2003年6月29日 2003サロマ湖100kウルトラマラソン     T.K

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第4章 いざ、スタートラインへ
大会当日はAM1:30に起床。眠い目を擦りながら、身体中にチタンテープを張り、足にしっかりと
ワセリンを塗りこみ、乳ズレ防止のテープを貼って、5本指ソックスとチタンハーフスパッツを履いた。
おにぎりと黒糖饅頭を食べ、オレンジジュースを飲んだ。さて、あとは上に何を着るべきか? 
ここで悩んだ。寒いのか?暑いのか?この時点では、全く判断がつかなかった。とりあえずゼッケン
は、半袖Tシャツに装着(着替え様と合わせて2セット)長袖Tシャツを着て、スタート地点へ行き、
寒そうなら重ね着。暑くなりそうなら長袖を脱いで、半袖1枚でいくことに決めた。それから前日の
天気予報では確立は低いものの雨の可能性もあり!と言う感じだったので、レインコートも持って
いくことにした。

ホテル出発時には、hiroさんに見送っていただいた。彼は50kmの部(午後11時スタート)なんで
ゆっくりと眠れるのだが、わざわざ深夜に起きてくれたのだ。レースに影響しなければ良いが…
と思いながらも嬉しかった。『じゃ行ってきまーす、ゆっくりと寝てくださいね』と声を掛けてホテルを
出発した。スタート地点行き送迎バスの出発場所(大会のゴール地点、常呂町民センター)までは
ホテルから約35km。車で30分くらい。当然の事ながら外は真っ暗。それでも常呂町民センターに
到着した3時頃には気持―ち空が明るくなり始めていたような??? 3時出発のバスに乗り込み、
スタート地点へ移動開始。距離にして約60km、時間にして約1時間。この間に残りの朝食を食べて
仮眠。この僅かな?移動時間も貴重なのでした。

スタート地点となる湧別町体育館には4時過ぎに到着。スタートまであと1時間。天気はなんと雨。
それほど強くはないが、霧雨が降り続いていた。しかも寒い。吐く息が白い。暑さばかり気にして
いたのに、こんなに寒くなるとは… 雨を凌ぐ為に体育館の中に入って仕度を整えることにした。
この寒さで走る格好も迷わず決った。上は長袖Tシャツに半袖Tシャツの重ね着。さらに雨に濡れる
事を避けて、透明なレインコートをその上から着こんだ。サングラスは不要。これで走る格好は決った。

あとは中間地点に預ける荷物とスペシャルドリンク。まずは、スペシャルドリンク(30km,65km,
80km)を預けた。前回は身体に良いもの?と言う事で、グリコーゲンリキッドを水に薄めたものを
預けたが、似たような効果を持つものは各エイドにあるので、それなら飲みたくなるもの、楽しみに
したくなるようなものを預けようと思い、北海道で購入したドラキュラの葡萄を30km地点、コカコーラ
を65km地点、やはり北海道で購入した白い恋人ドリンクを80km地点に預けた。ちょっとだけ、
今から楽しみ???

中間地点(54km付近の緑館)に届けて貰う荷物には、着替えTシャツ(ゼッケン付半袖,長袖)、
替え用の靴下、シューズ、ワセリン、冷却スプレーなどを預けた。腰につけるポーチには、チタンロ
ーションと塩、アミノプロを入れたが、空ボトルは持たずに54km地点行きの荷物に入れた。この天候
ならエイドで給水していけば、脱水にはならないだろうし、もし急速に天候が回復しても、54km以降で
持てば何とかなるという判断からだった。これにて一応の仕度が済んだ。体育館内では、ケソさんと
再びあって話しをした。練習量は少ないが体調は万全との事、天気も暑くはなりそうにないので…
とのコメントからして、かなり行けそう!という雰囲気が感じ取れた。一方の私はというと、この寒さが
重く心にのしかかっていた。この後雨が強く降りだし、風でも吹いて気温が下がったら今年の青梅の
ように… それで100kmも走るなんて考えたら、恐ろしくなってきた。気持ちはちょっとブルー???

スタート10分前になったので、荷物を自衛隊のジープに預けて、スタートラインへ向った。ここで
としおさんと合流。お互いの健闘を誓い合い、スタートの合図を待つ事になった。天気は相変わらず
の雨。フルマラソンやハーフマラソンだったら絶好のコンディションと言えるかもしれないが、100km
となるとどうか? 

