
Recording 6,9 October 1971

P.S. シャフラン氏は1923年,ロシア,サンクトペテルスブルグ生まれ。 私が購入したCDには日本語の帯が付いており, 「ロシア国営テレビラジオ局の資料保管倉庫に所蔵されていた録音物」と書いてありました。 イエダンのWebページにも記載があります。

(記2003/06/09)


演奏:
録音:

モルテン・ツォイテン(Morten Zeuthen) (Scandinavian Classics) (全集)

「これはすごい!」と最初の数小節を聴いて心の中で叫んでしまいました。 颯爽としたテンポで躍動感に溢れており,明るく引き締まった音色にも魅了されます。 力強く,また,しなやかに,柔軟性に富んだ表現も素直で嫌みがありません。 しかもこれだけの演奏でありながら,余力さえ感じさせる技術レベルの高さにも脱帽です。 何より演奏者本人が心底演奏を楽しんでいるということが,この活き活きとした音楽を通して伝わってきますし, 聴いているこちらまで心躍ってくるところが本当に素晴らしい!です。 バッハってホントにいいなぁ...と感動しました。

録音: 響きが豊かですが,主音に被り気味で少々明瞭感が良くありません。 音色も損なっているように感じます。 何とか許容範囲とは思いますが,私の好みからは外れます。 演奏が素晴らしいだけに本当に残念!

所有盤: 220503-504 (C)2002 TIM The International Music Company AG (輸入盤)
録音:1994年秋,St. Heddinge教会(コペンハーゲンの南約50km)
1枚目の最後にPartita BWV 1013が収められています。 Classicoレーベルから出ているもの(CLASSCD 104-5)とおそらく同じです。

P.S. ツォイテン氏は1951年,デンマーク,コペンハーゲン生まれ。 27年間コントラ四重奏団のメンバーを務め,18年間オランダ王立交響楽団の首席チェロ奏者を務め, 現在,コペンハーゲンのデンマーク王立音楽院チェロ科主任教授とのことです。 解説書によると,このバッハの無伴奏は,1994年のデンマークのグラミー賞で"The best classical recording of the year"を受賞したとのことです。

ツォイテン氏のプロフィールらしきものが,こちらこちらにありますが, デンマーク語なのか,何が書いてあるのか良くわかりません。 dacapo-recordsのページや,この夏に開催されるチェロのマスタークラスのページでは, 英語の記述がありました。(以上,K.N.さんからの情報です)

この演奏に感銘を受けたK.N.さんがツォイテン氏にメールを出したところ,ご本人からお礼のメールが届いたとのことです。 その中で,このバッハの録音に関して,教会の響きのすばらしさ,余裕ある録音スケジュールのお蔭でこの音楽の呼吸を感じられたこと,などが書かれていたそうです。 楽器は,1680年にクレモナで製作されたフランチェスコ・ルッジェーリのものということです。

(記2003/06/03)


演奏:
録音:

スーザン・シェパード(Susan Sheppard) (Metronome 1998) (全集)

バロックチェロによる演奏。 第六番は五弦のものを使用。 ピッチはA=415Hz。 第一番から第四番までは,穏やかに丁寧に抑揚が付けられ,要所では力強くかつ軽快に演奏され, まるで「バロックチェロはこう演奏するのよ」と言わんばかりの模範的な演奏に思えます。 一方,第五番,第六番はガラッと変わって俄然張り切って豪快に演奏しています(その分ちょっと音が荒れ気味に感じますが)。 技術的にも安定感があります。

しかし,確かに巧い!と感じる一方,なぜか印象が薄いです。 私が持っているバロックチェロのイメージにあまりにもはまりすぎているのかもしれません。 また,音色のカサカサ感(第五番はガリガリ感も!)も結構あって, バロックチェロ本来の音色なんだろうなと思いながらも,ちょっと苦手に感じてしまいます。

録音: 残響が多く,主音に被ってしまって聴きづらい録音です。 明瞭感が落ちて細かいパッセージが聴き取りにくかったりしますし,音色にもかなり悪影響を及ぼしていると思います。 残念ながら私にとっては少々許容限度を超えています。

所有盤: MET CD 1034/35 (P)(C)1999 Metronome Recordings Ltd. (輸入盤)
Recorded in Claydon House, Buckinghamshire. 3-4 February 1998, 1-2 October 1998, 4-5 December 1998.

P.S. 解説書によると,スーザン・シェパードは, アカデミー・オブ・エンシェント・ミュージック,ロンドン・クラシカル・プレイヤーズの首席チェリストを務め,その後, エイジ・オブ・インライトゥンメント管弦楽団の創設メンバーとして参加,初代首席奏者を務めたとあります。 現在は,ギルドホール音楽院(Guildhall School of Music and Drama)のバロックチェロの教授を務めているとのことです。

(記2003/05/29)


演奏:
録音:

マイケル・ケヴィン・ジョーンズ(Michael Kevin Jones) (EMEC 2002) (全集)

起伏や変化に乏しい平板な演奏です。 躍動感もなく,緩徐楽章も間延びしていますし,音色もドローンとしていて全く締まりがありません。 録音の悪さもあって,最後まで聴き通すのが本当につらいです。

録音: ほとんど残響音ばかりで直接音が全く聴こえない最悪の録音です。 細かいパッセージも残響に埋もれてはっきり聞き取れませんし,楽器の音色もまともではありません。 いったいこの録音から何を聞き取れというのでしょうか?(怒!) 録音エンジニアの見識を疑います。

所有盤: E-056/7 EMEC Distribution (Spain) (輸入盤)
Recorded at the Kirtlington Park Room, (Metropolitan Museum of Art, New York) October 3 to 10th 2002.

