ディジタル・エコノミー2000


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『ディジタル・エコノミー2000』(DIGITAL ECONOMY 2000)
米国商務省リポート 米国商務省[著] 室田泰弘[編訳]
2000年10月5日発行 東洋経済新報社

  目 次

1. 序 言
2. 本報告書の要約
3. はじめに
4. 目  次
5. 編訳者あとがき

1. 序 言
 商務省がIT革命とその経済的インパクトを扱った三番目のレポート、『ディジタル・エコノミー2000』を公表できることを喜んでいる。現在進行中の急激な経済変化を理解することは、困難な課題である。世界中の政府・研究機関で、研究者がこの課題に取り組んでいる。『ディジタル・エコノミー2000』は、こうした努力に対する重要な貢献であり、その進展度合いを示すものである。
 前回レポートを公表してから、一年が経過した。この間、専門家も一般人も、拡大し続けるe-ビジネスやIT財・サービス生産業の驚くべきダイナミズムが、経済新次元を開きつつあるという確信を深めた。ほとんどのエコノミストにとって、新次元の鍵となる指標は、過去五年間にわたる生産性の特別な上昇である。これによって、インフレ率低下と力強い成長という望ましい組合せが生じた。
 しかし多くの人にとって、変化のはっきりした証拠は、インターネットによって個人や企業間の電子的つながりがとてつもなく拡大したことである。現在世界で三億人がインターネットを使用している。1994年には、この数は300万人であった。今日、彼らはウェブ上で10億ページにアクセスでき、それは毎日300万ページずつ増えている。
 こうした数字だけが、起こっていることのすべてではない。われわれは、新技術の爆発的発展を目の当たりにしている。オープン・スタンダードの採用によって、世界中の人が新製品や新サービスを作り出し、それはただちに世界中の人々の手に入る。また、無数の新商売が出現している。たとえば電子市場は、売り手と買い手を国境を越えた世界市場で結び付ける。また、新技術を利用した顧客サービスから製品設計に至る企業プロセスの変化によって、企業の経営効率と即応性が改善した。
 本報告で示す数字は、完全ではない。現在国勢調査局は、B2C(企業対消費者)電子商取引(e-retailing)を調査対象とし、B2B(企業間)電子商取引に関しても、計測を開始している。IT革命の経済的影響を完全に理解するためには、電子商取引の定義や測定法を巡る厄介な問題の解決が必要である。
 今はっきりといえるのは、あらゆるチャンスが開かれていることだ。これを活かすためには、ITや電子商取引の革新が続くような安定的かつ誘導的な経済・法律の枠組みを作っていかねばならない。広帯域通信インフラの整備を促進することにより、アメリカ国民はインターネットによる最新サービスにアクセスすることができる。同時に、インターネットに対する人々の信頼を高めるために、プライバシー保護、消費者保護、セキュリティや信頼度の向上、知的所有権の保護などを進めていかなければならない。
 ディジタル・エコノミーの潜在能力をフル活用するためには、あらゆる人々と企業がこれに参加し、その発展に独自の貢献を行っていくことが重要である。
                                           商務長官 ウィリアム・デーリー

