また HDD レコーダーが「方言」で番組を拾ってきた。
NHK の「めざせ! 会社の星」である。サブタイトルは「ビジネスに効く!? “方言”7つのテクニック」。
司会は
アンジャッシュ、ゲストは
安田美沙子と日大教授の
田中ゆかり。そういや『
「方言コスプレ」の時代』も読んだんだよな。遅ればせながら、そのうち、取り上げたい。安田美沙子は、「京都弁で荒稼ぎ」と言われていた。前に NHK の「祝女」って番組の「恋する方言」ってコーナーに出てたな。
ところで、人間が古いせいか、日本語をクォーテーションマークで囲むの、すげぇ違和感あるんだけど。
違和感と言えば、この番組のナレーションで「違和感を感じる」と言っていて、これも気になった。
では、番組の流れに沿って。
テクニック (1) 方言で場をなごませる
福岡出身で、現在、神戸の中古車屋で働いている人が紹介される。「
よか在庫」「
ばってん走行距離が」など、要所要所で博多弁を使って、客のハートをつかんでいるらしい。「カワイイ」とか言われてる由。
やっぱり、素が見える感じがするからなんだろうね。「弱み」が見えている、と考えると、客が優位に立つことになるし。
でもこれっておそらく、神戸だからいいんで、大阪だったら難しいだろうなぁ。
テクニック (2) 「場面に応じて使い分ける」
その人は、いよいよ契約段階になると、共通語オンリーになるのだそうな。間違いをなくし場を引き締めるためだとか。
まぁ、知らない言葉を使って行き違いが起こるとまずいだろうねぇ。
そういや、以前、職場に、相手と話をした後、「
まず、わかりました」と言う人がいた。この「
まず」は「ひとまず」の「まず」で、「とりあえず」に近く、「解決はしていないが、あなたの言っていることは理解した」という意味である。電話の向こうは東京のことが多いのだが、相手はどういう風に聞いてるんだろう、といつも思っていた。
テクニック (3) 「方言で親密さを強調」
後輩へのアドバイスは博多弁混じり。
行き違いはここでも起こると思うんだが、それは修正可能なんだろうな。見知った者同士だし。
内容次第ではあるよな。車の説明をするときもそうだけど。緊迫した場面でうっかり方言を出すと、緊迫の度合いが一気に上昇、ってこともありそうな気がする。
家に帰って、故郷の友人に電話。これも抑えめだったような気がする。テレビの取材中だからか、あるいはすでにベタに方言ではない、ということなのか。
「
いもひき」という語が登場する。字幕で「臆病者」と書かれていたので意味は分かるのだが、ちょっとググったところでは、用例がない。ハンドルにしてる人はたくさんいるが。
島根県浜田市では、「恥ずかしがる」「引っ込み思案」という意味でつかわれる
由。
『仁義なき戦い』にも出てくるらしい。西日本で広く使われるのかもしれない。
青森出身の美容師が登場する。この人も方言ネタで客のハートをつかむらしいのだが、それを「方言
トリビア」と言っていた。それ、民放の番組。
また、「
しゃべればしゃべったって――」かなぁ、と思ってたが、出てきたのは「
おどばげままなにす」。「おじいちゃん、夕飯は何にしましょうか」。
もう一人、金沢出身で、大阪大好きで大阪弁を一生懸命、使おうとする、という人。
アンジャッシュの渡部が、「
大阪の人が一番嫌うパターンでしょ」と突っ込んでいたが、それって広い認識なんだな。
テクニック (4) 「方言で個性を表現」
ここで、「方言コスプレ」の話。
方言が恥ずかしいもの、隠すものではなくなり、誰でも使えるわけではない方言の「価値」が上がった、という話。
ゲストが方言で自己紹介をしていたが、なんか全体的に滑っていた。
テクニック (5) 「リアリティーにこだわれ」
ATOK って、「北海道東北」ってまとめかたらしいんだけど、「
めぐせ」ってやると何が出てくるんだろう。これ、津軽では「恥ずかしい」、南部では「見苦しい」って意味なんだけどさ。両方?
あと、各地の観光地にいる「おもてなし隊」。番組では名古屋だったが、秋田でも「
清原紅蓮隊」というのが活躍中。これは、前九年・後三年の役で滅亡した清原氏。
源義家も twitter に
アカウントを持っているが、どうやら秋田弁でしゃべってる模様。
テクニック (6) 「方言ならではのフレーズ」
方言を話す自動販売機を開発した
ダイドーの苦心談。
自販機の挨拶「今日も暑いですね。冷たいジュースでリフレッシュしましょう」の大阪弁バージョンで苦戦したらしい。
三ヶ月かけて出した結論が、「
ほんま暑は夏いねぇ〜!?ってつっこんでぇや」。
これは上手い。「翻訳」として正しい。
名訳としてよく『カサブランカ』の“Here is looking at you, kids”が「君の瞳に乾杯」になったことが挙げられるが、翻訳の場合、重要なのは内容を伝えることであって、形などは維持しなくてよい場合が多い。「ほんま暑は夏いねぇ〜」も、「冷たいジュースでリフレッシュ」という部分はなくなっているが、大阪の人の挨拶としては正しいわけである。
テクニック (7) コジマのテク
岡山では、「
〜じゃが」という語尾があるらしい。
アンジャッシュの二人はどちらも八王子の人らしいのだが、しきりに「方言がない」と言っていた。東京の言葉の変化は西から入ってくることが多いので、方言がない、ってことはないはずである。
言葉遣いを使ったネタが多いらしいが、地域差は苦手ってことだろうか。
で、方言がビジネスに効くかどうかなのだが。
前にプレジデントの話をしたが、当然、そんなものはケースバイケース。今回の方言を生かした会社員達にしても、「わざとらしくて嫌」という評価もあったようだし。
ダイドーのようなアプローチは今後も伸びて行くんだろう。方言グッズの範疇に含めてもいいのかもしれないし。