岡 寺


岡寺(おかでら 龍蓋寺[りゅうがいじ]) 西国33カ所の第7番札所

 この遺構の特徴は築地塀を用いないで、柱を3m間隔に立てた板塀でつくられており、奈良時代以前の宮殿の特徴をよく表している。東北隅には10m四方の井戸があり、宮廷の儀式に用いられたのだろう。
 最近の調査によって、この東側から『大津皇子(おおつのみこ)』などの木簡(もっかん)が出土したことなどから、上層部は天武天皇の浄御原宮(きよみはらのみや)、下層部は皇極天皇の板蓋宮(いたぶきのみや)であるという可能性が強くなっている。
 岡寺は、飛鳥にある寺院としては他の寺々と少し趣を異にする寺である。飛鳥寺、川原寺(かわらでら)、橘寺(たちばなでら)などとは、境内の様子や参拝の人々の顔に異なる雰囲気が見られる。
 この寺は、草壁皇子(くさかべのおうじ)の岡宮(おかのみや)を義淵僧正(ぎえんそうじょう)がもらいうけて寺にしたものであるが、西国33ヵ所の第7番札所として知られており、大和地方の代表的な厄除け観音として信仰を集めている。
 大きな石の鳥居をくぐって参道を上っていくと、右側に清流が流れ、茅葺(かやぶ)きの民家も残っており、門前町のような風情がある。300m程上ると急に坂がきつくなり、岡寺ももうすぐだ。この辺りには土産物屋や食堂が数軒並んでいる。
 ちょっとこの辺で一休みしてみたいのが『坂の茶屋』。気さくなおじさんとおばさんが、全国の若者に慕われ、「今度来るまで値上げせんといてや」という学生と約束したとかで、あまり値上げせずに頑張っている。坂の茶屋定食(700円)やわらび餅や葛切りが心がこもっていておいしい。
 もう一つ、ここの座敷の天井や壁には、各地から来た旅行者たちが書いた色紙がべたべた貼つてある。もう7000枚を越えて、どんどん増えるのを楽しみにしているようだ。落書帳も350冊以上たまり、久し振りに寄って自分の書いた落書きを見て、楽しんでいる旅行者もいる。こんな気さくな雰囲気が気に入って、寄っていく人が多い。
 [伝説]
 今からおよそ1300年以上も昔のこと、明日香には一匹の龍が住んでいて、次々と悪いことばかりして、村人たちを困らせていた。
 ひとたび龍が暴れると、滝のような大雨を降らせ、田畑は流され、家などつぶされてしまう。貧しい村人達はどうしようもなかった。
 このことを聞いた義淵和尚は、必死に仏様を拝んだ。すると不思議なことに、今まであんなに暴れ回っていた龍がすっかりおとなしくなった。和尚は、この時とばかりに龍を寺の池の中に入れて、再び暴れないようにと、大きな石を載せて閉じ込めてしまった。そんなわけで、村人たちもやっと安心して暮らせるようになった。
 龍に石の蓋をした池は、今も岡寺の本堂の前に残っていて、龍蓋池と呼ばれている。
 この時から、寺の名も龍蓋寺と呼ばれるようになったそうな……。
(出典 「明日香」 (株)編集工房 あゆみ)

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[Last Updated 11/30/2014]