Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜



第916夜

宮崎市の地名いくつか



 に書いた通り、車は秋田に置いてきたので、こっちでの移動には公共交通機関を使う。本当は自転車メインにしたいのだが時期が時期なのでそうなっていない。
 引っ越してきた翌日には宮崎交通バスカードを買って、すでに再チャージも何度かした。ちなみに宮崎交通では、「チャージ」ではなく「積み増し」と言う。
 さほど不便でもない。と言うのは、俺が住んでいる町は宮崎駅から直線で 3km 弱。俺の本来の住処から秋田駅の距離とさほど変わらず*1、そう田舎でもない。行先と時間にもよるが、バスは一時間に数本くらいのペースで出ているし、宮崎駅に行く列車もそこそこある。ひょっとしたら秋田市よりも便利なのかもしれん。
   
   宮崎のバスは腰が低い。

 さて、今回は地名である。
 バスに乗ってて、「次は〜」とアナウンスがあるが前方にあるディスプレイに書かれている名前と一致しなくて「え?」と思うことが何度もある。異郷に来たな、と思う瞬間だが、それについていくつか。

 最初にそう思ったのは、「下加納」「南加納」である。「しもかのう」「みなみかのう」だと思うのだが、どうしてもそう聞こえない。宮崎交通のホームページにバス停の一覧があるのでそれで調べてみたら、「しもがのう」「みなみがのう」だった。近くにある小学校は「かのうしょうがっこう」らしい。つまり、連濁を起こしている。こういう連濁は初めて聞いたような気がする。
「し」の一覧で「下」で始まるバス停を調べてみると「下木原 (しもぎわら)」というのもあった。「上木原 (かみぎわら)」もある。
 一方、「中川原 (なかがわら)」というのがあり、これは自然に感じられる。この違いはなんだろう。
 Wikipedia によれば、連濁には一応のルール (無声の子音が有声の母音に挟まれたときに起きる) はあるが、それが適用されないケースも多いらしい。
 もうちょっとほかの例も集めたら何か見えてくるのかもしれないが、今回はここまで。

 次、「若宮田」。
 これは「わかみやでん」と読む。
 へぇぇ、とは思ったが、さして驚かなかった。秋田市にも「搦田 (からみでん)」というところがある。これは難読地名に入れて差し支えないと思うが、住所としては平仮名で書くのが正しい。
 ヴィレッジバンガードで、秋田の難読地名を詰め込んだTシャツを見たことがあるが、それにこの「搦田」も載っていた。
「田」絡みで言うと、秋田市には「新藤田」というところがある。これは「しんとうだ」。時々「しんとうた」と言う人もいる。

 次、「新別府」。これもアナウンスとディスプレが合わなくて悩んだのだが、「しんびゅう」である。おそらく「べっぷ」の変形だろうと思うが、「べっぷ」が隣県にあるだけに、ここまで変わるか、という気もしないことはない。
 日外アソシエーツに「別府」の読み方を調べた記事がある。
 また、国土交通省の宮崎河川国道事務所が「川と橋の名前 いわれ辞典」というのを公開していて、そこに新別府川の記事もある。ここに並んでいる「檍 (あおき)」「浮之城 (うきのじょう)」「村角 (むらすみ)」「観音免 (かんのんめん)」あたりも、よそ者には難しい。

 ラスト、「国富ヶ丘」。
「くにとみ」でも「こくふ」でもなく、「くどみがおか」と読む。
 これにはちょっと驚いた。
 いや、地名っていうのは固有名詞だから普通名詞に適用される読み方から外れるのは別にいいんだが、この「国」を「く」と読むような、訓読みの頭を採る読み方は、「心愛」で「ここあ」、「桜空」で「さら」と読ませる「DQN ネーム」と同じ構造なのである。それが地名に? と思った。
 団地がある地域である。ディベロッパーがつけた新しい名前の可能性がある、とは思うのだが、それにしては「国富」という字面が「商品名」としてそぐわない。実際、その近くには「希望ヶ丘」「まなび野」といういかにもそれっぽい名前の団地がある。
 あるいは、もともと「国富」という土地で、開発時に「ケ丘」がついたのかもしれない。
 なお、宮崎市の北西方向に国富町という町があり、こちらは「くにとみちょう」である。残念ながら国富ヶ丘から離れている。まぁ、飛び地という可能性もなくはないが。
 このあたり、ちょっとググった程度では何も出てこなかった。これも今後の課題としたい。

 地名は見てるだけでも楽しい。
 こういうのを調べるんだったら、図書館で市史かな、と思って市立図書館の場所を調べたら、「薫る坂」とかいう名前が見つかったりして大いにそそられる。自転車で移動できる時期になったら行ってみたい。




*1
 尤も、歩いて行けるほど近くはない。秋田駅前で飲んだ時などは、さてカロリー消費、と歩いて帰ることもあるのだが、それはちと厳しそうである。(
)





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