☆特集・「鬱病」とはどんな病気か

「うつ」と「鬱病」の違い


 落ち込んだり、憂鬱な気分になることは誰にでもあることですが、そのような「うつ」と「鬱病」との違いはどこにあるのでしょう。

 鬱病も憂鬱な気分や億劫感を主な症状としますが、単なる憂鬱感と違い、本人がとても苦しんでいたり社会的な機能が阻害されてしまい、そのために専門的な関わりが必要となった状態です。
 外見からは大したことがないように見えても、本人は「消えて無くなりたい」といった強い自己否定の気持ちや罪悪感を持っているため、自ら死を選ぶ危険があります。

 次のような症状が10日以上続くようであれば、鬱病の可能性を疑い、専門医を受診してください。

鬱病に見られる精神症状★
感情面

・ゆううつ、さびしい
・物悲しい
・気分が落ち込む、沈む
・不安やイライラで落ち着かない
・焦燥感で、いてもたってもいられない
欲動・意志面

・意欲・気力がない
・根気がない
・じっと閉じこもる
・厭世的になる
・口数が少なくなる
・自殺を企てる
思考面

・頭がボーッとしてさえない
・考えがまとまらない
・自信がない
・決断力が鈍る
・罪業・貧困・心気妄想がある

増えている軽症の鬱病
 近年は「軽症鬱病」と呼ばれる、軽症化した鬱病が増えてきています。
 
軽症鬱病は、どちらかと言うと社会適応のよかった人がかかりやすく、より本人の苦しみが周囲に見えにくくなってきています。

 軽症鬱病は、薬物を中心とする治療によって比較的容易に回復すると言われています。
こころあたりのある方は、必ず早めに専門医の診断を受けるようにしてください。

身体症状が表にでる仮面鬱病
 鬱病が原因なのですが、頭痛、動悸、めまい感など様々な身体症状が表に現れて、鬱の症状が覆い隠されている場合があります。
 このような鬱病は「仮面鬱病」と呼ばれています。
 体の症状が強く自覚されるため、患者も家族も体の病気と思いがちで、内科や脳外科など精神科以外の診療科を受診しているうちに、鬱病が進んでしまう場合があります。

 病院で治療を受けても体の症状がなかなか改善されない場合は、鬱病の可能性もあることを記憶にとどめておいてください。

★仮面鬱病の身体症状★

全身性
・全身倦怠感
・疲労感
・脱力感
・入眠障害
・熟眠障害
・早期覚醒
・身体違和感

脳神経・自律神経系
・頭重感
・頭痛
・めまい
・肩こり
・頸部痛

消化器性
・食欲不振
・悪心

心血管性
・動悸
・胸部圧迫感
(『誤解だらけのうつ病〜「心の風邪」はこうして治す』 河野友信 監修 立風書房より)

○ここに紹介する病名は、すべて鬱病につけられたものです。鬱病はきっかけがなくてもかかりますが、
この病名のようなことがきっかけになることもあります。

昇進うつ病


・昇進により仕事の内容が変わることなどにより、職場への適応がうまくいかなくなる

サンドイッチ症候群


・中間管理職が上司と部下の板挟みになり、苦悩することが引き金に

引っ越しうつ病


・新しい環境になじめなかったり、長年の夢が叶って荷下ろしをした途端に抜け殻に

上昇停止症候群


・会社人間が中年になり、これ以上出世できないことに気づいて虚しさに捕らわれる

燃え尽き症候群


・一所懸命取り組んできたが努力の成果が現れないことで、無気力感にかられる

スーパーウーマン症候群


・キャリアウーマンが、職業人・妻・母親のどれもを完璧にこなそうと努力を続け、燃え尽きてしまう

空の巣症候群


・子育て終了後、自分にはもはや何も残されていない気がして、空虚感に捕らわれる

退職症候群


・退職前に退職後の生活に不安を感じたり、退職後に自分の居場所を見つけられずに鬱になる


(余談)

 確か以前に聞いた話ですと、人は「家と職場の間に、隠れ家や秘密基地があるとバランスが取れる」というのがあります。
 確かに、家と職場の往復だけでは、人間的にも幅の狭い面白みのない人になってしまうような気がしますし、周りの人がすべて自分を知っていて、しょっちゅう関わってくるというのでは落ち着きませんね。

ただし、ここで言う「隠れ家」や「秘密基地」というのは言い換えれば

「通い慣れた喫茶店」「行きつけの飲み屋」という意味であり間違っても

「改造人間を使って世界征服を企んだり、
この法治国家の日本国内に独立国家をぶっ建てる」
ということでは決してありませんので念のため・・・。