第5章 行ってらっしゃーい!行ってきまーす!!
6月29日(日)AM5:00 第18回サロマ湖100kmウルトラマラソンのスタートが切られた。こんなに
たくさんの人が100kmも走るの?と思うくらいの長蛇の列が続く。この中にはウルトラの第一人者
サロマンブルーゼッケンNo.1丹代さんの姿もある。また自分の母親よりも年上で元気印のウルトラ
女性ランナーじゅんこさんの姿もある。100kmなんて仕事より楽と言う地元の漁師、住吉さんも、
昨年悲願のサロマンブルー入りを果たした斉藤親分さんの姿もあった。ホノルルマラソンのように
有名タレントの姿はないものの、ウルトラの達人達は揃いに揃っている。豪華メンバーの揃い踏みだ。

スタートゲートをくぐる瞬間、カメラに手を振って100kmという、とてつもなく長い旅に足を踏み入れた。
ウルトラマラソンスタート時の声援は、『行ってらっしゃーい!』が多い。ランナーは『行ってきまーす!』
と応える。1年前の想い出がよみがえってきた感じがした。私のレベルでは競うと言う感じは全く無い。
出来る事なら、このままの配列でみんな揃ってゴールしたい。参加者全員が駄目なら、せめてサムズ
の仲間達とは一緒に… しかしながら、100kmという距離はそんな甘さを許してはくれない。自分の
リズムで、自分のペースで走らないと、克服するのは難しい距離だと思う。調子の良い波、調子の悪い
波、それらは人によって訪れる時期が異なるからだ。調子の良い時にペースを抑え過ぎてしまえば、
変なところに力が入って却ってスタミナを消耗し兼ねないし、調子の悪い時に無理してペースを上げれ
ば、致命的なダメージを負いかねない。自分のリズム(ペース)を守り、身体の発するサインには、
正直に応えて行く。これが今回の作戦?だった。

最初の5kmは、32分で入った。スタートゲートまでのロスが2分近くあったので、実質は30分。キロ6分
の安全ペースで行けている。走り出してしまえば雨はそんなに気にはならないし、寒さもそれほど感じ
ない。ただ路面が濡れていて、轍に水が溜まっているのが気掛かりだった。靴を水に濡らし、靴下まで
もが濡れてしまえば、足の裏がふやけてしまい、そんな状態で長い距離を走ったら、足の裏の皮が
剥がれかねない。その点が心配だった。序盤はキャップやでんでんむしさんと何度か会った。こんな
感じで、ずーっと行ければ、楽しい楽しい100kmになりそう? そんな感じがしていた。コースは北海道
特有の田園地帯を真っ直ぐに伸びるながーい直線。この時、頭の中を駆け巡っていた唄は、松山千春
の『大空と大地の中で』だった。

♪果てしない大空と 広い大地のその中で
   いつの日か 幸せを 自分の腕でつかむよう

♪歩き出そう 明日の日に ふり返るにはまだ若い
   ふきすさぶ 北風に とばされぬよう とばぬよう
   こごえた両手に 息をふきかけて
   しばれた体を あたためて

♪生きる事が つらいとか 苦しいだとか いう前に
   野に育つ 花ならば カの限り生きてやれ

ちょっと寒いということもあって、この唄が妙にぴったりと来ていた。
位置的にはスタート〜10kmそのあたりだった。まだまだ体力的には余力十分(当然だが…)
ただちょっとトイレに行きたげな雰囲気は漂っていた。

第6章 ターニングポイント(竜宮台折り返し)
北海道特有の田園地帯を抜けると、コース両脇に林が現れ、さらにしばらく進むと右手にサロマ湖が
見え始める。去年はこのあたりで『また来年も来てね−』という声援があったのだが、今年は無かった。
この付近でコースにちょっと問題発生。道路の左側車線がいちおう、コースとして使われているのだが
その左側車線の真中に、等間隔で緑色のコーンが並べられていたのだ。これの意味する事は?

恐らく、このコーンの左を走行しなさいよ!という事なのだろうが、この付近ではまだ列がそれほど
バラケテいないので、コーンの左側だけでは通行しきれない。左側車線全てを使って走っている状況
だった。そんな状態だったもんだから、時折現れるコーンに気づかず、躓く人が続出。私も何度か、
ヒヤっとした。中には転倒する人もいたりして… どうなんでしょ?このコーンは… 後で聞いた話しでは
作家の夜久さんもこのコーンの被害に遭い、転倒してしまったとか。幸いにも大事に至らず、サロマン
ブルーへ王手となる9回目の完走を果たされたようで良かったが、これが原因でリタイヤなんて事に
なったらねぇ… 私は何度かヒヤっとしたので、その後はコーンから大きく離れた位置を走行するよう
にしたので、餌食にはならずに済んだ。

