Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜



第864夜



 こないだサラっと書いたが、GW 前半に自転車で転倒して指の骨を折った。
 いきさつはこう。
 交差点を渡るとき、こちらを見てない危なっかしい運転をしている車がいたので、そちらに注意をしつつ渡った。
 が、渡りきったところで視線を前に戻したら、結構な段差があった。それを避けようとして急ハンドルを切ったところ、下のアスファルトには細かい砂利が一面に散らばっており、タイヤを持っていかれて、なすすべもなく転倒。
 これ、100% 俺の不注意ってことになるんだろうか。
 足の擦り傷と、手をついてしまったのでちょっと両手とも痛い。でも乗れないわけじゃないので、そのまま練習を続行、二時間ほど走って帰ってきた。二時間で切り上げたのは怪我のせいではなく、寒かったから。
 シャワーを浴びようとレーサーパンツを脱いでびっくり。右の腰から膝にかけて、7×7cm くらいの擦り傷が三つもある。
 手持ちの絆創膏が役に立たない大きさであることは言うまでもない。あとで薬屋に行って大きいのを買ってみたのだが、サイズはいいとして (でも結構、高い)、腰と膝という、よく動く部分であるだけにすぐはがれる。防水性は高いらしいが、浴槽に入るには足を曲げなければならないので、どうしてもはがれる。
 はがれるとお湯がしみて激痛が走るので手で押さえるのだが、右の腰のあたりを両手で押さえると、まるでセミヌード写真を撮られているモデルみたいな格好になる。自分で可笑しかった。浴槽につからなきゃいいんだが、今年の GW の寒さでは、シャワーで済ますことはできなかった。
 尤も、寒いのが幸いだったとは言える。もし、足やら指先やらが露出している夏装備だったら、もっと怪我はひどかったはずである。
 擦り傷は少しずつ治ってくるが、手の方は力を入れると痛いまま。あれだけの転倒だから痛いのも当たり前、と思って湿布を続けていたのだが、10 日経っても全く痛みが引かない。一応、と思って近所の整形外科に行ったところ、レントゲンを見た医者が「折れてる」と一言。
 見た感じ、ひびが入ってるだけのようなのだが、専門家の分類では「骨折」になるらしい。こんな感じである。
   
 打ち付けて折れたのではなく、指を外側 (小指方向) に曲げる強い力が加わった。普通は靭帯が切れるが、靭帯の方が強いとこうなるらしい。折れる、というより、割れる、って感じだろうか。
 添え木をつけられ、鎮痛剤が出た。三週間これで頑張ってくっつかなかったら手術、とおっかないことをおっしゃる。
 いきなり生活が不便になった。それまでは痛みはあるもののほかの指で代替しながらしのいでいたのだが*1、添え木がつくと隣の中指も動かしづらくなる*2。それに、痛みとは無関係に、添え木のせいで人差し指を反らすことがまったくできない。
 左側の腰のポケットが使えない。添え木が邪魔でポケットの中に手が入らないのだ。
 暑くなりはじめていたので、添え木を固定するテープのところが汗でかぶれる。百円ショップに湿布を固定するための手袋状のサポーターがあるのでそれを買ってみた。暑さは増すが、線ではなく面で押さえることになるので、かぶれたりはしなくなった。
 手術になって完全に固定されてしまったらどうなるのだろう、と思っていたが、三週目には医者が「これはくっつくかもしれないぞ」と言った。「かも」ってなんだ、と思ったが黙っていた。
 そういや最初に行ったとき、カルテを見ながら、「十日も経ってるのかー」と言ってたからな。いや、まさか折れてるとは思わなかったんだよ。GW で、通院の隙がなかった、というのも事実だし。

 ここまで長い前置き。
「骨」の俚諺形は見当たらない。
 前にも書いたような気がするが、人体のパーツで俚諺形があるかどうかはそのパーツによって違う。
 骨なんかは、そうそう見えるものではないけれども、決して縁遠いものではないはずである。その証拠に、面倒くさい作業のことは「骨が折れる」、あるいはダイレクトに「それは骨だ」などと言うし、秋田弁で、具合が悪くもないのに「あそこが痛い。ここが痛い」と言って作業から逃げようとするのを「からぽねやみ」と言う。
 見つかった中で面白かったのは、栃木の「やしなう」。
 これ、例えば子供などにスプーンなどで食べさせるような、食べる手伝いをすることを指すらしいのだが、魚の小骨を取る作業なんかも含まれることがあるそうな。

 というわけで、添え木は取れたが、痛みは残っている。
 腰のポケットに物を入れるのが辛い、という症状はついこないだまで残っていた。人差し指に力を入れずに、手を拭いて水分を含んだハンカチをポケットに突っ込むのは大変な作業である。
 依然として重いもの、例えばお湯の入った洗面器は持てないし、フライパンを返すこともできない。
 一方、テレビなどのリモコンのボタンを押しても痛みを感じなくなってきた。人差し指を添えてビールの缶を持つこともできる。少しずつではあるが治癒しているらしい。
 自転車の達人によれば、「転倒しても手をつくな」というのが鉄則らしい。舗装路なら骨折で済むが、山の中だと枝や捨てられている金属が刺さったりする危険もある。それはわかるのだが、そんなこと言われても、とっさに手が出てしまうのはしょうがない。そういうのは、柔道とかで鍛えてないとだめなんじゃないのかねぇ。




*1
 転んでから医者に行くまでの間にピアノのレッスンがあって、チラチラとではあるが弾いていた。fff を出してないのは事実だが、これはまったく痛くなかった。方向によるらしい。 (
)

*2
 ピアノの世界で言うところの「指の独立」ができてると、少しは楽だったのかもしれん。 (
)





"Speak about Speech" のページに戻る
ホームページに戻る

第864夜「骨のつづき」へ

shuno@sam.hi-ho.ne.jp