最近、文法用語が飛び交っているようだが、そこはまぁ、言語のことについてしゃべる場なので
あきらめてもらいたい。
今日は指示代名詞。
何かを指し示すときに使う言葉だ。近称とか遠称とか不定称とか呼び分けたりもする。
大雑把な例で言えば、「これ」「それ」「あれ」の順番に遠くなる。「どれ」に至ってはどこにあるのやらわからないのだから、無限遠か。
ごく一部にしか残っていないけれども、実は「か」なんてのもあるのだ。落語じゃないけれども、「山の彼方の空遠く」という有名なフレーズ。これは、今では「かなた」と読むが、昔は「あなた」であった。
字をみればすぐ思い出すだろうけども、第三者は「彼」か「彼女」。「あっち側」ということで「彼岸」なんて言ったりもする。
ま、そんなような単語の話だ。
まずは「
あれ」系。
近い順に「
こい」「
そい」「
あい」「
どい」。
「
こえ/
そえ/
あえ/
どえ」「
これ/
それ/
あれ/
どれ」とも言う。
別に何の変哲もない訛りのようだ。
A「どいに する?」
B「こいで いんでね」
A「そいだば 駄目だ」
前に、「ある」が人に対しても使われるという話をしたけれども、「
あい/
あえ/
あれ」も第三者を指す言葉として使われる。陰口をたたくときに多いような気がする。
「彼」→「あれ」の変化が、「かなた」と「あなた」との関係と絡めていけるかと思ったりもする。
でもまぁ、うーむ、標準語でも使うか…。
大きく変わるのが「
あれくらい」系。
「
こんけ」「
そんけ」「
あんけ」「
どんけ」
「なに、どんけ貰ってくるがど思ったったけ、そんけばっかりが
(おや、どれくらい貰ってくるかと思ってたら、それっぽっちか)」
とは言っても「くらい」が必ずしも「け」になるわけではない。「バケツの水が凍ってしまうくらい寒い」を「
*バケツの水が凍るっけさび」とは言わない。
最後に「
あんな」系。
「
こんた」「
そんた」「
あんた」「
どんた」。
「な」が「た」に変化している。
これまた
最近、「様な」が「
いんた」であるという例を挙げたが、関連性がありそうでなさそうで。こっちの方は「いん」の正体がわからないとなんとも言えないが。
A「』…ってこんたごどまで 言わいでやー」
B「なに、そんたこどまでが」
A「まさが、あんたごど 言うどは 思わねがっだ」
C「なに、あいだば 人どご馬鹿にするどって なんたごどでも 言う
(いやぁ、あの人は、人を馬鹿にしようとして、どんなことでも言うよ)」
おっと、最後のは新出単語。
原則的には「こそあど」はきれいに対応するのだが、「どんな」には「
なんた」も使うことができる。
「いっぺ あるども なんとす(沢山あるけどどうする)?」
「あー、なんたなでも いい(えー、どんなのでもいい)」
ところが「どれ」に相当する「
*なれ」とか「どれくらい」の「
*なんけ」なんて単語はないのである。「どんな」に対して「
なんた」、「どう」に対して「
なんと」が存在するだけである。
「
なんた」が「何た」ではないかと想像するのは簡単だけれども、この数例しかないとすると、ちょっと断定は危険だろう。
最後に 5W2H。
when | いづ |
where | どご |
who | だれ/だれ/だい |
what | なに |
why | なして |
how | なんとして |
how much | なぼ/なんぼ |
「
なんと して」は「どう やって」と対応すると考えれば特に不思議はあるまい。
「
なぼ/
なんぼ」は、別に秋田に限った表現ではないが、「いくら」に相当する。
「いくらなんでも」は「
なぼなんでも」となる。
この辺にも「ど」と「な」の対応が見られる。「なんた」はこっちの系列の単語なのかもしれない。
この話も回を重ねるに連れて、わからないのが増えてきた。
近県の例があるといいのだが…。
なかなかに難しいものではある。