村上龍、ネットで経済問題を考える

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 作家の村上龍は1978年に円が対ドルレートで二百円を切ったことをとらえ、日本の近代化は終わったとする論を掲げてきた。国家が大目標を失った中で、個人はどのような価値観を持って生きるのかを小説で問い続けている。その村上が今、「個人が一番リアルに世界と向き合うことを迫られる問題」として、金融経済に注目する。
 「文芸春秋」に連載中の「希望の国のエクソダス」は、緩やかな不況が続く21世紀の日本が舞台。そこでは失業率が7%を起え、外資系の金融機関が顧客数で日本の金融機関を上回っているとする。村上はこの小説執筆のため、民間の研究センターが開く経済の勉強会に頻繁に足を運んでいる。
 その会合で知り合った若手の金融アナリストやコンサルタントのネットワークを生かし、15日にインターネット上で経済問題を考えるメールマガジン(アドレスはjmm-info@agey.co.jp)を発刊する。契約者にはネットを通して、毎週月曜日に配信する。会費は無料。
 主な内容は村上が経済に関する疑問を投げ掛け、専門家たちに回答してもらうというもの。そのほか、すべての心理的現象は経済用語で説明できるという「心理経済学」の提唱者、佐賀医大の妙木浩之助教授に、メールで寄せられた読者の悩みを聞く講座などを設ける。
 村上は「日本人のだれもが、何か社会の大変革が起きていることは感じているが、その正体がわからずに不安になっている。メールマガジンで現実をわかりやすく伝え、不安の正体を解き明かし、本当の危機感を抱かせたい」と考えている。
     (出典 日本経済新聞 1999.3.9)

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[Last Updated 5/31/2001]