感想
■ クセニア・ヤンコヴィッチ Xenia Janković
レーベル | : | Melism |
収録曲 | : | 全集 |
録音 | : | March 2006 at the Église Évangélique Saint-Marcel, Paris, France |
所有盤 | : | MLS-CD-006/007 (P)(C)2015 Melism (輸入盤) |
備考 | : | 演奏 録音
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少し速めのテンポで淀みなく小気味よく,そして躍動的に弾むリズムが気持ちのよい好演奏。
深い響きの低音から艶やかな高音まで音色も美しいです。
技術も確かで安心して音楽に浸ることが出来ます。
これはちょっとした掘り出し物でした。
録音ですが,少し残響が多めで楽器音へのまとわりつきが気になりますが,
ボディ感たっぷりにしっかりと質感をもって捉えているのは良いと思います。
不満はあるものの,チェロの録音としてはまだ良い方ではないかと思います。
ヤンコヴィッチはセルビア出身のチェリストとのことで,
1981年にはガスパル・カ サド国際コンクールに優勝したとのことです。
現在はデトモルト音楽大学の教授とのことです。
■ スティーヴン・ハンコフ Steven Hancoff (Acoustic Guitar)
レーベル | : | 自主制作? |
収録曲 | : | 全集 |
録音 | : | 不明 |
所有盤 | : | 品番不明 (P)(C)2015 (輸入盤) |
備考 | : | 演奏 録音
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アコースティック・ギター編曲による演奏。
ナイロン弦のクラシック・ギターによる演奏はよくありますが,
スチール弦のアコースティック・ギターによる演奏は滅多に見かけません。
しかも全集ということで,アコースティック・ギターが好きな私にとっては大変うれしいディスクです。
この曲集とアコースティック・ギターって,実は結構相性がいいじゃないか!と思ってしまいます。
ギター版ということもあって結構ベース音や和音の追加があります。
ごくまれにあれっ?というような和音がありますが,ほぼ違和感なく聴くことができます。
技術的に特に優れているということはありませんが,全く問題はありません。
さて録音ですが,スタジオの残響のない環境で極めてクリアーに明瞭に録っています。
アコースティック・ギターの録音としてはごく普通だと思います。
スチール弦のきれいで伸びのある響きを堪能できます。
詳しくはわからないのですが,ハンコフ氏はジャズ・ギタリストのようです。
編曲および演奏自体はジャズ的なところは全くありません。
■ ヤーノシュ・シュタルケル Janos Starker
レーベル | : | RCA |
収録曲 | : | 全集 |
録音 | : | 1992年6月19,20,22-24日 New York,アメリカ芸術文化アカデミー |
所有盤 | : | BVCC-37662-63 (P)1995 Sony BMG (国内盤) |
備考 | : | 演奏 録音
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4回の全集録音のうちの最後,4回目の録音です。
1992年なので,前回からおよそ8年後,68歳くらいでの録音になると思います。
前回の内向きな演奏に比べると,今回の演奏は,何か吹っ切れたような,
外向きの明るい,そして随分と意欲的な演奏にまた変わっています。
ただ,1960年代以前のような強烈なオーラを放つような演奏ではないので,
もの足らなく思う方もおられるかもしれませんが,音楽的にはずっと深まっていると思います。
技術的な衰えもほとんど感じられません。
さて録音ですが,マイクポイントが近めで楽器音を暑苦しいくらいに濃厚に捉えており,
録音レベルも高く,この点では好ましく思います。
音色は少し中域に癖があって,もう少し適切な距離感ですっきりとしていれば良かったと思います。
惜しい録音です。
■ ヤーノシュ・シュタルケル Janos Starker
レーベル | : | Sefel Records |
収録曲 | : | 第1番,第2番,第3番 |
録音 | : | 不明(1984年頃) |
所有盤 | : | SE-CD 300A (P)1984 Sefel Records (輸入盤) |
備考 | : | 演奏 録音
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レーベル | : | Sefel Records |
収録曲 | : | 第4番,第5番,第6番 |
