Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第698夜

出処を明らかにする - My Old NX (7)



 さて先週は、フォルクスワーゲンのディーラーに行ってポロを試乗、問題なし、という気分になったところまで進んだ。

 どうも、数日で決めないと 3 月末納車が怪しい、ということで、明けて月曜日、仕事をしているふりをしながら頭の中で検討。
 そこでふと思い出した。
 NX クーペは、助手席側ピラーの根本に謎の水滴が現れることがあった。まぁ、謎でもなんでもなくてどっかから雨が漏れてるだけなんだろうが、それに続いて、リアのウィンドウの周りのゴムが切れてること、ダッシュボードの外装が割れていることなどが次々に浮かんでくる。ついでに言えば、試乗に行く数日前にルームランプが点かなくなった。
 そういや、車検のときに、エンジンから油がにじみ出ているとか言ってたな、ということを思い出したとき、これってかなりやばい状態なんじゃないか、と思って汗が噴き出してきた。
 下面の錆については、すぐにどうということはない、と言っていたが、事件が起こったのはそのわずか二ヵ月後である。エンジンについても同じような見落としがあったらどうなる?
 本当なら、改めてチェックしてもらうべきなのだろうが、その時間がない。困った。
 …と考えているうちに、恋人に別れ話を切り出しかねていて、その勇気を得るために、相手の粗探しをしているのと同じじゃねぇかよ、と思って大いにブルーになった。なんか悪いことしてるみたいじゃん。

 どうも恋愛方面は方言との相性が悪いようである。それが口に出せる事柄になったのがごく最近だからであろうか。
『秋田のことば (秋田県教育委員会編、無明舎出版)』でその辺りを調べてみたら、恋愛結婚を指す言葉があった。「しきじれ」というのだが、「好き連れ」である。西仙北に、「しきじれこすれば泣きじれこ (恋愛結婚すれば泣き泣き連れあうことになる)」という諺があるらしい。これだけ読むと、見合いを断ろうとする奴を説得するための諺に見える。
 今、ウェブで「恋愛 AND 方言」を調べると、そのものずばり「方言恋愛」という CD の記事がほとんどである。
 にもちょっと触れたが、キャッチが「方言で、告白されました」で、まぁ実を言えば、関心はある。関心はあるが、買う度胸はない。

 そんなときにディーラーから電話。
 曰く、他の客でキャンセルが出た、お前の希望が 3 月なのはわかってるが、1 月納車ということにしてくれればもっと値引きする。
 それがまた、どこ行ってもそれ以上、安くなるこたぁねぇだろう、という額。スタバでミストを飲みながら考えて、それもめぐり合わせであろう、と手を打つことに決めた。
 試乗に行った翌日のことである。

 実はその日、本屋の車雑誌コーナー (俺がそういうところに行くのは、実質的には初めてである。NX クーペのときには、それしか買う気がなかったし、新車の雑誌を見ても載ってないから、中古車情報雑誌を 1、2 冊買った位) で、CR-Z の写真を見て、特撮的でかっこいい、と思った。
 家に帰って調べたら、まだ正式発表前らしくて情報が錯綜。あれこれ探しているうちに、CIVIC Type-R EURO も見つけた。これまた特撮的。
 だが、走り屋でない俺が乗る車でない、ご家族を送り迎えすることもあるので 2 シーターはありえない、スポーツ系で決して乗り心地はよくないらしい、なによりでかいし高い、ということでこれまた落選。

 NX クーペは廃車である。
 正直、マニアに売れるのじゃないかとは思った。錆だらけではあるが、部品取り用に確保する、という人だっているみたいだし。
 だが、そのマニアに心当たりがない。いや、黙って中古車屋に持ち込めばいいのだろうが、ネットでちょっと調べた限りでは、どうも売買されている形跡がない。
 白状すると、補助金目当てである事は否定はしない。輸入車だから減税対象にならないし。
 写真を取り捲った上で、荼毘にふすことにした。

 今回、この連載を書くために写真を編集したりしているが、たまに目頭が熱くなる。
 ジャッキポイントの腐食が発覚したときに、車屋 (見落としたそこではなく、例えば日産の正規ディーラーとか) に持って行ってたらどうなっただろう、とは今でも思う。




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