距離にして13km付近だったかな? いよいよトイレタイムが近付いていた。空いていそうな公衆トイレ
を探しながら走っていたのだがなかなか見つからなかった。そこで女性ランナーがいる手前、非常に
失礼だとは思いながらも立ちシ○ンで済ませることにした。出来るだけコースから見えにくい場所を
探して、シャーっと事を済ませた。ロスは数十秒だったと思う。これでスッキリ。過去の例からして、
レース中に1度済ませれば、後はレース後、数時間経っても出ないという事が多いので、これでもう
トイレの心配は不要。と思っていたのだが、この日は寒かったせいかこの後、同じような事を何度も
繰り返す羽目に…

トイレを済ませてしばらく進むと、竜宮台の折り返しが近付いてきた。この大会は折り返しが2回あるが、
2度目の折り返しは90km付近ということで、会うことができないランナーもいる。ここの竜宮台は序盤
なので、すべてのランナーとすれ違うことの出きる唯一の場所なのだ。かすかにサロマ太鼓の音が
聞こえ始めた。その音が徐々に大きくなっていく。そして折り返しポイントの手前にサロマ太鼓を勇ましく
叩く子供達が見えた。太鼓の音に勇気付けられて、遥か彼方のゴールへ送り出された。折り返しポイン
トのちょっと手前でキャップとすれ違った。この距離なら、1度くらいは追いつくかな?と思ったが、
そのまま、行けども行けどもキャップらしき姿は見えなかった。あとで分かった事だが、キャップは折り
返し付近のトイレに寄っていたそうだ。それなら納得…

その後、トミーさん、としおさんとすれ違った。としおさんはすれ違いざまに『ひる寝してました』とにこやか
に話しかけてくれた。残念ながらでんでんむしさんには気づかなかったので、前にいるのか、後ろにいる
のか見当がつかなかった。次に会うチャンスはワッカ。果たしてそこまで行けるかな?心の中では、
小さな自信と大きな不安が共存していた。

位置的には10km〜20kmそのあたりの事だった。まだ体力的に余裕はあったが、レインコートの裾が足に
まとわりつくのがちょっとうっとうしく感じ始めた。少しづつ疲労が積み重なってきていたのかも? 
そう言えば腹減ったナー、20kmまでのエイドは飲み物だけで食べ物がなかったのでした。

第7章 スペシャルドリンク第1弾 ドラキュラの葡萄
20kmのエイドステーションが訪れた。ここでようやく食べ物が現れる。朝食はホテルでおにぎり1個と
黒糖饅頭(大)、バスの中でさらにおにぎり1個を食べていたのだが、折り返し付近からすごく腹が減って
きていた。そんな状況だったので、このエイドが待ち遠しくてしかたなかった。早速バナナを一つ口に入れ、
飴をポーチに仕舞い込んだ。ここまでのラップは、10km通過が1:02:05,20km通過が1:58:16とキロ6分を
少し切るという非常に良い?ペースで進んでいた。『このまま行けたらサブ10。行く訳無いか!!』と自問
自答して走りつづける。20km過ぎ、太鼓のようなものを叩いて応援しているおじさんがいた。そう言えば
去年もいた。『あと80km、頑張れー!!』 出来れば残りの距離はまだ考えたくないんですけど… 
そんな心境だった。

25km付近からコースはまた田園地帯に戻る。平坦な一本道。遥か左手方向には逆方向に走っていく人影
が、雨に霞んで見えていた。個人的にサロマのコースは、好きなポイントが多いのだが、ここは去年もそう
だったが、あまり好みではない。こういう時、声援を贈ってもらうと本当に助かるのだが、ここは民家が
少ないので応援も少ないのだ。こうなったら牛でもいいから鳴いてくれー!といった心境だった。それでも
時々現れる応援の方は、雨の中、熱心に声援を贈ってくれる。そういった声援には応えるようにしようと心
に決めた。本当にあり難い。

そういえば、去年はこのあたりで、じゅんこさんのすぐ後ろを走っていたナー!なんて事を思い出した。数名
の仲間とずーっとお喋り。走っている事を忘れてしまっているかのように、楽しげに、喋っていた。その声が
また大きいもんだから、みんな聞こえていて、その内容に思わず笑ってしまう事もあった。今年はどの辺に
いるんだろう? この退屈な場所で、あの、じゅんこさんの元気な話し声が聞こえたら、どれだけ気が紛れる
だろうか。そんな気がして、前後を見渡したが、結局その姿は見えなかった。

となると次の楽しみは、30kmのスペシャルドリンク、ドラキュラの葡萄だ!。早く来ないかな−…と思って
いると、ようやく前方に信号が見えてきた。ということは左折するのはあの信号の手前。左折すればスペシ
ャルエイドが… そして、なかなか近付かなかった信号が急に大きくなり始めた。そして道路を左折して
程なくスペシャルエイド登場。ボランティアの高校生が、私のゼッケンを素早く見つけて差し出してくれた。
去年も感じたが、本当にこの大会に協力してくれている高校生,中学生には頭が下がる。良い子達ばっかり
なんだよね。自分の高校時代を思い出すと、果たしてこんなに協力的になれるかどうか?実に疑問だ…(汗)

