年度も切り替わり、回数も
800 回を数えた今日、もう公開してもいいかと思うので書くが、実はこのエッセイをベースにしたテレビ番組を作る、という話がある。
ここでは秋田を中心に色んな地域の方言を紹介してきているが、そんな感じで各地を訪問してみる、というもの。さすがに俺は一般会社員であちこち行くわけにはいかないので、それは本職のプロに頼むとして、俺はスタジオでコメンテーターという形ではどうか、という方向で進んでいる。
あと、ドラマの話もある。「日本人の知らない日本語」みたいな感じを考えているらしい。舞台は東京になる予定。秋田だと扱う地域が限られるからで、東京なら、全国各地の方言が使われている、という状態は簡単に設定できる。この場合、原作というよりは原案になる。
おかげでメールのやり取りの量が桁違いになっている。普段、送信者でフィルタリングして、該当しないものは原則的に見ないで削除、って感じにしているのだが、そうもいかなくなった。少なくとも、サブジェクトは一通り見なければならないし、中には「初めまして、○○です」というスパムにしか見えないサブジェクトのメールを送ってくる人もいるので困っている。
さて、秋田弁で「
ばす」という単語がある。意味は「嘘」。「
ばし」と言う人もいる。
『語源探求 秋田方言辞典 (中山健、秋田協同書籍)』によればこれは「婆娑羅 (ばさら)」らしい、ということは
前に書いた。
「
ばぐ」という言葉もある。これは「博労」から来たらしい。「博労」というのは牛や馬の売買を仲介する人のことだが、「抜け目のない、言葉に信用の置けない商人として警戒もされた (『秋田語源探求』)」ということだとか。
「
ずほ」という語もあるが、これは語源が割れている。『秋田のことば (秋田県教育委員会編、
無明舎出版)』は「自負」としていて、自己評価は大概あてにならない、と説明しているが、『語源探求』は「ず」+「ほら」としている。「ず」は「図抜けた」などの「ず」で程度がはなはだしいことを指す、のだとか。
「
てんぽ」は「鉄砲」、正確に言えば「空砲」で、音が大きくて人を驚かすが、中身がないこと、だそうである。
山形から新潟にかけても「
てんぽ」は使われるようだ。
嘘つき、というか、ほら吹きに関する民話は全国に多いようで、その新潟でも「
てんぽくらべ」てな言葉があるようだが、Wikipedia には
とっぽ話という記事がある。愛媛の南予に伝わる民話だそうである。
この「
とっぽ」もなんだか「鉄砲」と音が似ている。
「空」の形の語もいくつかあるようで、静岡では「
空を使う」、熊本では「
そらごと」というのが見つかった。
そういや「絵空事」って単語もあるよね。
広島では「
じなくそ」という語があるらしいが、これの語源はわからなかった。
細かく言うと「嘘」だけでなく、「意味がない」「
しょうもない (これ自体が方言であれなんだが)」というニュアンスもあり、また「いいかげんなこと」の場合もあるとか。企業の不祥事なんかも「
じなくそげな」ものらしい。
お笑いにもホラ吹きを持ちネタとしている人は多いが、俺の場合、真っ先に思い出すのは
横山たかし・ひろしである。
若手だと
オードリーあたりが近いか。ホラというのとは違うが、架空のキャラを設定してそれで押す、というあたりが共通点。
嘘にはどうも数字がついて回る。「せんみつ」は「千の内、三つしか本当のことを言わない」ということだし、「万八」というのもある。
「嘘っぱち」の「ぱち」は数字ではなく、単に調子を整えるための語尾らしい。
「嘘八百」の「八百」はものすごく多いことを示す。江戸の「八百八町」、大阪の「八百八橋」と同様である。
そういや、デジタル書籍化の話もあったのだが、そうするとここの記事を削除しなければならなくなるので断った。
800 本も削除するの面倒なんだもの。