2015年の記事

■ マット・ハイモヴィッツ Matt Haimovitz

レーベルPentatone
収録曲全集
録音2015年4月 芸術文化アカデミー(ニューヨーク)
所有盤PTC 5186555 (P)2015 Pentatone Music (C)2015 Oxingale Production (輸入盤)
備考演奏 録音 バロック仕様 A=415Hz

バロック・チェロでの演奏。 タイトルが“THE CELLO SUITES According to Anna Magdalena ”とありますので, アンナ・マグダレーナの写筆譜に従った演奏のようです。 ただし,第1番Gigueの写筆譜には存在する32小節目の半拍しかない小節はやっぱり省略されていますね...

持ち前の技術力の高さを活かした大胆で闊達な演奏。 吸い付くような弓遣いによる起伏が大きいフレージングが印象的です。 粘りのあるニュアンスに富んだ音色も素晴らしいです。 バロック楽器とのことですが,ざらつきのあるガサガサした音色は確かにバロック楽器のそれなのですが, 音楽自体はむしろモダンな印象を残します。

録音ですが,残響は多めで楽器に被り気味,ややモゴモゴとして伸びのない,濁った精彩に欠ける音になってしまっています。 演出感もかなり感じられます。 許容範囲だとは思うのですが,もっとすっきりと,そして生々しく録って欲しかったと思います。

本ディスクはハイモヴィッツ氏2回目の録音。 楽器は,ゴフリラー(1710)とチェロ・ピッコロコルマー(18世紀)を使用。 調律はA=415Hz。

(記2015/12/23)

■ 安田謙一郎 Ken-ichiro Yasuda

レーベルMeister Music
収録曲全集
録音Yokosuka Bayside Pocket, Yokohama, 16th-18th April 2015
所有盤MM-3053-54 (P)(C)2015 MEISTER MUSIC (国内盤)
備考演奏 録音 モダン仕様

朴訥とした語り口の温かく優しい音楽が印象に残ります。 歳を重ねた結果辿り着いた境地とでも言いましょうか。 音楽として決して緩むことなく前向きでありながらこの味わい深さをを出せるのはさすがです。 技術的にももちろんしっかりとしているのですが,キレは少し甘くなっているかもしれません。 ただそれは意図的かもしれません。

録音ですが,残響自体は少ないのですが,比較的遅延の少ない反射音が多め,直接音よりもその反射音の比率が高く,音を濁す要因となっています。 またそれによって高域の伸びが阻害され,詰まったモゴモゴとした冴えない音質になってしまっています。 比較的マイク位置は近いと思うのですが,それにしては明瞭感も悪く楽器の質感も損なわれ過ぎです。 もっとクリアで透明感のある音,楽器の質感をストレートに伝えてくれる録音をして欲しいものです。

安田謙一郎さん2回目の録音。 1回目は1975年ですので,ほぼ40年ぶりの録音ということになります。 録音の音質については1回目の方がはるかに良好で,好録音でした。 今回,このような音質で録音をされたことがとても残念でなりません。

(記2015/08/08)

■ マイケ・ラーデマーカース Mayke Rademakers

レーベルQuintone
収録曲全集
録音September 2013 & July 2014, Podiumkerkje, Grevenbichr [NL]
所有盤Q14004 Quintone (輸入盤)
備考演奏 録音 モダン仕様

音楽の流れはなかなか良く,意欲的で躍動感があるところは良いと思います。 技術的にはわずかにキレが悪いのが残念なところです。 第5番までは健闘していますが,第6番はちょっと苦しいです。 また,どのような版の楽譜を用いられているのかわかりませんが, あれっ?と思う聴き慣れない音が何カ所か混じっているのが気になります。 楽譜を読み間違えているということはないと思うのですが...

録音ですが,残響過多というわけではありませんが,響きで楽器音が濁っていて全く冴えない音になってしまっています。 残響が全く音楽的に寄与していません。 私には,残響があった方が良いから入れた,くらいの安易な考え方で録音しているようにしか聴こえません。 好録音とは程遠い残念な録音です。

最後にヤマハのエレクトリック・チェロ(サイレント・チェロ SV-110)を用いた即興的な楽曲が収録されていて, こちらの方が楽しめました。

(記2015/02/01)

■ 藤原真理 Mari Fujiwara

レーベルNaxos Japan
収録曲全集
録音2011年12月19-20日,2012年1月23-24日,2月12日,2013年4月4-5日,11月8日 武蔵野市民文化会館 小ホール
所有盤NYCC-27275-6 (P)(C)2014 Naxos Japan (国内盤)
備考演奏 録音 モダン仕様

モダン楽器による演奏。 温かく滋味豊か,それでいてなおかつ音楽がとても弾んでいます。 肩肘張らず力を抜いて思うままに自由に楽しんで弾いておられるように感じます。 技術的にはぎりぎりまで,隅々まで追い込んではいませんので,私としては少しその点が不満として残るのですが, だからこそこのような楽しげな音楽に仕上がっているのかな,とも思います。

録音ですが,指板をたたく音までしっかりと入るような録音で,ボディ感がたっぷりあるところは良いのですが, 飽和感・圧迫感があって音に伸びがなくモゴモゴしていますし,また歪みっぽい音割れのような雑味があるのはいただけません。 機材に問題があったんじゃないかと思ってしまいます。 う~ん...

藤原真理氏ほぼ30年ぶりの2回目の録音(1回目は1982-84年の録音)。

(記2015/01/28)