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2. 本報告書の要約
 アメリカ経済の拡大は10年目に入ったが、いまだに減速の兆候は見えない。労働生産性の伸びは、近年二倍になった。これは戦後の景気拡大期において、景気が頂点に達すると、生産性が低下したのと対照的である。さらに、この記録的な雇用増と低失業率にもかかわらず、コア・インフレ(変動の大きい食料とエネルギー関連を除いたインフレ率)は低水準にとどまっている。低インフレ下で成長が持続していることからすれば、アメリカ経済が、偉大な経済的繁栄と可能性をもたらす新時代に入ったのではないかという予感がする。これは、かつて電動モーターや内燃機関の普及がもたらした経済の新次元ときわめて似通っている。
 コンピュータ・同部品、通信機器のコストが大幅低下するとともに新時代が到来した。コンピュータ価格は、1987年から1994年にかけて、年率約12%で低下した。この数字でも大きいのに、1995年から1999年にかけては、なんと年率26%の割合で低下した。通信機器価格は、1994年から1998年(データが利用可能な最新年)にかけて、年率2%で低下した。
 IT価格の低下と、経済成長の持続によって、コンピュータや通信機器だけでなく、それらの機器の統合や能力拡大に役立つソフトウェアに対しても大規模な投資が行われた。企業のIT機器やソフトに対する投資は、1995年から1999年に、実質で2430億ドルから5100億ドルヘと倍以上に増えた。このうちソフトウェア投資は、820億ドルから1490億ドルヘと増加した。
 ニュー・エコノミーは、コンピュータ・ハードやソフトの発達・普及だけでなく、電子接続の迅速化や低価格化によっても促進される。とくにインターネットは、大企業と小企業がB2B電子商取引において、同じ土俵で戦えることを可能にした。これまで、大企業は電子商取引に、私的ネットワークをもっぱら使用してきた。しかしそれはコスト高なので、ほとんどの小企業はそれを効率改善の道具に使えなかった。しかし、すべての企業が取引や情報交換にインターネットを使うようになって、状況は一変した。
 企業は、サプライ・チェーンと販売チャンネルのオンライン化に取り組み、新たなオンライン市場に参加しはじめている。また、生産設計の共同化、在庫管理や顧客サービスの改善、管理費節約といった社内プロセスの改善に、ネットワーク・システムの利用を進めている。しかし、ディジタル・ビジネス革新はまだはじまったばかりである。全米製造業協会(National Association of Manufacturers)が行った最近のサーベイによると、アメリカ製造業の三分の二以上が、まだ取引の電子化を進めていないという。
 ITの進展とインターネットの普及によって、個人もさまざまな便益を受けている。2000年には、世界中でインターネットに接続する人の数は3.04億人に達する。これは、1999年の8割増しである。そして、はじめてアメリカとカナダのオンライン人口シェアは、世界の5割を切ることになる。オンラインで利用可能な情報量は、過去三年で10倍に増え、10億ページ以上となった。

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 多くの人々がオンラインに参加するにつれ、日々の活動にもそれが及ぶようになった。国勢調査局は、2000年3月にはじめて、B2C電子商取引小量の主要部分の公式推定を発表した。これによると、1999年第4四半期に、小売業のオンライン販売額は53億ドルに達し、これは小売り全体の0.64%を占める。人々は、インターネットを単に購買だけでなく、金融取引・ディジタル製品の配送、アフター・サービスなどに、ますます使いはじめている。
 ディジタル・エコノミーの活力は、IT産業に根ざしている。IT産業は、IT企業プロセスをサポートする財・サービス、インターネットならびに電子商取引からなる。成長と投資パターンの分析によると、IT産業の重要性が1990年代半ばから、急激に高まったことが見てとれる。この産業の全経済アウトプットに対する比率はまだ小さい(2000年で8.3%と推定)。しかし、1995年から1999年にかけて、IT産業のアメリカの経済成長率への寄与は、ほぼ三分の一に達した。
 さらに、IT関連財・サービスの価格低下によって、アメリカのインフレ率は抑制された。その値は、1994年から1998年にかけて年率平均0.5%に達し、インフレ率を2.3%から1.8%に低下させた。IT価格の低下は1990年代を通じて加速化した。すなわち、1994年にはその低下率は約1%、1995年には5%弱、そして1996年から1998年にかけては平均8%となった。
 IT産業はR&D投資の主要な源泉である。1994年から1999年にかけて、アメリカのR&D投資(実質)の伸びは年率平均約6%であった。ちなみに、それ以前の5年間の伸び率は0.3%に過ぎなかった。この成長の大きな部分(1995年から1998年の間で37%)が、IT産業によるものである。1998年には、IT産業はR&Dに448億ドルを投じた。これは、企業が技術開発に投じた金額のほぼ三分の一にあたる。
 IT産業の新規投資によって、アメリカの労働生産性の伸びは高まった。最近発表された六つの主要な研究の結論は、IT財の生産と使用によって、1990年代後半に生じた、アメリカ生産性上昇の半分以上が説明できる、というものである。IT産業のシェアが、民間企業所得の6%にすぎないにもかかわらず、こうしたことが生じた。この驚くべきてこ入れ効果は、企業が、ITハード資産価値の急激な陳腐化(すなわち減耗)を補うのに十分なだけの直接リターンを、それに対する投資から稼ぎ出さなければならない、ということの表れでもある。つまり、IT投資は、その短寿命の間に異常なほどの生産性を発揮せねばならない。最近の企業レベルの検討によると、IT投資は、補完的な組織変革のための投資と組み合わされると、もっとも効率的であり、それがなければあまり有用ではないという。
 公的データを用いると、多額のIT投資を行うさまぎまなサービス産業(保健、対企業サービスなど)で生産性低下が観察される。これはおそらく、これらの産業に対する公的な産出測定値が適切でないことを意味するのだろう。こうした測定値が改善されるまで、サービス産業の生産性に対するITの効果はなんともいえない。

