歌舞伎「白浪五人男」

四月大歌舞伎(夜の部)

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    目 次

1. 出し物
2. 配 役
3. 話題と見どころ
4. 感 想

1. 出し物(白浪五人男、夜の部)
河竹黙阿弥作
青砥稿花虹彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)
白浪五人男(しらなみごにんおとこ 通称) 3幕9場(通し狂言)
序 幕 初瀬寺花見の場
     神 輿 ヶ 嶽の場
     稲 瀬 川 谷 間の場
二幕目 雪の下浜松屋の場
     同  蔵 前の場
     稲瀬川勢揃の場
大 詰 極楽寺屋根立腹の場
     同  山 門の場
     滑 川 土橋の場

2. 配 役
弁天小僧菊の助
青砥左衛門藤綱 勘 九 郎(二役)
南 郷力丸    三津五郎
忠 信 利 平  信 二 郎
赤星十三郎    福   助
日本駄右衛門  仁左衛門

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3. 話題と見どころ
 文久二年 (1862)市村座で初演された河竹黙阿弥作の五幕の世話物で、本名題を「青砥稿花虹彩画」と言う。
 初演で弁天小僧を演じた五代目菊五郎(当時十三代目羽左衛門)の自伝によると、当時人気役者に見立てた三世歌川豊国の錦絵が発売され、その一枚に女装の盗賊に扮した画があった。その画を菊五郎が河竹黙阿弥に見せて、それをヒントに黙阿弥が案を練り、在来からあった日本駄右衛門以下五人の盗賊と鎌倉時代の名奉行青砥藤綱をからませた物語に仕組んだという。「花紅彩画」とあるように全編が錦絵を見るような絵画美で構成され、それが見どころである。初演では当時十九歳の菊五郎が弁天小僧を演じ、彼の出世役になった。
 序幕は「初瀬寺」で、「新薄雪物語」の序幕を摸した時代物の様式になっている。小山の息女千寿姫は、初瀬寺で死んだと思っていた許嫁の信田小太郎に出合い、家宝の香合を手渡し契りを結ぶ。小太郎は姫を「神輿ヶ嶽」に連れていくが、そこで実は弁天小僧という盗人の本性を現し、千寿姫は谷に身を投げる。折から日本駄右衛門が現れて、弁天はその手下になる。谷底で蘇生した千寿姫は家臣の赤星十三郎と出会い身を投じて自害、十三郎は家来筋の忠信利平に誘われ駄右衛門の子分になる。これが発端である。
「浜松屋」は単独でしばしば上演される人気のある場で武家娘と供侍に化けた弁天小僧と南郷力丸が万引きしたと見せかけて、額の傷を種に百両をゆすり取るまでが前半の見せ場。そこへ現れた玉島逸当が騙りと見破り、弁天が男の本性を現すところが後半の見せ場である。弁天の「知らざぁ言って聞かせやしょう」以下の七五調の名台詞は聞きもので、歌舞伎を知らない人でも知っている。幕末の退廃趣味に溢れた趣向だが、懐紙を額に当てて下を向いていた娘が、凄い目つきで逸当を睨みガラリと砕けて男の本性を現すところが見ものである。煙管や手拭いを巧みに使って名乗る長台詞に黙阿弥の本領が発揮されている。逸当には座頭役者の貫禄、南郷には弁天の兄貴分らしい男くささが要る。男と女の交錯した姿で南郷と共に引っ込むところも江戸趣味が横溢した場面である。「蔵前」はその逸当が実は駄右衛門と分かる場面で、この場の弁天は豊国の絵をそのまま写している。一方で駄右衛門と弁天を巡る因果話が展開する。随分都合良く話が進むのだが、黙阿弥は人間が悪の本性を顕す面白さを書き続けた作者で、因果関係の論理的な解明などにはさしたる関心はなかったのである。
 「稲瀬川」の勢揃いは派手な姿に身を飾った五人男のツラネが見もの聞きものである。五人の出にそれぞれ違った唄合方が入り、衣装デザインにも工夫が凝らされている。歌舞伎の様式美の極致である。
 「極楽寺山門」は弁天の最期を大立廻りで見せる。この山門ががんどう返しになって「土橋」になるところは大道具の見せ場。歌舞伎美に富んだスペクタクルで、「楼門五三桐」の五右衛門のパロディである。土橋の上には青砥藤綱が松明を掲げた侍を従えて立っている。松明を使って川に落ちた銭を探したという藤綱の有名な逸話を踏まえた趣向になっている。全編様式美に溢れた狂言である。
 (出典 歌舞伎座発行のパンフレット)

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4. 感 想
 いつもは「知らざぁ言って聞かせやしょう」の浜松屋の場か、稲瀬川勢揃いの場だけを見ることが多いのですが、通しで見ると話の全貌が見通せ、興味が湧きます。
 役者は必ずしも最適とはいえないようですが、来月は海老蔵(新之助)の襲名披露もあり、役者を育てるためにはやむを得ないのでしょう。
 家内も年歌舞伎を見ることが好きになってきたようです。

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[Last Updated 5/31/2004]