Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第684夜

オリジナルの 4 コマと方言



 久しぶりに 4 コマまんがの話。
 買ってるのは「まんがタイム ラブリー」だけだったのだが、秋口から増えてきた。
 というのは寒くなってきたからである。
 基本的にまんが雑誌は風呂で読む。浴槽につかりながらなのだが、寒くなるとその時間が長くなる。結果的に、一冊をあっという間に読み終わってしまうので、次、次、となる。
 その程度ならなんも問題ないが、問題は 4 コマだってストーリー仕立てになっているものがある、ということである。先が気になり始めるとやめられなくなる。そういうのが一冊にまとまっていればいいが、そうではないので、あれもこれもとなって、現在、「まんがタイム オリジナル」「同スペシャル」「同ジャンボ」と増えてしまって困っている。

 職住近接が話題になることは少なくなったが、実は漫画家には地方在住者が多い。航空便で原稿を送ったとか、FAX で編集部とやり取りをして方針を決めるとかいう話はあちこちに出てくる。
 有名なところでは、奥田ひとしは秋田、島本和彦は札幌である。ちょっと偏ってるが気にしないで欲しい。
 ちょっと古い号であれだが、まんがタイム オリジナルの 12 月号 (発売は 10 月末。溜まってるので読むのが遅れた) に、そういった感じのマンガが並んでいたのでちょっと取り上げてみる。

 よしむらなつきの「アトリエ ZOO へようこそ!」がまさにそういう漫画家が主人公の話。舞台は佐世保なのだが、どうやら作者自身も佐世保在住の模様。
 2 月号では、「九州人は全員、武田鉄矢の物まねができる」と思っている担当と長崎弁で大喧嘩する、というエピソードがあった。
 方言ネタではないが、トルコライスとか、シャーベット状のミルクセーキなど地元ネタが満載である。
 オチは、郷土愛が暴走してローカル ヒーローならぬローカル ヒロインのマンガを提案して却下を食らう、というものだったが、いけるんじゃねぇか、「長崎戦士 サ・セボン」。

 山吹あららの「おかまん研」は、漫画家を目指す女子高校生たちが主人公。「岡山桃園女子高」というところが舞台だが、全編、岡山弁。
 登場人物たちの名前が、「桃果」「瀬戸内」というのがご当地ネタだというのはすぐにわかったが、三人目の「足守めろん」は調べるまで解らなかった。そういうブランドがあるらしい。
 マンガの勉強と称して雑誌を買い込んだはいいが、いつのまにか寝転んでて「なにしょーったけ」。というのは「何をしてたんだっけ」。
 面白いマンガを描くには「人生経験を積まにゃーおえん」。「おえん」は「ダメ」。Wikipedia によれば、「もうおしまい」という意味の「畢へる」「竟へる」の変化という説と、「手に負えない」の変化という説がある由。子どもを「おえんっ!」って叱ることもあるらしい。
 2 月号には載ってなかった。短期連載だった模様。もっと早く気づけばよかった。

 最後、こちらは新人らしい。均という人。だから、ネットで検索しにくい名前をつけるなと言うのに。
 主人公は新入社員なのだが、同期に静岡出身が二人いて、その会話が全然わからない、という話。
 一発目が「ぶしょったい」で、だらしない、みっともない、ということ。「不精」なんだろうか。大辞林で確認したら「ぶしょうったらしい」というのがあってちとビックリ。これ?
 次が「けっこい」。きれいだ、整っている、ということらしいが、どうやら同じ語が香川にもある模様。ググったところではほかの地域が見当たらないので、飛び石状ということになるんだろうか。あるいは、同心円で陸地がそこにしか残ってない、とか?
こどむ」は有名。かきまわしていないカルピスのように、液体の底に沈んでいること。音が俚言然としておらず、一発で表現する標準語形もない、という「気づかない方言」の一つ。

 話は方言から離れるが、山口舞子の「ふたりぽっぽ」と、吉田仲良の「アサヒ!〜動物園に行こう〜」が面白い。4 コマは短時間で勝負しなきゃならないのでセンスがものを言うのだが、光るものを感じた。
 にも紹介した辻灯子の「ただいま勉強中」が 3 月に 3 巻発売予定ってことで喜んだのだが、読んでいったら、今回で最終回ってことでがっくし。なんで? 4 コマ雑誌って、一つのシリーズを複数の雑誌に載せることがあるんだが、ほかの雑誌でも終了なのか? 納得いかんぞ。




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