Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第753夜

うちのトコでは (中)



 もぐら氏のマンガ、全都道府県を擬人化したキャラが活躍する『うちのトコでは』に借りた文章、二本目。今日は、続編の『うちのトコでは 2』から。

 今回も県民性から。
「×型のあなたはマイペースです」と言われれば「そうかも」と思い、「○座のあなたはキレイ好き」と言われれば「その通り」と思う。「その程度のものとも言える それが県民性」。健全な感覚であろう。

 山形の紹介で、「東ジャス」「西ジャス」「南ジャス」「北ジャス」というのが紹介されていた。それぞれの方向にあるジャスコのことらしいのだが、ググってみたらそういう呼び方をする地域はほかにもあった。まぁ、大躍進中ですからなぁ。
イモ」といわれて何を連想するか。ここで、北海道がジャガイモ、山形がサトイモ。どっちかわからないので両方買っていったら、頼んだ鹿児島はサツマイモ (カライモ) のつもりだった。青森はナガイモと注釈がある。
 関東の「茨城」も大阪の「茨木」も「いばらき」が正しいのだが、茨城の場合、イとエが同じ音になり、カ行音が濁音になるので「えばらぎ」に聞える、とのこと。「茨城」と「茨木」の話は前作でも出ていた。
 以前、「豊かさ指数」というのがあってよく埼玉が常連で最下位になっていたが。そんな埼玉の自慢は、年配の人がテレビで喋っても字幕が出ないことだそうである。
 大きな声で方言を使っているとケンカに間違えられることがある。ここでは、九州、広島、大阪、愛知が出演しているが、その彼らは東京が女々しいと言って反撃する。それは正直、俺も思った。大学に入って上京したとき、いかにも悪そうな格好をした高校生が、友達と別れるとき「じゃね」と言ってたのを聞いて、すげぇびっくりした。
だら」という言葉。静岡では「そうだよね」であり、愛媛では「面白い」。そう言われてムっとしている富山では、これは「バカ」「アホ」に相当する。
 広島弁。高校生が「今日のテストはみやすかった」「(疲れたから) たばこにしよう」「先生がきちゃった」と言う。それぞれ、「今日のテストは簡単だった (カンニングしたのではない)」「休憩しよう」「先生がいらっしゃいました (立派に敬語)」。「きちゃった」は前にも聞いたことがあるけど、真剣に違和感あるわ。地元でも誤解されたりしないのかな。「たばこする」は広島だけで泣くあちこちで使われる。子どもが使うのかどうかは知らない。
 山口が「のうがわるい」と言って人を罵倒している。「頭が悪い」という説明がされているが、高地では「具合が悪い」という意味になるらしい。この「のう」は「脳」ではなくて、「能力」の方。
 一番笑えたのは、「強か」を九州の面々に読ませたとき。全員が「つよか」と読んだが、国語の授業的には「したたか」が正解。
 方言の衝突はいくつもネタにされているが、宮城で「ものもらい」を意味する「ばか」、これを大阪に「ばかになった?」と言うとエラいことになる。大阪弁では「アホ」はいいが、「バカ」はシャレにならない。
 地名が俚諺形となることはあまりないものの、その数少ない例外の一つが静岡と鹿児島。それぞれ「しぞおか」「かごんま」となる。この本では、パソコンの漢字変換をネタにしているが、注釈で、グーグルで「しぞおか」と入れると「もしかして:静岡」と出る、とあるのでやってみたら、本当に出た。「かごんま」はなかった。

 ちょっと方言を離れて、道州制の話。冒頭の紹介マンガはこれになっている。
 東北は割とまとまってるとか、甲信越を一つにするのはそもそも無理があるとかいう中で一番笑ったのは近畿。
 どこが州都になるかでもめるのだが、京都が自分が都に決まっていると言えば、ほかの府県は、福原京、難波京、大津京、平城京と次々に都の名前を出してくる。まさに近畿。
 九州でもやはりどこが州都になるかでもめるが、鹿児島は宮崎を引っ張り込もうとする。これは、いつかも書いたが、宮崎の南半分が島津領だったことを踏まえているのだと思われる。
 とにかくこのもぐら氏、よく調べている。
 最初、「一人で 47 都道府県、書き分けられんのぉ?」とか思いっきりバカにしていたが、今はもう完全にシャッポを脱ぐ。

 なお、大分で全市町村を擬人化したものがある。「おおいた萌えおこしプロジェクト」である。こちらは全員、女の子。宇佐が一番可愛いと思う。紹介文でも誰も方言を使っていないので、ここで取り上げるのはこれが精一杯。

 というわけで、タイトルで解るとおり、さらに来週に続く。




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