Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜



第935夜

消しちゃった…


 ここに白状します。
 録画してあった「なまりうた選手権」を削除してしまいました。

 うっかり、ではない。
 自覚しつつ消した。
 方言を扱った番組を、メモを取りながら見ると、番組本来の長さよりもはるかに時間がかかる、ということはに書いた。「なまりうた」の場合、歌の歌詞全体を書き取る必要があるので、倍くらいになる。これは放送時間が2時間とかなので、エラいことになるわけ。一日では見終わらないのだ。
 さらに、それを踏まえて文章を書こうとすると、単にググって周辺情報を調べるだけとはいえ、もともとの情報量が多いので、これまた結構な時間がかかる。
 これだけだったら、俺が怠け者だ、というだけの話なのだが、他に理由が二つ。
1) レコーダーの HDD 残量が心もとなくなってきている。
2) 放送から一年以上も経って、取り上げる時機を逸している。

 1) の方は、引っ越しが絡んでいる。バタバタして個人の時間が減り、生活のペースをつかむのにちょっと時間がかかり、という具合で録画済みの番組を CM カットして DVD や BD に対比する作業が滞った。CM カットしてタイトルをつける、という作業は意外に手間がかかるもので、さらに、CATV のセットトップボックスに合わせて買った、以前は国家的であったメーカーのレコーダーが恐ろしく使いにくく、面倒くせぇなー、と思ってほったらかしにしてたら、あっという間に数か月分がたまってしまった。リカバリに二か月ほどもかかったのだが、その間にも録画は積みあがっていく、で、やむをえず、である。

「削除」について調べてみた。方言としてはほとんどひっかからない。
 前から思っていたのだが、「削除」ってやっぱり日常で使う表現じゃないんだと思う。
 実家で HDD レコーダーを使ってて、例えば見終わったときに「これ削除してもいい?」とは言いづらい。
 じゃぁ、「消す」なのかというと、それも違うような気がする。「火を消す」「電気を消す」とは違うし、これは俺個人の語感だと思うんだが、「消す」は「見えなくなっているだけで残っている*1」というニュアンスを感じる。「消しゴム」の作用なんかはまさにそれ。
 じゃ、なんて言うかっていうと、「あど、これいらねべ?」が多い。

 で、「消す」。あることはあるが、「データを消す」系の俚言形はもちろん、ない。大方は、「火を消す」である。
 鳥取の「けーかす」、茨城・福島・宮城にかけての「ふたつける」などが見つかる。
きやす」は、長野・石川・熊本と散らばっている。

 CM カットについては、Pioneer の機械が操作しやすかったのだが、残念ながら Pioneer はこの分野から撤退してしまった。
 で、ほかのメーカーの機械の使いづらさを脇に置いても、面倒くさいことに変わりはない。
 昔から不精者ではあるのだが、ここ数年、それに拍車がかかっている。年をとったせいだろう。
 それに関連して、「根気」。
 長野・新潟の「ずく」は有名だろう。反対の「ずくなし」なんて表現もある。長野ではほかに「せっこいい」というのが「根気がある」という意味らしい。
 近所の岐阜では「根気に」という言い方があるそうだ。
 徳島の「しりやけ」、大分の「いころ」なんかも面白い。
しりやけ」については、江戸でも使われたという記事が見つかった。古語ってこと? それが徳島にだけ残ってるんだろうか、と思ったが、ググった結果を丁寧に見ていくと、長野や岡山の記事も出てくる。散らばる形で残ってるのかもしれない。
いころ」も、高知の例が見つかった。まぁ、こちらは近い。秋田との行ったり来たりで飛行機に乗ってると、四国が見えなくなってすぐに九州が目に入ってくるのでびっくりする。

 それにしても、ググっても語源がわからなくなった。羅列型とか、ちょっと触れてみただけ、って記事が多いせいで埋もれてしまってるんだろうか。昔はもうちょっと気合の入った記事が多かったと思うんだが。まぁ、自分のことはさておき。

 というわけで、ネタに困ってるくせに、数回分はいけるようなネタを削除してしまったことのご報告。
 でも、あんまり後悔してないのが困りもの。ほんとにずくなし



*1
 HDD レコーダーの動作がパソコンと一緒なら、録画番組を削除してもデータが残っている、というのは合っている可能性がある。
 大雑把に言えば、パソコン OS でのデータ削除は、削除対象となった領域に「ここはフリーで、別のデータ記録に使えます」というマークを付けるだけで、記録してあったデータ自体は残っているからである。
 使わなくなったパソコンを何もしないで捨てるとデータが漏洩しますよ、というのはここから来ている。(
)




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