もぐら氏の『
見とこ、行っとこ、トコトコ四国』を読んだ。
前に『
見とこ、行っとこ、トコトコ関西』『
うちのトコでは』を紹介したが、今度は四国旅行記。もぐら氏の地元である。因みにもぐら氏は、地元だから実際に行かなくてもいいよね、と編集者に言ってしまうくらい出不精。
これは
JTB パブリッシングから出てる旅行記だから厳密にはコミックスではないが、やはりカバーを取ってみると漫画が描かれている。
表では、案内してくれた高知の人がもぐら氏と話すときは標準語、たまたま出くわした友人とは高知弁で喋っている様子。これを「
方言スイッチ」と呼んでいる。あるある、って感じ。裏は、だからと言って方言でまくし立てられると全然分からない、というオチ。
口絵では、地元だから簡単にいけるもんねー、と言うもぐら氏。ところが田舎なので (ごめん) 移動は楽ではない。関西で、京都−神戸が一時間だったのとはわけがちがう。
秋田だって、山形行こうとするとえらい大変である。直通特急も長距離バスもない。盛岡は
こまちがあるからまだいいが、青森もお世辞にも近くない。距離が違うのも事実だが、交通機関の密度は桁が違う。
まず、徳島。
メインは阿波踊りだが、案内人の徳島 (擬人化キャラ) は、「
阿波踊り終わったけん、徳島にはもう何もないけど、明日から (観光は)
どうするん?」とさわやかに聞く。
金時豆の入ったちらし寿司、というのは徳島固有のものらしい。へぇぇ、と思いつつ、金時豆ってどんなのだっけ、と思う、食い物オンチな俺。
ここでも「うだつ」が取り上げられている。うだつ自体は別に方言ではないが、それを大々的に取り上げているのが徳島県美馬市や、岐阜県の美濃市、ということらしい。
藍でも有名だったらしいが、「青は藍より出でて藍より青し」という諺を、努力すれば先達を超えられる、と解釈して締めている。
次は高知。徳島が阿波踊りなら高知はよさこいだが、よさこいについては『うちのトコでは』を紹介したときに触れたので割愛。
黒潮町には「
砂浜美術館」というのがあるらしい。絵が飾ってあるわけではなく、文字通りなのだが、面白い発想である。
「
たっすい」は、ググってみると「弱い」「しょうもない」「緩い」など、色んな説明がある。一時、キリンビールで「
たっすいがは、いかん」というキャンペーンをしていたらしいが、この本で高知 (擬人化キャラ) は「みかんでいうところの、パサパサしておしくない奴」と説明している。
台風銀座であり年間降水量もトップクラス、水害にあうことも多いが、水害も悪いことばかりではない。中がかき回されるので、一旦は濁るが、落ち着くときれいになる。東日本でも、あの津波によって海底の栄養分が巻き上げられ、魚種によってはえらく育ちがいいのもある、と聞いた。だからいいよね、というのではない。為念。
で、高知では、増水はするが中途半端であるためそういう効果がないものを「
嫌水」というらしいが、ネットでは用例を見つけられなかった。
愛媛。これがもぐら氏の地元。
地形の関係で風が強い地域があるらしく、「
やまじ風」「
肱川あらし」「
わたし風」という言葉が紹介されている。
風そのものについては松山地方気象台の
ページに記事があるが、名前についての説明が見当たらない。肱川は地名のようなのだが。
「
わたし風」については、局地風について一般的に使われる名称ではないか、という気がする。
大辞泉に「私雨」という語が載っている。
観光案内について、車で案内するという愛媛 (擬人化キャラ) にもぐら氏が、悪いからいい、と言うと、愛媛は「
せわない」と答える。
「どうということはない」ということだろうが、これも方言かね。
最後が香川。
「恋人達の聖地」いう場所がいくつかあるらしいのだが、それに対して「そこで恋人達は何をするのか」と問うのは「
それ、モテん人の発想ですけん」らしい。耳が痛い。
香川といえば讃岐うどん。まさに「安い・旨い・早い」を体現したものだが、これについて「客まで含めて流れ作業」と表現している。上手い。
丸亀町商店街はショッピングモール風にリニューアルしたらしい。この本に寄れば、バブル期、高級ブティックの類ばかりになって大根一本も買えない、生活できない商店街になったことに対する反省があるのだとか。
秋田駅前の再開発ってこういう視点、抜けてない?
まとめのまんがでは、隣県の特産物は似るという指摘があった、笑いながらも大きくうなずいた。地形や気象条件が近いんだから、農産物も似てくるよねぇ、当然。
あと、愛媛在住のもぐら氏が四国を回って、そこには愛媛も含まれるわけだが、地元の人に「どちらから」と言われたときに困るらしい。こちらも「地元」と答えると、どうにも微妙な雰囲気になるのだそうだ。もっと地元の観光地をめぐるのが一般的になるといいなぁ、と結んでいる。
同意。秋田でも時々言われるが、外向けに売り出してるものを地元民が知らない、というのはよくある話。
次は九州かなぁ、とか。
旅行のたびに寝込む氏には酷な発言か。