Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第95夜

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 9/15 は敬老の日である。
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 会社にこの日が誕生日の人がいる。からかってやろうと思っていたら、今年は 9/14
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を休むと4連休になるので、休暇を取っていていなかった。あんまりつまらんことは考え
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ない方がいいようだ。
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 こういう誕生日は覚えられやすいので、得であるとは言えると思う。高校生時分の知
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り合いで 3/2 が誕生日の女性がいるが、俺は「ひな祭りの前日」と認識してしまったの
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で、この人のことを忘れない限り、誕生日を忘れることはないと思う。
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 10/10 生まれだと、「十月十日」との連想でからかわれることがあるようだが、落ち着
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いて数えてみると、10/10 の 10 ヶ月と 10 日前は 12/1 であることに気付くはずだ。
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 尤も、「十月十日」というのは太陰暦での話らしいのだが。
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 そんなわけで、「年」の話。


 子供は「わらし」である。「童」と書くらしい。
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 まぁ、ほぼ「子供」と同義のようで血縁を必要としない。「俺の子供」というときにも使え
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るし、「子供の声はかん高い」というときにも使える。
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 指小辞の「」がついて「わらしっこ」となることもある。
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 蛇足だが、忙しくて大騒ぎ、という意味の「おおわらわ」は「大童」と書く。
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 これは昔の戦(いくさ)で、武士の髷(まげ)がほどけてしまって、遠目には子供みたい
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な格好(金太郎の頭を想像して欲しい)になっている様子をさす。
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 調べてみて驚いたのだが、時代劇でやんごとなき女性などが自分のことを「わらわ」と
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言うが、これは「童」の派生語で「」と書くのだそうだ。
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 更に「妾」という字を漢和辞典で調べてみると、「立」は針の省略で、もとは入れ墨をさ
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れた女の奴隷を指す字であったらしい。で、自分を卑下して言う言葉に「妾」をあてたん
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であろう。知ってみると、すさまじい話ではある。


 「子供達」は「わらしがだ」となる。
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 この、「達」に相当する「がだ」は、「この人がだ」「社員がだ」「おらがだ(私たち)」など
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など、人をあらわす単語なら何にでもつく。
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 やはり「方」なんであろう。これがなぜ、複数を意味するようになったのかは不明だ。
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古語辞典には「組。仲間」とある。関係ありそうな気もするが。
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 そう言えば、時代劇などでは「かたがた、では参ろうか」などという言い方をするよう
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だ。これと同じなんであろう。「方々」になると、「人々の尊敬語」とある。これだと納得。
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例によって、価値の低下という奴である。
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 標準語では「あなたがた」位にしか残ってないように思う。「おまえがた」とか「わた
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しがた」とは言えないことだし。


 「わらはんど」というのは津軽だったっけ。


 長じて、「あね」「あに」となる。「ねっちゃ」「にっちゃ」、「あねちゃ」「あにちゃ」などの
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バリエーションもある。
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 必ずしも兄弟・姉妹関係を意味しない。「そこのお姉さん、僕とお茶しませんか?」と
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いうときの「お姉さん」と一緒である。
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 こういう場合、「お姉さん」「お兄さん」であって「妹さん」「弟さん」でないのは何故だろ
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う。更に言うなら、兄・姉には「お」がつき、弟・妹にはつかないのは何故だ。
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 ま、後者は長幼の序ってやつだろうとは思う。
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 前者も、その延長線上だろうか。ああいう使い方は、あまり親しくない人に対する呼
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び掛けだから。


 結婚して子供をもうけると「おが」「おど」となる。結婚しなくても、ある程度の年になる
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とこう呼ばれるようにはなる。この辺の詳細はに扱ったので割愛する。
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 この先、「ばば」「じじ」と年を経るにしたがって、段々、罵倒したり馬鹿にするときに
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も使えるようになる。長幼の序はどこに行ったのだ。


 この「年を取る」という奴だが、二通りの言い方がある。
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 一つは、「としいぐ」。多分、「行く」んであろう。
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 もう一つは「としょる」。標準語には「年寄り」という名詞しかないが、秋田弁には「年寄
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」という動詞が残っているのである。
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 どっちを多く使うか、と聞かれると困る。


 聞いた話だが、国民年金は、月に均して 20 万程度の収入があると支給されないんだ
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そうである。ということは、退職後、例えば嘱託かなんかでそこそこの収入があると貰え
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ない、ということだ。
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 老後の生活の基盤を確立すると損をする。なんか変じゃないか。



使用した辞典(参照順)
『角川新版古語辞典』(1989) 角川書店
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『旺文社漢和辞典』(1990) 旺文社
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第96夜「山形弁の本(後)」

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