Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第697夜

出京の折 - My Old NX (6)



 ジャッキポイントの腐食という事態で、車の買い替えを真剣に検討せざるを得なくなった俺。
 とは言いながら、検討対象となったのは、インサイトポロだけである。だって、そそられないんだもの。
 インサイトが落ちたのは長いから。大きい車は嫌なのだ。NX クーペに比べて 30cm も長い、というのはやっぱり問題だった。最近、赤いインサイトを見かけるんだけど、あれかっこいいな。
 つまり最終的には、「ポロを買う」か「NX クーペを修理する」かの二択となったのである。問題がシンプルになってよかった。
 で、結局、ポロを買うことにした。

「ポロ」の名前は、同名のスポーツとマルコ・ポーロに基づくものらしいが、フォルクスワーゲンの車の名前は、“Jetta (ジェット気流)”“Passat (貿易風)”“Scirocco (サハラ砂漠の嵐)”など風に関するものが多い。“Golf”はスポーツではなくドイツ語の「湾、入り江」で (英語の“gulf”)、“Golf Strom (メキシコ湾流)”からきているのだそうである。
 車の名前は、既存の単語を借りてきたり、ベースにして造語したりしているものが多いが、日産のティーダが沖縄の「太陽」であることはにも紹介した。
 トヨタのカムリは「冠」である。
 外国語の方言もあるんじゃないかと思って探したのだが、見つからなかった。つか、「車の名前の由来についてはここに書いてありますよ」というリンク先で消失しているのが多いのはなんでだ。

 新しいポロが発表されたのは去年の 10 月。これが、丸目なデザインから一転、シャープな顔つきとなった。来たね、という感じ。ただしその時点では、買うつもりはない。もし買うことがあったら検討の候補に入れよう、という程度。
 だが実は 11 月にフォルクスワーゲンのディーラーに行っている。
「買うんだったら検討候補に」ということにはなっていたが、ホームページを見るとどうやら秋田にはポロの試乗車も展示車もないようなのである。それでは検討もへったくれもない。俺の場合、自転車を二台積む必要が生じる可能性もあるため、中の広さは絶対に確認する必要があるので、試乗はともかく実物を見なければならなかった。
 で、東京に行く用事があったので、ちょっと足を伸ばして新子安のフォルクスワーゲン横浜東へ。なんで新子安かというと、その上京の目的地に横浜が含まれていたのと、旅行者ゆえ鉄道の駅から歩いていかなければならない、という事情による。20 分もかかるようなところは避けた。
 期待させても申し訳ないので、俺は秋田から来た田舎者であり、ここで買う事はない、見せてくれればいい、と最初に白状したのだが、さすがフォルクスワーゲン、太っ腹である。嫌な顔一つせずに色んな事を説明してくれ、試乗までさせてくれた。
 残念ながらポロの試乗車は出払っていたのだが、同じエンジンだという Golf Variant を運転させてもらった。足回りが非常に堅実でフラフラするところがなく、しかも静か。
 試乗ルートにコンクリート舗装の道路があった。スピードを出すと相当にうるさいはずなのだがそれが伝わってこない。自分が出しているスピードがゆっくりなのか速めなのかを音や振動で判断しているということにはそのとき気づいたのだが、それが全く通用しない。驚いた。
 最後には販促グッズまでくれた。
 一番ビックリしたのは、秋田から来たんです、と言ったら、秋田のディーラーはでしたねぇ、と営業の人が即答したこと。よくご存知である。商品知識もしっかりしていて、正直、その人から買ってもいいかな、と思った。そういう客もいないではないらしいし。
 その営業の人の名前をここに書いて謝意を示したいところだが、やめておく。

 このときの好印象が、ジャッキポイントの腐食に気づいたとき、車屋ではなく、用品店にもってってタイヤ交換を優先した原因ではないかと思う。

 気前がいいことを「太っ腹」というのはなぜだろう。いや、なんとなくわかるけど。
「金持ち」を『秋田のことば (秋田県教育委員会編、無明舎出版)』で調べてみたら、表現がいくつもあるのでちと驚いた。「おやげ」は「公」、「ゆるしえ」は「よろしい家」、「おやがだ」「おやだ」「おやがだしゅ」は「親方」「親方衆」。単独の項目としては立てられていないが、「ほんけか」という語もある由。これは「本家株」であろうか。
『語源探求 秋田方言辞典 (中山健、秋田協同書籍)』によれば、「公」はもともと「大きな家」なんだそうである。逆に、貧乏な家を「こやけ」と言うらしいが、これは「小さな家」。
 西日本に「ぶげんしゃ」「げんしゃ」というのがある。これは「分限者」である。
 なんで「分限者」が金持ちなのか今イチ疑問だが、いずれ、あんまりストレートな言い方はしないのかなぁ。今の「金持ち」がストレートすぎる、と言うべきなのか。

 買うとしたら、納車希望は 3 月下旬である。
 なんでかっつーと、積雪期に納車だとスタッドレス タイヤを買わなければならないから。出費は分散したかった。
 それと、車検や法定点検が年末年始にかかるのも避けたかった。
 更に欲を言えば、あんまり代車って好きじゃないので、そういう時には車をディーラーにおいて、自転車で帰ってくる、ということができる時期にしたい、というのもあった。
 なら春とか夏にすればよさそうなものだが、そこは貧乏人ゆえ、補助金を当てにしている。3 月末までに車両登録しなければならない。
 結局、その期間は延長されたのだが、裏面の腐食が進行して、修理しないことにはどうにもならん、という状態になってしまっても困るので、半年は待てない。
 初夏になるとポロのラインナップが入れ替えられるという噂がある。それを考慮すると悩む要素が増えて面倒くさいが、一方で現行モデルの値引きも期待できる。
 というようなことを考えつつ、3 ヶ月もあるじゃん、という姿勢で、まずは敵情視察というつもりで地元のディーラーへ。

 驚いたことに試乗車があった。ホームページが更新されていなかっただけらしい。そういうところで手を抜いてはいかん。
 今度こそ試乗。感触は Golf Variant のときと同じ。車体のサイズが違うのでその差はあるが、とりたてて文句をつけるところもなし。
 ディーラーの営業ってそういうものらしいが、早めに決めたほうがいいですよ、と言う。3 ヶ月先というのは決して長い期間ではないらしい。そういや横浜東でも、色によっては納車に時間がかかる、と言ってたっけ、と思いながら (また) カタログを貰い、試乗記念のブランケットを貰って帰宅。

 次回は決断までの経緯。




 段々、タイトルが苦しくなってきたが、「出京」は「都出ること」と「都から出ること」の正反対の意味がある。ここでは前者。





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