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 1998年に、IT産業に従事した労働者数は、それ以外の産業でIT職業に従事している労働者と合わせて、740万人に達した。これはアメリカ労働者の6.1%を占める。IT労働力の伸びは、1990年代半ばに加速した。最も高い伸びを示したのは、IT機器の開発と使用に携わる職業であった。ソフトウェアとコンピュータ・サービス部門の雇用は、1992年の85万人から、1998年には160万人へとほぼ倍増した。同期間にこれらの職業で最も高い教育を必要とし、最高の給与を受け取る分野(コンピュータ科学者、コンピュータ技術者、システム・アナリスト、プログラマーなど)の雇用は100万人増加した。これは、92年の8割増しである。
 他方で、技術草新のテンポが速く競争が激化したため、IT雇用の不確実性が増している。IT産業のうち、コンピュータ、家庭用オーディオ・ビデオ機器などの分野では、仕事の数は減少した。また1998年に、IT産業の賃金は、全体として平均を上回ったが、熟練を必要とせず低賃金のIT関連職業も存在する。
 アメリカのIT産業は、疑いもなく世界一なのに、そのIT財・貿易収支が常に赤字(1999年で660億ドル)であるのは、皮肉なことである。その理由の一つは、アメリカのIT企業が、海外顧客に対し、アメリカからの直接輸出でなく、現地子会社を使ってサービスを提供するからである。1997年に、アメリカIT企業の海外子会社による、外国での販売額は1960億ドルに達した。ちなみに、この部門のアメリカの輸出(同年)は210億ドルである。同年に外国所有のアメリカ子会社によるアメリカ国内での販売額は110億ドルであった。したがって、アメリカのIT財の貿易収支が赤字だとしても、「販売収支」は、アメリカ側に860億ドルのプラスとなっている。
 ITは、景気拡大期において、成長を加速しただけでなく、次の景気下降を緩和する傾向を持つ。IT投資は、生産能力の拡大というより、革新を進める競争に勝つこととコスト削減を目的とするので、需要鈍化による影響を受け難い。さらに、在庫減に結びつくサプライ・チェーン効率を高めることにより、過去の不況を深刻なものにしてきた在庫効果を緩和する。
 1995年以降のアメリカ経済の力強い動きは、1973年から1995年にかけてのアメリカ経済や、他の工業国における最近の経済動向とは対照的である。歴史的に見ると、電力や電動モーターのような、根源的な技術革新の発生と、それがもたらす大きな経済的効果との間には、長いタイム・ラグがある。ITは世界中で利用可能だが、アメリカ経済は今日まで他国より大きな成果を、それからあげてきた。これは、ある程度、アメリカの適切な財政・金融政策、競争促進的な制度、リスクを恐れない金融・企業文化などによって説明できる。
 しかし、アメリカ国内でさえ、ITの普及は一様でない。コンピュータを保有し、インターネットに接続する家庭は急激に増えているが、多くのアメリカ人は家でオンライン接続できない状況にある。このディジタル・ディバイドといわれる影の部分は、とくに低所得層、教育程度の低い人々、マイノリティ・グループに属する人々に顕著である。こうした人々は、教育、仕事、家族やコミュニティとの交流などの貴重な機会を逃している。
 結論として、アメリカ経済は、高水準の持続可能な経済成長と生産性の伸びを特徴とする新次元に突入しつつある。これを示す多くの兆候が見受けられる。それは、急速な技術革新、IT価格の急激な低下、アメリカ産業の多くの分野におけるIT・財サービスに対する投資ブームが組み合わさることにより実現された。
 コンピュータと通信産業を分析した結果、急速な技術革新と大幅な価格低下は今後も続くことが予想される。さらに、IT分野以外の企業も、日々、ITに基づいた組織や経営形態の改革を発表している。これは、そうした企業が、IT・財サービスに、さらに投資を行うことの利点を確信しているからである。こうした動きが大規模でかつ明確な分野としては、自動車、航空機製造、エネルギー、小売り産業などがある。こうした産業は、新たなインターネット基盤の市場統合を宣言しており、これは、ITインフラに対する大規模な投資の継続を意味する。こうしたことは、ディジタル・エコノミーのほんのはじまりを示すものにすぎない。

