Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第40夜

調査したい!



 地元の秋田に U ターンしてきて 3 年目、色々と秋田弁に関して気づいたことがある。
 しかし、気づいたはいいが、その背景やら何やらが全く不明なのである。
 当地・秋田ではとっくに終わっているが、東京などの田舎の方では今日が夏休み最後の日らしいので、それにふさわしく、調べたいことの話をしてみようと思う。

 それは、「〜たくらいにして」。
 例えば、
「もっと給料がよかったら、こんなアパートじゃなくてキレイなマンションに住みたいわよねぇ。床はフローリングでぇ、広い台所があって。横の小窓には花なんか飾ったくらいにして。憧れちゃうわぁ。」
 という風に使う。「〜たぐらいにして」とも言う。
 この例文からも分かるように、実質的な意味はないようである。敢えて言えば、昔、流行った「〜したりなんかしちゃったりして」というような感じであろう。このフレーズを取り除いてしまっても意味伝達の上では問題ない。
 特徴的なのは、必ず動詞の過去形が先行することである。上の例にならえば、「*飾るくらいにして」とは言わない。
 俺が高校生だった 10 数年前には聞いたことがない。俺が上京した後に使われるようになった表現であろう。
 秋田では、若い人が使う
 FM で若いパーソナリティが使っているのを聞いたことがあるが、「〜たくらいにして」の前後は標準語だった。方言だという認識はない様である。語形から考えて、そう思うのも無理はない、という気はするが。

 これについては、@niftyの<日本語フォーラム>で、質問したことがある。
 宮城の人から反応があって、「昔から使われている」ということであった。年配の人が使っているという話だから、随分と古い表現なのであろう。他にも 2・3 個所あたったのだが、何も反応がなかった。
 実は、その後で、宮城出身・古川在住の義弟が使っているのを聞いたので、その時に確認すればよかったのだが、何分、酔っていたのでそこまで気が回らなかった。
 残念ながら岩手や山形の人からの情報はないので、どういう風に伝播したのかは不明である。そもそも伝播したものかどうかの確認も取れない。
 最近、秋田に流入したのだとすれば、宮城から鬼首を通って、というルートは、ちょっと考えにくいのだが…。

 ところが、だ。
 義弟の妻、早い話が俺の妹だが、彼女が「高校時代に聞いたことがある」と言うではないか。南秋 * 方面の人が使っていたので、そっちの方言だと思っていたそうだが…。
 なお、彼女は俺より 4 つ下なので、俺が上京して 1〜4 年後の間の話である。

 何らかの形で調査すれば分かりそうな気がするのだが、俺には実現不可能。
 この謎、なんとか解く方法はないものだろうか。


注:
Map of Akita Prefecture  以前も少し触れたが、「南秋 (なんしゅう)」というのは、「南秋田郡」
のことである。

 南秋田郡 (黄色) は、秋田市 () の北側にある。ちなみに、北秋田
郡 (水色) は南秋田郡の西側から北部まで広がっている。

 秋田県南部は「県南 (けんなん)」とよばれる。混同しないように。
(
)


"Speak about Speech" のページに戻る
ホームページに戻る

第41夜「調査したいこともうひとつ」へ

shuno@sam.hi-ho.ne.jp