Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜
第118夜
最高と最低で測れないもの
天気予報に「最高気温」と「最低気温」という単語が現れる。
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冬はこの値に敏感になる。気温が氷点下になると水道が凍る虞があるから元栓を閉
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めておく必要があるし、路面が凍ればいつもより早目に出掛けなければならない。夏場
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と違って、生活に直接、影響を与えるからだ。
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ところで、朝の予報では、どうやら「最高気温」は「その日の内の最も高い気温の予想」
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で、「最低気温」は「その朝の最も低かった気温」であるらしい。
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これで何がまずいかというと、北国ではよくある話なのだが、寒波が昼間に襲来するた
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め、朝 7 時が最も暖かく、それ以降、気温は下がる一方、というケース。
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「最高気温」は朝 7 時の気温だからいいとして、「最低気温」はその朝の気温だから
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「最高気温」と似たり寄ったりの値になる。しかし、日中はもっと寒くなるわけだ。昼間で
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も水道の心配をしなくてはならないのかもしれない。最低気温だけを見て判断するとエ
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ラい目にあう可能性がある。
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無理やり繋げるなら、北国においては「最低気温」が最低の気温の値とは限らない、と
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いう日本語の問題がある、ということになろうか。
路面が凍れば、通常の靴では歩けない。凍ってなくとも、積雪があれば駄目だ。
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この、滑りにくいような加工をしたカジュアルな履き物、言ってみれば雪道用の重装備
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スニーカーを、我々は「スノトレ」と呼んでいた。今の若い連中がなんと呼ぶかは知らな
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いが、俺が中高生の頃はそうだった。
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「スノ」は「雪」だろうが、「トレ」ってなんだ？ 「トレーニング」系の単語なんだろうが、
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なんで「雪＋トレーニング」？
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話を脱線させると、この「トレーニング」という単語は、体操着にも使われる。俺が中
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高生の頃は、体操着の下半分を「トレパン」と呼んでいた。上半身は「トレシャツ」。高
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校生の頃には、だいぶ「ジャージ」に変わっていたかもしれない。
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この「トレパン」が、どうも田舎でしか使われない表現らしい。正確には、東京では
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「ジャージ」と呼んでいた、ということなのかもしれないが。地域的な偏りなのか、東京
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での表現が伝播してきただけなのかは調べていない。
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仙台では「ジャス」と言う。
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生徒手帳なんかに「体育の授業では、ジャス着用のこと」なんて書かれているらしい。
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それも、仙台市だけ。仙台市民は、これが方言だとは気づいてないようである。全く
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方言臭がしないから、当たり前と言えば当たり前だ。
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語源も不詳で、「ジャージスーツ」ではないか、という節が今のところ有力。
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この辺、学校絡みの表現が方言と重なることが多い、という以前の話とつながる。
話を冬に戻そう。
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「通勤と雪かきは似ている。しないとどうしようもないが、それによって何かを得られ
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るものでもない」と言った人がいる。明言だと思う。
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この雪かき、「雪よせ」「雪はね」「雪ほり」とも言う。
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「雪よせ」は「雪寄せ」だから解説の必要はあるまい。
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「雪はね」は、スコップなどで跳ね上げる様子からついたものであろう。これは、道具
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の名前としても使われる。
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「雪ほり」は「掘る」んだから、ちょっとニュアンスが違うか。
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集めた雪は、どっかの広場に集めたり、川に落としたりする。これを「雪捨て」「雪投
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げ」と呼ぶ。
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この辺の単語は、形だけを見ると方言には見えないが、雪国にしかない。方言と言っ
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ていいだろう。
雪国では、雪かきのために億の単位の金を使う。天から降ってきたものが、個体であ
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るがために流れていかない。それを移動するためだけに億の金。各自治体は毎年それ
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専用の予算を組むのだが、一部を除けば金が余ってる自治体はないから、１月半ばで
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使いきったりする。
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札幌のような都会では、空き地が減って雪をおく場所が無くなっているそうだ。なんで
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空き地が無くなるかというと、空き地だった場所に住宅が建ったりするからなのだが、建
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物があるということは、そこに降った雪も余所に持ってかないといけないわけで、既に悪
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循環の様相を呈しているらしい。
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これ、四国とか沖縄みたいに慢性的な水不足を抱えた場所にもってく方法は無いもんだ
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ろうか。真剣に考えてみているのだが。
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