Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第634夜

出身地がわかる! (中)



出身地がわかる! 気づかない方言』に借りた文章、二本目。

 自転車の補助輪。西日本には多様な呼び方がある。
コロつき」はわかる。山梨に「ゴロつき」というのもあってなんだか近づきたくない感じがするが、「コロ」の濁ったものと考えてもいいだろうし、補助輪が上げる騒々しい音のことだと考えることもできる。福井には「ガラガラつき」というのもあるらしい。
 愛知の「ワッカつき」もわからないことはないが、本来のタイヤの方は「ワッカ」ではないのだろうか。
 近畿の「コマつき」。この辺からわからなくなってくる。円錐形の補助輪とかあったのだろうか。岐阜の「ゴマつき」はこれの親戚だろうか。使用区域とは接していないのだが。
 三重の「ワンタつき」もわからないが、一番わからないのは鹿児島の「ハマつき」。「ハマ」って何? ネットを覗いてると関東北部でも言うらしいのだが。

 じゃんけんの話題もある。
 それにしても、我々が使っていた「そーれ、えす!」の用例が未だに見つからない。ググると俺の文章しか出てこないんだもの。
 ひょっとして、秋田市のごく一部でしか使われてなかったのかな。

 本のほうは、中盤で地域別の構成に変わる。
 北海道で、一般の人のコメントで、「電車を汽車という」というのがある。
 これはおそらくどこの田舎もそうなんじゃないだろうか。
 聞くところによると、(狭義の) 汽車は加速性能が悪いので小刻みに停車を繰り返すと無駄が多いが、電車はその問題が無い。したがって、都市部での運行には電車が適している (た) ということがあるらしい。駅間が離れている田舎では汽車のほうが良かったわけだ。現に今でも電車ではなくディーゼル車が運行されているし。
 こっちはどうなるんだろうね。「汽車」でも「電車」でもないんだが。
「列車」は、厳密には、客を乗せるようになっているものを言うらしく、一両編成でも「列車」なのだそうだ。

 青森で、リンゴが「ぼける」について触れられている。水分を失った状態のことである。
 にも紹介したが、青森に限らず、各地で使われている。それがまた、北海道、山形、長野と、ことごとくリンゴの産地なのである。
 これってひょっとして、リンゴに関する専門用語なんじゃねぇか?
 尤も、リンゴは、生産者に限らず消費者のところでもぼけるわけで、そうだとすると地域差は生じないはず。
 謎だ。

 岩手で、350ml の缶飲料を「サンゴー缶」という、という人がいたが、ググったところそういう言い方はないではないようだ。少なくとも、地域差と思っている人はいないと思われる。
 尤も、全体で 400 件しかない。使っている人は、特に説明の必要がある言葉だとは思っていないようだが、一般的な言葉だとも言えない。
 こないだビールを買いに行ったとき、父親についてきたらしい中学生くらいの子供が、どれにするか悩んでいた父親に、「長い方でいいんじゃない」と言っていた。
 まぁ、確かに「ロング缶」という言葉はある。
 この「ロング缶」、ビールの類だと 500ml の缶だが、清涼飲料水だと 250ml 缶を指すことがある。コーヒーだと 200ml 入るかどうかって小さい缶がメインだが、それよりは長い、ということなのかもしれない。ただ、もともとはその 250ml がほとんどの清涼飲料水の標準的なサイズだったはずである。

 宮城。
 初めて聞いたのだが、麺類のことを「ペロ」ということがあるらしい。中華ソバは「中華ッペロ」、カップ麺は「カッペロ」なんだそうだ。
 若林区に「中華ペロ」というラーメン屋がある由。

 秋田と青森で、テレビが「入る」という言い方が紹介されている。
 テレビを導入するとか、電波が届くとか言う意味ではなく、この「入る」の主語は番組。「『ウルトラマン』が入る」という様に使う。
 俺、昔使ってた様な気がするなぁ。

 山形に面白いのがある。
 電池の電力がなくなったことを「電池気 (でんちけ) がない」と言うらしい。なんだか好きだな、この感じ。
 考えてみれば、電力が失われても電池そのものはあるのだし、金属でパッケージされている電池を切るのはそう簡単ではない。「電池がなくなった」「電池が切れた」というのは「正しい日本語」ではないわけだ。

 福島には「だから」がある。秋田でも使うが、強い共感を覚えるときに出てくる間投詞。季節柄で例を作れば、「今朝、さびがったなー」「んだーがらよ」てな具合。確かに、これをそのまま「だから」と言ったのでは通用しないだろうな。

 あれ、またつづく。




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