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目 次
1. 出し物
1. 出し物
2. 配 役
3. 昼の部・話題と見どころ
4. 歌舞伎評
1.1 鞘 當[さやあて](其俤対肘編笠[そのおもかげ ついのあみがさ]) 一幕
河竹黙阿弥 作
1.2 連獅子(れんじし) 長唄囃子連中
1.3 妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん) 一幕
吉野川
1.4 さくら川 竹本連中
萩原雪夫 作
藤間藤子 振付
野澤松之輔作曲
後藤芳世 美術
2. 配 役
●鞘 當
名古屋山三 梅 玉
不破伴左衛門 橋之助
引手茶屋女房お京 芝 雀
●連 獅 子
狂言師右近
後に親獅子の精 幸四郎
狂言師左近
後に子獅子の精 染五郎
僧 遍 念 高麗蔵
僧 蓮 念 玉太郎
●妹背山・吉野川
太宰後室定高 玉三郎
太宰息女雛鳥 福 助
大判事清澄 吉右衛門
●さくら川
染 井 の 前 芝 翫
童女さくら 児太郎
小坊主柳珍 国 生
小坊主翠念 宗 生
筑慶上人 橋之助
3. 昼の部・話題と見どころ
鞘當 「恋のさやあて」といいますが、その語源がここに見られます。桜満開の吉原仲之町で、名古屋山三と不破伴左衛門の刀の鞘の末端が当りました。遊女葛城をめぐる男二人、あわや血の雨が降らんとした時、引手茶屋の女房が中に入ってことなきを得ます。梅玉、橋之助、芝雀が、様式美に富んだ歌舞伎らしさをたっぶりお目にかけます。
連獅子 昔、名僧が南唐の清涼山にある石橋を渡ろうとした時文殊菩薩の化身に会い、のちに獅子の舞う様子を見たという話を題材にした「石橋物」とよばれる舞踊があります。これもその一つ。前半は狂言師の親子がその石橋や、親獅子が仔獅子を谷底へ蹴落して鍛えるという故事をとりこみ、後半は二人揃って勇壮な獅子の姿となって「狂い」「髪洗い」と毛を振ります。幸四郎・染五郎の親子が踊るのが興味深く、松を描いた背景の格調高い「松羽目物」をご堪能頂けるでしょう。
妹背山婦女庭訓・吉野川 舞台中央を流れる吉野川の、上手が紀伊国、下手は大和国です。紀伊国背山と大和国妹山の領主は反目を続けて来ました。にもかかわらずそれぞれの息子と娘は相思相愛の中。紀伊国の領主大判事清澄(きよすみ)と大和国の領主の未亡人定高(さだか)は、逆臣蘇我入鹿(そがのいるか)から命じられた難問題をかかえて帰宅します。吉野川は客席まで流れているこころで、両花道が設けられ、吉野川の急流を間にした大判事と定高の出が見どころです。その後も背山と妹山と交互に話が展開し、互いの親子の情愛から悲劇へと転じる間、吉野川の流れがたくみに織りこまれている名舞台です。
女方の役の中でもことさら重要な定高を玉三郎が初役で、吉右衛門の大判事と梅玉の久我之助に混って、大きさ、肚、母の情をどう描くか興味津々です。初々しくいじらしい雛鳥は福助がこれも初役で演じる、21世紀の「吉野川」にご期待ください。
さくら川 能を土台にベテラン作者・萩原雪夫が芝翫のために書き、第20回大谷竹次郎賞を受賞した舞踊です。人買いにさらわれた娘を狂うまでに探し求める母親。幸いにも娘と再会し、わが家へ連れ帰ることにしました。それを見送る小坊主は、娘のよき遊び相手でした。桜吹雪の中の別れは、幸せの中にも一抹の寂しさがただよう名舞台です。初演と再演では勘太郎と七之助が演じた娘と小坊主を、今回はやはり芝翫の孫で、福助の長男児太郎と、橋之助の長男国生、次男宗生がかわいらしく演じます。
(出典 歌舞伎座発行のパンフレット)
4. 歌舞伎評
吉右衛門が完成品の大判事 歌舞伎座 「初春大歌舞伎 昼の部」
「吉野川」が今月一番。吉右衛門は、せりふ、姿、動きとも完成品の大判事だ。とりわけ言葉の裏に反対の感情を込めるせりふまわしや、ドラマの骨格の大きさを風景に託すせりふの喚起力は聴かせる。
二つの家の確執が、恋人同士の死を招く時代物。対立しているようだが実は大判事は息子久我之助(梅玉)を、定高(玉三郎)は娘雛(ひな)鳥(福助)を死なせてまで相手の子の命を助けようとする悲劇だ。
吉右衛門は強さとアイロニーを駆使したせりふ回しで悲劇の幕を開ける。久我之助に切腹を命じて「倅(せがれ)が首切る刀とは五十年来知らざりし」と悲嘆が深い。雛鳥の生首をひん死の息子の前に置き祝言をさせる「千秋万歳」の一言は、憂いがこもり圧巻。「花は三吉野」のせりふで、全山満開の桜がパーッと広がる。初役の玉三郎は、前半は強いせりふ回しでひた押しし、後半に母性を発露させバランスがいい。梅玉、福助ともはまり役だ。
幸四郎、染五郎親子が「連獅子(じし)」で息のあった所を見せる。染五郎に若々しさがはとばしる。
新年らしく梅玉、橋之助、芝雀らの「鞘當(さやあて)」と芝翫一家の「さくら川」がある。
26日まで。 (山本 健一)
(出典 朝日新聞−夕刊[昼の部のみ抜粋] 2002.1.19)
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[Last Updated 1/31/2002]