録音 | : | 不明(1984年頃) |
所有盤 | : | SE-CD 300B (P)1984 Sefel Records (輸入盤) |
備考 | : | 演奏 録音
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4回の全集録音のうちの3回目の録音です。
1984年頃の録音で,同氏の60歳の節目で録音されたものと思われます。
カナダのSefel Recordsというマイナーレーベル?への録音です。
2回目の全集の録音からおよそ20年後の録音ということになりますが,前回の録音に比べると全く印象が異なります。
前の演奏は「剛」という印象でしたが,これは正反対の「柔」です。
20年の月日が経っているとはいえ,同じ人の演奏とは思えない変わり様です。
人に聴かせる演奏というよりは,自分との対話という趣で,至極内省的な印象を受けます。
インパクトは全くなく,個性的な表現もありませんが,バッハと正面から向き合った味わい深い演奏だと思います。
録音ですが,残響は控え目に抑えられ,極めて自然な雰囲気と音色で捉えられていて好感が持てます。
どちらかといえば地味で冴えない印象であり,もう少し抜けよく伸びのある音で録って欲しかったとは思いますが,
演奏の内容にはとてもマッチしている録音だとは思います。
マイナーレーベルのためあまり流通していないようで,入手性が良くないのが残念です。
同氏に期待する演奏とは方向性が少し違うのでは?と思うものの,演奏の出来自体はすごく良いと思うので,
何らかの形で復刻されたら良いのに,と思います。
こういうのこそタワーレコードさんの出番だと思うんですけどね(^^;。
■ ヤーノシュ・シュタルケル Janos Starker
レーベル | : | Mercury |
収録曲 | : | 全集 |
録音 | : | 1963年4月,1965年9月 |
所有盤 | : | PHCP-20390/1(432 756-2) (P)(C)1991 Philips Classics (国内盤) |
備考 | : | 演奏 録音
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4回の全集録音のうちの2回目の録音で,同氏を代表する録音の一つではないかと思います。
ギンギンに楽器を鳴らしてなんの迷いも感じさせない直線的・鋭角的な演奏。
懐の深さや味わいのある演奏ではありませんが,ここまで攻めた演奏をされるとこれはこれで説得力があります。
今となってはこれだけの技術をもってこのような演奏をされる方はほぼおられないのではないかと思うと,
これは貴重な歴史の遺産に違いないと思います。
録音ですが,優秀録音で有名なMercuryの録音で,この録音もその生々しい音の捉え方でその一つに数えられると思うのですが,
こうして聴いてみると録音場所の響きがやや多めに被っており,マイク位置も離れているようで,
音色はくすみ,ニュアンスも失われているように思いました。
悪くはないとは思うのですが,Mercuryとしてはあまり良くないという印象です。
付属の日本語解説書では次のような記載があります。
「歴史的な録音をCD化するに当たって,制作および技術部門が目標としたのは,
オリジナル・テープとフィルム・マスターの音を出来る限り正確に,そして完璧に捉えることだった。
(中略)
CD化に当たっては,オリジナルのマスター・テープだけが使用され,実際の録音の時と同じくイコライザーやフィルターを使うことはなく,
コンプレッサー,リミターなども一切使われなかった。(後略)
」
可能な限りマスターに忠実なデジタル化,CD化が行われたようです。
レーベル | : | Mercury |
収録曲 | : | 全集 |
録音 | : | 1963年4月15日(第2番),1963年4月15,17日(第5番),1965年9月7日(第1番),1965年9月7,8日(第6番),1965年12月21,22日(第3番,第4番) ニューヨーク,ファイン・レコーディング・スタジオ |
所有盤 | : | SSHRS-011/014 (P)1964/1966 Universal International Music B.V. / Stereo Sound REFERENCE RECORD (国内盤) |
備考 | : | 演奏 録音
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ステレオサウンド誌の独自企画盤で,音匠仕様レーベルコートのシングルレイヤーのSACD 2枚とCD 2枚の4枚組です。
オリジナルマスターの音を再現することを目指しており,マスターテープから無加工,無修正でデジタル化したもので,
そのため,聴きやすくするためのイコライジングやマスターテープに起因するノイズカット,ドロップアウトの修正などもされていないということです。
