Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜



第805夜

あなたの方言 星ひとつ (4)




 この 3 月までニッポン放送でやっていた「松本ひでお 情報発見ココだけ!」、火曜日担当の浅香唯が持っていた「あなたの方言 星ひとつ」というコーナーに借りた文章、四回目。今週で終了。

 石川から、「きんかんなまなま」。これは有名か。
 道路が凍っていること。単に凍っているのではなく、人が歩いたり車が通った後がツルツルになっている状態。凍っているというより、雪が踏み固められている。
 こうなるんだよな、ほんと。ちょっと前方を見ると完全に鏡面仕上げなんだもの。
 果物の金柑の説明が多い。前に NHK の「ふるさと日本のことば」を紹介したときも自分でそう書いてる。「なまなま」は「ぬめぬめ」の系列で光沢がある様子、らしい。
 でも今はちょっと不満。金柑って石川では普通の食い物なの?

 山形から「おとげ」。
 のどぼとけのことらしい。
 これは「頤 (おとがい)」の変化したものだとも思われる。ただし、頤というのはあごのことである。秋田でも「おとげ」と言えばあごだ。
 正確に言えば、あごの先っちょ。かすかに出っ張ってる部分。俺が聞いたところによれば、猿とか類人猿は歯が一番飛び出しているが、段々退化して引っ込み、取り残された部分、ということだったと思う。

 長野から「おてしょう」。
 これ、前に紹介したことなかったっけ。小皿のことである。浅香解は「手紙」「塩」。
「しょう」が何か、って問題なんだが、「醤」という説明のほかに、「塩」という説明もあって、唯ちゃんの回答は間違いとは言い切れない。

 佐賀から「ずくにゅうが重い」。
 浅香解は「足」「頭」で、後者が正解。「ずくにゅう」が頭のことらしい。
 調べたところ、「木菟入」で「坊主頭の人をののしる言葉」という説明が見つかった。「木菟」は「みみずく」と読む。大辞林は「木菟(みみずく)入道」の意かとしているが、「木菟入道」というのが何かは説明していない。

 山形は米沢から「おしょうしな」。
 秋田では「しょし」は「恥ずかしい」という意味なので、誤解を招く可能性のある表現ということでよく話題になる。これは「ありがとう」。
 元の語はどちらも「笑止」である。

 鹿児島肝付町から「よんごひんご」。
 浅香解は「ふらふら」「千鳥足」。
 正解は「曲がりくねっている状態」。
 聞くところによると、「ひんご」だけでは「ゆがんでいること」で意味が違うらしい。ネクタイが曲がっているのは「よんご」であって「よんごひんご」ではないそうだ。

 北九州市から「びびんこ」。
 浅香解は「交換」、ヒントをもらってからは「だっこ」「おんぶ」。
 正解は「肩車」。
 前にもあったが、一覧は「ほべりぐ」の「くらべてガッテン!」にある。
 ググってみたら、枯れてしまった根に生えた木が成長して出来た「びびんこ杉」というのが鹿児島にあるらしい。

 さて最終回。
 富山から「きのどくな」。
 浅香解は「やさしい」だが、正解は「ありがとう」。ここでも何度か取り上げている。
「ありがとう」だけだとびっくりするが、「もうしわけない」である場合もある、と聞くといくらか納得感が出てくるのではないか。「ありがとう」と言うべき事態が発生している場合、相手に何らかの迷惑をかけているということを考えるとわかりやすい。

 大分から「やつがい」。
 これは「晩酌」。
 大分で晩酌といえば二階堂、ということで、二階堂のページから引っ張ってくると
豊後方言で八つの刻(現在の3時)に買いに行っていたので「八つ買い」といい、一日三度の食事をするようになって、のちに晩酌に飲む酒を「やつがい」というようになったそうです。
 わかりにくいが、ひょっとして、昔は八つ時に晩飯だったが、今は夜だ、ということを言っているのだろうか。

 最後、和歌山から「づつない」。
 浅香解は「せつない」だが、正解は「満腹である」。
 ググってみると、名古屋の記事も見つかる。

 最終回は、ニッポン放送のアナウンサー教育用のテキストを使って、浅香唯に標準語イントネーションの講習を試みていた。
 が、最初に書いた通り、アクセントで語を区別しない地域で言語形成期を過ごした人に数十分の講習をしたところでどうにかなるものではない。
 松本アナからは星 0.5 個という評価を受けて、このコーナーを締めくくった。




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