Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜



第991夜

がんづぎなびぱんびん (後)



 10/23 放送分の「妄想ニホン料理」国内編に借りた文章、後編。
 お題は岩手から「がんづき」。
 字はこうなってたが発音は「がんづぎ」だったと思う。
 ヒントは以下の通り。
1. 漢字で書くと「雁月」
2. 味は雁の肉に似ているとも言われる
3. 小昼(こびる)の定番
 挑戦するのは宮古島の人たちだったのだが、「小昼」って説明なしでわかったのだろうか。解答 (調理) 過程で言及がなかったが、「それ、おやつじゃねぇだろう」って解答だったので、忘れられてたのかもしれない。
 掛け声は「作って (つぐって) みてがんせ」。

 と言われても、まず、雁がわからない。そりゃそうだろう。食ったことがある人なんてそうはいねぇと思う。
 一組目は、麩を使って円盤状の生地を作り、宮古島では一年中取れるというニラなどの野菜を入れ、最後にヨモギ(ふーちばー))を乗せる。これを蒸してから焼き、月桃 (げっとう) の葉にのせる。
 月桃については、に蚊帳のことを取り上げたときに触れたが、こないだ那覇の土産物屋で見た。

 二組目は、雁から「サシバ」という鳥を連想。宮古島に 10 月ごろに渡って来る鳥らしい。猛禽類に見えたが、タカ科とのこと。
 アカマチという深海魚をチョイス。標準和名は「ハマダイ」、関東では「オナガ」と呼ばれる由。
 ここで「沖縄の魚は脂がのってないと思われがち」という発言。そうなの? 暑いからだろうか。深海魚だから脂がのってる、と続いたところを見るとそういうことだろうか。
 で、これを島豆腐と一緒にすりつぶす。にがりの代わりに海水を使った「うぷす豆腐」というものである由。ナレーションだが「すり鉢で当たる」という言い方はなんだか中途半端。
 あと、このすりつぶしたものを丸めるのだが、これを「まるめる」と発音。語り手 (濱田マリ) の個性というには逸脱し過ぎじゃないだろうか。
 丸めたやつをサラっと揚げて並べ、そこに海藻やゴーヤー、ヘチマの酢の物などを添え、オオタニワタリという山菜や赤オクラを刺して翼に見立てる。
 このシリーズ見てて思うんだが、日常の料理なのに時々こういう凝った一品を仕上げる人がいる。やっぱりプロとしてのプライドが黙ってない、ってことなんだろうか。金沢の時は金箔とか銀箔とか出ちゃったもんな。
さいが!」というのは、「どうだ。これだ」みたいなことだろうか。

 だが、これは小昼に食べるもの。正解は、要するに蒸しケーキである。
 卵・牛乳・黒糖・はちみつ・酢・小麦粉・重曹を溶き、そこにクルミとゴマを入れて蒸す。それだけ。
 黒糖で黒くなった生地に浮かんだクルミとゴマが、夜空の雁に見える、というわけだ。
 正解を見せられた宮古島の人たちの、納得いかない、って表情が印象的。

 が、これがなんと、宮古島の「あふ」という料理と同一なんだそうである。面白いなぁ。
 想像だが、企画の発端はこれじゃないんだろうか。

 ゴリが、岩手にも黒糖あるんですか、と驚いていたが、それに対する説明はなかった。
 一応、確認すると、「黒糖」「黒砂糖」はサトウキビから作るもので、基本的に沖縄・鹿児島あたりの産物である。だから、その疑問は正しい。でも、北国でだった店に行けば売られてはいる。
 で、雁月のレシピを調べてみたのだが、横手のは「砂糖の部分は黒砂糖を使う人もいるそうです」としている。見たところ、着色のための材料は含まれていない。
 日清製粉のサイトでは醤油を使うようなことが書かれているが、砂糖については「黒砂糖や玉砂糖(ハチミツと粗糖を煮詰めてつくる再製糖)」とある。
 上白糖のように精製されていないものを使うので黒っぽくなる、ということなのではないか。黒糖が手軽に入手できるようになってからは、色も付けられるし、ってことで黒糖を使うようになった、というところかなぁ、と想像する。

 宮崎−那覇は一日一往復だが、那覇−宮古島は五往復。石垣島は七往復。どちらもさほど苦労せずに行けそうだ…と、財布に優しくない発想が出てきたところでおしまい。



"Speak about Speech" のページに戻る
ホームページに戻る

第992夜「あるあるワイドふたたび (前)」へ

shuno@sam.hi-ho.ne.jp