先に挙げた従来盤と聴き比べてみると,音の鮮度という点では確かに改善が見られました。
また,従来盤にあった左右レベルの微妙なバランス崩れや位相ずれのような違和感も緩和されているように思いました。
一方で,ドロップアウトまでいかないまでもテープの劣化による音の荒れのようなものは逆に目立って聴こえるので一長一短があるようにも思いました。
全体的には改善の方が大きいためこの復刻の価値は十分にあると思いますが,
従来盤もマスターに忠実なデジタル化を目指したものであったため,
改善が明らかとはいえびっくりするほどの差はなく,
従来盤のおよそ4倍程度の値段が妥当かどうかはそれぞれの人の価値観によると思います。
やはりこれはオーディオマニア向けの商品ですね。
■ 中木健二 Kenji Nakagi
レーベル | : | King Records |
収録曲 | : | 全集 |
録音 | : | 2016年7月24-26日 キング関口台スタジオ 第1スタジオ |
所有盤 | : | KICC 1345/6 (P)(C)2016 King Record Co. Ltd. (国内盤) |
備考 | : | 演奏 録音
モダン仕様 1700年製ヨーゼフ・グァルネリ
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モダン・チェロによる演奏。
明るく軽やかであり,どこまでも爽やかな印象を残す好演奏。
技術的にも万全であり,この余裕がこの楽しい演奏を生み出しているのでしょう。
モダン楽器を活かした新しい時代を拓く演奏だと思います。
録音ですが,スタジオで録音したとは思えない残響感が中途半端です。
残響がまとわりついて明らかに明瞭感と質感を阻害しモゴモゴしています。
音楽を豊かに演出する効果はゼロ,音色を濁し不明瞭にする悪影響しか感じません。
明らかにこの素晴らしい演奏に水を差しています。
いったい何のためにスタジオで録音したのか理解に苦しみます。
もし人工的に残響を付加していたとしたら,本当に余計なことをしてくれたもんだと苦情を言いたいです。
演奏が良いだけに辛めの評価とさせていただきました。
本当にこの録音は残念です。
解説書によると,中木氏は,東京藝術大学を経て,2003年からパリ国立高等音楽院で錬磨を重ね,
スイス・ベルン芸術大学でさらに研鑽を積み,2010年にはフランス国立ボルドー・アキテーヌ管弦楽団の首席奏者となられ,
2014年に帰国,東京藝術大学音楽学部准教授に着任された,とのことです。
また〈モダン楽器でバッハを弾くこと〉について,「バロック・チェロは弾きません」
「ちゃんと演ろうとしたらモダン楽器を一時辞めないといけませんし,中途半端なバロックは嫌い。
ロマンティックな解釈で演奏はしませんが,ガット弦でピッチを変えて弾く演奏とは一線を引いておきたい。」
と語られたそうです。
■ フィリップ・ハイアム Philip Higham
レーベル | : | Delphian |
収録曲 | : | 全集 |
録音 | : | 2014年8月2-4日,11月19-21日,2015年2月2日 セント・ジョージ・ザ・エヴァンゲリスト教会(アッパー・ノーウッド,ロンドン) |
所有盤 | : | DCD 34150 (P)(C)2015 Delphian Records Ltd. (輸入盤) |
備考 | : | 演奏 録音
モダン仕様 カルロ・ジュゼッペ・テストーレ1697年製/カイ=トーマス・ロート2013年製(5弦)
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モダン・チェロによる正統派の演奏。
技術的にも大変上手く,丁寧かつニュアンスが豊かです。
しかし,あまりに真っ当で整いすぎた感があり,かえって印象が薄くなってしまうという,
ちょっと損をしているかもしれないと思ってしまう演奏です。
ただ,そんな中で第3番だけがどうしたことかとても意欲的な生命感溢れる演奏で素晴らしく,
全集の中で浮いた存在となっています。
全曲がこのアプローチだったら文句なしだったのですが...惜しいです。
録音ですが,少し残響感があり,また残響が楽器音に被って音色を少しくすませていて正直ちょっと冴えないです。
そんなに悪くはないのですが,もっとクリアーに抜けよく,質感高く録って欲しいところです。
■ ニコラウス・アーノンクール Nikolaus Harnoncourt
[1] | | |
レーベル | : | Teldec |
収録曲 | : | 第1番,第2番,第3番 |
録音 | : | 記載なし |
所有盤 | : | 8573-81228-2 (P)1965 Musical Heritage Soc. (C)2000 Teldec Classics International GmbH (輸入盤) |
