歌舞伎「紅葉狩」ほか

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    目 次
1. 出し物
2. 配 役
3. 夜の部・話題と見どころ
4. 歌舞伎評

1. 出し物
1.1 米 首 俵
1.2 紅 葉 狩
1.3 女殺油地獄

2. 配 役
▼米 首 俵
小林虎三郎  吉右衛門
伊東喜平太  橋之助
妻 そ で  孝太郎
森 専八郎  染五郎
泉三左衛門  玉太郎
岸 宇吉   芦 燕
伊賀善内   歌 昇

▼紅 葉 狩
更科姫実は戸隠山の鬼女
       雀右衛門
山神     吉右衛門
従者右源太  東 蔵
腰元野菊   玉太郎
腰元岩橋   錦 吾
従者左源太  友右衛門
局 田 毎  松 江
余吾将軍平維茂 梅玉

▼女殺油地獄
河内屋与兵衛 染五郎
お 吉    孝太郎
兄太兵衛   玉太郎
小栗 八弥  亀三郎
妹おかち   宗之助
父徳兵衛   幸右衛門
母おさわ   吉之丞
山本森右衛門 錦 吾
芸者小菊   高麗蔵
豊嶋屋七左衛門友右衛門

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3. 夜の部・話題と見どころ
●夜の部
米百俵
 戊辰戦争(1868年)後、心ならずも朝敵の汚名を着せられた長岡藩(新潟県中部)は、7万4千石から2万4千石に減石され、藩士の生活は困窮を極めています。そこへ領主牧野家の分家から、米百俵が贈られました。藩の大参事小林虎三郎は百俵の米を千7百の家々に分けると数日分で食べつくしてしまう。それよりも、有能な人材を養成するために、この米を元手に長岡藩が行く行く盛りかえすべく、学校を建てようと諄諄と説くのでした。小泉首相の発言で話題になった「米百俵」は、22年前当劇場で故白鸚の小林虎三郎で上演されています。佐久間象山の門下生で儒学者として知られた小林虎三郎を今回は吉右衛門が演じます。骨格のしっかりした作者山本有三の真髄が十二分にお判り頂けるでしょう。

紅葉狩
信州の紅葉の名所戸隠山にやって釆たのは、平維茂(これもり)とその主従です。そこへ現れたお姫様は酒のやりとりをしたあと、乞われるままひとさし舞ううちに、姫にふさわしくないそぶりをちらつかせます。そう、姫実は戸隠山の鬼女で、後に本性を現わし、維茂を悩ませますが、名剣の威徳にはかないませんでした。長唄、常磐津、義太夫三方のかけあいも賑やかですし、双方の従者や腰元にしどころのある、華やかな舞踊劇。季節の先取りをいたしましょう。大正生まれの雀右衛門の元気な舞台は、皆の驚異の的です。

女殺油地獄
 近松門左衛門が書いたお芝居ですのに、そのまま現代に通じる、それは世の中がどう変ろうと見る人をひきつけます。染五郎の与兵衛は先般博多で上演した際、どうにでも解釈し得るこの役を、あっけらかんとした青年、刹那主義でいく駄々っ子で、興味深い与兵衛をつくりあげていました。孝太郎のお吉もあえて自己主張をしない、それだけに哀れのある女房でした。東京の再演が十二分にうなずかれる、21世紀の『油地獄』です。
(出典 歌舞伎座発行のパンフレット)

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4 歌舞伎評
歌舞伎 「油地獄」若い暴力を陰惨に 歌舞伎座 「九月大歌舞伎」

 夜「女殺油地獄」は、衝動的な殺人犯与兵衛(染五郎)の物語。染五郎はせりふ、動きとも演技が生な所は課題だが、発作的に殺人に走るだだっ子のような若者を懸命に演じる。
 特に殺しの場面は、若い暴力が陰惨。油と血潮にまみれる殺しや、与兵衛が油にすべらぬようにお吉(孝太郎)のほどけた帯の上を追いつめる趣向が効く。犬の遠ぼえにおびえ花道を引っ込む時の焦点定まらぬ目がいい。世話女房の孝太郎は適役。不義をしそうもないまじめな女が、ふと見せるすきがある。
 しかし舞台は与兵衛の義父徳兵衛(幸右衛門)と実母おさわ(吉之丞)のもの。2幕の幕切れ。幸右衛門は与兵衛の亡父の使用人だった役だが、与兵衛を追い出した直後に「死なれた旦那に生き写し。旦那を追い出す心がしてもったいないもったいない」と手を合わせる。
 吉之丞も隠れて見送り、夫とハッと目を合わす絶妙の間。立場に苦しむ幸右衛門に慈愛がにじみ、吉之丞は詰んだせりふ回しと武家につながる縁の品がある。友右衛門、玉太郎、松之助とわきが厚い。
 夜「米百俵」は愚劇だが、吉右衛門が演じると人間の大きさが出現するから不思議。抜刀した藩士の前で情理を備えた説得に緩急の間があり、聞かせる。昼「陣門、組打」でも吉右衛門(直実)は、憂いをきかせた時代のせりふ回しが見事。梅玉の敦盛もぴったりの気品。
 梅玉は昼「明君行状記」では老かいさを出して芸域の広さを見せる。善左衛門の橋之助は直情な青年武士ぶりはいいが、腹に含むものが欲しい。孝太郎は武家女房もいい。
 踊りは芝翫の昼「藤娘」が一番。夜「紅葉狩」の雀右衛門は扇の扱いはおぼつかないが、濃厚かつ悽愴な味はこの人ならではだ。   (山本 健一) 27日まで。
(出典 朝日新聞夕刊(2001.9.17)

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[Last Updated 9/29/2001]