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3. はじめに
 本報告は、商務省による、ディジタル・エコノミーに関する三回目の年次報告である。前2回のタイトルは、「The Emerging Digital Economy」(ディジタル・エコノミーの勃興)であった(翻訳は『ディジタル・エコノミー』『ディジタル・エコノミーU』いずれも東洋経済新報社)。今回の報告書では、タイトルが変わった。それは、ディジタル・エコノミーとディジタル社会が「勃興」しはじめているのではなく、既に存在するものとなったからである。アメリカの経済・社会は間違いなく、ディジタル基盤の技術革新によって新次元に突入した。それは、新たな働き方、新通信手段と利用方法、新しい財・サービス、コミュニティの新形態などを生み出している。
 本報告は、前二回のものと同じく、IT(情報技術)産業の経済的成果と成長とインフレに対するインパクトを測定し、電子商取引の新次元の概略を説明する。今回はじめて、IT部門の強力なダイナミズムと新たなe-ビジネスや電子商取引の普及が、持続する広範な経済パターンの一部であることが、ある程度自信を持って主張できるようになった。ITにともなうスピードの速い革新、IT関連技術革新によるアメリカの生産性や成長の大幅上昇は今後も続くだろう。
 ディジタル・エコノミーが、1970年代、80年代の長期生産性や成長力を上回る伸びを実現できるという主張の核心には、IT独自の特性がある。すなわち、こうした技術によって、情報と呼ばれる、生産の各分野や生活の各側面に共通する新たな管理手法や資源の利用方法が生まれつつある。たとえば、冷蔵庫やジェット機の導入に比べ、IT革新は、経済全体に影響を及ぼし、それは全プロセスに適用される。したがって、能力拡大とプロセスや情報伝達の改善等から得られる直接的利益が重なり合う。
 また、多くのIT市場は、経済学者が「ネットワーク効果」と呼ぶ特性を備えている。つまり、その技術が普及するほど、その価値は高まることになる。ITと自動車を比べてみよう。自動車の場合、ユーザーにとって自動車を持つことの価値は、他の5000人もしくは100万人の人が同じ車種を保有するかどうかにかかわらず、基本的に変わらない。しかし、コンピュータ・OSやグラフィック・ソフトの場合には、その価値は、ユーザーが増えるほど高まる。なぜなら、ユーザーが増えることによって、ディジタル通信や相互交流の可能性が高まるからだ。こうした革新が普及することによって、全体の生産性上昇は、各分野の生産性上昇の単純和より大きくなる。
 ディジタル・エコノミーにおけるIT革新の普及は、成長に別な形で影響を与える。たとえば、IT革新は企業の設備投資を増やす。過去7年間、企業の設備投資は記録的な伸びを示した。IT投資はその伸びのほぼ三分の二を説明する。
 またディジタル・エコノミーは労働者の技能を改善する。多くの企業で従業員がITを使いこなせるように訓練する必要が生じるからである。これが、アメリカの労働者が、過去20年ではじめて、実質賃金上昇を獲得した理由の一つだろう。さらに、上で述べたネットワーク効果を持つIT市場は、少数の製品や企業によって支配される傾向にあり、これによって規模の経済性が働くことになる。

