Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜



第946夜

電光感冒


 いやはや、インフルエンザにかかっちまった。
 三連休の初日、10 日は、ちょっと鼻の奥がムズムズ、くらいだったんだが、11 日の朝には若干熱っぽさを感じ始めた。その時点でもまだ症状は鼻だけだったんで、薬屋で鼻症状がメインの風邪薬を買った。
 12 日にはだるさが加わって、夜に飲み始めたビールも 2 本目でギブアップ。いや、飲むな、という話はあろうが、まさかそんなことになっていようとは思わなかったもんで。
 早々に切り上げて横にはなったのだが、そんな風に体調を崩した時のいつものパターンで、数時間おきに目が覚める。そのたびに「医者行かなきゃな」と思うのだが、「インフルエンザじゃなければ出社はできるかな」が「インフルエンザじゃなくても今日だけは休もう」に変わっていく。
 で、診察の結果、アウト。A型。
 診察前に熱を測った時も 36.8 度あったのだが、それでもインフルエンザじゃなかった、ってことは前にもあったし、まして 11 月に予防接種してるんだから、今回も違うだろう、と思ってたのを見事に打ち砕かれた。

 去年の今頃まで派遣されていた会社では、インフルエンザに罹った時の規定が細かく決まっている。
 まず、その事実が全社員に同報メールで通知される。別に見せしめではない。
 伝染性の病気の場合、その人と接触した人の対応が重要になるが、大きな会社の場合、「部署は違うが同じ社屋内にいて、普段は顔を合わせないし名前も知らなかったが、たまたまその時期のその人と打ち合わせをした」というような人が出る。それを見落とさないようにするためである。
 会議で同席した以上、感染の可能性はあるので、通知された名前に憶えがある場合、潜伏期間が過ぎるまでは毎朝、体温を測ってセルフチェックしなければならない。
 あんまり細かく言うと「あそこか」と思われちゃうのでこの辺にしておくが、そんな面倒くささもあって、インフルエンザに罹りたくねぇなぁ、と思ってたのだが、そこから解放されてすぐの冬に罹っちまうとはねぇ。

日国サーフィン」という連載 (もう終了している) の「『インフルエンザ』と『感冒』」によれば、明治期の新聞でインフルエンザのことを「電光感冒」と呼んでる記事があるのだそうだ。
 正確に言えば、「『電光感冒』と呼んでるらしい」という記事だそうだが、具体的にそういう用例は見つかってないとのこと。伝染力が強いことを言ったのかもしれないが、面白い訳だと思う。まぁ、その記事の 30 年後に「スペイン風邪」の大流行が起こるので、面白がってる場合じゃないのだが。
 ということで、「スペイン風邪」はインフルエンザの別名ではない。

 群馬では、「風邪がうつる」ということを「風邪がたかる」と言うらしい。
 なんとなくわかる、と思ったのだが、「うつす」は「たける」なのだそうだ。それはちょっと想像外。
たける」の方は山梨で使われるようだ。
 なんで自動詞形と他動詞形で使用地域がずれるんだろう。

 ところで、このときの「うつす」って、漢字ではなんと書くんだ?
 移動はしないから「移す」ではないよな。複写みたいなもんではあるけど、「写す」でもねぇよなぁ。

 佐賀の「ぎゃーけ」がわからなかった。もう、「皆目」って感じで見当がつかない。
 が、鳥取が助けてくれた。
 鳥取では「がいけ」と言うらしい。「ぎゃーけ」は、これと同じ語をルーツに持つに違いない。
 それに、風邪で「がい」なら心当たりがある。「咳」である。
 案の定、大辞林に「咳気」という語が見つかった。「せきをすること。また,せきの出る症状。風邪」。これだ。
 Wikipedia の佐賀弁では「病気。特に風邪」と書かれている。意味がさらに広まったのだろうか。

 接着剤が効力を失ってる状態を「風邪を引いた」と言うらしい。建築会社の記事を見つけた。
 ほかにも、海苔や煎餅が湿気ることも言うそうだ。面白い。

 というわけで、医師が言った通り、予防接種をしてあるおかげか、それほど重篤化せずに済んだ。
 抗炎症剤等が効いたおかげもあろうが、仕事しようと思えばできるんじゃねぇか? って感じはあった。
 が、今の職場もインフルエンザについてはルールがあって、熱が下がってから二日はまだウィルスが残っている可能性があるので出社してはいけないことになっている。
 13〜16 日を休んだので、結局、10〜18 日の 9 連休である。
 正月休みを終えてちょっと出社しただけでさらに大型連休、我ながらうまくやったいえなんでもありませんごめんなさい。


"Speak about Speech" のページに戻る
ホームページに戻る

第947夜「ご当地あるあるワイド (前)」へ

shuno@sam.hi-ho.ne.jp