肝心のスペシャルドリンク(ドラキュラの葡萄)はと言うと、なかなか良かった。スポーツドリンクの酸味(甘味)
に何となく飽き始めていたので、この微炭酸飲料の葡萄味はなかなか新鮮な感じで良かった。また気温が
低い事もあり、冷え具合も兆度良かった。これで気温が高かったら、ホットドラキュラの葡萄となり、そうなると
また違った味わいになりそうだが… 結局3分の2くらいを飲み、残りを腰のボトルポーチに収めて走ることに
した。次にこのボトルを見た時、恐るべき光景になっているとは気づかずに…

位置的には20km〜30kmのおはなし。まだ体力的に多少の余裕はあったが、徐々に足が重くなり始めている
ような?関節の動きが鈍くなっているような?気がしたので、30kmのエイド直後、1度立ち止まって、ストレッ
チをしてみた。でも何も変わらなかった。

第8章 オホーツク国道を数珠になって走る。
30kmのお楽しみエイドが終了して、またもや田園地帯を走る。方角的には折り返す感じだが、実際は道が
違うので、ランナー同士のすれ違いはない。ブッシュマンのように滅茶苦茶、目が良ければ遥か彼方を
逆方向に走っている人が誰だか分かるかもしれないが、普通の人には人影があるなーくらいにしか見えない。
そんな状況の中で本当の30km地点を迎えた。(実際30kmのエイドと呼ばれている所は500mくらい手前に
ある。) 通過タイムは2:56:23。良し、良し良い感じ。益々、サブ10ペースだ。このペースで緑館(54km)
まで行けるといいんだけどなー!行きたいなー!なんて考えていたら風が吹き始めた。左前方からの向かい
風。寒っ… これは風除けを探さねば!ということで、体格の良さそうな人の集団を見つけ、その右後方に
陣取る事に成功した。しばらくは、この中で息を潜めて、おとなしくしていようと心に決めた。 
風除けにしてるな!と悟られ無い様に… 

そしてそんな状況でしばらく耐えていると、35kmエイドが現れた。35kmのエイドでは、ウィダーインゼリーを
手にして、しばらくは吸いこみながら歩いてみた。このあたりで平坦な田園地帯とお別れ。ここから60km
付近までは上り下りを繰り返すオホーツク国道を走ることになる。国道に出たところでゼりーパックが
ぺったんこになったのでゴミ箱に捨て、ランニング再開と思ったら、右膝に違和感が… 痛い!!という訳では
ないのだが、ちょいピリッ!でその後は関節にひっかかるような感じが… 座禅した後、足が痺れるに似た
ような?兎にも角にも、まともには走れそうになかったので、少し様子をみてみようと、超スローで走ってみた。
すると、徐々に違和感は解消されて行った。歩いてしまった事で、体温が下がり、膝の関節に影響が出た。
と考えることにした。その後走りつづけていても、特に問題は無かったので、『まぁそう言う事にしよう』と
結論付けた。

国道に出ると走れるスペースがぐっと狭まる。これまでは全面通行止(一部片側)だったので、道路を広く
使えたのだが、国道では基本的に路肩または歩道を走るような感じになる。もっともここまでくると、横に
広がらなければならないほどの集団は無いので、特に問題は無いのだが。前のランナーを抜かそうと思え
ば抜かせるくらいのスペースは充分ある。しかし何故か、みんなあまり追いぬく事をしない。一列に整列
して、同じペースで走りつづける。30km過ぎて同じあたりにいるようなランナー同士なんで実力的にもほぼ
同じ、リズムもペースも似たり寄ったり。そんな状況が一列の数珠繋ぎ状態を作り出した。そんな状況に
気づいた直後、後を走っていた二人組の会話が聞こえた。A:『なんか凄く楽じゃネェ?』 B:『おう、楽だな』
A:『みんな同じペースで走ってるからリズムが良くない?』 B:『凄く良いな。』 まさにその通り。会話に
加わりたいくらいだった。前のランナーを抜かそうとする必要もなければ、後のランナーに道を譲る必要も
無い。ただ前のランナーの背中をみつめていれば、それで距離は進んでいく。妙な一体感がそこには
あった。このまま、どこまでも!と思っていたが、この数珠繋ぎ集団は、40kmのエイドで壊れてしまった。
でもこの5kmはちょっぴり得した気分???

位置的には30km〜40kmの出来事。足の違和感発生ということで、そろそろ疲労の影が濃く見え隠れし
始めていた。そりゃそうだ、40kmと言えば、フルマラソンならもうすぐゴールだもんね。疲れが無い方が
おかしい? ここからが本当のウルトラだ!!

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