Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜
第159夜
遠くて近きは隣県の仲 (前)
復活ゴダイゴの仙台公演があったので、午後を休みにして行ってきた。
いきなり話が逸れるが、秋田−仙台は意外に遠い。
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まず列車だが、現在は在来線の直通列車がないから、「こまち」で行くことになる。こ
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れが片道 2 万円である。
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後は車だが、高速バスは 4 千円とお得である。しかし午後の便は 3:40 までなくて、
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仙台着は 7:20. コンサートは 18:30 スタートなので、とうてい間に合わない。
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しょうがねぇから自分の車で行くことになる。1 時に出れば 5 時には着く。高速料金
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が 5 千円。
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帰りが難物で、コンサートが終わって 9 時に出発、深夜 1 時頃に帰り着いたわけだ
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が、路面が凍ってるというのに、後からあおられるので非常に恐かった。生還できた喜
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びに浸っているところである。
さて、仙台の丸善で『仙薹方言集 (田村昭、宝文堂)』という本を買ってきた。いわゆる
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俚言集である。
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この本、どうも使われている語が難しいのである。「台子釜 (だいしがま)」「芥場」「木
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心」というのが俚言の解説として載っているのだが、肝心の意味が分からない。「木心」
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なんて読み方すら分からないのである。
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奥付を見て分かったのだが、これ、難しいのではなくて古い単語のようだ。初版が昭
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和 26 年で、その後、何度も改訂されている。つまり昭和前半の俚言もあれば現代の
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俚言もある、ということなのであろうと思われる。その証拠に、「一厘玉」を「エズリンダマ」
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と発音する、などと書かれている。
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それぞれの俚言がいつ頃のものなのかが不明なので、ちょっと扱いにくい本である。
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また、「アイグ −歩く」という風に一語一語で解説しているので、ニュアンスに関する
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情報も落ちている。例えば、青森の「アズマシイ」に「気持ちよい」を当てているが、こ
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れでは「リラックス」なのか「爽快感」なのかわからない。正確には前者なわけだが、一
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語であれば「ここちよい」あたりにするべきだったろう。
この中から興味深いものをいくつか取り上げてみる。
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色んな推理を展開するが、使用場面が分からないし、ネイティブに確認したわけでもな
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いので、的外れである可能性が高いことは言っておく。
あどさりべご (青森)
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蟻地獄のことだそうだ。
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「後去り牛」なんだろうか。角があるあたり、牛に似ていると言えないこともない。
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いきなり青森が出てきたが、巻末に東北の方言が付録として取り上げられているので、
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それもあわせて五十音順に紹介する。
アメリカ (岩手)
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何だと思います ?
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この本によれば、秋田では「アメリカツケギ」とも言うらしいのだが。聞いたことないけど。
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「マッチ」のことだそうだ。
あめる (岩手)
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「腐る」。
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最近では、「ねじ山がつぶれてしまった」とか「ドライバーを差す切込みを削ってしまった」
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とかいうことを「あめる」と言うことがある。
いずだりかずだり (仙台)
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「いつでも(いい)」ということである。前に、「なんだりかんだり」というのを取り上げたこと
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があるが、この系列の表現。
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「なんでもかんでも」と同じような形で成り立っている。
えすけん (仙台)
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ジャンケンのこと。俺の小さい頃「そーれ、えす!」という掛け声でやっていたのだが、
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仙台にも「えす」系があったわけだ。それにしても「えす」って何だ ?
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