NHK の朝ドラ「カーネーション」が終わった。
なかなかの数宇だったようである。確かに面白かった。
というか、「楽しかった」という方が正確かもしれない。
第一話にしてからが、主人公である小原糸子の子供時代を演じる
二宮星と少女期以降を演じる尾野真千子のデュエットではじまり、戦争時代になっても、辛い中にどことなくコミカルな空気を残していた。
夏木マリになってちょっと雰囲気が変わり、晩年期らしい感じにはなって笑うところは抑え目になったものの、基本的にコミカルなペースはキープ。なんせ、糸子が他界した直後のエピソードで、ナレーションの第一声が「おはようございます。死にました」。
この台詞が OK な雰囲気のシリーズだった、ということである。
舞台は基本的に大阪の岸和田。
前半では祖父母のいる神戸が、後半は娘連が活躍している東京も出てきはしたが、岸和田の商店街をほとんど出ていない。
したがって、言葉は岸和田弁。
さすがに連日放送で半年も続くシリーズ
*1のすべてをメモにはとれなかったが、「
ちゃった」と「
り」が印象に残っている。
思い出しながら書いてびっくりするくらいだが、ほんとに外の少ないドラマだったな。中盤なんてロケなかったんじゃねえか?
「
ちゃった」は、共通語の「〜てしまった」とは違い「〜していた」という意味。「〜が言っていた」という意味の「
〜が言うちゃった」が頻繁に出てきた。「聞いてたか」という意味の「
聞いちゃったけ」というのもあった。
子供がいるときには「
いっちょいで」がよく使われていた。「いってらっしゃい」だが、子供のほうは「
言ってきます」と大阪弁イントネーションで言ってた様な気がする。
我々が聞き覚えのある大阪弁では「
言っとった」「
聞いとった」「
いっといで」となるところであろう。
別の使い方では、
甲本雅裕演じる木之元のおっちゃんが商売替えをしたとき、「
新し始めちゃったんや」と言っていた。これは「〜していた」ではないのかもしれない、という気がしないこともないのだが、何分、飲みながら見ているせいでメモが中途半端、どういう雰囲気で使われていたのか覚えていない。
「
り」は命令形の語尾。
「
食べり」「
起きり」「
寝り」などがよく出てきていた。―段動詞につくんだろうか。「
起きりや」という形もあったようだ。
これも、聞き知った大阪弁では「
食べ」「
起き」「
寝」だと思われるが、この形も耳にしたような気がしない事もない。ニュアンスが違うのかねぇ。
この場合、「や」がつくと「
食べぇや」「
起きぃや」「
寝ぇや」だと思うのだが、これは「
り」が音便化したのではなくて、「
食べや」が言いづらいから挿入したものか。でも、「
食べや」って命令というよりは、提案・勧誘のような感じもするなあ。やっぱよその方言はわからん。
途中、長崎出身の周防という人物が登場する。演じたのは
綾野剛。
この人はずっと長崎方言。ドラマの中でも、言葉が通じなくて苦労した、という描写があった。
それが、まったくわからない、というような言い方で、へぇぇ、と思った。
今なら、(さっきみたいに)ニュアンスはわからないとしても、大意はわかりそうな気がするけど、それって現代だからだろうかなあ。
糸子の娘達が独立する年齢になる。
長女の優子 (
新山千春) が先に東京に行くのだが、帰省してきた彼女はすっかり東京弁になっている。優子をライバル視している次女の直子 (
川崎亜沙美は岸和田出身らしい) はそれが面白くない。優子は、それが「普通」の言葉だといい、直子は、岸和田弁が間違っていると言われて激怒、大喧嘩になる。
ふたりの喧嘩は少なくないが、彼女達がまだ子供の頃は末っ子の聡子 (
安田美沙子) 含め大変に騒々しく、テレビ見ながら「糸子が四人いるわ…」と思っていた。
直子の友人の斉藤源太 (郭智博) はずっと津軽弁。
夏木マリの時代になると、気に食わない相手に、塩をまくのではなく、お手玉を投げつけるシーンが何度か出てくる。これが「
おじゃみ」。多分、お手玉の音から来たのであろう。
家出してきた優子の娘、里香 (
小島藤子) は、最初は心を閉ざしているが、その内、糸子が怒りそうだと思うと、先回りして
おじゃみの入った籠を渡すようになるなど、象徴的に使われていた。
尾野真千子は好きなタイプの女優で、だから見始めたんだが、晩年は役者が変わると聞いてびっくり。老けメイクでいいじゃん、と憤慨したのだが、夏木マリの演じる糸子は、年は取ってるが老けてない、あいかわらずエネルギッシュに活躍する。だから、若い女優の老けメイクではダメなのである。
とは言え、夏木マリだってまだ還暦前、90 歳を演じるにはやっぱり特殊メイクの助けを借りる必要があったのではあるが。
自分の行く末とか考えちゃったりして、楽しいばかりではなかったけど、でも楽しかった。
総集編があったら録画して保存しようと思うが、さすがに DVD-BOX は買わない。