Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜



第774夜

トコトコ関西



 もぐら氏の『見とこ、行っとこ、トコトコ関西』を読んだ。
 氏のホームページ「御かぞごくさま御いっこう」はほぼ毎日一編のマンガが掲載されるので日参することになるのだが、それはかなりの「引き」になることがわかった。読むほうはあっちゅう間におわるから物足りなくなり、本を買っちゃうことになるのである。

 JTB パブリッシングから出てることで分かるとおり、これは旅行エッセイの一種である。愛媛在住のもぐら氏が、大阪・神戸・京都を巡る。
 冒頭でこの三都の距離感が説明される。いわく、大阪−京都、神戸−大阪は新快速で 30 分、京都−神戸は 60 分。
 随分と前、名古屋に行ったときも書いたかもしれないが、名古屋−大阪は新幹線で 50 分である。名古屋−神戸だと 1 時間半。
 つまり、四つの政令指定都市が 2 時間で移動できる範囲に収まっている。すごいな、この密集度。

 まず、方言の話からしてしまおう。
 荷造りをしているもぐら氏、「何持っていこね」と言っている。
 こういう、疑問形なのに「か」が入っていない言い回しは時々耳にする。
 東京出身・東京育ちの人が言っているのを聞いたこともあるので、かならずしも方言ではないのかもしれないが。

 大阪で「江戸前寿司」を食べる。
 この「江戸前寿司」は「にぎり寿司」のことである。元々大阪では押し寿司が一般的だったので、わざわざ「江戸前」というわけ。
 もぐら氏、これで「腹が太った」らしいが、これは「おなかが一杯になった」という意味。

 次の目的地は神戸。
うちのトコでは』の長編では大人っぽく描かれていたが、ここに登場する神戸 (擬人化したキャラ) はかわいい。いかにも神戸のお嬢様という感じ。
「芦屋の」と書きそうになったが、神戸の話なんだった。
 尼崎の市外局番が 06 で大阪と同じであることにも触れられている。大阪 (擬人化したキャラ) は、尼崎のことを「アマ」と呼ぶ、と言っている。大阪府にも接してるし、気持ち的にも近いのかもしれない。
 神戸 (キャラ) の紹介では、「とう」という語尾が紹介される。「何しとう」である。大阪だと「何してん」。

 トリが京都。
 煮物を「〜の炊いたん」と言うが、これを「タイタン」というロボットだと妄想している。うむうむ、わかるわかる。
 京都の街が碁盤の目になっているのは有名だが、それぞれの通りを覚えるための歌がある。どうやら色々とバリエーションがあるらしいのだが、詳細は Wikipedia の記事をどうぞ。
 この本では、大阪も碁盤状になっていることが触れられているのだが、こっちは歌はできなかったのだろうか。大阪の場合、東西方向は「通り」、南北方向は「筋」らしいから、さほど覚えにくくもないのか?
 寺の庭園を紹介する京都 (キャラ) が、「見とうみ」という。これ「見てみて」と一対一に対応する形だろうなぁ。

 最後に、三都のキャラが集まる。
 神戸はケーキが安いらしい。それを見た京都 (キャラ)、神戸ではケーキを「おまん」感覚で食べるのだな、と言う。これは、高級なお菓子ではなく手軽なお饅頭の類。
 もぐら氏、「愛媛から来たのか」と聞かれるのだが、それぞれ違う。
   大阪 愛媛から来やったん?
   京都 愛媛から来はったん?
   神戸 愛媛から来てってですか?
 なんか、「来てってですか?」は新しい言い回しのような感じがするのだが気のせいだろうか。ネットに用例はなかった。

 京都は新しいモン好きである。
 そもそも碁盤の街並み自体が、外国の都市の構造を取り入れたもの。
 だが、そうしたものを、千年単位の時間をかけてなじませていく。

 神戸はコンパクトな都会。
 実は「○○があるのは神戸だけ」という売りはさほど強くない。だが、上質な日常がある。だから、「一度越しておいで」。

 大阪のサービス精神は、めっちゃ空気を読んだ結果。一方的に押し付けてばかりなのではない。
 丸福珈琲店のタマゴサンド食ってみたい。卵焼きがはさんであるらしい。

 去年は暮れに大阪へ行ったが、今年はその予定なし。
 それにしても、もうすぐあれから一年か…。




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