哲学の門をたたく



 『哲学の道場』は、哲学の入門書として画期的だ。中島義道が書いた本の中でも、最高傑作かもしれない。少なくともこの本の3年前に書いた『哲学の教科書』よりもはるかに存在意義がある。

 なぜならこの本には、どういう人に哲学が向いていて、どういう人は哲学に踏み込まないほうがいいかが、しっかり書いてあるからだ。こういう観点から書かれた本をいまだかつて見たことがない。哲学の2文字を他に置き換えれば、その分野の入門書となるので、シリーズ化だって可能だ。

 おびただしい哲学入門書が、「哲学はやさしい」というウソを語っており、それに腹を立てて「哲学は難しい」と宣言してしまう中島氏のヘソの曲がりぐあいに拍手を送りたい。

 ところで中島氏が作った「大森先生を囲む会」のメンバーを見て驚いた。池田清彦池田晶子永井均などが名を連ねている。何の脈絡もなく読んできた本の著者が、みな知り合いだったなんて。この人たちが指し示すのは、ただ一点。大森荘蔵である。
  • 哲学の道場 中島義道 筑摩書房 1998 ちくま新書159 NDC104 \660+tax
(2000-07-28)