Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜



第979夜

交通安全秋田弁川柳 15 (後)



 県生活環境部 県民生活課主催の交通安全秋田弁川柳コンクールに借りた文章、後編。

気づげでげ このひと言が 大事だべ
(気をつけていきなさいね この一言が大事です)
大事だべ」の訳が「大事です」なのにはちょっとひっかかる。「大事でしょう」じゃないのかな。
 この「でしょう」は推量や未来ではなくて、言い聞かせる感じ。「大事でしょ」でもいい。
「大事です」に対応するのは「大事だす」ではないか。
気づげでげ」には違和感がある。秋田市育ちの俺としては、「気つげでげ」がしっくりくる。投句者は横手の人。

まず守れ あだの命は あだの手で
(とにかく守りなさい あなたの命は あなたの手で)
 このコンクールには珍しく手厳しいご意見。
 交通事故に限らず、色んなアクシデントの原因について、「それやっちゃまずいかもって思わなかったのか?」という疑問を持つことは多い。生きる力が弱い、ってことだろうなぁ、と思う。
まず」が「とにかく」なのは微妙。というか、この「まず」は標準語訳が難しい。まぁ、これに限っては「第一に」という意味でいいかもしれないけども。

ちょこっと待て 焦あひる気持ちこ 事故の元
(ちょっと待て 焦る気持ちが事故の元)
「待て」は「待で」じゃないのかな。
「焦る」の「あひる」が興味深い。「あへる」「あひぇる」などの形もある。
「ちょこっと」は秋田弁か、って言うと考え込まざるを得ない。「秋田で行われる言語活動」という広義の「秋田弁」ではあるが、「秋田独特の表現」ではないよなぁ…。

やべえなあ 祝い酒でも だめだべな
(だめだなあ 祝い酒でも(お酒を飲んだら)だめだなあ)
 もうちょっと詳しく説明すると、「やばい。飲んでしまった。祝い酒だから、なんていうのは言い訳にならないんだろうなぁ」という感じ。冒頭の「だめだなぁ」はどう考えても誤訳。
 個人的にはこれに最優秀賞を上げたい。コミカルで可愛らしい雰囲気もある。大好き。
 でもまぁ、交通安全を推進する立場からは、車で来たのに酒を飲んでしまったところを描写した句を褒めるわけにはいかないんだろう。
 もちろん、よくないことではあるんだけど、偽らざるところだよね。苦笑しつつ否定できない、って感じ。代行を頼めばいいんだよ。

 ついでなので、いつもは触れないポスターについても。画才はないが、標語が載っていて、そっちはわかる。
 中学生部門の最優秀賞で、「カチャンがゴツンになるまえに」と飲酒運転を戒めてるのが上手い。乾杯の音と車の衝突の音とを並べているわけだ。まぁ、ゴツンで済めばいいよな、って話はあるが。

 応募数の件、参考にポスターの方を見てみる。
 これは、中学生の部が対前年比で二割増しではあるが、小学校 3〜4 年生の部が 1/4 に減ってそれを帳消しにしてしまっている。全体としては 2/3 になっている。
 これは作品数の話だが、学校数で見てみると、小学校は 1〜2 年生の部、3〜4 年生の部、5〜6 年生の部がそれぞれ 6 校である。こういう取り組みが学校単位で行われるんだとすると、全体で 6 校という可能性もある。*1
 やっぱり広報のやり方を考え直すしかないんだろうね。ポスターの方は学校の授業や部活と絡めればうまく回りそうだが、川柳の方は個人が相手。なかなか難しかろう。
 来年は行われるだろうか。



*1
 秋田県内の小学校は全部で 214 校。(
参考)。
 中学校の参加数は倍増していることを補足しておく。()


"Speak about Speech" のページに戻る
ホームページに戻る

第980夜「やばたんやこっせん4 (前)」へ

shuno@sam.hi-ho.ne.jp