『
うちのトコでは』は、もぐら氏の本。
体裁は 4 コママンガなのだが、なぜか
ジュンク堂では「実用書」に分類していて、探すのに手間がかかった。
で、どういうマンガなのかというと、各都道府県を擬人化して頭身の低いキャラにしたもの。彼らが入り乱れて繰り広げるコメディである。
オンライン本屋で探してもらってもいいが、作者のもぐら氏のホームページを見てもらうと解りやすいと思う。「
御かぞくさま御いっこう」の「
四国四兄弟」がそう。
出たのは、去年の春。
実は、当時、一応、店頭で手にとってはみたのだが、
前に書いたとおり、県民性云々に食傷気味というか、はっきり言ってしまえばうんざりしていたので買わなかった。白状すれば、手元にあるのはこないだ新古書店で買った奴。
上で、ジュンク堂云々と書いたのは、続編の方のことで、これについては来週、とりあげる。
この第一巻は版型をコンパクトにしたのも出ている。大ヒットしているのである。
というわけで、登場人物は全都道府県だから 47 人。いや、なぜか兵庫は 5 人編成なので 51 人。それぞれがそれぞれの方言を話すので、一々紹介すると、全作品とりあげることになってしまうから、そこは取捨選択する。
秋田がどういうキャラクターになっているかと言うと「おとなしく控えめ、不器用」で「結構享楽的で浪費家」。気分の浮き沈みが激しいそうである。マンガの中では、ウツ気味の発言をすることが多い。
デザインは和服美少女。
紹介エピソードで、カラオケで盛り上がった秋田が「もう一件行ぐべ」と言っているが、この場合の「けん」は「軒」な。店の数だから。
宮崎出身の有名人で浅香唯の名前がないのは許せんな。欄、余ってるのに。
最初に「県民性」は胡散臭い、みたいなことを書いたが、もぐら氏はその辺を弁えているようである。冒頭に「県民性ってなんだろう?」というエピソードがあり、「県民全員こんな性格とかそんなわけねェだろう〜 そういう傾向はあるかもだけどやっぱり個性の方が強いわけで」などと苦悩しながら、「カッコいいねぇー」などと言われるとその通りに行動してしまう、ということが描かれている。
で、それをわかった上で、ステロタイプを強調してマンガにしている。どうやらホームページの読者からも、それをわかった上での指摘が入っているらしい。健全な関係ができているようだ。
さて、方言。
富山の紹介マンガでは、「
だいてやる」が取り上げられている。富山は女性なのだが、一緒に食事でもしていたらしい石川 (男) が財布を忘れたので、「
だいてやる」と発言し、東京がびっくりしている。
これ、意味は「おごってやる」だが、おそらく「出してやる」の「し」がイ音便化したのではあるまいか。
「おごる」自体は、「
はまる」という言い方もあるらしい。
静岡の「
ばった」。「予約した」「とった」。
長野の「
ずで」は「最初」。「言う」で「
せう」という形があるらしいが、秋田の「
へる」と同じ語なんじゃないかな。
富山で「
みっき」という語に「待って」とルビをふってるのだが、ググっても「みっき」が見当たらない。
滋賀の「
えらい」。愛知あたりでも使われているはずだが、これは「疲れた」「辛い」。で、このマンガでは京都は高飛車なキャラである。で、体調が悪いのでずっと座っている京都に滋賀が「
そんなにえらいん?」と聞く。
和歌山のエピソードに出ていたミカンの剥き方。「和歌山剥き」なんてものがあるとは知らなかった。手早くキレイにむけるらしい。興味のある人はググってみてください。
青森で「
お山に行く」、和歌山で「
かねになる」、島根で「
広島にタバコを買いに行く」。これはすべて「死ぬ」の忌み言葉。
「
お山」は恐山で納得だが、「
かね」は蚕のことと書いてあるもののググっても裏とれず。調べ方が悪いような気はしないこともないが。「
広島に…」は諸説ある模様。
全員が集まってパーティをしているエピソードがある。挨拶が敬語なので東京が、もうちょっとうちとけてくださいよ、と言うと、皆が「敬語でないと標準語がうまく話せない」と反論を食らう。
これは、標準語を使うのが敬語の一つであることを裏側から見た話であろうと思う。
東京が、青森や鹿児島の話を聞くが全くわからない。
ところが栃木の話はわかる。わかるだけに、一番訛っているように聞える、というのも面白い。
というわけで、上で書いたとおり、来週は続編の『
うちのトコでは 2』を紹介。