「モンテ・クリスト伯」

    目 次

1. 概 要
2. 内野聖陽
3. スタッフとキャスト
4. 感 想

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1. 概 要
 誰もが知るアレクサントル・デュマの世界的名作を高瀬久男が脚色・演出し、内野聖陽が主演して大ヒットを記録した『モンテ・クリスト伯』が3年ぶりに還ってきました。2001年の初演は「高瀬は単なる復讐譚だけでなく、ダンテスが人間的に成長する様にも触れようとした。目には目を、の報復だけでは律し切れないものかある。人間性あふれる苦悩の側面も、内野が鮮やかに見せる。口跡がしっかりし、舞台で一際スケール大きく感じる。中堅・若手を中心とした脇が手堅く、理屈なしに楽しめる作品だ。−毎日新聞・高橋豊氏」などの好評を博しました。以後も再演を望む声が多く寄せられ、今回の東北地方巡演、それに続くアートスフィアでの東京公演が実現したのです。
 スタッフはほぼ前回どおりですが、キャストには三木敏彦と南一恵の両ベテランをはじめ、高橋桝次郎、瀬戸口郁、亀田佳明、長谷川博巳、佐古真弓、山田里奈の八名が加わります。これら新メンバーたちが舞台に、さらに新たなエネルギーを注入してくれることてしょう。

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2. 内野聖陽−ヴィジュアル系新劇俳優の誕生   小藤田千栄子(演劇評論家)
「内野聖陽ってステキねえ」と多くの人が思ったのは、NHKテレビの『ふたりっ子』のときだと思うけれど、私が注目したのは、映画『(ハル)』(1996年作品)を見たときだった。これは、当時としては最先端メディアだったパソコン通信によるラブ・ストーリーで、内野聖陽は(ハル)というハンドル・ネームを持つ青年の役だった。つまり映画初主演で彼は、タイトル・ロールを演じたのである。
 シャープで端正な二枚目の登場に、私たちはすごくビッグリしたけれど、でも周囲では誰も、彼の名前を正確に読むことは出来なかった。「この人、新人賞よねえ」などと言いながらも、誰も〈まさあき〉とは読めなかったのである。なさけない。
 ついで注目したのは地人会公演の『ロミオとジュリエット』のときだった。もちろんロミオ役である。これほかなり新解釈の『ロミオとジュリエット』で、両家の争いにユーゴ紛争が絡んだりするのだけれど、この現代性の中に、内野聖陽はうまくはまり、それでいながら古典的端正さを滲ませたところが、私たち観客には大きな魅力だった。
 このあとはもう〈内野聖陽時代〉の始まりである。『みみず』(文学座アトリエ)、『カストリ・エレジー』(新国立劇場)、『野望と夏草』(新国立劇場)の三本で、いくつもの賞に輝いたのは、よく知られているところだが、このあたりになると、人きな劇場も内野聖陽という俳優の存在に注目し、『天涯の花』(新橋演舞場)、『裸足で散歩』(銀座セゾン劇場)と続いていく。
 丈学座公演では『北の阿修羅は生きているか』に主演した。これは分類すれば、かなりの汚れ役でもあり、文学座って、こんなに美しい人を、こんなにも汚してしまうんだわとピックリしたのだけれど、ちょっと難しいセリフの積み重ねを見事にこなして、やっばり新劇の人なんだわと、妙なところで感心してしまったのだった。
 そして、あの『エリザベート』である。ほとんどの人が、内野聖陽=死神トートと聞いて「えっ!」と思ったはずである。実は私も「内野聖陽って、あの文学座の?」と聞き返したほどだった。でも私はこのとき、ひょっとすると、いいかも知れないと思った。というのは、長いことミュージカルを見てきて、ひとつ確信に近いものがあった。それは〈歌手が芝居をするよりも、俳優が歌ったほうが良い〉ということである。もともとセリフの訓練を受けているのだから、声量はあるはずだ。あとは音感だけと思ったのである。
 でもちょっと心配の人も多かったに違いない。帝劇『エリザベート』の、あの内野聖陽の初日。トートが、吊りモノに乗って降りてきて、最初のナンバーを歌い始めたとき、ほとんどの観客は、息を止めて聴いてしまったのではないかと思う。それほどまでに注目されての登場だったが、さすが歌にドラマ性があり、キャラクターを的確に演じてミュージカルの世界は新しい才能を得たのだった。
『エリザベート』の千秋楽で、内野聖陽は 「ヴィジュアル系の俳優を目ざします」と笑いながら挨拶をして、なんだかすごく受けていたけれど、新劇俳優が「ヴィジュアル系」などと言ってしまうところに、内野聖陽の新しさがある。言ってはナンだけれど、新劇の世界には、ヴィジュアル系が、あまりにもいなさすぎた。『モンテ・クリスト伯』は、文学座としては、かなり思い切った企画だと思うが、おそらくは、内野聖陽がいるからこそ立ち上がったのだと思う。こういう企画を可能にしてしまうところもまた、内野聖陽の新しさと言えるだろう。

3. スタッフとキャスト
[スタッフ]
作       アレクサンドル・デュマ(山内義雄 訳)
脚色・演出  高瀬久男

[キャスト]
モレル氏‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥三木敏彦
ファリア神父‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥関 輝雄
サン・メラン侯爵‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 石川 武
ダングラール‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 高橋耕次郎
エドモンの父/ポーシャン‥‥‥‥‥‥‥‥ 大原康裕
カドルッス‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 吉野正弘
フェルナン‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 瀬戸口 郁
ウィルフォール‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 若松泰弘
門衛‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 鈴木弘秋
エドモン・ダンテス‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥内野聖陽
アルベール‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥  浅野雅博
ルイジ・ヴァンパ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 松井 工
ドブレー‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥石橋徹郎
フランツ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥椎原克知
マクシミリアン‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 城全能成
獄丁‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥亀田佳明
ベネディット‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥長谷川博巳
サン・メラン侯爵夫人‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 南 一恵
メルセデス‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 塩田朋子
エルミーヌ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥  金沢映子
エロイーズ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥  奥山美代子
ルネ/ヴァランティーヌ‥‥‥‥‥‥‥‥‥岡 寛恵
ユージェニー‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥佐古真弓
エデ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 山田里奈

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4. 感 想
 厳窟王として知られる、アレキサンドル・デュマの原作を高瀬久男が脚色・演出し、内野聖陽〈まさあき〉が主演した芝居で、良くできた内容だと思います。簡潔な舞台装置で、華やかな場面も、暗い場面も表現し、主演の内野の個性が生きています。
 天王洲のアートスフィアは初めての劇場ですが、小さいながら良い小屋だと思いました。臨海高速鉄道ができたお陰で、我が家からは天王洲に行くには中延、大井町経由で便利になりました。

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[Last Updated 8/31/2004]