備考 | : | 演奏 録音
バロック仕様 Andrea Castagneri, Paris 1744
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[2] | | |
レーベル | : | Teldec |
収録曲 | : | 第4番,第5番,第6番 |
録音 | : | 記載なし |
所有盤 | : | 8573-81227-2 (P)1965 Musical Heritage Soc. (C)2000 Teldec Classics International GmbH (輸入盤) |
備考 | : | 演奏 録音
バロック仕様 Andrea Castagneri, Paris 1744; except Suite no.6: Violoncello piccolo, Baer, Salzburg mid 17th century
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バロック・チェロによる演奏。
第6番はもちろん5弦のチェロ・ピッコロ。
(P)から1965年頃の録音かと思います。
原点に立ち戻るかのような,何ともシンプルな演奏。
素っ気ないほどに無骨だけど力強い。
現代のバロック・チェロによる演奏とはだいぶ違いますが,
バロックの先駆者の演奏として大変興味深いです。
録音ですが,残響感はないものの,生録的で,録音している部屋の響きが結構入っていて,
録音場所の雰囲気はおおいにあるものの,音色は損なわれていてあまり良いとは言えません。
演出感が全くないという点では良いのですが...もう少し何とかならなかったのかなとは思います。
■ ヨアヒム・エイランダー Joachim Eijlander
[1] | | |
レーベル | : | Navis Classics |
収録曲 | : | 第1番,第3番,第4番 |
録音 | : | 7-9 October 2014, Doopsgezinde Kerk, Haarlem |
所有盤 | : | NC15003 (C)2015 Navis Classics (輸入盤) |
備考 | : | 演奏 録音
モダン仕様 Gaetano Chiocchi 1870
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[2] | | |
レーベル | : | Navis Classics |
収録曲 | : | 第2番,第5番,第6番 |
録音 | : | 31 August - 3 September 2015, Doopsgezinde Kerk, Haarlem |
所有盤 | : | NC15007 (C)2015 Navis Classics (輸入盤) |
備考 | : | 演奏 録音
モダン仕様 Gaetano Chiocchi 1870
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丁寧で軽く柔らかいタッチが特徴,落ち着いた演奏です。
力強さはあまりないので印象はやや薄いのですが,
無理せず自己の技量の範囲で,優しく品のある音楽を作り上げていると思います。
録音ですが,残響が多めで楽器音に被り気味,音色がややくすんでいます。
指板をたたく音まで入っているような録音でありながら,下支えが希薄で少し捉え方が弱いようにも感じます。
もう少し直接音主体にしっかりと録って欲しいところです。
■ アンリース・シュミット Annlies Schmidt De Neveu
[1] | | |
レーベル | : | Spectrum Sound |
収録曲 | : | 全集 |
録音 | : | Recorded in 1957-1958 |
所有盤 | : | CDSMAC024 (P)(C)2015 Spectrum Sound (輸入盤) |
備考 | : | 演奏 録音
モダン仕様
LPからの復刻盤(原盤 German TELEFUNKEN LT 6626-8 ED 1 LP)
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超インテンポの快感とでもいいましょうか,全く揺らぎのない超快速演奏が素晴らしい効果を発揮しています。
世の中の数多の演奏がいかに表現に苦心しテンポの揺らぎでそれを豊かに表現しようとしているのか,逆にそれがよくわかります。
このような演奏をする人が他に全く現れないのが不思議といえば不思議なのですが,
バッハ演奏の可能性として,こんな単純明快な解があることに驚きを禁じ得ません。
こんなに古い演奏から無限の可能性があることを教えてもらうとは!
