4 コマ マンガについては
何度か取り上げているが、今回は辻灯子。
芳文社の「
まんがタイム」のシリーズに連載を持っている。
前にも書いたとおり、4 コマだからと言ってギャグやらコメディばっかりではない。4 コマの体裁をとりつつストーリーになっているものもある。ただし、辻灯子はコメディ専門。
この人の特長は、まず絵について言えば、ラインが繊細でキャラクタがきれいなこと。それでコメディをやるのでギャップが楽しめる。
そして何より、この人の作品には、まともな奴が一人も存在しない。
コメディなんだからおかしな奴は多い。というか、大半がそうである。だが普通は、そういうおかしい人に翻弄されてしまう普通の人、真面目な人、まっすぐな人というのがいる。それによって主役が引き立つ、ということもある。
だが、この人が生み出す登場人物は、かならずどっかに妙なところがある。それも、真面目すぎて逆におかしい、というのではなく、マジでおかしい。
今、「まんがタイム ラブリー」と「ジャンボ」で連載されている『ただいま勉強中!』を取り上げる。
舞台は、どこかにある女子高。背景に山があるし、学校から各方面へのバスが出ていることから田舎にあることは間違いがない。もとは裁縫学校で良妻賢母養成所、家政科もあるのだが、なぜか体育科もあり全国からエリートが集まってくる、らしい。
全国から生徒が集まる高校って、今テレビでやってるらしい「ここはグリーンウッド」にもあるし、よくマンガで見かける設定だけど、俺にとっては実感なし。どの程度、リアルなんだろう。超受験校をテレビとかで見ることがあるような気がするけど。
バスケの
能代工業が近いか。今、アメリカでプレーしている
田臥勇太は能工 OB だが、横浜出身。
というわけで、現在発売中の第一巻には生徒が地元の方言で話すエピソードがある。
体育科所属でバレーの国体レベルの生徒、藤堂美月が寮に帰ってくると自分の部屋で友達が田舎に電話をしている。
まず登場するのが「
あとぜき」。
前に取り上げたこともあるし、有名な熊本方言、しかも「気づかない方言」。
「自分が入ってきた後ろの戸・ドアを閉めること」だが、「塞く」「堰く」と書いて「せく」と読む言葉がある。
それに「
しなっせ」が続いているし、この台詞を言った岡田晶は熊本出身と断定してよかろう。
もう一人、菅井は「
んだ、蚊ぁ入る」と言っているのだが、北日本であることは間違いないにしても、どこだかは不明。
藤堂は和歌山である。田舎から送られてきた梅干を彼女達とつまむのだが、菅井は「
こんみづけすっけ」と口にしている。
「
すっけ」は「酸っぱい」である。調べたら、東北と新潟が使用圏であることがわかった。「
こんみづけ」は「この梅漬け」だろうが、「
みづけ」という語は見当たらなかった。単なる音便だろう。んー、特定できん。
で、「梅干」と「梅漬け」だが。
厳密には、塩漬けにした後、干したものが「梅干」らしい。干してないものは「梅漬け」。
だが実際は、この作品の使用例でもわかるとおり、使い分けられてはいないように思う。こういう場合、ウェブで「梅漬けは、梅干の方言」などという文章を見かけることがあるのだが、今回はなかったようである。
Wikipedia には、安い「梅干」は実質的に酢漬けであり、減塩とあいまって、殺菌作用どころか、それ自体が腐る可能性がある、など色々と面白いことが書かれている。
その藤堂は、「南高梅」で感動している。
和歌山県立南部高校の生徒が品種改良したものらしい。だから「南高梅 (正しい読み方は『なんこううめ』)」。
裏を取ってみると、どちらかと言えば、作業をしたのは先生で、生徒も一緒にやった、というようなあたりが正確なところらしい。生徒達が頑張ったのは事実だろうが。
で、ジーンと感動していると、菅井が「地元の奴でも
すっけんだな」と突っ込み、起こった藤堂は「
違うのし」と反論している。
この「
のし」、反論だと思って読むとケンカ腰の言葉かと思うが、敬語だそうである。
なお、彼女達の出身地については、
2ch でも話題になっていた。
菅井が自分の部屋ではなくわざわざ藤堂・岡田の部屋で電話しているのは、同室の松下 (言葉遣いからすると大阪出身らしい) が、彼氏とのラブラブ電話を禁止したからである。
このエピソード群は、陸上競技をやっている松下が不調なので気を使っているのだ、と思っていた岡田に菅井が追い出される、というところでオチる。
ここで名前を挙げた 4 人、セミレギュラーで、主人公ではない。主人公に一切触れずに作品紹介をしてしまった。
なので是非、雑誌なり単行本なりを手に取ってください。
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