Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第683夜

2010 Starts



 さて、2010 年がスタートした。
 恐ろしいことだ。
 夢の世紀であったはずの 21 世紀がもう一割を経過したのである。
 この分では、二割とか 1/4 とか半分とかまで行くのもあっという間であろう。くわばらくわばら。

 数字の中でも、最初の 1, 2, 3 あたりは特殊な扱いを受けることが多い。
 英語では、順序数が 1st, 2nd, 3rd と 4 以降で“-th”をくっつけるのと違っているし、漢字だと「単」「双」と別の字を使うことができたりする。
 その伝で、「一割」「二割」あたりを示す俚言はないかと思ったが、見つからなかった。まぁ、無理かと思わないこともなかったが。職人言葉なんかはありそうな気もしないことはない。

 発想が違うということか、英語には“quarter”という「四分の一」を指す一単語があるが、日本語にはない。しかし、さすがに英語にも「三分の一」という単語はない。
“quarter”には「区画」という意味もある。「ラテン街区」をフランス語で書くと“Quartier Latin”で、これが「カルチェ・ラタン」である。
 フランス語は縁遠い言葉だと思っている人が多いかもしれないが、実は既に持っている知識で理解できたりすることがある。

 じゃ、半分はどうか。
 ものを半分に分けることを「半分こ」と言う。この「こ」はなんだ、というのも疑問だが、どうやら「半分こ」には色んなバリエーションがあるようだ。
 よく目や耳にするのは「半分ずっこ」か。かなり広い地域で使われている。ただ、東北ではあまり言わないような気がする。少なくとも誰かが使っているのを聞いた事がない。なお、Google での用例は約 4,000 件。
 意外に多いのが、「半分こっつ」。約 9,000 件。初めて聞いたぞ。
 これも多い。「半分こっこ」。5,000 件超。
 それの変形なのかどうか、「半分ごっこ」。2,500 件。
 急に少なくなるが、「半分こずっこ」。200 件。
 勿論、精選したわけではないので、ノイズも含んでいるし、「こんな言い方もある」「うちではこう言う」という記事もあるので相当にダブっているはず。
 どれも「ず」「つ」と「こ」の組み合わせなので、「半分こ」と「半分ずつ」の合成かとも想像できるのだが、どうもはっきりしない。
 地域的な広がり方はわからなかった。たいていの人が、自分のところの方言だと思っているようだが、あんまり固まっている様子がない。
 いや、それ以前に、個々の表現を「方言」と AND 検索するとヒット数がガタっと減る。「気づかない方言」なのかもしれない。

 まったく別の言い方はないかと思ったが、名古屋方面に「もうやいこ」という言い方があるようだ。半分というより、共有する、ということらしい。そういう名前の施設がいくつか見つかった。
 調べた人がいて、これは「催合ひ」という古語からきているそうだ。手元の辞典を引いたら、「共同してすること」とある。「上方語」という但し書きがある。用例は、「一緒に持ってきた」というような意味である。

 牡丹餅などを作るときに米をつぶすことを「半殺しにする」と言う。全部、潰してしまわないで米粒の形が残る程度にしておくからそういうのだが、これを方言とするページがいくつか。
 餡のことを言う場合もあるらしい。
「半殺し」は不思議なキーワードで、まず「半殺しチャーハン」がやたらとヒットする。これはキムチを使ったチャーハンで、辛いから言うわけだが、もっと辛い「皆殺し」もある由。刺激物が苦手は俺は避けて通るが。
 あと、いじめとかドメスティック バイオレンスの記事も多数、ヒットする。嫌なご時世である。

 慢性的にネタに困っている俺は、年明けだから、ってことで乱暴にも「2010 AND 方言」でググってみたのだが、そしたらたくさんの記事がヒットした。
 目立ったのは、方言 CD である。女性だったり男性だったりはするようだが、恋愛方面で色んなことを言ってくれるらしい。
 ジャケットは萌え系だし、さすがに恥ずかしくて買えない…。




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