モノラルLP盤からの板起こしディスク。
古い盤の板起こし特有のノイズがあり,絶対的なクオリティはそれなりではあるものの,かなり良い状態で復刻されています。
多少のばらつきはあるものの,元々の録音が残響を控えた明瞭なものなので,
鑑賞には十分堪えうるというのが本当に有り難いことです。
なお,後述のforgotten recordsの復刻よりも,こちらの復刻の方がより鮮明で聴きやすいです。
※本ディスクと同じ演奏のディスクを2010年にレビューしていました。
前回のレビュー時とだいぶ印象が異なりましたので,
前回どのような感想であったかをせっかくですので以下に残しておきます。
[2] | | |
レーベル | : | forgotten records |
収録曲 | : | 全集 |
録音 | : | Recorded in 1957-1958 |
所有盤 | : | fr 118-9 forgotten records 2009 (輸入盤) *CD-R |
備考 | : | 演奏 録音
モダン仕様
LPからの復刻盤(原盤 Ducretet-Thomson 300-C-043/5)
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細やかに表現しようとか,ニュアンス豊かに表現しようとか,歌うとか,そういう気は全くないようです。
緩急も強弱もほとんどなく,フレーズの変わり目での「ため」なども全くありません。
「棒弾き」と紙一重というところですが,いやいや,さにあらず。
すさまじいテンポで疾走し(第一番のプレリュードなど1:26という快速!),
あえて<表現しない>ことで独特の軽快さを勝ち得ています。
疾風だが怒濤ではないところに面白さがあります。
当時に比べて演奏様式の研究が進んだ現代ではこんな無茶なアプローチをする演奏家はまずいないと思います。
そういう面からこの演奏を過去の遺物と切って捨てるのは簡単でしょう。
しかし,そういう研究の成果を取り入れた現代の多くの演奏と比べても,
楽しさ,ワクワク感では決して引けを取りません。
聴く人が音楽に何を求めるかによりますが,歴史的に正しい演奏様式であるかどうかということと,
音楽として楽しいかどうかということは別の問題であるということをこの演奏は教えてくれます。
そういう意味でもこの演奏は大変貴重であると思います。
おそらくモノラルのLPからの復刻盤です。
アナログ盤特有のスクラッチノイズは全くといっていい程なく,これが本当にLPからの復刻なのだろうか?
と耳を疑ってしまうほどです。
丹念にノイズ除去作業をされたのではないかと想像します。
古い録音なので帯域が狭いのはいかんともし難いところですが,元々の音の捉え方は良く,
残響などの邪魔な音もあまりないため,古い録音の割には十分聴けると思います。
復刻レーベルのforgotten recordsのサイトから直接注文して入手しました。
Webを見ていると,オリジナルのLPは超レア盤として有名だったようです。
いつも訪問してくださる方からこの盤の存在を教えていただきました。
貴重な情報を有り難うございました。
■ マット・ハイモヴィッツ Matt Haimovitz
レーベル | : | Pentatone |
収録曲 | : | 全集 |
録音 | : | 2015年4月 芸術文化アカデミー(ニューヨーク) |
所有盤 | : | PTC 5186555 (P)2015 Pentatone Music (C)2015 Oxingale Production (輸入盤) |
備考 | : | 演奏 録音
バロック仕様 A=415Hz
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バロック・チェロでの演奏。
タイトルが“THE CELLO SUITES According to Anna Magdalena ”とありますので,
アンナ・マグダレーナの写筆譜に従った演奏のようです。
ただし,第1番Gigueの写筆譜には存在する32小節目の半拍しかない小節はやっぱり省略されていますね...