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 おそらくもっとも重要なのは、継続する革新の積み重なりが、この時代のITの発達と利用の特徴となっていることである。生産性上昇は、労働者の情報処理速度の改善を実現する技術の普及だけによるものではない。それに加えて、新技術を活用しようとする企業は、経営方法を見直し、組織変更を進めることによって組織革新を実現する。
 多くの企業は、新技術によって、新たな財サービスの開発が可能になることを見出した。それから、さらに新たな革新が生まれる。さらに、こうした可能性が広く認識され、企業から企業へと、このプロセスが広まることによって、新たな情報処理迅速化の需要が発生する。これがIT革新をさらに進める。その土台は、18カ月ごとに半導体チップの能力は倍増するというムーアの法則である。かくて、イノベーションの波は、さらにうねりを膨らませることになる。
 これを示す先端的な例は、インターネットである。チップ能力の規則的かつ大幅な能力向上は、インターネットの技術的基盤である。そのインターネットは、まず無数のソフトウェア革新をもたらし、次いで企業の運営方法を変えた。それによって、さらに企業や個人が利用できる財・サービスに革新が生じた。
 IT部門を取り巻く、ハードとソフト革新の複合体によって、情報が経済活動における価値創造のもっとも重要な基盤となった。情報から価値を創造するプロセスこそが、経済のどの部門においても、ディジタル・エコノミーの究極の基盤である。ディジタル・エコノミーははじまったばかりであり、本報告は今起こっていることの素描にすぎない。
                                  商務次官(経済事象担当) ロバート・シャピロ

4. 目  次

序言
本報告書の要約
はじめに

第T部 新次元IT革命のインパクト[米国商務省リポート]
第1章 ITとニュー・エコノミー………………………………………………… 3
第2章 電子商取引 − ディジタル・エコノミーの最先端………………… 13
    ニュー・エコノミーと消責者…………………………………………… 15
    B2C(企業対消費者)電子商取引………………………………………15
    オンライン価格付け…………………………………………………… 17
    電子化された情報…………………………………………………… 20
    ディジタル政府…………………………………………………………25
    オンライン・コミュニティ…………………………………………………26
    ディジタル・ビジネスの勃興……………………………………………27
    B2B電子商取引……………………………………………………… 28
    市場の場の転換………………………………………………………29
    e-ビジネス・プロセス………………………………………………… 34
    ネット化の進む世界……………………………………………………36

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第3章 IT産業………………………………………………………………………………47
    IT価格低下によってアメリカのインフレが抑制された……………………………… 50
    IT産業は1995年から99年にかけて実質GDP成長率のほぼ三分の一を寄与…… 53
    ソフトウェアを含むIT機器の利用…………………………………………………… 55
    IT産業の技術開発(R&D)投資………………………………………………………60
    結  論………………………………………………………………………………62

第4章 ITはアメリカの生産性へどれくらい寄与したか……………………………… 67
    マクロ経済レベルでの評価…………………………………………………… 67
    「コンピュータ生産性パラドックス」解決法の合意ができはじめている………73
    産業レベルでの評価………………………………………………………… 75
    企業レベルの検討結果……………………………………………………… 79

第5章 IT関連労働力の変化………………………………………………………  87
    IT産業…………………………………………………………………………88
    IT職業…………………………………………………………………………92
    IT労働市場の不均衡………………………………………………………… 98

第6章 IT財・サービスの貿易……………………………………………………… 107
    IT財の貿易……………………………………………………………………108
    ITサービスの貿易……………………………………………………………109
    アメリカーIT企業とその海外子会社との貿易……………………………… 111
    アメリカと外国子会社による販売……………………………………………112
第7章 何が「ニュー・エコノミー」で新しくなったのか……………………………… 117
    長期見通しが出されはじめている……………………………………………109
    景気循環に対するIT投資の影響………………………………………………111
    なぜアメリカで、なぜ今か………………………………………………………127
    生産性の加速化と職業移動……………………………………………………131
    ソフトウェア以外に、国民所得に含まれる無形財投資はあるか………………132
    生産性パラドックス解決のためにサービス産業の産出尺度の改善が必要…134
    ディジタル・ディバイド−インターネット・アクセスが低いコミュニティ…………  136
    結  論…………………………………………………………………………139

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第U部 IT社会の基本法則【編訳者解説】
 第1章 ディジタル・エコノミーの経済法則………………………………………147
    ディジタル・エコノミーの特徴………………………………………………147
    収穫逓減と逓増法則………………………………………………………148
    収穫逓増とディジタル・エコノミー……………………………………………151
    収穫逓増と経済依存性………………………………………………………154
    経路依存性の例………………………………………………………………157
    ディジタル・エコノミーと「カジノ・テーブル」…………………………………… 159

