HDD レコーダーの自動録画用キーワード「方言」で、
NHK 鳥取放送局のドラマ「
ちょっとはダラズに。」がヒットしたので見てみた。本放送は去年の一月のようで、ずいぶんと遅れた視聴となる。
主演は
黒川智花で、その娘を
小林星蘭が演じる。黒川智花が母親役をやる年になったのか、と思ったが、調べてみたら 25 歳で、思ったより若い。最初に見たのは NHK の「キャットストリート」っていうドラマで、当時 19 歳。あれから 6 年も経つのか。
脇を固めるのが、
古谷一行、竜雷太、
森昌子という超豪華布陣。
森昌子が演じるのは、淀江充子という女性看護師。
あまり聞いたことがない苗字なので、さては鳥取に多いのか、と思って調べてみたら、そんなこともないようだ。
「
名字由来net」によれば、島根県内での順位が 1,681 位で約 40 人、鳥取のデータはなく、むしろ珍しい苗字の模様。
*1
地名だろうか。「平成の大合併」で淀江町
(よどえちょう) は
米子市になった。そっちを持ってきたのではないか。秋田市で言ったら、「河辺さん」てな感じか。ちなみに、秋田県内での「河辺さん」の順位は 2,487 位で 20 人。
方言で特徴的なのは「
〜なる」という敬意を示す語尾。「
言いなる (おっしゃる)」「
お地蔵さんがおんなる (いらっしゃる)」「
お地蔵さんめぐりしとんなった」など、何度も出てくる。「な」を連発するおかげで「柔らかい」という印象が生まれる。
ドラマ中のニュースの字幕で、淀江充子の「
――と言いなる」が「
――と言われる」になってたのは、ニュースの字幕として正しいと思う。方言の解説ではない、ということで、そこは上手くやられている。
なお、方言そのものに関する解説は、キーワードである「
ダラズ」について、転入者である主人公に説明する、というのがあるくらいで、字幕も何も出てこない。ということは、おそらく薄味になっているものと想像される。
「
ごす」。
「
入ってごしたらえぇけどねぇ」というのがメモにあるのだが、「くれる」という意味らしい。
ごんべの鳥取弁辞書では「くれる」を「呉れる」と表記しているが、この字は「ご」とも読むので、それだろうか。
勧誘を示す「
や」という語尾も何度も出てきた。「
ちょっと風、当たらんや」「
やらいや」「
行かいや」。
最後の「
行かいや」は「行こうよ」だが、ちょっと敬意をプラスして「行きましょう」と言いたいときは「
行きまっしょい」になるそうな。
面白いのは、竜雷太演じる杉原が古谷一行の尾関を一喝したときに言った「
人生無駄遣いするだねぇがな」の「
だ」。あちこち見てみたが、これについて言及している記事は見当たらなかった。
使う使わない、という話をすると、尾関は基本、標準語なのだが、黒川智花の真帆に語るヤマのシーンでは米子弁になる。これは感情の発露だし、そうすることによって近くもなるわけなので、自然。
「ダラズ市」というイベントに参加している高校生たちは標準語。これもリアルなんだろうと思う。
「咲い地蔵」というのがフィーチャーされている。「
わらいじぞう」と読む。
これで思い出したのが女優の
武井咲 (えみ)。この人の名前を DQN ネームだと言ってる人をたまに見かけるが、この「咲い地蔵」もあり、さらに、「山笑う」という春の季語もあることも考え合わせれば、決して妙な命名ではない。古事記にそういう表記があるらしい。むしろ文学の香りを感じるべき。
まぁ、難読ではあるけどな。
ドラマ自体は、病弱な娘のことを聞かれると、真帆がまさに堰を切ったようにまくしてたるところなんかは印象的である。それを娘の前でやってるので、これはその娘の傷になるな、という前振りがわかりやすく成立している。
あと、尾関が運転する車に乗って帰る途中、もうちょっと肩の力を抜け、と尾関が真帆に言うのだが、真帆はそれを無視したりはしないものの信号が青に変わったことを指摘する。肩の力を抜けない、キチキチしてなないと気が済まない性格が出ている。
小林星蘭は有名な子役らしいが、それもうなずけるって感じの名演。
朝ドラや大河ドラマでは主人公の幼少期を子役がやることが多いが、そこにキャスティングされてる子役たちを見てると、ほんっとすごいよな。末恐ろしいとしか言いようがない。時々怖くなることもある。
実は
秋田放送局の「
ザ・ラスト・ショット」もこれと同じ日に再放送している。こっちは HDD レコーダーにヒットしなかった。方言が出て来ないんだから当然。
この対比を見て、秋田はまた
えふりこいでしまったのかなぁ、と思った。
随分と
前、まだ衛星放送が今ほど普及してなかったころ、NHK-BS が「おーい、ニッポン」という名前で、11 時から 16 時まで (中断あり) 特定の都道府県についての番組を放送する、という企画をやっていた。「県のうた」が披露されるのだが、秋田は「きみまちざか」という都会派ポップスだった。
いや、別に、バスケットも都会派ポップスもいいんだけど、手持ちのものをそのまま出す、ってことができないのかなぁ、と。
*1
名字由来netのデータは「独自の調査」らしく、どういうものなのかは不明。まぁ、住民票を見られるわけじゃないだろうから独自調査にならざるを得ないんだろうけど。(↑)
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