持ち前の技術力の高さを活かした大胆で闊達な演奏。
吸い付くような弓遣いによる起伏が大きいフレージングが印象的です。
粘りのあるニュアンスに富んだ音色も素晴らしいです。
バロック楽器とのことですが,ざらつきのあるガサガサした音色は確かにバロック楽器のそれなのですが,
音楽自体はむしろモダンな印象を残します。
録音ですが,残響は多めで楽器に被り気味,ややモゴモゴとして伸びのない,濁った精彩に欠ける音になってしまっています。
演出感もかなり感じられます。
許容範囲だとは思うのですが,もっとすっきりと,そして生々しく録って欲しかったと思います。
本ディスクはハイモヴィッツ氏2回目の録音。
楽器は,ゴフリラー(1710)とチェロ・ピッコロコルマー(18世紀)を使用。
調律はA=415Hz。
■ 安田謙一郎 Ken-ichiro Yasuda
レーベル | : | Meister Music |
収録曲 | : | 全集 |
録音 | : | Yokosuka Bayside Pocket, Yokohama, 16th-18th April 2015 |
所有盤 | : | MM-3053-54 (P)(C)2015 MEISTER MUSIC (国内盤) |
備考 | : | 演奏 録音
モダン仕様
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朴訥とした語り口の温かく優しい音楽が印象に残ります。
歳を重ねた結果辿り着いた境地とでも言いましょうか。
音楽として決して緩むことなく前向きでありながらこの味わい深さをを出せるのはさすがです。
技術的にももちろんしっかりとしているのですが,キレは少し甘くなっているかもしれません。
ただそれは意図的かもしれません。
録音ですが,残響自体は少ないのですが,比較的遅延の少ない反射音が多め,直接音よりもその反射音の比率が高く,音を濁す要因となっています。
またそれによって高域の伸びが阻害され,詰まったモゴモゴとした冴えない音質になってしまっています。
比較的マイク位置は近いと思うのですが,それにしては明瞭感も悪く楽器の質感も損なわれ過ぎです。
もっとクリアで透明感のある音,楽器の質感をストレートに伝えてくれる録音をして欲しいものです。
安田謙一郎さん2回目の録音。
1回目は1975年ですので,ほぼ40年ぶりの録音ということになります。
録音の音質については1回目の方がはるかに良好で,好録音でした。
今回,このような音質で録音をされたことがとても残念でなりません。
■ マイケ・ラーデマーカース Mayke Rademakers
レーベル | : | Quintone |
収録曲 | : | 全集 |
録音 | : | September 2013 & July 2014, Podiumkerkje, Grevenbichr [NL] |
所有盤 | : | Q14004 Quintone (輸入盤) |
備考 | : | 演奏 録音
モダン仕様
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音楽の流れはなかなか良く,意欲的で躍動感があるところは良いと思います。
技術的にはわずかにキレが悪いのが残念なところです。
第5番までは健闘していますが,第6番はちょっと苦しいです。
また,どのような版の楽譜を用いられているのかわかりませんが,
あれっ?と思う聴き慣れない音が何カ所か混じっているのが気になります。
楽譜を読み間違えているということはないと思うのですが...
録音ですが,残響過多というわけではありませんが,響きで楽器音が濁っていて全く冴えない音になってしまっています。
残響が全く音楽的に寄与していません。
私には,残響があった方が良いから入れた,くらいの安易な考え方で録音しているようにしか聴こえません。
好録音とは程遠い残念な録音です。
最後にヤマハのエレクトリック・チェロ(サイレント・チェロ SV-110)を用いた即興的な楽曲が収録されていて,
こちらの方が楽しめました。
■ 藤原真理 Mari Fujiwara
レーベル | : | Naxos Japan |
収録曲 | : | 全集 |
録音 | : | 2011年12月19-20日,2012年1月23-24日,2月12日,2013年4月4-5日,11月8日 武蔵野市民文化会館 小ホール |
所有盤 | : | NYCC-27275-6 (P)(C)2014 Naxos Japan (国内盤) |
備考 | : | 演奏 録音
モダン仕様
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モダン楽器による演奏。
温かく滋味豊か,それでいてなおかつ音楽がとても弾んでいます。
肩肘張らず力を抜いて思うままに自由に楽しんで弾いておられるように感じます。
技術的にはぎりぎりまで,隅々まで追い込んではいませんので,私としては少しその点が不満として残るのですが,
だからこそこのような楽しげな音楽に仕上がっているのかな,とも思います。
録音ですが,指板をたたく音までしっかりと入るような録音で,ボディ感がたっぷりあるところは良いのですが,
飽和感・圧迫感があって音に伸びがなくモゴモゴしていますし,また歪みっぽい音割れのような雑味があるのはいただけません。
機材に問題があったんじゃないかと思ってしまいます。 う~ん...
藤原真理氏ほぼ30年ぶりの2回目の録音(1回目は1982-84年の録音)。