Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜



第802夜

あなたの方言 星ひとつ (1)




 この 3 月までニッポン放送で「松本ひでお 情報発見ココだけ!」という番組をやっていた。
 ラジオを聴くのは、TFM のドラマ「あ、安部礼司」を除くと一体、何年ぶり? って感じ。細かいことを言えば、「ラジオ」と言えば AM のこと、と言う人もいようが。
 好きなアーチストの特集があるときにエアチェックするくらいだなぁ。あぁ、死語使ってしまった。
 漠然と聞くってことをしない。つまりバラエティ、ディスクジョッキーの類は全く。車での移動中も、そういうのをやってると消す。だって話がつまらないんだもん。
 唯一、聞くのは、秋田コミュニティ放送で朝 8:30 にやってるやつ。70 年代の歌謡曲・フォークをずっとやっている。ちょうと通勤時間帯なので車の中で聞いているが、自転車のときには聞けないのが残念。まぁ、これでも嫌いな奴の曲がかかると消すけど。

 話を戻す。
「松本ひでお 情報発見ココだけ!」は月曜から金曜、17:40〜20:00 というスケジュール。夏場だと野球をやってる時間帯だが、3 月で終了したのはそういう事情による。
 で、松本ひでおというのはニッポン放送のアナウンサー。彼一人でやるのではなく、日替わりで女性タレントがパートナーを勤める。火曜日担当が浅香唯
 うち、19 時台に「ココだけ JAPAN」というコーナーがある。去年は、コンビニと提携して全国各地のつけ麺を紹介していたが、今年になってからは「あなたの方言 星ひとつ」と題して、全国の方言を紹介していた。
 長い前置き終了。
 それをちょっと振り返ってみたい。

 第一回は、1/10. 第一回なので、リスナーからのメール・手紙はなし。番組側で用意した宮崎弁。
 そもそもこのコーナー、浅香唯の宮崎弁イントネーションが元である。コーナータイトルの「星ひとつ」は、「おかあさんといっしょ」で歌われていた歌の題名で、浅香唯が紹介したときのイントネーションが大変に怪しかったことからついたもの。
 何度も言うが、宮崎は無アクセント地域。そういう地域で言語形成期を過ごすと、アクセント・イントネーションの聞き分け・使い分けが難しくなる。かつて「日本語学」で無アクセント地域出身のアナウンサーの記事が連載されたことがあるくらい。なので、個人差はあるが、特別なことではない。
 で、番組内で紹介された言葉。

さるく 歩く。長崎でも言うんじゃなかったっけ。「歩く」とイコールなのではなくて、ぶらぶらする、歩き回る、というようなニュアンスの語。
いぬる 帰る
おらぶ さけぶ
かざむ においをかぐ
 これ、初めて聞いた。大辞林にも載ってるのだが、手元の角川新古語辞典には載ってない。Weblio によれば、高松でも言うとのこと。
ひっこくる つまづいて転ぶ
よだきい これは有名。大分、鳥取あたりでも言う。
おじい 恐い。「怖気づく」という語もある。大辞林によれば「怖づ」という動詞のようだが、これが形容詞になっている。
ひんだれた 疲れた。「だるい」なんじゃないだろうか。「ひん」は調子を整えるための接辞で。
ひんがわりい かっこわるい。多分、漢字で書くと「品が悪い」になるんだと思うんだけど。これも鳥取の記事が見つかる。
じゃがじゃが 相槌らしい。
 岩手には「じゃじゃじゃ」という語がある。これは三つでなければならないらしい。岩手放送では、「じゃじゃじゃ TV」という情報バラエティを放送している。
もぞらしい 可愛らしい。
 秋田でも「むぞい」という語がある。『語源探求 秋田方言辞典 (中山健、秋田協同書籍)』では、「残酷であること」を示す「無慙」が、「(無慙な目にあって)不憫、気の毒」、「可愛らしい」と変化したものだが、「可愛らしい」については九州から海路で伝播したもの、としている。つまり、同じ語だということになる。『秋田のことば (秋田県教育委員会編、無明舎出版)』はこの形の「可愛い」を立項していない。
いっぺこっぺ あっちこっち

 二週目からは、メールが紹介される。体裁としてはクイズ形式、松本アナが出題、浅香唯が答える、という形。
 札幌から「はんかくさい」。浅香唯の解答は「腹が立つ」だったが、正解はもちろん「バカ」。まぁ、ニュアンスが「バカ」とはちと違うが。
 長崎から「とっきゃんきゃん」。浅香解は「とっていてくれ」もしくは「とっておきなさい」。よく博多弁で「とっとっと」が話題になるがこれからの連想だと思われる。だが、これは「肩車」。
 一番面白かったのは、浜松の「ぽんぽん」。オートバイのことだそうだ。おそらく初期のオートバイが立てた音だろう。

 てな感じで、だらだらと何回かに分けて紹介する予定。




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