前に紹介した「
ケータイ刑事 銭形海」の「ほんなこつ、このばかちんが〜方言教室殺人事件」だが、6 月に発売された DVD-BOX に収録されているメーキングで、出演者達が方言クイズというのを出していた。それをちょっと。
まず
皆川猿時は、「
びんこ」。
彼は、ドラマの中では宮城出身の役をやっていたが、実際には福島出身。
これには漢字がある。「鬢」である。漢和辞典によれば「耳ぎわの髪の毛」。つまり、もみ上げのこと。
「もみ上げ」についてはいくつか他の形がある。
まず「鬢」系では、「
びんちょ」が静岡・三重・長崎で見つかった。
次が、大阪の「
チャリ」。広島でも言うらしい。自転車を意味する形としては使われないんだろうなぁ。
山口の「
ひゃっかん」は語源不明。
滋賀の「
はえさがり」は実態を正確に表していると思う。
そもそも、なんで「もみ上げ」なのかが疑問。誰もそんなところ揉まないし上げないだろう。そもそも「揉み上げ」なんだとすれば、形があまりに原形である。古い言葉だって感じがしない。
ある
床屋さんの
文章によれば、アップにしにくいところなので油を揉みこんで上げることからついたのだそうだが。他のところでは語源不明としているところもある。
さて、床屋の話題が出たが、もみ上げを伸ばさずに切ってしまうことを、もみ上げの呼び方に応じて「
ノーチャリ」「
ノービン」というところがある。初めて聞いた。
これを調べると必ずと言っていいほど、「アイビー」と「テクノ」にぶち当たる。アイビーと言うのはどうやら、もみ上げが水平に切られている状態のようだ。「テクノカット」というのは刈り上げでかつもみ上げどころか耳の周囲の髪がない、という状態だろうか。だからファッション音痴がヘアスタイルを語るな、と。
話は変わるが、もみ上げを指先で掴んでグっと引っ張る体罰。まぁ、教師がやるから体罰なんだろうが、子供同士でやったりしたこともあったんだろうか。あれになんか名前がついていたような気がするんだが、全く思い出せない。俺はきっとやったこともやられたこともないはずだから、そのせいかもしれない。
二問目。
原史奈は「
にぬき」。
これは割と有名だろう。大阪・京都辺りでゆで卵のこと。
ほかの俚諺形なんてないだろうなぁ、と思ったが、「
ゆぜ卵」というのはあった。これはゆで卵がどうというよりも、「茹でる」を「
ゆぜる」と言う地域がある、ということである。新潟の長岡辺りの例が見つかる。
で、それだけにあらず。「
むし卵」もある。勿論、「蒸し卵」。蒸すのと茹でるのとはまったく別の作業だと思うが、それを言ったら、茹でると煮るだって別だよな。
「
うで卵」という例もあるが、これは東京弁の様な気がする、とは前に書いた――確認したら、二回も書いていた。ネタなかったんだなぁ、昔から。
坂田聡は福岡だったが、問題が大便だったのでパス。特段、意外な語でもなかったし。
北海道出身の
宮下ともみの「
ざんぎ」も、宮城出身の
大堀こういちの「
いずい」も前に取り上げた表現なのでパス。椅子のすわり心地が悪いことにも使うそうだ。
主演の
大政絢は北海道出身。
これが面白い。
「
わや」。
関西芸人辺りがよく口にしているような気がするが、マイナスの意味で、程度がはなはだしい、「ひどい」という意味の言葉である。れっきとした北海道方言。天気が悪い、部屋が散らかっている、テストの成績が悪いなどなどの用例が見つかる。
が、大政絢の正解は、プラスの意味の強調語。「すごい」という感じ。
逆である。
しかし、こういう使い方は、特に若者に多い。ちょっと古いが、とても美味のものについて「ゲロうまい」、面白い映画について「これ、ヤバくね?」などなどの例がある。
尤も、ちょっとウェブに見当たらない。始まったばかりの使い方なのか、それともまだ大政絢周辺でしか使われていないのか。
ラスト、
草刈正雄の「
なんかかり」。
何か借りているわけではない。
「寄りかかれ」ということらしいが、ニュアンスとしては「寄りかかったらどう」というようなくらいの感じ。
で、もうちょっと調べたら、「休む」という意味合いもあって、「どこかに体重を預けて楽になれ」ということらしい。だから、ネイティブにとっては「寄りかかったらどう」では置換不可能なのだそうだ。
やっと出てくる秋田弁では「
よっかがる」である。確かに、この語には「休め」という意味はない。
「ケータイ刑事」は「銭形海」の第 3 シーズンが 3 月末に終わって一休み中。
今、その時間帯は「
東京少女」というシリーズをやっている。最初の頃はタイトルどおりに女の子を主人公に、舞台がそこであるというだけでなく、引っ越してきたとか、憧れだった、とかいうことで東京との係わり合いのドラマをやっていたが、最近、それが弱くなってきている。したがって、方言ネタも拾えない。