ちょっと前に噂になった「
出身地鑑定!! 方言チャート」をやってみた。
東京女子大の
篠崎晃一教授の研究室の学生が作った、ってこと以外、前提知識なしで臨む。
ひとまず、自分が作るとしたらどうするか、を考える。
方法は二つ。質問を重ねながら絞り込んでいく方法と、多数の質問の結果をマトリクスにして判断する方法。
プログラマみたいなことを言うと、前者はデータと処理プロセスが密接な関係を持つことになる。後者はその逆。メンテナンスは後者の方が楽である。尤も、当然のことながら、作り方次第ではあるが。
使う方の立場で言うと、後者の方法では、自分と全く接点のない方言の質問に山ほど答えさせられることになる。方言自体に興味があって、「そういう表現があるのか」と感心し、「どこだろう」と自分で調べられる人でない限り、不評を買うことになる可能性が高い。生命保険の健康状況確認シートでもあるまいし、やはりここは、絞り込み形式だろう。
一問目は「翌日、家に不在の時、『
明日、家におらん』と言うことがありますか」。やっぱり、絞り込みか、と思う。これは大まかに東西に分かれる言い方である。
次に、「授業で先生に指名される」という意味の「
かける」で新潟、「しない」を「
せん」と言うかどうかで東海のチェックが入る。
「おみやげをもらうこと」を富山では「
あたる」と言うらいしい。
次になぜか突然、九州に飛んで、「背負う」という意味の「
からう」について聞かれる。「
せん」は西日本でも言うから、まだ東日本と断定できない、ということだろうか。それとも単にデータが間違っているのか。
俺にとって微妙なのは、画鋲の写真を示して「この文具を『
おしぴん』と言うことがありますか」という質問。もちろん、デフォルトは「画鋲」だが、「押しピン」も理解語彙としてはある。自分では使わないが、違和感もない。一応、東西差らしいのだが、まだ西日本の可能性があるらしい。
これに「いいえ」と答えると、後は北日本の表現のオンパレード。
「
ごみをなげる」、「
大洋紙」、「
ザンギ」、「
おはよう靴下」、「
でかす」、「
いちまる・いちかっこ」、理由や根拠を示す「〜
だはんで」と来て、「『横になって休む』ことを『
ながまる』と言うことがありますか?」で確定。ちと寄り道はしたが、見事、秋田にたどり着いた。
ちゃんと、使われる範囲を考慮した質問構成になっている。
意地悪をして、「押しピンって言う」と答えてみたらどうなるか。
次の質問が「『目のふちにできる小さなできもの』のことを『
めばちこ』」と言うことがありますか?」で、やっぱり西日本方面に行ってしまった。以降、「
とりのこ用紙」「
こじゃんと」「
ちばける」となって、もう東日本に戻ってこない。「言わない」「言わない」と答え続けると山口になってしまった。
ただし、この流れでは九州に行かないのは、前半で東日本と判断しているのが効いたのか。。
実は、最初にやったとき、「
ごみをなげる」の回答を間違って、「言わない」と答えてしまった。そうすると「
いずい」が出てきはするものの、「
前でで」「
いっさら」など中部地方をうろうろしていたかと思うと、「
洗濯物をこむ」「
こわい」「
あおなじみ」などで関東地方に戻ってきて、最終的に神奈川県ってことになってしまった。
感覚的には、「消去法」って雰囲気である。絞り込みは「これは違う」「これは違う」ってやっていくものだから当然のことかもしれないが、特に間違ったり意地悪をしたりしたときに、「これしか残りませんでした…」って言われてるような感じがする。
知らなかった表現いくつか。
・「卒業後、同じクラスの仲間が集まる会」のことを「
同級会」と言うことがありますか?
「同窓会」と「同級会」には地域差があるらしい。
今まで漠然と、「同窓会」は学年を越えたもの、と思ってたがそういうわけでもないようだ。おそらく字面から勝手に想像したのだろう。
「同級会」の「級」が学年を指すのだとすると、「クラス会のことを同級会という」という言い方もおかしいってことになるが、その辺、どうなんだろうね。
・この文具を「
線引き」と言うことがありますか?
これも、理解語彙としては持っているので、「微妙だな」とは思ったのだが、やっぱり使用語彙としては「定規」「物差し」である。子供の頃は、竹の奴が「物差し」みたいに考えていたような気がする。
英語で言うとこれは“ruler”である。だが、日本語で「ルーラー」と言った場合、物差しのことを言う場合もあろうが、ワープロソフトを使いなれている人にとっては、文字の配置を決定するための目盛りのこととなる。これは、外来語を取り入れて日本語表現の幅が広がった例。「ルーラー」がダメな場合、なんて言えばいいんだろう。
Microsoft Word 2010 のルーラー
・「あかぬけてない人」に対して「
あの人もやい」と言うことがありますか?
完璧、初耳。茨城など、関東の一部で言うらしい。
・「学校の2時間目と3時間目の間の長い休み時間」のことを「
業間休み」と言うことがありますか?
これも微妙。
前に取り上げたことがあるが、俺がいた小学校には、二時間目と三時間目の間に行う「業間体操」というのがあった。「業間」単体では使われない。
これもそうだが「放課」あたりも「気づかない方言」である。だって、学校で使ってるんだもの、方言とは思わないよな。
というわけで、しばし楽しませてもらった。
いろんな人がブログとかに書いてるし、何度もリトライすれば質問全部をリストアップして、判断ロジックを再現することもできると思うが、面倒くさいのでやらない。