第2章 ディジタル・エコノミー時代の企業戦略………………………………………167
    成功したIT企業…………………………………………………………………167
    先進的IT企業の戦略……………………………………………………………171
築3章 IT社会と工業化社会………………………………………………………… 179
    両者の比較…………………………………………………………………… 179
    ITで変わるエネルギー・環境問題…………………………………………… 186
築4章 企業動向から見たディジタル・エコノミー……………………………………199
    IT企業35社の選択…………………………………………………………… 199
    各企業の比較………………………………………………………………… 204
    企業のパターン分けと株価の決定要因……………………………………… 211
第5章 最先端IT企業三五社 − ケーススタディー…………………………………219
    1 アカメイ テクノロジー………………………………………………………220
    2 アマゾン・コム……………………………………………………………… 222
    3 アメリカ・オンライン………………………………………………………… 224
    4 アリバ……………………………………………………………………… 226
    5 エキサイト@ホーム………………………………………………………… 228
    6 ブロードコム…………………………………………………………………230
    7 チェックポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ………………………………232
    8 キセリバー・ラーニンク・ネットワーク…………………………………………234
    9 CMGI…………………………………………………………………………236
    10 コマース・ワン………………………………………………………………238
    11 シスコ・システムズ…………………………………………………………240
    12 ダブルクリック………………………………………………………………242
    13 デル・コンピュータ………………………………………………………… 244
    14 eベイ………………………………………………………………………246
    15 EMC…………………………………………………………………………248
    16 インフオシス・テクノロジー…………………………………………………250
    17 インクトミ……………………………………………………………………252
    18 インテル……………………………………………………………………254
    19 i2・テクノロジーズ………………………………………………………… 256
    20 ジュニパー・ネットワークス…………………………………………………258
    21 マイクロソフト…………………………………………………………………260
    22 ネオン…………………………………………………………………………262
    23 ネットワーク・アソシエーツ…………………………………………………… 264
    24 オラクル………………………………………………………………………266
    25 フライスライン・コム………………………………………………………… 268
    26 フォーン・コム……………………………………………………………… 270
    27 カルコム………………………………………………………………………272
    28 レッドハット……………………………………………………………………274
    29 チャールズ・シュワブ………………………………………………………… 276
    30 シリコンバレー・パンクシャー………………………………………………… 278
    31 ソレカノトロン……………………………………………………………………280
    32 スフラッシュ・テクノロジー・ホールディングス…………………………………282
    33 トリクイント・セミコンダクター………………………………………………… 284
    34 ベリタス・ソフトウェア………………………………………………………… 286
    35 ヤフー…………………………………………………………………………288

    編訳者あとがき

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5. 編訳者あとがき
 本年(2000年)6月に発表された、米国商務省リポートの『ディジタル・エコノミー2000』(Digital Economy 2000)を翻訳する機会を得た。前二回(1998年、99年)の報告書と異なるのは、タイトルから「勃興する(emerging)」という枕詞が外されたことである。
 アメリカにおいてディジタル・エコノミーがはっきりとした形で浮かび上がり始めたのは、90年代半ばのことである。したがって1999年時点までは、識者のなかにもまだその到来が本物かどうかを疑う声が強かった。しかし2000年になると、アメリカ経済がIT革命によって間違いなく新時代に突入したことが誰の目にも明らかになった。このため報告書のタイトルから「勃興」という、やや控えめの形容詞が外されたのだろう。
 従って本報告書は、アメリカ政府によるディジタル・エコノミー到来宣言、もしくはそれをいち早く達成した国としての勝利宣言ということができよう。
 確かにアメリカ経済は90年代後半から現在に至るまで絶好調を誇っている。経済成長率は高まり、失業が低下する一方でインフレは抑えられている。今日、これがIT革命の果実であることを疑う人はいない。こうした現状を元にして、アメリカはすでに次なる課題に取り組み始めている。
 本報告書は、こうした諸課題に対するアメリカの取組みを論じている。この点も前二回の報告書とはやや色合いを異にしているといってよい。
 では、次なる課題とは何か。
 第一は長く続いた好景気をどのようにしてソフト・ランディングさせるかという当面の課題である。最近の連邦準備理事会の動きなどを見る限り、それはかなりの成功を収めているといつてもよい。本書においても、過去の景気パターンとの比較を行うことにより、この間題が論じられている。景気パターンは明らかに変わり始めているようである。
 第二はディジタル・エコノミーに乗り遅れた階層をどのようにして引っ張り上げていくかという問題である。これはディジタル・ディバイドの問題と呼ばれているが、企業・地域・教育機関が連携することにより、その解決に向けて積極的な対応がとられ始めている。本書では、その取組みに関する現状報告が行われている。とくにシスコのようなIT企業の積極的関与が興味を引く点である。
 第三はディジタル・エコノミー急拡大に対応するための、法律や国際的枠組みなど制度面における改革である。この面でもアメリカは世界のリーダーシップを取ろうとしており、いかなる方策が必要かが簡単に論じられている。
 第四は急激に変わりつつあるディジタル・エコノミーの動きを正確に捉えることである。これは経済新時代において、政府が政策を誤らないための大前提でもある。そのための具体的な取組み、たとえば設備投資にソフトウェア投資を組み入れたり、電子商取引に関する国勢調査局のサーペイ実施などが本書で示されている。たとえば実質ソフトウェア投資は、99年時点で約1500億ドルに達しており、設備投資を論じる際に無視しえない位置を占めていることが、わかる。
 こうしたことからすれば、本報告書は、IT革命の波にもまれながら、アメリカヘの追いつきを図る日本にとっても参考になる点が多いと思われる。