P.S. 公式ホームページがあります。 イギリス出身のチェリスト。 現在はニューヨークを拠点に活動中。 この無伴奏チェロ組曲は,ニューヨーク・メトロポリタン博物館所蔵の1667年製ストラディヴァリウスを使用とのこと。

(記2003/05/25)


演奏:
録音:

ユリウス・ベルガー(Julius Berger) (Wergo 1995,96) (全集)

これはおもしろい! 表現意欲に満ち満ちた個性溢れる快演です。 後押しするような強烈なアクセント,唸るように轟々と響かせた低域,リズムを強調したスタッカート, などなど(とてもこの特徴を言葉で言い表せません!)変化自在に,時として非常に攻撃的に現れ度肝を抜かれます。 これは本当にバッハなのか?と感じることもしばしばです。

特にリズミックな楽章がおもしろいです。 強烈なアクセントとガット弦らしいスカスカ音で疾走するのに抵抗を感じたこともありましたが, これが次第に快感に変わってきました。

余りにも強烈なので,好みが分かれるところだと思います。 しかし,ここまでやられると,もう拍手喝采せざるを得ません。

録音: 残響時間の長い環境で録音されたのか,指板をバシバシ叩く音がはっきりと聞き取れるような好ましい音の捉え方でありながら, 低域の響きが主音に被ってちょっとモワモワした感じになっているのが残念なところ。 もう少しすっきりシャキッとした録音であって欲しかったです。 第六番は音域が比較的高いこともあってか,他に比べて少しだけ聴きやすいです。

所有盤: WER 4041-2(284 0412) (P)(C)1997 Schott Wergo Music Media GmbH, Mainz, Germany. (輸入盤)
Aufnahmen: 11/12/14 April 1995, 23 Mai 1995, 26 September 1995, 13 Marz 1996, San Vigilio, Col San Martino.

P.S. ベルガーは1954年,アウグスブルグ生まれ。 第一番から第五番は,Johan Baptist Guadagnini, ex Davidoff, Turin 1780年製を, 第六番は五弦のピッコロチェロ,Jan Pieter Rambouts, Amsterdam 1700年製を使用。 楽器はモダン仕様であるが,ガット弦を張り,バロック弓を使用している,という情報がこちらにありました。

ジャケットは,瀧正徳氏(武生市在住,書家)の筆によるものとのことです(こちらに情報がありました)。

(記2003/05/22)


演奏:
録音:

マリオ・ブルネロ(Mario Brunello) (Agola 1993) (全集)

じっくりと歌う曲,躍動感溢れる曲,颯爽と流す曲,それぞれの舞曲の性格をうまく際立たせていると思います。 控えめながらも自由自在な弓さばきによって緩急強弱が自然かつ絶妙に付けられ,生気に満ちています。 重苦しくなく,力みもなく,演奏する喜びがストレートに伝わって,聴いていて本当に楽しくなります。 何度も聴き返したくなる好演奏!

録音: ライヴ録音。 ホールで聴いているかのような音が再現されるライヴらしい録音ですが,響き(とくに低域)がやや被って少々煩わしく感じます。 音色は比較的自然に思いますが,やはりちょっとヌケの悪さがあって残念です。

所有盤: AG 160.2 (C)1998 Agora (輸入盤)
Live recording: January-April 1993, at "Conservatorio di Torino"

(記2003/05/16)


演奏:
録音:

堤剛 (Sony 1990,91) (全集)

素直な気持ちでこの曲を捉え,表現した結果がここにある,という感じで,とても自然に,素直に受け入れることが出来る演奏です。 太く芯のある力強い音色が印象的です。 無骨で洗練されてはいませんが,この曲に対する思いを飾りのない言葉で我々に語りかけてくるかのようなところが好きです。

重音の部分を分けて弾く際に,それぞれを別拍のように弾いている箇所が所々あり, 聴いている側としては音楽の流れに乗り切れず,ここだけが本当に残念に思います。

録音: わずかに残響が伴っているものの,楽器音が明瞭に捉えられている好録音ですが, どこか鮮明さに欠け,ほんの少しすっきりしない感じが残る点が本当に惜しい!です。

所有盤: SRCR 8647-8 (P)(C)1991 Sony Music Entertainment inc. (国内盤)
Recorded at Tagajo-shi Bunka Center Hall, Miyagi on Dec. 19&21 '90(No.1&2), Mar. 6-9 '91(No.3&4), May 26&28 '91(No.5&6).

P.S. 堤剛さんのプロフィールはこちらこちらにあります。 1970年にも全曲を録音されているようです(おそらくCD化されていません)。 こちらもぜひ聴いてみたいものです。

この堤盤は,私が買った最初の無伴奏チェロ組曲のCDであり,思い出深いものです。 少々思い入れの強い感想になってしまった点,何卒ご了承下さい。

(記2003/05/11)