Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜



第777夜

777 んだって?!



 今回が、777 夜目である。
 回数はともかく、“666”をネタにして書いてから二年も過ぎている、ということに愕然とする。また馬齢を重ねてしまったか…って、日本人は散々馬に世話になっておいて、なんで「馬齢」なんだろうね。

 666 のときに、「地域によって特殊な意味を持つ数字」については宿題のような形にした。結局、見つかってない。つか、真面目に探してないので見つからないのは当たり前。
 テレビのチャンネルなんつーのは典型だと思っている。“11”というと、東京では意味を持たないが、秋田市では秋田放送である。というか、秋田放送だった。
 この夏の地アナ停波、デジタル化によって秋田放送は“4”チャンネルとなった。「よんちゃん」というキャラクター (現総務部広報課長) を作って地デジの宣伝を繰り広げていたが、秋田放送のことを「4 チャン」と呼ぶ人を見たことがない。
 勿論、地デジオンリーになってまだ 3 ヶ月しか経ってないから、定着してない、という見方もできるのかもしれないが、その前に、人々はテレビ局を数字では呼ばなくなったのではないか。別の言い方をすれば、「数字を指定して切り替える」ということをしていないのではないか、という気がするのだがどうか。
 じゃ、どうやっているかというと、リモコンで「上」「下」とやるか、放送局の一覧を出してそこから選択する、というやりかたをしている。
 これ、実は「進歩」である。
 我々は、「11 チャン」が見たいのではなく、「秋田放送の番組」が見たいのである。だが、テレビのパネルにはそんなことは書かれていない。しょうがないので、「秋田放送は 11 チャンネル」ということを確認して (そのうちに覚えて)、“11”にセットする。つまり、人間が機械に合わせていたことになる。
 このことは、ラジオに当てはめれば今も有効である。地域ごとに局名が書かれているラジオもないことはないが、大概のラジオには周波数しか書かれていない。今まで NHK 第一を聞いていた人が第二を聞きたい、と思ったら、「秋田では 774kHz だから…」とダイヤルを回すことになる。
 つまり、技術の進歩によって、「秋田放送は 4 チャンネル」ということを覚える必要がなくなったのだ。

 あるいは、リモコンの設定を変えて、“11”を押すと“4”になるようにしている人もいるかもしれない。これも機械を人に合わせていることになる。

 こういう数字は、ほとんどの場合、意味のない羅列なので (秋田テレビは、地アナのときは 37 チャンネルだったが、37 であることには、割り当ての都合以外の理由がない)、語呂合わせでもひねり出さない限り、覚えづらいものである。
 人間が瞬間的に覚えられる数字列は 7 桁くらいが限界だそうで、ということは、10 桁からなる電話番号はキャパを超えていることになる。
 が、例えば、市外局番を覚えずに済むとすれば、秋田で 7 桁だから覚えられる。東京だって 8 桁だからがんばればなんとかなりそうである。
 テレビやラジオで電話番号を紹介する際、「東京 03」などという形で言うが、これはその手助けである。“03”という数字には何の意味もないので覚えづらいが、「東京」という言葉を覚えるのには何の努力もいらない*1ので、後は 8 桁の番号だけを記憶 (もしくはメモ) して、市外局番は後で調べればいい。「同じことを繰り返していて無駄」と言う人がいるが、それは言いがかりである。*2

 話が逸れた。‘7’の話。
「なな」が訓読み、「しち」が音読みだが、これを「ひち」と言う地域がある。
「方言でしょ」「訛りでしょ」と言うなかれ。岐阜県加茂郡の七宗町は「ひちそうちょう」である。
 で、色々と調べてみたのだが、「七」を「ひち」とする地名はほかにもあるようで、愛知県豊田市九久平町の「大七 (おおひち)」というのが見つかった。
 京都市上京区の花街「上七軒」は「かみひちけん」だそうである。ローマ字表記が“Kamishichiken”なのが残念。
 固有名詞ということで言うと、大阪の製薬会社・七ふく製薬は「ひちふく」、愛知県安城市でだしや醤油を作っている七福醸造も「ひちふく」、愛知県名古屋市中村区の神社・七所社は「ひちしょしゃ」だそうだ。アナウンサー泣かせの名前だ。
 また、神奈川県厚木市のなかちょう大通り商店街では、「二七の市」というイベントを「にひち」と呼んでいる由。
 福島県二本松市の酒造メーカーに大七というところがあり、どうやら「だいしち」らしいのだが、奈良の酒屋さんがこれを「だいひち」と呼んでいる。ググってみると、そう思っているのはこの酒屋さんだけではないようで、あるいは「気づかない方言」になっているということかもしれない。
 鹿児島の焼酎メーカーに大山甚七商店というところがある。これを「じんひち」としているページがいくつもあるが、大山甚七商店自体がホームページを持っていないので、正式な呼称は不明。

 意外に長くなった。
 特撮的にウルフ 777 という車があったりと、実は話題に事欠かない数字なのだが、この辺で。

 あ、‘7’と言えば、数少ない空白県の一つだった秋田にも、7-11 が進出するらしい。こないだ、地元の新聞にオーナー向け説明会の広告が載っていた。
 さて、これで打撃を受けるのは、サークルKサンクスか、LAWSON か、ファミリーマートか。




*1
 これが放送局の番号だとすると、所在地は限られている (
秋田朝日放送が青森市にあるかもしれない、と考える人はそんなにいないはずである) ので、覚える必要すらない場合もある。 ()

*2
 もっと知識の助けを借りるとすれば、秋田市の市内局番は必ず 8 で始まるので、それも覚えなくてよい。東京 23 区なら 3 か 5 のはずである。 (
)





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