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 さて、商務省リポートはIT革命のマクロ面、つまりアメリカ経済全体に対する効果を主として捉えることに重点を置いている。したがって企業動向などミクロ面からの検討は最小限に抑えられている。これは政府のリポートとしては当然のことだろう。
 しかしながら、IT革命の主役は、それをリードしているさまざまなIT企業である。そこで第U部では、第T部のマクロ分析を補う意味で、アメリカを中心とする新興IT企業を35社取り上げ、その財務データや特色を紹介することによって、IT草命の実像を描くことを試みた。ようやく日本の新聞にもシスコ・システムズやダブルクリックのような企業名が出るようになったが、その実態はあまり知られていないようだ。第T部が社会構造分析とすれば、第V部はそれを彩る登場人物の紹介といってもよいだろう。
 アメリカ新興IT企業の際だった特徴は、経営者が若くかつ高度な専門家であることだ。彼らはリスクを取ることも恐れず、またその専門知識を武器にしてIT革命の急速な進行に乗り遅れまいとしている。
 経営者の若さと専門化、これは日本企業にとって大きな課題を投げかける。
 MITのブライニョルフソン教授の研究によると、在来企業がIT企業として成功するためには、思い切った組織改草が必要であり、それなしにIT投資をしてもほとんど効果がないという。日本では、IT革命への対応というと、やれパソコンを従業員に配ったとか、インターネットに接続できるようにしたなど、どれだけ金を投じたかが注目されがちである。しかし、IT革命が真に根付くためには、在来企業の組織変事が必要とされる。
 日本企業は、こうした変革に対応できるのだろうか。第U部では、アメリカの新興IT企業が取っている戦略を紹介するとともに、その裏付けともいえる収穫逓増法則に関しても解説を試みた。
 最後に、本書は第T部が米国商務省リポートの翻訳であり、第U部はそれを補足・解説するために編訳者が書き下ろしたものであることを断っておく。
 本書の作成にあたっては、前二回と同様、東洋経済新報社出版局の井坂康志氏に多大な苦労をかけた。米国商務省リポートの発表が2000年6月であったから、本書の9月刊行を実現するためには、かなりのスピードを要した。これを可能にしたのは、氏の奔走によるものといってよい。また槌屋治紀氏(システム技術研究所)には専門的見地からのチェックで大変お世話になった。岡島恵美子さん(湘南エコノメトリクス)と越国麻知子さん(同、法政大学大学院)には、表の整理や内容のチェック、グラフ作成をしていただいた。
 なお、計測に関する技術的説明は商務省リポートのアペンデイックスにあるのでそれを参照していただきたい。
 ご意見・ご感想などは編訳者のホームページ(http://www.economate.com)あてに送っていただいても結構である。
 本書が前二回のリポート(『ディジタル・エコノミー』『ディジタル・エコノミーU』) 同様、IT革命の波にもまれる日本企業の指針策定に少しでも役立てば幸いである。
                                          2000年8月  室田 泰弘

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[Last Updated 9/29/2001]