Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜



第978夜

交通安全秋田弁川柳 15 (前)



 毎年恒例、県生活環境部 県民生活課主催の交通安全秋田弁川柳コンクール
 今年は異変が起こった。
 漸減傾向ではありながら、例年 220〜210 句辺りだった応募総数が、なんと 1/3 強の 80 句に激減したのである。
 何が起こったのだろう。
 秋田の高齢者人口が減ったのか、それとも秋田県民の交通安全に対する意識が低下したのか。
 応募状況を見る限り、地域的な傾向は見られない。都市部での減少が大きく見えるが、それはもともと応募数が多かったからであろうし、逆に、農村部での減少幅が小さく見えるのは、もともと応募数が少なかったからだと思われる。全体として減っている、という感じ。もともと数人だったところは現状維持だが、大方は半分ないし 1/3 に減っている中、八峰町の 7 人が 0 ってのは目立つ。
 だとすると、告知方法に問題があるんじゃないか、ってところだと思うのだが、目下、秋田県在住ではないから、どういう告知がされたのか全く分からないのでなんとも言えない。大ニュースがあったから吹っ飛んだ、ということもないだろうしなぁ。秋田魁新報に載らなかった、とかそういうことしか想像できない。
 これまで 0 を守ってきた大潟村から二人参加している。藤里町はまた 0 になってしまったが、上小阿仁村・東成瀬村は依然として不参加継続中。
 年齢層を見ると、70 代がなんと 1/4 に減っているのが目を引く。80 代が半減、60 代が 2/3 である。この年齢層に何かあったのか。以前は地域の句会がまとめて応募することがあったが、それがなくなった、とか。
 ところで参加資格、65 歳以上だと思ってたけど、92 歳が上限なのね。なんでだろう。

 さて、川柳の方。

最優秀賞
反射材 おれだ命のお守りだ
(反射材 私たちの命のお守りです)
おれ」は女性でも使うので「私たち」という訳は正しい。なお、投句者は女性である。
おれがだ」という言い方もある。
 個人的には、「お守り」っていう語には、「気休め」「実効性のないもの」というニュアンスを感じるので、反射材について使うのはどうかと思う。
 そういや、宮崎市全体がそうなのかどうかは知らないが、俺の勤務先近辺は 200m に一基くらいの割合でしか街灯がないので、20 時すぎに退社すると辺りは真っ暗である。徒歩通勤だから、そのおかげで事故を起こす、ってものでもないが、よく歩道から車道に降りるときに見当を間違って足をグキっとやる。
 百均で懐中電灯を買って持ち歩こうか、と思ったこともあるのだが、ずっと忘れている。なにかで配られた反射材を持ってたはずで、それをつけて歩こうと思ってこないだ秋田に帰った時にアパートで捜したのだがなかった。引っ越しで大掃除したときにでも捨てたか?

優秀賞
わげつもり そのうぬぼれが事故のもと
(若いつもりのうぬぼれが事故のもと)
 まったくその通りである。広めの道路で、信号のないところを突っ切ろうとする人がいるが、「そのスピードじゃ渡りきれねぇだろ」と思うことがある。
「事故」は「じご」だが「」は濁音。鼻濁音にすると「事後」などになる。
 2009 年に同趣旨の句がある。
 で、思ったのだが、県民生活課が過去のコンクールを抹消するのは、同じ句があるかもしれない、なんてことは気にしないで応募してください、ってことなのかもしれないな。文学賞じゃないんだし、趣旨は交通安全、繰り返しも意味があるわけだから――とたまには弁護してみる。基本的に、ないことにする、ってのはよくないことだと思うけども。

佳作
飛び出すな 次の青まで びゃこ待で
(飛び出すな 次の青信号までちょっと待ちなさい)
びゃっこ」じゃねぇかと思うのだが、なにせ秋田弁はシラビーム方言なので促音が落とされるのもやむを得ないか。
 信号無視と飛び出しは微妙に異なる事象のような気がするがまぁいいや。
 緑色なのに青信号と言うのはなぜ、というのは時々聞く。古い日本語では、あのあたりの色も「青」って呼んでたんだよ、ってことで納得してたのだが、よく考えると、緑色って言葉よりも信号機の方が後だよな。
 調べてみたら信号機が初めて設置されたのは昭和五年、85 年前だ。法律的には「緑色信号」だったが新聞が「青信号」と呼んだ、という説が有力。でも、なんで信号が「青」っつったかについての説得力ある回答が見当たらない。

 つづく。



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