鶴岡旅行で見つけた方言色々、続編。
加茂水族館の展示は、「庄内では○○と呼ぶ」とたくさん書かれていて俚諺形の宝庫である。
前に、カジカのことを「
なべこわし」と言う地域がある、という話をした。鍋にするとあまりにおいしいので橋でつつきまくって鍋を壊してしまう、というのが理由だそうだ。
加茂水族館によれば、イシダイとメジナが「
なべわり」と呼ばれるらしい。
発想自体に地域差はないと思われるのでちょっと調べてみた。三重ではイシダイ、京都ではイシガキダイ、北九州でイラがそう呼ばれているらしい。また、広島では、ギンポが「
なべこわし」「
なべたたき」と呼ばれている由。
由来については、「なべを叩いてお変わりを催促する」という説明もあった。
魚ではないが、
茨城では、ユウガオを家に入れると鍋が割れる、という言い伝えがあり、ユウガオのことを「
なべわり」と呼ぶそうだ。
ナベワリという植物もある。
Wikipedia によれば、葉に毒があって、舐めると舌が割れる、「舐め割り」から「
なべわり」になったとのこと。ただし、「鍋破」と書く。
そういう地名もあるらしい。
妙な勘違いをしちゃったのが、「コモンサカタザメ」。
“common”だと思っちゃったんだよな、後ろは明らかに日本語なのに。「一般的なサカタザメ」ってことかと思って。
後半の「サカタ」も、場所が場所だけに「酒田」かと思った。
どっちも間違い。正しくは「小紋坂田鮫」。「坂田」が何なのかはわからなかった。人の名前?
大分では「
すきさき」と言うらしいが、これは「犂先」。加茂水族館にも写真があるが、頭の先が三角になってて、なんだか巨大なプラナリアの風情。英語では“guitarfish”で、これも面白い。
この平たい顔でわかるように、「サメ」とは言いながら、エイの一種。
庄内では「
いはいざめ」なんだそうで、これもやっぱり形から来てるんだと思うが、
大辞泉によれば「塔婆」という言い方もあるそうな。「すきさき」はここにも書いてある。
ホッケのことを「
ほっけしんじょ」と言うのは秋田でもそうらしいのだが、用例がほとんど見当たらないのは何でだ。
「
しんじょ」と呼ばれる魚は他にもいて、アイナメが「
しんじょべご」なのだそうだが、これは「寝所」という説がある。水底にじっとしていて、餌が来たときだけ動くからだそうである。
「
ほっけしんじょ」がそうなのかどうかは不明。因みに、小さいのは「
ろうそくぼっけ」だそうである。
で、魚のすり身をつかった「[米参] 薯 (しんじょ)」という料理があるからややこしい。
先週、クラゲで有名、みたいなことを書いたが、クラゲにはあんまり俚諺形がない。おそらく、どうでもいいもんだったからだと思う。「クラゲ」で一くくり、詳しく識別する必要がなかった。
そんな中、アカクラゲには別名があった。乾燥すると毒をもった粉が舞い上がって、それを吸い込むとくしゃみを起こすので、「ハクションクラゲ」と呼ばれるそうな。
また、その性質を真田幸村が戦で武器として使ったため、「サナダクラゲ」という呼び方もある由。
ま、どっち道、俚諺形ではなかったが。
車の中から見つけた表現を幾つか。
「
よぐきたのー、大山さ」は、鶴岡市大山。ここは酒の町らしい。
「
映画の街でがんす」は、鶴岡公園近辺で見かけたポスター。藤沢周平で盛り上がっている鶴岡だが、「おくりびと」などもあり、映画の街で押し出している。
「
飲酒運転だめだのー」は、あつみ温泉の辺りで見た。やさしげ過ぎて、効き目には疑問がないこともない。
「
元気にやっさげたのんでくれちゃのー」は、鼠ヶ関あたりで見た。工務店か何かの看板。「元気にやるから」がユニーク。
ユニークといえば、妙な工場を見た。
外壁に「ここは鶴岡市 日本国です」とでかでかと書いてある。なんじゃそりゃ、と思ったが、調べて見たら「日本国」という山があるらしい。写真に取れなかったのが残念。
最後に写真。
新潟と山形の県境。
辛うじてバスが通る狭い路地にこんなペイントが。
県境っていうと山道だったりすることが多いが、ここは住宅街。つながっているように見えて、その県境でもって子ども達の学校から何からキッパリ別れているらしい。

「県」って字の省略方法も面白い。